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明細書 :浮力を伴う乱流の流体的及び熱的諸特性の推定方法及び推定プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4797157号 (P4797157)
公開番号 特開2006-258391 (P2006-258391A)
登録日 平成23年8月12日(2011.8.12)
発行日 平成23年10月19日(2011.10.19)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
発明の名称または考案の名称 浮力を伴う乱流の流体的及び熱的諸特性の推定方法及び推定プログラム
国際特許分類 F28F  27/00        (2006.01)
G06F  17/50        (2006.01)
FI F28F 27/00 511Z
G06F 17/50 612G
請求項の数または発明の数 2
全頁数 20
出願番号 特願2005-078548 (P2005-078548)
出願日 平成17年3月18日(2005.3.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年12月15日から17日 日本流体力学会主催の「第18回 数値流体力学シンポジウム」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成17年1月26日 日本伝熱学会東海支部主催の「平成16年度 日本伝熱学会東海支部 支部講演会」において文書をもって発表
審査請求日 平成20年1月18日(2008.1.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】長野 靖尚
【氏名】服部 博文
【氏名】森田 昭生
【氏名】松井 秀也
審査官 【審査官】新井 浩士
参考文献・文献 特開平07-146194(JP,A)
調査した分野 F28F 27/00
G06F 17/50
特許請求の範囲 【請求項1】
熱移動を伴う流れ場についての乱流の2方程式モデルを用いて,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を推定するコンピュータによって実行される,流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定方法であって,
前記コンピュータは,流れ場の温度,速度等を定める条件となる必要なデータを入力するための入力手段と,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を求める演算手段とを有しており,
前記演算手段が,前記入力手段によって入力されたデータに基づいてレイノルズ応力を
JP0004797157B2_000080t.gif,強制対流に関する項をF,浮力に関する項をGとすると

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の式を用いてレイノルズ応力を算出して,速度場の計算をし,乱流熱流束を
JP0004797157B2_000082t.gif,乱流熱流束の強制対流に関する項をFt,乱流熱流束の浮力に関する項をGtとすると,

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の式を用いて乱流熱流束を算出して,上記速度場における温度場の計算をすることを特徴とする,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定方法
【請求項2】
熱移動を伴う流れ場についての乱流の2方程式モデルを用いて,
乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定するコンピュータを,流れ場の温度,速度等を定める条件となる必要なデータを入力するための入力手段,入力手段によって入力されたデータに基づいてレイノルズ応力を

JP0004797157B2_000084t.gif,強制対流に関する項をF,浮力に関する項をGとすると

JP0004797157B2_000085t.gif
の式を用いてレイノルズ応力を算出して,速度場の計算を行い,乱流熱流束を

JP0004797157B2_000086t.gif,乱流熱流束の強制対流に関する項をFt,乱流熱流束の浮力に関する項をGtとすると,

JP0004797157B2_000087t.gif
の式を用いて乱流熱流束を算出して,上記速度場における温度場の計算をすることを特徴とする,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を求める演算手段,および演算手段によって求められた速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を表示する出力手段,として機能させるコンピュータによって実行可能な熱移動を伴う流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定プログラム
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,各種機械,電子機器等の流体による放熱設計や,冷暖房時の室内気流の解析等において必要となる,熱移動によって発生した浮力を伴う乱流の流体的及び熱的諸特性を推定する方法およびコンピュータによって実行可能な,浮力を伴う乱流の流体的及び熱的諸特性の推定プログラムに関するものである.
【背景技術】
【0002】
熱移動を伴う流れ場を有する場合の,放熱特性や流体の圧力損失を算出することは,たとえば電気機器等の電子部品の実装密度を高め,省スペースに設計する場合などに必要である.これらを実験的に求めることが一般に行われているが,試作等を要するため多くの時間とコストがかかるという問題がある.
熱移動を伴う流れ場を,シュミレーションし解析的に解く為には,連続の方程式,運動の方程式であるナビエストークス方程式及びエネルギー式を解く必要がある. 流れが層流である場合は,流れの現象をあらわす運動方程式等は乱流の場合に比較して簡単であり,方程式を解くことにより計算できる場合が多いが,実際の機器においては,多くの場合流れは乱流となっており,解析的に解を求めることはできないのが実情である.
乱流の場合にこれらの方程式を解くことを困難にしているのは,レイノルズ平均化されたナビエストークス方程式のなかにあるレイノルズ応力項と,同じくレイノルズ平均化されたエネルギー式の中にある乱流熱流束項である.レイノルズ応力項は速度変動部分の積の平均であり,乱流熱流束項は速度変動と温度変動の積の平均であるから,乱流現象を厳密に小変動にいたるまで計算しなければ算出できない.厳密に解析する方法として,DNS(Direct Numerical Simulation)があるが,計算できるのはレイノルズ数の小さな(つまり寸法と,速度の積が小さな)場合に限られ,機器設計等での実際の流れ場においては,
計算すべき格子点数が膨大になりコンピューターの計算容量から計算は実質的には不可能である.
そこで,このレイノルズ応力項や乱流熱流束項を簡単な式に代表させ,方程式を解くことが行われている.この簡単な式をモデル式と言っている.従来モデルの例としてMKCOモデル式がある.以下にMKCOモデル式を示す.レイノルズ応力項は次のように表される.

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【0003】
ここで,

JP0004797157B2_000003t.gif
【0004】
は,速度場における浮力のダンピング関数であって,次式で表される.

JP0004797157B2_000004t.gif
【0005】
乱流熱流束項は次式で表される.

JP0004797157B2_000005t.gif
【0006】
ここで,

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【0007】
は,速度場における浮力のダンピング関数であって,次式で表される.

JP0004797157B2_000007t.gif
【0008】
以上のMKCOモデル式の記号の意味は以下のとおりである.


JP0004797157B2_000008t.gif
【0009】
はそれぞれ乱流エネルギーkの速度平均勾配における生成項,浮力による生成項,散逸率である.大文字Cで表される項は係数であり,式または値で与えられる.その他の記号は他の式の場合とあわせ,この後に記載する.

このモデル式は浮力を伴う乱流を計算するのに優れたモデル式とされているが,次の欠点がある.
1)乱流熱流束項

JP0004797157B2_000009t.gif
【0010】
が平均温度勾配

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【0011】
に比例するため,平均温度勾配がほとんどない場合に乱流熱流束が計算上ゼロになるが,実際はゼロでない.つまり,現象を正しく表していないため,この項が影響する場合の計算精度が悪くなる.
2)式が場合分けによって選択する形になっているため,座標依存性があり,座標軸と重力方向によって,同一の式で計算ができない.つまり重力方向に対し流路が斜め形状の場合などでは計算が困難である.

【非特許文献1】村上周三著 「CFDによる環境設計工学」東京大学出版 2000年153~165—ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は,機械の放熱設計等に必要な,ヌッセルト数や摩擦係数などを求めるための,熱移動を伴う流れ場の乱流の流体的かつ熱的性質を,高精度で,重力方向がいかなる場合でも,同一の式で予測できる推定方法及び推定プログラムを提供することである.
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は,熱移動を伴う流れ場についての乱流の2方程式モデルを用いて,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を推定するコンピュータによって実行される,流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定方法であって,
前記コンピュータは,流れ場の温度,速度等を定める条件となる必要なデータを入力するための入力手段と,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を求める演算手段とを有しており,
前記演算手段が,前記入力手段によって入力されたデータに基づいてレイノルズ応力
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【0014】
を,強制対流に関する項をF,浮力に関する項をGとすると


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JP0004797157B2_000013t.gif

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【0015】
の式を用いてレイノルズ応力を算出して,速度場の計算をし,乱流熱流束を

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【0016】
,乱流熱流束の強制対流に関する項をFt,乱流熱流束の浮力に関する項をGtとすると,

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【0017】
の式を用いて乱流熱流束を算出して,上記速度場における温度場の計算をすることを特徴とする,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定方法である. 本発明に従えば,レイノルズ応力を強制対流に関する項Fと浮力に関する項Gの和で表し,乱流熱流束を強制対流に関する項Ftと浮力に関する項Gtの和で表しているので,乱流の諸量を正確に予測することができ,かつこれらの式が重力の方向にかかわらず統一された式なのでいかなる重力方向であっても,同一式で計算し予測することが可能となる.
請求項2に記載の本発明は熱移動を伴う流れ場についての乱流の2方程式モデルを用いて,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定するコンピュータを,流れ場の温度,速度等を定める条件となる必要なデータを入力するための入力手段,入力手段によって入力されたデータに基づいて

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【0018】
の式を用いてレイノルズ応力を算出して,速度場の計算を行い,

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【0019】
の式を用いて乱流熱流束を算出して,上記速度場における温度場の計算をすることを特徴とする,乱流流れ場の速度分布,温度分布,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を求める演算手段,および演算手段によって求められた速度分布,温度分布,摩擦係数,ヌッセルト数,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値を表示する出力手段,として機能させるコンピュータによって実行可能な熱移動を伴う流れ場の速度分布,温度分布,摩擦係数,ヌッセルト数,レイノルズ応力,乱流熱流束等の特性値の推定プログラムである.本発明に従えば,コンピュータにより上記乱流諸元の推定プログラムが実行され、入力手段により,乱流諸元を生成するために必要な,たとえば,流れ場の形状,流体的及び熱的条件を特定するための諸元,格子点などの各種データが入力されると,演算手段は前記入力手段から入力されたデータに基づいて

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【0020】
の式を使って,速度場支配方程式と温度場支配方程式を解き,速度及び温度等の乱流諸元を演算し,出力手段にその演算結果を表示することができる.このようにして,出力手段に乱流の速度及び温度に関するの諸元が表示されるので,乱流の予測ツールをコンピュータ上に実現することができる.
【発明の効果】
【0021】
請求項1の本発明に従えば,レイノルズ応力を強制対流に関する項Fと浮力に関する項Gの和で表し乱流熱流速を強制対流に関する項Ftと浮力に関する項Gtの和で表しているので乱流の諸量を正確に予測することができ,かつこれらの式が重力の方向にかかわらず統一された式なのでいかなる重力方向であっても、同一式で計算し予測することが可能となる.請求項2の本発明に従えば,コンピュータにより上記乱流諸元の推定プログラムが実行され,入力手段により,乱流諸元を生成するために必要な,例えば,流れ場の形状,流体的及び熱的条件を特定するための諸元,格子点などの各種データが入力されると,演算手段は前記入力手段から入力されたデータに基づいて

JP0004797157B2_000021t.gif

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【0022】
の式を使って,速度場支配方程式と温度場支配方程式を解き,速度及び温度等の乱流諸元を演算し,出力手段にその演算結果を表示することができる.このようにして,出力手段に乱流の速度及び温度に関するの諸元が表示されるので,乱流の予測ツールをコンピュータ上に実現することができる.
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
熱移動を伴う乱流の流体的及び熱的現象は周知のレイノルズ平均化された以下の式
連続の式

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【0024】
ナビエストークスの式

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【0025】
及びエネルギー式

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【0026】
で表される.
ただし,式には,周知のBoussinesq近似が施されている.以上の式で,繰り返される添え字はテンソルの総和規約に従う.実際のケースでは,主流の温度

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【0027】
を与条件として与えると,重力加速度

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【0028】
,や流体の物性値である流体の密度

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【0029】
,粘性係数

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【0030】
,熱拡散係数

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【0031】
は既知であり,レイノルズ応力

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【0032】
と乱流熱流束

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【0033】
の値を算出できると,未知数が平均圧力

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【0034】
(1つ),平均速度ベクトル

JP0004797157B2_000034t.gif
【0035】
(3方向で3つ),平均温度

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【0036】
(1つ)の合計6つであるのに対し,式の数が連続の式(1つ),ナビエストークス式(3方向で3つ),エネルギー式(1つ)で合計6つとなり式を解くことができる.
本発明の特色とするところはこのレイノルズ応力と乱流熱流束を算出する式を物理現象を最もよく表すと見られる次の式としたところにある.レイノルズ応力を

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【0037】
,強制対流に関する項をF,浮力に関する項をGとすると

JP0004797157B2_000037t.gif

JP0004797157B2_000038t.gif

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【0038】
の式を用いてレイノルズ応力

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【0039】
を算出する.また,乱流熱流束を

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【0040】
,乱流熱流束の強制対流に関する項をFt,乱流熱流束の浮力に関する項をGtとすると,
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【0041】
の式を用いて乱流熱流束

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【0042】
を算出する.
以上の式の計算に必要な乱流エネルギー

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【0043】
,乱流エネルギー散逸率

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【0044】
,温度乱れ強度

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【0045】
,温度乱れ強度散逸率

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【0046】
の輸送方程式はそれぞれ次式で与えられる.

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【0047】
ここで,

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【0048】
は乱流エネルギーの生成項,

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【0049】
は浮力項,

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【0050】
は温度乱れ強度の生成項である.

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【0051】
の乱流拡散項については,一般化されたこう配拡散近似に基づき,以下のようにモデル化されている.

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【0052】
式中のモデル関数,およびモデル定数を以下にまとめて示す.

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【0053】
ここで,

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【0054】
は無次元距離

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【0055】
(局所レイノルズ数でもある)と乱流レイノルズ数

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【0056】
の調和平均形で定義された修正レイノルズ数である.次に式中におけるモデル関数,およびモデル定数を以下にまとめて示す.
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【0057】
ここで用いられている記号の意味するところは以下の通りである.













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【0058】
以下に具体的方法について説明する.
図1は本発明の実施の一形態である乱流の熱的・流体的諸元を求めるフローチャートである.図2は乱流の熱的・流体的諸元の推定プログラムを実行して,シュミレーションするために用いられるコンピュータ1の電気的構成を示すブロック図である.ステップa1で,コンピュータ1により当該プログラムが実行され,計算すべき流体,形状,温度等の与条件が入力手段2により入力されて初期設定される.乱流の熱的・流体的諸元の推定プログラムは記憶手段3に記憶され演算処理装置4からの実行指令によって読み出されて実行し,出力手段である表示手段5に計算結果を表示させ,乱流の熱的・流体的諸元の推定システムを構築する.
計算は流路を多数の格子状の微小体積に分割し,各微小体積で上記の各式が成り立つように未知の項を求める方式で行う.上記の各式は,実質微分D/Dtや偏微分(

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【0059】
など)を含んでいるのでこのままでは解けないのでこれらを何らかの形で近似化する必要があり,このような近似化の手法として差分法,有限要素法,有限体積法などがある.たとえば,有限体積法では各微小部分についての積分と直線近似を用いて離散化し,多元一次方程式に置き換えて計算する.これらの手法は周知である.平均圧力

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【0060】
は連続の式とナビエストークスの式から周知のSIMPLE解法等で求める.この手法も周知である.
DNSによる厳密な解との比較のために実施した例の場合について説明する.
図3に示す本形態は,一方が高温で,他方が低温である2枚の垂直平板間の乱流流れについてその熱的・流体的諸元を推定する方法について説明する.計算式は三次元の場合を記載するが,計算はDNS計算のできる,二次元の完全発達流について行うので,実質的には一次元である.計算格子は流れに直角方向に145点とした.計算手法は有限体積法によった.熱的流体的予条件はレイノルズ数150,グラスホッフ数9.6×10である.
ステップa1で初期設定すると,ステップa2で,入力された諸条件に基づいて,以上に述べた各方程式を解き乱流の解を求める計算が開始される.
まず,ステップa21でレイノルズ応力
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【0061】
を計算する.計算に必要な,式の中に現れる各項は,繰り返し算の1回目は,適当に仮定した値を用い,繰り返し算の2回目以降はそれ以前に求めた値を使うことにより計算される.計算は格子の各点について行われる.レイノルズ応力

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【0062】
が求まると,次に,ステップa22でナビエストークス式を計算し,平均速度ベクトル

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【0063】
を求める.次にステップa23で乱流エネルギー

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【0064】
,乱流エネルギー散逸率

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【0065】
を前述の輸送方程式を同様に有限体積法で解くことにより求める.さらに以上の計算の結果を使い,平均圧力を求め,その他の以降の計算のために必要な項の値を求める.ステップa24で乱流熱流束

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【0066】
の計算を既述の式を使い有限体積法で解き,その結果を用いてステップa25エネルギー式を同じく有限体積法で解き平均温度

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【0067】
を得る.次にステップa26で温度乱れ強度

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【0068】
,温度乱れ強度散逸率

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【0069】
の輸送方程式を解きこれらの値を求める.ステップa3で以上のようにして求めた平均速度ベクトル

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【0070】
,乱流エネルギー

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【0071】
,乱流エネルギー散逸率

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【0072】
,平均温度

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【0073】
,温度乱れ強度

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【0074】
,温度乱れ強度散逸率

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【0075】
らの値が収束するまで,ステップa2を繰り返す.収束すれば,乱流の熱的・流体的状態が求められる.以上の結果を用いて,工学的に必要な数値をステップa4で求めることができる.たとえば流体の圧力損失係数は壁近傍の平均速度分布から求めることができる.壁近傍の温度分布からヌッセルト数を求めることができる.
図4は本計算によって得られたレイノルズ応力の一成分

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【0076】
を実線で示し,厳密解であるDNS値を丸印で示し,従来のMKCO法によるものを破線で比較している.図5は乱流熱流束

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【0077】
について本計算結果を実線で示し,厳密解であるDNS値を丸印で示し,従来のMKCO法によるものを破線で比較している.
レイノルズ応力について,差は少ないが,乱流熱流束について,従来は算出できなかったのが,できるようになり,乱流の構造の推定が,より詳細にできるようになったことがわかる.
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように,本発明によるレイノルズ応力と、乱流熱流速のモデル式は,乱流の物理現象を従来のモデルより正確に表現し,しかも流れと重力の方向にかかわらず同じ式で計算できるので,機械の放熱設計などにおいて,実験の手間を削減し,より予測精度を上げ,摩擦係数や,ヌッセルト数を計算し,圧力損失や放熱量の正確な予測を可能とし,速やかにコンパクトで効率のよい機械を設計する手段を提供するものである.
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の一形態の乱流の熱的・流体的諸元の推定方法を示すフローチャートである.
【図2】乱流の熱的・流体的諸元の推定プログラムを実行して,乱流の熱的・流体的諸元をシュミレーションするために用いられるコンピュータの電気的構成を示すブロック図である.
【図3】一実施例である鉛直加熱冷却平板チャネル流れの形状を示す.
【図4】一実施例である鉛直加熱冷却平板チャネル流れでのレイノルズ応力の計算値のDNS値及び他のモデル例との比較を示すグラフである.
【図5】一実施例である鉛直加熱冷却平板チャネル流れでの乱流熱流束の計算値のDNS値及び他の例との比較を示すグラフである.
【符号の説明】
【0080】
1 コンピュータ
2 入力手段
3 記憶手段
4 演算処理装置
5 表示手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4