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明細書 :パラジウム触媒を用いた選択的水素添加反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3976579号 (P3976579)
公開番号 特開2003-238482 (P2003-238482A)
登録日 平成19年6月29日(2007.6.29)
発行日 平成19年9月19日(2007.9.19)
公開日 平成15年8月27日(2003.8.27)
発明の名称または考案の名称 パラジウム触媒を用いた選択的水素添加反応方法
国際特許分類 C07C  67/303       (2006.01)
B01J  23/44        (2006.01)
C07C  41/20        (2006.01)
C07C  43/205       (2006.01)
C07C  69/736       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 67/303
B01J 23/44 Z
C07C 41/20
C07C 43/205 C
C07C 69/736
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 2
全頁数 14
出願番号 特願2002-033258 (P2002-033258)
出願日 平成14年2月8日(2002.2.8)
審査請求日 平成17年2月8日(2005.2.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000045
【氏名又は名称】株式会社キャンパスクリエイト
発明者または考案者 【氏名】牧 昌次郎
【氏名】丹羽 治樹
【氏名】佐野 淳典
個別代理人の代理人 【識別番号】100091904、【弁理士】、【氏名又は名称】成瀬 重雄
審査官 【審査官】井上 千弥子
調査した分野 C07C 67/303
B01J 23/44
C07C 41/20
C07C 43/205
C07C 69/736
C07B 61/00
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
陽極及び導電性を有する支持体を含んで成る陰極を用いてパラジウムイオンを含む溶液を電解することにより得られた、導電性支持体上に担持されたパラジウムブラックの存在下、A)炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を有する化合物、B)炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つを有する化合物及びC)炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を有する化合物から成る群より、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合とが共存するように選択された化合物若しくはその組み合わせと、水素とを接触させることを特徴とする、当該炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合の選択的水素添加反応方法。
【請求項2】
陽極及び導電性を有する支持体を含んで成る陰極を用いてパラジウムイオンを含む溶液を電解することにより得られた導電性を含んで成る支持体上に担持されたパラジウムブラックから成る、炭素-炭素三置換二重結合及び炭素-炭素四置換二重結合への水素添加反応を伴うことのない、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合の選択的水素添加反応用触媒。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合とが共存する反応系に於ける、当該炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合の選択的水素添加反応方法及び該方法に用いられる触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
パラジウム触媒を用いた水素添加反応は、有機合成において日常的に行われている極めて重要な反応である。しかしながら、水素添加反応に使用されるパラジウム触媒は一般的にパラジウムブラックやパラジウム-炭素等の粉末触媒であり、これらを用いて反応を行うと反応毎に濾過を行う必要がある他、触媒自体発火性が高く、摩擦等による静電気発火の危険性も伴っているため、その取り扱いには細心の注意が必要であった。そこで、鋭意研究の結果、本発明者等の一部は、触媒自体が発火し難く、且つ反応後も反応液から触媒を容易に分離できるパラジウム触媒として、陽極及び導電性物質からなる陰極を用いてパラジウムイオンを含んで成る溶液を電解することにより得られる、導電性物質上に担持されたパラジウムブラックを見出した。そして、この触媒を用いれば、従来のパラジウムブラック触媒では行うことの出来なかった選択的な反応、即ち、ベンジル基等の保護基と炭素-炭素二重結合とを含む化合物の炭素-炭素二重結合の水素添加反応のみを行うことが可能となることも見出した。
【0003】
この様な状況から、上記した如くして得られたパラジウムブラック触媒の上記選択的反応以外の新たな用途開発が期待されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き状況に鑑み為されたもので、電気化学的手段によって得られた導電性物質担持パラジウムブラックを触媒として用いることで、触媒の発火等の危険性を伴うことなく、容易に行うことのできる選択的反応を見出すことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、陽極及び導電性を有する支持体を含んで成る陰極を用いてパラジウムイオンを含む溶液を電解することにより得られた、導電性支持体上に担持されたパラジウムブラックの存在下、A)炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を有する化合物、B)炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つを有する化合物及びC)炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を有する化合物から成る群より、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合とが共存するように選択された化合物若しくはその組み合わせと、水素とを接触させることを特徴とする、当該炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合の選択的水素添加反応方法(以下、本発明の選択的水素添加反応と略記することがある。)である。
【0006】
また本発明は、陽極及び導電性を有する支持体を含んで成る陰極を用いてパラジウムイオンを含む溶液を電解することにより得られた導電性を含んで成る支持体上に担持されたパラジウムブラックから成る、炭素-炭素三置換二重結合及び炭素-炭素四置換二重結合への水素添加反応を伴うことのない、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合の選択的水素添加反応用触媒の発明である。
【0007】
即ち、本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、陽極及び導電性物質からなる陰極を用いてパラジウムイオンを含んで成る溶液を電解することにより得られる導電性物質上に担持されるパラジウムブラックを触媒として用いることにより、発火等の危険性を伴うことなく、炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を水素添加(還元)せず、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合のみを選択的に水素添加(還元)反応させるという、従来の触媒を用いた場合には行うことの出来なかった選択的反応を容易に行うことが出来ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明に係る、導電性物質に担持されたパラジウムブラック(本発明に係る担持パラジウムブラックと略記することがある。)を製造するには、例えば、陽極と導電性物質からなる陰極とを用いて、パラジウムイオンと要すれば支持電解質とを含有する電解液に通電し、陰極である導電性物質上にパラジウムブラックを担持させればよい。
【0009】
陽極としては、導電性を有するものであれば如何なるものでもよく、通常の電解操作において陽極として用いられているものを使用すればよい。その代表的な例としては、例えばグラッシーカーボン等の炭素電極、例えばアルミニウム、スズ、鉛、鉄、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀等の金属電極或いはそれらの合金電極、例えば過酸化水素ガス電極、酸素ガス電極、窒素ガス電極、シランガス電極、炭酸ガス電極、水素ガス電極等のガス電極等が挙げられる。
【0010】
陰極を形成する導電性物質としては、物質の一部又は全部が導電性を有しているものであれば金属でも非金属でもよい。導電性物質の具体例としては、例えばグラッシーカーボン等の炭素系物質、例えばアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の第III族元素、例えばスズ、鉛等の第IV族元素、例えばスカンジウム、イットリウム、ランタン、アクチニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、プロトアクチニウム、クロム、モリブデン、タングステン、ウラン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀等遷移元素等から成る金属、例えばポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。
【0011】
上記陰極の形状としては、例えばシート状、球状、棒状、塊状、メッシュ状、繊維状、綿状等が挙げられ、電極の表面積が大きくなる様な形状のものが好ましく、中でも電極表面を三次元化した形状であるメッシュ状、繊維状、綿状等が好ましい。
【0012】
また、必要に応じて、例えば飽和甘コウ電極等の参照電極を用いてもよい。
【0013】
パラジウムイオンを含む電解液としては、パラジウムイオンを含んでいれば如何なるでもよく、所謂陰イオンやパラジウムイオン以外の陽イオン等が混在していてもよい。該電解液に於ける溶媒としては、導電性を有しているものでも有していないものでもよく、この分野で一般に用いられるものは全て使用可能である。その代表的な例としては、例えば水、例えばメタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホアミド等の水溶性有機溶媒、例えば無水酢酸、酢酸エチル、塩化メチレン、ベンゼン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ヘキサメチルホスホアミド等の非水溶性有機溶媒等が挙げられる。尚、該溶媒が導電性を有していない場合には、適宜支持電解質を溶媒に溶解させたり、或いは導電性を有する溶媒を該溶媒に混合するなどして導電性を持たせればよく、導電性を有する溶媒を使用する場合でも、必要に応じて支持電解質を用いて電解液の導電性を更に上げてもよい。上記した如き溶媒は単独でも或いは二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0014】
尚、パラジウムイオンとしては、通常二価、三価及び四価のものが挙げられるが、その入手し易さから二価のものが好ましく、中でも水や水溶性有機溶媒に溶解し易い、例えば塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩に由来するものがより好ましい例として挙げられる。
【0015】
電解液は、例えば前記した如きパラジウム塩、要すれば更に支持電解質を水等の溶媒に溶解しても得ることが出来るが、通常0.3N~5N、好ましくは1~2Nの酸溶液に溶解させると容易に調製することが出来る。例えば、パラジウム塩として塩化パラジウムを用いる場合、適当な濃度の塩酸溶液にそれを溶解させ、要すれば更に支持電解質を溶解させることにより容易に電解液を調製し得る。
【0016】
パラジウムイオンを含む電解液におけるパラジウムイオンの濃度は、通常1×10-6mol/L~過飽和状態まで、好ましくは1×10-4~1×10-1mol/Lである。
【0017】
支持電解質としては、一般に使用されているものであれば如何なるものでもよく、例えば硫酸、ホウ酸、塩酸、酒石酸、乳酸、酢酸等の酸、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、無機アンモニウム塩等の無機塩類、例えばスルホニウム塩、オキソニウム塩、有機アンモニウム塩等の有機塩類が挙げられ、代表的な具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、過炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトライソプロピルアンモニウム、過塩素酸テトラヘキシルアンモニウム、塩化アンモニウム、過塩素酸ルビジウム、過塩素酸セシウム、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロ燐酸アンモニウム、テトラフルオロ燐酸テトラメチルアンモニウム、フタル酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸セシウム、、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、テトラブリルアンモニウムヒドロキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、グリシン、クエン酸ナトリウム、ほう砂等が挙げられ、中でも水と反応しやすいアルカリ金属或いはアルカリ土類金属から成る塩が好ましく、その代表例としては過塩素酸リチウムが挙げられる。
【0018】
支持電解質の使用量は、電解液中の濃度として通常1~100mg/mL、好ましくは5~50mg/mL、より好ましくは5~20mg/mLである。
【0019】
通電するための電流は、所謂電流供給装置や各種電池等を用いて得ればよい。
【0020】
通電時の電気量は、通常1×10-3~1×103F/mol、好ましくは1×10-1~1×102F/mol、より好ましくは約1~10F/molであり、例えばポテンショスタット、ガルバノスタット等で電流を一定に保つことが好ましい。
【0021】
通電時間は、電解液中のパラジウムイオン濃度、支持電解質の種類や濃度、或いは通電する電気量によっても異なるが通常1分~24時間、好ましくは1分~5時間であり、より好ましくは5分~2時間である。
【0022】
かくして、陽極及び陰極を電解液に接触させて通電することにより、陰極から放出される電子によって電解液中のパラジウムイオンが還元され、パラジウムブラックが陰極表面に担持される。
【0023】
本発明に係る担持パラジウムブラックに於いて、パラジウムブラックの担持量は特に限定されないが、経済的な面を考慮すると、導電性物質の単位面積当たり通常5×10-3~5×103mg/cm2、好ましくは5×10-1~50mg/cm2、3~20mg/cm2である。
【0024】
パラジウムブラックが担持された導電性を有する物質は、例えば水、例えばアセトン等のケトン類、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類等の各種有機溶媒等によってした後、例えばドライヤー等による送風・温風、例えば真空ポンプ等による減圧操作等によって乾燥した後、各種反応の触媒等として用いられる。
【0025】
上記方法によって製造された、本発明に係る担持パラジウムブラックは、温風にさらしても、或いは空気中に放置しても全く発火せず、またその触媒活性も落ちることなく長期間安定に存在し得る。
【0026】
また、本発明に係る担持パラジウムブラックは、支持体である導電性を有する物質に担持されているため、これを触媒として使用した場合には濾過等の煩雑な操作なしに容易に回収、再使用することが可能である。
【0027】
本発明に係る担持パラジウムブラックを触媒として用い、これの存在下、A)炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を有する化合物、B)炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つを有する化合物及びC)炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を有する化合物から成る群より、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び炭素-炭素三重結合から選ばれた少なくとも1つと炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合とが共存するように選ばれた化合物若しくはその組み合わせと、水素とを接触させることで、炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合への水素添加反応を伴わずに単一化合物或いは複数種の化合物が有する当該炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合のみの選択的水素添加が可能となる。
【0028】
上記した如きA)、B)及びC)から成る群より選択される化合物若しくはその組み合わせとしては、▲1▼A)の化合物のみ、▲2▼B)の化合物とC)の化合物との組み合わせ、▲3▼A)の化合物とB)の化合物との組み合わせ、▲4▼A)の化合物とC)の化合物との組み合わせ、及び▲5▼A)の化合物とB)の化合物とC)の化合物との組み合わせが挙げられる。
【0029】
尚、本発明に係る担持パラジウムブラックの存在下、上記した如きA)~C)の化合物の多種混合物に水素を接触させても、上記と同様に化合物中の炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合は水素添加されず、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合のみが水素添加される。
【0030】
上記した如き本発明の選択的水素添加反応方法に於いて、反応基質である上記A)の化合物、B)の化合物及びC)の化合物としては、夫々の化合物で定義される種類の結合を有するものであれば如何なるものでもよい。
【0031】
反応系に存在させる本発明に係る担持パラジウムブラック触媒の使用量としては、反応基質に対して通常1×10-5~100wt%、好ましくは1×10-2~100wt%、より好ましくは5×10-1~5wt%である。
【0032】
上記した如き本発明の選択的水素添加反応方法に於いては、適当な溶媒を用いても或いは無溶媒で反応を行ってもよい。
【0033】
溶媒を用いる場合の溶媒としては、反応温度で液体であれば如何なるものでもよく、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、例えばベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン等のアルキル置換芳香族炭化水素類、例えばビフェニル、ターフェニル等のビフェニル類、例えばフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、トリブロモベンゼン、テトラブロモベンゼン、ペンタブロモベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ヨードブロモベンゼン、ジヨードベンゼン、トリヨードベンゼン、テトラヨードベンゼン、ペンタヨードベンゼン、ヘキサヨードベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレン、フルオロトルエン、クロロトルエン、ブロモトルエン、ヨードトルエン等のハロゲン置換芳香族炭化水素類、例えばアニソール、エトキシベンゼン、プロピルオキシベンゼン、ブトキシベンゼン、ペンチルオキシベンゼン、ヘキシルオキシベンゼン等のアルコキシ置換芳香族炭化水素類等、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、例えばフェノール、カテコール、レゾルシノール、クレゾール等のフェノール類、例えば蟻酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ブロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ラク酸エチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジメチルコハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル等の芳香族カルボン酸、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキシルアセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、アセトイン等のケトン類、例えばジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルフェニルエーテル等のエーテル類、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、ニコチンアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリコールアルデヒド、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、グリオキサル、アミノアセトアルデヒド、アミノブチルアルデヒド、アスパラギンアルデヒド等のアルデヒド類、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1-エチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ナフチルアミン、ベンゾフランアミン等のアミン類等の有機溶媒等が挙げられる。これら溶媒は、反応基質の種類、反応温度或いは目的とする反応時間等によって適宜選択され、単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。尚、反応基質の水素添加反応が優先されるように、炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合等の水素添加反応を起こすような構造を有する化合物からなる溶媒でないものを用いることが好ましい。
【0034】
また、溶媒の中でも例えば上記芳香族炭化水素類、アルキル置換芳香族炭化水素類、ハロゲン置換芳香族炭化水素類、アルコキシ置換芳香族炭化水素類等の非プロトン性の芳香族炭化水素類を用いることにより、反応基質の種類、反応温度或いは反応時間等に関係なく、水素添加反応に於いて炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合のみを効果的に還元することが出来る。
【0035】
また、大過剰の上記非プロトン性芳香族炭化水素類の溶媒に極微量の、例えば水、アルコール類、フェノール類、カルボン酸エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を添加したものも反応条件によっては選択的水素添加反応の効果的な溶媒になり得る。
【0036】
また、該溶媒に反応基質が完全に溶解しなくとも、懸濁状態で反応を行うことができる。
【0037】
溶媒を用いない場合には、反応基質を溶融して反応を行ってもよく、また気相中で基質を反応させてもよい。
【0038】
反応系に存在させる水素ガスの圧力は、通常0.1~10000気圧、好ましくは0.5~10気圧、より好ましくは約1~2気圧である。
【0039】
反応温度は、通常-200~1000℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~30℃である。
【0040】
反応時間は、通常約1分~1000時間、好ましくは30分~240時間、より好ましくは30分~72時間である。
【0041】
本発明の選択的水素添加反応の終了後、反応系から取り出され、洗浄乾燥された本発明に係る担持パラジウムブラックは、上記した如き使用によっても触媒活性の低下は極めて小さいことから、同反応の触媒として繰り返し使用することが可能である。
【0042】
尚、本発明の選択的水素添加反応方法に於いて、上記した如き反応条件以外の操作及び後処理法は、自体公知の水素添加反応に準じて行えばよい。
【0043】
以下に、参考例、実験例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
参考例1.本発明に係る担持パラジウムブラックの製造
塩化パラジウム50mgを1N塩酸10mlに溶解して2.8×10-2mol/Lとした塩化パラジウム塩酸溶液に電解質として過塩素酸リチウム約100mgを加えた。電解層に参照電極として飽和甘コウ電極と、陽極としてグラッシーカーボン板(100mm/10mm/1mm, H/W/D)を装着し、ポテンショスタットに配線した。尚、ポテンショスタットはガルバノスタットモードで使用した。0.06gの短冊状パラジウム薄膜(5mm×25mm×50μm)が陰極となるように、その先端約20mmを塩化パラジウム塩酸溶液に浸して配線した。ガルバノスタットで15mAを1時間かけて通電(約2F/mol相当)して、陰極であるパラジウム薄膜表面にパラジウムブラック(15mg/cm2)を担持させた。パラジウムブラックが担持されたパラジウム薄膜を十分に水洗、乾燥して溶媒を完全に取り除いて、本発明に係る担持パラジウムブラック触媒を得た。
【0045】
実験例1.本発明に係る担持パラジウムブラックの安定性
参考例1で得られた本発明に係る担持パラジウムブラックに水素を吸蔵させ、また可燃性有機溶媒であるアセトンを含ませた後、該担持パラジウムブラックをドライヤーで温風乾燥させたが、発火は起こらなかった。また、更に該担持パラジウムブラックを大気中で24ヶ月間放置しても発火は起こらなかった。
【0046】
温風乾燥及び大気放置後の本発明の担持パラジウムブラックを触媒として使用したところ、温風乾燥及び大気放置前の同担持パラジウムブラックと同等の触媒活性が確認された。
【0047】
実施例1.本発明の選択的水素添加反応
炭素-炭素三置換二重結合及び炭素-炭素二置換二重結合を有する化合物
【0048】
JP0003976579B2_000002t.gif【0049】
18mgをトルエン10mLに溶解し、該溶液中に参考例1で得られた本発明に係る担持パラジウムブラック13.2mg(パラジウムブラック量として0.7mg)を入れた後、水素雰囲気下で約48時間撹拌反応させた。反応終了後、反応液から担持パラジウムブラックを取り出した後、反応液を減圧濃縮して、
【0050】
JP0003976579B2_000003t.gif【0051】
18mgを得た(収率100%)。また、反応開始から1時間、4時間、24時間及び48時間後に於ける反応液中に存在する化合物の割合をNMRによって測定した。その結果を表1及び表4に示す。
【0052】
比較例1~4.従来のパラジウム触媒を用いた反応
本発明に係る担持パラジウムブラック触媒の代わりに表1に示した従来のパラジウム触媒を用いた以外は実施例1と同様にして水素添加反応を行った。反応開始から1時間、4時間或いは48時間経過後の反応液中に存在する化合物の割合を実施例1と同様に測定した結果を表1に併せて示す。
【0053】
【表1】
JP0003976579B2_000004t.gif【0054】
尚、従来のパラジウム触媒のうち自製Pdブラックは、蟻酸を用いて塩化パラジウムを還元するという公知の方法で自製したものである。
【0055】
また、表1に於ける数字は、下記式A、B及びCで示される化合物の反応液中の存在割合を示すものである。
【0056】
JP0003976579B2_000005t.gif【0057】
実施例2.本発明の選択的水素添加反応
反応基質に炭素-炭素三置換二重結合及び炭素-炭素一置換二重結合を有する化合物
【0058】
JP0003976579B2_000006t.gif【0059】
17mgを用いた以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ
【0060】
JP0003976579B2_000007t.gif【0061】
17mgを得た(収率100%)。また、反応開始から1時間、4時間、24時間及び48間後に於ける反応液中に存在する化合物の割合をNMRによって測定した。その結果を表2及び表5に示す。
【0062】
比較例5~8.従来のパラジウム触媒を用いた反応
本発明に係る担持パラジウムブラック触媒の代わりに表2に示した従来のパラジウム触媒を用いた以外は実施例2と同様にして水素添加反応を行った。反応開始から1時間及び4時間(パラジウムシートについては48時間)経過後の反応液中に存在する化合物の割合を実施例2と同様に測定した結果を表2に併せて示す。尚、自製Pdブラックは比較例3で用いたものと同じものを使用した。
【0063】
【表2】
JP0003976579B2_000008t.gif【0064】
尚、表2に於ける数字は、下記式A、B及びCで示される化合物の反応液中の存在割合を示すものである。
【0065】
JP0003976579B2_000009t.gif【0066】
表1及び2より明らかな如く、本発明に係る担持パラジウムブラックを触媒として使用することにより、従来のパラジウム触媒を使用した水素添加反応では不可能であった選択的水素添加反応、即ち、炭素-炭素三置換二重結合を還元することなく、炭素-炭素一置換及び二置換二重結合のみの水素添加反応を行うことができるということが分かる。
【0067】
実施例3.混合物の選択的水素添加反応
JP0003976579B2_000010t.gif【0068】
上記化合物(1)18mg及び化合物(2)20mgをベンゼン20mLに溶解し、そこに参考例1で得られた本発明に係る担持パラジウムブラック26.4mg(パラジウムブラック量として1.4mg)を加えた後、水素雰囲気下で約24時間反応させた。反応終了後、反応液から担持パラジウムブラックを取り出した後、反応液を減圧濃縮して上記化合物(3)18mg及び化合物(4)20mgを得た(収率夫々100%)。また、反応開始から1時間及び4時間での反応生成物をNMRにより測定した結果、反応は開始から1時間の時点でほぼ終わっており、4時間の時点で完結していることが分かった。
【0069】
実施例4.混合物の選択的水素添加反応
溶媒としてトルエン20mLを使用した以外は実施例3と同様にして水素添加反応を行ったところ、実施例3と同じ化合物(3)及び化合物(4)を得た(収率夫々100%)。
反応開始から1時間、4時間及び24時間経過後の反応液中に存在する化合物の割合をNMRにより測定した。その結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
JP0003976579B2_000011t.gif【0071】
実施例5.
溶媒としてトルエン10mLの代わりにベンゼン10mLを使用した以外は実施例1と同様にして水素添加反応を行ったところ、実施例1で得られた化合物と同じ化合物が得られた(収率100%)。また、実施例1と同様に、反応開始から1時間、4時間、24時間及び48時間後に於ける反応液中に存在する化合物の割合をNMRによって測定した。その結果を表4に併せて示す。
【0072】
【表4】
JP0003976579B2_000012t.gif【0073】
尚、表4の括弧中の数字は、下記式A,B及びCで表される化合物の反応液中の存在割合を表し、括弧右肩の数字は反応時間を示す。
【0074】
JP0003976579B2_000013t.gif【0075】
実施例6~7.
溶媒としてトルエン10mLの代わりに1,4-ジオキサン10mL又は酢酸エチル10mLを使用した以外は実施例1と同様にして水素添加反応を行ったところ、1,4-ジオキサンを用いた場合では約48時間後、酢酸エチルを用いた場合では約24時間後に実施例1で得られた化合物と同じ化合物が得られた(収率夫々100%)。
【0076】
実施例8.
溶媒としてトルエン10mLの代わりにベンゼン10mLを使用した以外は実施例2と同様にして水素添加反応を行ったところ、実施例2で得られた化合物と同じ化合物が得られた(収率100%)。また、実施例2と同様に、反応開始から1時間、4時間及び24時間後に於ける反応液中に存在する化合物の割合をNMRによって測定した。その結果を表5に併せて示す。
【0077】
実施例9~12.
表5に記載された溶媒10mLを使用した以外は実施例1と同様にして反応を行った。得られた化合物の割合を表5に併せて示す。
【0078】
【表5】
JP0003976579B2_000014t.gif【0079】
尚、表5の括弧中の数字は、下記式A,B及びCで表される化合物の反応液中の存在割合を表し、括弧右肩の数字は反応時間を示す。
【0080】
JP0003976579B2_000015t.gif【0081】
実施例13~16.
溶媒としてトルエン10mLの代わりに、1,2-ジメトキシエタン、イソプロピルエーテル、アセトン又はジメチルホルムアミドを夫々10mL使用した以外は実施例2と同様にして水素添加反応を行ったところ、全ての溶媒に於いて反応開始から約30分~1時間で実施例2で得られた化合物と同じ化合物が得られた(収率夫々100%)。
【0082】
実施例17.
溶媒としてトルエン10mLの代わりにメタノール10mLを使用し、反応温度を-30℃とした以外は実施例2と同様にして水素添加反応を行ったところ、約30分で実施例2で得られた化合物と同じ化合物が得られた(収率100%)。
【0083】
表4及び5より明らかな如く、本発明に係る担持パラジウムブラック触媒を用いることにより、炭素-炭素三置換二重結合を還元せず、炭素-炭素二置換二重結合のみを選択的に還元し得ることが分かる。また、非プロトン性芳香族炭化水素を溶媒として用いることにより、反応基質の種類に拘わらず効果的に本発明の選択的水素添加反応を行うことが可能であることが分かった。
【0084】
【発明の効果】
以上述べた如く、陽極及び導電性を有する支持体を含んで成る陰極を用いてパラジウムイオンを含む溶液を電解することにより得られた、導電性支持体上に担持されたパラジウムブラックを触媒として用いることにより、発火等の危険性を伴うことなく、炭素-炭素三置換二重結合及び/又は炭素-炭素四置換二重結合を還元せず、炭素-炭素一置換二重結合、炭素-炭素二置換二重結合及び/又は炭素-炭素三重結合のみを選択的に水素添加反応させるという、従来では行うことの出来なかった選択的水素添加反応を可能にした。