TOP > 国内特許検索 > 突入電流抑制方法 > 明細書

明細書 :突入電流抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3829192号 (P3829192)
公開番号 特開2004-112882 (P2004-112882A)
登録日 平成18年7月21日(2006.7.21)
発行日 平成18年10月4日(2006.10.4)
公開日 平成16年4月8日(2004.4.8)
発明の名称または考案の名称 突入電流抑制方法
国際特許分類 H02M   5/12        (2006.01)
FI H02M 5/12 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2002-269465 (P2002-269465)
出願日 平成14年9月17日(2002.9.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成14年電気学会全国大会講演論文集第4分冊<パワーエレクトロニクス/産業システム>(2002年3月26日)社団法人電気学会発行第258—259ページに発表
特許法第30条第1項適用 第14回「電磁力関連のダイナミックス」シンポジウム講演論文集(2002年5月22日)日本AEM学会発行第641—644ページに発表
特許法第30条第1項適用 平成14年電気学会産業応用部門大会講演論文集(平成14年8月21日)電気学会産業応用部門大会委員会発行第169—172ページに発表
審査請求日 平成15年12月18日(2003.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】田中 俊彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】杉浦 貴之
参考文献・文献 特開2001-135204(JP,A)
特開2000-14009(JP,A)
特開2002-64945(JP,A)
特開2002-233187(JP,A)
特開2001-128390(JP,A)
特開2000-175361(JP,A)
特開2002-165454(JP,A)
特開2002-204575(JP,A)
特開2002-191125(JP,A)
特開2002-176774(JP,A)
調査した分野 H02M 5/00
H02J 3/00
H02J 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
変圧器を用いて電源電圧を降圧する回路において適用する突入電流抑制方法であって、整合用変圧器を介して電圧形インバータを電源側において前記変圧器と直列接続し、当該電圧形インバータを、前記変圧器に流入する電流に応じて当該電流に任意のゲインを乗じた値の所定電圧を出力させることにより前記変圧器の制動抵抗として動作させることを特徴とする突入電流抑制方法。
【請求項2】
前記電圧形インバータの動作を停止する際に所定の時間をかけて当該電圧形インバータの出力電圧を減少させて二次突入を防止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の突入電流抑制方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器の突入電流抑制方法に関し、特に、電圧形インバータを用いた突入電流抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、工場などの電力需要施設では変電所からの電力を引き入れるための受電設備を構内に有している。受電設備には、電圧を下げるための受電端大型変圧器に加えて、電路における地絡事故時や短絡事故時に動作する遮断機などの保護設備が設置されている。また、施設規模が大きく構内に建物が複数ある場合には、受電端大型変圧器の下位に、複数の中型変圧器やそれに付随する遮断器を設けて回路的に独立させている。これにより、ひとつの建物を停電させる場合でも他の施設は十全に電力供給することが可能となっている。
【0003】
しかしながら、大型変圧器や中型変圧器を無負荷で不用意に電源に接続(投入)すると、定格電流の数十倍の電流、すなわち突入電流が発生することが知られている。受電端大型変圧器の定格電流を超えた突入電流が生じると、第1に、構内回路外側直近に設けられている遮断器が誤作動し、構内総てが停電してしまうという問題点があった。これは、中型変圧器に対して突入電流が生じても起こりうる問題である。
【0004】
また、構内全体の停電を引き起こさなかった場合であっても、電圧波形が大きく歪み、場合によっては構内の他の建物の機器を含めて誤作動の原因となる場合があった。例えば、総合病院や大学の研究機関など、停止してはいけない機器が動作している施設では、このような誤動作は許されない。
【0005】
従来では、これらの問題を解決するために、単相回路では電源投入位相を調整する方法が用いられている。また、三相回路では、突入電流抑制抵抗を内蔵した変圧器が知られている(水野和宏ら「励磁突流抑制変圧器の開発」,電気学会静止器研究会資料,SA-94-29,(1994))。また、高速電流応答を有するPWM変換器を変圧器と並列接続し、突入電流を供給することで電源側における電圧瞬時低下などを抑制する方法も知られている(藤原勝次ら「並列形アクティブフィルタを用いた変圧器励磁突入電流補償回路」、平成10年電気学会全国大会,No.830)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
すなわち、三相回路では、原理的に電源投入位相を調整しても、位相が120°ずつ相違している結果、必ず突入電流が生じるという問題点があった。
【0007】
また、変圧器に抑制抵抗を内蔵させる方式では、抑制抵抗を短絡除去する際に問題となる二次突入を防止できず、防止するためには抵抗値を制限する必要があるという問題点があった。
【0008】
また、並列形PWM変換器を用いる方式ではPWM変換器自身の容量(V×A)を大きくする必要があり経済的ではなく実用性が低いという問題点があった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、単相回路であっても三相回路であっても簡便な構成で突入電流を抑制する突入電流抑制方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の突入電流抑制方法は、変圧器を用いて電源電圧を降圧する回路において適用する突入電流抑制方法であって、整合用変圧器を介して電圧形インバータを電源側において前記変圧器と直列接続し、当該電圧形インバータを、前記変圧器に流入する電流に応じて当該電流に任意のゲインを乗じた値の所定電圧を出力させることにより前記変圧器の制動抵抗として動作させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の突入電流抑制方法は、請求項1に記載の突入電流抑制方法において、前記電圧形インバータの動作を停止する際に所定の時間をかけて当該電圧形インバータの出力電圧を減少させて二次突入を防止するようにしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の突入電流抑制方法を適用する基本回路構成(単相)を示した図である。図示したように、回路100は、電源101と、主変圧器102と、突入電流抑制器103とにより構成されている。
【0013】
突入電流抑制器103は、PWM変換器である電力変換器131と、電力変換器131を駆動する直流電源132と、電力変換器131の出力側に設けたスイッチングリプル抑制用フィフタ(LCフィルタ)133と、整合用変圧器134と、により構成されている。整合用変圧器は、電圧形インバータを電力系統と接続する際にお互いの電圧・電流定格を合わせるために用いられる変圧器である。図示したように、本発明では突入電流抑制器103を、整合用変圧器134を介して電源101と直列接続させている。
【0014】
なお、直流電源132は、図示を省略するが、その直近にコンデンサを配し、予め充電して使用するものとする。また、この直流コンデンサに回生用変換器を接続し(図示省略)、主変圧器102の投入時に発生するエネルギーを電源101に回生させる。なお、ここでは、電力変換器131としてPWM変換器を用いるが、これに限らずあらゆる電圧形インバータを用いることができる。
【0015】
実施の形態1では、主として計算機実験により検証を行うこととし、まず、突入電流を発生させるシステム(単相回路)を構築し、次に、本発明を適用した場合の実験結果について説明する。
【0016】
主変圧器102としては、定格電圧V=200[V]、定格電流30[A]、容量6000[VA]の単相変圧器を用いることとした。図2は、この主変圧器102の特性を示した図表である。また、図3は、図2に示した主変圧器102から導くことのできる変換器定数を示した図表である。実験では、電力系統の電磁過渡現象をシミュレーションする世界標準ソフトウェアであるPSCAD/EMTC(カナダのマニトバ HVDC リサーチセンター社製)を用いた。なお、実験では巻数抵抗は一次側と二次側で等しいと仮定し、突入電流減衰時間、飽和電圧、磁化電流、空心リアクタンスについては、図4に示した値を用いることとした。なお、簡便化のため、実験ではヒステリシスおよび残存磁束は考慮しないこととした。
【0017】
電源101としては、電圧実効値Vを200[V]、周波数を60[Hz]とし、6000[VA]をベースとした。電源側インピーダンスLを5%とした。
【0018】
まず、図1で、回路100から突入電流抑制器103を取り除き、電源電圧位相を0°で主変圧器102を投入した場合(スイッチSW1をONした場合)の電源電圧と電流波形を測定した。図5にその結果を示す。図示したように、回路100の電流iは最大で約330[A]を記録しており、主変圧器102の定格電流30[A]の8倍程度の電流、すなわち、突入電流が発生する系であることが確認できた。なお、回路100で電源電圧位相90°で主変圧器102を投入した場合には、図示を省略するが、理論的に確かめられているように無負荷電流量のみ流れ、突入電流は発生しないことが確認できた。
【0019】
次に、突入電流抑制器103の構成および作用を詳述する。図6は、電力変換器131の構成例を示した図であり、図7は、計算機実験に用いる回路定数を示した図表である。電力変換器131では、図8に示すような三角波比較方式PWM(Pulse Width Modulation)を用いて出力電圧vabを得る。電力変換器131は、主変圧器102に流入する電流iを検出して、K倍のゲインを乗じて三角波vと比較する。これにより、電力変換器131の出力電圧vab(図6参照)の平均値をK・iに[V]にすることができる。このことは、突入電流抑制器103がK[Ω]の抵抗として動作することを意味する。なお、実際には回路100では、LCフィルタ133を用いてスイッチングに起因する成分を取り除いている。
【0020】
図8に示したブロックのg~gが図6に示したg~gに接続される。主変圧器102は無負荷状態であるので、鉄心が飽和した場合に、無負荷電流I(図2参照)を超えないように電力変換器131の出力電圧voutを出力すべく制御ゲインKを決定する。なお、Sは図6の電力変換器131の運転停止を制御する信号を入力する。
【0021】
実施の形態1では、無負荷電流Iを超えないようにゲインを決定しているため、モデル化した主変圧器102の定格電流を0.3[A]として変圧器定数を決定した整合用変圧器134を用いる。整合用変圧器の定数を図9に示す。
【0022】
以上のようにして、計算機実験を行った。電源電圧vが0[V]となるt=0.0167[s]でSW1を閉じ、主変圧器102を電源101に投入した。結果を図10に示す。図5と比較すると明らかなように、投入直後に突入電流は発生しておらず定常状態となっていることが確認できる。しかしながら、電力変換器131の動作を急に停止した時点で二次突入が発生し2[A]程度の電流が流れていることがわかった。
【0023】
二次突入を防止し、電圧位相の急激な変化を防止するために、電力変換器131の出力電圧を50[ms]の時間をかけて減少させてみた。具体的には、t=0.1[s]経過後から50[ms]をかけて出力電圧voutを減少させ、t=0.15[s]で電力変換器131の動作を停止した。図11に結果を示す。主変圧器102を電源101に投入した瞬間は最大で約0.17[A]の電流が流れるが、1周期後には約0.12[A]となり定常状態を維持し、電源電圧にも影響を及ぼしていないことが確認できる。また、50[ms]の時間をかけて電力変換器131の出力電圧voutを減少させているため、二次突入も発生していないことが確認できた。突入電流抑制器103の動作を完全に停止すると、無負荷電流として回路100に0.28[A]の電流が流れ、一次二次とも突入電流が抑制されることが確認できた。
【0024】
次に、この計算機実験結果から、突入電流抑制器103の容量を求める。図10に示した結果では、電力変換器131の出力電圧voutの最大値は170[V]であった。また、電流iの最大値は0.17[A]であった。よって、電力変換器131のピーク値容量Ppeakは、
peak=170×0.17=28.9[VA]
となる。したがって、突入電流抑制器102の実効値容量は約15[VA]となる。よって、主変圧器102の容量6000[VA]に対して、1/400の容量の突入電流抑制器102で突入電流を抑制できたことになる。
【0025】
以上、実施の形態1の突入電流抑制方法によれば、簡便な構成で、単相回路の突入電流を抑制することが可能であることが明らかになった。
【0026】
[実施の形態2]
実施の形態2では、三相回路についての突入電流抑制方法について説明する。なお、実施の形態2では、特に断らないかぎり、実施の形態1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0027】
図12は、実施の形態2の突入電流抑制方法を適用する基本回路構成(三相)を示した図である。図示したように、回路200は、回路100を三相分組合せた構成とし、一次側をΔ結線として電源101と接続している。実施の形態2では、三相電源電圧の線間電圧実効値を200[V]、周波数を60[Hz]として、10000[VA]をベースとしている。なお、単相回路100と同様に、電源側インピーダンスLを5%とした。
【0028】
まず、突入電流の発生を確認するために、図12で、回路200から突入電流抑制器103を除き、a相電圧位相0°で主変圧器102(Tra、Trb、およびTrc)を電源101(vsa、vsb、vsc、)に投入し電源電圧と電流波形を測定した。図13にその結果を示す。図示したように、a相で最大約330[A]の電流が流れ、b相にキルヒホッフの法則を満たすために-330[A]の電流が流れて、単相の場合と同様に、定格電流の10倍以上の突入電流が流れる系であることが確認できた。なお、回路100は、対称であるので、どの相で主変圧器102を電源101に投入しても同様の結果を得る。また、前述したように、位相が各相間で120°ずれているのでいずれかの相で必ず突入電流が発生する。
【0029】
三相回路の場合の回路定数を図14に示した値として、計算機実験を行った。なお、実験では、回路構成を三相とし、図14に示した回路定数以外は実施の形態1と同様とし、a相の電圧位相0°の時、三相同時に主変圧器102を電源101に投入した。結果を図15に示す。図13と比較すると明らかなように、投入直後に突入電流は発生しておらず定常状態となっていることが確認できる。しかしながら、電力変換器131の動作を急に停止した時点で二次突入が発生し3[A]程度の電流が流れていることがわかった。
【0030】
二次突入を防止し、電圧位相の急激な変化を防止するために、実施の形態1と同様に、電力変換器131の出力電圧を50[ms]の時間をかけて減少させ二次突入の防止を試みた。結果を図16に示す。電源101に投入した瞬間は、最大で0.12[A]程度の電流が流れるが、定常状態では0.08[A]程度の電流となる。電力変換器131の動作を完全に停止すると、無負荷電流として0.28[A]の電流が流れ、一次二次とも突入電流が電力変換器131によって抑制されていることがわかる。
【0031】
次に、この計算実験結果から、三相回路の場合の突入電流抑制器103の容量を求める。電力変換器131の出力電圧最大値は、1相当たり約120[V]である。また、電流iの最大値は0.12[A]である。よって、電力変換器131のピーク値容量Ppeakは、
peak=120×0.12=14.4[VA]
となる。したがって、電力変換器131の1台あたりの実効値容量は約7.2[VA]であり、三相一括すると、22[VA]となる。よって、主変圧器102の容量10000[VA]に対して、1/454の容量の突入電流抑制器102で突入電流を抑制できたことになる。
【0032】
以上実施の形態2の突入電流抑制方法によれば、三相回路であっても、簡便な構成で、突入電流を抑制することが可能であることが明らかになった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の突入電流抑制方法によれば、単相回路であっても三相回路であっても簡便な構成で突入電流を抑制する突入電流抑制方法を提供することができた。また、主変換器容量の数百分の1の容量で突入電流抑制を可能とした。すなわち、整合用変圧器の容量を主変圧器容量の数百分の1とすることができ、経済的な突入電流抑制方法を提供できたといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の突入電流抑制方法を適用する基本回路構成(単相)を示した図である。
【図2】実施の形態1の主変圧器の特性を示した図表である。
【図3】図2に示した主変換器から導くことのできる変換器定数を示した図表である。
【図4】突入電流減衰時間、飽和電圧、磁化電流、空心リアクタンスを示した図表である。
【図5】構築した単相回路モデルを用いた数値実験で、突入電流が発生する様子を確認する図である。
【図6】実施の形態1の電力変換器の構成例を示した図である。
【図7】実施の形態1の計算器実験に用いる回路定数を示した図表である。
【図8】実施の形態1の電力変換器の信号生成構成ブロックを示した図である。
【図9】実施の形態1の整合用変圧器の定数を示した図表である。
【図10】実施の形態1の突入電流抑制方法を用い、主変換器を電源に投入した際の電流電圧の変化の様子を示した図である。
【図11】実施の形態1の突入電流抑制方法を用い、主変換器を電源に投入し、定常後、突入電流抑制器を緩やかに減衰させた際の電流電圧の変化の様子を示した図である。
【図12】実施の形態2の突入電流抑制方法を適用する基本回路構成(三相)を示した図である。
【図13】構築した三相回路モデルを用いた数値実験で、突入電流が発生する様子を確認する図である。
【図14】三相回路の場合の回路定数を示した図表である。
【図15】実施の形態2の突入電流抑制方法を用い、主変換器を電源に投入した際の電流電圧の変化の様子を示した図である。
【図16】実施の形態2の突入電流抑制方法を用い、主変換器を電源に投入し、定常後、突入電流抑制器を緩やかに減衰させた際の電流電圧の変化の様子を示した図である。
【符号の説明】
101 電源
102 主変圧器
103 突入電流抑制器
131 電力変換器(電力形PWM変換器)
132 駆動電源
133 LCフィルタ
134 整合用変圧器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15