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明細書 :熱電変換材料製造方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3586712号 (P3586712)
公開番号 特開2002-223010 (P2002-223010A)
登録日 平成16年8月20日(2004.8.20)
発行日 平成16年11月10日(2004.11.10)
公開日 平成14年8月9日(2002.8.9)
発明の名称または考案の名称 熱電変換材料製造方法及びその装置
国際特許分類 H01L 35/34      
C30B 19/00      
C30B 29/46      
H01L 35/16      
H01L 35/32      
FI H01L 35/34
C30B 19/00 S
C30B 29/46
H01L 35/16
H01L 35/32 A
請求項の数または発明の数 15
全頁数 12
出願番号 特願2001-018643 (P2001-018643)
出願日 平成13年1月26日(2001.1.26)
審査請求日 平成13年1月26日(2001.1.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】野田泰稔
【氏名】高橋正明
【氏名】北川裕之
【氏名】北村寿宏
【氏名】篠原嘉一
個別代理人の代理人 【識別番号】100121197、【弁理士】、【氏名又は名称】森山 陽
審査官 【審査官】小野田 誠
調査した分野 H01L 35/34
C30B 19/00
C30B 29/46
H01L 35/16
H01L 35/32
特許請求の範囲 【請求項1】
真空又は不活性ガス,水素ガス等のガス流れの雰囲気中に設置された成長ボート内に形成された原料室で熱電変換材料原料を溶融し,次いで,溶融原料の予め決められた所定量を前記原料室で保持又は前記原料室から成長室へ注入し,前記溶融原料を前記原料室又は前記成長室において徐冷又は急冷して凝固させ,結晶方位が高性能を有する方向に配向した熱電変換材料を得ることから成る熱電変換材料製造方法。
【請求項2】
前記溶融原料の高温加熱によって前記溶融原料の成分元素の一部が高い蒸気圧になって前記溶融原料が分解して前記成分元素が蒸発することに応じて,分解蒸発した前記成分元素を凝縮室から前記溶融原料に補うことから成る請求項1に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項3】
前記溶融原料を凝固させる際に,前記成長室に予め決められた所定の形状に加工成形された成長室を備えた鋳型を配置し,前記鋳型の前記成長室に前記溶融原料を鋳込んで凝固させることから成る請求項1又は請求項2に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項4】
前記溶融原料を凝固させる前記原料室又は前記成長室に温度勾配をつけた状態に設定し,前記溶融原料の凝固の際に前記原料室又は前記成長室の一端から前記熱電変換材料の結晶を成長させることから成る請求項1~3のいずれか1項に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項5】
前記溶融原料を凝固させる際に,前記鋳型の前記成長室の底に基板を配置し,前記基板の上に前記熱電材料を鋳込んで成長させることから成る請求項4に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項6】
前記基板をCdTe結晶等の結晶物質で構成し,前記基板上に方位の揃ったn型熱電変換材料又はp型熱電変換材料を成長させることから成る請求項に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項7】
前記基板をp型熱電変換材料で構成し,前記基板上にn型熱電変換材料を成長させてp-n接合を形成することから成る請求項に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項8】
前記p-n接合を加工して電極を接続して熱電変換素子を形成し,前記熱電変換素子を集合させて熱電変換モジュールを作製したことから成る請求項7に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項9】
前記熱電変換材料はBi2 Te3 系熱電変換材料であることから成る請求項1~8のいずれか1項に記載の熱電変換材料製造方法。
【請求項10】
真空又は不活性ガス,水素ガス等のガス流れの雰囲気を形成する成長用管,前記成長用管内に設置された成長ボート,Bi2 Te3 系等の熱電変換材料原料を溶融するための前記成長ボートに形成された原料室,前記原料室の底面を形成すると共に前記成長ボートを貫通して摺動移動するスライダ,溶融原料を徐冷又は急冷して凝固させるための前記スライダに設けられた少なくとも1個の成長室,及び前記溶融原料から分解蒸発した成分元素を前記溶融原料に補うための前記成長ボートに設けられた凝縮室,から成る熱電変換材料製造装置。
【請求項11】
前記成長ボートは,熱電変換材料原料から熱電変換材料を製造するための前記原料室と前記凝縮室が形成された上部ホルダー部,前記上部ホルダー部の上部を閉鎖する上部カバー部,及び前記上部ホルダー部を保持すると共に前記スライダを摺動自在に保持する下部ホルダー部から構成されていることから成る請求項10に記載の熱電変換材料製造装置。
【請求項12】
前記成長用管は石英から作製され,また,前記成長ボートを構成する前記上部ホルダー部,前記下部ホルダー部及び前記上部カバー部は黒鉛から作製されていることから成る請求項10又は11に記載の熱電変換材料製造装置。
【請求項13】
前記成長管には,前記成長用管の内部を真空にするための真空ポンプと前記成長管で発生する廃ガスを処理する廃ガス処理装置に接続する排出管,及び前記成長管の内部にガスを送り込むためのガス供給管が接続されていることを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の熱電変換材料製造装置。
【請求項14】
前記成長室は,前記スライダの往復移動によって前記原料室の底面に開口して前記溶融原料を受け入れる位置と前記上部ホルダー部で閉鎖されている位置との間を摺動移動し,いずれかの前記位置で徐冷又は急冷するように構成されていることから成る請求項10~13のいずれか1項に記載の熱電変換材料製造装置。
【請求項15】
前記成長室は,前記スライダに少なくとも1個の直方体形状等の凹部に形成され,前記原料室から前記溶融原料が予め決められた所定量だけ注入できる容積に形成されていることから成る請求項10~14のいずれか1項に記載の熱電変換材料製造装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,熱電変換素子や熱電変換モジュール等を作製するのに適用され,熱エネルギーを電力に変換したり,電力を熱エネルギーに変換する熱電変換材料の製造方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,熱電変換材料の製造方法は,通常,固体から作製する方法と液体から作製する方法がある。熱電変換材料を固体から作製する方法は,熱電変換材料の化合物や合金を粉砕して焼結する方法,原料の成分元素をボールミルにより混合し,粉砕して化合物や合金を作製するメカニカルアロイイング(MA)と称せられる方法等がある。
【0003】
例えば,特開平10-215006号公報には,熱電変換材料を固体から製造する方法が開示されている。該熱電変換材料の製造方法は,少なくともビスマス及びテルルの元素を含有した熱電変換原料粉末を加圧成形して成形体を形成する成形工程と,成形体を加熱して焼結する燒結工程とを有し,成形工程に熱電変換原料粉末中の酸素を炭素によって除去する除去手段が設けられたものである。
【0004】
また,液体である融体から作製する方法は,原料の成分元素又は化合物を石英又はガラスから成る成長管に真空封入した後,成分元素又は化合物の融点以上に加熱して溶融し,この融体を成長管の一端から冷却して単結晶を成長させ,その後,成長管を破って単結晶を取り出すという作製過程を経る方法等がある。例えば,特開2000-183412号公報には,融体から作製する方法として,積層材料の製造方法および製造装置が記載されている。該積層材料の製造方法および製造装置は,熱電変換材料の原料からなるインゴットを平行板で挟み,インゴットを加熱しながら加圧して輪転させ,基板となる平行板上にインゴットから溶融した材料を転写して薄膜を形成させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の固体から熱電変換材料を作製する方法において,上記のような粉体の焼結法で熱電変換材料を製造すると,得られた熱電変換材料中の結晶粒は細かく,その向きは任意の方向を向いており,そのために結晶が高性能をもつ方向に揃わず,結晶全体が優先方位に配向した材料を作製することができず,高性能な熱電変換材料を作製することは困難であった。また,従来の融体から熱電変換材料を作製する方法については,単結晶から高性能をもつ材料を取り出すために,結晶方位をX線回折や劈開により調べ,所望の高性能をもつ方向に切り出し,さらに大きさを揃えて成形する等,素子形成までに注意深い検査と加工過程を必要とする等の問題点があった。そのため,熱電変換材料が,高性能な結晶方向に配向を持ち,熱電変換素子に簡便に使える大きさや形状に近い形で,繰り返し作製できる製造方法の開発が待たれていた。
【0006】
この発明の目的は,熱電変換材料の溶融原料から層状構造に配向した高性能熱電変換材料の板状材料,基板上への熱電変換材料の成長,エピタキシャル成長,p-n接合,熱電変換素子を確実に,安定して行なうものであり,成長ボート内の原料室中で熱電変換材料の原料を溶融し,融体即ち溶融原料を原料室又は成長室で徐冷又は急冷して熱電変換材料や熱電変換素子を得ることであり,装置そのものを繰り返し使用可能であり,簡便な装置で確実に且つ安定して信頼性に富んだ熱電変換材料を作製することができる熱電変換材料の製造方法及びその装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は,真空又は不活性ガス,水素ガス等のガス流れの雰囲気中に設置された成長ボート内に形成された原料室で熱電変換材料原料を溶融し,次いで,溶融原料の予め決められた所定量を前記原料室で保持又は前記原料室から成長室へ注入し,前記溶融原料を前記原料室又は前記成長室において徐冷又は急冷して凝固させ,結晶方位が高性能を有する方向に配向した熱電変換材料を得ることから成る熱電変換材料製造方法に関する。
【0008】
この熱電変換材料製造方法は,前記溶融原料の高温加熱によって前記溶融原料の成分元素の一部が高い蒸気圧になって前記溶融原料が分解して前記成分元素が蒸発することに応じて,分解蒸発した前記成分元素を凝縮室から前記溶融原料に補うものである。
【0009】
この熱電変換材料製造方法は,前記溶融原料を凝固させる際に,前記成長室に予め決められた所定の形状に加工成形された成長室を備えた鋳型を配置し,前記鋳型の前記成長室に前記溶融原料を鋳込んで凝固させるものである。更に,この熱電変換材料製造方法は,前記溶融原料を凝固させる際に,前記鋳型の前記成長室の底に基板を配置し,前記基板の上に前記熱電材料を鋳込んで成長させるものである。
【0010】
この熱電変換材料製造方法は,前記溶融原料を凝固させる前記原料室又は前記成長室に温度勾配をつけた状態に設定し,前記溶融原料の凝固の際に前記原料室又は前記成長室の一端から前記熱電変換材料の結晶を成長させるものである。
【0011】
この熱電変換材料製造方法は,前記基板をCdTe結晶等の結晶物質で構成し,前記基板上に方位の揃ったn型熱電変換材料又はp型熱電変換材料を成長させるものである。
【0012】
この熱電変換材料製造方法は,前記基板をp型熱電変換材料で構成し,前記基板上にn型熱電変換材料を成長させてp-n接合を形成するものである。
【0013】
この熱電変換材料製造方法は,前記p-n接合を加工して電極を接続して熱電変換素子を形成し,前記熱電変換素子を集合させて熱電変換モジュールを作製したものである。
【0014】
前記熱電変換材料は,BiTe系熱電変換材料である。
【0015】
また,この発明は,真空又は不活性ガス,水素ガス等のガス流れの雰囲気を形成する成長用管,前記成長用管内に設置された成長ボート,BiTe系等の熱電変換材料原料を溶融するための前記成長ボートに形成された原料室,前記原料室の底面を形成すると共に前記成長ボートを貫通して摺動移動するスライダ,溶融原料を徐冷又は急冷して凝固させるための前記スライダに設けられた少なくとも1個の成長室,及び前記溶融原料から分解蒸発した成分元素を前記溶融原料に補うための前記成長ボートに設けられた凝縮室,から成る熱電変換材料製造装置に関する。
【0016】
前記成長ボートは,熱電変換材料原料から熱電変換材料を製造するための前記原料室と前記凝縮室が形成された上部ホルダー部,前記上部ホルダー部の上部を閉鎖する上部カバー部,及び前記上部ホルダー部を保持すると共に前記スライダを摺動自在に保持する下部ホルダー部から構成されている。
【0017】
前記成長用管は石英から作製され,また,前記成長ボートを構成する前記上部ホルダー部,前記下部ホルダー部及び前記上部カバー部は黒鉛から作製されているものである。
【0018】
前記成長管には,前記成長管の内部を真空にするための真空ポンプと前記成長管で発生する廃ガスを処理する廃ガス処理装置に接続する排出管,及び前記成長管の内部にガスを送り込むためのガス供給管が接続されている。
mの範囲の熱電変換材料も容易に作製可能となり,マイクロエレクトロニクス用熱電変換モジユールから大型熱電変換モジユールに適した熱電変換材料の作製が可能であり,本発明は実用に供してその工業的用途が広範囲にわたる。
【0019】
前記成長室は,前記スライダの往復移動によって前記原料室の底面に開口して前記溶融原料を受け入れる位置と前記上部ホルダー部で閉鎖されている位置との間を摺動移動し,いずれかの前記位置で徐冷又は急冷するように構成されているものである。
【0020】
前記成長室は,前記スライダに少なくとも1個の直方体形状等の凹部に形成され,前記原料室から前記溶融原料が予め決められた所定量だけ注入できる容積に形成されている。
【0021】
この熱電変換材料製造方法及びその装置は,上記のように構成されているので,成長ボート中の原料室又は成長室,或いは成長室内に配設された鋳型に設けた成長室内で熱電変換材料の結晶を成長させることにより,熱電変換材料の融体即ち溶融原料から,高度に結晶配向した熱電変換材料の作製が可能となる。また,凝縮室を設けているので,熱電変換材料中の蒸発し易い成分の損失を防ぎ,又は損失を補い,熱電変換材料の原料組成の変化を防止することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による熱電変換材料製造方法及びその装置の実施例を説明する。
【0023】
まず,この発明による熱電変換材料製造方法の実施例について説明する。この熱電変換材料製造方法は,主として,真空又は不活性ガス,水素ガス等のガス流れの雰囲気中に設置された成長ボート2内に形成された原料室25で熱電変換材料原料を溶融し,次いで,溶融原料28の予め決められた所定量を原料室25で保持するか,又は原料室25からスライダ21に設けた成長室22へ注入し,溶融原料28を原料室25又は成長室22において徐冷又は急冷して凝固させ,結晶方位が高性能を有する方向に配向した熱電変換材料を得るものである。
【0024】
この熱電変換材料製造方法では,溶融原料28の高温加熱によって溶融原料28の成分元素の一部が高い蒸気圧になって溶融原料28が分解して成分元素が蒸発することに応じて,分解蒸発した成分元素を凝縮室26から溶融原料28に補うように構成されている。また,溶融原料28を凝固させる原料室25又は成長室22,或いは鋳型30に温度勾配をつけた状態に設定し,溶融原料28の凝固の際に,原料室25又は成長室22,或いは鋳型30の一端から熱電変換材料の結晶を成長させることができる。
【0025】
図5に示すように,この熱電変換材料製造方法は,溶融原料を凝固させる際に,成長室22に予め決められた所定の形状に加工成形された雲母製の鋳型30を配置し,鋳型30に溶融原料を鋳込んで凝固させ,所望の形状の熱電変換材料を成長させることによって達成できる。この熱電変換材料製造方法は,熱電変換材料の結晶を成長させる際に,成長を目的とする熱電変換材料とは異なる物質の基板31を用い,基板31上に熱電変換材料を成長させることができる。例えば,基板31をCdTe結晶等の結晶物質で構成し,基板31上に方位の揃ったn型熱電変換材料又はp型熱電変換材料を成長させることができる。例えば,p型熱電変換材料又はn型熱電変換材料の少なくとも一端に異なる伝導型の熱電変換材料と電極材料及び熱伝達部材を接続し,熱電変換素子,熱電変換モジュール等の素子を作製することができる。また,p型熱電変換材料で基板を構成し,基板上にn型熱電変換材料を成長させてp-n接合を形成することができる。更に,p-n接合を加工して電極を接続して熱電変換素子を形成し,前記熱電変換素子を集合させて熱電変換モジュールを作製することができる。
【0026】
次に,図面を参照して,この発明による熱電変換材料製造装置の実施例について説明する。図1に示すように,この熱電変換材料製造装置は,熱電変換材料を製造して成長させるための成長用管を構成する成長石英管1,及び成長石英管1の内部にあって熱電変換材料を溶融し冷却する成長ボート2を有する。また,成長ボート2は黒鉛から作製されている。成長石英管1は,例えば,内径が50mmであり,長さが1000mmに設計されたものが使用される。熱電変換材料を真空中又は水素ガス,不活性ガス等のガス中で製造できるように,成長用管を構成する成長石英管1の内部の気体を排出管4を通じて真空ポンプ(図示せず)で吸引して真空即ち負圧にしたり,ガス供給管3を通じて水素ガス,不活性ガス等のガスを導入できるように構成されている。更に,成長石英管1に接続された排出管4には,廃ガス処理装置(図示せず)に接続する廃ガス排出管5が接続するように構成されている。
【0027】
図1に示すように,成長石英管1は,真空又は不活性ガス,水素ガス等のガス流れの雰囲気を形成し,その中に成長ボート2が設置されている。また,図2に示すように,成長ボート2を構成する壁体は,雲母等の材料から形成され,スライダ21の上方側の上部ホルダー部24と,スライダ21のは下方側の下部ホルダー部23から構成されている。この熱電変換材料製造装置は,成長ボート2を構成する上部ホルダー部24に形成された原料室25,原料室25の底面を形成すると共に成長ボート2の壁体を貫通して摺動移動するスライダ21,溶融原料28を徐冷又は急冷して凝固させるためのスライダ21に設けられた少なくとも1個の成長室22,及び溶融原料28から分解蒸発した成分元素即ち揮発性成分29を溶融原料28に補うための成長ボート2に設けられた凝縮室26から構成されている。原料室25では,BiTe系等の熱電変換材料原料を溶融するための室を構成している。
【0028】
更に,成長ボート2は,熱電変換材料原料から熱電変換材料を製造する上部ホルダ部24,上部ホルダ部24に形成された原料室25と凝縮室26との上部を閉鎖する上部カバー部27,及び上部ホルダ部24を保持すると共にスライダ21を摺動自在に保持する下部ホルダー部23から構成されている。原料室25と凝縮室26とは,上部ホルダ部24において密閉室に形成され,原料室25の上部と凝縮室26の上部とは,上部カバー部27と成長ボート2の壁体との間に形成された連通部20を通じて連通状態になっている。従って,原料室25において溶融原料28から揮発性成分29が,スライダ21と原料室25との隙間等から消失すると,揮発性成分29は,高蒸気圧になっている凝縮室26から連通部20を通じて原料室25へ自動的に補給されるように構成されている。
【0029】
成長室22は,スライダ21の往復移動によって原料室25の底面に開口して溶融原料28を受け入れる位置と上部ホルダ部24へ摺動移動した位置で徐冷又は急冷する位置との間を移動可能に構成されている。成長室22は,スライダ21に少なくとも1個の直方体形状等の凹部に形成され,原料室25から溶融原料28が予め決められた所定量だけ注入できる容積に形成されている。例えば,図4の(イ)には,成長室22はスライダ21に1個形成された成長室22Aである。成長室22Aは,成長室22Aがスライダ21の長さ方向と平行に延びるように直方体形状に形成され,薄い板状の熱電変換材料を作製することができる。また,図4の(ロ)には,成長室22は,成長室22B,22C,22Dの3個が形成されている。成長室22の形状は,上記のような直方体の形状の他に,種々の形状に形成できるが,熱電変換素子や熱電変換モジュールの適用に応じた形状に形成すればよい。成長室22B,22C,22Dのように,スライダ21の長さ方向と垂直に成長室が形成されている場合は,複数の熱電変換材料の板状材料を一度の結晶成長過程によって作製できる。また,成長ボート2に設けられた成長室22(22A,22B,22C,22D)の形状や寸法は,任意に選定し得るが,例えば,最終的に熱電変換材料を10×10×1mmの大きさで得たい場合には,スライダ21の成長室22は,10.2×10.2×1.2mm程度に,また原料室25は10×10×5mm程度の大きさに選定することが好ましい。
【0030】
この熱電変換材料製造方法は,溶融原料を凝固させる際に,図5及び図7に示すように,成長室22に予め決められた所定の形状の成長室22E,22F,22Gに加工成形された雲母製の鋳型30を配置し,鋳型30の成長室22E,22F,22Gに溶融原料を鋳込んで凝固させ,所望の形状の熱電変換材料を成長させることができる。このような成長によって,成長室22の寸法には無関係に成長室22E,22F,22Gの大きさを調整して結晶を作製することができる。この場合に,鋳型30の1個の大きさは,例えば,5×5×0.5(mm)程度の大きさに設定できる。
【0031】
成長ボート2におけるスライダ21に形成された成長室22は,熱電変換材料の結晶を成長させるのに機能する。上部ホルダ部24には,熱電変換材料の溶融原料28を入れておく原料室25及び原料室25の上部と連絡している凝縮室(リザーバ)26が設けられている。上部ホルダ部24の上部には,原料室25又は凝縮室26からの原料28等の飛散を低減するため上部カバー部27が設けられている。原料室25の底面は,開口しており,スライダ21の上表面によって構成されおり,スライダ21が摺動移動して原料室25の下方に成長室22が位置すれば,原料室25から成長室22へ溶融原料28が移行することになり,次いで,スライダ21が摺動移動して成長室22が原料室25から離れれば,成長室22に予め決められた所定量の溶融原料28が充填されることになる。
【0032】
原料室25には,BiTe等の熱電変換材料の成分元素の混合物若しくは化合物又は合金を入れ,原料室25を熱電変換材料の融点以上に加熱し,熱電変換材料の原料28を溶融する。例えば,原料室25の加熱は,原料室25の壁体にはヒータ等を設け,ヒータに通電することによって加熱したり,或いは高周波加熱を行なうように構成しておけばよい。溶融原料即ち融体の入った原料室25をそのまま徐冷又は急冷するか,又は成長室22に必要量だけ融体を注いで徐冷又は急冷することにより,所望の大きさで高性能結晶方位に配向した熱電変換材料の作製が可能となる。
【0033】
熱電変換材料の結晶成長を行う時には,成長ボート2に温度の勾配をつけることによって,成長室22での熱電変換材料の凝固を一端から行わせることも可能である。
【0034】
熱電変換材料を板状の形状に形成する場合には,成長室22を図4の(イ)(ロ)に示すような形状に形成し,スライダ21をスライドさせて,スライダ21の上面が原料室25の底面を摺動移動させ,成長室22を溶融原料28即ち融体の入った原料室25まで移動させ,成長室22を原料室25の下方に位置させる。そこで,融体を原料室25から成長室22に必要な量だけ注いだ後に,余分の融体が成長室22に入らないように,スライダ21を移動させて原料室25から成長室22を引き離した後に,成長室22内の熱電変換材料を徐冷又は急冷して,熱電変換材料の溶融原料28を凝固させて結晶の成長を促す。
【0035】
この熱電変換材料製造装置では,熱電変換材料はBiTe系熱電変換材料を作製するのに最も適している。BiTeの熱電変換材料を作製する場合には,リザーバ即ち凝縮室26には,揮発性成分29である金属Teを入れておく。熱電変換材料の原料がBiTeである場合,BiTeを原料室25で溶融すると,この化合物から揮発性成分であるTeの一部が解離して蒸発する。その結果,原料や融体の組成が変化して製造される熱電変換材料の特性が低下するおそれがある。そこで,原料室25と隣接して凝縮室26を設けて,凝縮室26中に揮発性成分29の金属Teを入れておき,その金属TeからTe蒸気を発生させて,熱電変換材料の原料にTeを補い,Teの損失を防ぎ,原料組成の変化を防止することができる。また,凝縮室26には,他の熱電変換材料を作製する時には,BiTeの熱電変換材料を作製する場合の金属Teのような性質を有している揮発性成分29の元素等を入れておく。
【0036】
成長室22において,熱電変換材料を結晶成長させ,凝固した後は,成長石英管1から成長ボート2を取り出して,解体し,成長室22から製造された熱電変換材料を取り出す。得られた熱電変換材料は,場合によっては,研磨や切削加工を行い,或いは,熱電変換材料に電極を接合したり,熱電変換材料に熱伝達部(セグメント)を接合し,目的とする熱電変換素子や複合素子の熱電変換モジュールを作製する。
【0037】
この熱電変換材料装置によって熱電変換材料を作製すると,BiTe系の熱電変換材料を作製する際に,きわめてその効果が大きい。BiTeの結晶構造は,構成原子のBiとTeが層状に積み重なった層状構造を持ち,層間で弱い結合を持つ場合があることから,層の面内において優れた熱電特性を示す。このような材料を,図2に示す成長室22,図4の(イ)に示す成長室22A,図4の(ロ)に示す成長室22B,22C,22D,或いは図5や図7に示した成長室22内に配置された鋳型30に形成された成長室22E,22F,22Gにおいて,融体から板状材料を成長させると,成長室の底面で平行に原子層が発達して,配向をもつ構造の材料が得られる。
【0038】
図3は,この熱電変換材料の製造方法によって得られた熱電変換材料のX線回折図形を示す。図3の(イ)は,粉末のBiTeに対し,計算したX線回折図形を示し,図3の(ロ)は,粉末のBiTeについて観測したX線回折図形を示し,また,図3の(ハ)は,この熱電変換材料製造方法によって得られたBiTe材料のX線回折図形を示している。図3の(イ)(ロ)の間には類似性があることから,BiTe粉末はでたらめな方向をもって分布している状態を示す。図3の(ハ)は,BiTe材料における結晶の原子層が,成長室の底面に平行に配向していることを示している。
【0039】
この熱電変換材料製造方法は,溶融原料を凝固させる際に,成長室22に予め決められた所定の形状に加工成形された雲母製の鋳型30を配置し,鋳型30に溶融原料を鋳込んで凝固させ,所望の形状の熱電変換材料を成長させることができ,それによってスライダ21の加工を行なうことなく,鋳型30の加工のみによって,得られる熱電変換材料の形状の変更が可能になる。
【0040】
この熱電変換材料製造装置を用いて熱電変換材料の溶融や凝固を行う場合に,凝固を行う原料室25又は成長室22又は鋳型30の形状や大きさと,凝固させる熱電変換材料の融体の量を調整することにより,所望の形状の板状の熱電変換材料が得られ,板面内に結晶の方位が配向した高性能の材料を得ることが可能となる。また,熱電変換材料の結晶の成長を行う際に,材料が直接に接する原料室25又は成長室22のグラファイト又は鋳型30の表面を平滑に仕上げることによって,完成品の寸法の精度を高めることも可能となる。更に,成長室22又は鋳型30の大きさを変化させることにより,熱電変換材料の大きさを厚さ約0.2~3mmの範囲にすることも可能である。
【0041】
この発明による熱電変換材料製造装置によれば,単一のp型又はn型熱電変換材料の作製ばかりでなく,基板上に熱電変換材料を製造することも可能である。図5には,基板31上に熱電変換材料32を製造する場合の成長室22に配置された鋳型30が示されている。図5に示すように,鋳型30に形成された成長室22E,22F,22Gの底面に,予めCdTeウエハー等の基板31を置き,その基板31上に熱電変換材料32の融体を注ぎ込み,そのまま結晶成長させて,基板31上に熱電変換材料32を製造する。また,図6に示すように,成長室22において,基板としてp型熱電材料33を用いて,p型熱電材料33の上にn型熱電材料34(熱電変換材料)の結晶を成長させて,p-n接合の形成を行うこともできる。更に,図7に示すように,成長室22に鋳型30を配設し,鋳型30に形成された成長室22E,22F,22Gに基板としてp型熱電材料33を用いて,p型熱電材料33の上にn型熱電材料34(熱電変換材料)の結晶を成長させて,p-n接合の形成を行うこともできる。更に,図示していないが,基板としてn型熱電材料を用いて,n型熱電材料の上の熱電変換材料としてp型熱電材料を用いて結晶成長させることもできる。
【0042】
図8には,この発明によって得られた熱電変換材料を用いて製作した熱電変換素子の一実施例を示す。得られた熱電変換材料41,42の両端を電極部として,電極部に無電解メッキ又は蒸着によって金属電極43を接合し,金属電極43に熱伝達部(セグメント)44を半田付けし,熱電変換素子が形成される。これらの熱電変換素子を集積することにより,熱電変換モジュールを形成することができる。この発明においては,高性能を持つ結晶方向に高度に配向した高性能熱電変換材料が得られるので,p型およびn型の材料に電極をつけ,金属セグメントを接続して,熱電変換素子及び熱電変換モジュールの製造が簡単で且つ信頼性のある製品を作製することができる。
【0043】
【発明の効果】
この発明は,上記のように構成されているので,熱電変換材料の溶融原料即ち融体を原料室から必要な量だけスライダに設けた成長室又は該成長室に配設した鋳型に設けた成長室に直接注いで,スライダに設けた成長室や鋳型に設けた成長室の大きさ又は形状に従った熱電変換材料が製造でき,各成長室の大きさ又は形状を調節することによって,所望の大きさに近い大きさ又は形状の熱電変換材料が作製することが可能である。従って,成長した熱電変換材料に対して,複雑な加工工程を必要としない。製造コストの大幅な低減を計ることも可能である。また,作製される熱電変換材料の大きさは,成長室の大きさによることから,厚さ約0.2~3mmの範囲の熱電変換材料も容易に作製可能となり,マイクロエレクトロニクス用熱電変換モジユールから大型熱電変換モジユールに適した熱電変換材料の作製が可能であり,本発明は実用に供してその工業的用途が広範囲にわたる。
【0044】
この熱電変換材料製造方法及びその装置では,成長室に基板又はp若しくはn型熱電変換材料を予め敷いておき,その上に熱電変換材料の結晶を成長させることにより,基板を持った熱電変換材料の作製やp-n接合の形成も可能となる。また,本発明は,結晶のエピタキシャル成長を行わせることも可能である。この熱電変換材料製造装置は,繰り返し使用が可能で簡単な構造であるので,高効率の熱電変換材料を,簡便に作製できる。また,成長ボートは,真空にしたり,ガスを導入できる成長石英管の中に設けられているので,熱電変換材料を真空中又は水素ガス若しくは不活性ガス等のガス中で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による熱電変換材料製造装置の一実施例を示す概略説明図である。
【図2】この熱電変換材料製造装置における成長ボートを示す概略説明図である。
【図3】この熱電変換材料の製造方法によって得られた熱電変換材料のX線回折図形である。
【図4】この発明による熱電変換材料製造装置における成長室の形状を示す斜視図である。
【図5】成長室に配設された鋳型と鋳型内の基板上に熱電変換材料を製造する状態の一例を示す断面図である。
【図6】成長室に配設されたp型熱電変換材料上にn熱電変換材料を成長させてp-n接合を形成する状態の例を示す断面図である。
【図7】成長室に配設されたられたp型熱電変換材料上にn熱電変換材料を成長させてp-n接合を形成する状態の別の例を示す断面である。
【図8】この発明によって得られた熱電変換材料を用いて製作した熱電変換素子の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
l 成長石英管
2 成長ボート
3 ガス供給管
4 排出管
5 廃ガス排出管
20 連通部
21 スライダ
22,22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G 成長室
23 下部ホルダー部
24 上部ホルダー部
25 原料室
26 凝縮室
27 上部カバー部
28 熱電変換材料の原料
29 揮発性成分
31,33 基板
32,34 熱電変換材料
41 p型熱電変換材料
42 n型熱電変換材料
43 金属電極
44 熱伝達部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7