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明細書 :グルタミン酸脱炭酸酵素、グルタミン酸脱酸素酵素をコードするDNA、グルタミン酸脱炭酸酵素が発現可能な形態で導入された微生物、グルタミン酸脱炭酸酵素の製造方法、および、トランスジェニック植物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4019155号 (P4019155)
公開番号 特開2007-117099 (P2007-117099A)
登録日 平成19年10月5日(2007.10.5)
発行日 平成19年12月12日(2007.12.12)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
発明の名称または考案の名称 グルタミン酸脱炭酸酵素、グルタミン酸脱酸素酵素をコードするDNA、グルタミン酸脱炭酸酵素が発現可能な形態で導入された微生物、グルタミン酸脱炭酸酵素の製造方法、および、トランスジェニック植物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2007-031487 (P2007-031487)
分割の表示 特願2003-086413 (P2003-086413)の分割、【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
出願日 平成19年2月13日(2007.2.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年9月28日 日本遺伝学会第74回大会準備委員会発行の「日本遺伝学会 第74回大会 プログラム・予稿集」に発表
特許法第30条第1項適用 2002年11月25日 第25回日本分子生物学会年会組織委員会発行の「第25回日本分子生物学会年会 プログラム・講演要旨集」に発表
特許法第30条第1項適用 平成15年2月20日 国立島根大学主催の「卒業論文発表会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成15年3月4日 国立島根大学主催の「島根大学産学交流会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 2003年3月20日 日本植物生理学会2003年度年会開催実行委員会発行の「日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集」に発表
審査請求日 平成19年2月13日(2007.2.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】赤間 一仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 国際公開第02/038736(WO,A1)
Biochim.Biophys.Acta, vol.1522, pp.143-150 (2001)
調査した分野 C12N 15/00
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/Geneseq
特許請求の範囲 【請求項1】
下記(E)又は(F)に示すタンパク質。
(E)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、グルタミン酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質。
【請求項2】
下記(E)又は(F)に示すタンパク質をコードするDNA。
(E)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、グルタミン酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質。
【請求項3】
請求項2に記載のDNAによりコードされるタンパク質が発現可能な形態で導入された微生物。
【請求項4】
請求項3に記載の微生物を培地で培養し、培養物中にグルタミン酸脱炭酸酵素を生成蓄積させ、該培養物よりグルタミン酸脱炭酸酵素を採取することを特徴とするグルタミン酸脱炭酸酵素の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載のDNAを有するトランスジェニック植物。
【請求項6】
イネ科に属する植物である請求項5に記載のトランスジェニック植物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタミン酸脱炭酸酵素、グルタミン酸脱酸素酵素をコードするDNA、グルタミン酸脱炭酸酵素が発現可能な形態で導入された微生物、グルタミン酸脱炭酸酵素の製造方法、および、トランスジェニック植物に関し、特に、酵素活性の高いグルタミン酸脱炭酸酵素、グルタミン酸脱酸素酵素をコードするDNA、グルタミン酸脱炭酸酵素が発現可能な形態で導入された微生物、グルタミン酸脱炭酸酵素の製造方法、および、γ-アミノ酪酸を豊富に含むトランスジェニック植物に関する。
【背景技術】
【0002】
非タンパク質性のアミノ酸の一種であるγ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric
Acid:GABA)は、血圧降下作用、肥満防止作用、精神安定作用、アルコール代謝促進作用といった人体に対するさまざまな有用な作用を発揮する物質として知られている。GABAは、グルタミン酸を脱炭酸することにより得られる。このとき、グルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamic
Acid Decarboxylase:GAD)を用いることにより脱炭酸反応を効率よく行わせることが可能となる。
【0003】
また、GABAはイネの細胞内にも含まれており、イネ細胞内のGADには少なくとも2種類のアイソフォームが知られている。米の中では他の部分と比較して胚芽の部分にGABAが多く含まれており、胚芽米や玄米や発芽米を食することにより、白米を食する以上に健康の保持増進が期待できる。
【0004】

【非特許文献1】Kazuhito Akama et al.,”Rice(Oryza sativa) contains a novel isoformof glutamate decarboxylase that lacks an authentic calmodulin-binding domain atthe C-terminus”,Biochimica et Biophysica Acta,1522(2001) p143-p150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。GABAは、微量の摂取では、人体への作用が少なく、GABA本来の作用を見込むためにはある程度の摂取量が必要であることがわかっている。したがって、GABAを効率よく製造することが必要であり、酵素活性の高いGADが望まれている。また、同様に、GABAを多く含むイネが望まれている。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、酵素活性の高いGAD、当該GADをコードするDNA、当該GADが発現可能な形態で導入された微生物、および、当該GADの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、GABAを多量に含む植物を創出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、イネのGADを変異させることにより本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0011】
1.:
下記(E)又は(F)に示すタンパク質。
(E)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、グルタミン酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質。
【0012】
2.:
下記(E)又は(F)に示すタンパク質をコードするDNA。
(E)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、グルタミン酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質。
【0013】
3.:
上記2.に記載のDNAによりコードされるタンパク質が発現可能な形態で導入された微生物。
【0014】
4.:
上記3.に記載の微生物を培地で培養し、培養物中にグルタミン酸脱炭酸酵素を生成蓄積させ、該培養物よりグルタミン酸脱炭酸酵素を採取することを特徴とするグルタミン酸脱炭酸酵素の製造方法。
【0015】
5.:
上記2.に記載のDNAを有するトランスジェニック植物。
【0016】
6.:
イネ科に属する植物である上記5.に記載のトランスジェニック植物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酵素活性の高いGAD、当該GADをコードするDNA、当該GADが発現可能な形態で導入された微生物、および、当該GADの製造方法を提供することができた。また、GABAを多量に含む植物を創出することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はここに記載した形態のみに限定されるものではなく、本明細書の記載および当分野で公知の技術に基づいて当業者が容易に修飾および改変し得る技術については本発明の範囲内に含まれるものである。本実施の形態では、まず、イネの2種類のGADを示し、その後、本発明を説明する。
【0019】
イネは単子葉植物であり、少なくとも2種類のGADを有することが知られている。ここでは、そのうち、双子葉植物GADのC末端側に普遍的に見出されているカルモジュリン結合ドメイン(Calmodulin-Binding
Domain:CaMBD)と相同性の高い部位を備えるGADをOsGAD1と称し、当該ドメインが無いともいえる相同性の低い部位を備えるGADをOsGAD2と称することとする。配列表2は、OsGAD1のアミノ酸配列を示したものである。配列表5は、OsGAD2のアミノ酸配列を示したものである。
【0020】
(実験概要)
本発明者は、鋭意検討の結果、OsGAD1およびOsGAD2に基づいて、酵素活性の高い新規なグルタミン酸脱炭酸酵素を創出するに至った。まず、OsGAD1とOsGAD2に基づくcDNAであって、C末端側の約40~50アミノ酸残基をコードする領域を制限酵素により切断し、この部分を欠失させたcDNAを作製した(このcDNAを便宜的にそれぞれOsGAD1ΔCおよびOsGAD2ΔCと適宜称することとする)。なお、制限酵素は、OsGAD1に対してはBglIIを、OsGAD2に対してはApaIを用いた。
【0021】
次に、OsGAD1、OsGAD1ΔC、OsGAD2、OsGAD2ΔCそれぞれのcDNAをプラスミドpCAMBIA1302(CAMBIA社製(オーストラリア))のT-DNA上のカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモータの下流に組み込み、アグロバクテリウム株に導入した。これらの菌株をイネカルスに感染・共存培養することで、ゲノムDNA中にT-DNAを組み込んだ。組換えカルスは抗生物質ハイグロマイシンを含む培地で選抜し、作製した。
【0022】
得られた4種類の遺伝子組換えカルスからアミノ酸を抽出し、GABA含量を調べて野生型(wt)と比較して評価した。なお、RT-PCRを行ないGADの発現も確かめた。このとき、アクチンmRNAを内在性のコントロールとして用いた。
【0023】
また、作製したカルスが実際に形質転換体であるか、すなわち、トランスジェニック植物であるかどうかを確認した。その方法としては、カルスから全DNAを抽出して、ハイグロマイシン耐性遺伝子領域を挟み込むプライマーを用いてGADの部分をPCRにより増幅して確認した。
【0024】
以降に実験例を説明する。
(形質転換カルスの作製)
イネ(Oryza sativa)の2種類のGADcDNA(OsGAD1およびOsGAD2)と、2種類の変異cDNA(OsGAD1ΔCおよびOsGAD2ΔC(OsGAD1とOsGAD2のそれぞれのC末端側約40~50アミノ酸残基をコードする領域を除いたもの))とを作製し、アグロバクテリウムを介した遺伝子導入法によってイネ細胞に導入し、形質転換カルスを作製した。
【0025】
(形質転換カルスの作製:カルスの誘導および前培養)
イネの成熟した種子を次に示した培地に28℃、3000luxの状態で2週間静置した。
・種子を静置させた培地の組成
N6 基本塩混合物
ショ糖 3.98g/l
カザミノ酸 3.00%
プロリン 0.28%
2,4-D 2mg/l
ゲルライト 0.4%
【0026】
カルスの誘導を行った完熟種子の胚乳と芽の部分を除去し、増殖のよいカルスの部分を新しいN6D固形培地に置床した。これを、28℃で連続照射下において3週間培養した。
【0027】
(形質転換カルスの作製:アグロバクテリウムの前培養、懸濁および感染)
アグロバクテリウムをAB固形培地に塗布し菌体を広げた。これを、28℃で暗所において2~3日培養した。培地上で増殖した菌体を採取し、これをアセトシリンゴン10mg/lの濃度で加えたAA培地30mlによく懸濁させた。つぎに、前培養したカルスをステンレスメッシュのかごに入れ、アグロバクテリウムの懸濁液にかごごと1.5分~2分間浸した。その後、かごを引き上げ余分な菌液を除去し、感染させたカルスをN6D(上記濃度のアセトシリンゴンを含む)固形培地に置床した。この状態で28℃で暗所において2~3日培養した。
【0028】
(形質転換カルスの作製:アグロバクテリウムの除去および選抜)
共存培養でカルス表面を菌体が覆ったのを確認し、ステンレスメッシュかごに感染カルスを投入し、かごごとN6D液体培地に浸してアグロバクテリウムを洗い流した。その後、かごを引き上げ、余分な水分を除去した。続いて、N6D液体培地にクラフォランを500mg/lになるように加え、この培地でさらに数回カルスを洗浄した。余分な水分を除去した後、カルスをN6D固形培地(クラフォラン250~500mg/lを含む)に置床した。これを、28℃で連続照射下において3週間~4週間培養した。
【0029】
(形質転換カルスの評価:CTAB法によるDNAの抽出)
次に、形質転換カルスと非形質転換カルスからCTAB法により全DNAを抽出した。図1は、カルスからDNAを抽出する手順を示した図である。抽出後、アガロース電気泳動を行った。ゲルは1%ゲル(0.5μg/mlの臭化エチジウムを含む)を用いた。マーカーはλDNAをStyIで切断したものを用いた。
【0030】
(形質転換カルスの評価:形質転換の確認)
抽出したDNAを用いて、PCRにより形質転換されているかどうか確認した。
プライマーはHPT-E(センスプライマー)とHPT-N(アンチセンスプライマー)を用いた。このプライマーの配列をそれぞれ配列番号7および配列番号8に示した。図2は、PCRの条件を示した図である。PCRの結果、野生型DNAを除き、すべての形質転換カルスで、約1kbの予想される増幅産物が観察された。図3は、組換えDNAのPCR解析を示した図である。
【0031】
(形質転換カルスの評価:RNAの抽出)
次に、形質転換カルスにおける導入遺伝子のmRNAレベルでの発現量を調べるために、改変グアニジウム法により、全RNAを単離した。抽出手順を図4に示した。なお、次に説明するRT-PCRの際にゲノムDNAの増幅を防ぐため、RNAの抽出後にDNaseI処理をおこなった。DNaseI処理の手順を図5に示した。
【0032】
(形質転換カルスの評価:mRNAの蓄積量の測定)
次に、OsGAD1とOsGAD2に特異的なプライマーを用いて逆転写酵素(RT)によりcDNAを合成し、これを鋳型としてOsGAD1で20サイクル、OsGAD1Δで25サイクル、OsGAD2で33サイクル、OsGAD2Δで30サイクルとしてPCRを行った。この際に、アクチンmRNAを内在性のコントロールとして用いた。OsGAD1に特異的なセンスプライマーを配列番号9に示し、アンチセンスプライマーを配列番号10に示した。また、OsGAD2に特異的なセンスプライマーを配列番号11に示し、アンチセンスプライマーを配列番号12に示した。また、GAD部分のRT-PCRの処理手順を図6に示した。アクチンのセンスプライマーを配列番号13に示し、アンチセンスプライマーを配列番号14に示した。
【0033】
(形質転換カルスの評価:導入遺伝子の発現評価)
処理後の溶液を1.5%のアガロースゲル電気泳動に掛けて、分画後に泳動パターンを画像として取り込み、GADの発現量を調べた。結果を図7に示す。野生型と比較したmRNAの蓄積量を推定すると、OsGAD1では~3倍、OsGAD1ΔCでは~22倍であった。一方、OsGAD2とOsGAD2ΔCでは野生型の発現が低すぎて数値化出来なかったが、相対的に著しく増大していることが確認できた。
【0034】
(形質転換カルスの評価:アミノ酸含有量の定量)
また、形質転換カルスからTCA法により遊離アミノ酸を単離し、GABAを含めて各種アミノ酸含量を定量した。定量には自動アミノ酸分析装置を用いた。なお、アミノ酸の抽出手順を図8に示した。また、図9は、組換えカルスにおけるGABA含有量を示した図である。このうち図9(a)は、カルスごとに示した図であり、図9(b)は、平均による比較を表した図である。分析の結果、OsGAD2ΔCは野生型に比べて、GABA含量が100倍近く増大した系統が見つかった。また、OsGAD1ΔCは野生型に比べて20倍近く増大した系統が見つかった。また、OsGAD2に関しては、OsGAD1ΔCに比してGABA含有量が多い傾向にあった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
胚芽米や玄米や発芽米を食することにより、白米を食する以上に健康の保持増進が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】カルスからDNAを抽出する手順を示した図である。
【図2】PCRの条件を示した図である。
【図3】組換えDNAのPCR解析を示した図である。
【図4】RNAの抽出手順を示した図である。
【図5】DNaseI処理の手順を示した図である。
【図6】GAD部分のRT-PCRの処理手順を示した図である。
【図7】GADの発現量を示した図である。
【図8】アミノ酸の抽出手順を示した図である。
【図9】組換えカルスにおけるGABA含有量を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図8】
5
【図3】
6
【図7】
7
【図9】
8