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明細書 :磁気記録媒体とその製造方法およびそれを用いた磁気記録読み取り装置。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4521569号 (P4521569)
公開番号 特開2007-128606 (P2007-128606A)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
公開日 平成19年5月24日(2007.5.24)
発明の名称または考案の名称 磁気記録媒体とその製造方法およびそれを用いた磁気記録読み取り装置。
国際特許分類 G11B   5/702       (2006.01)
G11B   5/712       (2006.01)
G11B   5/738       (2006.01)
G11B   5/842       (2006.01)
G11B   5/845       (2006.01)
FI G11B 5/702
G11B 5/712
G11B 5/738
G11B 5/842 Z
G11B 5/845 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2005-320708 (P2005-320708)
出願日 平成17年11月4日(2005.11.4)
審査請求日 平成20年9月30日(2008.9.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】小川 一文
個別代理人の代理人 【識別番号】100139262、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 和昭
審査官 【審査官】馬場 慎
参考文献・文献 特開2007-119545(JP,A)
特開2003-168606(JP,A)
特開2001-184620(JP,A)
特開2000-048340(JP,A)
特開平01-309902(JP,A)
調査した分野 G11B 5/62 - 5/84
特許請求の範囲 【請求項1】
エポキシ基を含み、第1の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子と、イミノ基を含み、第2の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子とを混合し、第1の反応性を有する有機膜もしくは第2の反応性を有する有機膜と同じ反応性の官能基であるエポキシ基またはイミノ基を含む第3の反応性を有する有機膜で覆われた媒体基体の表面に塗布し、エポキシ基とイミノ基とを反応させ、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させることにより、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
磁性微粒子表面に形成された第1および2の反応性を有する有機膜と媒体基体表面に形成された第3の反応性を有する有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
少なくとも、エポキシ基またはイミノ基を含む第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に磁気微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1のアルコキシシラン化合物がエポキシ基を含む場合にはイミノ基を、イミノ基を含む場合にはエポキシ基を含む第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に他の磁性微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、少なくともイミノ基またはエポキシ基を含む第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に媒体基体表面を接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第3の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第1および第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を混合塗布してエポキシ基とイミノ基とを反応させ、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させることにより、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
第1乃至第3の反応性の有機膜形成工程の後に、それぞれの磁性微粒子表面および媒体基体を有機溶剤で洗浄して磁性微粒子表面及び媒体基体表面に共有結合した第1乃至第3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項3または4に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項3または4に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
磁性微粒子を接触させて反応させる工程を磁場中で行うことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至記載の磁気記録媒体を用いた磁気記録読み取り装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布型磁気記録媒体に関するものである。さらに詳しくは、第1の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子と第2の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子を混合反応させて形成された磁気記録層が媒体基体表面に形成された第3の反応性を有する有機膜を介して媒体基体と共有結合している媒体基体密着性に優れた塗布型磁気記録媒体およびそれを用いた磁気記録読み取り装置に関するものである。
【0002】
本発明において、「磁性微粒子」には、磁性金属微粒子や磁性合金微粒子、磁性金属酸化物微粒子が含まれている。また、本発明の磁気記録媒体には、光磁気記録媒体およびそれを用いた光磁気記録読み取り装置も含まれている。
【背景技術】
【0003】
従来から、媒体基体表面に磁気記録層としてバインダー樹脂中に分散した磁性金属微粒子や磁性金属酸化物微粒子を塗布硬化させた磁気記録媒体や媒体基体表面に磁性金属あるいは磁性金属酸化物を蒸着した磁気記録媒体が市販されている。例えば、下記特許文献などがある。

【特許文献1】特開2005-63506
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、塗布型の磁気記録媒体では、製造コストは低いが高密度記録が難しい。一方、蒸着型の磁気記録媒体では、高密度記録は比較的簡単に達成されるが、製造コストが高いという欠点があった。
【0005】
そこで、バインダー樹脂を用いずに塗布型の磁気記録媒体を製造する方法があれば、コストダウンと高密度記録を両立できるが、バインダー樹脂を用いず媒体基体表面に磁性金属微粒子や磁性金属酸化物微粒子を塗布硬化させた磁気記録媒体及びその製造方法は未だ開発、提供されていなかった。
【0006】
本発明は、磁性微粒子(磁性ナノ粒子を含む)を用いて、樹脂を用いなくても媒体基体密着性に優れ、且つ蒸着型磁気記録媒体並の磁気記録特性を有する塗布型磁気記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、エポキシ基を含み、第1の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子と、イミノ基を含み、第2の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子とを混合し、第1の反応性を有する有機膜もしくは第2の反応性を有する有機膜と同じ反応性の官能基であるエポキシ基またはイミノ基を含む第3の反応性を有する有機膜で覆われた媒体基体の表面に塗布し、エポキシ基とイミノ基とを反応させ、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させることにより、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0008】
(削除)
【0009】
(削除)
【0010】
の発明は、第一の発明において、磁性微粒子表面に形成された第1および2の反応性を有する有機膜と媒体基体表面に形成された第3の反応性を有する有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0011】
の発明は、少なくとも、エポキシ基またはイミノ基を含む第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に磁気微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1のアルコキシシラン化合物がエポキシ基を含む場合にはイミノ基を、イミノ基を含む場合にはエポキシ基を含む第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に他の磁性微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、少なくともイミノ基またはエポキシ基を含む第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に媒体基体表面を接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第3の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第1および第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を混合塗布してエポキシ基とイミノ基とを反応させ、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させることにより、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0012】
の発明は、第の発明において、第1乃至第3の反応性の有機膜形成工程の後に、それぞれの磁性微粒子表面および媒体基体を有機溶剤で洗浄して磁性微粒子表面及び媒体基体表面に共有結合した第1乃至第3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0013】
(削除)
【0014】
の発明は、第三または第四の発明において、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0015】
の発明は、第三または第四の発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0016】
の発明は、第三乃至第六の発明において、磁性微粒子を接触させて反応させる工程を磁場中で行うことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0017】
の発明は、第一乃至第二の発明に記載の磁気記録媒体を用いた義気記録読み取り装置である。
以下さらに、発明の内容を説明する。
【0018】
本発明は、少なくとも、エポキシ基またはイミノ基を含む第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に磁気微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1のアルコキシシラン化合物がエポキシ基を含む場合にはイミノ基を、イミノ基を含む場合にはエポキシ基を含む第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に他の磁性微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、少なくともイミノ基またはエポキシ基を含む第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に媒体基体表面を接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第3の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第1および第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を混合塗布してエポキシ基とイミノ基とを反応させ、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させ、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層を形成する工程とを用いて、エポキシ基を含み、第1の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子と、イミノ基を含み、第2の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子とを混合し、第1の反応性を有する有機膜もしくは第2の反応性を有する有機膜と同じ反応性の官能基であるエポキシ基またはイミノ基を含む第3の反応性を有する有機膜で覆われた媒体基体の表面に塗布し、エポキシ基とイミノ基とを反応させることにより、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させることにより、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層が形成されている塗布型磁気記録媒体を提供することを要旨とする。
【0019】
ここで、媒体基体表面に形成された第3の有機被膜に第1の反応性を有する有機膜もしくは第2の反応性を有する有機膜と同じ反応性の官能基を含んでいるため、磁気記録層と媒体基体を一体化する上で都合がよい。
また、第1の反応性を有する有機膜がエポキシ基を含み、第2の反応性を有する有機膜がイミノ基を含み第3の反応性を有する有機膜がエポキシ基またはイミノ基を含んでいるため、反応性が高く且つ信頼性の高い磁気記録媒体を提供するうえで都合がよい。
【0020】
さらに、磁性微粒子表面に形成された第1および2の反応性を有する有機膜と媒体基体表面に形成された第3の反応性を有する有機膜を単分子膜で構成しておくと磁気記録特性を向上する上で都合がよい。
またこのとき、第1乃至第3の反応性の有機膜形成工程の後に、それぞれの磁性微粒子表面あるいは媒体基体を有機溶剤で洗浄して磁性微粒子表面あるいは媒体基体表面に共有結合した第1乃至第3の反応性の単分子膜を形成しておくと、耐剥離強度を向上する上で都合がよい。
【0021】
さらに、第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み、第2の反応性の有機膜がイミノ基を含んでおり、あるいは第1の反応性の有機膜がイミノ基を含み、第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含み、第3の反応性の有機膜がイミノ基またはエポキシ基を含んでいるため、信頼性の高い磁気記録媒体を作成する上で都合がよい。
【0022】
さらにまた、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いか、さらに、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いると製造時間を短縮する上で都合がよい。
また、磁性微粒子を接触させて反応させる工程を磁場中で行うと、磁気記録特性を向上させる上で都合がよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、塗布法を用いても、耐剥離性能が高く、磁気記録特性が蒸着型磁気記録媒体並みの高密度磁気記録媒体を低コストで製造方法提供できる格別の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、少なくとも、エポキシ基またはイミノ基を含む第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に磁気微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程と、第1のアルコキシシラン化合物がエポキシ基を含む場合にはイミノ基を、イミノ基を含む場合にはエポキシ基を含む第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に他の磁性微粒子を分散接触させアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、少なくともイミノ基またはエポキシ基を含む第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に媒体基体表面を接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第3の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第1および第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を混合塗布してエポキシ基とイミノ基とを反応させ、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させることにより、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層を形成する工程とを用いて、エポキシ基を含み、第1の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子と、イミノ基を含み、第2の反応性を有する有機膜で覆われた磁性微粒子とを混合し、第1の反応性を有する有機膜もしくは第2の反応性を有する有機膜と同じ反応性の官能基であるエポキシ基またはイミノ基を含む第3の反応性を有する有機膜で覆われた媒体基体の表面に塗布し、エポキシ基とイミノ基とを反応させることにより、両者の間に形成させた共有結合を介して、第1の反応性を有する有機膜と第2の反応性を有する有機膜、およびこれらのいずれか一方と第3の反応性を有する有機膜とを共有結合させ、これらの共有結合を介して媒体基体の表面に結合した磁気記録層が形成されている塗布型磁気記録媒体を提供するものである。
【0025】
したがって、本発明によれば、塗布法を用いても、磁気記録特性が蒸着型磁気記録媒体並みの高性能で且つ高信頼性の磁気記録媒体を簡便で且つ低コストで製造できる作用がある。
【0026】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の磁気記録媒体における磁気記録層の磁性微粒子には、鉄、クロム、ニッケルやそれらの合金等よりなる磁性金属微粒子やフェライトやマグネタイト、酸化クロム、鉄白金(FePt)系規則化合金等よりなる磁性金属酸化物微粒子があるが、まず、代表例としてマグネタイト微粒子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0028】
まず、大きさが100nm程度(FePt系規則化合金では数ナノメートサイズでも可能)の無水のマグネタイト微粒子1を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)あるいは(化2)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチルスズジアセチルアセトナート、あるいは有機酸である酢酸を1重量%(ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒は沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。)となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサンとジメチルホルムアミド(50:50)混合溶媒に1重量%程度の濃度(好ましい化学吸着剤の濃度は、0.5~3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0029】
【化1】
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【0030】
【化2】
JP0004521569B2_000003t.gif

【0031】
この吸着液に無水のマグネタイト微粒子1を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度48%)で2時間反応させた。このとき、無水のマグネタイト微粒子表面には水酸基2が多数含まれているの(図1(a))で、前記化学吸着剤の-Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒、あるいは有機酸である酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化3)あるいは(化4)に示したような結合を形成し、磁性微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3あるいはアミノ基を含む化学吸着膜4が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図1(b)、1(c))。
【0032】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
その後、塩素系の有機溶媒であるクロロホルムを添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子5(第1又は第2の反応性有機膜)、あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子6(第2又は第1の反応性有機膜)をそれぞれ作製できた。
【0033】
【化3】
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【0034】
【化4】
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【0035】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、粒子径を損なうことはなかった。
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成された磁性微粒子が得られた。
【0036】
この方法の特徴は、脱アルコール反応であるため、磁性微粒子が金属であったとしても使用可能であり、適用範囲が広い。
【実施例2】
【0037】
実施例1と同様に、まず、円形アルミニウム媒体基体11を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、前記式(化1)あるいは(化2)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチルスズジアセチルアセトナートを1重量%(ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒は沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。)となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましい化学吸着剤の濃度は、0.5~3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0038】
次に、この吸着液に、アルミニウム媒体基体11を漬浸して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間反応させた。このとき、アルミニウム媒体基体11表面には水酸基12が多数含まれているの(図2(a))で、前記化学吸着剤の-Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、前記式(化3)あるいは(化4)に示したような結合を形成し、アルミニウム媒体基体11表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜13(図2(b))あるいはアミノ基を含む化学吸着膜14(図2(c))が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0039】
その後、塩素系の有機溶媒であるクロロホルムを用いて洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体15(第3の反応性有機膜)、あるいは、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体16(第3の反応性有機膜)がそれぞれ作製できた。(図2(b)、2(c))
【0040】
なおここで、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発しアルミニウム媒体基体表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成されたアルミニウム媒体基体が得られた。
【実施例3】
【0041】
次に、前記エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体15(前記アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体16を用いてもよい。)表面に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子アルミニウム媒体基体5とアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子6をほぼ等量混合しアルコールに分散して膜厚が1ミクロン程度になるように塗布し、100℃程度に加熱すると、アルミニウム媒体基体表面のエポキシ基と接触しているマグネタイト微粒子表面のアミノ基、およびマグネタイト微粒子表面のエポキシ基と接触しているマグネタイト微粒子表面のアミノ基が下記式(化5)に示したような反応で互いに付加して磁性微粒子はアルミニウム媒体基体表面に二つの単分子膜を介して全て結合固定され磁気記録層17が形成できた。なお、このとき、磁場中で超音波を当てながらアルコールを蒸発させると、磁性微粒子の磁化容易軸を揃えることができた。
【0042】
【化5】
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【0043】
このとき、磁気記録層の磁性微粒子は共有結合を介して互いに一体化されており、且つ磁気記録層は基材表面と共有結合しているので、耐剥離性は従来の塗布型記録媒体に比べ格段に優れていた。また、従来の塗布型記録媒体に比べバインダー樹脂を含まないので格段に優れた磁気記録特性を有する磁気記録媒体18を塗布方式で製造できた。(図3(a))
【0044】
なお、上記実施例3において、媒体基体が有機フィルムで、配向精度が必要なく、かつ厚膜の磁気記録層を必要とする磁気テープやフロピィーディスク(商標登録)等の場合には、あらかじめアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子とを略等量混合してフィルム表面に塗布して加熱硬化させれば、バインダー成分をほとんど含まない磁気記録媒体を製造提供できた。
【0045】
また、上記実施例1および2では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは式(化2)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)~(16)に示した物質が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N(CH2)Si(OCH)3
(12) H2N(CH2)Si(OCH)3
(13) H2N(CH2)Si(OCH)3
(14) H2N(CH2)Si(OC)3
(15) H2N(CH2)Si(OC)3
(16) H2N(CH2)Si(OC)3
【0046】
ここで、(CHOCH)-基は、下記式(化7)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH-基は、下記式(化8)で表される官能基を表す。
【0047】
【化6】
JP0004521569B2_000007t.gif

【0048】
【化7】
JP0004521569B2_000008t.gif

【0049】
なお、実施例1および2において、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2-エチルヘキセン酸鉄、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0050】
また、膜形成溶液の溶媒としては、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50~250℃程度がよい。
【0051】
具体的に使用可能なものは、クロロシラン系非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0052】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭アルミニウム社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0053】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分~2/3程度まで短縮できた。
【0054】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9~9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0055】
例えば、シラノール触媒であるジブチルスズオキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0056】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチルスズビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0057】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0058】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0059】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、3,11-ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエン、2,4,20,22-テトラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン等がある。
【0060】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【0061】
また、上記実施例1~3では、マグネタイト微粒子と円形アルミニウム媒体基体を例として説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわち水酸基の水素やアミノ基あるいはイミノ基の水素などを含んだ磁性微粒子や媒体基体で有れば、どのような磁性微粒子や媒体基体にでも適用可能である。
【0062】
具体的には、磁気記録層の磁性微粒子として、鉄、クロム、ニッケルやそれらの合金等よりなる磁性金属微粒子やフェライトやマグネタイト、酸化クロム等よりなる磁性金属酸化物微粒子がある。また、媒体基体には、ガラスやアルミニウムがある。なお、表面に活性水素を含まないアクリル板、ポリカーボネート板等の合成樹脂の場合、表面をコロナ処理して酸化しておけば本発明の方法を適用できた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施例における磁性微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の磁性微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図2】本発明の第2の実施例におけるアルミニウム媒体基体表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図3】本発明の第3の実施例におけるアルミニウム媒体基体表面に磁気記録層が形成された磁気記録媒体を分子レベルまで拡大した断面概念図を示す。
【符号の説明】
【0064】
1 マグネタイト微粒子
2 水酸基
3 エポキシ基を含む単分子膜
4 アミノ基を含む単分子膜
5 エポキシ基を含む単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
6 アミノ基を含む単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
11 アルミニウム媒体基体
12 水酸基
13 エポキシ基を含む単分子膜
14 アミノ基を含む単分子膜
15 エポキシ基を含む単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体
16 アミノ基を含む単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体
17 磁気記録層
18 磁気記録媒体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2