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明細書 :ポリエチレンテレフタレートの処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3718711号 (P3718711)
公開番号 特開2003-041048 (P2003-041048A)
登録日 平成17年9月16日(2005.9.16)
発行日 平成17年11月24日(2005.11.24)
公開日 平成15年2月13日(2003.2.13)
発明の名称または考案の名称 ポリエチレンテレフタレートの処理方法
国際特許分類 C08J 11/16      
C07C 31/20      
C07C 63/26      
C08L 67:00      
FI C08J 11/16 ZAB
C07C 31/20 A
C07C 63/26 A
C08L 67:00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2001-227320 (P2001-227320)
出願日 平成13年7月27日(2001.7.27)
審査請求日 平成13年7月27日(2001.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】岡本 康昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】加藤 幹
参考文献・文献 特開平8-259728(JP,A)
国際公開第01/19775(WO,A1)
特開2001-131334(JP,A)
特開2000-212117(JP,A)
岡本大悟,久保田岳志,岡本康昭,Mg,Zn化合物を用いたPETの新規加水分解法の開発,平成13年度日本化学会中国四国・同九州支部合同大会講演要旨集,日本,2001年10月27日,Page.289
調査した分野 C08J 11/16
C07C 31/20
C07C 63/26
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを水溶媒中で水に難溶性の固体塩基を用いてテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物へと分解するポリエチレンテレフタレートの処理方法であって、
前記水に難溶性の固体塩基がマグネシウム化合物及び/又は亜鉛化合物であり、
前記水に難溶性の固体塩基の使用量が、前記ポリエチレンテレフタレート100重量部に対し10から50重量部の範囲であり、
前記ポリエチレンテレフタレートの分解反応後の水相からテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物を回収することを特徴とする、
ポリエチレンテレフタレートの処理方法。
【請求項2】
前記マグネシウム化合物及び/又は亜鉛化合物が、マグネシウム及び/又は亜鉛の酸化物及び/又は水酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートの処理方法。
【請求項3】
190℃から300℃の反応温度で前記ポリエチレンテレフタレートを分解することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエチレンテレフタレートの処理方法。
【請求項4】
前記テレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物を酸で処理することによりテレフタル酸とエチレングリコールにし、その後、テレフタル酸とエチレングリコールとを分離させることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレートの処理方法。
【請求項5】
前記ポリエチレンテレフタレートが着色剤により着色したポリエチレンテレフタレートであって、分解反応により生じた該着色剤を固体塩基表面に吸着除去することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレートの処理方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水を用いたポリエチレンテレフタレートの新規な処理方法に関する。より具体的には、ポリエチレンテレフタレートを水溶媒中で水に難溶性の固体塩基を用いて分解する、ポリエチレンテレフタレートの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートの水を用いた処理方法には、80%以上の濃硫酸を用いた加水分解、水酸化ナトリウム水溶液を用いた加水分解、超臨界水を用いた加水分解が知られている。しかしながら、濃硫酸を用いた場合には多量の硫酸廃液が、水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合には多量の水酸化ナトリウム水溶液の廃液が排出されるといった問題があり、また、いずれの場合も装置が腐食するという重大な問題がある。また、超臨界水を用いた場合は、反応条件が374.4℃、226.8atmと非常に厳しく、装置の材料も特殊で非常に高価であり、ポリエチレンテレフタレートのリサイクルには経済的に全く不向きである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決すべき課題は、上に述べたポリエチレンテレフタレートの水を用いた従来の処理方法における酸性廃液、アルカリ性廃液の問題や装置の腐食といった問題がなく、更には処理装置価格も安価なポリエチレンテレフタレートの処理方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明のポリエチレンテレフタレートの処理方法は、ポリエチレンテレフタレートを水溶媒中で水に難溶性の固体塩基を用いてテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物へと分解するポリエチレンテレフタレートの処理方法であって、前記水に難溶性の固体塩基がマグネシウム化合物及び/又は亜鉛化合物であり、前記水に難溶性の固体塩基の使用量が、前記ポリエチレンテレフタレート100重量部に対し10から50重量部の範囲であり、前記ポリエチレンテレフタレートの分解反応後の水相からテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物を回収することを特徴とする。本発明に係るポリエチレンテレフタレートの処理方法の好ましい態様には以下のものがある。
(1)前記マグネシウム化合物及び/又は亜鉛化合物が、マグネシウム及び/又は亜鉛の酸化物及び/又は水酸化物である。
(2)190℃から300℃の反応温度で前記ポリエチレンテレフタレートを分解する。
(3)前記テレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物を酸で処理することによりテレフタル酸とエチレングリコールにし、その後、テレフタル酸とエチレングリコールとを分離させる。
(4)前記ポリエチレンテレフタレートが着色剤により着色したポリエチレンテレフタレートであって、分解反応により生じた該着色剤を固体塩基表面に吸着除去する。
なお、特に矛盾しない限り、上記(1)から(4)の任意の組み合わせもまた本発明の好ましい態様である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の方法について詳細に説明する。本発明では、ポリエチレンテレフタレートを加水分解によりテレフタル酸塩とエチレングリコールに分解するため、溶媒として水を用いる。水の使用量は、ポリエチレンテレフタレート1重量部に対し1から1000重量部、好ましくは10から100重量部の範囲である。
【0006】
本発明で固体塩基とは、固体状態で塩基性を示す物質である。本発明では、固体塩基が水溶媒中で水酸化物として固体塩基触媒作用を示し、エステルの水和、分解反応を促進する。従って、例えば固体塩基として酸化物を用いた場合は、その一部が反応中水酸化物となって作用する。エステル分解生成物は、固体塩基から水溶液中に溶出した水酸化物イオン及び金属イオン、あるいは固体塩基表面の水酸化物イオン及び金属イオンと反応し、テレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物が定量的に生成する。
固体塩基の使用量は、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対し10から50重量部の範囲である。固体塩基の使用量が少なすぎると、ポリエチレンテレフタレートのテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物への転化率が下がったり、反応速度が遅くなったりする。また、固体塩基の使用量が多すぎると、大部分が未使用で無駄となり経済的でない。
【0007】
本発明で使用する固体塩基としては、周期律表2属(アルカリ土類金属)のマグネシウムの酸化物及び水酸化物、周期律表12属の亜鉛の酸化物及び水酸化物が挙げられる。本発明で使用する固体塩基は水に難溶性であり、難溶性の固体塩基としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等が例示できる。例えば、水酸化マグネシウムは18℃において水100gに1.68×10-4g、水酸化亜鉛は29℃において水100gに1.92×10-5gしか溶解せず、水酸化ナトリウムが25℃において水100gに114g溶解するのに比べ非常に水に難溶性である。本発明で用いる固体塩基は水に難溶性であるため、廃液が強塩基性になることがなく処理が容易であるとともに、反応容器の腐食といった問題もない。本発明で使用する固体塩基が水に難溶性であるにも関わらず反応性が高いのは、固体塩基から水溶液中に溶出した金属イオンとテレフタル酸との錯形成が起こり易いためであると考えられる。
【0008】
本発明の反応生成物であるテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物は水に可溶であるため、濾過により未反応固体塩基や未反応ポリエチレンテレフタレートと容易に分離できる。また、濾液を蒸発乾固させることによりテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物を得ることができる。
【0009】
本発明で用いるポリエチレンテレフタレートは、一般的にエチレングリコールとテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルの縮合重合で合成される。本発明では、ポリエチレンテレフタレートの塩基による加水分解反応を利用しているため、ポリエチレンテレフタレートの芳香環部分が置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基等が例示できるが、これらに限定されるものではない。また、形状も特に限定されず、粉状、フレーク状、粒状等であってもよい。
【0010】
本発明で生成するテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物は、使用する固体塩基の種類により異なる。例えば、固体塩基がマグネシウム化合物の場合はテレフタル酸のマグネシウム塩が、亜鉛化合物の場合はテレフタル酸の亜鉛塩が生成する。本発明で生成するテレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物の構造は明らかではないが、生成されたテレフタル酸塩とエチレングリコールの複合錯体と考えられる。
【0011】
本発明の分解反応の反応温度は、190から300℃である。反応温度が低すぎると、分解反応が起こらない。また、反応温度が高すぎると、副反応としてテレフタル酸が生成し、テレフタル酸が水に難溶性であるため固体塩基や未反応ポリエチレンテレフタレートとの分離が困難となる。更に、反応温度が高くなると反応容器が高価になるとともにエネルギー消費量も高くなり好ましくない。本発明の反応圧力は、上記反応温度において水が液体状態を維持するのに必要な圧力である。本発明の反応時間は、反応温度に応じて適宜定めることができる。具体的には、反応温度が低い場合は反応時間を長く、反応温度が高い場合は反応時間を短くした方が好ましい。反応温度が低い場合において反応時間が短いと、テレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物の生成量が少なくなり好ましくない。また、反応温度が高い場合において反応時間が長いと、テレフタル酸が副生し好ましくない。
【0012】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレートは、着色剤を含有していてもよい。ポリエチレンテレフタレートは、容器として用いられる際に着色剤を用い着色してある場合があるが、着色されたポリエチレンテレフタレートにも用いることができる。着色剤はポリエチレンテレフタレート製品のメーカーが適宜選択して使用するものであり、特に限定されるものではない。本発明では水に難溶性の固体塩基を用いるため、その表面に分解で生成した着色剤を吸着でき、テレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物は着色剤を含まない。従って、テレフタル酸塩とエチレングリコールの付加物の溶解した水相を濾過等により分離して蒸発乾固後、酸によりテレフタル酸とエチレングリコールに分離して回収した際、着色剤を含まない純度の高いテレフタル酸及びエチレングリコールが得られる。
【0013】
本発明で用いる酸は、テレフタル酸塩をテレフタル酸と塩に分解する。従って、テレフタル酸より強酸であれば特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、シュウ酸、フマル酸、マロン酸等の有機酸であってもよい。酸を用いることにより、テレフタル酸塩はテレフタル酸となり、テレフタル酸が水に難溶であるため水溶液中に沈殿する。一方、エチレングリコールは水に任意の割合で溶解するため水相に溶けたままとなり、テレフタル酸とエチレングリコールを容易に分離できる。
【0014】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0015】
実施例1
3mm角のポリエチレンテレフタレート粒子2g、水80g、酸化マグネシウム粉末0.5gを内容量200mlのオートクレーブに仕込み、200℃で1時間撹拌しながら反応させる。反応後冷却し、内容物を吸引濾過する。なお、濾液のpHは4.9で弱酸性であった。濾液は、ロータリーエバポレーターを用い、60℃で蒸発乾固させ、2.02gの白色のテレフタル酸マグネシウム-エチレングリコール付加物を得た。なお、吸引濾過における固体残留物の重量は0.88gであり、その組成は未反応のポリエチレンテレフタレート、未反応の固体塩基及び副生したテレフタル酸等であった。このテレフタル酸マグネシウム-エチレングリコール付加物に1N塩酸を注入すると、テレフタル酸の沈殿とエチレングリコール溶液が定量的に得られた。最終的には、テレフタル酸は1.45g回収でき、ポリエチレンテレフタレートの86%の収率であった。
【0016】
実施例2
10mm角の緑色ポリエチレンテレフタレートフレーク2g、水80g、水酸化マグネシウム粉末0.5gを内容量200mlのオートクレーブに仕込み、200℃で2時間撹拌しながら反応させる。反応後冷却し、内容物を吸引濾過する。なお、濾液のpHは4.9で弱酸性であった。濾液は、ロータリーエバポレーターを用い、60℃で蒸発乾固させ、1.91gの白色のテレフタル酸マグネシウム-エチレングリコール付加物を得た。なお、吸引濾過における固体残留物は緑色を呈しており、その重量は0.79gであった。このテレフタル酸マグネシウム-エチレングリコール付加物に1N塩酸を注入すると、テレフタル酸の沈殿とエチレングリコール溶液が定量的に得られた。最終的には、テレフタル酸は1.45g回収でき、ポリエチレンテレフタレートの81%の収率であった。
【0017】
実施例3
3mm角のポリエチレンテレフタレート粒子2g、水80g、酸化亜鉛粉末0.5gを内容量200mlのオートクレーブに仕込み、200℃で1時間撹拌しながら反応させる。反応後冷却し、内容物を吸引濾過する。なお、濾液のpHは4.9で弱酸性であった。濾液は、ロータリーエバポレーターを用い、60℃で蒸発乾固させ、0.84gの白色のテレフタル酸亜鉛-エチレングリコール付加物を得た。なお、吸引濾過における固体残留物の重量は1.43gであり、その組成は未反応のポリエチレンテレフタレート、未反応の固体塩基及び副生したテレフタル酸等であった。このテレフタル酸マグネシウム-エチレングリコール付加物に1N塩酸を注入すると、テレフタル酸の沈殿とエチレングリコール溶液が定量的に得られた。最終的には、テレフタル酸は0.60g回収でき、ポリエチレンテレフタレートの35%の収率であった。
【0018】
参照例1
3mm角のポリエチレンテレフタレート粒子2g、水80g、酸化マグネシウム粉末0.5gを内容量200mlのオートクレーブに仕込み、180℃で1時間撹拌しながら反応させる。反応後、冷却し、内容物を吸引濾過する。濾液を、ロータリーエバポレーターを用い、60℃で蒸発乾固させたところテレフタル酸マグネシウム-エチレングリコール付加物は得られず、分解反応が進行していないことが分かった。
【0019】
比較例1
3mm角のポリエチレンテレフタレート粒子2gと0.4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液80gを内容量200mlのオートクレーブに仕込み、200℃で1時間撹拌しながら反応させる。反応後冷却し、内容物を吸引濾過したところ、濾液のpHは12で強アルカリ性であった。
【0020】
【発明の効果】
本発明により、酸廃液やアルカリ廃液を伴わず、反応容器を腐食しないポリエチレンテレフタレートの処理方法が提供される。また、分解反応温度が低温であるため、エネルギー消費量、使用できる装置材料の観点からも優れている。更に、生成物が水溶性であるため、未反応原料や固体塩基との分離、精製が容易である。また更に、ポリエチレンテレフタレートに着色剤が含まれていた場合においても、着色剤を固体塩基表面に吸着除去できるため、純度の高いテレフタル酸及びエチレングリコールを回収できる。