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明細書 :所望の波形をもつ光パルス信号または電気パルス信号を生成する方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4929451号 (P4929451)
公開番号 特開2007-194541 (P2007-194541A)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
公開日 平成19年8月2日(2007.8.2)
発明の名称または考案の名称 所望の波形をもつ光パルス信号または電気パルス信号を生成する方法および装置
国際特許分類 H01S   3/10        (2006.01)
G02F   1/01        (2006.01)
H04B  10/04        (2006.01)
H04B  10/06        (2006.01)
H04B  10/142       (2006.01)
H04B  10/152       (2006.01)
FI H01S 3/10 Z
G02F 1/01 C
H04B 9/00 L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2006-013564 (P2006-013564)
出願日 平成18年1月23日(2006.1.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年9月7日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会2005年ソサイエティ大会講演論文集(CD-ROM)」に発表
審査請求日 平成20年8月26日(2008.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】塙 雅典
【氏名】中村 一彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100080322、【弁理士】、【氏名又は名称】牛久 健司
【識別番号】100104651、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 正
【識別番号】100114786、【弁理士】、【氏名又は名称】高城 貞晶
審査官 【審査官】傍島 正朗
参考文献・文献 特開2004-341307(JP,A)
特開2000-193528(JP,A)
特開2004-170734(JP,A)
特開2004-170733(JP,A)
特開2004-228840(JP,A)
特開2004-336212(JP,A)
特開平05-241219(JP,A)
山本剛裕、池本 健太郎、河野 隆二,FBGを用いた超広帯域パルス生成の検討,電子情報通信学会技術研究報告. SST, スペクトル拡散,2003年 3月19日,102(745),pp.173-177
調査した分野 H01S 3/00 - 5/50
G02F 1/00 - 1/125
G02F 2/00 - 7/00
H04B 10/00 -10/158
Science Direct
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
生成すべき所望の光パルス信号の標本化時間間隔をあけて光導波路内に直列に配置された複数のブラッググレーティングを有する標本化ブラッググレーティングを用い,
上記標本化ブラッググレーティングにおいて上記ブラッググレーティングの反射率が生成すべき所望の光パルス信号の振幅に対応し,かつ隣接するブラッググレーティングによって反射される光波の位相差が生成すべき所望の光パルス信号の振幅の極性の変化にあわせて,極性が正または負に保たれているときには0,極性が負から正へまたはこの逆に変化するところではπになるように調整しておき,
短光パルスを発生させ,この短光パルスを光サーキュレータによって上記標本化ブラッググレーティングに導き,
上記標本化ブラッググレーティングから出力される,上記短光パルスの一連の複数の反射光波を上記光サーキュレータによって取出し,
取出された上記一連の複数の短光パルスの重畳信号の振幅の時間変化によって表わされた所望の波形をもつ光パルス信号の生成方法。
【請求項2】
連続光を発生し,上記光サーキュレータの出力光と上記連続光を合波する,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記光サーキュレータの出力光,または連続光と合波された光を電気信号に変換する,請求項1または2に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は,任意の,所望の波形をもつ光パルス信号,または電気パルス信号を生成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超広帯域(Ultra Wide Band:以下UWBという)無線システムの実装方式の一つにインパルス状のパルスを用いるUWB-インパルス無線(Impulse Radio :以下,IRという)方式がある。UWB-IR方式はパルス幅が数百ピコ秒で帯域幅が数GHzにわたるパルス(以下,UWB-IRパルスと表す)を直接送受信することが特徴である。しかしUWB-IRパルスは極めて細いパルス幅と広大な帯域幅をもつので生成が困難であり,UWB-IRパルスを自由自在に生成する方法の開発はUWBシステムの実現にとって重要な課題となっている。

【非特許文献1】M.Z.Win,R.A.Scholtz“Impulse Radio:How it works”IEEE Communications Letters Vol,2 No.2 pp36-38 February 1998.
【発明の開示】
【0003】
この発明は,任意の,所望の波形をもつ光パルス信号,または電気パルス信号を比較的容易に生成できる方法および装置を提供することを目的とする。
【0004】
この発明による所望の波形をもつ光パルス信号の生成方法は,光導波路内に標本化間隔をあけて直列に配置された複数のブラッググレーティングを有し,これらのブラッググレーティングの反射率が生成すべき所望のパルス信号の振幅に対応し,かつ隣接するブラッググレーティングによって反射される光波の位相差が生成すべき所望のパルス信号の振幅の符号の変化にあわせて0またはπになるように調整された標本化ブラッググレーティングを用い,短光パルスを発生させ,この短光パルスを光サーキュレータによって上記標本化ブラッググレーティングに導き,上記標本化ブラッググレーティングから出力される反射光波を上記光サーキュレータによって取出すものであり,所望の波形をもつ光パルス信号が上記光サーキュレータの出力信号として得られる。
【0005】
この発明による所望の波形をもつ光パルス信号の生成装置は,光導波路内に標本化間隔をあけて直列に配置された複数のブラッググレーティングを有し,これらのブラッググレーティングの反射率が生成すべき所望のパルス信号の振幅に対応し,かつ隣接するブラッググレーティングによって反射される光波の位相差が生成すべき所望のパルス信号の振幅の符号の変化にあわせて0またはπになるように調整された標本化ブラッググレーティング,短光パルスを発生する第1の光源,および上記第1の光源から発生する短光パルスを上記標本化ブラッググレーティングに導き,かつ上記標本化ブラッググレーティングから出力される反射光波を出力する光サーキュレータを備えているものである。
【0006】
標本化ブラッググレーティングに短光パルスが導入され,標本化ブラッググレーティングの光導波路内に直列に配置された複数のブラッググレーティングでそれぞれ反射した光が標本化ブラッググレーティングから出力される。標本化ブラッググレーティングの出力光が生成すべき所望の信号である。
【0007】
信号の波形は時間の経過にともなう振幅の変化として表わされる。標本化ブラッググレーティングに設けられたブラッググレーティングの反射率が,生成すべき所望の信号の振幅(信号を表わす関数)の大きさ(標本値)に対応する。ブラッググレーティングの実質的な間隔(標本化間隔)は生成すべき所望の信号の標本化時間間隔に対応する。
【0008】
生成すべき所望のパルス信号(信号を表わす関数)の振幅が正,負の符号を持ち,隣接する標本値が正から負に,またはこれとは逆に変化する場合には,符号の変化にあわせて,標本化ブラッググレーティングから出力される反射波の位相差がπになるように標本化ブラッググレーティングに設けられたブラッググレーティングの実質的な間隔が調整される。この実質的な間隔の調整は,長さの調整,または,ブラッググレーティング間の屈折率の調整によって行われる。
【0009】
生成すべき所望のパルス信号の振幅が正,負の符号を持ち,これが正から負に,またはこれとは逆に変化する場合には,上記短光パルスと同一波長の連続光を,標本化ブラッググレーティングから出力される反射波と合波する。合波する2つの光の位相が一致していると光波は加算され,位相差がπの場合には打消される。標本化ブラッググレーティングから出力される反射波のうち正の振幅を表わす光波と,上記連続光の位相を一致させておけば,これらの光は加算され,上記反射波のうち負の振幅を表わす光波(正の振幅を表わす光波とは位相がπずれている)は打消される。したがって,連続光の振幅(強度レベル)を基準として,上下に振幅が変化する光信号が得られることになる。
【0010】
所望の波形を持つ電気パルス信号を生成する場合には,標本化ブラッググレーティングから出力される反射光波,または連続光と合波された反射光波を光電変換器(光検出器)により電気信号に変換すればよい。連続光と合波されている場合には,電気信号に変換後に,連続光による振幅に相当する直流成分を除去すれば,正,負の符号をもつ電気パルス信号が得られる。
【0011】
以上のようにして,この発明によると,比較的簡素な構成で,所望の波形をもつ光パルス信号または電気パルス信号を得ることができる。
【0012】
なお,標本化ブラッググレーティングの光導波路は光ファイバでもよいし,平面型光導波路でもよい。
【実施例】
【0013】
図1はUWB-IRパルスを生成する装置の全体的構成を示すものである。この実施例では,ガウシアンモノサイクルパルスを生成する例をとりあげる。ガウシアンモノサイクルパルスは,図2の関数h(t) で表わされる波形をもつものであり,ガウス曲線を微分して得られる関数によって表わされるものである。
【0014】
UWB-IRパルス生成装置は標本化ブラッググレーティング(Sampled Fiber Bragg Grating:以下SFBGという)10を備えている。
【0015】
一般にファイバブラッググレーティング(FBG)は,光ファイバのコア部に周期的な屈折率変調を与えて回折格子を形成したファイバ型のデバイスである。このファイバ内に光を入射すると,
λBragg=2neffΛ ‥‥式(1)
というブラッグ条件を満たす特定の波長の光を強く反射(回折)する。ここでΛは屈折率変調の周期,neffはファイバのコア部の有効(実効)屈折率である。この回折格子を以下,サブFBGという。
【0016】
SFBGは,複数個のサブFBG(回折格子)を光ファイバ内に,離散的に(すなわち間隔をあけて),直列に配置したものであり,生成すべき所望のパルス信号に応じて次のような特性をもつように構成される。
【0017】
図2を参照して生成すべき所望のパルス信号を表わす関数h(t) (tは時間)を標本化(サンプリング)したときの標本化時間間隔をTsとする。標本化時間間隔Tsは生成すべきパルス信号の精度,その他の要因に応じて適切に定める。SFBG10内には,この時間間隔Tsに応じた間隔(標本化間隔)LsをあけてサブFBGが設けられる。サブFBG間の間隔Lsは,時間間隔Tsを用いて,次式で与えられる。
【0018】
Ls=cTs/2neff ‥‥式(2)
ここでcは光速である。
【0019】
SFBG10の各サブFBGの反射率(図2にR(z) で表わされる。zはSFBGの軸方向の距離を表わす)は生成すべき所望のパルス信号(ガウシアンモノサイクルパルス)の振幅(絶対値)に対応する。
【0020】
SFBG10において,隣接するサブFBGによって反射される光波の位相差(図2にΔφで示す)は,生成すべき所望のパルス信号(ガウシアンモノサイクルパルス)の振幅の符号(極性)が正または負に保たれているときには0に,生成すべき所望のパルス信号の振幅の符号が負から正へ,またはこの逆に変化するところではπになるように調整される。図2において,位相差Δφは,関数h(t) が負から正に反転しているところにおいてπになるように制御されている。反射光波間位相差の調整は,間隙部への紫外線照射,熱,応力の印加等により行うことができる。
【0021】
UWB-IRパルス生成装置はさらに,2つの光源21,20と,光サーキュレータ22と,3dBカプラ(合波器)23と,光検出器(光電気変換器)24と,直流成分除去回路25とを備えている。
【0022】
光源21は短光パルス光を発生するレーザ素子であり,この光源21から発生した短光パルスは光サーキュレータ22を経てSFBG10の一端から内部のコアに導入される。
【0023】
SFBG10の各サブFBGからの反射光はSFBG10の上記一端から出射し,光サーキュレータ22を経て出力される。光サーキュレータ22の出力光はカプラ23を経て光検出器24に入力し,電気信号に変換される。
【0024】
上述したように,SFBG10の各サブFBGの反射率R(z) は生成すべき光パルス(ガウシアンモノサイクルパルス)の振幅に対応する。SFBG10にはパルス幅の非常に狭い短光パルスが入射する。したがって,SFBG10の各サブFBGからの反射光が重畳されたSFBG10の出力反射光(光サーキュレータ22の出力光)は,反射率R(z) と位相差により設定した所望の波形をもつ。このようにして,SFBG10のサブFBGの反射率として振幅を設定し,符号の変化を位相差(0またはπ)で表わした所望の波形をもつ光パルスがSFBG10(光サーキュレータ22)から得られる。電気パルス信号を得る場合には,光サーキュレータ22の出力光を光検出器24に入力し,電気信号に変換すればよい。
【0025】
光サーキュレータの出力光はSFBGの各サブFBGからの反射光を重畳したものとなるから,所望の波形の重畳光が得られるように短光パルスのパルス幅と標本化間隔Ts とを定める。一般的には,短光パルスの半値全幅が標本化間隔Ts と同じ程度が望ましい。
【0026】
図3は,試作したSFBGを用いた実験により得られた光パルス波形と理論波形を示している。実験結果の波形は光サーキュレータ22の出力を光検出器により検知したものである。試作したSFBGは図2に示すような反射率R(z) と位相差Δφをもつものである(ただし,サブFBGの数は11)。光源21としては,パルス幅約30ピコ秒のガウス型パルス(短光パルス)を出力する波長1554nmのパルスレーザを用いた。
【0027】
図3より,パルス幅が約 200ピコ秒のガウシアンモノサイクルパルスが得られていることが分る。光検出器の二乗特性により正負が折り返されているものの,二つの山の間が深く切れ込んでいることから,左右の山の中間で位相差がπとなる所望の光パルスが生成されていることが分る。
【0028】
ガウシアンモノサイクルパルスのように(図2の関数h(t) を参照),波形が正,負の符号をもつ電気パルスを生成する場合には,連続光の光源20が用いられる。この光源20は光源21と同じ発振波長をもつものである(たとえば連続発振レーザ)。光源20からの連続光は位相シフタ26を経てカプラ23に送られる。カプラ23において,光サーキュレータ22の出力光と光源20の出力連続光とが合波される。好ましくは連続光の振幅(レベル)は光サーキュレータ22の出力光の振幅の最大値よりも大きい。
【0029】
上述のように所望の波形(h(t) )が負から正へ,またはこの逆に変化している箇所では,反射光の位相差がπとなるように(他の箇所では位相差が0となるように),SFBG10の間隙部の屈折率が調整されている。光サーキュレータ22の出力光に現われる位相反転を利用して,所望の波形の正,負反転が,次のように光信号の振幅(レベル)で表現される。すなわち,所望の波形の0レベルを連続光の振幅(レベル)とする。連続光の位相と光サーキュレータ22の出力光の位相が一致している場合には,これらの光を合波すると光は強めあう(加算される)。所望の波形の正の部分に関して,光サーキュレータ22の出力光と連続光の位相とが一致するように,位相シフタ26により連続光の位相を調整する。
【0030】
光サーキュレータ22の出力光の位相と連続光の位相がπずれているときには,これらの光は打ち消し合う。したがって,所望の波形の負の部分に関しては(光サーキュレータ22の出力光は上述のように,負の部分については正の部分から位相がπずれている),合波後の光信号は,連続光の振幅(レベル)を基準として下方(レベルが下る方向)に振幅が変化する。
【0031】
このようにして,連続光の振幅(レベル)を基準として,光サーキュレータ22の出力光の振幅が位相に応じて上または下に変化し,所望の波形が,連続光の振幅(レベル)を基準として,合波された光の振幅として表現されることになる。
【0032】
なお,光源21と光サーキュレータ22との間,および光源20と位相シフタ26との間に偏光制御器27,28が設けられ,これにより,上述した光の干渉を適切に実現するために光サーキュレータ22から出力する光と位相シフタ26から出力する光の偏波面を一致させる。
【0033】
カプラ23の光出力信号は光検出器24により電気信号に変換される。これにより,所望の波形を表わす電気パルス信号が得られる。
【0034】
連続光を合波した場合には,好ましくは,光検出器24の出力電気パルス信号から直流成分(連続光成分に相当する)を直流成分除去回路25により除去する。これにより,0レベルが所望の波形(関数h(t) )の0レベルと一致した電気パルス信号が得られる。
【0035】
上記実施例ではブラッググレーティングが光ファイバのコア内に形成されたファイバブラッググレーティング(SFBG)が用いられているが,平面型光導波路にブラッググレーティングを形成したものをSFBGに代えて用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例のパルス信号生成装置の構成を示す。
【図2】所望の信号波形を示す関数h(t) ,ならびにこれを生成するためのSFBGの構成,その反射率R(z) および位相差Δφを対応させて示すものである。
【図3】試作SFBGにより生成された幅約 200ピコ秒のガウシアンモノサイクルパルスの実験結果と理論を示す波形図である。
【符号の説明】
【0037】
10 標本化ファイバブラッググレーティング(SFBG)
20 連続光レーザ
21 短光パルスレーザ
22 光サーキュレータ
23 3dBカプラ(合波器)
24 光検出器
25 直流成分除去回路
26 位相シフタ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2