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明細書 :シリコンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4765066号 (P4765066)
公開番号 特開2006-321688 (P2006-321688A)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
発明の名称または考案の名称 シリコンの製造方法
国際特許分類 C25B   1/00        (2006.01)
C01B  33/023       (2006.01)
FI C25B 1/00 Z
C01B 33/023
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2005-147139 (P2005-147139)
出願日 平成17年5月19日(2005.5.19)
審査請求日 平成18年12月21日(2006.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】福中 康博
【氏名】野平 俊之
【氏名】安田 幸司
【氏名】萩原 理加
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特表2004-532933(JP,A)
安田幸司他,溶融CaCl2中におけるSiO2の電解還元,電気化学会第68回大会講演要旨集,2001年,p. 206
調査した分野 C01B 33/00-33/193
C25B 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
溶融塩の存在下で二酸化ケイ素を電解還元させてシリコン製造する方法であって、陰極としてシリコンを主とする材料で構成された陰極を用い、前記二酸化ケイ素として多孔質の二酸化ケイ素成形体を用い、前記陰極と前記二酸化ケイ素成形体とを接触させて前記二酸化ケイ素成形体を電解還元させることを特徴とするシリコンの製造方法。
【請求項2】
二酸化ケイ素成形体中にシリコンを含む請求項1に記載のシリコンの製造方法。
【請求項3】
二酸化ケイ素成形体中におけるシリコンの含有率が5~30重量%である請求項2に記載のシリコンの製造方法。
【請求項4】
二酸化ケイ素成形体が二酸化ケイ素粉末を圧縮成形し焼結した二酸化ケイ素粉末成形体である請求項1のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項5】
二酸化ケイ素成形体における空隙率30~80%である請求項1~のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項6】
二酸化ケイ素がアモルファス体である請求項1~のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項7】
二酸化ケイ素が珪藻土由来である請求項1~のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項8】
溶融塩が塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはこれらのうちの2種以上からなる混合塩である請求項1のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項9】
二酸化ケイ素成形体を電解還元させる際の温度が500~1000℃である請求項1のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項10】
二酸化ケイ素成形体を電解還元させる際の陰極電位が0.6~1.2Vvs.Mn+/M(Mは溶融塩のカソード限界で析出するアルカリ金属またはアルカリ土類金属)である請求項1のいずれかに記載のシリコンの製造方法。
【請求項11】
溶融塩の存在下で二酸化ケイ素を電解還元させてシリコンを製造するための電解還元装置であって、陰極としてシリコンを主とする材料構成され陰極が用いられ、前記二酸化ケイ素として多孔質の二酸化ケイ素成形体が用いられ、前記陰極と前記多孔質の二酸化ケイ素成形体とを接触させてなる電解還元装置。
【請求項12】
溶融塩が塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはこれらのうちの2種以上からなる混合塩である請求項11に記載の電解還元装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンの製造方法に関するものであって、具体的には二酸化ケイ素を電解還元することによるシリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、将来のクリーンエネルギーとして、シリコン太陽電池による発電が研究、開発されている。太陽電池に用いられるシリコンは、99.9999%(6N)以上の純度が必要である。現在、シリコン太陽電池には、さらに純度の高い半導体級シリコン(11N)のオフグレード品が使用されているが、近い将来の太陽電池の大量普及を考えると、オフグレード品では太陽電池製造に用いる原料シリコンの供給量が不足してしまう。さらに、現在の半導体級シリコンの製造法では炭素熱還元時にシリコンカーバイドなどの不純物を含んでしまうため、シラン系ガスの蒸留精製による高純度化のプロセスが必要となり、多くのエネルギーとコストがかかってしまう。したがって、現在の半導体級シリコンの製造法を応用しても、製造コストの大幅な削減は難しい。しかし現状では、高純度(太陽電池級)シリコンの安価製造プロセスが存在しないために、シリコン太陽電池のコスト、ひいては発電コストが高く、その普及の妨げとなっている。そこで、太陽電池級シリコンの安価かつ新規な製造プロセスの開発が望まれている。
【0003】
上記のような問題を解決するために、電解還元を用い、金属酸化物である二酸化ケイ素を金属粉末であるシリコンに還元させる方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、金属化合物を含む先駆物質粉末を鋳型成型した後、溶融塩中に浸透させ、電解還元を行なうことによって非金属を除去する方法が記載されており、この方法によって、比較的純度の高い金属粉末を製造することができる。しかしながら、特許文献1には、金属酸化物として二酸化ケイ素が例示されているが、具体的には、チタン、クロム、アルミニウムおよびニオブの酸化物を実施例として行なっており、二酸化ケイ素については具体的には実施されていない。また、実施例で用いられている陰極は、鉄-クロム-アルミニウム合金であるカンタル線であり、製造した金属粉末に陰極由来の不純物が混入する恐れがあった。
【0005】
また、非特許文献1では、石英板にモリブデン製の導電性ワイヤーを巻き付けた電極を用いて、溶融塩中において電解還元を行ない、シリコンを製造する方法が開示されている。しかしながら、陰極にモリブデンを使用しているので、該方法においても製造したシリコンに、陰極由来の不純物が混入する恐れがあった。
【0006】
また、非特許文献2では、二酸化ケイ素粉末(粒径2~7μm)をペレット状に圧縮成形し、2枚の多孔質ニッケル板ではさんだ電極を用いて、溶融塩中において電解還元を行ない、シリコンを製造する方法が開示されている。しかしながら、陰極にニッケルを使用しているので、該方法においても製造したシリコンに、陰極由来の不純物が混入する恐れがあった。
【0007】

【特許文献1】特表2004-522851号公報
【非特許文献1】T. Nohira, K. Yasuda and Y. Ito, Nature Materials, 2, 397-401(2003)
【非特許文献2】X. Jin, P. Gao, D. Wang, X. Hu and G. Z. Chen, Angew. Chem., 116, 751-754(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安価に高純度のシリコンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリコンを主とする材料から構成される陰極を用いて溶融塩中で電解還元するシリコンの製造方法であって、該陰極にケイ素酸化物を接触させることを特徴とするシリコンの製造方法に関する。
【0010】
ケイ素酸化物がシリコンを含むことが好ましい。
【0011】
シリコンがケイ素酸化物に5~30重量%含まれることが好ましい。
【0012】
ケイ素酸化物が二酸化ケイ素粉末を圧縮成形し焼結した二酸化ケイ素成形体であることが好ましい。
【0013】
二酸化ケイ素成形体が空隙率30~80%であることが好ましい。
【0014】
二酸化ケイ素がアモルファス体であることが好ましい。
【0015】
二酸化ケイ素が珪藻土由来であることが好ましい。
【0016】
二酸化ケイ素の金属不純物の含有量が100ppm以下であることが好ましい。
【0017】
二酸化ケイ素の不純物であるホウ素およびリンの含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0018】
溶融塩が塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはこれら2種以上からなる混合塩であることが好ましい。
【0019】
電解還元する温度が500~1000℃であることが好ましい。
【0020】
電解還元の陰極電位が0.6~1.2V(vs.Mn+/M(Mは溶融塩のカソード限界で析出するアルカリ金属またはアルカリ土類金属))であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、前記製造方法により製造されたシリコンであって、金属不純物の含有量が100ppm以下であることを特徴とするシリコンにも関する。
【0022】
前記製造方法により製造されたシリコンであって、ホウ素およびリンの不純物の含有量が1ppm未満であることが好ましい。
【0023】
前記製造方法により製造されたシリコンの純度が太陽電池級(SOG)であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明は、陽極およびシリコンを主とする材料から構成される陰極、溶融塩および該溶融塩を収容する容器、ならびに該陰極および陽極を通電するための直流電源を備えた電解還元装置であって、該陰極にケイ素酸化物を接触させてなることを特徴とする電解還元装置にも関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、二酸化ケイ素の電解還元において陰極にシリコンを主体とした材料を用いることにより、電極が原因で生じる不純物の混入がなく高純度のシリコンを製造することができる。また、シラン系ガスを利用するプロセスよりも製造に必要なエネルギーが少なく、コストダウンにつながるという利点がある。
【0026】
さらに、二酸化ケイ素として多孔質二酸化ケイ素粉末成形体を用い、該粉末成形体中にシリコン粉末を所定量混入することにより、シリコン粉末を混入しない場合より還元速度の向上がみられ、高効率にシリコンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、シリコンを主とする材料から構成される陰極を用いて溶融塩中で電解還元するシリコンの製造方法であって、該陰極にケイ素酸化物を接触させることを特徴とする。
【0028】
本発明における電解還元とは、溶融塩中における直接電解還元法をいう。溶融塩中においてケイ素酸化物を接触させた電極を陰極還元すると、陰極から供給された電子によりケイ素酸化物がシリコンへと還元され、酸化物イオンが生成する。生成した酸化物イオンは、陽極まで移動した後に酸素、一酸化炭素または二酸化炭素のいずれかとなってガスが発生する。
【0029】
電解還元の陰極は、シリコンを主とする材料から構成される。シリコンを主体とする材料からなる陰極としては、シリコンをそのまま電極にしたもの、陰極がシリコン以外の金属(たとえばモリブデン)表面にシリコンを被覆したものなどがあげられる。電解還元によって製造されたシリコンを取り出す際に、陰極による不純物が混入しないようにするため、シリコン電極が用いられる。陰極として用いるシリコンの純度としては、99.9%以上が好ましく、99.9999%以上がより好ましい。純度が99.9%より小さいと、シリコン電極中の不純物が電解還元により製造されたシリコンへ移行する傾向がある。
【0030】
本発明に用いるケイ素酸化物としては、たとえば二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などがあげられるが、特に高純度のものが比較的安価に入手できる点で、二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素としては、具体的には、石英、シリカサンド、アモルファス二酸化ケイ素などがあげられる。特に還元速度が大きい点で、アモルファス二酸化ケイ素が好ましい。
【0031】
電解還元に使用される二酸化ケイ素の純度としては、金属不純物量が100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下がさらに好ましく、0.5ppm以下がもっとも好ましい。二酸化ケイ素中の金属不純物量が100ppm以上であると、製造されたシリコン中の金属不純物量が100ppm以上となり、太陽電池用シリコンとして用いるために必要な精製過程の回数が増加する傾向がある。また、二酸化ケイ素中のホウ素およびリンの不純物量は、1ppm以下が好ましく、0.5ppm以下がより好ましく、0.1ppm以下がさらに好ましい。二酸化ケイ素中のホウ素およびリンの不純物量が1ppm以上であると、製造されたシリコン中のホウ素およびリンの不純物量が1ppm以上となり、太陽電池用シリコンとして用いるために必要な精製過程の回数が増加する傾向がある。なお、金属不純物としては、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄などが挙げられる。さらに、二酸化ケイ素中の全不純物含有量の合計が1ppm以下であることが好ましい。
【0032】
アモルファス二酸化ケイ素としてはたとえば、珪藻土に含まれるアモルファス二酸化ケイ素があげられる。該アモルファス二酸化ケイ素は、その生成過程において高温の熱履歴を経ておらず、化学結合が弱く、さらに、珪殻の多孔性と独特の形状とにより、いずれも極めて嵩高い粉体である。珪殻の細孔は、比較的マクロな孔であり、一般に採掘される珪藻土はその80~90%が二酸化ケイ素と不純物としてアルミナなどの粘度成分を含む。珪藻土の二酸化ケイ素は石英などの結晶性二酸化ケイ素と異なりアルカリ水溶液中に容易に溶け出す特徴があるため、水溶液のpHをコントロールして溶解・再析出を繰り返すと二酸化ケイ素成分を選択的に精製することができる。このような湿式の精製プロセスを繰り返すことによって、二酸化ケイ素純度を99.9999%まで高めることができるため、珪藻土を精製して得られる高純度アモルファス二酸化ケイ素であることが特に好ましい。
【0033】
電解還元を行なうにあたり、ケイ素酸化物は絶縁性が高く、そのまま電極として用いても電極反応は起こらないため、本発明ではシリコンを陰極として用い、この陰極をケイ素酸化物と接触させる。この場合、シリコンとケイ素酸化物との接触面積が大きい方が、還元速度が促進されるため好ましい。ケイ素酸化物とシリコンに接触させた電極の具体例としては、二酸化ケイ素の塊状物をシリコン板で挟みこんだ電極、図1に示すように、多孔質二酸化ケイ素粉末1をシリコンの電極棒2の周りに付着させた一体成形型電極などがあげられる。
【0034】
二酸化ケイ素板と異なって、二酸化ケイ素粉末を圧縮成形し焼結した多孔質粉末成形体には溶融塩が内部に浸透するため、各粒子間の空隙にあらかじめ溶融塩が存在した状態となる。シリコン電極に多孔質二酸化ケイ素粉末成形体を付着させ接触させた電極を陰極に用いて電解還元を行なえば、反応で生成した酸化物イオンはあらかじめ空隙に存在する溶融塩中を拡散してバルク部分へ移行するため反応が高速化できる。二酸化ケイ素がシリコンへと還元されると体積収縮が起こるために空隙が形成され、この空隙に溶融塩が入り込む。反応で生成した酸化物イオンは溶融塩中を反応界面からバルク部分へと移動するが、二酸化ケイ素がシリコンへと還元されつつある部分では空隙が狭い上、酸化物イオンの濃度が高くなるため、酸化物イオンが拡散しにくくなる。そこで、粒径の小さな二酸化ケイ素を用いれば、二酸化ケイ素がシリコンへと還元されつつある部分の層の厚みが小さくなるので、反応が高速化できる。二酸化ケイ素粉末成形体の空隙率は、30~80%が好ましく、40~70%がより好ましく、50~65%がさらに好ましい。空隙率が、30%より小さいと空隙中の溶融塩量が少ないため酸化物イオンの拡散がスムーズに行われず、反応が内部へ進行するに従い反応速度が低下する傾向がある。一方、空隙率が80%より大きいと還元生成されたシリコンの空隙率が増大するため、生成物の機械的強度が低下するとともに空隙に残される溶融塩量が増大しそのシリコンとの分離が困難になる傾向がある。二酸化ケイ素粉末の粒径は、2μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。粒径が2μmより大きいと反応速度が低下する傾向がある。
【0035】
また、ケイ素酸化物として二酸化ケイ素粉末のみからなる粉末成形体を用いた場合は、シリコン電極または生成したシリコンに接触している二酸化ケイ素のみが還元されるが、該二酸化ケイ素粉末成形体中にあらかじめシリコン粉末を混合した場合には、シリコン電極または生成したシリコンに接触している二酸化ケイ素だけでなく、混合したシリコンと生成したシリコンとが接触することにより、混合したシリコンに接触している二酸化ケイ素も還元されるので、結果としてより高速な還元が可能となる。
【0036】
二酸化ケイ素粉末成形体中に含まれるシリコン粉末としては、二酸化ケイ素中に5~30重量%含まれることが好ましく、10~20重量%がより好ましい。シリコン粉末が5重量%より小さいと、還元速度が低下する傾向がある。一方、シリコン粉末が30重量%より大きいと、還元速度の向上は頭打ちになるため余剰に添加したシリコン粉末が有効に活用されずプロセスとしての効率が低下する傾向がある。
【0037】
シリコン粉末の粒径は、0.1~10μmが好ましく、0.2~5μmがより好ましく、0.5~2μmがさらに好ましい。粒径が、0.1μmより小さいと粉末成形体の作成過程でシリコン粉末が酸化されやすく効果が低下する傾向がある。一方、粒径が、10μmより大きいとシリコン粉末の比表面積が減少し二酸化ケイ素との接触面積が減少するため効果が低下する傾向がある。
【0038】
陽極については、溶融電解に使用できるものであれば特に限定されないが、具体例としては炭素電極、グラファイト電極、グラッシーカーボン電極、フェライト系不溶性陽極、ホウ化チタン系不溶性陽極などがあげられる。なかでも、フェライト系不溶性陽極、ホウ化チタン系不溶性陽極などの不溶性陽極が不純物の混入を避ける点で好ましい。
【0039】
電解質における溶融塩(MY)のカチオン種(M)としては、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムがあげられる。また、アニオン種(Y)としては、塩素、フッ素、臭素があげられる。なかでも、溶融塩としては、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、またはこれら二種以上からなる混合塩、たとえば塩化カルシウム-塩化ナトリウム混合塩、塩化カルシウム-塩化リチウム-塩化カリウム混合塩などを用いることが酸化物イオンの溶解度が比較的大きく、腐食性が比較的小さいという点で好ましい。
【0040】
電解還元の際の陰極電位は、溶融塩由来のカチオン(M)が溶融物から析出するための電位より貴な電位に設定する。陰極電位は0.6~1.2V(vs.Mn+/M(Mは溶融塩のカソード限界で析出するアルカリ金属またはアルカリ土類金属))が好ましく、0.7~1.0V(vs.Mn+/M)がより好ましい。陰極電位が0.6V(vs.Mn+/M)より卑であると、溶融塩由来のカチオンが還元されて生成した金属とシリコンが合金化し、シリコン中の不純物が増加する傾向がある。一方、陰極電位が1.2V(vs.Mn+/M)より貴であると、還元反応速度が著しく低下する傾向がある。
【0041】
電解還元を行なう温度は、500~1000℃が好ましく、800~900℃がより好ましい。電解還元温度が500℃より小さいと、酸化物イオンの溶解度および拡散速度が低下し、反応速度が低下する傾向がある。一方、電解還元温度が1000℃より大きいと、溶融塩の蒸気圧が大きくなり、溶融塩が揮発する傾向がある。
【0042】
本発明の電解還元装置は、陽極およびシリコンを主とする材料から構成される陰極、溶融塩および該溶融塩を収容する容器、ならびに該陰極および陽極を通電するための直流電源を備え、かつ該陰極にケイ素酸化物を接触させてなる電解還元装置である。具体例としては、たとえばステンレス製のセルホルダー内に高純度二酸化ケイ素または高純度アルミナ製のるつぼを格納し、高純度アルミナ製保護管によって被覆した作用電極、対向電極および参照電極を組み込んだものを使用することができる。ホルダー内はアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で電解還元を行なうことが好ましい。温度制御にはクロメル・アルメル熱電対を用いることができる。
【0043】
本発明の方法により製造されるシリコンの純度は、金属不純物が100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下がさらに好ましく、0.5ppm以下がもっとも好ましい。シリコン中の金属不純物の含有量が100ppmより大きいと、太陽電池用シリコンとして用いるために必要な精製過程の回数が増加する傾向がある。また、シリコン中のホウ素およびリンの不純物は、1ppm未満が好ましく、0.5ppm未満がより好ましく、0.1ppm未満がさらに好ましい。シリコン中のホウ素およびリンの不純物の含有量が1ppmより大きいと、太陽電池用シリコンとして用いるために必要な精製過程の回数が増加する傾向がある。また、該シリコンを用いて半導体を製造する際に、ホウ素やリンなどの添加物を少量加えることによって、p型またはn型の機能を発現させるが、シリコン中におけるホウ素およびリンの不純物の含有量が1ppmよりも大きいと、半導体としての機能を制御することが困難となる。なお、金属不純物としては、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄などが挙げられる。さらに、シリコン中の全不純物含有量の合計が1ppm以下であることが好ましい。なお、製造されるシリコンの純度としては太陽電池級(SOG)のものであることが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法によって得られるシリコンは、単結晶シリコン太陽電池と多結晶シリコン太陽電池である結晶系シリコン太陽電池、球状シリコン太陽電池、金属酸化物の還元剤、シリコン化合物の原料などに用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
実施例1
本実施例において、セルホルダーとフランジカバーはステンレス製のものを用いた。ホルダー内はアルゴンガス(京都帝酸(株)製高純度アルゴン:純度99.995%)により、アルゴン雰囲気に保った。温度測定および制御には、クロメル・アルメル熱電対を用い、高純度アルミナ製保護管(SSA-S、(株)ニッカトー製:φ6.0mm、)で被覆した。
【0047】
陰極には、図1に示すような、シリコン電極に多孔質二酸化ケイ素粉末成形体を付着させ接触させた電極を用いた。シリコン電極としては、単結晶シリコン板(100、p-type、low、(株)ニラコ製:ca.30mm×5mm×0.5mmt)を用いた。また、多孔質二酸化ケイ素粉末成形体は、アモルファス二酸化ケイ素粉末(日本高純度化学(株)製:純度99.999%、400メッシュ)に3t/cm2の圧力をかけて粉末成形体状にしたものを、高周波誘導加熱装置(MU-1700、積水化学(株)製)により真空中1273Kで10分間焼結を行なうことで機械的強度を向上させて作製した。
【0048】
陽極としては、グラファイト棒(東海カーボン(株)製:5mm×5mm×50mm)をモリブデン線((株)ニラコ製:φ0.5mm、純度99.95%)で固定して用いた。電極のリードとしては、モリブデン線(菱光産業(株)製:φ1.0mm、純度99.95%)とニッケル線(菱光産業(株)製:φ1.0mm、純度99.7%)をつないだものを取り付け、高純度アルミナ管(SSA-S、(株)ニッカトー製:φ6.0mm)の内側に通した。また、リード部分はアルミナ製保護管(ハルデンワンガー社製:φ1.0mm)で被覆した。
【0049】
溶融塩としては、塩化カルシウム(日本高純度化学(株)製:純度99%)300gを高純度アルミナるつぼ((株)ニッカトー製:φ9cm×10cmh×0.5cmt)に入れた後、473Kで数日間、773Kで1日間の真空乾燥を行なうことで水分の除去を行なったものを用いた。
【0050】
電解還元は、1123K、陰極電位1.0V(vs.Ca2+/Ca)で5分間行なった。還元速度を調べるために、電解還元開始5分後の二酸化ケイ素の還元量を測定した。また、得られたシリコンの純度をグロー放電質量分析にて測定した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例2~4
多孔質二酸化ケイ素粉末成形体として、非晶質二酸化ケイ素粉末にシリコン粉末(アルドリッチ(株)製:純度99.999%、200メッシュ)を表1に記載の割合で混合した以外は、実施例1と同様の方法により電解還元を行なった。実施例1と同様に、電解還元開始5分後の二酸化ケイ素の還元量、および得られたシリコンの純度を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
多孔質二酸化ケイ素粉末成形体として、非晶質二酸化ケイ素粉末にシリコン粉末(アルドリッチ(株)製:純度99.999%、200メッシュ)を10重量%の割合で混合したものを実施例1と同様の方法により作成し、陰極電位を0.7V(vs.Ca2+/Ca) とした以外は、実施例1と同様の方法により電解還元を行なった。実施例1と同様に、電解還元開始5分後の二酸化ケイ素の還元量、および得られたシリコンの純度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
多孔質二酸化ケイ素粉末成形体として、非晶質二酸化ケイ素粉末にシリコン粉末(アルドリッチ(株)製:純度99.999%、200メッシュ)を10重量%の割合で混合したものを実施例1と同様の方法により作成し、陰極電位を1.2V(vs.Ca2+/Ca)とした以外は、実施例1と同様の方法により電解還元を行なった。実施例1と同様に、電解還元開始5分後の二酸化ケイ素の還元量、および得られたシリコンの純度を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
陰極として、多孔質二酸化ケイ素粉末成形体にモリブデン線(菱光産業(株)製:φ1.0mm、純度99.95%)を巻きつけ二酸化ケイ素に接触させた電極を用いた以外は、実施例1と同様の方法により電解還元を行なった。実施例1と同様に、電解還元開始5分後の二酸化ケイ素の還元量、および得られたシリコンの純度を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例2~3
陰極還元電位を表1に記載の電位とした以外は、比較例1と同様の方法により電解還元を行なった。実施例1と同様に、電解還元開始5分後の二酸化ケイ素の還元量、および得られたシリコンの純度を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
JP0004765066B2_000002t.gif

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明において電解還元に用いられる陰極の一実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 多孔質二酸化ケイ素粉末成形体
2 シリコン電極棒
図面
【図1】
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