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明細書 :ナノ複合構造体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4399589号 (P4399589)
公開番号 特開2005-161466 (P2005-161466A)
登録日 平成21年11月6日(2009.11.6)
発行日 平成22年1月20日(2010.1.20)
公開日 平成17年6月23日(2005.6.23)
発明の名称または考案の名称 ナノ複合構造体及びその製造方法
国際特許分類 B82B   1/00        (2006.01)
B01J  19/08        (2006.01)
B01J  19/10        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI B82B 1/00
B01J 19/08 J
B01J 19/10
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2003-403629 (P2003-403629)
出願日 平成15年12月2日(2003.12.2)
審査請求日 平成18年11月28日(2006.11.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】田中 俊一郎
【氏名】亀山 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100078190、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 三千雄
【識別番号】100115174、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 正博
審査官 【審査官】渡邊 吉喜
参考文献・文献 特開平08-217419(JP,A)
特開2000-192113(JP,A)
特開2005-104738(JP,A)
特開2005-104739(JP,A)
許並社、宗川繁、田中俊一郎,超微粒子の電子線による変態と融合,日本金属学会秋期大会講演概要,日本,1994年,pp.340
田中俊一郎、許並社,Alナノ粒子の電子線による融合,日本金属学会春期大会講演概要,日本,1995年,pp.101
調査した分野 B01J10/00-12/02
14/00-19/32
B82B1/00-3/00
C01B13/00-13/36
C01F1/00-17/00
C23C14/00-14/58
特許請求の範囲 【請求項1】
準安定アルミナよりなるナノ複合構造体であって、複数の所定長さのナノワイヤ部と、該ナノワイヤ部の各々の先端に一体的に形成された複数のナノボール部とを有し、且つ、該複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差し、結合していることを特徴とするナノ複合構造体。
【請求項2】
前記ナノ複合構造体を構成する複数のナノワイヤ部が、準安定アルミナからなる粒子の外周面から突出した形態において、該粒子に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のナノ複合構造体。
【請求項3】
前記ナノワイヤ部が10~200nmの長さを有していると共に、前記ナノボール部が5~50nmの大きさを有している請求項1又は請求項2に記載のナノ複合構造体。
【請求項4】
準安定アルミナ粒子を溶媒中に混合せしめ、得られた混合液に対して、加熱しつつ超音波振動を加えることにより作製された、100個以上の準安定アルミナ粒子からなる粒子凝集体に対して、真空下において、8.0×1020e/cm2 ・sec以上の強度の電子ビームを、少なくとも1回以上フラッシュ照射せしめることにより、前記準安定アルミナと同質の準安定アルミナよりなるナノ複合構造体であって、複数の所定長さのナノワイヤ部と、該ナノワイヤ部の各々の先端に一体的に形成された複数のナノボール部とを有し、且つ、該複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差し、結合しているものを形成することを特徴とするナノ複合構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ナノ複合構造体を構成する複数のナノワイヤ部が、準安定アルミナからなる粒子の外周面から一体的に突出した形態において形成されることを特徴とする請求項4に記載のナノ複合構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合構造体及びその製造方法に関するものであり、特に、新規な構造を有するナノ複合構造体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粒子には、その粒径を100nm以下というように超微粒子化すると、通常の粒子(例えば、1μm以上)とは異なる特性が出現する。要するに、物質のサイズが小さくなり、ナノスケールサイズの超微粒子となると、バルクの時とは全く違った新しい性質が現れるようになるのである。これは、例えば超微粒子では、全原子数に対して表面に存在する原子数が増加するために、粒子の特性に対する表面エネルギーの影響が無視できなくなったり、また、通常のバルク材で問題となる残留歪みの影響を免れることができる等に基づくものとされている。
【0003】
そして、そのような超微粒子の優れた特性を利用して、各種デバイスや機能材料等に利用することが試みられている。また、超微粒子の種類によっては、高い触媒特性が得られる等、各種材料の高機能化の可能性をも有しているのである。
【0004】
ところで、かかる超微粒子の製造方法としては、従来から物理的方法や化学的方法が知られている。具体的には、物理的な超微粒子の製造方法としては、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法、流動湯上真空蒸発法等があり、また、液相を利用した化学的な超微粒子の製造方法としては、コロイド法、アルコキシド法、共沈法等があり、更に気相を利用した超微粒子の製造方法としては、有機金属化合物の熱分解法、金属塩化物の還元・酸化・窒化法、水素中還元法、溶媒蒸発法等が、知られている。
【0005】
しかしながら、このような従来の超微粒子の製造方法の多くは、超微粒子を集合体として、換言すれば超微粉体として得る方法であり、ナノスケールサイズの超微粒子や種々の構造を有するナノ複合構造体を生成せしめ得るものではなかった。
【0006】
一方、本発明者等は、先に、特開平8-217419号公報(特許文献1)において、θ-アルミナ粒子の如き準安定金属酸化物粒子に対して、高真空雰囲気下にて1020e/cm2 ・secオーダーの強度を有する電子線を照射することにより、α-アルミナ超微粒子の如き安定金属酸化物超微粒子や、アルミニウム超微粒子の如き金属超微粒子を生成する方法を提案している。この、先に提案の方法によれば、安定金属酸化物超微粒子や金属超微粒子を粒子単体として得ることが出来、また、その形状や結晶方位等を制御することが出来るとされており、特許文献1においては、かかる方法に従って製造された超微粒子として、θ-アルミナ粒子の外周面に、ボール状のα-アルミナ超微粒子が形成せしめられたナノボール構造体や、α-アルミナ超微粒子配向成長体が形成せしめられたナノ複合構造体等が、示されている。
【0007】
しかしながら、かかる本発明者等が先に提案した手法にあっては、安定金属酸化物超微粒子や金属超微粒子等を製造することは可能であるものの、それら以外の物質、例えば準安定金属酸化物よりなる超微粒子やナノ複合構造体を得ることが出来なかったのであり、それら超微粒子やナノ複合構造体の単体としての性質や、その応用に関する研究の観点からは、未だ改良の余地が残されていたのである。
【0008】

【特許文献1】特開平8-217419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、準安定金属酸化物たる準安定アルミナより構成され、新規な構造を有するナノ複合構造体を提供することにあり、また、そのようなナノ複合構造体を有利に製造し得る方法を提供することにある。
【0010】
そして、本発明は、上述の如き課題を解決するために、準安定アルミナよりなるナノ複合構造体であって、複数の所定長さのナノワイヤ部と、該ナノワイヤ部の各々の先端に一体的に形成された複数のナノボール部とを有し、且つ、該複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差し、結合していることを特徴とするナノ複合構造体を、その要旨とするものである。
【0011】
ここにおいて、そのようなナノ複合構造体にあっては、有利には、かかるナノ複合構造体を構成する複数のナノワイヤ部が、準安定アルミナからなる粒子の外周面から突出した形態において、該粒子に一体的に形成されているのである。
【0012】
また、好ましくは、前記ナノワイヤ部が10~200nmの長さを有すると共に、前記ナノボール部が5~50nmの大きさを有するのである。
【0013】
さらに、本発明にあっては、準安定アルミナ粒子を溶媒中に混合せしめ、得られた混合液に対して、加熱しつつ超音波振動を加えることにより作製された、100個以上の準安定アルミナ粒子からなる粒子凝集体に対して、真空下において、8.0×1020e/cm2 ・sec以上の強度の電子ビームを、少なくとも1回以上フラッシュ照射せしめることにより、前記準安定アルミナと同質の準安定アルミナよりなるナノ複合構造体であって、複数の所定長さのナノワイヤ部と、該ナノワイヤ部の各々の先端に一体的に形成された複数のナノボール部とを有し、且つ、該複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差し、結合しているものを形成することを特徴とするナノ複合構造体の製造方法をも、その要旨とするものである。
【0014】
ここで、そのようなナノ複合構造体の製造方法においては、前記ナノ複合構造体を構成する複数のナノワイヤ部が、準安定アルミナからなる粒子の外周面から一体的に突出した形態において形成されることとなる。
【発明の効果】
【0015】
上述したような本発明に従うナノ複合構造体にあっては、準安定アルミナよりなり、また、ナノ複合構造体を構成する複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差、結合し、二次元又は三次元構造(ナノネットワーク構造)を呈するものであるところから、かかるナノ複合構造体単体としての物性研究のみならず、各種デバイスや機能材料等への応用、例えば、特定波長の光や電磁波に対するナノフィルターや導波路、ナノスケールの半導体回路、高効率触媒等への応用に、大きく寄与し得ることとなるのである。
【0016】
また、本発明に従うナノ複合構造体の製造方法に従えば、上述の如きナノ複合構造体を有利に製造し得るのであり、特に、その生成過程を制御することにより、準安定アルミナよりなるものであって、目的の形状、大きさを有するナノ複合構造体を、有利に製造することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ところで、本発明に従う準安定アルミナよりなるナノ複合構造体は、後述するように、100個以上の準安定アルミナ粒子からなる粒子凝集体に対して、電子ビームを照射せしめることにより、製造され得るものである。
【0018】
ここにおいて、先ず、準安定アルミナとしては、アルミナ(Al23)において広く知られている、準安定な結晶相のものを例示することが出来、特にδ-Al23(斜方晶系)やθ-Al23(単斜晶系)が、好適に用いられることとなる。
【0019】
また、本発明のナノ複合構造体を製造するに際しては、上述の如き準安定アルミナよりなる粒子(原料粒子)が100個以上、凝集してなる粒子凝集体が用いられることとなるが、かかる原料粒子の大きさについては、特に限定されるものではなく、目的とするナノ複合構造体の大きさ、形状等に応じて適宜に設定されることとなる。具体的には、0.05~10μm程度の粒子径を有する原料粒子が有利に用いられることとなる。かかる粒子径が余りにも小さいと、目的とするナノ複合構造体を十分に形成し得ない恐れがあり、一方、余りにも大きくなっても、本発明の目的とするナノ複合構造体を有利に形成することが困難となる恐れがあるからである。
【0020】
さらに、本発明においては、上述の如き所定の大きさを有する準安定アルミナ粒子(原料粒子)が、100個以上、好ましくは200~400個程度凝集せしめられて、構成される粒子凝集体が、準備される。
【0021】
ここで、本発明において用いられる粒子凝集体としては、従来より公知の各種手法に従って作製されたものであれば、如何なるものであっても用いることが可能であるが、好ましくは、準安定アルミナ粒子を所定の溶媒中に混合せしめ、得られた混合液に対して、加熱しつつ超音波振動を加えることにより作製されたものが、用いられることとなる。
【0022】
例えば、準安定アルミナ(θ-アルミナ、δ-アルミナ等)と、溶媒としてエタノールを用いた場合には、準安定アルミナを0.01wt%以上の割合において含有するエタノール溶液を準備し、かかるエタノール溶液を加熱しながら、具体的には、超音波振動を加え終わる時点で溶液の温度が30~50℃程度となるように加熱しながら、30~50kHz程度の超音波振動を、800~1500sec程度加えることにより、200~400個程度の準安定アルミナ粒子が凝集してなる粒子凝集体を得ることが可能である。なお、溶媒の種類、溶液中における準安定アルミナ粒子の割合(濃度)、加熱の程度(昇温速度)、超音波振動を加える時間等は、用いられる準安定アルミナの種類、粒子の大きさ、形状及び表面性状等に応じて適宜に設定される。
【0023】
そして、このようにして準備された粒子凝集体に対して、特定の強度の電子ビームを少なくとも1回以上フラッシュ照射せしめることにより、本発明に従うナノ複合構造体が形成されることとなるのである。
【0024】
すなわち、100個以上の準安定アルミナ粒子(原料粒子)からなる粒子凝集体に対して、8.0×1020e/cm2 ・sec以上の強度の電子ビームを照射せしめると、個々の原料粒子から生じた、原料粒子より小径の準安定アルミナ粒子(生成粒子)と、かかる生成粒子と同質の準安定アルミナよりなり、個々の生成粒子の外周面から突出した形態において一体的に形成された複数のナノワイヤ部と、かかるナノワイヤ部の先端に一体的に形成されたナノボール部とから構成され、且つ、複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差し、結合してなるナノ複合構造体が、形成されるのである。なお、5.0×1022e/cm2 ・secを超える強度の電子ビームを照射せしめると、一度生成したナノ複合構造体が、特にナノワイヤ部とナノボール部との間において分離する恐れがあるところから、好ましくは、8.0×1020~5.0×1022e/cm2 ・secの強度を有する電子ビームが、有利に用いられることとなる。
【0025】
ここで、上述した粒子凝集体に対する電子ビームの照射操作は、一般に、短時間に、例えば2秒以内で、好ましくは1秒以内で、目的とする照射強度までの上昇・下降を行ない、瞬間的に、該目的とする強度の電子ビームが粒子凝集体に照射されるようにするフラッシュ照射手法にて、実施されるものである。そして、電子ビームの強度を目的とする強度まで上昇、下降せしめるに際しては、従来より公知の各種手法が採用され得るのであり、具体的には、コンデンサーレンズで照射面積を絞る等の方法により、有利に行なわれることとなる。
【0026】
また、本発明における、粒子凝集体に対する電子ビームのフラッシュ照射は、1回でも、目的とするナノ複合構造体を形成することが可能であるが、更に必要に応じて複数回、連続して繰り返し行なうことも可能である。
【0027】
なお、本発明に従うナノ複合構造体を製造するに際しては、上述の如き、電子ビームのフラッシュ照射操作における1回当たりの照射時間は、電子ビームの照射条件や、目的とするナノ複合構造体の形状等に応じて、適宜に設定されることとなるが、一般に、この照射時間が長くなると、ナノワイヤ部が効果的に生成し得ない、若しくは一度生成したナノワイヤ部が消滅する恐れがあるところから、本発明のナノ複合構造体を製造するに際しては、前記1回当たりの照射時間が、一般に2秒以内、特に1秒を超えないように設定することが好ましい。
【0028】
また、得られるナノ複合構造体の大きさや形態は、粒子凝集体の形状や大きさ、原料粒子の凝集の程度、原料粒子の大きさ、電子ビームの照射条件(照射強度、照射時間、照射面積)等に影響されるものであるところから、これらの条件を適宜に調整することにより、目的とする形状、大きさを有するナノ複合構造体を有利に製造することが出来る。
【0029】
ところで、本発明において用いられる電子ビームは、例えば、通常のLaB6 線源TEM装置やFE-TEM(Field Emission - Transmission Electron Microscope )装置を利用することで、得ることが出来る。そして、この電子ビームの照射は、よく知られているように、高真空下において行なわれるものであって、具体的には、10-5Pa程度以下の真空下において、照射せしめられることが望ましい。また、そのような電子ビームの照射に際しては、一般に、原料粒子は、適当な基板、例えば非晶質炭素膜(アモルファスカーボン支持膜)上に載置されることとなるが、その際、基板の加熱等を行なう必要がなく、常温下において、粒子凝集体に対して、電子ビームが照射せしめられることとなる。さらに、このようなTEM装置においては、一般に、光源部から発生した電子ビームを、コンデンサーレンズによって照射面積を変化させることにより、電子ビームの強度(e/cm2 ・sec)を変化させることが可能である。
【0030】
また、このようなTEM装置において、電子ビームの照射面積(照射域)を絞る、即ち電子ビームを絞ることにより、その強度を上昇せしめることが可能であるが、電子ビームの照射面積が広すぎると、十分な電子ビームの強度が得られない恐れがあるところから、一般に、電子ビームの最小照射域の直径が200nm以下となるまで、電子ビームの照射面積が絞られることとなる。
【0031】
そして、上述したような本発明に従うナノ複合構造体の製造方法に従って、100個以上の準安定アルミナ粒子(原料粒子)よりなる粒子凝集体に対して電子ビームを照射せしめると、原料粒子から生じた生成粒子の外周面から突出した形態において、原料粒子及び生成粒子と同質の準安定アルミナよりなる、長さ:10~200nm程度、幅(太さ):5~25nm程度のナノワイヤ部が複数、形成され、また、それら複数のナノワイヤ部における各々の先端には、実質的に球形状を呈していたり、八面体や二十面体等の多面体形状を呈するナノボール部が形成され、更に、かかる複数のナノワイヤ部のうちの少なくとも2本以上が交差、結合し、二次元又は三次元構造を有するナノ複合構造体が、有利に製造されることとなるのである。
【0032】
このようにして得られたナノ複合構造体にあっては、準安定アルミナよりなり、また二次元又は三次元構造を呈するものであるところから、ナノ複合構造体単体としての物性研究のみならず、各種デバイスや機能材料等への応用に、大きく寄与し得ることとなるのである。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0034】
先ず、市販のアルミニウム粒子に対して蒸発金属燃焼法を施すことにより、粒子径が10nm~5μm程度のアルミナ粒子を得た。得られたアルミナ粒子の結晶相をX線回折法によって調べたところ、その大部分が、θ-アルミナよりなる粒子又はδ-アルミナよりなる粒子であった。それら得られた粒子のうちのθ-アルミナ粒子を用いて、以下の各実験を行なった。
【0035】
実験例 1
θ-アルミナ粒子を、別個に用意したエタノール(市販品)中に、0.01wt%の割合となるように混合し、得られた混合液を、ヒーター付き超音波洗浄機(米国BRANSON社製、BRANSONIC221、高周波出力:100W)の槽内に投入し、ヒーターで加熱しながら、45kHzの超音波振動を1000秒間加え、θ-アルミナ粒子よりなる粒子凝集体を得た。なお、ヒーターで加熱した結果、超音波振動を加える前は25℃であった混合液の水温が、超音波振動を加え終えた後は、35℃まで上昇した。
【0036】
得られた粒子凝集体をTEM装置(200kV:日本電子株式会社製、JEM-2010)にて観察したところ、かかる粒子凝集体にあっては、粒度分布において800nm程度をピークとする、粒子径:10nm~2μm程度のθ-アルミナ粒子が、200~300個程度凝集して構成されていることが認められ、また、粒子凝集体の大きさは、最大3μm程度まで分布していることが確認された。そして、かかる粒子凝集体を含むエタノール混合液を、Cu製メッシュ上に載置されたアモルファスカーボン支持膜上に塗布し、乾燥させた。
【0037】
得られたアモルファスカーボン支持膜を、上記と同様のTEM装置の真空室(真空度:10-5Pa程度)内に配置された室温ステージ上にセットした。その後、アモルファスカーボン支持膜上の、θ-アルミナ粒子よりなる粒子凝集体に対して、最大強度:2.0×1022e/cm2 ・secの電子ビームを、1回当たりの照射時間:1秒、照射回数:2回の条件にて、フラッシュ照射せしめ、粒子凝集体の周囲におけるナノスケール構造の変化を、その場(in situ )観察した。なお、かかるフラッシュ照射の際には、円形状の照射域の半径を、最大:1μmから最小:50nmまで変化せしめることにより、電子ビームの強度を上昇・下降させた。電子ビーム照射後に生成したナノ複合構造体のTEM写真を、図1として示す。
【0038】
実験例 2
実験例1と同じ条件で準備したθ-アルミナ粒子凝集体に対し、かかる粒子凝集体における3個のθ-アルミナ粒子にて囲まれた空間を照射中心として、電子ビームを照射した。なお、かかる電子ビームの照射に際しては、最大強度:2.0×1021e/cm2 ・secの電子ビームを用い、これ以外の条件については、実験例1と同様の条件に従った。電子ビーム照射後に生成したナノ複合構造体のTEM写真を、図2として示す。
【0039】
かかる図1及び図2からも明らかなように、本発明のナノ複合構造体の製造方法によれば、その先端にナノボール部が一体的に形成されているナノワイヤ部の複数が、互いに交差し、結合してなるナノ複合構造体が形成されていることが認められた。特に、実験例2と比較して最大強度が強い電子ビームを用いた実験例1では、比較的細長い形状のナノワイヤ部が交差してなるナノ複合構造体が形成されたのに対し、実験例2においては、比較的太くて短い形状のナノワイヤ部が、相互に複雑に絡み合った構造を有するナノ複合構造体が形成された。また、このようにして形成されたナノ複合構造体にあっては、何れも、電子ビーム照射前の粒子凝集体を構成する粒子と同質の、θ-アルミナ粒子よりなることが、制限視野電子線回折図形によって、確認されたのである。
【0040】
比較例 1
θ-アルミナ粒子を0.005wt%の割合において含有するエタノール混合液を準備し、実験例1と同様の手法にて、θ-アルミナ粒子よりなる粒子凝集体を得た。なお、かかる粒子凝集体を作製するに際しては、エタノール混合液を加熱することなく、室温(25℃)下において、エタノール混合液に対して超音波振動を加えた。得られた粒子凝集体をTEM装置にて観察したところ、かかる粒子凝集体は、粒度分布において200nm程度をピークとする、粒子径:10~400nm程度のθ-アルミナ粒子が、30個程度凝集して構成されていることが認められた。
【0041】
かかる粒子凝集体を含むエタノール混合液を、実験例1と同様に、Cu製メッシュ上に載置されたアモルファスカーボン支持膜上に塗布し、乾燥させた。そして、かかるアモルファスカーボン支持膜上の、θ-アルミナ粒子よりなる粒子凝集体に対して、実験例1と同様の手法、条件にて電子ビームを照射し、かかる電子ビーム照射後の粒子凝集体を観察したところ、その先端にナノボール部が一体的に形成されてなるナノワイヤ部の形成は認められたものの、かかるナノワイヤ部が、互いに交差し、結合している状態は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実験例1において得られたTEM写真であって、電子ビームの照射後、生成粒子からナノ複合構造体が成長した形態を示すものである。
【図2】実験例2において得られたTEM写真であって、電子ビームの照射後、生成粒子から、ナノワイヤ部が複雑に絡み合ったナノ複合構造体が成長した形態を示すものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1