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明細書 :蛍光性ジアザアントラセン類および蛍光性ジアザアントラセン類合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4644802号 (P4644802)
公開番号 特開2006-225442 (P2006-225442A)
登録日 平成22年12月17日(2010.12.17)
発行日 平成23年3月9日(2011.3.9)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 蛍光性ジアザアントラセン類および蛍光性ジアザアントラセン類合成方法
国際特許分類 C09B  57/00        (2006.01)
C07D 471/04        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI C09B 57/00 Z
C07D 471/04 112Z
C09K 11/06 650
H05B 33/14 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2005-038108 (P2005-038108)
出願日 平成17年2月15日(2005.2.15)
審査請求日 平成20年1月21日(2008.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】高橋 和文
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】岩井 好子
参考文献・文献 特開平06-206869(JP,A)
特表2002-515502(JP,A)
調査した分野 C09B 57/00
C07D 471/04
C09K 11/06
H01L 51/50
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(1)
【化1】
JP0004644802B2_000021t.gif
(式(1)中、Rは、シアノ基、カルボン酸エステル基、アリール基、または、C=1~4の低級アルキル基を表す)
で表される蛍光物質。

【請求項2】
式(2)
【化2】
JP0004644802B2_000022t.gif
(式(2)中、Rは、シアノ基、カルボン酸エステル基、アリール基、または、C=1~4の低級アルキル基を表す)
で表される蛍光物質。


【請求項3】
1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンを用いて請求項1または請求項2の蛍光物質を合成することを特徴とする蛍光物質合成方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規蛍光物質およびその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アントラセンは色素または蛍光物質として利用され、このような複素環化合物は単素環化合物に比べて著しい濃色性を示す。
【0003】

【非特許文献1】「九州大学生産科学研究所報告」74号(1983年)103~108頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年は、液晶ディスプレイに代えてELディスプレイの開発が進行しており、特に、有機EL材料は無機材料に比べて駆動電圧や素材設計の多様性の観点から期待されている。この中でも低分子有機EL材料は、高分子有機EL材料と比べて寿命や発光効率の点で優れている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、緑色系の新規蛍光物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、式(1)
【化1】
JP0004644802B2_000002t.gif
(式(1)中、Rは、シアノ基、カルボン酸エステル基、アリール基、または、C=1~4の低級アルキル基を表す)
で表される蛍光物質である。

【0007】
請求項2に記載の発明は、式(2)
【化2】
JP0004644802B2_000003t.gif
(式(2)中、Rは、シアノ基、カルボン酸エステル基、アリール基、または、C=1~4の低級アルキル基を表す)
で表される蛍光物質である。

【0008】
請求項3に記載の発明は、1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンを用いて請求項1または請求項2の蛍光物質を合成することを特徴とする蛍光物質合成方法である。
【0009】
なお、式(1)および式(2)で表される物質は、異性体の関係にあるので以降では総称として便宜的にジアザアントラセン類と適宜称することとする。また、置換基Rのうち、アリール基としては、例えば、フェニル基、チエニル基、ピリジル基、ナフチル基を挙げることができ、また、低級アルキル基としては、例えば、C=1~4のアルキル基を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緑色系の新規蛍光物質を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
試験例1.
試験例1では、まず、Rをフェニル基としたジアザアントラセン類の合成方法を説明し、次に、その物性について説明する。
【0012】
〔合成方法〕
次の反応式は、1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンを出発物質として、Rをフェニル基としたジアザアントラセン類を合成するスキームを示した図である。但し、ここでは、Rとして他の置換基も併せて表記した。
【化3】
JP0004644802B2_000004t.gif

Rをフェニル基としたジアザアントラセン類を合成するスキームとしては、まず、1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンから1,2,4,5-テトラベンジルベンゼンを合成し(ステップ1)、次に、1,2,4,5-テトラベンジルベンゼンから1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンを合成し(ステップ2)、最後に1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンから目的物質のジアザアントラセン類である1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンおよび1,3,4,5,7,8-ヘキサフェニル-2,6-ジアザアントラセンを得た(ステップ3)。
【0013】
次に各ステップについて説明する。
(ステップ1)1,2,4,5-テトラベンジルベンゼンの合成:
【化4】
JP0004644802B2_000005t.gif

まず、1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンと無水塩化鉄をベンゼン中で一晩加熱環流させた。希塩酸を少量加えた水にこの反応混合物を注いだ。これをベンゼンで抽出し、MgSOで乾燥させた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をメタノールで熱抽出し、減圧下で溶媒を留去して、略無色の結晶である1,2,4,5-テトラベンジルベンゼンを得た。
【0014】
なお、最初の反応として、ベンゼンにAlClとCHNOを溶かし、1,2,4,5-テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンを加えて5時間撹拌し、その後は、上述したのと同様にしても1,2,4,5-テトラベンジルベンゼンを得ることが出来る。
【0015】
表1に、反応の結果を示す。
【表1】
JP0004644802B2_000006t.gif

表に示したように、収率は後者の反応の方が優れていることが確認できた。なお、文献(lit.)はJ.Org.Chem.,38,3977(1973)による。
【0016】
(ステップ2)1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンの合成:
【化5】
JP0004644802B2_000007t.gif

ステップ1で得られた1,2,4,5-テトラベンジルベンゼンとCrOを酢酸中で2時間加熱環流させた。反応混合液を水に注いで生じた粉末をろ取した。この粉末を酢酸を用いて再結晶させ1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンを得た。
【0017】
表2に、反応の結果を示す。
【表2】
JP0004644802B2_000008t.gif

表に示したように、収率は54%であった。
【0018】
(ステップ3)1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンおよび1,3,4,5,7,8-ヘキサフェニル-2,6-ジアザアントラセンの合成:
【化6】
JP0004644802B2_000009t.gif

ステップ2で得られた1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンとPhCHNHをKOHのエタノール溶液中で1時間加熱環流した。反応混合物に水を加えて生じた固体をろ取した。ろ取した固体をシクロヘキサンでソックスレー抽出をし、減圧下で溶媒を留去して目的物質である1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセン(式(3))および1,3,4,5,7,8-ヘキサフェニル-2,6-ジアザアントラセン(式(4))の黄色結晶を得た。
【0019】
【化7】
JP0004644802B2_000010t.gif


【化8】
JP0004644802B2_000011t.gif

【0020】
(ステップ3’)1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンの単離:
正常に合成できたか確認するため、ステップ3で得られた黄色結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフ処理し、ヘキサン-ベンゼンで再結晶を行った。得られた結晶も黄色結晶であり、元素分析の値も合致した(化9参照)。さらに、この結晶のH-NMRを測定したところ9.23(s,1H),8.07(s,1H)にシグナル値があり、この結晶は、1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンであることが確認できた。
【0021】
表3に、反応の結果を示す。
【表3】
JP0004644802B2_000012t.gif

表に示したように、収率は15%であった。
【0022】
〔物性〕
ステップ3’で単離した1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンの特徴量ないし物性を測定した結果を示す。
【化9】
JP0004644802B2_000013t.gif

上記したように、吸収極大波長は423nmであり、吸光強度logεは3.88であった。なお、吸光スペクトルを図1に示す。また、発光極大波長は515nmであった。なお、発光スペクトルを図2に示す。標準物資としてアクリジンイエローを用いた相対的量子収率は0.04であった。
【0023】
次に、安定性について確認した。まず、このジアザアントラセン類は、室温で空気中に放置しておいても少なくとも1ヶ月は変化しないことを確認した。さらに、水には溶けず、アルコール類には少量しか溶けないことも確認した。なお、クロロホルムには溶解することを確認した。また、アルカリに対しても安定である。熱耐性については、300℃までは分解しないことを確認した。
【0024】
試験例2.
試験例2では、Rをカルボキシル基としたジアザアントラセン類の合成方法について説明する。試験例1の合成スキームから分かるように、本発明のジアザアントラセン類を得るための直近の出発物質は1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンである。試験例2では、これを用いて合成を試みた。
【化10】
JP0004644802B2_000014t.gif

まず、1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンとグリシンエチルエステル塩酸塩(NHCHCOOC・HCl)をKOHのエタノール溶液中で20時間加熱環流させた。反応溶液を水(200ml)に注ぎ沈殿物を溶解した。塩酸を加えてpHを2~3の間に調整し、式(5)および式(6)で表される化合物をろ取した。このジアザアントラセン類も蛍光性を示すことを確認した。
【0025】
【化11】
JP0004644802B2_000015t.gif


【化12】
JP0004644802B2_000016t.gif

【0026】
表4に、反応の結果を示す。
【表4】
JP0004644802B2_000017t.gif

【0027】
試験例3.
試験例3では、Rをシアノ基としたジアザアントラセン類の合成方法について説明する。
【化13】
JP0004644802B2_000018t.gif

まず、1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンと硫酸アミノアセトニトリルをn-ブタノール中で加熱環流させた。加熱環流1時間後に紫外線ランプを照射したところ青色蛍光を示すことを確認した。加熱環流後、n-ブタノールを減圧下に留去した。残渣をIR測定したところ、2240cm-1にシアノ基に由来する吸収ピークを確認し、式(7)および式(8)で表される化合物の合成が確認できた。
【0028】
式(7)
【化14】
JP0004644802B2_000019t.gif


式(8)
【化15】
JP0004644802B2_000020t.gif

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のジアザアントラセン類は、低分子有機EL材料に適用可能である。なお、出発物質を1,2,4,5-テトラベンゾイルベンゼンとすれば、種々に置換基を変更でき、所望の特性に応じたバリエーションのある蛍光材料を合成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンの吸光スペクトルを表した図である。
【図2】1,3,4,5,6,8-ヘキサフェニル-2,7-ジアザアントラセンの発光スペクトルを表した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1