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明細書 :技能訓練装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4336776号 (P4336776)
公開番号 特開2005-202067 (P2005-202067A)
登録日 平成21年7月10日(2009.7.10)
発行日 平成21年9月30日(2009.9.30)
公開日 平成17年7月28日(2005.7.28)
発明の名称または考案の名称 技能訓練装置
国際特許分類 G09B   9/00        (2006.01)
A63B  69/36        (2006.01)
G09B  19/00        (2006.01)
FI G09B 9/00 Z
A63B 69/36 Z
G09B 19/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2004-007207 (P2004-007207)
出願日 平成16年1月14日(2004.1.14)
審査請求日 平成19年1月10日(2007.1.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】藤本 英雄
【氏名】佐野 明人
審査官 【審査官】植野 孝郎
参考文献・文献 特許第2562786(JP,B2)
藤本英雄 他2名,アクティブメディアを用いたコーチによるスキル伝達,日本ロボット学会誌 March 2001 Vol.19 No.2,日本,社団法人日本ロボット学会,2001年 3月15日,第19巻第2号,p.77-84
藤本英雄 他2名,人間による倒立振子安定化における動特性獲得,日本機会学会 東海支部第50期総会講演会 講演論文集 No.013-1,日本,日本機会学会東海支部,2001年 3月 1日,p.47-48
海瀬直紀 他2名,GAによる倒立振子の反転倒立制御を行うNNの生成,人工知能学会全国大会(第12回)論文集,日本,社団法人人工知能学会,1998年 6月16日,p.663-666
調査した分野 G09B 9/00- 9/56
G09B19/00-19/26
A63B69/00-69/40
特許請求の範囲 【請求項1】
訓練者の動きを検出する動作検出手段と、
該動作検出手段による検出結果と予め設定された演算条件とに基づき、訓練者の動きを適正な動きに矯正するための第1矯正力を演算する演算手段と、
該演算手段にて演算された第1矯正力を発生して訓練者に与えることにより訓練者の動きを矯正する矯正手段と、
を備えた技能訓練装置において、
指導者が訓練者を直接指導している時に、訓練者に対して指導者により実際に加えられる第2矯正力を検出する第2矯正力検出手段と、
前記第2矯正力検出手段にて検出された第2矯正力と、前記動作検出手段による検出結果とをサンプリングして記憶するための記憶手段と、
外部から更新指令が入力された時に、該記憶手段にて記憶されたデータに基づき、前記演算手段にて算出される第1矯正力が訓練者に対して加えられる第2矯正力に近づくように、前記演算条件を更新する更新手段と、
前記矯正手段の動作停止及び停止解除を切り換えるためのスイッチ手段と、
を備え
前記スイッチ手段による前記矯正手段の停止解除時に、前記矯正手段が訓練者の動きを矯正するようになっており、
前記記憶手段は、前記スイッチ手段による前記矯正手段の動作停止時に、前記第2矯正力検出手段にて検出された第2矯正力と、前記動作検出手段による検出結果とをサンプリングして記憶することを特徴とする技能訓練装置。
【請求項2】
前記動作検出手段は、
訓練者の動きの1つとして、訓練者が動く際に発生する力を検出することを特徴とする請求項1に記載の技能訓練装置。
【請求項3】
当該技能訓練装置は、訓練者が操作対象物を操作する際の動きを矯正するためのもので、
前記動作検出手段は、訓練者の動きに加えて、操作対象物の動作状態を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の技能訓練装置。
【請求項4】
当該技能訓練装置は、訓練者が操作対象物を操作する際の動きを矯正するためのもので、
前記動作検出手段は、訓練者の動きに換えて、操作対象物の動作状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の技能訓練装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記動作検出手段にて検出された結果を入力とし、前記第1矯正力が出力となるようにニューロンと結合荷重との関係を記述した神経回路網モデルに則して、前記第1矯正力を演算し、
前記更新手段は、外部から更新指令が入力された時に、前記記憶手段にて記憶されたデータに基づき、前記演算手段にて算出される第1矯正力が訓練者に対して加える第2矯正力に近づくように、前記結合荷重を更新する、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の技能訓練装置。
【請求項6】
予め設定されたスケジュールに基づき、時間経過に応じて前記矯正手段の動作停止及び停止解除を前記スイッチ手段を用いて切り換える切換手段を備えることを特徴とした請求項1~請求項5のいずれかに記載の技能訓練装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の技能を習得するための技能訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツや、手術を行う際の技能等の各種技能の習得を目的として、訓練者が技能の訓練を行うための種々の技能訓練装置が知られている。
例えば、訓練者がゴルフクラブのスイングなどの所定動作をしている最中に、訓練者による運動パターンを測定する測定手段と、測定手段により測定された運動パターンと予め設定された目標運動パターンとを比較し、その誤差に応じて、目標運動パターンを実現するための刺激を訓練者に対して付与する刺激付与手段とを備えた技能訓練装置が知られている。倒立振子

【特許文献1】特許第2562786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の技能訓練装置にて訓練者が技能訓練のために行う動きについて、訓練者にとっての最適な運動パターンは、訓練者毎の体格や性格など種々の要因により変わるため、予め設定された目標運動パターンとの間に多少の違いがある場合がほとんどである。そして、この違いが大きい場合、目標運動パターンに合わせた動作をしようすると訓練者にとって無理な動きとなり、訓練者の体に負担がかかってしまうことが考えられる。
【0004】
これに対して、技能訓練装置の目標運動パターンを複数登録して、この目標運動パターンそれぞれを訓練者の体格や性格などの違いに対応するよう変更したものとすることにより、個人差に対応できるようにすることが考えられる。しかし、各訓練者に対してどの目標運動パターンが適しているか判断が難しいという問題が考えられる。
【0005】
一方、技能の習得のために従来から行われている方法として、習得させようとする技能に習熟した指導者が訓練者に対して手取り足取りで指導して、技能を伝承する方法が知られている。
【0006】
この方法であれば、指導者が、訓練者の体格、性格、その動作に対する熟練度などを感じ取って、訓練者に合った指導を行うため、訓練者は、訓練者に適した運動パターンの訓練ができ、技能の上達が早い。また、指導者により手取り足取りで指導される訓練は、力触覚を伴うため、技能のように訓練者自らが主体的に獲得する必要がある場合に効果が大きい。
【0007】
しかし、指導者により指導する方法の場合、優れた指導者は数が少なく、指導者一人が一度に指導できる訓練者の数が限定されるため、多くの訓練者を指導することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、指導者がいない時に、指導者により指導されているような訓練を行える技能訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の技能訓練装置においては、動作検出手段が、訓練者の動きを検出し、演算手段が、動作検出手段による検出結果と予め設定された演算条件とに基づき、訓練者の動きを適正な動きに矯正するための第1矯正力を演算し、矯正手段が、演算手段にて演算された第1矯正力を発生して訓練者に与えることにより訓練者の動きを矯正する。
【0010】
また、指導者が訓練者を直接指導している時には、第2矯正力検出手段が、訓練者に対して指導者により実際に加えられる第2矯正力を検出し、矯正手段の動作を停止している時には、記憶手段が、第2矯正力検出手段にて検出された第2矯正力と、動作検出手段による検出結果とをサンプリングして記憶する。そして、外部から更新指令が入力されると、更新手段が、記憶手段にて記憶されたデータに基づき、演算手段にて算出される第1矯正力が訓練者に対して加えられる第2矯正力に近づくように演算条件を更新する。
【0011】
この結果、本発明の技能訓練装置によれば、更新手段にて演算条件を変更することにより、訓練者に適した動作となるように指導者により加えられた第2矯正力に近い第1矯正力を、演算手段が演算して、矯正手段により訓練者に加えることができる。
【0012】
これにより、訓練者は、指導者がいない間も、指導者により指導を受けているのと同様の第1矯正力を受けて、訓練者に適した動作での技能訓練を行うことができる。そして、矯正力という力触覚を伴った訓練となるため、技能のような訓練者が主体的に技能を獲得する必要がある場合に対して、より効果的な訓練ができる。
【0013】
また、本技能訓練装置により、指導者が一人の訓練者に対して指導する時間を減らすことができ、指導者が指導できる訓練者の数を多くすることができる。
また、訓練者は、ある程度熟練度が上がると再度指導者による指導を受けて、この時に更新手段により演算条件を変更させることにより、訓練者の熟練度に応じた技能訓練を行うようにもできる。
【0014】
ところで、請求項1に記載の技能訓練装置において、動作検出手段にて検出する訓練者の動きとしては、訓練者の動作箇所の位置や速度など種々考えられるが、例えば、動作箇所の位置だけを訓練者の動きとして検出した場合、訓練者が動作を行おうとして力を加えると、この力による変位が検出されてから第1矯正力が加えられることになり、タイムラグが生じて違和感を生じることが考えられる。このため、第1矯正力を、違和感が無く指導者による第2矯正力に近づけるには、請求項2に記載のように、動作検出手段が、訓練者の動きの1つとして、訓練者が動く際に発生する力を検出するよう構成すると良い。
【0015】
つまり、このような構成によれば、演算手段にて第1矯正力を演算する際に基にする動作検出手段の検出結果に、訓練者が動く際に発生する力が含まれ、訓練者が発生した力に応じた第1矯正力を矯正手段から加えるようにできる。このため、訓練者に加えられる第1矯正力にタイムラグが無く、実際に指導者が訓練者の操作力を感じとって第2矯正力を加えている状態に近づけることができる。また、訓練者は、第1矯正力を受けると、動きを補正するため、訓練者の動きによる力と、訓練者への第1矯正力との間に、双方向性を持たせることができる。
【0016】
尚、ここでの動作検出手段が検出する力は、訓練者の力そのものであってもよいし、訓練者の動きの加速度などから推測されるものであってもよい。
但し、動作検出手段が、訓練者が動く際に発生する力の検出や推測をせず、訓練者の動きとして訓練者の動作箇所の位置や速度だけを検出し、演算手段が、この検出結果を基に第1矯正力を演算するよう構成してもよい。このようにすれば、訓練者が動いた時に矯正手段によって第1矯正力が加えられるようにできる。これにより、例えば、指導者の手に訓練者の手を添えて、訓練者が指導者の動きをトレースするような訓練を行うことができる。このような訓練は、訓練者の熟練度が低い場合や動きに癖がある場合などに効果がある。このように、訓練者の性格や熟練度などに応じて、訓練者の動作力を演算手段にて第1矯正力を演算する際の基にするか否かを切り換えて訓練できるようにすると良い。
【0017】
また、請求項1又は請求項2に記載の技能訓練装置は、訓練者が操作対象物を操作する時の訓練者の動きを矯正するためのものである場合に、請求項3に記載のように、動作検出手段を、訓練者の動きに加えて、操作対象物の動作状態を検出するように構成すると良い。
【0018】
つまり、このように構成すれば、演算手段への入力に操作対象物の動作状態が含まれ、操作対象物の動作状態に応じて適正な第1矯正力を訓練者に加えることができる。
例えば、野球におけるバットのスイング動作の訓練を行うための技能訓練装置にて、単なる素振りでは無く、実際に球を打つときのスイング動作の訓練を行う場合に、操作対象物である球の軌道を検出することにより、この球の軌道に応じて訓練者のスイング動作が適正な動作になるように第1矯正力を加えることができる。
【0019】
尚、本発明の技能訓練装置は、技能訓練が目的であるため、操作対象物は実際の物で無くても良く、操作対象物の動作状態は、実際の操作対象物の動作状態を検出したもの以外に、仮想の操作対象物の動作状態を推測したものであっても良い。
【0020】
また、請求項1に記載の技能訓練装置は、訓練者が操作対象物を操作する際の動きを矯正するためのものである場合に、動作検出手段を、訓練者の動きに換えて、操作対象物の動作状態を検出するように構成しても良い。
【0021】
つまり、このように構成すれば、訓練者の動きに影響されず、操作対象物の動きにのみに応じて第1矯正力が加えられるようにできる。これにより、操作対象の動きに対する指導者によるお手本となる動きをトレースするような訓練を行うことができる。
【0022】
また、請求項1~請求項4に記載の技能訓練装置における演算手段による演算方法は種々あり、例えば、訓練者の動きと第1矯正力との関係を関数や条件式により表した演算条件を用いる方法が考えられる。しかし、人間の動きを入力とする場合、通常、複数箇所の位置、速度、加速度、及び、力の要素が入力項目となり、この入力項目それぞれが互いに絡み合って第1矯正力に影響を及ぼすため、演算条件は、複雑且つ多数となることが多く、このような演算手段及び更新手段の設計は大変である。このため、演算手段及び更新手段を設計し易くするには、請求項5に記載のように構成すると良い。
【0023】
即ち、請求項5に記載の技能訓練装置においては、動作検出手段にて検出された結果を入力とし、第1矯正力が出力となるようにニューロンと結合荷重との関係を記述した神経回路網モデルに則して、演算手段が第1矯正力を演算し、更新手段が、外部から更新指令が入力された時に、記憶手段にて記憶されたデータに基づき、演算手段にて算出される第1矯正力が訓練者に対して加える第2矯正力に近づくように結合荷重を更新する。
【0024】
この結果、本発明(請求項5)によれば、演算手段を容易に設計することができる。つまり、神経回路網モデル(いわゆるニューラルネットワークモデル)は、ニューロンのつながりを種々組み合わせて記述するものであり、各入力が互いに影響しあう状態を、各入力が入力されたニューロンや、その他のニューロンをつなぎ合わせるだけで容易に記述することができる。また、更新の方法は、周知の方法がいくつかあり、これに基づいて更新すればよく、更新手段の設計を容易にすることができる。
【0025】
一方、技能の訓練を行う際は、四六時中指導者が付いて矯正力を加えているよりも、ある程度の時間毎に、自分だけで訓練を行う期間がある方が、上達の度合いが高いことが知られている。
【0026】
この訓練方法を実現するために、請求項1~請求項5に記載の技能訓練装置を、請求項6に記載のように、予め設定されたスケジュールに基づき、切換手段が、時間経過に応じて矯正手段の動作停止及び停止解除を切り換えるように構成すると良い。
【0027】
このような構成によれば、スケジュールを、矯正手段により第1矯正力を加える期間と、第1矯正力を加えない期間とが交互に生じるよう設定して、訓練の効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は、実施例の技能訓練装置の全体構成を表し、図2は、実施例の技能訓練装置による動作を機能ブロックで表した説明図である。
【0029】
本実施例の技能訓練装置は、仮想空間において1軸方向に移動する台の上に置かれ、1軸方向に移動可能な棒状の仮想倒立振子を、仮想倒立振子が倒れようとする方向へ台を移動して倒れないようにする技能を訓練者Pが訓練し習得するための装置である。つまり、鉛筆や、箒の柄など細長い棒状の倒立振子の一端を手の平の上に置き、この倒立振子が倒れないように手を動かす遊びを模擬したものであり、この遊びを通じて得られるバランス感覚などを獲得するための装置である。
【0030】
本実施例の技能訓練装置は、図1に示すように、仮想倒立振子33aが投影されるスクリーン33と、仮想倒立振子33aの体勢などを演算する演算用コンピュータ10と、この演算結果を基に画像信号を生成する表示用コンピュータ31と、この画像信号による映像をスクリーン33へ投射するプロジェクタ32と、スクリーン33の手前に配設されたステータ28と、そのステータ28上に設けられたスライダ27と、スライダ27を駆動するためのドライバ29とで構成されている。
【0031】
そして、スライダ27には、訓練者Pがスライダ27を操作するためのハンドル21と、訓練者Pの操作を指導者Tが矯正するためのハンドル22と、2つのフォースセンサ23,24と、レゾルバ25とが設けられている。そして、フォースセンサ23,24及びレゾルバ25は、A/D変換器41を介して演算用コンピュータ10に接続されている。
【0032】
尚、スライダ27は、ステータ28により図1中の左右方向に移動可能に保持され、ステータ28とでダイレクトドライブのリニアモータを構成し、ドライバ29からの駆動信号に応じてステータ28上を左右方向に移動するための第1矯正力fcを発生する。
【0033】
また、ドライバ29は、演算用コンピュータ10からの指令信号を受け、この信号に応じた第1矯正力fcをスライダ27に発生させるための駆動信号を出力するよう構成されている。
【0034】
また、レゾルバ25は、1軸方向の位置を検出するセンサで構成され、ステータ28に対するスライダ27の位置xを検出する。
また、フォースセンサ23,24は、アルミニウム合金製で平行平板構造を有する力センサなどにより力を検出するセンサで構成されている。そして、フォースセンサ23はハンドル21、フォースセンサ24はハンドル22に加わる図1中の左右方向の力を検出する。つまり、フォースセンサ23は、訓練者Pによるハンドル21の操作力flを検出し、フォースセンサ24は、指導者Tによるハンドル22への第2矯正力ftを検出する。
【0035】
また、A/D変換器41は、アナログ信号をデジタル信号に変換するよう構成され、スライダ27に設けられた各センサからの出力を所定時間毎にサンプリングしてデジタルデータに変換したものをバッファメモリに保存して、演算用コンピュータ10へ出力する。
【0036】
また、表示用コンピュータ31は、一般的なパーソナルコンピュータなどで構成され、演算用コンピュータ10にて演算された仮想倒立振子33aの体勢の情報を受けて、仮想倒立振子33aの画像データを生成する。
【0037】
また、プロジェクタ32は、表示用コンピュータ31にて生成された画像データを映像化し、スクリーン33に投射する。
また、スクリーン33は、所定の透過性を持った白い板などで構成され、プロジェクタ32により後方から投射された映像を透過して、前面に表示する。
【0038】
また、演算用コンピュータ10は、一般的なパーソナルコンピュータなどで構成され、図2に示すように、仮想現実演算モジュール(以降Vrモジュールと呼ぶ。)12、コーチ用ニューラルネットワークモジュール(以降、Ncモジュールと呼ぶ。)11、スケジュールモジュール13、及び、学習モジュール15がソフトウエアで形成されている。
【0039】
尚、Vrモジュール12は、予め設定された形状、及び、質量の仮想倒立振子33aの体勢を逐次演算するよう構成され、レゾルバ25から入力されたスライダ27の位置xを微分してスライダ27の速度vを求め、仮想倒立振子33aの下端を、この位置x及び速度vに変化させた時の仮想倒立振子33aの体勢を演算し、仮想倒立振子33aの鉛直方向に対する傾きθ、及び、傾く際の角速度ωを求める。そして、Vrモジュール12で求めた各状態量は、Ncモジュール11及び表示用コンピュータ31へ出力される。
【0040】
また、Ncモジュール11は、図3に示すように、入力層が8つのユニット51からなり、中間層が8つのユニット51からなり、出力層が1つのユニット51からなるニューラルネットワークモデルを形成し、スライダ27の位置xと、Vrモジュール12で演算された、スライダ27の速度v、仮想倒立振子33aの傾きθ、及び、角速度ωと、フォースセンサ23にて検出された訓練者Pの操作力flと、Ncモジュール11に設けられた入力バッファに所定時間(例えば、A/D変換器でのサンプリングタイム10msecの5回分である50msec)前に保存された過去速度vo、過去角速度ωo、及び、過去操作力floとが入力層の各ユニット51へ入力される。
【0041】
そして、入力層の8つのユニット51それぞれからの出力が、中間層の8つのユニット51それぞれに入力され、中間層の8つのユニット51それぞれからの出力が、出力層のユニット51に入力されて、出力層のユニット51からの出力に、スライド27にて発生する第1矯正力fcを求めた矯正力信号fcsがドライバ29への指令信号として出力される。
【0042】
また、Ncモジュール11は、フォースセンサ24にて検知された指導者Tの第2矯正力ftを教示信号として入力する。
尚、各ユニット51には、信号の伝達率を決める結合荷重52が入力端毎に設定されている。そして、各ユニット51は、入力された値各々に結合荷重52の値を各々乗じて加算した値を求め、この値を入力として、予め設定された出力関数により求まる値を出力する。また、中間層のユニット51の出力関数にはシグモイド関数、出力層のユニット51の出力関数には線形関数が用いられている。
【0043】
また、入力層に入力される所定時間(50msec)前の過去速度vo、及び、過去角速度ωoは、スライダ27の加速度及び仮想倒立振子33aの角加速度が入力された状態を近似するためのものとして入力層に入力している。
【0044】
また、演算用コンピュータ10には、図示しない外部記憶装置が設けられている。そして、演算用コンピュータ10は、結合荷重52それぞれに設定された値を、この外部記憶装置に記憶させることができ、当該装置を使用する訓練者P毎に、結合荷重52の値を記憶されたものと切り換えることができるようになっている。
【0045】
また、スケジュールモジュール13には、Ncモジュール11の出力層からドライバ29への矯正力信号fcsの伝達を遮断するスイッチ14、及び、訓練者Pが訓練を行うタイムテーブルが設けられている。そして、スケジュールモジュール13は、このタイムテーブルに基づき、矯正力信号fcsの断続を切り換える。また、スイッチ14は、演算用コンピュータ10のキーボードなどによる外部からの操作入力によっても、スイッチ14の断続が切り換えられる。
【0046】
また、学習モジュール15は、演算用コンピュータ10のキーボードなどによる外部操作により学習コマンドが入力されると、図4のフローチャートに示すような処理(詳細は後述する)を行い、Ncモジュール11の出力層からの矯正力信号fcsが教示信号と同じになるように、各結合荷重52の値を更新して学習させる。
【0047】
このような倒立振子安定化訓練装置1を用いて仮想倒立振子33aを倒さないようにする訓練を行う際の動作を説明する。
まず、演算用コンピュータ10のスイッチ14を外部操作により切った状態にして、訓練者Pが、スクリーン33の前に立って、ハンドル21を操作し、スライダ27を移動する。すると、レゾルバ25にて検出されたスライダ27の位置xを基に、Vrモジュール12にてスライダ27の速度v、及び、仮想倒立振子33aの体勢が演算され、スクリーン33に表示された仮想倒立振子33aの下端部が、スライダ27の移動量と同量移動される。
【0048】
このとき、ハンドル21を何も操作しないと、仮想倒立振子33aは、時間経過と共にその傾きθが増して倒れてしまう。そして、訓練者Pが、ハンドル21を仮想倒立振子33aの傾き方向へ移動すると、仮想倒立振子33aの傾きが少なくなる。このように、ハンドル21を常に仮想倒立振子33aの傾き方向へ移動することにより、仮想倒立振子33aが立った状態を維持できる。
【0049】
但し、仮想倒立振子33aは、ハンドル21の移動量が大きすぎると逆方向へ傾くことになる。また、傾きθと同じ方向へハンドル21を移動してしまうと、傾きθが増して倒れやすくなる。このように、仮想倒立振子33aを安定化するためには、訓練者Pが、適切なタイミングと力加減とでハンドル21を左右へ操作する必要がある。
【0050】
このような訓練者Pだけの操作に対して、外部操作によりスイッチ14を接続して矯正力信号fcsがドライバ29に入力されるようにすると、訓練者Pによるハンドル21の操作力fl及び仮想倒立振子33aの体勢に応じてNcモジュール11にて演算された第1矯正力信号fcsがドライバ29へ出力されて、スライダ27にて第1矯正力fcが発生する。そして、スライダ27は、この第1矯正力fcと、訓練者Pによる操作力flとの合力の分だけ移動する。
【0051】
この時、後述する学習モジュール15によるNcモジュール11の更新がなされていれば、訓練者Pによる操作力flが不適切な方向に加わったとしても、これを矯正するような力が第1矯正力fcにより加わり、仮想倒立振子33aが立った状態が維持される。
【0052】
このようにすると、第1矯正力fcが、ハンドル21を介して訓練者Pにも伝わり、訓練者Pは、自分の操作ミスを認識して、正しいタイミング及び力加減を知ることができる。
【0053】
また、スイッチ14を外部操作により切った状態にして、訓練者Pがハンドル21を操作中に、訓練者Pが不適切な操作を行うと、ハンドル操作のタイミング及び力加減を知っている指導者Tが、ハンドル22に第2矯正力ftを加えて、仮想倒立振子33aが倒れないようにスライダ27を移動させるようにして訓練を行うこともできる。
【0054】
次に、スイッチ14により矯正力信号fcsが遮断された状態の時に行われる学習モジュール15によるNcモジュール11の更新について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0055】
まず、S110にて、Ncモジュール11の入力層への入力となるデータ、及び、指導者Tの第2矯正力ftのデータを、A/D変換器41のバッファメモリから取得する。
尚、この時取得されるデータは、スイッチ14により矯正力信号fcsが遮断され、訓練者Pが指導者Tによる指導を受けて訓練している時の仮想倒立振子33aが倒れていない間の各センサのデータであって、この訓練中に入力されるデータであっても良いし、この訓練中のデータをデータレコーダなどにより予め記録したものが再生されたデータであっても良い。
【0056】
次に、S120にて、S110で取得したデータをNcモジュール11の入力層へ入力する。すると、この入力信号がNcモジュール11の中間層へ各ユニットの結合荷重に応じて伝達されて、更に出力層へ伝達された信号が出力される。
【0057】
次に、S130にて、Ncモジュール11の出力層からの出力と、教師信号との差分を求める。
次に、S140にて、出力層から入力層までの結合荷重52各々を、バックプロバゲーション法(詳しくは、「ニューラルネットワークコンピュータ脳と神経に学ぶ」合原一幸著、東京電機大学出版局発行に説明あり。)により、S130で求められた差分が「0」となるように更新する。
【0058】
次に、S150にて、入力層に別のタイミングのデータを入力し、このときの出力層の出力と、教師信号との比較を行う。
次に、S160にて、S150での比較結果が、予め設定された十分小さいと考えられる規定値より小さければ、収束したと判断して処理を終了し、この規定値より大きければS120へ戻り、処理を繰り返す。
【0059】
つまり、このような処理を行うことにより、各入力をパラメータとして、種々の状況において指導者Tにより第2矯正力ftが加えられる条件を、結合荷重52を更新して学習し、Ncモジュール11から出力する矯正力信号fcsにより発生する第1矯正力fcを、指導者Tが加える第2矯正力ftに近づけることができる。
【0060】
ちなみに、本実施例では、仮想倒立振子33aを15秒間倒立を維持した時の200個データにより、バックプロバゲーション法による約1000回の学習を行うことにより、指導者Tの動作を近似したニューラルネットワークモデルが得られている。
【0061】
以上のように、本実施例の技能訓練装置によれば、指導者Tが訓練者Pを指導している時のデータを基に、学習モジュール15にてNcモジュール11の結合荷重52を更新する(つまり、学習させる。)ことにより、Ncモジュール11からの矯正力信号fcsにより訓練者Pに加える第1矯正力fcを、指導者Tが指導している時の第2矯正力ftと同様にできる。これにより、指導者Tがいない時でも、指導者Tが指導している状態と同様の訓練を行うことができる。
【0062】
そして、Ncモジュール11への入力に、訓練者Pの操作力flが含まれているため、訓練者Pの操作力flの状態に応じて第1矯正力fcの大きさが変わり、指導者Tにより手取り足取りで指導されているような感覚での訓練ができる。
【0063】
また、指導者Tが訓練者Pのハンドル操作を補正する場合、指導者Tは訓練者Pの体格や性格などの個性を考慮して矯正力を加えるため、指導者Tの動作をNcモジュール11に学習させることにより第1矯正力fcを訓練者Pの個性が考慮されたものにすることができる。
【0064】
また、スケジュールモジュール13により、所定の期間毎に、Ncモジュール11からの出力を遮断し、第1矯正力fcが加わらないようにすることにより、ある程度の訓練時間毎に、訓練者Pだけで訓練を行う期間が設けられて、技能訓練を行う際、四六時中指導者が補正しているよりも、上達の度合いを高めることができる。
【0065】
また、訓練者Pに、ある程度の技能の上達が認められる時点に、指導者Tによる再指導を行い、Ncモジュール11を更新することにより、熟練度が向上した訓練者Pに対して、訓練者Pの熟練度に応じた矯正力が加わるようにでき、技能の熟練度にあった訓練を行うようにできる。
【0066】
[本発明との対応関係]
本実施例のフォースセンサ23、レゾルバ25、Vrモジュール12が、本発明の動作検出手段に相当し、Ncモジュール11が、演算手段に相当し、スライダ27及びドライバ29が矯正手段に相当し、フォースセンサ24が、第2矯正力検出手段に相当し、A/D変換器41が、記憶手段に相当し、学習モジュール15が更新手段に相当し、スケジュールモジュール13が切換手段に相当する。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、このほかにも様々な形態で実施することができる。
【0067】
本実施例では、力を加える方向が1軸方向だけの仮想倒立振子33aを倒さないようにする訓練を行う装置について説明したが、これに限らず、複数の動作箇所に対して複数の矯正力を加えるように構成された装置であっても良い。例えば、訓練者Pの腕や肩などの各関節の動きに対応したセンサ及びアクチュエータと、指導者Tによる第2矯正力ftを検出するセンサとを設けて、この訓練者Pのセンサ出力をNcモジュール11の入力層へ入力し、Ncモジュール11の出力層に複数のユニット51を設けて、前述のアクチュエータを駆動するよう構成された技能訓練装置であっても良い。このような技能訓練装置によれば、野球やゴルフのスイングの訓練などのより複雑な動作に対して、指導者により矯正力が加えられる状態を模擬した訓練を行うことができる。その他、指先の動きを検出し、この指先に矯正力を加えることができるようにして、手術の技能などを訓練するための技能訓練装置などであっても良い。
【0068】
また、本実施例では、フォースセンサ23により検出した訓練者Pの操作力flを、Ncモジュール11の入力層への入力の1つとしているが、操作力fl,floをNcモジュール11の入力層へ入力しないように構成したものであってもよい。
【0069】
このようにすれば、Ncモジュール11からの矯正力信号fcsにより訓練者Pに対して発生する第1矯正力fcが、訓練者Pの操作力flに関係無く発生するようにできる。これにより、指導者Tの手に、訓練者Pの手を添えて、訓練者Pが指導者Tの動きをトレースするような訓練を行うことができる。
【0070】
このような訓練は、訓練者の熟練度が低い場合や、癖がある場合などに効果がある。
更に、Ncモジュール11の入力層への入力として、スライダ27の位置x、スライダ27の速度v、及び、過去速度voも入力されず、仮想倒立振子33aの傾きθ、角速度ω、及び、過去角速度ωoといった操作対象物に関する動作状態だけを入力するよう構成されたものであっても良い。このように、訓練者Pの動きには影響せず、指導者Tが仮想倒立振子33aの操作を行っている動きをそのままトレースするような訓練を行うことができる。
【0071】
また、本実施例では、仮想倒立振子33aという操作対象物を操作する技能のため、Ncモジュール11の入力層への入力に仮想倒立振子33aの体勢に関する情報を入力しているが、野球などでの単なる素振りの訓練や、踊りの訓練など、操作対象物が無く、操作対象物の状態の情報がNcモジュール11に入力されない技能訓練装置であっても良い。
【0072】
また、本実施例では、Ncモジュール11がニューラルネットワークモデルを形成するように構成されているが、これに限らず、例えば、指導者Tが訓練者Pを指導している時のデータを解析して、仮想倒立振子33aの傾きθ、角速度ω、ハンドル21の位置x及び速度vを変数として第1矯正力fcを求めるための関数及び条件式を学習モジュール15により設定し、この関数及び条件式で、ハンドル21及び仮想倒立振子33aの状態での矯正力信号fcsを出力するようNcモジュール11を構成したものであっても良い。
【0073】
但し、この場合の関数及び条件式は、複雑且つ多岐に渡るものとなり、学習モジュール15でのデータ解析は容易なものでは無く、Ncモジュール11の設計に多量の労力を要する。これに対して、本実施例のようにニューラルネットワークモデルを形成する場合、ニューラルネットワークモデルは、基本的にニューロンのつながりを種々組み合わせて記述するものであり、各入力が互いに影響しあう状態を、各入力が入力されたニューロンや、その他のニューロンをつなぎ合わせるだけで容易に記述することができる。また、指導者Tにより訓練者Pを指導している通常の訓練時のデータでNcモジュール11を、周知の方法で容易に学習させることができる。また、実際の訓練時のデータがそのまま反映されるため指導者Pによる第2矯正力ftに近い第1矯正力fcを訓練者Pに加えるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施例の倒立振子安定化訓練装置1の全体構成を表す図である。
【図2】本実施例の倒立振子安定化訓練装置1の動作を表すブロック図である。
【図3】本実施例のNcモジュール11の構造を表す図である。
【図4】本実施例のNcモジュール11を学習する処理を表すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0075】
1…倒立振子安定化訓練装置、10…演算用コンピュータ、11…コーチ用ニューラルネットワークモジュール、12…仮想現実演算モジュール、13…スケジュールモジュール、14…スイッチ、15…学習モジュール、21,22…ハンドル、23,24…フォースセンサ、25…レゾルバ、27…スライダ、28…ステータ、29…ドライバ、31…表示用コンピュータ、32…プロジェクタ、33…スクリーン、41…A/D変換器、51…ユニット、52…結合荷重。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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