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明細書 :光学活性ビスオキサゾリン化合物、光学活性遷移金属錯体化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4892674号 (P4892674)
公開番号 特開2005-255593 (P2005-255593A)
登録日 平成24年1月6日(2012.1.6)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明の名称または考案の名称 光学活性ビスオキサゾリン化合物、光学活性遷移金属錯体化合物
国際特許分類 C07D 263/16        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07F   1/08        (2006.01)
C07F  15/00        (2006.01)
C07F  15/02        (2006.01)
C07F  15/04        (2006.01)
C07F  15/06        (2006.01)
FI C07D 263/16
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
C07F 1/08 C
C07F 15/00 A
C07F 15/00 C
C07F 15/02
C07F 15/04
C07F 15/06
C07B 61/00 Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 22
出願番号 特願2004-067752 (P2004-067752)
出願日 平成16年3月10日(2004.3.10)
審査請求日 平成19年3月5日(2007.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】増田 秀樹
【氏名】實川 浩一郎
【氏名】松本 健司
審査官 【審査官】新留 素子
参考文献・文献 中国特許出願公開第1429822(CN,A)
Tetrahedron: Asymmetry,2004年,Vol.15,pp.119-126
調査した分野 C07D 263/16
C07B 53/00
C07B 61/00
C07F 1/08
C07F 15/00
C07F 15/02
C07F 15/04
C07F 15/06
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
JP0004892674B2_000009t.gif



(R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、NRであり、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数2~20のアルケニル基である。全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で示され光学活性ビスオキサゾリン化合物。
【請求項2】
前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方が炭素数1~20のアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方がイソプロピル基またはtert-ブチル基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
下記一般式(2)
【化2】
JP0004892674B2_000010t.gif



(R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1および全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で示される光学活性なアミノアルコールと、
下記一般式(3)
【化3】
JP0004892674B2_000011t.gif



(R3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す。全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で示されるマロン酸誘導体と、
を反応させて、
下記一般式(1)
【化4】
JP0004892674B2_000012t.gif



(R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で示される光学活性ビスオキサゾリン化合物を製造する方法。
【請求項5】
少なくとも一つの遷移金属化合物と、
一般式(1)
【化5】
JP0004892674B2_000013t.gif



(R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、NRであり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数2~20のアルケニル基である。全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で示される光学活性ビスオキサゾリン化合物と、
からなる遷移金属錯体化合物。
【請求項6】
前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方が炭素数1~20のアルキル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方がイソプロピル基またはtert-ブチル基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記遷移金属化合物における遷移金属原子は、銅、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、およびパラジウムからなる群から選択されるいずれかである、請求項5~7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
不斉炭素-炭素結合生成反応の触媒である、請求項5~8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
ディールスアルダー反応の触媒である、請求項5~8のいずれかに記載の化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性ビスオキサゾリン化合物、それを用いた光学活性遷移金属錯体化合物関する。
【背景技術】
【0002】
近年における工業的な合成プロセスは、環境に配慮した方法によって行うことが重要視されてきている。特に、触媒を用いた合成手法は、通常では困難な反応を温和な条件でかつ高効率で行うことができるため有用である。なかでも、不斉配位子-金属錯体化合物による触媒的な不斉合成は、有用な不斉化合物を大量に合成する上で特に重要なものとなっている。図5に示すビスオキサゾリン配位子-金属錯体化合物は、ディールスアルダー反応やシクロプロパン化といったC-C結合生成を初め、酸化反応、還元反応、ポリマー化等の様々な合成反応の触媒となるためそのような不斉触媒の代表的なものである(特許文献1)。
【0003】
一方、ビスオキサゾリン配位子-金属錯体触媒による不斉ディールスアルダー反応においては、適用できるジエンと求ジエン体に制限があった。不斉ディールスアルダー反応の対象を拡大する試みとしては、高温や強いルイス酸などを用いる手法が主として行われていた(非特許文献1)。

【特許文献1】特開2003-12675号
【非特許文献1】Kinsman,A.C.;Kerr,M.A.Org.Lett.2000,2,3517-3520
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、従来十分に触媒することができなかったジエンと求ジエン体との不斉ディールスアルダー反応を温和な条件下で実施するには、新たなビスオキサゾリン金属錯体触媒が必要であると考え、なかでも新たな反応場を形成可能することが必要であると考えた。しかしながら、現在までのところ、ビスオキサゾリン配位子では、主にアミノ酸側鎖由来の置換基(脂肪族や芳香炭化水素)で不斉な反応場が構築されており、その反応場の設計自由度は低いものであり、また、このような状況にもかかわらず、これらの置換基以外の置換基を不斉反応場に供給するという試みはなされていなかった。また、そのような化合物の合成方法も知られていない。
【0005】
本発明の一つの目的は、新規な光学活性なビスオキサゾリン化合物及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の一つの目的は、当該光学活性なビスオキサゾリン化合物を配位子とする遷移金属錯体触媒を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討の結果、ビスオキサゾリン配位子に修飾可能な官能基としてカルボキシル基を付与し、そして、当該カルボキシル基において種々の置換基を導入することでビスオキサゾリン化合物のオキサゾリン環の4位近傍に新たな置換基を備える新規な光学活性ビスオキサゾリン化合物を合成することに成功した。さらに、この新規な光学活性ビスオキサゾリン化合物によれば、従来にない活性を発揮しうる不斉合成の反応場を提供できるという知見を得て本発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0007】
本発明によれば、
下記一般式(1)
【化7】
JP0004892674B2_000002t.gif
(R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で示される光学活性ビスオキサゾリン化合物が提供される。
【0008】
この光学活性ビスオキサゾリン化合物においては、前記一般式(1)中のXはNRであり、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましい。また、前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方が炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、さらに、前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方がイソプロピル基またはtert-ブチル基であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、
下記一般式(2)
【化8】
JP0004892674B2_000003t.gif
(R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1および全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で示される光学活性なアミノアルコールと、
下記一般式(3)
【化9】
JP0004892674B2_000004t.gif
(R3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す。全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で示されるマロン酸誘導体と、
を反応させて、
下記一般式(1)
【化10】
JP0004892674B2_000005t.gif
(R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で示される光学活性ビスオキサゾリン化合物を製造する方法も提供される。
【0010】
また、本発明によれば、少なくとも一つの遷移金属化合物と、
一般式(1)
【化11】
JP0004892674B2_000006t.gif
(R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で示される光学活性ビスオキサゾリン化合物と、
を含有する不斉遷移金属錯体化合物も提供される。
【0011】
この不斉遷移金属錯体化合物においては、前記一般式(1)中のXはNRであり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましい形態であり、また、前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方が炭素数1~20のアルキル基であることがさらに好ましい形態である。また、前記RおよびRは、一方が水素原子であり他方がイソプロピル基またはtert-ブチル基であることが好ましい形態である。また、前記遷移金属化合物における遷移金属原子は、銅、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、およびパラジウムからなる群から選択されるいずれかであることが好ましい形態である。より好ましくは、銅である。前記遷移金属化合物は、配位子交換が容易に進行する性質をもった配位子を有することが好ましく、銅(II)トリフラートである。これらの不斉遷移金属錯体化合物は、不斉炭素-炭素結合生成反応の触媒であることが好ましく、より好ましくは、ディールスアルダー反応の触媒である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
(光学活性ビスオキサゾリン化合物)
本発明の光学活性ビスオキサゾリン化合物は、上記一般式(1)で示される。当該一般式(1)におけるR1、R2、およびR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1、全てのR2、および全てのR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。
【0014】
かかるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0015】
1、R2、またはR3のアルキル基もしくはアルケニル基としては炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素数2~20のアルケニル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、プロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ブテニル基、イソブテニル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n-ヘキシル基、n-ヘキセニル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基などが挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはアミル基である。
【0016】
これらのアルキル基やアルケニル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、トリクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロブテニル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、などが挙げられる。またこれらのアルキル基およびアルケニル基はいずれも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0017】
1、R2、またはR3のシクロアルキル基としては炭素原子数3~20のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などが挙げられ、より好ましくはシクロプロピル基、シクロヘキシル基である。
【0018】
これらのシクロアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された炭素原子数3~20のシクロアルキル基としては、例えばフルオロシクロプロピル基、ジフルオロシクロプロピル基、トリフルオロシクロプロピル基、パーフルオロシクロペンチル基等を挙げられる。またこれらのシクロアルキル基はいずれも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0019】
1、R2、またはR3のアリール基としては炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、2-トリル基、3-トリル基、4-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、2,3,5,6-テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、n-ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、n-オクチルフェニル基、n-デシルフェニル基、n-ドデシルフェニル基、n-テトラデシルフェニル基、4-エテニルフェニル基、4-プロペニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、より好ましくはフェニル基である。これらのアリール基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0020】
1、R2、またはR3のアリールアルキル基としては炭素原子数7~20のアリールアルキル基が好ましく、例えばベンジル基、(2-メチルフェニル)メチル基、(3-メチルフェニル)メチル基、(4-メチルフェニル)メチル基、(2,3-ジメチルフェニル)メチル基、(2,4-ジメチルフェニル)メチル基、(2,5-ジメチルフェニル)メチル基、(2,6-ジメチルフェニル)メチル基、(3,4-ジメチルフェニル)メチル基、(4,6-ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6-トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5-トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n-プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n-ブチルフェニル)メチル基、(sec-ブチルフェニル)メチル基、(tert-ブチルフェニル)メチル基、(n-ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n-ヘキシルフェニル)メチル基、(n-オクチルフェニル)メチル基、(n-デシルフェニル)メチル基、(n-ドデシルフェニル)メチル基、(n-テトラデシルフェニル)メチル基、(4-エテニルフェニル)メチル基、(4-プロペニルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが挙げられ、より好ましくはベンジル基である。これらのアリールアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0021】
1、R2、またはR3のアルコキシ基としては炭素原子数1~20のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、ネオペントキシ基、n-ヘキソキシ基、n-オクトキシ基、n-ドデソキシ基、n-ペンタデソキシ基、n-イコソキシ基などが挙げられ、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、またはtert-ブトキシ基である。これらのアルコキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0022】
1、R2、またはR3のアリールオキシ基としては炭素原子数6~20のアリールオキシ基が好ましく、例えばフェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2,3-ジメチルフェノキシ基、2,4-ジメチルフェノキシ基、2,5-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、3,4-ジメチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基、2,3,4-トリメチルフェノキシ基、2,3,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、3,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5-テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6-テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6-テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n-プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n-ブチルフェノキシ基、sec-ブチルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、n-ヘキシルフェノキシ基、n-オクチルフェノキシ基、n-デシルフェノキシ基、n-テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基などが挙げられる。これらのアリールオキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0023】
1、R2、またはR3のアリールアルキルオキシ基としては炭素原子数7~20のアリールアルキルオキシ基が好ましく、例えばベンジルオキシ基、(2-メチルフェニル)メトキシ基、(3-メチルフェニル)メトキシ基、(4-メチルフェニル)メトキシ基、(2,3-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6-ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4-ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6-トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n-プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n-ブチルフェニル)メトキシ基、(sec-ブチルフェニル)メトキシ基、(tert-ブチルフェニル)メトキシ基、(n-ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n-オクチルフェニル)メトキシ基、(n-デシルフェニル)メトキシ基、(n-テトラデシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基などが挙げられ、より好ましくはベンジルオキシ基である。これらのアリールアルキルオキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0024】
1、R2、またはR3として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルコキシ基である。R1としてより好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基またはフェニル基である。さらに好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基またはフェニル基である。R2としてより好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である。さらに好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基またはフェニル基である。Rとしては、水素原子またはアルキル基、アルケニル基が好ましい。Rとしてより好ましくは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基またはフェニル基である。さらに好ましくは、水素原子、メチル基である。Rとしては、水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0025】
上記一般式(1)のXは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。)。上記一般式(1)のXは、NRであることが好ましい。
【0026】
のアルキル基およびアルケニル基としては、それぞれ炭素数1~20のアルキル基および炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましい。炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基などが挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、またはtert-ブチル基である。炭素数2~20アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、などが挙げられる。Rのアリール基またはアリールアルキル基はそれぞれR1またはR2におけるアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基と同様である。Rとしては、炭素原子が1~6のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはアミル基である。さらに好ましくは、イソプロピル基またはtert-ブチル基である。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアリールアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0027】
およびRは、それぞれ独立して水素原子もしくは炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数2~20アルケニル基であることが好ましい。炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基などが挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、またはtert-ブチル基である。炭素数2~20アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、などが挙げられる。これらのなかでさらに好ましくは、RおよびRの一方が水素原子で、もう一方が炭素数1~20アルキル基である。より好ましくは、当該アルキル基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基またはアミル基である。さらに好ましくは、イソプロピル基またはtert-ブチル基である。RおよびRにおけるアリール基またはアリールアルキル基はそれぞれR1またはR2におけるアリール基またはアリールアルキル基と同様である。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアリールアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0028】
(光学活性ビスオキサゾリン化合物の製造方法)
このような光学活性ビスオキサゾリン化合物には、不斉炭素原子が存在しこれらを不斉中心とする少なくとも2種類の光学活性体が存在することもあるが、本発明の光学活性ビスオキサゾリン化合物はいずれの光学活性体であってもよいし、また混合物であっても構わない。
【0029】
かかるビスオキサゾリン化合物は、例えば以下のような方法で合成することができる。
【0030】
一般式(2)
【化13】
JP0004892674B2_000007t.gif
(R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、全てのR1および全てのR2それぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらは任意に結合して環を形成してもよい。Xは、ORまたはNRである。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。全てのR,全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で示される光学活性なアミノアルコールと、
下記一般式(3)
【化14】
JP0004892674B2_000008t.gif
(R3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す。全てのRおよび全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で示されるマロン酸誘導体と、を反応させることにより得ることができる。上記一般式(2)におけるRおよびRは、上記一般式(1)におけるRおよびRと同義であり、上記一般式(3)におけるRは、上記一般式に般式(1)におけるRと同義である。上記一般式(3)におけるRのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基は、R~Rで例示したものと同様のものを例示することができる。
【0031】
ここでアミノアルコール類(2)としては、それらの塩酸塩、硫酸塩、または酢酸塩などの塩を用いることもできる。アミノアルコール類(2)の中でも広く購入可能化合物として、またはより幅広く入手可能なアミノ酸エステルから容易に合成可能な化合物としては、例えばセリンやトレオニンなどの天然アミノ酸、あるいは公知の方法により合成されるアミノ酸のα位が上記請求項のRに相当するアルキル基やアリール基で置換されたアミノ酸誘導体(α-メチルセリン、α-エチルセリン、α-フェニルセリン、α-メチルトレオニン、α-エチルトレオニン、α-フェニルトレオニン等を例示することができる)等が挙げられる。上記の化合物は(R)または(S)の光学活性体を使用することも可能で、またある割合の混合物を使用することも可能である。
【0032】
また、上記アミノアルコール類(2)は、対応するアミノ酸から、適当なエステル化剤、アミド化剤によって容易に合成することができる。また、文献既知の方法により容易に合成することができる。光学活性なアミノアルコール類(2)を合成する際には光学活性なアミノ酸やその塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等を使用すればよい。
【0033】
ここでいうアミノ酸エステルとしては、セリンメチルエステル、セリンエチルエステル、セリンイソプロピルエステル、セリンtert-ブチルエステル、セリンアミルエステル、α-メチルセリンメチルエステル、α-メチルセリンフェニルエステル、α-エチルセリンメチルエステル、α-エチルセリンベンジルエステル、α-フェニルセリンメチルエステル、トレオニンメチルエステル、トレオニンエチルエステル、トレオニンイソプロピルエステル、トレオニンtert-ブチルエステル、トレオニンアミルエステル、α-メチルトレオニンメチルエステル、α-メチルトレオニンエチルエステル、α-エチルトレオニンメチルエステル、α-エチルトレオニンベンジルエステル、α-フェニルトレオニンメチルエステル、等を挙げることができる。また、アミノ酸アミドとしては、セリンメチルアミド、セリンエチルアミド、セリンイソプロピルアミド、セリンtert-ブチルアミド、セリンアミルアミド、α-メチルセリンメチルアミド、α-メチルセリンフェニルアミド、α-エチルセリンメチルアミド、α-エチルセリンベンジルアミド、α-フェニルセリンメチルアミド、トレオニンメチルアミド、トレオニンエチルアミド、トレオニンイソプロピルアミド、トレオニンtert-ブチルアミド、トレオニンアミルアミド、α-メチルトレオニンメチルアミド、α-メチルトレオニンエチルアミド、α-エチルトレオニンメチルアミド、α-エチルトレオニンベンジルアミド、α-フェニルトレオニンメチルアミド、等を挙げることができる。これらの化合物の光学活性体である(R)または(S)である化合物であってもよいし、上記エステルの塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩であってもよい。
【0034】
一般式(3)で示されるマロン酸誘導体としては、例えば、ジメチルマロニミデート、ジエチルマロニミデート、ジエチル2-メチルマロニミデート、ジエチル2、2’-ジメチルマロニミデートなどのマロン酸イミデートを挙げることができる。その使用量はアミノアルコール類(2)に対して通常0.1~0.5モル倍程度、好ましくは0.3~0.4モル倍程度である。
【0035】
反応に際しては、通常は溶媒が用いられ、かかる溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリルなどのアルキルニトリル類、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、クロルベンゼン、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、さらにジメチルホルムアミドなどのアミド系等の溶媒が挙げられる。好ましくはアルキルニトリル類があげられる。これらはそれぞれ単独または二種以上を混合して用いられ、その使用量は特に限定されるものではないが、マロン酸誘導体に対して10重量部以上1000重量部程度である。好ましくは20重量部ないしは100重量部程度である。
【0036】
光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)の製造に際しては、2-アミノアルコール類(2)とマロン酸誘導体(3)を反応させる場合は、上記した溶媒を用いて両者を反応させる。2-アミノアルコール類(2)とマロン酸誘導体(3)とを反応させる場合は通常、適当な塩基の存在下で上記した溶媒を用いて両者を反応させる。塩基としては、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類(いわゆる有機塩基)が挙げられ、その使用量は、マロン酸誘導体(3)に対して通常2倍モル以上用いられる。その反応温度は通常、-30℃以上100℃以下程度、好ましくは0℃以上50℃以下である。
【0037】
得られた光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)は、反応系から単離してもよいし、単離せずに、次の反応工程に用いてもよい。反応終了後、例えば得られた反応混合物をエバポレータ等で濃縮乾固した後、残留物に水30mlを加えて、塩化メチレンや酢酸エチルなどの適当な有機溶媒で抽出する。得られた有機溶媒層を無水硫酸ナトリウム(NaSO)等で脱水して、溶媒を留去することで、用いた2-アミノアルコール類(4)に対応する一般式(1)に示される油状あるいは粉末状の光学活性ビスオキサゾリン化合物を得ることができる。
【0038】
得られたビスオキサゾリン化合物は、たとえば、蒸留操作、カラムクロマトグラフィー処理などによって精製することも可能である。あるいは、反応終了後、反応液を濃縮してすぐに蒸留やカラムクロマトグラフィーなどの操作に付し、目的とするビスオキサゾリン化合物を採取してもよい。
【0039】
こうして得られる光学活性ビスオキサゾリン化合物の一般式(1)における不斉炭素原子を中心とする立体配置は、用いたアミノアルコール類(2)の光学活性体における立体配置を保持したものとなっている。
【0040】
本発明においては、光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)としては、2,2’-メチレンビス(4(S)-メトキシカルボニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス(4(S)-イソプロポキシカルボニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス(4(S)-イソプロピルカルバモイル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス(4(S)-tert-ブチルカルバモイル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチリデンビス(4(S)-メトキシカルボニル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチリデンビス(4(S)-イソプロポキシカルボニル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチリデンビス(4(S)-イソプロピルカルバモイル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチリデンビス(4(S)-tert-ブチルカルバモイル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4(S)-メトキシカルボニル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4(S)-イソプロポキシカルボニル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4(S)-イソプロピルカルバモイル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4(S)-tert-ブチルカルバモイル-2-オキサゾリン)などを好ましいものとして例示できる。これらの光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)は、これらの光学活性ビスオキサゾリン化合物において、4Sが4Rに相当する化合物も挙げることができる。好ましくは、2個のオキサゾリン環の4位がいずれも4Sであるか、あるいは4Rのビスオキサゾリン化合物である。なお、4Sのうち一方が4Sで他方が4Rの化合物も挙げることができる。
【0041】
(遷移金属錯体化合物)
本発明の光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)と遷移金属化合物と接触させることにより、ビスオキサゾリン化合物(1)が遷移金属に配位する不斉な配位子となり、光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)と遷移金属化合物とを備える遷移金属錯体化合物を得ることができる。この遷移金属錯体化合物は、ディールスアルダー反応、シクロプロパン化反応や、ミカエル付加反応、アルドール反応、アルキル化反応等の炭素-炭素結合反応の触媒となるほか、重合反応の触媒として機能することができる。また、この遷移金属錯体化合物は、これらの各反応の不斉反応の触媒として機能することができる。
【0042】
遷移金属化合物における遷移金属原子としては、銅、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、およびパラジウムであることが好ましい。遷移金属原子は1種あるいは2種以上を用いることができる。好ましくは、銅である。遷移金属化合物としては、ルイス酸性を示す遷移金属化合物であり、遷移金属の無機酸または有機酸の塩、または遷移金属に配位化合物が配位した化合物であり、金属錯体化合物の用途に応じて適宜選択されるが、例えば、遷移金属の塩化物、弗化物、臭化物、よう化物などのハロゲン化物、炭酸塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナト塩、もしくは、ギ酸塩、酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩等の炭素数1~15の有機カルボン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、過塩素酸塩、メタンスルホン酸化物、酸化物、水酸化物等の金属化合物を挙げることができる。また、遷移金属化合物としては、M(ORf)(Mは価数mの遷移金属を示し、Rfは含フッ素アルキルスルホニル基を示す)金属化合物を挙げることができる。含フッ素アルキルスルホニル基は、アルキル基の水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子により置換されたものであって、なかでも、-SO2-Cn 2n+1(n≦10)のパーフルオロアルキル基が好適なものとして例示される。その代表的なものとしてはトリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)基がある。なお、ルイス酸性を示す遷移金属化合物にかえて、遷移金属化合物とルイス酸とを併せて用いることもできる。
【0043】
遷移金属化合物としては、上記した遷移金属原子とその対イオンあるいは配位化合物とのを組み合わせて用いることができる。例えば、遷移金属原子が銅の場合、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、過塩素酸銅(I)、酢酸銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)などの一価の銅塩やこれらの化合物における銅(I)が銅(II)に相当する二価の銅塩、あるいはアセチルアセトナト銅(II)などを好ましく用いることができる。より好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)である。
【0044】
また、例えば、遷移金属原子が鉄の場合、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)、アセチルアセトナト鉄(II)などの二価の鉄塩やこれらの化合物における鉄(II)が鉄(III)に相当する三価の鉄塩を好ましく用いることができる。より好ましくは、塩化鉄(II)である。
【0045】
さらに、例えば、遷移金属原子がパラジウムの場合、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、テトラフルオロホウ酸パラジウム(II)などの二価のパラジウム塩を好ましく用いることができる。より好ましくは、塩化パラジウム(II)である。
【0046】
光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)と遷移金属化合物とは、遷移金属化合物1モルに対してビスオキサゾリン化合物(1)を1モル倍以上5モル倍以下で、好ましくは1モル倍以上2モル倍程度で、接触させることが好ましい。
【0047】
本金属錯体化合物を得るには、上記した本発明の光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)と遷移金属化合物とを溶媒中で混合して接触させればよい。両者を溶解する溶解は適宜選択することができる。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリルなどのアルキルニトリル類、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、クロルベンゼン、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、さらにジメチルホルムアミドなどのアミド系等の溶媒が挙げられる。好ましくはテトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることが出来る。あるいはこれらの混合溶液を用いることができる。
【0048】
不斉金属錯体化合物は、通常-30℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上50℃以下で調製することが好ましい。光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)および遷移金属化合物の混合順序は特に制限されない。
【0049】
光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)と遷移金属化合物とを溶媒中にて混合後、得られる不斉金属錯体化合物を含む反応液を、例えば濃縮処理することにより、錯体化合物を採取することができる。かかる錯体化合物を、例えば触媒として用いる場合には、得られた前記反応液をそのまま用いてもよいし、該反応液から錯体化合物を取り出して用いてもよい。
【0050】
本発明の遷移金属錯体化合物は、ディールスアルダー反応触媒として好ましい。特に、不斉なディールスアルダー反応触媒として好ましい。本発明の遷移金属錯体化合物は、従来全く反応が進行しなかったか、あるいは高温高圧という過酷な条件でしか反応が進行しなかったジエンと求ジエン体からのディールスアルダー反応を、非常に温和な条件で進行させることが可能にし、よって光学活性なシクロヘキセン誘導体やアルカロイド前駆体等のディールスアルダー反応生成物を得ることができる。これは、本発明の光学活性ビスオキサゾリン化合物が新たに備えるカルボン酸誘導体である置換基Xに起因するものである。推論であって本発明を拘束するものではないが、図1に示すように、本発明者らによれば、本発明の光学活性ビスオキサゾリン化合物(1)は、4位に置換基Xとしてカルボン酸誘導体を有していることで、基質の認識や活性化がなされていると考えられる。すなわち、オキサゾリン環の4位のカルボニル炭素に対して-ORや-NRを備え、R~Rにおいて、各種の炭化水素基などの置換基を導入できるため、これによって多様な反応場を提供することができ、結果として各種の弱い非共有結合性相互作用を錯体近傍に集積化させることができるので、反応における活性や選択性を向上させことができる。
【0051】
(ディールスアルダー反応生成物の製造方法)
次に、本発明の遷移金属錯体化合物により、ジエンと求ジエン体とから不斉なディールスアルダー反応により光学活性なディールスアルダー反応生成物を得ることができる。本発明の遷移金属錯体触媒によれば、反応性が低いジエンや求ジエン体であっても、不斉なディールスアルダー反応を触媒することができるとともに、反応性が低いジエンと反応性が低い求ジエン体との不斉なディールスアルダー反応も促進することができる。
【0052】
本発明の製造方法に適用するのが好ましい求ジエン体としては、 上記の錯体触媒の金属中心に配位可能な構造を有するビニルケトン誘導体(α、β-不飽和アシルオキサゾリジンやα、β-不飽和アシルピリジンを例として挙げることができる)、なかでも好ましくはベンジリデン-2-アセチルピリジン、4-ブロモベンジリデン-2-アセチルピリジン、4-メトキシベンジリデン-2-アセチルピリジン等を挙げることができる。これらの求ジエン体はいずれも従来のビスオキサゾリン化合物を用いた触媒反応において反応性が十分でなかったものである。特に、ベンジリデン-2-アセチルピリジンに好ましく適用できる。また、本発明の製造方法を適用するのが好ましいジエンとしては、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、p-メンタ-1,5-ジエンの他、ブタジエンやイソプロペン、2,4-ヘキサジエン等の鎖状の共役ジエン化合物等を挙げることができる。
【0053】
ディールスアルダー反応では、まず、本遷移金属錯体化合物を準備する。既に説明したように、ビスオキサゾリン化合物(1)と上記遷移金属化合物とを適用な溶媒に溶解して接触させることで本遷移金属錯体化合物を得ることができる。
【0054】
次いで、本遷移金属錯体化合物の存在下に基質であるジエンと求ジエン体とを供給する。ジエンおよび求ジエン体を本遷移金属錯体化合物との混合方法については特に限定しない。本遷移金属錯体化合物を調製した溶媒に、これらの両基質を同時に添加することもできるし、いずれか一方を先に添加した上他方を逐次あるいは一括して添加することもできる。また、反応容器内に本遷移金属錯体化合物と両基質を連続的にあるいは間欠的に供給してもよい。好ましくは、求ジエン体を予め遷移金属錯体化合物が溶解した溶媒中に溶解し、その上でジエンを添加する。
【0055】
また、ジエンの使用量は、求ジエン体に対して、通常、1モル倍以上である。より好ましくは、5モル倍以上とする。(1モル倍未満であると全ての求ジエン体が反応しないからである。)また上限は、ジエンの重合が本反応を阻害しないかぎり特に制限しない。また、本遷移金属錯体化合物における本光学活性ビスオキサゾリン化合物の使用量は、求ジエン体に対して0.01モル倍以上であることが好ましい。より好ましくは0.1モル倍以上である。また、上限は、反応性を考慮すれば1モル倍以下である。また、遷移金属化合物の使用量は求ジエン体に対して0.01モル倍以上であることが好ましい。より好ましくは、0.05モル倍以上である。また、上限は、反応性を考慮すれば、1モル倍以下である。
【0056】
反応系を構成する溶媒としては、本遷移金属錯体化合物を調製するための溶媒を使用できる。また、反応に使用する求ジエン体、ジエン、本遷移金属錯体化合物が溶解することが必要なため、好ましくはテトラヒドロフランなどの環状エーテル類が推奨される。溶媒は無水であることが望ましい。また、反応は、継続してあるいは断続的に反応溶媒を攪拌等することが好ましい。
【0057】
このような反応は、通常、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で実施されるが、大気下で行ってもよい。反応温度は、-30℃以上100℃以下であることが好ましく、より好ましくは、0℃以上50℃以下である。
【0058】
反応終了後、得られた反応液を、例えば蒸留処理や結晶化などの分離操作を行うことにより、光学活性なシクロヘキセン誘導体などのディールスアルダー反応生成物光学活性シクロプロパン化合物を採取することができる。取得したディールスアルダー反応生成物は、例えば精留、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製手段により、さらに精製することもできる。
【0059】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0060】
(光学活性ビスオキサゾリン化合物の合成)
本実施例におけるビスオキサゾリン化合物の合成スキームを図2に示す。ジエチルマロンイミデート2塩酸塩(3mmol)とトリエチルアミン(6mmol)をアセトニトリル20mlに懸濁させ、L-セリンのカルボン酸イソプロピルエステルの塩酸塩もしくはL-セリンのイソプロピルアミドあるいはL-セリンのtert-ブチルアミドの塩酸塩(7.5mmol)のいずれかを含むアセトニトリル懸濁液15mlを加えた。25℃で3日撹拌した後、反応溶液をエバポレーターで濃縮乾固した。濃縮残さに水30mlを加え、有機溶媒(CHClもしくは酢酸エチル)40mlで2回抽出した後、有機相を飽和食塩水30mlで洗浄した。有機相を無水NaSOで脱水後、溶媒を留去すると、セリンのイソプロピルエステルあるいはtert-ブチルアミドを用いた場合、橙色油状の反応生成物(前者の場合:化合物名2,2’-メチレンビス(4(S)-イソプロポキシカルボニル-2-オキサゾリン)(iPrboxes)、後者の場合:化合物名2,2’-メチレンビス(4(S)-tert-ブチルカルバモイル-2-オキサゾリン)(tBuboxam))が得られた。また、セリンのイソプロピルアミドを用いた場合、黄色粉末状の反応生成物(化合物名2,2’-メチレンビス(4(S)-イソプロピルカルバモイル-2-オキサゾリン)(iPrboxam))が得られた。これらの化合物はH NMRおよびポジティブモードのESI-massスペクトルによって、その構造を同定した。以下にこれら3つのビスオキサゾリン誘導体の収率およびスペクトルデータを示す。
【0061】
iPrboxes:収率74%、H NMR(300MHz、CDCl)δ1.25-1.30(dd、12H、2(CHC)、3.47(brs、2H、CH)4.42-4.53(m、4H、2CHO)、4.69-4.76(m、2H、2CH)、5.07(m、2H、2CHMe)、ESI-mass:327[M+H]
【0062】
tBuboxam:収率56%、H NMR(600MHz、CDCl)δ1.36(s、18H、2(CHC)、3.42(brs、2H、CH)4.45-4.55(m、4H、2CHO)、4.59-4.62(m、2H、2CH)、6.41(brs、2H、2NHCO)、
ESI-mass:353[M+H]
【0063】
iPrboxam:収率49%、H NMR(600MHz、CDCl)δ1.13-1.19(dd、12H、2(CHC)、3.43(brs、2H、CH)4.04-4.10(m、2H、2CHMe)、4.45-4.57(m、4H、2CHO)、4.65-4.69(m、2H、2CH)、6.46(brs、2H、2NHCO)、
ESI-mass:325[M+H]
【実施例2】
【0064】
(光学活性ビスオキサゾリン銅(II)錯体の合成)
銅(II)アセチルアセトナト(0.1mmol)とtBuboxam(0.1mmol)をメタノールに溶解し、室温で撹拌した後、しばらく放置すると淡緑色の微結晶が析出したので、これをろ取した。得られた微結晶をアセトン-水から再結晶させることで淡緑色結晶の反応生成物(銅(II)(アセチルアセトナト)(tBuboxam)錯体)が得られた。構造同定は反応生成物のX線結晶構造解析により行い、用いたビスオキサゾリン配位子が光学的に純粋であることを確認した。その結晶構造を図3に示す。
【実施例3】
【0065】
(光学活性ビスオキサゾリン化合物を用いた不斉ディールスアルダー反応)
本実施例では、実施例1で合成したビスオキサゾリン化合物(Prboxes、Buboxam、Prboxam)を用いて図4に示す反応を行った。
【0066】
実施例1で合成した新規なビスオキサゾリン化合物((tBuboxam)もしくは(iPrboxam)0.12mmol)とCu(OTf)・6HO(0.05mmol)をTHF4mlに溶解した。そこにベンジリデン-2-アセチルピリジン(BAP)(1mmol)を加えて、室温で20分ほど撹拌した。次いで1,3-シクロヘキサジエン(1,3-CHD)の5mol/L THF溶液1mlを加えた後、室温にて反応を行った。反応の追跡は高速液体クロマトグラフ(HPLC)、あるいは254nm発色のTLC(展開溶媒クロロホルム)を用いて行い、同時にTLCのヨウ素発色による確認も行った。2日ないし5日間で反応終了後THFを留去し、エーテルを加えて不溶性の着色物質をろ去した。再度エーテルを留去した後、残さをシリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて精製し、反応生成物を含むフラクションを集めた後、その溶液を濃縮乾固した。得られた固体をアセトン-エタノールで再結晶して目的生成物(単離収率50%)を得た。得られた生成物はH-NMRスペクトル、ESI-massスペクトルによって確認した。いずれのビスオキサゾリン化合物を用いた不斉ディールスアルダー反応でも、反応生成物は同一の2-ピリジル[3-フェニルビシクロ[2.2.2.]オクト-5-エン-2-イル]メタノン(BPCD)であった。
【0067】
生成物のスペクトルデータを下記に示す。
H NMR(600MHz、CDCl)δ1.10(m、1H)、1.43(m、1H)、1.80(m、1H)、2.02(m、1H)、2.68(m、1H)、3.04(m、1H)、3.55(d、1H)、4.57(d、1H)、6.04(t、1H)、6.60(t、1H)、7.18(m、1H)、7.30(m、2H)、7.36(m、2H)、7.42(m、1H)7.78(m、1H)7.99(m、1H)、8.66(m、1H)、ESI-mass:290[M+H]
【0068】
また、反応生成物の2-ピリジル[3-フェニルビシクロ[2.2.2.]オクト-5-エン-2-イル]メタノンが光学的に純品であることは、液体クロマトグラフィー法による純度確認をおこなった反応生成物の単結晶X線構造解析により確認した.その結晶構造を図5に示す。
【0069】
さらに実施例1で合成したビスオキサゾリン化合物(tBuboxam)を用い1,3-シクロヘキサジエンに代えてp-メンタ-1,5-ジエンを用いる以外は実施例2と同じ条件で反応を行った。
【0070】
なお、比較例として、実施例1で合成したビスオキサゾリン化合物に替えて2,2’-イソプロピリデンビス(4(S)-tert-ブチル-2-オキサゾリン)(Bubox))を用いる以外は、実施例2と同じディールスアルダー反応を行った。また、ビスオキサゾリン化合物およびCu(OTf)・6HOを一切用いない以外は実施例2と同様にして反応を行って対照例1とし、ビスオキサゾリン化合物のみを用いない以外は実施例2と同様にして反応を行って対照例2とした。
【0071】
結果を図6に示す。これらの結果から、実施例1で合成した新規なアミド置換基を有する不斉ビスオキサゾリン化合物と銅(II)塩からなる錯体化合物が存在することにより、目的とする反応が進行することがわかった。また、アミド置換基を有するビスオキサゾリン化合物の中でも、t-ブチル基を有するBuboxamの方が、イソプロピル基を有するPrboxamよりも反応速度が速かったが、最終の収率および不斉選択性に大きな差はなかった。さらに、1,3-シクロヘキサジエンに代えてp-メンタ-1,5-ジエンをジエン試剤として反応を行った場合では、対応するディールスアルダー反応生成物が、光学的に純品として75%の収率で得られた。
【0072】
一方、従来型のビスオキサゾリン配位子(Bubox)からなる錯体化合物存在する状態(比較例)も、反応はほとんど進行しないことがわかった。一方、図示はしないが、反応基質のみの状態(対照例1)、反応基質とCu(OTf)・6HOとのみが共存した状態(対照例2)のいずれにおいても、反応はほとんど進行しないことがわかった。
【0073】
以上のことから、アミド置換基を有するビスオキサゾリン化合物は遷移金属化合物と錯体を形成して不斉ディールスアルダー反応の有効な触媒として機能することがわかった。特に、従来のビスオキサゾリン化合物金属錯体触媒で進行しないような反応性の低いジエンと求ジエン体の反応を温和な条件で触媒できることから、広く錯体触媒として使用できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のビスオキサゾリン化合物が銅に配位した状態を示す図である。
【図2】実施例1におけるビスオキサゾリン化合物の合成スキームを示す図である。
【図3】実施例2における遷移金属錯体の結晶構造を示す図である。
【図4】実施例3におけるディールスアルダー反応生成物の合成スキームを示す図である。
【図5】実施例3におけるディールスアルダー反応生成物の構造を示す図である。
【図6】実施例3におけるディールスアルダー反応の収率の経時変化を示す図である。
【図7】従来のビスオキサゾリン配位子を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6