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明細書 :変色性繊維を用いた糸、及び布

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4756267号 (P4756267)
公開番号 特開2007-204907 (P2007-204907A)
登録日 平成23年6月10日(2011.6.10)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
発明の名称または考案の名称 変色性繊維を用いた糸、及び布
国際特許分類 D06P   1/00        (2006.01)
D06M  23/12        (2006.01)
D02G   3/12        (2006.01)
D02G   3/02        (2006.01)
D03D  15/00        (2006.01)
D03D  15/02        (2006.01)
FI D06P 1/00 Z
D06M 23/12
D02G 3/12
D02G 3/02
D03D 15/00 102Z
D03D 15/02 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2006-028787 (P2006-028787)
出願日 平成18年2月6日(2006.2.6)
審査請求日 平成21年1月30日(2009.1.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】渋谷 みどり
【氏名】脇田 玲
個別代理人の代理人 【識別番号】100105647、【弁理士】、【氏名又は名称】小栗 昌平
【識別番号】100105474、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 弘徳
【識別番号】100108589、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 利光
審査官 【審査官】岩井 好子
参考文献・文献 特公昭51-002532(JP,B1)
特公昭51-027774(JP,B1)
実公昭52-017565(JP,Y1)
特開昭54-027039(JP,A)
特許第2824130(JP,B2)
特公平03-057993(JP,B2)
特表2008-500466(JP,A)
調査した分野 D06P 1/00
D02G 3/02
D02G 3/12
D03D 15/00
D03D 15/02
D06M 23/12
特許請求の範囲 【請求項1】
繊維に液晶インキが塗布された変色性繊維と熱源としての導電線とが撚られた糸。
【請求項2】
繊維に液晶インキが塗布された変色性繊維が面状に整形された布または前記変色性繊維を織ることによって整形された布は、熱源を含むことを特徴とする布。
【請求項3】
請求項記載の布は、前記変色性繊維および前記熱源としての導電線を織ることによって整形された布。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、温度によって色彩が可逆的に変化する変色性繊維、その変色性繊維を加工して得られる糸、布、およびその変色性繊維を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、繊維表面上に熱変色性材料を付着させた可逆熱変色性繊維が考案され、利用されている(例えば、特許文献1、特許文献2に公開されている)。なお、本発明における「繊維」という用語は、天然繊維、化学繊維(人造繊維)を形成する素材を総称している。
【0003】
特許文献1に公開されている感温変色性複合繊維は、熱変色性材料(特に、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物)を所定量含有した熱可塑性重合体と繊維形成性可塑性重合体とを複合繊維にすることによって、変色性および変色時の色彩の鮮明性の優れた感温変色性繊維を実現している。また、特許文献2に公開されている感温変色性繊維では、熱変色性材料(特に、酸顕色性物質)がマイクロカプセルに内包されて成る熱変色性粒状物を塩化ビニリデン系樹脂組成物に所定量含有させ、その塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融紡糸して得られる感温変色性繊維の断面径が熱変色性粒状物の粒子径と所定の関係を満たすように構成することにより、優れた感温変色性を有する感温変色性繊維を実現している。

【特許文献1】特許第2824130号
【特許文献2】特開2001-3225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に公開されている感温変色性繊維は、ある温度になったときに無色からある色を発色する、あるいはある色から別の色に変色するのみであり、感温変色性繊維の色の変化が2色に限られていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、温度に応じて異なる様々な色に変色可能な変色性繊維、その変色性繊維を加工して得られる糸、布、およびその変色性繊維を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、本発明の糸は、繊維に液晶インキが塗布された変色性繊維と熱源としての導電線とが撚られたものを含む。
【0011】
この構成によれば、導電線に電圧を加えることによって発生する熱を利用して、様々な生活用品に用いられる糸が呈する色を制御することができるため、変色性繊維の新たな用途を生み出すことが可能となる。
【0015】
また、本発明の布は、繊維に液晶インキが塗布された変色性繊維が面状に整形された布または前記変色性繊維を織ることによって整形された布が、熱源を含むものである
【0016】
また、本発明の布は、前記変色性繊維および前記熱源としての導電線を織ることによって整形されたものである。
【0017】
この構成によれば、導電線に電圧を加えることによって発生する熱を利用して、様々な生活用品に用いられる布が呈する色を制御することができるため、変色性繊維の新たな用途を生み出すことが可能となる。
【0018】
本発明の変色性繊維を製造する製造方法は、液晶インキによって繊維を染める工程と、染めた繊維を乾燥させる工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、温度に応じて異なる様々な色に変色可能な変色性繊維、その変色性繊維を加工して得られる糸、布、およびその変色性繊維を製造する製造方法を提供することができ、この結果、このような変色性繊維およびその加工品が少なくとも一部に用いられている各種生活製品における新たな色彩やデザインの考案を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の変色性繊維およびその変色性繊維の製造方法について詳細に説明する。まず、本発明の実施の形態の変色性繊維を製造するために用いる材料について説明する。
【0021】
本発明の変色性繊維に利用する熱変色性材料は、液晶インキである。液晶インキは、マイクロカプセル化した液晶を合成樹脂に混ぜ合わせたものである。液晶インキは、コレステリック液晶を用いているため、低い温度から高い温度になるに従って例えば、透明、赤、緑、青、透明と変色させるようにすることができる。本発明の実施の形態の変色性繊維を製造するために、液晶インキA(マルワ工業株式会社製、製品名称:サーモインク(液晶インクセット)、温度と呈色の代表的な関係:30度で赤色、36度で緑色、42度で青色)と液晶インキB(日本プリズム株式会社製、製品名称:液晶インキ、温度と呈色の代表的な関係:40度で赤色、50度で緑色、60度で青色)の2種類を用いた。また、液晶インキは、含まれる合成樹脂によって塗布対象に塗布し易くなっている。なお、本発明の実施の形態の変色性繊維を製造するために用いる液晶インキは、変色温度と呈色の関係が上述のものとは異なる液晶インキ(一般に、液晶インキに含まれる液晶、合成樹脂の種別や配合比、マイクロカプセルの粒子径、などを変えることによって、液晶インキがある温度で呈する色を調整することができる)を用いても良い。
【0022】
本発明の変色性繊維に利用する繊維には、天然繊維や化学繊維を用いる。本発明の実施の形態の変色性繊維を製造するための1例として、セルロース繊維の麻を撚った麻糸、蛋白繊維の獣毛を撚った毛糸などを用いているが、麻以外の他のセルロース繊維、獣毛繊維以外の他の蛋白繊維、無機繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維、金属繊維等の繊維を撚った糸であっても構わない(用いる繊維の種類によってはその繊維を撚った糸に塗布し難い場合もあるが、これは合成樹脂を混ぜ合わせた液晶インキを糸に塗布し、液晶インキを糸に固着させることにより、上記液晶インキを塗布し易くしている)。なお、液晶インキを塗布する糸には、黒色に染められたものを用いる。
【0023】
続いて、本発明の実施の形態の変色性繊維を製造する工程について説明する。
第1の工程として、黒色に染められた糸に上述の液晶インキを糸全体で均一になるように塗布する。なお、本発明の実施の形態の変色性繊維を製造する際には、筆を用いて液晶インキを延ばしながら糸に塗布した。また、液晶インキの粘度が高い場合には、液晶インキに蒸留水を混ぜてその粘度を抑えても構わないが、蒸留水を混ぜることによって液晶インキによる発色の鮮明性が低下する恐れがあるため、混ぜる蒸留水の量を極力抑えることが好ましい。
第2の工程として、第1の工程において液晶インキを塗布した糸を、60度程度を維持する乾燥炉に入れて、液晶インキが糸に固着する程度の期間(およそ2時間)乾かす。
なお、液晶インキに含まれるコレステリック液晶は、紫外線の照射や湿気の吸着によってその機能が劣化し易いため、第1の工程後すぐに紫外線を遮断可能な乾燥炉内部の暗室に入れて乾燥させることが好ましい。また、ここでは、繊維を撚った糸単位で液晶インキを塗布することにより変色性繊維を製造する工程について説明したが、繊維単位で液晶インキを塗布することにより変色性繊維を製造する工程も同様である。
【0024】
以下、上述の製造方法によって製造した、繊維種別の異なる複数の変色性繊維(実施例1から実施例8)の色彩の鮮明性について評価する。実施例1から実施例8の変色性繊維と、その変色性繊維を製造する際に用いた液晶インキおよび液晶インキを塗布した糸の種別と、の対応を表1に示す。実施例1から実施例4の変色性繊維を製造するために熱変色性材料として液晶インキAを用い、実施例5から実施例8の変色性繊維を製造するために熱変色性材料として液晶インキBを用いた。また、実施例1および実施例5の変色性繊維を製造するためには麻繊維を撚った麻糸を用い、実施例2および実施例6の変色性繊維を製造するためには天然繊維を撚ったレース糸を用い、実施例3および実施例7の変色性繊維を製造するためにはアクリル繊維を撚ったアクリル糸を用い、実施例4および実施例8の変色性繊維を製造するためには蛋白繊維を撚った毛糸を用いた。なお、実施例1から実施例4の変色性繊維を製造するための第1、第2の工程は同一条件(使用する液晶インキ、液晶インキに蒸留水を混ぜる場合はその蒸留水の量、加える塗布する方法、乾燥方法、使用する乾燥炉、乾燥時間)で行っており、また実施例5から実施例8の変色性繊維を製造するための第1、第2の工程についても同一条件で行っている。
【表1】
JP0004756267B2_000002t.gif

【0025】
また、各実施例の変色性繊維を視認することにより色彩の鮮明性を評価した評価結果を表2に示す。なお、表2に示す変色性繊維の色彩の鮮明性を評価する評価基準は、「○」または「◎」の表記によって各変色性繊維における鮮明性の程度を複数の実施例の中で相対的に示し(「◎」と評価される実施例の変色性繊維は、「○」と評価される実施例の変色性繊維よりも鮮明であることを示す。なお、「○」と評価された実施例の変色性繊維であっても、各温度での呈色を視認することが充分可能であった)、「-」によって表記される実施例の変色性繊維における鮮明性の程度は、液晶インキが固着が不充分で変色を確認できないために評価できないことを示している。
【表2】
JP0004756267B2_000003t.gif

【0026】
実施例1から実施例3、実施例5から実施例7の変色性繊維を30度から50度までの温度範囲に変化させて色彩を確認したところ、液晶インキA、Bそれぞれにおいて変色(主に、液晶インキA、Bにおける所定温度での赤色、緑色、青色の呈色)を確認することができた。液晶インキAを熱変色性材料として用いた実施例1から実施例3の変色性繊維は、液晶インキBを熱変色性材料として用いた実施例5から実施例7の変色性繊維に比べて色彩が鮮明であったが、この原因としては、液晶インキA、Bそれぞれに用いられている、液晶の違い、マイクロカプセル化された液晶の量子径の違い、液晶と合成樹脂の配合比の違い、または合成樹脂材料の違い、等が考えられる。また、蛋白繊維を撚った毛糸を塗布対象として用いた実施例4および実施例8の変色性繊維は、製造工程において液晶インキを塗布することが難しく、また液晶インキが毛糸に固着せず剥がれ易かったため、変色を確認できなかった。この原因は、液晶インキA、Bそれぞれに用いられている、液晶と合成樹脂の配合比の違い、または合成樹脂材料の違い、等が考えられる。
【0027】
本発明の実施の形態の変色性繊維およびその変色性繊維を製造する製造方法によれば、温度に応じて異なる様々な色に変色可能な繊維、およびその繊維を加工して得られる糸を提供することができる。
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の変色性繊維を利用した糸製品の1例を、本発明の第1実施形態の糸製品として説明する。なお、第1実施形態で説明する糸製品とは、本発明の繊維を撚ったものとして定義する。
【0029】
本発明の第1実施形態の糸製品は、本発明の変色性繊維と電熱線とを撚ったものである。電熱線の1例としては、ニクロタル80で構成されるニクロム線などが挙げられる。本発明の第1実施形態の糸製品は、液晶インキを塗布する前の繊維と電熱線とを撚って1本の糸にした後、あるいは液晶インキを塗布する前の繊維を撚った糸と電熱線とを撚って1本の糸にした後、上述の製造方法の第1、2の工程を経ることによって1本の糸製品を製造しても良いし、上述の製造方法の第1、2の工程を行った変色性繊維と電熱線とを撚ることによって1本の糸製品を製造しても良い。
【0030】
本発明の第1実施形態の糸製品によれば、電熱線に電圧を加え、かつその電圧値を制御して電熱線に生じる熱量を制御する構成にすることによって、当該糸製品が呈する色を可視領域における全ての色に動的に制御することができるようになる。この結果、このような変色性繊維およびその加工品が少なくとも一部に用いられている各種生活製品における新たな色彩やデザインの考案を促進することができる。
【0031】
(第2実施形態)
以下、本発明の変色性繊維を利用した布製品の1例を、本発明の第2実施形態の布製品として説明する。なお、第2実施形態で説明する布製品とは、本発明の変色性繊維を面状にしたもの、あるいは本発明の変色性繊維を撚った糸を織ったもの、として定義する。
【0032】
本発明の第2実施形態の布製品は、本発明の変色性繊維を撚った糸と第1実施形態で述べた電熱線とを、それぞれ縦糸、横糸にして織り込んだものである。本発明の第2実施形態の布製品によれば、複数の電熱線それぞれに電圧を加え、かつ各電熱線に加わえる電圧値を制御して電熱線に生じる熱量を制御する構成にすることによって、当該布製品が呈する色を可視領域における全ての色に動的に制御することができる。さらに、ある温度において呈する色が異なる複数の変色性繊維を織り込んでおけば、その布製品の各電熱線に一律の電圧を加えることによって、加える電圧値に応じて変化する模様を布製品上に描くことができる。また、ある1つの変色性繊維を織り込んで布製品を製造した場合でも、布製品の各電熱線に加える電熱値を調整することにより様々な模様を何度でも描くことができるようになる。
【0033】
また、本発明の変色性繊維を利用した布製品の別の例としては、本発明の変色性繊維を撚った糸を縦糸、横糸にして織り込んだ布、あるいは本発明の変色性繊維で構成される面状の布における一方の面に発熱量を調整可能な電熱線やペルチェ素子などの熱モジュールを配置した布製品が考えられる。この構成により、熱モジュールを配置していない布の他の面に熱源が発する熱に応じた様々な模様を描くことができ、また熱源の形状の自由度が高く、熱源の配置位置も任意であるため、より複雑な模様を描くことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、温度に応じて異なる様々な色に変色可能な変色性繊維、その変色性繊維を加工して得られる糸、布、およびその変色性繊維を製造する製造方法を提供することができ、この結果、このような変色性繊維およびその加工品が少なくとも一部に用いられている各種生活製品、例えば、服、カバン等の服飾品、カーテン、絨毯、壁装用地等のインテリア用品、タオル、ハンカチ、傘等の生活雑貨、における新たな色彩やデザインの考案を促進することができる。このため、本発明は、感温変色性繊維の分野あるいは感温変色性繊維を加工して得られる製品の分野において極めて有用である。