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明細書 :炭製造方法および炭

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3823152号 (P3823152)
公開番号 特開2004-285127 (P2004-285127A)
登録日 平成18年7月7日(2006.7.7)
発行日 平成18年9月20日(2006.9.20)
公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
発明の名称または考案の名称 炭製造方法および炭
国際特許分類 C10B  53/02        (2006.01)
FI C10B 53/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2003-076532 (P2003-076532)
出願日 平成15年3月19日(2003.3.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年2月17日 国立島根大学主催の「卒業論文発表会」において文書をもって発表
審査請求日 平成15年3月20日(2003.3.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】大谷 忠
【氏名】北村 寿宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】渡辺 陽子
参考文献・文献 特開平08-283733(JP,A)
特開平06-128575(JP,A)
調査した分野 C10B
特許請求の範囲 【請求項1】
針葉樹をロール通しにより年輪間隔が短くなるように年輪に対して垂直方向に130℃~230℃の温度範囲で加熱しながら圧縮し、その密度が0.4g/cm~1.0g/cmのいずれかになるように調整して形状を固定した原料を、最高温度が800℃~1300℃である所定の雰囲気温度で炭化処理し、燃焼速度が調整された炭を製造することを特徴とする炭製造方法。
【請求項2】
針葉樹をロール通しにより年輪間隔が短くなるように年輪に対して垂直方向に130℃~230℃の温度範囲で加熱しつつその容積が元の容積の40%~60%となるまで圧縮して形状を固定し、続いて、最高温度を800℃~1300℃の所定の雰囲気温度として当該加熱圧縮された針葉樹を炭化処理することを特徴とする炭製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭製造方法により製造されたことを特徴とする炭。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭製造方法および炭に関し、特に、燃焼速度が調整された炭もしくは針葉樹由来である白炭の製造方法およびこれらの製造方法によって得られる炭に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、木炭には、備長炭に代表されるように広葉樹を原料とし、高温で炭化処理するいわゆる白炭と、スギのように針葉樹を原料とし、低温で炭化処理するいわゆる黒炭が知られている。黒炭は、火がつきやすい、燃焼速度が速い(燃焼時間が短い)、燃焼温度が高い、という特徴をもつ。白炭とは、反対に、火がつきにくい、燃焼速度が遅い(燃焼時間が長い:ゆっくりじわじわと燃える)、燃焼温度が低い、という特徴をもつ。
【0003】
黒炭をつくる際の炭化処理を説明する。まず、適当な土を用いて炭窯をつくる。つぎに、炭窯の中に原料(炭材)を詰めて350℃~400℃で炭化し、続いて約700℃に温度を上げ精煉する。その後、窯口通風口を密閉し、2~3日放置して自然冷却し、最後に窯口を開けて出炭する。
【0004】
白炭をつくる際の炭化処理を説明する。まず、窯壁を石、天井を土で炭窯をつくる。つぎに、炭窯の中に原料(炭材)を詰めて約300℃で炭化する。続いて、窯口を少しずつ広げて炭化温度を900℃~1300℃まで上げ十分に原料を精煉する。最後に、白熱したものを少しずつ外にかき出し、あらかじめ用意しておいた消粉を少し湿らせて覆い、冷却する。
【0005】
従来では、このように、広葉樹なら白炭、針葉樹なら黒炭として炭化処理されていた。
【0006】
【非特許文献1】
右田伸彦、米沢保正、近藤民雄編、「木材化学 下」1981年、p.61-95
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
すなわち、高品質木炭として知られる備長炭は原料が広葉樹のウバメガシに限定され、原料確保が困難であるという問題点があった。反対に、植林される木材種はスギやヒノキといった針葉樹がおおく、間伐材を炭にする場合には、原料過剰であるという問題点があった。特に、スギやヒノキといった針葉樹の炭はいわゆる黒炭用であり、用途が限定されるという問題点をもった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、用途に沿った燃焼特性を有する炭に調整可能な炭製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、針葉樹を用いた白炭を提供可能にすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の炭製造方法は、針葉樹をロール通しにより年輪間隔が短くなるように年輪に対して垂直方向に130℃~230℃の温度範囲で加熱しながら圧縮し、その密度が0.4g/cm~1.0g/cmのいずれかになるように調整して形状を固定した原料を、最高温度が800℃~1300℃である所定の雰囲気温度で炭化処理し、燃焼速度が調整された炭を製造することを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項1にかかる発明は、加熱圧縮後の形状が固定されたまま炭化処理が可能であり、針葉樹の仮道管や道管の大きさを調整し炭化後のマクロ孔の大きさを調整する。これにより、用途に沿った燃焼特性を有する炭に調整可能な炭製造方法を提供することができる。なお、針葉樹としては、たとえば、スギ、ヒノキ、スギ、ヒノキ、マツ(カラマツ、クロマツ、ベイマツ)、サワラ、ツガなどを挙げることができる。加熱圧縮時の温度は、130℃~200℃が好ましく、160℃~200℃が特に好ましい。密度は、0.6g/cm~0.9g/cmが好ましく、0.8g/cm付近~0.9g/cmに調整したものが特に好ましい。炭化温度は1000℃付近以上としたものが特に好ましい。
【0014】
また、請求項2に記載の炭製造方法は、針葉樹をロール通しにより年輪間隔が短くなるように年輪に対して垂直方向に130℃~230℃の温度範囲で加熱しつつその容積が元の容積の40%~60%となるまで圧縮して形状を固定し、続いて、最高温度を800℃~1300℃の所定の雰囲気温度として当該加熱圧縮された針葉樹を炭化処理することを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項2にかかる発明は、木材密度を広葉樹の密度まで高め、白炭の炭化処理に適した原料に調整し、加熱圧縮後の形状が固定されたまま炭化処理できる。これにより、針葉樹を用いた白炭を提供可能となる。なお、針葉樹としては、たとえば、スギ、ヒノキ、マツ(カラマツ、クロマツ、ベイマツ)、サワラ、ツガなどをあげることができる。加熱圧縮時の温度は、130℃~200℃が好ましく、160℃~200℃が特に好ましい。圧縮比は50%~60%の範囲としたものが特に好ましい。炭化温度は1000℃付近以上としたものが特に好ましい。
【0016】
また、請求項3に記載の炭は、請求項1または2に記載の炭製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項3にかかる発明は、用途に応じた燃焼特性を有する炭、また、針葉樹由来の白炭を提供可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
ここでは、各種の測定の便宜上、針葉樹の原料を加熱圧縮し、これを所定の大きさに切り分け、その後炭化処理して評価試料を作成した。また、ウバメガシを原料とした備長炭を比較試料とした。なお、針葉樹にはスギ材を用いた。また、以降においてはウバメガシを原料とした備長炭をウバメガシ炭と適宜称する。
【0019】
図1は、木炭原料片作製の流れを示した図である。原材料には密度がρ=0.34g/cm(1g/cm=10kg/m)、含水率が10.4%、平均年輪幅が3.7mmのスギ材を用い、これを、断面が30mm(幅)×300mm(長さ)×20mm(高さ)のスギ角材に加工した。ついで、ヒートロール型圧縮装置により、年輪に対して垂直方向(半径方向)に圧縮した。送り速度は2.5mm/sとした。なお、所望の圧縮率とすべく、圧縮率を高くするものについては数回のロール通しをおこなった。
【0020】
図2は、圧縮率CRと、加熱温度(圧縮温度)Tと、加熱圧縮後の密度を示した図である。図示したように、圧縮木材(木炭原料)の作成に当たっては、圧縮率CR=0%~75%、圧縮温度T=15℃(常温)、80℃、130℃、160℃、180℃、200℃、230℃とした。なお、圧縮率CRは半径方向の寸法変化より求めた。
【0021】
加熱圧縮後に圧縮木材の寸法回復が確認された。寸法回復が少ないほど、所望の木炭を製造しやすいため、圧縮温度と寸法回復の関係を調べた。図3は、圧縮率CRに対する回復率を圧縮温度Tごとに示した図である。また、図4は、圧縮温度Tに対する回復率を圧縮率CRごとに示した図である。図より、圧縮木材を作成するには高温、特に、圧縮温度T≧130℃であれば回復率が最低レベルであることが確認できた。これは、圧縮温度Tが高温のときには、木材中のミクロな構造において、セルロースの周りをリグニンが取り囲んでいるフィブリルの結晶が熱の作用によって一旦緩む。そのため、フィブリルによって構成されている細胞壁が圧縮によって折り曲げられやすくなり、その後の冷却によって、圧縮後の形状に固定される。ところが、Tが130℃よりも低い温度では、フィブリルの構造が緩みにくく、圧縮してもミクロな構造の変化が小さいため、元の形状に戻りやくなるものと考えられる。なお、以降では圧縮率CRは回復後の値により表示する。
【0022】
得られた圧縮木材を、20mm(幅)×20mm(長さ)の寸法に加工し木炭原料片を作成した。つぎに、木炭原料片を、超高温急熱急冷大容量型熱天秤(真空理工株式会社製:TG-7000VHT)を用いて炭化処理した。炭化温度T=400℃、600℃、800℃、1000℃とした。炭化の過程は、最初の10分間で目的の炭化温度Tまで上昇させ、次の10分間はその炭化温度Tを維持し、最後の10分間は室温まで強制冷却した。炭化とは、一般的に、木材の木ガス成分や留出液がすべて生成された状態をいう。本装置では炭化処理中における木炭原料片の質量変化を測定することが可能である。そこで、炭化処理中における原料片の質量を測定し、炭化時間内において質量が減少したことを確認することによって、木ガス成分や留出液がすべて生成されたと仮定し、炭化の終了と定義した。
【0023】
(木炭片の評価:硬さ)
作成した木炭片とウバメガシの備長炭との硬さを測定した。測定にはデュロメータ硬さ試験機を用いた。硬さは木炭片の任意の5点に針を押し込み測定した。まず、炭化温度が1000℃であるウバメガシの備長炭と比較するため、炭化温度Tを1000℃とした木炭片の圧縮率CRと硬さとの関係を調べた。図5は、炭化温度Tが1000℃である木炭片の圧縮率CRと硬さの関係を示した図である。図から明らかなように、いずれの圧縮温度Tであっても、圧縮率が約50%までは硬さは増加するが、圧縮率が約50%付近で硬さの変化は少なくなった。また、図より、圧縮温度T=180℃付近で最も硬い炭となることが確認できた。
【0024】
つぎに、炭化温度Tが1000℃である木炭片の圧縮温度Tと硬さとの関係を述べる。図6は、炭化温度Tが1000℃である木炭片の圧縮温度Tと硬さとの関係を示した図である。図から明らかなように、いずれの圧縮率CRであっても、圧縮温度Tが180℃程度までは硬さは増加したが、圧縮温度T=180℃程度以上となると、硬さが急激に減少することが確認できた。図より、圧縮温度Tのレベルとしては、130℃~200℃が好ましく、160℃~200℃が特に好ましいといえる。
【0025】
つぎに、圧縮温度T=180℃の木炭原料片を用いて炭化温度Tを変え、木炭片の硬さを比較した。図7は、炭化温度Tに対する硬さを圧縮率CRごとに示した図である。いずれの炭化温度においても圧縮率CRが増加するにつれて硬さは硬くなることが確認できた。特に、高圧縮率(CR=43%および60%)の木炭原料片であると炭化温度Tが高くなるほど硬さが増加することが確認できた。これは、炭化温度Tが高くなるほど炭の収縮が起こり、密度が高くなるためと考えられる。
【0026】
つぎに、圧縮温度T=180℃、炭化温度T=1000℃の木炭片の密度と硬さの関係を調べた。図8は、圧縮温度T=180℃、炭化温度T=1000℃の木炭片の密度と硬さの関係を示した図である。図示したように、原料木炭片の密度が高くなる(高圧縮率となる)につれて硬さは硬くなり、ウバメガシの備長炭に近づいていくことが確認された。なお、図より、加熱圧縮時の圧縮率は50%をピークとして40%~60%の範囲が好適であることがわかる。また、密度ウバメガシほどでなくともウバメガシの備長炭に近い硬さの木炭を作出できることがわかった。
【0027】
(木炭片の評価:燃焼特性)
つぎに、木炭片とウバメガシの備長炭の燃焼特性を測定した。測定には熱研式断熱熱量計(吉田製作所製)を用いた。木炭片周囲は、30kgf/cmの酸素雰囲気とした。測定に際しては、木炭片点火後2分までは温度を5秒ごとに測定し、それ以降は1分ごとに10分まで測定した。2分まで5秒ごとに水温を測定した理由は、1分間で温度上昇がほぼ止まり、燃焼がこの時点で終了していると判断したためである。なお、以降に示す図は適宜機材の熱当量を考慮して木炭片自体の発熱量に換算してある。
【0028】
図9は、スギ材(無圧縮)、木炭片(圧縮率CR=50%、圧縮温度T=180℃、炭化温度T=1000℃)、ウバメガシの備長炭片のそれぞれについて燃焼時間tと発熱量Qの関係を示した図である。本研究の燃焼試験は酸素を30kgf/cmで満たされた容器内で燃やしたため、燃焼後容器内に試料は残っておらず、木炭片は十分に燃焼できる条件の下で試験をおこなえることを確認した。
【0029】
図10は、燃焼時間tと単位時間当たりの発熱量を圧縮率について比較した図である。スギ圧縮木材の圧縮率が増加するにしたがって、ウバメガシの備長炭の発熱曲線に近づいていくことが確認できる。スギ材および低圧縮率の木炭片(CR=26%)では燃焼開始後約15秒後に急激に発熱量が増加し、ピークは約60秒後であった。また、高圧縮率の木炭片(CR=50%~CR=60%)およびウバメガシの備長炭も、燃焼開始後約15秒後から温度上昇を始めたが、低圧縮率の木炭片(CR=26%)に比較して緩やかな発熱量曲線を描くことが確認できた。スギ圧縮木材(CR=50%~CR=60%)の木炭の発熱ピークはいずれも約78秒後であり、ウバメガシ木炭の発熱のピークは85秒後であり、両者の発熱ピークは近接していることが確認できた。
【0030】
図11は、原料木炭片密度と単位時間当たりの最大発熱量(Qmax/t)、および、原料木炭片密度と最大発熱量Qmaxまでの到達時間TQmaxの関係を示した図である。図より、密度が大きくなるにつれてQmax/tは小さく最大発熱量Qmaxへの到達時間TQmaxは長くなり、ウバメガシの備長炭に近くなる。反対に、密度が低くなるにつれてQmax/tは大きく最大発熱量Qmaxへの到達時間TQmaxは短くなり、黒炭(スギ材の木炭)に近くなる。なお、図より、密度を0.4g/cm~1.0g/cmに適宜調整することにより、燃焼速度ないし燃焼特性を調整できるといえる。
【0031】
以上説明したように、本発明の炭製造方法によれば原料部材の加熱圧縮工程で適宜圧縮率を調整することにより、燃焼速度が調整された炭を作出可能であることがわかった。なお、白炭の炭化温度は高くは1300℃程度まで上昇させることがあり、本発明でも同様に炭化温度Tを1300℃程度まで上昇させても良いことはいうまでもない。
【0032】
また、本実施例では、原料木材をスギとしたが、これ以外の針葉樹を用いても良いし、場合によっては竹を用いても良い。針葉樹を用いても従来通りの黒炭のほか白炭も製造できるため、解体家屋からの廃材や、間伐材を有効利用できるといえる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば用途に沿った燃焼特性を有する炭に調整可能な炭製造方法を提供することができた。また、針葉樹を用いた白炭を提供可能とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 木炭原料片作製の流れを示した図である。
【図2】 圧縮率CRと、加熱温度(圧縮温度)Tと、加熱圧縮後の密度を示した図である。
【図3】 圧縮率CRに対する回復率を圧縮温度Tごとに示した図である。
【図4】 圧縮温度Tに対する回復率を圧縮率CRごとに示した図である。
【図5】 炭化温度Tが1000℃である木炭片の圧縮率CRと硬さの関係を示した図である。
【図6】 炭化温度Tが1000℃である木炭片の圧縮温度Tと硬さとの関係を示した図である。
【図7】 炭化温度Tに対する硬さを圧縮率CRごとに示した図である。
【図8】 圧縮温度T=180℃、炭化温度T=1000℃の木炭片の密度と硬さの関係を示した図である。
【図9】 スギ材(無圧縮)、木炭片(圧縮率CR=50%、圧縮温度T=180℃、炭化温度T=1000℃)、ウバメガシの備長炭片のそれぞれについて燃焼時間tと発熱量Qの関係を示した図である。
【図10】 図10は、燃焼時間tと単位時間当たりの発熱量を圧縮率について比較した図である。
【図11】 図11は、原料木炭片密度と単位時間当たりの最大発熱量(Qmax/t)、および、原料木炭片密度と最大発熱量までの到達時間TQmaxの関係を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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