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明細書 :酸化亜鉛超微粒子および酸化亜鉛超微粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4072620号 (P4072620)
公開番号 特開2005-060145 (P2005-060145A)
登録日 平成20年2月1日(2008.2.1)
発行日 平成20年4月9日(2008.4.9)
公開日 平成17年3月10日(2005.3.10)
発明の名称または考案の名称 酸化亜鉛超微粒子および酸化亜鉛超微粒子の製造方法
国際特許分類 C01G   9/03        (2006.01)
H01L  21/363       (2006.01)
FI C01G 9/03
H01L 21/363
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2003-290248 (P2003-290248)
出願日 平成15年8月8日(2003.8.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 島根大学平成14年度卒業研究発表会論文及び要旨(2003年2月)に発表
審査請求日 平成15年8月8日(2003.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 特開2001-068707(JP,A)
特開平07-025614(JP,A)
真見和宏,ガス中蒸発法による酸化亜鉛超微粒子の生成と薄膜化,平成14年度卒業研究発表会論文及び要旨,島根大学,2003年 2月
D. C. Look et al.,Characterization of homoepitaxial p-type ZnO grown by molecular beam epitaxy,Applied Physics Letters,2002年 9月 2日,Vol.81, No.10,p.1830-1832
陶山容子、竹宮聡、加藤昭夫,Zn蒸気の気相酸化によるZnO超微粉体の合成,窯業協会誌,1985年 2月,93 [2],p.105-107
Y. Sun et al.,Excitonic gain and stimulated ultraviolet emission in nanocrystalline zinc-oxide powder,Applied Physics Letters,2000年10月 9日,Vol.77, No.15,p.2322-2324
M. Samy El-shall et al.,Synthesis of Nanostructured Materials using Laser Vaporization/Condensation Technique,Polymeric Materials Science and Engineering,1995年,Vol.73,p.37-38
調査した分野 IPC C01G 9/00-9/08
DB名 JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
結晶中の窒素濃度が1016cm-3~1020cm-3であって、粒子径が50nm~200nmである酸化亜鉛超微粒子。
【請求項2】
室温で375nm付近の蛍光を示し、可視光域の蛍光強度の積分値が紫外光域の発光強度の積分値の100分の一以下である請求項1に記載の酸化亜鉛超微粒子。
【請求項3】
極低温にて波長368nm付近で観測されるドナーに基づく発光強度に比して、波長375nm付近で観測されるアクセプタに基づく発光強度が3倍以上大きな請求項1または2に記載の酸化亜鉛超微粒子。
【請求項4】
酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスを雰囲気ガスとし、その中でアーク放電を用いて亜鉛を加熱して蒸発させ、亜鉛蒸発量が過多となり酸素欠損の存在する超微粒子とならないように亜鉛蒸発量を抑制することにより請求項1~3のいずれか一つに記載の酸化亜鉛超微粒子を製造する酸化亜鉛超微粒子製造方法。
【請求項5】
純度99.99%以下の亜鉛を用いる請求項4に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法。
【請求項6】
雰囲気ガスとして精製しない空気を用いる請求項4または5に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥が少なく高純度な酸化亜鉛超微粒子および酸化亜鉛超微粒子の製造方法に関し、特に、低純度な原料を用いた高品質な酸化亜鉛超微粒子および窒素アクセプタを含んだ酸化亜鉛超微粒子、並びに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化亜鉛の微粒子は酸素欠損に起因する欠陥による緑色の発光を利用した蛍光材料などに利用されていた。また、理論的には励起子による紫外線発光特性も備えるため、これを実現すべく、所定の基板上に結晶性の良い単結晶薄膜を成長させる研究もなされている。その結果、MBE法(分子線エピタキシャル成長法)により、高純度な原料を用いて酸化亜鉛の単結晶薄膜の成長過程で窒素をドーピングすることにより、キャリア濃度は十分ではないがp型薄膜を製造することが可能となっている。
【0003】

【非特許文献1】D.C.Look,D.C.Reynilds,C.W.Litton,R.L.Jones,D.B.Easonand G.Cantwell: APPLIED PHYSICS LETTERS Vol.81,No.10 02/09/2002
【非特許文献2】Y,Sun,J.B.Ketterson,G.K.L.WongAPPLIED PHYSICS LETTERS Vol.77,No.15,09/10/2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
すなわち、MBE法は実験ないし研究段階に適した製造方法であり、量産には適さないという問題点があった。具体的には、電気的に活性な不純物を低減させるために原料全てに高純度が要求され、例えば、6N~7N(純度99.9999%~99.99999%)の純度が必要であるという問題点があった。また、装置も大がかりであり、原料単価とも相まって、製造コストが極めて高いという問題点もあった。
【0005】
この他、CVD法により超微粒子を製造する方法も知られているが、やはり装置が大がかりであって、原料の純度管理が難しいことや製造コストが高いという問題点もある。
【0006】
一方、素材の観点からは、酸化亜鉛は大気中で安定、安価、短波長の光と相互作用することが可能であるといった従来の半導体にない利点を持っている。したがって、半導体としての物性を発揮できる結晶性の良い酸化亜鉛が望まれている。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、p型伝導や紫外線発光など半導体としての物性を発揮できる結晶性の良い高品質な酸化亜鉛超微粒子を提供することを目的とする。
【0008】
また、上述の高品質な酸化亜鉛超微粒子を、低純度な素材から安価に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の酸化亜鉛超微粒子は、結晶中の窒素濃度が1016cm-3~1020cm-3であって、粒子径が50nm~200nmの酸化亜鉛超微粒子である。
【0010】
また、請求項2に記載の酸化亜鉛超微粒子は、請求項1に記載の酸化亜鉛超微粒子において、室温で375nm付近の蛍光を示し、可視光域の蛍光強度の積分値が紫外光域の発光強度の積分値の100分の一以下である酸化亜鉛超微粒子である。ここにいう酸化亜鉛超微粒子は、酸素欠損のない微粒子ということもできる。
【0011】
また、請求項3に記載の酸化亜鉛超微粒子は、請求項1または2に記載の酸化亜鉛超微粒子において、極低温にて波長368nm付近で観測されるドナーに基づく発光強度に比して、波長375nm付近で観測されるアクセプタに基づく発光強度が3倍以上大きな酸化亜鉛超微粒子である。
【0012】
また、請求項4に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法は、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスを雰囲気ガスとし、その中でアーク放電を用いて亜鉛を加熱して蒸発させ、亜鉛蒸発量が過多となり酸素欠損の存在する超微粒子とならないように亜鉛蒸発量を抑制することにより請求項1~3のいずれか一つに記載の酸化亜鉛超微粒子を製造する方法である。
【0013】
また、請求項5に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法は、請求項4に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法において、純度99.99%以下の亜鉛を用いる製造方法である。
【0014】
また、請求項6に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法は、請求項4または5に記載の酸化亜鉛超微粒子製造方法において、雰囲気ガスとして精製しない空気を用いる製造方法である。
【0015】
なお、本願では、超微粒子とは、その平均的な大きさがμm(1×10-6m)オーダー未満であることを意味する。また、超微粒子の形状は必ずしも球形を意味せず、直方体形や長径短径の比が大きな楕円体形であってもよく、更には針状結晶が含まれていても良いものとする。また、酸化亜鉛超微粒子とは、微粒子自体が一個の単結晶から構成されていることを必ずしも意味せず、複数のブロックに別れた単結晶の集合体であっても良いものとする。
【0016】
また、可視光域とは、人間が関知できる光の波長範囲をいい、具体的には400nm程度~700nm程度をいう。また、紫外光域とは、可視光域より短波長側の波長範囲をいい、具体的には400nm未満をいう。
【0017】
また、極低温とは、10K程度以下の温度をいい、熱エネルギーが無視できる温度レベルであることを意味する。
【0018】
酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスは、例えば空気と同様の4:1のモル比のガスを用意しても良いし、製造室中の空気を直接使用しても良いものとする。なお、混合ガスのうち、酸素は3vol%~50vol%とすることができる。これは、3%vol%未満だと酸素欠損が生じ易く、50%以上だとアーク放電が不安定になるからである。また、混合ガスのうち、窒素は5vol%~97vol%とすることができる。これは、5%未満だと超微粒子中の窒素の混入が少なくなるからである。なお、酸素ガスと窒素ガスだけを用いる場合はこれらの合計が100vol%となるように調整すればよいが、この他、合計が100vol%となるのであれば、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを含んでも良いものとする。
【0019】
なお、混合ガスの総圧は、ガス中蒸発法による場合にはアーク放電を生じ易くするため、例えば、20×10[Pa]とすることができる。ただし、混合ガスの構成比とその圧力、印加電圧、電極間の距離などの関係は、酸素欠損により亜鉛そのものが微粒子中に残存してしまわない組合せであればよいものとする。
【0020】
また、加熱して蒸発させる方法としては、例えばアーク放電を用いる方法(以下の実施例でもアーク放電を利用したガス中蒸発法を用いた製造例を説明する)を挙げることができる。
【0021】
また、純度99.99%以下とは、特にその下限を設定しないが、不純物が超微粒子の生成に影響を与えず、また、半導体としての性質の観点から見て影響を与えないレベルをいう。
【0022】
また、酸素欠損のないとは、フォトルミネッセンス法による評価で酸素欠損に起因する500nm前後の可視光の蛍光強度がバンド端発光による紫外光の100分の一以下であるような結晶を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、p型伝導や紫外線発光など半導体としての物性を発揮できる結晶性の良い高品質な酸化亜鉛超微粒子を提供可能となる。
【0024】
また、この高品質な酸化亜鉛超微粒子を、低純度な素材から安価に製造する製造方法を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本実施例では酸化亜鉛超微粒子の作製にあたってガス中蒸発法を用いた例を説明する。超微粒子の生成には、真空冶金製GE-970を使用した。図1は、本実施例で使用した装置の概略構成を示した図である。
【0026】
超微粒子の作製手順としては、まずチャンバー内を真空に引き、ここに原料ガスである空気(特に精製しない空気)を20×10[Pa]の圧力となるまで流入した。続いて、カーボン電極と導電性のハースの上にセットした原料であるZnインゴット(純度4N:99.99%)との間でアーク放電を発生させ、Znを連続的に蒸発させた。
【0027】
このとき、Znがチャンバー内の酸素と反応してZnO超微粒子が生成される。生成された超微粒子はチャンバーの壁面に付着した。なお、以降の評価測定については、この壁面に付着した酸化亜鉛の超微粒子を用いた。
【0028】
電流値を変化させ、アーク放電が生じた際の電圧と、放電時間の関係を表1に示す。
【表1】
JP0004072620B2_000002t.gif

【0029】
評価はSEM(走査型電子顕微鏡)による観察と、フォトルミネッセンスによる発光特性測定をおこなった。
【0030】
まず、SEM写真を示す。図2は、条件2により作製した酸化亜鉛超微粒子を写したSEM写真である。図から明らかなように、作製された超微粒子は100nm径×200nm程度の柱状の粒子であることが確認できた。
【0031】
次に、発光特性の測定結果を図3、図4、および、図5に示す。図3は、条件2で作製した試料の室温(290[K])における発光特性を示した図である。図示したように、室温において自由励起子の吸収と同じ波長375[nm]付近で発光が確認された。これは自由励起子が存在することを示しており、高品質な結晶が製造されたことを意味する。
【0032】
図4は、条件2および条件3により作製した試料の5[K]における発光特性を示した図である。条件3により作製された超微粒子は図示したレンジでは発光は確認できず、500nm程度のブロードなレンジで発光が確認できた(500nmにおける図示は省略)。このような可視光域での発光は、酸素欠損によるものと考えられる。
【0033】
反対に、条件2により作製された超微粒子は375[nm]という短波長側で鋭い発光ピークが観測され、500[nm]程度のレンジでは発光が確認されなかった(500nmにおける図示は省略)。このように、鋭いピークが観測されたことより、条件2の超微粒子の結晶は高品質であるといえる。
【0034】
図5は、MBEにより窒素をドープした酸化亜鉛単結晶薄膜の発光特性についての論文値と条件2により作製した試料の測定値とを比較した図である。この論文値は非特許文献1に掲載された、現時点で世界最高レベルの高品位のp型ZnO単結晶薄膜の生成の成功を紹介したものである。
【0035】
上記の論文によれば、図中でAXは窒素アクセプタによる発光ピークであり、DXはドナーによる発光ピークである。図から明らかなように、高純度(6N~7N)原材料を用いてMBEにより製造された酸化亜鉛薄膜のスペクトルと、低純度の原料で製造された酸化亜鉛超微粒子のスペクトルは、ほぼ同形であり、加えて、アクセプタとドナーとの発光ピーク比が本実施例の方が論文値に比して大きく、極めて品質の高いp型の超微粒子が作製されたことが伺える。
【0036】
また、論文値は、結晶中の窒素濃度が1019cm-3であるので、条件2により作成した試料は、同程度の窒素濃度であるといえる。
【0037】
以上説明したように、本実施例によれば、低純度な材料を用いて極めて高品質かつp型の酸化亜鉛単超微粒子を得ることができた。なお、実勢価格上、原料純度が1桁上昇すると原料価格が一桁上昇するので、本方法によれば極めて低廉に高純度な酸化亜鉛超微粒子を得ることができるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明を利用して、例えば、紫外域から緑色域で発光する酸化亜鉛系発光素子や、太陽電池などを、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例において使用した装置の概略構成を示した図である。
【図2】実施例において、条件2により作製した酸化亜鉛超微粒子を写したSEM写真である。
【図3】実施例において、条件2で作製した試料の室温(290[K])における発光特性を示した図である。
【図4】実施例において、条件2および条件3により作製した試料の5[K]における発光特性を示した図である。
【図5】実施例において、MBEにより窒素をドープした酸化亜鉛単結晶薄膜の発光特性についての論文値と条件2により作製した試料の測定値とを比較した図である。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図2】
4