TOP > 国内特許検索 > 微細配線の作製方法並びに該微細配線を備えた電子部品 > 明細書

明細書 :微細配線の作製方法並びに該微細配線を備えた電子部品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4324668号 (P4324668)
公開番号 特開2005-203433 (P2005-203433A)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発行日 平成21年9月2日(2009.9.2)
公開日 平成17年7月28日(2005.7.28)
発明の名称または考案の名称 微細配線の作製方法並びに該微細配線を備えた電子部品
国際特許分類 H05K   3/14        (2006.01)
H05K   3/38        (2006.01)
FI H05K 3/14 Z
H05K 3/38 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2004-005665 (P2004-005665)
出願日 平成16年1月13日(2004.1.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年11月1日 株式会社工業調査会発行の「電子材料11月号(第42巻第11号)」に発表
審査請求日 平成19年1月5日(2007.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】木下 隆利
【氏名】丹羽 敏彦
【氏名】隅山 兼治
【氏名】山室 佐益
個別代理人の代理人 【識別番号】100117606、【弁理士】、【氏名又は名称】安部 誠
【識別番号】100115510、【弁理士】、【氏名又は名称】手島 勝
【識別番号】100136423、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 道子
審査官 【審査官】大光 太朗
参考文献・文献 特開2002-284900(JP,A)
特開昭62-163205(JP,A)
特開平04-145664(JP,A)
特開平03-182011(JP,A)
特開平03-034211(JP,A)
特開2003-324036(JP,A)
調査した分野 H05K 3/14
H05K 3/38
特許請求の範囲 【請求項1】
基材上に微細配線を作製する方法であって、以下の工程:
親水性部分と疎水性部分とが軸方向に少なくとも一つずつ形成されている両親媒性の線状ポリペプチドを用意する工程;
所定の基材の表面に、前記ポリペプチドが規則的に配列して成るポリペプチド薄膜を形成する工程;
前記ポリペプチド薄膜に疎水基を備えた導電性微粒子を供給し、該疎水基を介して該ポリペプチド薄膜の疎水性部分に導電性微粒子を付加する工程;および
前記ポリペプチド及び導電性微粒子の疎水基を消失させ、前記ポリペプチドの規則的配列パターンに対応した導電性微粒子から成る微細配線を形成する工程;
を包含する方法。
【請求項2】
基材上に微細配線を作製する方法であって、以下の工程:
親水性部分と疎水性部分とが軸方向に少なくとも一つずつ形成されている両親媒性の線状ポリペプチドを用意する工程;
前記ポリペプチドに疎水基を備えた導電性微粒子を供給し、該疎水基を介して該ポリペプチドの疎水性部分に導電性微粒子を付加する工程;
所定の基材の表面に、前記導電性微粒子が付加されたポリペプチドが規則的に配列して成るポリペプチド薄膜を形成する工程;および
前記ポリペプチド及び導電性微粒子の疎水基を消失させ、前記ポリペプチドの規則的配列パターンに対応した導電性微粒子から成る微細配線を形成する工程;
を包含する方法。
【請求項3】
前記ポリペプチド薄膜の少なくとも一部は、前記基材の水平方向に前記ポリペプチドの疎水性部分が相互に隣接して並列するように軸方向を揃えて配列したポリペプチド集合体により構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチド薄膜は、ラングミュア-ブロジェット法に基づいて形成された単分子膜又は累積膜である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性微粒子は、平均粒子サイズ100nm以下の金属又は合金から成る微粒子である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記疎水基を備えた導電性微粒子は、前記微粒子に長鎖炭化水素基を備えた両親媒性分子を結合させて得られたものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの方法によって作製された所定パターンの微細配線を備えた電子部品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノメーターサイズの微細な配線を基材上に作製する方法に関し、そのような微細配線を備えた電子部品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子情報機器の小型化及び高性能化に伴い、そのような機器に使用され得る電子部品(デバイス)として、従来より更に小型で高集積なものが要求されている。
かかる要求を実現化するための一手段として、半導体パッケージ用配線基板やDRAM等の半導体デバイスに形成される配線(具体的には配線幅や配線厚さ)の微細化が挙げられる。そこで、より微細な配線を形成するため、レジスト材料を電子線等で露光する所謂リソグラフィー技術の改良の他、インクジェットプリンティング技術の応用が考えられている。例えば、特許文献1及び2には、平均粒子径1~100nmの金属微粒子を含むペーストをインクジェット印刷することにより、基材上に微細配線を形成する方法が記載されている。
【0003】

【特許文献1】特開2002-324966号公報
【特許文献2】特開2003-311944号公報
【特許文献3】特開2002-284900号公報
【特許文献4】特開2002-285000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現状のリソグラフィー技術により形成される配線幅はせいぜい0.1μm程度が限界とされている。また、インクジェット技術によっても0.1μm以下のナノサイズの超微細配線を形成するのは困難である。従って、デバイスのさらなる小型化・高集積化を達成するために、例えば1~100nm程度のナノサイズの配線幅を実現する微細配線作製方法が望まれている。
本発明は、かかる要求に応えるべく開発されたものであり、基材上にナノサイズの微細配線を作製する方法の提供を目的とする。また、他の目的は、そのような方法により作製された微細配線を有する超高集積半導体デバイス等の超小型電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記特許文献3及び4に記載されるような両親媒性物質を導電性超微粒子のキャリヤーとして使用することにより、基材表面にナノサイズの配線幅の微細配線を規則的に形成する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本明細書で開示される一つの方法は、ナノサイズ(典型的には1~100nm程度のサイズ)の微細配線を基材上に作製する方法である。この方法は、親水性部分と疎水性部分とが軸方向(長手方向)に少なくとも一つずつ形成されている両親媒性の線状ポリペプチドを用意する工程と、所定の基材の表面に、前記ポリペプチドが規則的に配列して成るポリペプチド薄膜を形成する工程と、前記ポリペプチド薄膜に疎水基を備えた導電性微粒子を供給し該疎水基を介して該ポリペプチド薄膜の疎水性部分に導電性微粒子を付加する工程とを包含する。典型的には前記基材を加熱することによって、前記ポリペプチド及び導電性微粒子の疎水基を消失(典型的には焼失)させ、前記ポリペプチドの規則的配列パターンに対応した導電性微粒子から成る微細配線を形成する工程を更に包含する。
【0006】
また、ここで開示される他の一つの微細配線作製方法は、親水性部分と疎水性部分とが軸方向(長手方向)に少なくとも一つずつ形成されている両親媒性の線状ポリペプチドを用意する工程と、前記ポリペプチドに疎水基を備えた導電性微粒子を供給し、該疎水基を介して該ポリペプチドの疎水性部分に導電性微粒子を付加する工程と、所定の基材の表面に、前記導電性微粒子が付加されたポリペプチドが規則的に配列して成るポリペプチド薄膜を形成する工程とを包含する。典型的には前記基材を加熱することによって、前記ポリペプチド及び導電性微粒子の疎水基を消失(典型的には焼失)させ、前記ポリペプチドの規則的配列パターンに対応した導電性微粒子から成る微細配線を形成する工程を更に包含する。
【0007】
本発明の微細配線作製方法では、前記両親媒性線状ポリペプチドの疎水性部分に対し、前記疎水基を備えた導電性微粒子を当該疎水基の疎水性相互作用を利用して吸着させることができる。そして、線状ポリペプチドを基材表面に規則的に配列させることにより、結果的に当該ポリペプチドの疎水性部分に吸着された導電性微粒子群の基材上における規則的配置が実現される。この状態で基材ごと加熱し、或いはレーザ照射によって、基材表面に存在するポリペプチド及び疎水基を消失(焼失、蒸散)させることによって、規則的に配置された導電性微粒子群から成る線状物すなわち微細配線が基材上に形成される。
このように、本発明の方法によると、キャリヤーたる両親媒性ポリペプチドの規則的配列に応じて規則的に配置されたナノサイズの微細配線を容易に作成することができる。
【0008】
好ましくは、前記ポリペプチド薄膜の少なくとも一部が、前記基材の水平方向に前記ポリペプチドの疎水性部分が相互に隣接して並列するように軸方向を揃えて配列した(即ち1軸配向した)ポリペプチド集合体により構成されるように、ポリペプチド薄膜を形成する。この場合、特に好ましくは、前記ポリペプチド薄膜は、ラングミュア-ブロジェット法(Langmuir‐Blodgett technique)に基づいて形成された単分子膜又は累積膜(LB膜)である。
このようなポリペプチド薄膜を形成すると、特に配線幅が狭く(例えば1~50nm)、整然と配置されたナノサイズの微細配線を作製することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記導電性微粒子として、平均粒子サイズ100nm以下(例えば1~100nm)の金属又は合金から成る微粒子を使用する。これにより、高導電率のナノサイズ微細配線を得ることができる。
また、好ましくは、前記疎水基を備えた導電性微粒子として、該微粒子に長鎖炭化水素基(典型的には炭素数10以上の長鎖炭化水素基、好ましくはアルキル基)を備えた両親媒性分子を結合させて得られたものを使用する。このような疎水基を備えた導電性微粒子は、前記両親媒ポリペプチドの疎水性部分と高い疎水性相互作用を奏し得る。このため、ポリペプチドの疎水性部分に、かかる導電性微粒子を容易且つ高密度に吸着させることができる。その結果、より高密度のナノサイズ微細配線を作製することができる。
【0010】
また、本明細書において開示したいずれかの方法によって作製された所定パターンの微細配線を備えた電子部品が提供される。
ここで「電子部品」とは、本発明の適用があり得る種々のデバイス、素子、回路等(即ち微細配線及び該配線を形成する基材(基板)を有する電子部品)を包含する。例えば、微細配線を有するLSI等のIC(チップ)は、ここでいう電子部品に包含される典型例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0012】
本発明の微細配線作製方法では、親水性部分と疎水性部分とが軸方向に少なくとも一つずつ形成されている両親媒性の線状(鎖状)ポリペプチドを使用する。かかる両親媒性ポリペプチドは、導電性微粒子のキャリヤー及び基材(基板)上において規則的配列を形成し得る好適な分子直線性と両親媒性とを有していればよく、ポリペプチドを構成するアミノ酸配列の内容、アミノ酸残基数、側鎖の有無及び側鎖の種類等によって限定されない。
ポリペプチド鎖を構成するアミノ酸残基数は、概ね10以上1000以下であることが好ましい。全アミノ酸残基数が10未満であると、両親媒性となり難く適当でない。また、全アミノ酸残基数が1000を上回ると、基材上に規則的に配列させることが困難となるため好ましくない。
【0013】
両親媒性ポリペプチドにおける疎水性部分は、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、プロリン(Pro)等の疎水性アミノ酸を主体に構成され得る。他方、親水性部分は、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)等の親水性アミノ酸を主体に構成され得る。
なお、ポリペプチド鎖を構成するアミノ酸残基の側鎖部分を修飾又は改変することによっても疎水性部分若しくは親水性部分を形成することができる。例えば、側鎖のカルボキシル基をエステル化することによりその部分を疎水性にすることができる。また、後述するように、そのようなエステル化されたカルボキシル基を加水分解することによりその部分を親水性にすることもできる。
【0014】
疎水性部分を構成するポリペプチド鎖の長さ(即ちアミノ酸残基数)は、基材上に作製しようとする導電性微粒子の線状集合体即ち微細配線の幅(厚さ、サイズ)によって適宜異ならせるとよい。他方、親水性部分を構成するポリペプチド鎖の長さは、基材上に作製しようとする所定パターンの回路(微細配線)における配線と配線の間隔によって適宜異ならせるとよい。
【0015】
また、使用する両親媒性ポリペプチドの形状(高次構造)は、ポリペプチド鎖を構成するアミノ酸の種類(例えば、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、或いはトリプトファン(Trp))とその配列によって所望する形状(αへリックス構造、βシート構造、ランダムコイル構造、およびこれらの混合した構造)に設計することが可能である。
少なくとも疎水性部分がαへリックス構造であるポリペプチドが好ましい。αへリックスは極めて小さい径(例えば1~2nm)の鎖状構造であり得る。このため、疎水性部分がαへリックス構造であると、そこに付与された導電性微粒子群から成る極薄の配線(例えば厚さ10nm以下の配線)を形成することが容易である。親水性部分を含む分子全体がαへリックス構造であるポリペプチドが特に好ましい。かかるへリックス構造の線状ポリペプチドを規則的に配列することによって、より緻密なポリペプチド薄膜を形成することができる。
なお、使用する両親媒性ポリペプチドは、アミノ酸配列や鎖長に応じて、一般的に知られる化学合成或いは遺伝子工学的生合成によって作製することができる。かかるポリペプチドの合成法自体は本発明を何ら特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0016】
図1及び図2に、本発明の実施にあたって好適に用いられるポリペプチドの典型的な構造を模式的に示す。図1に示す線状ポリペプチド10は、軸方向に親水性部分12と疎水性部分14とが1区画ずつ並んで形成されている両親媒性ポリペプチド(以下「ジブロック型ポリペプチド」という。)である。他方、図2に示す線状ポリペプチド20は、1区画の親水性部分22を挟んでその軸方向の両側に疎水性部分24A,24Bが1区画ずつ形成されている両親媒性ポリペプチド20(以下「トリブロック型ポリペプチド」という。)である。これら線状のジブロック型ポリペプチド及びトリブロック型ポリペプチドを使用することにより、例えばラングミュア-ブロジェット法(以下「LB法」と略称する。)に基づいて、軸方向を揃えて配列した(好ましくは1軸配向した)単分子膜或いは累積膜、典型的には個々のポリペプチド分子の疎水性部分が相互に隣接して並列した単分子膜又は累積膜を容易に形成することができる。
特に限定することを意図したものではないが、以下の化学構造式1及び2でそれぞれ示されるポリペプチドは、本発明の実施に好ましく用いられる両親媒性ポリペプチドの好適例である。
【0017】
【化1】
JP0004324668B2_000002t.gif

【0018】
【化2】
JP0004324668B2_000003t.gif

【0019】
上記式1のポリペプチドは、アミノ酸無水物(NCA)の重合によって調製され得るポリ(ε-カルボベンゾキシL-リジン)-ポリ(γ-メチルL-グルタメート)(PLLZ25-PMLG60:ここで25,60はそれぞれ数平均重合度である。)のPMLGセグメントを部分的に加水分解して一部L-グルタミン酸(LGA)とすることによって得られ得るジブロック型ポリペプチド(PLLZ25-P(MLG42-LGA18))である。
このPLLZ25-P(MLG42-LGA18)は、典型的には軸方向の長さが12.8nm、疎水性部分(図1の符号14で示す部分)の長さが3.8nm、その直径が1.7nm、親水性部分(図1の符号12で示す部分)の長さが9.0nm、そしてその直径が1.2nmであり得る。
なお、このようなジブロック型ポリペプチドにおける疎水性部分及び/又は親水性部分の長さ(鎖長)は、当該部分を構成するアミノ酸残基数を調整することによって容易に変更することができる。また、疎水性部分及び/又は親水性部分における直径(分子構造の厚さ)は、当該部分を構成するアミノ酸残基の種類(側鎖の有無及びその大きさが影響する。)を変えることによって容易に変更することができる。
【0020】
一方、上記式2のポリペプチドは、アミノ酸無水物(NCA)の重合によって調製され得るポリ(L-ロイシン)-ポリ(γ-ベンジルL-グルタメート)-ポリ(L-ロイシン)(PLL54-PBLG80-PLL54:ここで54,80はそれぞれ数平均重合度である。)のPBLGセグメントを加水分解して全てL-グルタミン酸(PLGA)とすることによって得られ得るトリブロック型ポリペプチド(PLL54-PLGA80-PLL54)である。
このPLL54-PLGA80-PLL54は、典型的には軸方向の長さが28.2nm、疎水性部分(図2の符号24A,24Bで示す部分)の長さがそれぞれ8.1nm、その直径が1.3nm、親水性部分(図2の符号22で示す部分)の長さが12.0nm、そしてその直径が1.2nmであり得る。
なお、ジブロック型と同様、このようなトリブロック型ポリペプチドにおける各疎水性部分及び/又は親水性部分の長さ(鎖長)は、当該部分を構成するアミノ酸残基数を調整することによって容易に変更し得る。また、各疎水性部分及び/又は親水性部分における直径(分子構造の厚さ)は、当該部分を構成するアミノ酸残基の種類を変えることによって容易に変更することができる。
【0021】
次に、導電性微粒子について説明する。導電性微粒子としては、種々の電子部品において導体(電線、電極)を構成するものであれば特に制限なく使用し得る。例えば、金属、合金、カーボン(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、種々の導電性セラミック等から成るものが挙げられる。このうち、金属又は合金から成る導電性微粒子が好ましい。例えば、金、銀、銅、鉄、白金、パラジウム、ニッケル、クロム、亜鉛、コバルト、マグネシウム、アルミニウム等の金属、またはそれらの合金、またはそれら金属を構成要素とする金属酸化物が挙げられる。使用する微粒子は1種類でもよいし、同時に組成の異なる2種類以上を使用してもよい。
使用する導電性微粒子の平均粒子サイズ(顕微鏡観察、X線小角散乱法、光散乱法等に基づく平均粒径をいう。)は特に限定されないが、より微細な配線を作製するためには、使用する微粒子のサイズは小さいほうが望ましい。平均粒子サイズ100nm以下(例えば1~100nm)、特に平均粒子サイズ10nm以下(例えば0.5~10nm)のいわゆるナノ粒子(或いはクラスター)と呼ばれるサイズの微粒子を使用することが好ましい。平均粒子が異なる2種以上の微粒子を同時に使用してもよい。例えば、主ナノ粒子とそれよりも平均粒子サイズが1/4程度又はそれ以下の副ナノ粒子を同時に用いることによって、緻密な微細配線を形成することができる。
このようなナノ粒子は種々の方法で調製される。本発明では、液相合成法、気相合成法、粉砕法等によって調製されたナノ粒子を使用することができる。化学的還元法例えばアルコール還元法(即ち溶液中に含まれる有機金属化合物を多価アルコールで還元して金属核を発生させ、それを成長させて金属ナノ粒子を得る方法)、電解法、アトマイズ法等によって得られた鉄、金、銀、白金等の導電性金属ナノ粒子を好ましく使用することができる。
【0022】
導電性微粒子に疎水基を与える典型的な方法として、疎水基(典型的には炭素数が10以上の長鎖アルキル基のような炭化水素基)を有する有機化合物でナノ粒子の表面を修飾(被覆)することが挙げられる。例えば、鉄、銀等の導電性微粒子の表面を疎水基を有する両親媒性分子、典型的には界面活性剤(例えばオレイン酸、ステアリン酸のような高級脂肪酸)で表面修飾(被覆)することにより、本発明の実施に好適な疎水基を備えた導電性微粒子を得ることができる。
例えば、上記アルコール還元法に基づいて金属ナノ粒子を作製する際、反応溶液に高級脂肪酸等の界面活性剤(保護剤)を添加しておくことにより、当該界面活性剤で被覆された、即ち疎水基を表面に備えた金属ナノ粒子(クラスター)を得ることができる。
なお、導電性微粒子の調製方法及び該微粒子の表面修飾法は従来公知の方法に従えばよく、本発明を特徴づけるものではないため詳細な説明は省略する。
【0023】
本発明では、上述した両親媒性の線状ポリペプチドを使用して基材表面に規則的に配列させて当該ポリペプチドから成る薄膜を形成する。
ここで基材の材質、形状、サイズは特に限定されず、その表面に対象とするポリペプチドを配置(付着)し得るものであれば特に限定されない。種々のセラミック製、ガラス製、或いは金属製の基材(基板)を使用することができる。導電性金属微粒子由来の配線を作製しようとする場合、マイカ、アルミナ、シリカ等のセラミック製又はガラス製の基材の使用が好ましい。両親媒性ポリペプチドが付着し易くなるように、予め基材表面を前処理(例えばアルコキシシラン等の薬剤やプラズマ利用による親水化処理、例えばポリメチルシロキサン等のポリ(アルキル)シロキサン修飾処理)しておくことが好ましい。
【0024】
基材表面に両親媒性で線状のポリペプチドを規則的に配列してポリペプチド薄膜(ポリペプチド集合体)を形成する方法としては、単分子膜のような分子が規則配列した薄膜を形成する従来の方法をそのまま若しくは適宜修正して適用することができる。
例えば、LB法の適用が好ましい。この方法によると、線状(鎖状)ポリペプチドは、基材上に1軸配向し、基材水平方向にポリペプチドの疎水性部分が相互に隣接して並列させることができる。具体的には、先ず、両親媒性線状ポリペプチドを水又は適当な有機溶媒上に浮かせる。このとき、溶媒上のポリペプチドは、規則的に配列した状態、典型的には1軸配向した状態で単分子膜を形成する。その状態を維持しつつ、当該溶媒の表面(単分子膜形成層)に対して所定の基材を垂直に上げ下げする。このことにより、液面上の単分子膜を基材表面に転写・配置することができる。これにより、トリブロック型ポリペプチド20を使用した場合の例示である図3に示すように、基材の水平方向に両親媒性ポリペプチド20の疎水性部分24A,24Bが相互に隣接して並列するように軸方向を揃えて配列した(即ち1軸配向した)ポリペプチド集合体から成る単分子膜50を形成することができる。ジブロック型ポリペプチド(図1参照)を使用した場合も同様の単分子膜を形成することができる。そして、かかる液面から基材表面への単分子膜の転写・配置を繰り返すことによって単分子膜が累積した累積膜(LB膜)を形成することができる。なお、LB法自体は周知の方法であるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0025】
本発明の好ましい一態様では、上記のようにして疎水基を備えた導電性微粒子を基材上に形成したポリペプチド薄膜に供給し、該ポリペプチド薄膜の疎水性部分に導電性微粒子を付加する。典型的には従来公知の溶液キャスト法、スピンコート法等によって、ポリペプチド薄膜の疎水性部分に導電性微粒子を容易に付加することができる。例えば、適当な溶媒(ヘキサン等の無極性有機溶媒が好ましい)中に疎水基を備えた導電性微粒子を適当な濃度で分散した分散液を調製し、基材上のポリペプチド薄膜に該分散液の適量を滴下し、その後ゆっくりと溶媒を蒸発させることを特徴とするキャスト法が好適である。
これにより、トリブロック型ポリペプチド20から成るポリペプチド薄膜50Aを使用した場合の例示である図4に示すように、ポリペプチド薄膜50A上を分散した微粒子40がその表面にある疎水基を介して薄膜を構成するポリペプチド20の疎水性部分24A,24Bに疎水性相互作用により付加(吸着)される。
【0026】
あるいは、本発明の他の一態様として、基材上に薄膜を形成する前に、疎水基付き導電性微粒子をポリペプチドの疎水性部分に予め付与しておき、その後に当該微粒子付きポリペプチドをLB法等によって基材上に規則的に配列させてもよい。この態様は、ポリペプチド鎖が比較的長い一方で、使用する導電性微粒子の平均粒子サイズが比較的小さい場合に好適である。例えば、適当な溶媒(例えばヘキサン等の無極性有機溶媒)中に疎水基を備えた導電性微粒子を適当な濃度で分散した分散液に適量の両親媒性ポリペプチドを添加し、数分~数時間保持することによって、図6に示すように、両親媒性ポリペプチド(図ではトリブロック型ポリペプチド)の疎水性部分24A,24Bに導電性微粒子40が付与されたポリペプチド20Aを調製することができる。そして、得られたポリペプチド20Aを用いて上述したようなLB法等を行うことによって、基材上に規則的に配列した導電性微粒子付きポリペプチドから成るポリペプチド薄膜(典型的には1軸配向した単分子膜50A:図4参照)を形成することができる。
【0027】
以上のようにして基材上に作製されたポリペプチド薄膜では、図4に示すように、規則的に配列したポリペプチド疎水性部分24A,24Bに対応して導電性微粒子40から成るパターン即ち配線が形成されている。次いでこの状態となった基材を適当な条件で加熱し、ポリペプチド及び疎水基を含む薄膜構成有機成分を焼失(換言すれば導電性微粒子を焼成)することによって、図5に例示するような導電性微粒子40の集合体から成る微細配線60を基材上に作製することができる。
なお、加熱(焼成)条件は使用した導電性微粒子及び/又は基材の組成に応じて適宜設定すればよい。例えば、金や銀のような比較的低温で焼成するタイプの金属微粒子を用いた場合には、典型的には500~800℃程度に加熱する。また、白金、パラジウムのような比較的高温で焼成するタイプの金属微粒子を用いた場合には、1000~1300℃程度に加熱するとよい。加熱時の雰囲気は導電性微粒子の組成、製造しようとする電子部品(基材)の用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、金、銀等の貴金属から成る金属微粒子を使用した場合には典型的には大気中(酸素含有雰囲気)で加熱し、銅、鉄等の卑金属から成る金属微粒子を使用した場合には典型的には窒素等の非酸化的雰囲気で加熱する。
或いは、基材自体を加熱する手段に代えて、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザー光照射装置を用いて所定の波長のレーザー光を基材上に照射し、ポリペプチド及び疎水基を含む薄膜構成有機成分を消失(蒸散)させてもよい。かかるレーザー光照射によると、基材全体を加熱する必要がないため、より高精度の微細配線を形成することができる。かかる目的に、種々のレーザー加工装置(例えばレーザー焼入れ装置)、レーザーマーキング装置、レーザーメス等で使用されるレーザー光を適用することができる。
【0028】
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0029】
<実施例1>
アルコール還元法によって、長鎖アルキル基を備えた鉄ナノ粒子を調製した。すなわち、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)、1,2-ヘキサデカンジオール(還元剤)、オレイン酸(界面活性剤)およびジオクチルエーテル(高沸点有機溶媒)をそれぞれ適当量秤量して反応容器(マントルヒーター付きフラスコ)に充填した。スターラーを用いて溶液をよく撹拌しながらフラスコ内に不活性ガスとしてArガスを流してガス置換した。そして、溶液を有機溶媒の沸点近傍(ここでは286℃)まで還流・加熱した。かかるアルコール還元法の実施によって、表面がオレイン酸で被覆された平均粒子サイズ約7nmの鉄ナノ粒子を調製した。次いで、得られた鉄ナノ粒子を回収し、無極性有機溶媒(ここではn-ヘキサン)に再分散することにより、粒子濃度が1.41×10-7mol/Lである懸濁液を得た。
【0030】
一方、アミノ酸無水物(NCA)の重合体である疎水性ポリペプチドPLL54-PBLG80-PLL54のPBLGセグメントを完全加水分解し、式2に示すトリブロック型ポリペプチドPLL54-PLGA80-PLL54を得た。次いで、PLL54-PLGA80-PLL54をpH4に調整した水面上に展開してLB法を行い、PLL54-PLGA80-PLL54が1軸配向して成るポリペプチド薄膜(単分子膜)をマイカ製の基板(14mm×15mm)の表面に形成した。
【0031】
次に、上記鉄ナノ粒子懸濁液2~5μLをマイカ基板表面の上記薄膜に滴下(キャスト)した。その後、アスピレータを用いて基板を1時間ほど真空乾燥し、基板上のn-ヘキサンをほぼ完全に蒸発させた。
この処理の後、基板上に配置されている鉄ナノ粒子をAFM即ち原子間力顕微鏡(Digital Instrument社製品:Nanoscope IIIa(商標))を用いて観察した。ここでは、大気中タッピングモードで観測した。プローブは、タッピングモード用Si単結晶(Digital Instrument社製品:Nanoprobe TESP(商標)、カンチレバー長125μm)を用いた。観測結果のAFM画像(約100nm×100nm)を図7に示す。
図7に示すように、多数の微粒子が一定間隔をおいてレーン状に連結集合して存在することが明らかになった。また、そのレーン間隔は約31nmであった。この間隔は、テンプレートであった両親媒性ポリペプチドPLL54-PLGA80-PLL54から構成された単分子膜の縞間隔(29nm)にほぼ対応する値である。このことは、鉄ナノ粒子が疎水基(オレイン酸)を介して単分子膜中の疎水性部分に疎水性相互作用に基づいて選択的に吸着していることを示している。従って、本実施例において形成したLB法に基づく単分子膜は、その規則的配列構造ゆえに基材上に微細配線を形成するためのテンプレートとして好適であることが確認された。
AFM観測後、この基材を窒素雰囲気中、700℃以上に加熱し、有機成分を焼失させ、鉄ナノ粒子集合物の焼成体である微細配線(ナノ配線)がマイカ基板上に作製された。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】両親媒性線状ポリペプチドの好適例(ジブロック型ポリペプチド)を示す模式図である。
【図2】両親媒性線状ポリペプチドの好適例(トリブロック型ポリペプチド)を示す模式図である。
【図3】トリブロック型ポリペプチドから構成された単分子膜の構造を模式的に説明する図である。
【図4】トリブロック型ポリペプチドから構成された単分子膜に導電性微粒子が付与(吸着)された状態を模式的に説明する図である。
【図5】基材上に形成された導電性微粒子の集合体から成る微細配線を模式的に説明する図である。
【図6】トリブロック型ポリペプチド分子の疎水性部分に導電性微粒子が付与(吸着)された状態を模式的に説明する図である。
【図7】一実施例において得られたポリペプチド薄膜(単分子膜)における鉄ナノ粒子の配置状態を示す原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【符号の説明】
【0034】
10 両親媒性線状ポリペプチド(ジブロック型ポリペプチド)
20,20A 両親媒性線状ポリペプチド(トリブロック型ポリペプチド)
12,22 親水性部分
14,24A,24B 疎水性部分
40 導電性微粒子
50,50A ポリペプチド薄膜(単分子膜)
60 微細配線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6