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明細書 :セラミックス繊維/SiC複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4078453号 (P4078453)
公開番号 特開平11-335171 (P1999-335171A)
登録日 平成20年2月15日(2008.2.15)
発行日 平成20年4月23日(2008.4.23)
公開日 平成11年12月7日(1999.12.7)
発明の名称または考案の名称 セラミックス繊維/SiC複合材料の製造方法
国際特許分類 C04B  35/52        (2006.01)
C04B  35/571       (2006.01)
C04B  35/80        (2006.01)
FI C04B 35/52 D
C04B 35/56 101M
C04B 35/80 B
C04B 35/80 C
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願平10-143045 (P1998-143045)
出願日 平成10年5月25日(1998.5.25)
審査請求日 平成16年7月23日(2004.7.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】香山 晃
【氏名】荒木 弘
【氏名】野田 哲二
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特開平03-223177(JP,A)
特開平08-198679(JP,A)
特開平03-223180(JP,A)
特開平04-272803(JP,A)
調査した分野 C04B35/52-35/536
C04B35/565-35/577
C04B35/78-35/84
特許請求の範囲 【請求項1】
SiC繊維又はC繊維の成形体を1.0~3.0MPaで加圧し、加圧状態の繊維成形体にアルキルクロロシランを供給及び浸透させ、アルキルクロロシランの熱分解反応によって生成したSiC相で相互に隣接するSiC繊維又はC繊維を結合した後、
繊維成形体を加圧状態から解放し、更にアルキルクロロシランを供給し、該アルキルクロロシランの熱分解反応によってSiC相を繊維成形体の内部に析出させる
ことを特徴とするセラミックス繊維/SiC複合材料の製造方法。
【請求項2】
繊維成形体を900~1200℃に加熱保持し、繊維成形体の内部に浸透したアルキルクロロシランを熱分解する請求項1記載のセラミックス繊維/SiC複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高温雰囲気においても高度に安定した高強度を示すC繊維,SiC繊維等を用いたセラミックス繊維/SiC複合材料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力,航空宇宙分野等の特殊環境や極限環境で使用される材料として、耐熱性や耐摩耗性に優れたセラミックス系材料が注目されている。セラミックス系材料は、熱交換器,メカニカルシール等の過酷な条件に曝される部材としても使用されている。
なかでも、SiC,Si34 等の非酸化物系セラミックスは、高温雰囲気においても優れた強度を維持する材料である。特に、SiCやCは、強度,耐熱性,高熱伝導性,耐摩耗性に優れていることに加え、中性子照射によっても長寿命の放射性核種を生じないことを活用し、宇宙航空用から核融合炉の第1隔壁に至るまでの広範な分野において有望視されている材料である。
SiCは、融点が非常に高く高温特性に優れているが、それ自体では脆い材料である。そこで、C繊維やSiC繊維で強化した複合材料の開発が進められており、400MPaを超える強度をもつセラミックス繊維/SiC複合材料も提案されている[A.Lacombe and C.Bonnet,2nd Int.Aerospace Planes Conf.Proc.AIAA-90-5208(1990),C.W.Hollenberg et al.,J.Nucl.Mat.,219,(1995)70-86参照]。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
マトリックスとなるSiC相を形成する方法として、クロロシランの熱分解を利用する方法が一部で採用されている。この方法は、最終製品に近い形状の複合材料が得られるため、過酷な環境における耐熱性が要求される航空機部品等の製造に適用されている。
しかし、クロロシランの熱分解でマトリックスのSiC相を形成する場合、SiC繊維又はC繊維を予め所定形状に成形した繊維成形体の内部空隙がSiC相で十分に充填されない部分が生じがちである。SiC相で充填されていない内部空隙は層間剥離や破壊の起点になり易いが、従来法によるとき最終的な空隙率を20体積%以下に低下することは困難である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、加圧状態でのSiC相析出反応を組み込むことにより、90体積%を超える高緻密度をもち、SiC本来の特性を活用した高温特性に優れたセラミックス繊維/SiC複合材料を得ることを目的とする。
本発明の製造方法は、SiC繊維又はC繊維の成形体を1.0~3.0MPaで加圧し、加圧状態の繊維成形体にアルキルクロロシランを供給及び浸透させ、アルキルクロロシランの熱分解反応によって生成したSiC相で相互に隣接するSiC繊維又はC繊維を結合した後、繊維成形体を加圧状態から解放し、更にアルキルクロロシランを供給し、該アルキルクロロシランの熱分解反応によってSiC相を繊維成形体の内部に析出させることを特徴とする。アルキルクロロシランを熱分解するため、繊維成形体を900~1200℃に加熱保持することが好ましい。
【0005】
セラミックス繊維としてはC繊維又はSiC繊維が使用され、SiC相の析出に先立って繊維束又は織物にされる。たとえば、C繊維又はSiC繊維を平織し、或いは朱子織物としたものが使用される。
繊維束又は織物の積層材を加圧保持して繊維成形体とし、繊維成形体の内部にアルキルクロロシランを浸透させ、マトリックスとなるSiC相を析出させる。アルキルクロロシランには、メチルクロロシラン,ジメチルクロロシラン,エチルクロロシラン,プロピルクロロシラン等のアルキルクロロシランが反応性ガスとして使用される。
【0006】
【作用】
本発明者等は、アルキルクロロシランの熱分解によってSiC繊維,C繊維等の繊維成形体の内部をSiC相で充填する場合、得られる複合材料の緻密度が低い理由を次のように推察した。アルキルクロロシランは、流路抵抗の少ない箇所を優先的に流れて繊維成形体の内部に浸透する。浸透したアルキルクロロシランが熱分解してSiCを析出させると、析出部分の流路抵抗が上昇し、アルキルクロロシランが一層流れにくくなる。繊維成形体の内部でアルキルクロロシランの流量分布に変動があるため、析出するSiC相も不均一になる。その結果、繊維成形体の内部にクローズドポアが生じ、製品に持ち込まれる。また、SiC繊維又はC繊維の隣接間距離が大きな箇所では間隙を析出SiC相で埋め切れず、空隙のまま残留する。
【0007】
そこで、繊維成形体内部の流路抵抗が緻密度の向上にネックとなっているとの前提で、繊維成形体内部の流路抵抗を均一化して、アルキルクロロシランを繊維成形体の内部に万遍なく行き渡らせ、SiCの析出反応を均一化させる方法を検討した。その結果、加圧条件下でアルキルクロロシランを熱分解させる第1工程,無負荷の条件下でアルキルクロロシランを熱分解させる第2工程に分けてSiCを析出させるとき、繊維成形体の内部空隙が析出したSiC相で効率よく充填されることを見出した。
【0008】
第1工程では、繊維束又は織物の積層材を1.0~3.0MPa,好ましくは1.0~2.0MPaの一定加圧条件下に保持した繊維成形体にアルキルクロロシランを浸透させる。圧力付加によって繊維成形体が圧縮され、各繊維間の空隙が一定化する。しかし、3.0MPaを超える圧力では、切断等による繊維の損傷が生じ易くなる。
加圧された繊維成形体を900~1200℃に加熱すると、繊維と繊維が接触している箇所にアルキルクロロシランからSiCが析出し、析出したSiCによりその箇所で繊維が部分的に結束される。
このようにして、アルキルクロロシランの熱分解生成物であるSiCが繊維成形体の内部に均等に析出する。また、隣接するSiC繊維又はC繊維が析出SiCで結束されるため、繊維成形体に形状自己保持性が付与される。しかし、繊維成形体に加える圧力が1MPaに満たないと、空隙の大きさにバラツキが生じ、次の工程でSiCを含浸析出させても空隙率を20体積%以下にすることが困難になる。
【0009】
第1工程のSiC析出処理は、繊維成形体に加えている圧力を解除した後でも繊維成形体の圧縮状態が維持されるように、繊維を部分的に結束するまで続けられる。具体的には、950℃の反応温度では、第1工程のSiC析出処理を3時間程度継続し、厚さ0.2~0.5μmのSiC析出層を形成する。
第1工程でC繊維又はSiC繊維の表面に析出したSiC相は、第2工程で析出するSiC相に対する呼び水としての作用を呈する。すなわち、第1工程でC繊維又はSiC繊維が析出SiC相に対してなじみ易い表面に調整されているため、通常の条件下でアルキルクロロシランを熱分解しても、生成したSiCがC繊維又はSiC繊維の表面に良好な付着力で均一に析出する。しかも、第1工程で析出したSiC相によって隣接繊維が相互に結合されているため、繊維成形体内部にある空隙も平均化されている。その結果、繊維間の空隙が十分にSiC相で充填され、緻密度の高いセラミックス繊維/SiC複合材料が得られる。
【0010】
得られたセラミックス繊維/SiC複合材料は、空隙率が10体積%以下に抑えられており、機械的破壊の起点や破壊の伝播経路が低減され、高強度の材料となる。たとえば、SiC繊維/SiC複合材料では500~750MPa,C繊維/SiC複合材料では400~800MPaの曲げ強度を示す材料となる。
【0011】
【実施例】
実施例1:
線径15μmのSiC繊維を束にし、直径40mm,厚み2mmの円盤状に7枚積層した。繊維積層体1を図1に示すように孔の開いたMo製円盤2,2に挟み、炭素質ホルダー3にボルト4で固着した。Mo製円盤2,2としては、厚みが2mmで、多数のガス透過孔5を全面に形成したものを使用した。Mo製円盤2の外周縁部には円周方向に等間隔でボルト挿通孔6が形成されており、挿通孔6に差し通されたボルト4は、炭素質ホルダー3に形成されているネジ孔7にねじ込まれる。炭素質ホルダー3にも、同様な複数のガス透過孔8が形成されている。繊維積層体1に加える圧力はボルト4のねじ込み量によって調節され、また繊維積層体1の全体に均等な圧力が加えられる。
【0012】
繊維積層体1に1.0MPaの圧力を加え、0.133MPaの真空チャンバに配置した。真空チャンバに反応性ガス8としてエチルクロロシランを流量2×10-5Nm3 /分で供給し、Mo製円盤2,2及び炭素質ホルダー3のガス透過孔5,8を介して繊維積層体1にエチルクロロシランを浸透させた。
エチルクロロシランを供給しながら繊維積層体1を900℃に加熱し、SiC相の析出を3時間継続した。3時間経過時点では、繊維積層体1の内部に析出したSiC相によってSiC繊維が相互に結着されているため、ボルト4を緩めても繊維積層体1はその形状を自己保持していた。
【0013】
圧力から解放された繊維積層体1を円筒状の炭素質ホルダーに取り付け、繊維成形体1の露呈面全域に反応性ガス9が当るようにエチルクロロシランを供給し、SiC相の析出を温度900℃で20時間継続させた。
得られたSiC繊維/SiC複合材料は、顕微鏡で観察した組織写真を示す図2(80倍)及び図3(800倍)にみられるように、個々のSiC繊維の間にSiC相が均一に析出しており、緻密度が極めて高い複合材料であることが判った。実際、密度測定法で空隙率を測定したところ、従来法では得られない5体積%と低い値であった。
【0014】
参考例
線径15μmのSiC繊維でできた平織材を直径40mmに切り出したものを7枚重ねて繊維積層体とした。この繊維積層体を6.2×10-3~1.0MPaで加圧成形し、加圧状態でエチルクロロシランの気相熱分解によりSiCの析出反応を950℃で3時間継続した。次いで、加圧状態から繊維積層体を解放し、更にSiCの析出反応を950℃で20時間継続した。
得られたSiC繊維/SiC複合材料の空隙率を実施例1と同じ方法で測定すると共に、JISに規定する金属材料曲げ試験方法に準拠して曲げ強度を測定した。測定結果を熱分解時に繊維成形体に加えた圧力で整理したところ、第1表に示す関係があることが判った。すなわち、第1工程でエチルクロロシランを熱分解させるときに繊維成形体に加える圧力を大きくするほど、得られたSiC繊維/SiC複合材料の緻密度及び曲げ強度が向上している。なかでも、1.0MPaで加圧したものでは、複合材料の緻密度が90体積%に達し、曲げ強度も750MPaと極めて高い値を示した。
【0015】
JP0004078453B2_000002t.gif【0016】
実施例1及び参考例では、SiC繊維を使用した場合を説明したが、SiC繊維に替えてC繊維を用いた場合でも、同様にして緻密度の高いC繊維/SiC複合材料が得られた。
【0017】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、SiC繊維又はC繊維の繊維成形体の内部にSiC相を析出させてマトリックスを形成する際、先ず加圧状態の繊維成形体にアルキルクロロシランを浸透させ、繊維成形体の内部に万遍なくSiC相を析出させている。このときに析出したSiC相によって、繊維成形体の内部構造が平均化されると共に、SiC繊維又はC繊維の表面が改質され、析出SiCに対する馴染み性が向上する。そのため、加圧力を解除してアルキルクロロシランの熱分解反応を続行しても、繊維成形体の内部にSiC相が均一に析出し、SiC繊維又はC繊維間の空隙が析出SiC相で十分に充填される。
このようにして得られたセラミックス繊維/SiC複合材料は、従来法による複合材料に比較して緻密度が極めて高く、曲げ強度に優れ、しかも軽量なことから、航空宇宙用部品,原子炉隔壁,熱交換器部品等として過酷な環境に曝される用途に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で採用した繊維成形体を加圧保持する手段を示す図
【図2】 実施例1で製造されたSiC繊維繊維/SiC複合材料の組織を示す顕微鏡写真(倍率80倍)
【図3】 実施例1で製造されたSiC繊維繊維/SiC複合材料の組織を示す顕微鏡写真(倍率800倍)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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