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明細書 :酸化亜鉛系薄膜の成長方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3605643号 (P3605643)
公開番号 特開2004-040054 (P2004-040054A)
登録日 平成16年10月15日(2004.10.15)
発行日 平成16年12月22日(2004.12.22)
公開日 平成16年2月5日(2004.2.5)
発明の名称または考案の名称 酸化亜鉛系薄膜の成長方法
国際特許分類 H01L 21/365     
H01L 33/00      
FI H01L 21/365
H01L 33/00 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 11
出願番号 特願2002-198875 (P2002-198875)
出願日 平成14年7月8日(2002.7.8)
審査請求日 平成14年7月8日(2002.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】藤原 敬士
参考文献・文献 特開2002-329888(JP,A)
特開2002-094114(JP,A)
特開2002-093822(JP,A)
特開2001-044500(JP,A)
特開平09-045960(JP,A)
調査した分野 H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 33/00
特許請求の範囲 【請求項1】
有機金属気相成長装置内に、ジメチル亜鉛を含む亜鉛原料と、イソプロピルアルコールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸素原料と、キャリアガスとしての水素ガスとを供給し、
300℃以上400℃未満で反応させて、単結晶基板上に酸化亜鉛系薄膜をエピタキシャル成長させることを特徴とする酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項2】
有機金属気相成長装置内に、ジイソプロピル亜鉛を含む亜鉛原料と、イソプロピルアルコールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸素原料と、キャリアガスとしての水素ガスまたは窒素ガスとを供給し、
300℃以上400℃未満で反応させて、単結晶基板上に酸化亜鉛系薄膜をエピタキシャル成長させることを特徴とする酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項3】
前記キャリアガスは水素ガスであることを特徴とする請求項2に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項4】
前記酸素原料の供給量(VI)と前記亜鉛原料の供給量(II)との比(VI/II)は、20以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項5】
前記酸化亜鉛系薄膜は、ZnOからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項6】
前記亜鉛原料はII族元素を含有し、前記酸化亜鉛系薄膜は下記化学式で表わされる化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
Zn1-x
(ここで、MはII族元素であり、xは0<x<1を満たす数値である。)
【請求項7】
前記II族元素はMgであることを特徴とする請求項6に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項8】
前記II族元素はCdであることを特徴とする請求項6に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
【請求項9】
前記単結晶基板は、酸化亜鉛、サファイアおよびシリコンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の酸化亜鉛系薄膜の成長方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化亜鉛系薄膜の成長方法に係り、特に酸化亜鉛系薄膜を低温で成長する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛(ZnO)は、バンドギャップが3.37eVと近紫外域にある直接遷移型の半導体で、励起子の束縛エネルギーが60meVと室温の熱エネルギーより大きい。このため、他の半導体と異なり、励起子は室温で存在することができる。この励起子の再結合による発光をデバイスに応用すると、電子と正孔との再結合を発光原理とする従来の発光デバイスに比べて狭い波長域で高効率な発光が期待される。また、すでに実用化されている窒化ガリウム系の半導体と比較すると、格子整合した基板が入手でき、混晶によるバンドギャップの制御が容易であるという点で有利である。したがって、ZnOを用いることによって、デバイス作製の自由度が高く、より安価で高効率なデバイスを作製することができる。ZnOによる光デバイスが実現すれば、高密度DVD用紫外線半導体レーザーや蛍光灯に変わる高効率な固体照明装置等への応用の広がりが期待できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ZnOによる発光デバイスを開発するには、量産可能な成長方法で高品質な薄膜を成長する必要がある。従来、ZnO薄膜の成長には、レーザーアブレーションと分子線エピタキシー(MBE)法とを組み合わせた方法(特許第2996928号)が主として採用されてきた。量産に適した有機金属気相成長法(MOCVD)(Jpn.J.Appl.Phys.vol.30,No.3B, L441~L443(1991))では、太陽電池の透明導電膜用のn型ZnO薄膜の成長が行なわれているが、光デバイスに応用できる平坦な膜は得られていない。近年、光デバイスを目指した研究も進んでいるが(例えば、Jpn.J.Appl.Phys.vol.40,No.7A, L657~L659(2001))、アンドープで低キャリア濃度が得られ、かつ高品質な薄膜の報告はなされていない。
【0004】
また、pn接合を用いた発光デバイスを実現するためには、低抵抗なp型層を成長させることがZnOにおける大きな課題である。気相反応を防ぐために亜鉛原料と反応しない安定な酸素原料を用いると成長温度が高くなり、p型伝導に有害な酸素空孔等の欠陥が発生してしまう。このため、発光デバイスの作製に必要な平坦で高品質なZnO薄膜は、未だ得られていないのが現状である。
【0005】
そこで本発明は、表面平坦性に優れるとともに、酸素欠損の少ない高品質で高純度な酸化亜鉛系薄膜を、有機金属気相成長法により低温でエピタキシャル成長させる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、有機金属気相成長装置内に、ジメチル亜鉛を含む亜鉛原料と、イソプロピルアルコールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸素原料と、キャリアガスとしての水素ガスとを供給し、300℃以上400℃未満で反応させて、単結晶基板上に酸化亜鉛系薄膜をエピタキシャル成長させることを特徴とする酸化亜鉛系薄膜の成長方法が提供される。
【0007】
また本発明の他の態様によれば、有機金属気相成長装置内に、ジイソプロピル亜鉛を含む亜鉛原料と、イソプロピルアルコールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸素原料と、キャリアガスとしての水素ガスまたは窒素ガスとを供給し、
300℃以上400℃未満で反応させて、単結晶基板上に酸化亜鉛系薄膜をエピタキシャル成長させることを特徴とする酸化亜鉛系薄膜の成長方法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、従来のMOCVD法により成長されたZnO薄膜における平坦度の悪化や欠陥の形成は、気相中での原料ガス同士の反応に起因することに着目して鋭意検討した結果、酸素空孔の極めて少ない低抵抗p型ZnO単結晶薄膜をMOCVD法により成長するために、最適な条件を見出した。本発明は、こうした知見に基づいて成されたものである。
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1に、用いたMOCVD装置の構成を示す。
【0011】
リアクタ10内に設けられ、加熱されたサセプタ12上には、単結晶基板13が設置される。単結晶基板13は、予め十分に洗浄しておく。原料ガスとしての亜鉛原料および酸素原料をキャリアガスでバブリングさせ、キャリアライン14を介してリアクタ10内に供給することにより、原料ガスが単結晶基板13上で分解してZnO薄膜が成長する。なお、亜鉛原料および酸素原料は、温度制御された恒温槽(図示せず)内に設置したステンレス製の容器(図示せず)に液体として収容されている。
【0012】
薄膜の成長中には、リアクタ10の対向する側面に設けられた合成石英製のウィンドウ11からin-situで分光計測を行なって、原料ガスの分解を調べることができる。原料ガスの分解や相互反応は、リアクタ内の付着物が触媒として働くため、熱力学的、化学的データから予測することは困難である。このため、リアクタ内で原料ガスの反応のin-situ計測によりこれらを調べることは、非常に有用である。
【0013】
ここで、図2を参照してin-situ分光計測について説明する。図2は、用いたin-situ吸収スペクトル測定装置の構成を示す概略図である。
【0014】
単結晶基板13が配置されたMOCVDリアクタ10内には、一方のウィンドウ11aを通してDランプ16から紫外光が入射される。このDランプ16の位置は、MOCVDリアクタ10内に入射された光が基板13の近傍を通るように設定される。対向する側のウィンドウ11bからの透過光は、分光器17のスリットに直接入射して、OMA(光マルチチャネルアナライザ)18によりカウントされ、画面上でグラフ化される。
【0015】
リアクタ10内に原料ガスが供給されている場合には、透過光はそのガスにより吸収されるので、ある特定の波長帯において光強度が減少する。リアクタ10内にガスを供給せず吸収がない場合の透過光の光強度をI(λ)とし、ガスを流して吸収がある場合の透過光の光強度をI(λ)とすれば、原料ガスの吸光度Abs.は下記数式(1)で表わされる。
【0016】
Abs.=log{I(λ)/I(λ)} (1)
この吸光度は、原料ガスの濃度に比例するため、吸光度の変化から原料ガスの分解率を求めることができる。
【0017】
図1に示した装置を用いて以下の条件でZnO薄膜を成長しつつ、原料ガスの吸収スペクトルを調べた。
【0018】
亜鉛原料としては、ジメチル亜鉛((CHZn)またはジイソプロピル亜鉛((i-CZn)を用い、酸素原料としてはイソプロピルアルコール(i-COH)を用いた。また、キャリアガスとしては、窒素または水素を用いた。
【0019】
単結晶基板13としては格子整合したZnO基板を用いたが、サファイア基板、シリコン基板、あるいは窒化ガリウム基板等を使用してもよい。
【0020】
亜鉛原料としてのジイソプロピル亜鉛の吸収スペクトル変化を、図3のグラフに示す。
【0021】
図3のグラフ中、曲線a,b,c,d、およびeは、それぞれ100℃、200℃、300℃、400℃および500℃における吸光度の変化を示す。ここでのキャリアガスとしては、窒素ガスまたは水素ガスを用いた。図3のスペクトルから明らかなように、ジイソプロピル亜鉛は100℃程度から分解する。この際の活性化エネルギーは、21kJ/mol程度である。
【0022】
また、亜鉛原料としてのジメチル亜鉛は、水素キャリア中で200℃程度から分解し、活性化エネルギーは44kJ/molであることが確認された。窒素ガスをキャリアガスとして用いた場合には、分解温度が上昇して、400℃未満の温度での成長は困難であった。
【0023】
このように、亜鉛原料の種類に応じて、400℃未満の温度でZnOを成長させるのに適切なキャリアガスが異なることがわかった。ジメチル亜鉛には水素キャリアが適しており、ジイソプロピル亜鉛は水素キャリアおよび窒素キャリアのいずれを用いても低温で成長させることができる。
【0024】
一方、酸素原料としてのイソプロプルアルコールは、200℃程度から分解し、気相中における亜鉛原料との反応性が低いことがわかった(活性化エネルギー20kJ/mol)。したがって、イソプロプルアルコールは、酸素欠損が少なく平坦で高品質なZnO薄膜を低温で成長するための酸素原料として、好適に用いることができる。
【0025】
なお、エタノールもイソプロパノールと同様に、ジイソプロピル亜鉛のような亜鉛原料との気相中における反応性が低く、酸化亜鉛系薄膜を成長するMOCVDのリアクタ内で250℃以下で分解するアルコールである。このため、本発明における酸素原料として好適に用いることができる。
【0026】
成長温度は、300℃以上400℃未満に限定される。300℃未満の場合には、原料ガスの分解が不十分なため実用的な成長温度が得られない。また、未分解のアルキル基が膜中に混入して結晶性を乱すため、高品質な薄膜を成長するのが困難となる。一方、得られるZnO薄膜中における酸素空孔を十分に低減し、p型ドーピングを確実に行なうためには、成長温度は400℃を越えてはならない。400℃を越えると酸素空孔が増加して、酸素空孔による欠陥がp型伝導を補償し、低抵抗のp型ZnO薄膜が得られない。また、p型不純物として用いる窒素は、400℃を越えると急激に結晶中に取り込まれなくなる。こうした成長温度の上限は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0027】
成長圧力は特に限定されず、10~760Torrの範囲内で適宜選択することができる。
【0028】
以上に基づいて酸素原料としてイソプロピルアルコールを用い、亜鉛原料およびキャリアガスを変更して、図1に示したMOCVD装置でZnO薄膜を成長させた。
【0029】
得られたZnO薄膜の成長速度、表面の平坦度、および透明度(酸素欠損)を、それぞれ以下のように評価した。
【0030】
JP0003605643B2_000002t.gifまず、亜鉛原料としてジメチル亜鉛、キャリアガスとして水素ガスを用い、以下の条件でZnO薄膜を成長させた。
【0031】
ジメチル亜鉛流量:2×10-5mol/min
VI/II(酸素原料/亜鉛原料流量比)=20
P=760Torr
得られたZnO薄膜の成長速度、表面の平坦度、および透明度(酸素欠損)を、下記表1にまとめる。
【0032】
【表1】
JP0003605643B2_000003t.gif【0033】
76Torrでは、酸素欠損に起因すると思われる可視域の吸収が見られ、成長圧力を大気圧とすることにより、透明度が改善された。
【0034】
次に、亜鉛原料としてジイソプロピル亜鉛、キャリアガスとして水素ガスまたは窒素ガスを用い、以下の条件でZnO薄膜を成長させた。
【0035】
ジイソプロピル亜鉛流量:5.0×10-6mol/min
VI/II(酸素原料/亜鉛原料流量比)=10~60
P=760Torr
得られたZnO薄膜の成長速度、表面の平坦度、および透明度(酸素欠損)を、下記表2にまとめる。
【0036】
【表2】
JP0003605643B2_000004t.gif【0037】
VI/IIが10程度の場合には、Zn等の析出や表面状態の悪化が認められた。したがって、欠陥が少なく高純度なZnO薄膜を成長するために、VI/IIは20以上に設定することが好ましい。表面状態の悪化は、成長温度が400℃以上の場合にも確認された。光照射による成長速度の増加は見られなかった。
【0038】
上述した方法により成長されたZnO薄膜のフォトルミネッセンスを測定することによって、光物性を調べた。
【0039】
用いたフォトルミネッセンス測定装置の構成を、図4に示す。
【0040】
石英製光学窓23が設けられたクライオスタット20内の試料台21上には、試料としてのZnO薄膜22が設置される。ここで使用したクライオスタット20は、5K~290Kの範囲内に温度を設定することができる。ZnO薄膜22には、干渉フィルタ25および石英製集束レンズ26を介して、He-Cdレーザー光27(波長325nm、1.1W/cm)がレーザー光源24から照射される。このHe-Cdレーザー光27は、ZnOのバンドギャップエネルギーより高い光子エネルギーを有するものである。
【0041】
ZnO薄膜22に照射されたHe-Cdレーザー光27は蛍光28を発し、石英製光学窓23および石英製集束レンズ26を介して、光ファイバー29により分光器30へ導かれる。その後、OMA31によりスペクトルを計測した。
【0042】
フォトルミネッセンススペクトルの測定から、以下のような結果が得られた。
【0043】
as-grown(酸素中でのアニールなし)の場合には、室温において自由励起子の光吸収と同一の波長で自由励起子による発光が生じた。成長されたZnO薄膜には、酸素欠損によると考えられる緑色の発光はほとんどみられなかった。なお、石英基板の場合には緑色の発光が強い。
【0044】
VI/IIを20以上に設定した場合には、極低温(5K)で自由励起子が支配的な発光が見られた。5Kにおいて成長したZnO薄膜のフォトルミネッセンススペクトルを、図5のグラフに示す。図5のグラフ中、曲線f、g、hは、それぞれ以下の条件において成長したZnO薄膜についての結果である。
【0045】
曲線f:水素キャリア、VI/II=20、成長速度350℃
曲線g:窒素キャリア、VI/II=60、成長速度350℃
曲線h:窒素キャリア、VI/II=60、成長速度375℃
曲線gの成長条件では、ドナーに束縛された励起子の発光が自由励起子の発光に比べて弱く、極めて高純度な品質のZnO薄膜が成長できていることを示している。
【0046】
MOCVD法により成長したZnO薄膜については、例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.40,No.7A L657~L1659(2001)に報告されている。この報告では、酸素原料に分解温度の高いNOを用いており、成長温度は800℃である。この報告で得られたZnO膜の極低温(15K)のフォトルミネッセンススペクトルでは、ドナーに束縛された励起子の発光が支配的であり、ドナー不純物が多いことを示している。図5の結果から、低温で分解する亜鉛原料と、反応性が低く低温で分解する酸素原料を用いた本発明の方法により、従来にない高品質で高純度なZnO薄膜がMOCVD法により成長できたことがわかる。
【0047】
特に、曲線fに示されるように水素キャリアを用いることによって、発光強度が増大し、さらに室温での自由励起子の減衰が抑えられる。これは、水素が未結合ボンドに結合して、非発光再結合の原因となる欠陥を不活性化しているためと思われる。
【0048】
次に、亜鉛原料としてジイソプロピル亜鉛、酸素原料としてイソプロパノール、キャリアガスとして窒素ガスまたは水素ガスを用い、図1に示したMOCVD装置により石英基板上にZnO薄膜を成長させた。得られたZnO薄膜の電気特性を、以下のような手法により測定した。
【0049】
具体的には、ホール効果測定装置を使用し、Van Der Pauw法(L.T.van der Pauw, Philips Research Reports 13, 1(1958))によりZnO薄膜の抵抗率、移動度、およびキャリア濃度を測定することによって電気特性を評価した。試料は、石英基板上にZnOを堆積させたものを用い、四隅に貼り付けたインジウム箔を電極とした。測定に先立って、この装置で電流-電圧特性の測定を行なって電極のオーミック性を確認した。
【0050】
得られた結果を下記表3に示す。
【0051】
【表3】
JP0003605643B2_000005t.gif【0052】
VI/II小(30以下)の場合には、高電子濃度のn型(1018cm-3以上)を示した。一方、VI/II大(60以上)の場合には、比較的高抵抗を示し、高純度なZnO薄膜を成長させることができる。また、水素キャリアを用いた場合には、窒素キャリアを用いた場合と比較して移動度が著しく増加し、室温での紫外線(励起子)発光強度が高められる。
【0053】
なお、従来報告されているZnO薄膜の移動度は、n型でキャリア濃度6×1016cm-3で30cm/Vs(サファイア基板上に成長)、1×1019cm-3で1cm/Vs(ガラス基板上に成長)である(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36,No.11A L1453~L1455(1997)、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38,No.11A L1205~L1207(1999))。本発明の方法により、高移動度で優れた電気特性を有するZnO薄膜を成長することが可能となった。
【0054】
以上、酸化亜鉛系薄膜としてZnO薄膜を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。II族元素を含有する化合物を添加した亜鉛原料を用いることによって、MZn1-xO(MはII族元素、0<x<1)で表わされる酸化亜鉛系化合物を含有する薄膜を成長させることも可能である。例えば、Mgを含有する酸化亜鉛系薄膜を成長する場合には(CHMgのような有機マグネシウムを、Cdを含有する酸化亜鉛系薄膜を成長する場合には(CHCdのような有機カドミウムを、亜鉛原料に適宜添加して用いればよい。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、表面平坦性に優れるとともに、酸素欠損の少ない高品質で高純度な酸化亜鉛系薄膜を、有機金属気相成長法により低温でエピタキシャル成長させる方法が提供される。
【0056】
本発明の方法により製造された酸化亜鉛系薄膜は、紫外線から緑色で発光する酸化亜鉛系発光素子として極めて有効に用いることができ、その工業的価値は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いられるMOCVD装置の構成を表わす概略図。
【図2】in-situスペクトル測定装置の構成を表わす概略図。
【図3】ジイソプロピル亜鉛の吸収スペクトル変化を表わすグラフ図。
【図4】フォトルミネッセンス測定装置の構成を表わす概略図。
【図5】ZnO薄膜のフォトルミネッセンススペクトル図。
【符号の説明】
10…リアクタ
11…ウィンドウ
12…サセプタ
13…単結晶基板
14…キャリアライン
16…Dランプ
17…分光器
18…OMA
20…クライオスタット
21…試料台
22…ZnO薄膜
23…石英製光学窓
24…レーザー光源
25…干渉フィルタ
26…石英製集束レンズ
27…He-Neレーザー光
28…蛍光
29…光ファイバ
30…分光器
31…OMA
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4