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明細書 :磁気軸受シャフトシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4709986号 (P4709986)
公開番号 特開2007-113594 (P2007-113594A)
登録日 平成23年4月1日(2011.4.1)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成19年5月10日(2007.5.10)
発明の名称または考案の名称 磁気軸受シャフトシステム
国際特許分類 F16C  32/04        (2006.01)
FI F16C 32/04 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願2005-302750 (P2005-302750)
出願日 平成17年10月18日(2005.10.18)
審査請求日 平成20年5月22日(2008.5.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】滝塚 貴和
【氏名】シン・ロン・ヤン
【氏名】黒河内 直浩
【氏名】高田 昌二
【氏名】国富 一彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100076691、【弁理士】、【氏名又は名称】増井 忠弐
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100092015、【弁理士】、【氏名又は名称】桜井 周矩
審査官 【審査官】上谷 公治
参考文献・文献 実開昭59-157117(JP,U)
特開平11-062516(JP,A)
特開2001-304257(JP,A)
特開平08-326751(JP,A)
特開平08-145058(JP,A)
特開2003-156100(JP,A)
特開平09-042291(JP,A)
調査した分野 F16C 32/04
特許請求の範囲 【請求項1】
シャフト及び磁気軸受ユニットから構成され、前記磁気軸受ユニットが、シャフトを浮遊させる磁気軸受、シャフトの変位及び動きを制御する制御装置、前記磁気軸受の故障時の代替軸受としてシャフトを浮遊させる補助軸受、並びに支持構造物を有し、
前記支持構造物は、前記磁気軸受及び前記補助軸受の各々の中心線が浮遊時のたわんだ前記シャフトの中心線と一致するように前記磁気軸受及び前記補助軸受を傾けて固定している、磁気軸受シャフトシステム。
【請求項2】
前記磁気軸受ユニットが1つ以上であり、並びに前記シャフトの変位及び動きを測定して制御装置に制御信号を与えるセンサーを持つ請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
【請求項3】
前記磁気軸受を回転軸に対して筒状に並行に受ける軸受で、軸心の径方向のブレに対して作用するジャーナル軸受として用いた請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
【請求項4】
前記磁気軸受を回転軸からの張り出し部を受ける軸受で、軸心に対して平行なブレに対して作用するスラスト軸受として用いた際の請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
【請求項5】
前記磁気軸受を、ジャーナル軸受及びスラスト軸受として用いた請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
【請求項6】
前記磁気軸受を1つ以上用いた請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
【請求項7】
前記シャフトとして、カップリングを介して1つ以上のシャフトを持つ請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
【請求項8】
磁気軸受システムに付加的なバランス調整機構を用いた請求項1記載の磁気軸受シャフトシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、傾きを有する磁気軸受シャフトシステムに関する。このシステムはシャフトと磁気軸受から構成される。特に、本発明の磁気軸受は、磁気軸受、1つ以上の変位センサー及びコントロースシステム、補助軸受、並びに傾きを有する支持構造物から構成される。
【0002】
磁気軸受シャフトシステムを用いてシャフトを浮上させ安全に運転する際、様々なクリアランスが必要となる。一般に、重量の大きいことによるシャフト自体のたわみによるものが大きなものの部類に入る。傾きを有する支持構造物の使用により、これらのクリアランスは、磁気軸受の中心線と、定常状態におけるシャフトの中心線を併せることにより、大幅に減少させることができる。
【0003】
傾きを有する磁気軸受シャフトシステムを用いることによりクリアランスが減少し、磁気軸受の能力の向上、シャフト支持性能、信頼性の向上、システムの簡素化、使用した機器の効率の向上が望める。本発明により磁気軸受分野に能力、経済性の面から多大な効果をもたらし、現状、未来の利用系のための技術の見通しを高めるものである。
【背景技術】
【0004】
磁気軸受は、潤滑油無、摩擦無しといった特徴を有しており、従来技術である油軸受、ころがり軸受と比較し利点を有している。これは潤滑材の炉心廻りへの混入を嫌う原子力施設に設置する回転機器の軸受として適している。
【0005】
他の軸受と異なり磁気軸受は、エアギャップと呼ばれるクリアランス(隙間又は静的隙間)を設定する必要がある。シャフトと軸受が接触することなく安全に運転するためには更なるクリアランスが必要となる。クリアランスを求める際には重量物であるがゆえ曲げの大きいシャフトのたわみ、回転による振動等を考慮する必要がある。更に、代替軸受である補助軸受も考慮に入れクリアランスを求める必要がある。
【0006】
このクリアランスに関する厳しい制約により磁気軸受の使用は能力、制御性ともに限られたものとなっている。第一に磁気軸受負荷は、磁気が飽和するまではクリアランス距離の二乗に反比例していることを要する。またクリアランス距離の増加によりギャップからの磁気漏れにより制御性も著しく悪化する。過去の文献では、原子力施設の発電機に磁気軸受を用いるにはクリアランスは3.5mm必要となる(非特許文献1)。この値は最適と考えられる2.0mmから、かけ離れたものである。

【非特許文献1】Takizuka, T., et al., 2004. R&D on the power conversion system for gas turbine high temperature reactors. Journal of Nuclear Engineering and Design 233 (2004) 329-346.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、磁気軸受を設置する支持構造物を傾けて設置することにより、上述の問題を解決するものである。支持構造物の傾け設置によりシャフトのたわみにより生じる中心線のミスアライメント(シャフト軸と磁気軸受軸心又は補助軸受軸心との不一致)を減少あるいは消去し、たわみに係る必要クリアランスを減少あるいは消去させることが可能となる。
【0008】
磁気軸受システムを傾けて設置することは実用的かつ経済的な解決方法であり、特に重量のある曲げに富んだシャフトを用いる際には有効である。傾け設置により磁気軸受の容量は増加し、構成材の応力は低減され、制御性は高まり、このことは経済性の向上、能力の向上に繋がる。
【0009】
本発明は実用性と経済性において磁気軸受分野における最先端技術に関して、重要な前進と、現在及び将来の利用系の技術的見通しを高めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による磁気軸受シャフトシステムは、シャフトと磁気軸受ユニットから構成される。磁気軸受ユニットは、磁気軸受、1または複数の変位測定センサー、補助軸受及び傾き設置可能な支持構造物から構成される。軸受、シャフトともに特別なもの、また負荷についても制限するものではない。また、アンバランスの調整法についても制約を設けるものではない。
【0011】
本発明においては、通常運転時、磁気軸受は、シャフトに浮力を与え、回転に係るアンバランス、振動の調整を行う。即ち、シャフトの中心線に対して、磁気軸受中心線を合わせるべく軸受の支持構造物を傾けて設置することにより、種々のクリアランスが減少する。センサーは、シャフトの軸受内の変位、動きを独立に正確に与える。センサーからの信号は、シャフトの位置決め、振動の制御に用いられる。補助軸受は、磁気軸受故障時の補助的な軸受である。補助軸受とシャフトのクリアランスの方が、磁気軸受とシャフトのクリアランスと比較して小さいため、磁気軸受故障時に磁気軸受にシャフトが接触することが回避できる。
【0012】
本発明の代替の具体案は、支持構造物の傾け設置により補助軸受を傾け、シャフトの中心線に対して必要な角度にすることにより、磁気軸受システムの能力を改善し、設置性を改善できる。本発明の他の代替具体案では、支持構造物の傾け設置により磁気軸受及び補助軸受の中心線とシャフトの中心線とのミスアライメントを最小化することにより、種々の磁気軸受に係るクリアランスを大幅に減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の参考技術である磁気軸受システムの概略を図1に示す。システムは、シャフト7と磁気軸受ユニット8から構成する。運転時、磁気軸受ユニット8は、シャフト7を浮上させるとともにシャフト7の回転により起こる振動、アンバランスの調整を行う。
【0014】
より明確には、磁気軸受ユニット8は、磁気軸受9、変位を測定し制御信号を発する磁気軸受9の内側センサー11、外側センサー12、補助軸受10、支持構造物15から構成する。磁気軸受ユニット8の中心線20は、磁気軸受9の中心線と補助軸受10の中心線と関連している。磁気軸受9の中心線は、磁気軸受ユニット8の中心線20と一致している。
【0015】
磁気軸受9はシャフト7に浮力を与える。シャフト7が回転する際には、磁気軸受9は、シャフト7の回転により起こる振動、アンバランスの調整を行う。内側センサー11、外側センサー12は浮上させるのに必要な変位、動きを正確に独立して与える。センサーからの信号はシャフトの位置、振動の制御に用いる。補助軸受10は磁気軸受9故障時にシャフト7を支持する代替軸受である。補助軸受10は磁気軸受9の故障の際のシャフト7の落下に耐え、またシャフト7が磁気軸受9に接触することを防止する。
【0016】
定常状態時、シャフト7は重力によりたわみが生じる。たわんだ際のシャフトの中心線17と、たわみの無い場合のシャフトの中心線16との間の角度をたわみ角度(θ)27とする。
【0017】
磁気軸受9への接触の恐れを生じさせているこのたわみを解消するため、磁気軸受ユニット8の中心線20をシャフト7のたわみによる傾斜に沿って、軸受支持構造物15を傾ける。
【0018】
この傾け設置した際の角度を、磁気軸受9の傾け角度(θ)29とする。補助軸受10とシャフト7のすきまであるクリアランス(b)31は、補助軸受10の設計項目の一つであり、実際の変位傾斜28と基本クリアランス(b)25により下記式にて示される。
【0019】
【数1】
JP0004709986B2_000002t.gif

【0020】
ここでLは幅26である。基本クリアランス(b)25は、主に、シャフトの遠心力、熱による膨張、製作誤差、コンプライアンス、補助軸受の磨耗量を基に決定する。
一方、磁気軸受9の設計はクリアランス32を基に行われ、クリアランス32は以下の3つのクリアランスの和である。一つがシャフト7の初期の中心線17と、補助軸受に接触した際の中心線18との移動距離21であり、2つ目が補助軸受に接触後、弾性により変形した際のシャフトの中心線17から終端での中心線19との移動距離にあたる弾性変形22であり、3つ目が許容クリアランス23であり、主に遠心力、熱的膨張、製作誤差等から構成される。必要となる磁気軸受9のクリアランス32は、以下の式より予測される。
【0021】
【数2】
JP0004709986B2_000003t.gif

【0022】
ここでKはシャフトの弾性変形係数である。
同様に、シャフト7の中央部におけるクリアランス36は2つのクリアランスの和である。一つが、シャフト7の初期の中心線17と、補助軸受に接触した際のシャフト中央部の中心線18との移動距離33であり、2つ目が補助軸受に接触後、弾性により変形した際のシャフトの中心線17から終端での中心線19との移動距離にあたる弾性変形35である。シャフトの最小クリアランスは、以下の式にて表される。
【0023】
【数3】
JP0004709986B2_000004t.gif

【0024】
ここでKはシャフトの中央部での弾性変形係数である。
式(1)~(3)中の量L及びθは、通常、重量のある弾力性に富んだシャフトにおいて重要である。結果、式(1)~(3)より導かれる磁気軸受使用の際のクリアランスa,b,cは大きな値となる。一般に、クリアランスが大きいと経済性、機械の性能は悪化する。
【0025】
一方、式(1)~(3)より、傾角29(θ)をシャフトのたわみ角27(θ)に近づけることにより、効果的にクリアランスa,b,cを下げることが可能である。この事実より、磁気軸受システムにおいて傾け設置することにより、クリアランスを効果的に減少させることができる。
【0026】
図2が本発明の更なる参考技術の概要であり、図1とそれらの同様の部分は同じ参照番号で指定し、詳細に説明しない。図2に示されるように、支持構造物の傾け設置により補助軸受10を角度30傾ける。補助軸受のサイジングが設計の重要な要素となっている場合、補助軸受10の傾け設置は、クリアランス31を減少させ、設置に柔軟性を与える。
【0027】
図3が本発明の具体案の概要であり、図2とそれらの同様の部分は同じ参照番号で指定し、詳細に説明しない。図3に示されるように、支持構造物15の傾け設置により、磁気軸受9と補助軸受10をそれぞれ角度29および角度30(角度27に等しい)傾け、磁気軸受9及び補助軸受10の各々の中心線をシャフトの中心線17に合わせる。その結果、クリアランス31、32、36は大幅に減少する。本発明は2つの独自の利点を有する。第1点は、磁気軸受9のクリアランス32が軸受の長さ方向に対して一様になり、これにより均一な磁場を形成できる。第2点は、クリアランスが一様であれば、計測される位置情報もセンサー11、センサー12で同様となるので、1つを減らすことが可能となる。
[発明の効果]
【0028】
磁気軸受のクリアランスを減らせる本発明は、コスト、性能の面において大きな利益をもたらす能力を有する。1つの重要な利点が磁気軸受のクリアランスを減少させることにより、容量が大きくなり、結果、磁気軸受システムのサイズ、コストを小さくできる。磁束密度が飽和するまでは、必要負荷は距離の二乗に反比例する。
【0029】
もう一方の利点は、磁気軸受のクリアランスを減少させることにより、制御性が上がる可能性を有することである。図4は、磁気軸受剛性の磁気軸受クリアランス依存性を示すもので、2つの異なるクリアランスを有する磁気軸受の剛性の応答性を示したものである。より小さなクリアランスを有する方が高い剛性を示している。即ち、回転軸が、2.5mmと3.5mmの2種類の大小のエアギャップを有する場合には、それぞれ、回転周波数が増加すると磁気軸受の剛性は大きくなり、またそのエアギャップが小さい方が軸受剛性が大きく、荷重変化に対して軸が偏心しにくいことを示している。
【0030】
同時に、磁気軸受を用いている機器に本発明を用いることにより、機器の性能は向上する。図5は、圧縮機効率の磁気軸受クリアランス依存性を示すもので、圧縮機において、シャフト翼端での隙間と圧縮機効率の関係を示したものである。シャフト翼端での隙間を1mm減らすことにより、効率は約3%向上する。即ち、シャフト翼端での間隙が小さくなるほど圧縮機の効率が上がることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の特定の具体案が図と記述により提示された。これらの具体案は、様々な形で発明を利用し特定の使用にふさわしい他の技術を可能にするため、発明の原則と実用化について記述された。詳細に記述された発明の範囲を制限して解釈するべきではなく、事実上、多くの修正と変更が学習の観点から可能である。例えば、多くの変更が可能であり、異なった数の軸受を有する場合や、ジャーナル、スラストといった異なった形式の軸受、多軸を受ける場合、付加的はバランス調整機構を有する場合も含む。同様に、変更は、それを用いる設備の全体配置に係るものであり、制限するものではない。これにより、本発明はその法的に等価なものにより決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】支持構造物を傾けることによって磁気軸受とシャフトの中心線を合わせた際の磁気軸受シャフトシステムの概略図。
【図2】支持構造物を傾けることによって磁気軸受と共に補助軸受も傾けた際の図1の磁気軸受シャフトシステムの概略図。
【図3】本発明の具体案に従い、支持構造物を傾けることによって磁気軸受及び補助軸受と、シャフトの中心線を合わせた際の、図1の磁気軸受シャフトシステムの概略図。
【図4】磁気軸受剛性の磁気軸受クリアランス依存性を示す図。
【図5】圧縮機効率の磁気軸受クリアランス依存性を示す図。
【符号の説明】
【0033】
7:シャフト
8:磁気軸受ユニット
9:磁気軸受
10:補助軸受
11:内側センサー
12:外側センサー
15:支持構造物
16:たわみの無い場合のシャフト中心線
17:たわんだ際のシャフトの中心線
18:補助軸受に接触した際のシャフトの中心線
19:弾性によりシャフトの中心線17から終端までの中心線
20:磁気軸受ユニットの中心線
21:中心線18との移動距離
22:弾性変形
23:許容クリアランス
25:基本クリアランス
26:幅
27:たわみの無い場合のシャフト中心線16に対するたわんだ際のシャフトの中心線17角度
28:実際の変位
29:磁気軸受の傾け角度
30:補助軸受の傾斜角
31:補助軸受とシャフトの隙間のクリアランス
32:クリアランス
33:補助軸受に接触するまでの中心線の移動距離
35:補助軸受に接触した後から終端に至るまでにおける中心線の移動距離
36:シャフトの中央部におけるクリアランス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4