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明細書 :ポリエステル合成用触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734626号 (P4734626)
公開番号 特開2006-206653 (P2006-206653A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成18年8月10日(2006.8.10)
発明の名称または考案の名称 ポリエステル合成用触媒
国際特許分類 C08G  63/84        (2006.01)
FI C08G 63/84 ZAB
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2005-017437 (P2005-017437)
出願日 平成17年1月25日(2005.1.25)
審査請求日 平成20年1月18日(2008.1.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】高須 昭則
個別代理人の代理人 【識別番号】110001036、【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
審査官 【審査官】藤井 勲
参考文献・文献 特開2003-306535(JP,A)
特開2003-313282(JP,A)
特開2006-047536(JP,A)
Shu Kobayashi et al,J. Am. Chem. Soc.,米国,1998年,120,p2985-2986
Satoshi Nagayama et al,Angew. Chem. Int. Ed.,ドイツ,2000年,vol.39, No.3,p567-569
調査した分野 C08G 63/00 - 63/91
特許請求の範囲 【請求項1】
ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを塊状重合にて合成するための触媒であって、下式で表される塊状重合用のポリエステル合成用触媒。(式中Xは希土類元素を表し、Rはジビニルベンゼン1%を含むポリスチレン樹脂を表す。また、Tfはトリフラートを表す。)
【化1】
JP0004734626B2_000004t.gif

【請求項2】
前記XがSc,Y,YbまたはSmである請求項1に記載のポリエステル合成用触媒。
【請求項3】
前記ポリエステルが脂肪族ポリエステルである請求項1又は請求項2記載のポリエステル合成用触媒。
【請求項4】
前記ジオールがHO(CH2)nOH(nは任意)で表され、前記ジカルボン酸がHOOC(CH2)nCOOH(nは任意)またはその無水物で表される請求項3に記載のポリエステル合成用触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールとカルボン酸からエステル化合物を、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを合成するための触媒およびポリエステルの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリエステルの合成にはジカルボン酸とジオールまたはヒドロキシカルボン酸の直接重合法が採用されているが、非常に高温でエステル化をさせるのが一般的である。また、脂肪族のポリエステルは、耐熱性に劣り、熱分解してしまうこともある。より低温(200℃以下)で反応させるためにはこの反応を効率よく触媒する触媒の検索が必須となるが、ほとんどのルイス酸触媒は、水をはじめとするプロトン性の化合物に対する安定性が非常に低く困難であった。
【0003】
近年、このような観点から触媒が開発され高分子量の脂肪族ポリエステルも製造されるにいたっている。たとえば、1,4-ブタンジオールとコハク酸等に触媒としてアセトアセトイル型亜鉛キレート化合物等を用いて脂肪族ポリエステルが合成され、市販されている(特開平5-3952、高分子42巻3月号251(1993)。この例では、一旦分子量が15000程度のポリエステルを合成し、これをジイソシアネートを用いて結合して分子量が、35000程度のポリマーを得ているが、この高分子量の脂肪族ポリエステルを直接作成するに至っておらず、反応温度も200℃程度と高い。更に、最近ではジオールとジカルボン酸にスズジスタノキサン(Biomacromolecules 2001, 2, 1267-1270)または、塩化ハフニウム・THF錯体(Science 2000, 290, 1140-1142)を用いて分子量が、1-10万程度の脂肪族ポリエステルが合成されるに至っている。しかし、いずれも有機溶媒を用いる溶液重縮合法であった。最近では、深刻化する環境問題を背景に、有機溶媒やスズなどの重金属触媒の使用に対する法的な規制が大きくなってきている。
【0004】
発明者はすでに、希土類トリフラートがカルボン酸とアルコールのエステル化を触媒することを見出しており、溶媒を用いない塊状重合により80℃の温度で高分子量と目される分子量1万のポリエステルを得ており、180℃では3万の分子量のポリエステルを合成している(高須昭則、平林忠道、特開2003-306535)。さらにその触媒は、有機溶媒(クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン)と水を用いた洗浄により水層から回収することができた(A. Takasu et al., Macromolecules 2003, 1772-1774、A. Takasu et al., Macromolecules 2005, in press)。しかし、触媒を回収するためには、有機溶媒で希釈した後、繰り返し水で洗浄を行わないと高い回収率にならないという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリエステルを合成するための触媒であって、低温(約180℃以下)でポリエステル反応を触媒を作用し、更に分子量が1万以上のポリエステルを合成できる触媒を提供する。この触媒は、希土類トリフラートがポリスチレン樹脂に担持されているため、分液操作が必要なく回収操作が簡便である。それによって、工業的な応用範囲がより広がると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、希土類トリフラートがジカルボン酸とジオールとの重縮合の有効な触媒となることから(高須昭則、平林忠道、特開2003-306535)、この触媒をポリスチレン樹脂に担時させたものを用いてエステル化を行った。まず、エタノールと2当量の酢酸の室温(27℃)でのエステル化を検討したところ48時間で80%進行した。次に、この触媒を用いたジオールとジカルボン酸との重縮合の場合も、120℃で重合が進行し、数平均分子量1万以上のポリエステルが合成できた。期待通り分液操作の必要なく、テトラヒドロフランにポリエステルを溶解させ、濾過するだけで触媒が回収でき本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを合成するための触媒であって、下式

JP0004734626B2_000002t.gif

【0008】
で表されるポリエステル合成触媒である。式中Xは希土類元素を表し、Xは希土類元素を表し、好ましくはSc,Y,YbまたはSmを表す。Rはジビニルベンゼンを1%含むポリスチレン樹脂を表す。本発明の触媒はこれらの混合物であってもよい。この触媒は、ジビニルベンゼンを1%含むポリスチレン樹脂を二硫化炭素中で、塩化5-フェニル吉草酸で処理をし、Friedel-Craftsアシル化と還元反応を繰り返して調製した樹脂に、塩化スルホン酸で硫酸化を行い、塩化スカンジウムとトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)と反応させることで調製できる(Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 567)。
【0009】
このポリエステルに用いるジオール、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸については特に制限がないが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、フタル酸などやこれらの無水物、例えば、無水コハク酸、無水アジピン酸を用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸などを用いることも望ましい。また、複数種のこれらを用いてもよい。
【0010】
本発明において合成されるポリエステルに特に制限はなく、合成されたポリマーまたは化合物に主結合として、本発明の触媒の作用により生成されたエステル結合が含まれておればよく、エステル結合以外の結合が含まれることを除外するものではない。このポリエステルは、上記のジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸により生成すれば、芳香族、脂肪族またはこれらの混合のいずれでもよい。このポリエステルの数平均分子量(Mn)は、実用的には5000以上、特に10000以上であることが望ましい。
【0011】
また、本発明は、上記の触媒を用いて、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを製造する方法である。前記触媒の使用量は、生成する樹脂(又は投入するジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸)に対して、0.001-15重量%、好ましくは0.05-2重量%であることが望ましい。ジオールとジカルボン酸の投入量はほぼ化学量論比とすることが好ましい。重合においては、上記の成分以外に溶媒、酸化防止剤、紫外吸収剤、結晶核剤を適宜使用してもよい。
【0012】
本発明は、希土類トリフラートがジカルボン酸とジオールとの重縮合の有効な触媒となることから(高須昭則、平林忠道、特開2003-306535)、この触媒をポリスチレン樹脂に担時させたものを用いて重縮合を行ったところに特徴がある。この触媒を用いた場合も、120℃で重合が進行し、数平均分子量1万以上のポリエステルが合成できた。予想通り分液操作の必要なく、テトラヒドロフランにポリエステルを溶解させ、濾過するだけで触媒が回収できる点が特徴である。
【発明の効果】
【0013】
ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを合成する場合に、低温において高分子量のポリエステルを合成できる。ほとんどの触媒が、水、カルボン酸、アルコールなどのプロトン性化合物に不安定であるのに対し、この触媒の安定性は高く、溶媒を用いない塊状重合に適している。80-180℃の重合温度で高い触媒回転数を示した。前記触媒は、ポリスチレン樹脂に担時されており、重縮合後にテトラヒドロフランにポリエステルを溶解させ、濾過するだけで触媒が回収できた。
【0014】
本発明の触媒を用いて、ジオールとジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸からポリエステルを合成することができる。後述の実施例で明らかにするが、120℃の塊状重合で高分子量と目される1万2千の分子量のポリエステルを得ることができた。希土類金属は高価であるためその回収・再利用に企業化および実用化の課題が残されている。従来の水洗による方法では、手間がかかるとともに有機溶媒が水と混ざり、回収効率や廃液処理の問題が懸念されるが、本発明ではそれらが大きく改善できた。
【0015】
以上説明したように本発明の合成触媒は、Sc(OTf)3と同様アルコールとカルボン酸の反応を触媒し、ジオールとジカルボン酸からポリエステルを合成できた。樹脂に触媒が担持されているため分液操作の必要がなく、容易に回収・再利用できるようになった。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
重合形式はいかなるものであってもいいが、本発明の触媒には溶媒を用いない塊状重合が適している。反応圧は、重合反応形式により当該分野で適切な圧を用いればよいが、塊状重合の場合には、脱水を促進するため0.3-3.0mmHgが好ましい。反応温度は、やはり高いほどエステル化反応の進行度は高いが、本発明の触媒を用いることにより一般(200℃以上)よりも低い約180℃以下、特に80-180℃で行うことができる点が本発明の特徴のひとつであると考えられる。
【実施例1】
【0017】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0018】
本実施例では、ジオールとしてエチレングリコール(ナカライテスク製、「EG」と略す。)1,3-プロパンジオール(東京化成、「1,3-PD」と略す。)、1,4-ブタンジオール(東京化成、「1,4-BD」と略す。)を用い、ジカルボン酸としてメチルコハク酸(アルドリッチ製、「MSA」と略す。)、コハク酸(ナカライテスク製、「SA」と略す。)、または無水メチルコハク酸(メチルコハク酸と無水酢酸から調製、「MSAn」と略す。)、無水コハク酸(ナカライテスク製、「SAn」と略す。)、ヒドロキシカルボン酸としては乳酸(アルドリッチ製)およびグリコール酸(アルドリッチ製)を用いた。触媒としてはポリスチレン樹脂担持型スカンジウムトリフラート(アルドリッチ製、「PS-Sc」と略す。)を用いた。
【0019】
撹拌機、分留コンデンサ、温度計、ガス封入管を備えた容積が50mLのナスフラスコに、表1に示す量のジオール、ジカルボン酸および触媒を入れ、窒素雰囲気下、7.0ミリモルずつ用いた。また、系を減圧(0.3mmHg)しつつ生成する水分を除去した。その結果、白色ワックス状の重合体が得られた。これをテトラヒドロフラン(40mL)で溶解、濾過することでPS-Scを回収した(回収率:98%)
【0020】
【表1】
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この結果、反応温度が高いほど分子量の大きいポリエステルが得られており、120℃において0.3 mmHgの減圧下で、1,4-ブタンジオールとメチルコハク酸との直接重縮合を24時間行うことにより、分子量分子量1万以上のポリエステルを合成することができた。また、この触媒はエステル交換反応よりもカルボン酸とアルコールの縮合反応に対し、高い触媒作用を示すため、分子量分布(Mw/Mn)が1.5-1.9と狭くなることも本発明の特徴である。


【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例で合成したポリエステル(No.4)のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す図である。上図は想定するポリエステルの構造を示し、a-eはNMRのピークの帰属を示す。
図面
【図1】
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