TOP > 国内特許検索 > 光学活性塩素化合物の製造方法 > 明細書

明細書 :光学活性塩素化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4644805号 (P4644805)
公開番号 特開2006-290789 (P2006-290789A)
登録日 平成22年12月17日(2010.12.17)
発行日 平成23年3月9日(2011.3.9)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 光学活性塩素化合物の製造方法
国際特許分類 C07C  67/307       (2006.01)
C07C  69/757       (2006.01)
C07D 209/34        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 67/307
C07C 69/757 Z
C07D 209/34
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2005-113068 (P2005-113068)
出願日 平成17年4月11日(2005.4.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年2月23日 国立大学法人名古屋工業大学主催の「平成16年度 修士論文発表会」において文書をもって発表
審査請求日 平成20年3月25日(2008.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】融 健
【氏名】柴田 哲男
審査官 【審査官】増永 淳司
参考文献・文献 特開2004-010555(JP,A)
特開昭55-108838(JP,A)
特開平04-230260(JP,A)
特開平08-301847(JP,A)
調査した分野 C07C 67/307
C07C 69/757
C07D 209/34
C07B 53/00
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)

R1-Xn-CO-CHR2-W

(式中Rl及びR2は,各々独立して,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基,置換基を有してもよい複素環基,換基を有してもよいアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基,置換基を有してもよいアシルオキシ基を示し,Rl及びR2のどちらかは水素原子でもよい。Xはアルキレン基,=N-H,=N-R3,=N-OH,=N-O-R4,酸素原子を示し,R3及びR4は,各独立して,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基もしくは置換基を有してもよい複素環基を示し,Wは電子吸引基を示す。nは0または1を示し,RlとR2,RlとW,またはR2とWはそれぞれ共に結合して環を形成してもよい。)

で表される化合物を,下記一般式(2)

MLrsc
(式中,Lは不斉配位子を示し,Mは遷移金属を示し,Aは水または中性配位子を示し,Dはアニオン性配位子または対アニオンを示し,rは1または2,Sは0,1,2,4,または6,Cは0,1,または2である。)

で表される不斉遷移金属錯体触媒の存在下に下記一般式(3)

RfSO2Cl
(式中,Rfはペルフルオロアルキル基を示し,Rf中のペルフルオロアルキル基とは炭素数が1から10の,水素がフッ素で置換された枝分かれがあっても良いアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。)

で表されるペルフルオロスルホニルクロリドと反応させることを特徴とする,一般式(4)

R1-Xn-CO-C*ClR2-W
(Rl,R2,X,,Wは,各々,前記と同様のものを示す)

で表される光学括性塩素化合物の製造方法。

【請求項2】
ペルフルオロアルキルスルホニルクロリド類がトリフルオロメチルスルホニルクロリドである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
不斉配位子が不斉窒素系配位子である請求項1記載の光学活性塩素素化合物の製造方法。
【請求項4】
遷移金属錯体が第8~11族の金属の錯体である請求項1記載の光学活性塩素化合物の製造方法
【請求項5】
Wがアルコキシカルポニル基,アリ-ルオキシカルポニル基,アミノカルポニル基,アシル基,ホルミル基であり,それぞれの基は置換基を有していてもよい請求項1記載の光学活性塩素化合物の製造方法。
【請求項6】
Rlが,水素原子,あるいは置換基を有していてもよい低級アルキル基,脂環族炭化水素基,芳香族炭化水素基から選ばれる基である請求項1記載の光学括性塩素化合物の製造方法。
【請求項7】
Rlが水素原子あるいは置換基を有していてもよい低級アルキル基,脂環族炭化水素基,芳香族炭化水素基から選ばれる基であり,Wがアルコキシカルポニル基,アリ-ルオキシカルポニル基,アミノカルポニル基,アシル基,ホルミル基であり,それぞれの基は置換基を有していてもよい請求項1記載の光学括性塩素化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は,特定の遷移金属錯体触媒を利用した特定の光学括性な塩素合物(以下,α-塩素化合物という)の製造方法にする。さらに詳しくは,この発明は,医薬,農薬,あるいは多くの汎用化学品の合成中間体等として有効を上記α-塩素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光学活性な有機塩素化合物の合成についていろ
いろと研究されてきた。例えば光学活性塩素化合物の製造方法として,従来,クロロコハク酸イミドなどの塩素化剤にBOX-Phなどのオキサゾリジン類の光学活性触媒と銅,ニッケル,亜鉛などの金属錯体,あるいはプロリンやキナアルカロイド誘導体などを用いて,対応するカルボアニオン化合物に反応させることにより,光学活性な塩素炭素結合を有するクロロアルキルカルボニル化合物を製造する方法が知られている((a) Hintermann, L.; Togni, A. Helv. Chim. Acta 2000, 83, 2425. (b) Wack, H.; Taggi, A. E.; Hafez, A. M.; Drury, W. J., III.; Lectka, T. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 1531. (c) Marigo, M.; Kumaragurubaran, N.; Jorgensen, K. A. Chem. Eur. J. 2004, 10, 2133. (d) Brochu, M. P.; Brown, S. P.; MacMillan, D. W. C. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 4108. (e) Halland, N.; Braunton, A.; Bachmann, S.; Marigo, M.; Jorgensen, K. A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 4790. (f) Zhang, Y.; Shibatomi, K.; Yamamoto, H. J. Am. Chem. Soc, 2004, 126, 15038.)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし,これらの方法では生成するクロロアルキル化合物の不斉収率が低い点で問題があり,また適応可能な化合物の汎用性が低く,これらの方法では光学活性なクロロアルキル化合物誘導体を合成することは非常に困難である。
【0004】
そこで本発明の課題は,汎用性のある化合物を用いて光学純度が優れた光学括性α-塩素化合物を製造することである。すなわち,塩素化剤にこれまで不斉合成に使用されたことのなかったペルフルオロアルキスルホニルクロリド類を用い,一般的に使用される光学活性な不斉配位子の金属錯体存在下で,光学純度が高い光学括性α-塩素化合物を製造することである。また,一般性が高く,しかも安価で汎利生のある化合物を基質とし,光学活性なα-塩素化合物を効率よく,高活性で,高選択的に製造するための方法を掟供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果,一般に使用される不斉遷移金属錯体触媒の存在下で,ペルフルオロルキルスルホニルクロリド類を使用するとさまざまな基質で反応が円滑に進行し,効率よく光学活性なα-塩素化合物を得ることができるという知見を得た。そして,更に研究を重ね遂に本発明を完成させた。

即ち,本発明は,一般式(1)
1ー-CO-CHR2-W
(式中Rl及びR2は,各々独立して,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基,置換基を有してもよい複素環基,置換基を有してもよいアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基,置換基を有してもよいアシルオキシ基を示し,Rl及びR2のどちらかは水素原子でもよい。Xはアルキレン基,=N-H,=N-R3,=N-OH,=N-O-R4,酸素原子を示し,R3及びR4は,各々独立して,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基もしくは置換基を有してもよい複素環基を示し,Wは電子吸引基を示す。nは0または1を示し,R1とR2,RlとW,またはR2とWはそれぞれ共に結合して環を形成してもよい。)
で表される化合物を,下記一般式(2)
MLrsc
(式中,Lは不斉配位子を示し,Mは遷移金属を示し,Aは水または中性配位子を示し,Dはアニオン性配位子または対アニオンを示し,rは1または2,Sは0,1,2,4,または6,Cは0,1,または2である。)
で表される不斉遷移金属錯体触媒の存在下に,下記一般式(3)
RfSO2Cl
(式中,Rfはペルフルオロアルキル基を示し,Rf中のペルフルオロアルキル基とは炭素数が1から10の,水素がフッ素で置換された枝分かれがあっても良いアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。)
で表されるペルフルオロスルホニルクロリドと反応させることを特徴とする,一般式(4)
R1-Xn-CO-C*ClR2W
(Rl,R2,X,,Wは,各々,前記と同様のものを示す)
で表される光学活性塩素化合物の製造方法,該不斉配位子が不斉窒素系配位子または不斉ホスフィン配位子である上記光学活性塩素化合物の製造方法,該ペルフルオロアルキルスルホニルクロリド類がトリフルオロメチルスルホニルクロリドである上記光学活性塩素化合物の製造方法,
遷移金属錯体が第8~11族の金属の錯体である上記光学括性塩素化合物の製造方法,一般式(1)で表される化合物におけるWが,アルコキシカルポニル基,アリ-ルオキシカルポニル基,アミノカルポニル基,アシル基,ホルミル基であり,それぞれ置換基を有していてもよい上記光学活性塩素化合物の製造方法,一般式(1)におけるRlが,置換基を有していてもよい低級アルキル基,脂環族炭化水素基,芳香族炭化水素基から選ばれる基である上記光学括性塩素化合物の製造方法,一般式(1)で表される化合物におけるRlおよびWが上記特定の官能基である上記光学括性塩素化合物の製造方法を提供する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下,本発明を詳述する。
まずこの発明における出発原料,あるいは基質となる一般式(1)記載の化合物を説明する。この一般式(1)において,Rl及びR2は,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基,置換基を有してもよい複素環基,置換基を有してもよいアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基,置換基を有してもよいアシルオキシ基を示し,Rl及びR2のどちらかは水素原子でもよい。
R3及びR4は,各々,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基または置換基を有してもよい複素環基を示し,Wは電子吸引基を示す。nは0または1を示し,RlとR2,R1とW,R2とWはそれぞれ共に結合して環を形成してもよい。
上記,置換基を有してもよい鎖状または環状の炭化水素基は,脂肪族,脂環族,芳香族の飽和または不飽和の炭化水素基,あるいは置換基を持つこれらの各種の基であってよい。具体的には,例えばアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリ-ル基,シクロアルキル基,シクロアルケニル基等の炭化水素基が挙げられ,これら炭化水素基には,さらにアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリ-ル基,シクロアルキル基,アシル基,アルコキシ基,アルコキシカルポニル基,アシルオキン基,ハロゲン原子,ニトロ基,シアノ基等の許容される各種置換基を有していてもよい。
一般式(1)での化合物におけるに,RlとR2,RlとW,またはR2とWはそれぞれ共に結合して形成される環としては炭素環,あるいは複素環を例示することができる。この炭素環,あるいは複素環上にアルキル基,ハロゲン原子,ニトロ基,アミノ基(アシル基,アルキル基,シクロアルキル基等を有していてもよい),シアノ基,ヒドロキシル基,カルポキシル基,カルバモイル基,アリ-ル基,アルコキシ基,アラルキル基等の許容される各種置換基を有してもよい。
また,電子吸引基とは,水素原子と比べて,結合原子側から電子をひきつけやすい基を示す。例えばホルミル基,アシル基,シアノ基,アシルオキシ基,アミド基,ニトロ基,ニトロソ基,イミノ基,スルフリル基,スルフリルアミド基などが挙げられる。本発明においては,これら電子吸引基は置換基を有していてもよいが,電子吸引基が置換基を有する例として,上記電子吸引基を含む,アルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリ-ル基,シクロアルキル基,アルコキシ基,アルコキシカルポニル基,アシルオキシ基等を示すことができる。
本発明では一般式(1)で表される化合物において,Wとして,アルコキシカルポニル基,アリ-ルオキシカルポニル基,アミノカルポニル基,アシル基,ホルミル基およびそれら電子吸引基を含むアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリ-ル基,シクロアルキル基が好ましい。
また,本発明では一般式(4)で表される化合物において,Rf中のペルフルオロアルキル基とは炭素数が1から10の,水素がフッ素で置換された枝分かれがあっても良いアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。前記一般式(4)のペルフルオロアルキルスルホニルクロリド類としてトリフルオロメチルスルホニルクロリド,ペンタフルオロエチルスルホニルクロリドやヘプタフルオロプロピルスルホニルクロリドが例示でき,その使用量はカルボニル化合物に対して理論量以上であれば特に限定されるものではないが,好ましくはカルボニル化合物1モルに対して,1~10モルであり,さらに好ましくは1.1~2モルである。
本発明における不斉配位子としては光学活性窒素配位子,光学活性ホスフィン系配位子等が挙げられ,また,二座不斉配位子あるいは単座不斉配位子が好ましい。さらに好ましくは光学括性二座ホスフィン配位子や,光学活性ビスオキサゾリン配位子(DBFOX-Ph, Box-Ph),光学括性ジアミン配位子,光学括性ビスビリジン配位子などの光学活性窒素系配位子等が挙げられる。
光学括性ビスオキサゾリン配位子としては,
BOX:2,2,-ビス[4-t e r t-プチル]オキサゾ-ル-2-イル]-1,1'-ビナプチル,2,2'-ビス[4-イソプロピル]オキサゾ-ル-2-イル]-1,1'-ビナフテル,2,2'-ビス[4一フユニル]オキサゾ-ル-2-イル]-1,1'-ビナプチル,2,2,-ビス[4-ベンジル]オキサゾ-ル-2-イル]-1,1'-ビナプチル,2,2-ビス[2-[4-フユニル-1,3-オキサゾリニル]]プロパン,
DBFOX: 4,6-ジベンゾフランジイル-2,2'-ビス(4-フユニルオキサゾリン),2,2'-イソプロビリデンビス(4-フユニルオキサゾリン),
光学括性二座ホスフィン配位子の具体例としては,
BINAP:2,2,-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナプチル,およびBINAPのナフテル環にアルキル基ヤアリ-ル基等の置換基を持つBINAP誘導体,例えばH8-BINAP,BINAPのリン原子上ベンゼン環1個につきアルキル基置換基を1~5個有するBINAP誘導体,例えば,T01i-BINAP:2,2,-ビス-(ジ-p-トリルホスフィノ)-1,1'-ビナフテル,キシリル-BINAP:2,2,-ビス[ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ]-1,1'一ビナフテル,BICHEP:2,2'ルビス-(ジシクロへキシルホスフィノ)-6,6-ジメチル-1,1,-ビナフテル,BPPFA :l-[1',2-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセニル)エチルジアミン,CHIRAPHOS:2,3-ビス-(ジフェニルホスフィノ)ブタン,CYCPHOS :l-シクロへキシル-1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン,DEGPHOS: l一置換-3,4-ビス-(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン,DIOP: 2,3-0-イソプロビリテン-2,3-ジヒドロキシ-1,4-ビス-(ジフェニルホスフィノ)ブタン,DIPAMP: l,2-ビス[(0-メトキシフェニル)フユニルホスフィノ]エタン,Delphos:(置換-1,2-ビス(ホスホラノ)ベンゼン),NORPHOS:5,6-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-2-ノルポルネン,PNNP: N,N,-ビス-(ジフェニルホスフィノ)一N, N'-ビス[1-フユニル]エチレンジアミン,PROPHOS :l,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)プロパン,SKEWPHOS:2,4-ビス-(ジフェニルホスフィノ)ペンタンなどが挙げられる。

が例示でき,その使用量はカルボニル化合物に対して特に限定されるものではないが,好ましくは,カルボニル化合物1モルに対して,0.01~10モルであり,さらに好ましくは0.1~0.3モルである。
下記一般式(2)
MLrsc
(2)中の遷移金属は8~11族の元素から選ばれる。例えばAu,Ag,Cu,F e,C o,Ir,Ni,Pd,Ru,Rh,P tから挙げられるが,そのなかでもIr,Cu, Ni,Pd,Ru,Rh,P tが好ましい。またアニオン性配位子のDとしてはOAc ,ClO4,OSO2CF3, Cl,SO4などが挙げられる。
本発明において,必要なら溶媒が用いられる。使用できる溶媒は,ジクロロメタン,ジブロモメタン,クロロホルム,ブロモホルム,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン,1,1,2-トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,ジメチルエ-テル,ジエチルエ-テル,t-ブチルメチルエ-テル,1,4-ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエ-テル類,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類,ジメチルホルムアミド(DMF)やアセトニトリルなどの極性溶媒等が挙げられる。これらのうち,好ましくは,ジクロロメタン,ジエチルエ-テル,t-ブチルメチルエ-テル,テトラヒドロフランまたはトルエンである。
反応温度は,特に限定されるものではないが,通常-40~100℃であり,より好ましくは-20~60℃である。攪拌速度は,攪拌が十分行われるように適宜選択される。反応時間は,特に限定されるものではないが,通常1~24時間で反応は完結する。この反応液から,定法により所望の光学活性な反応生成物を得ることができる。

【0007】
以下,実施例により本発明を具体的に説明するが,もとより本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。以下に,実施例,比較例に用いた化合物の名称とその略号を示す。
【実施例1】
【0008】
【化1】
JP0004644805B2_000002t.gif

【0009】
Ni(ClO4)2・6H2O (2.3 mg, 0.0064 mmol, 10 mol%), DBFOX-Ph (3.3 mg, 0.0071 mmol 11 mol%)を入れ, 減圧した後, MS4Å (32.0 mg)入れ10分撹拌した。CH2Cl2 (1.0 ml)入れ, 1 h撹拌した。1-インダノン-2-カルボン酸アダマンチル(19.8 mg, 0.063 mmol, 1.0 equiv.), CH2Cl2 (2.0 ml)を入れ, 30分撹拌した。 トリフルオロメタンスルホニルクロリド (13.0 mg, 0.077 mmol, 1.2 equiv.)を入れ, 室温で撹拌した。17時間後, 炭酸水素ナトリウム水溶液, brineで抽出し, 硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮後, プレパラTLC (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し, 収率85 % (18.7 mg), 97% eeで上記構造式で示される 2-クロロ-1-インダノン-2-カルボン酸アダマンチルを得た。
分子式 C21H25ClO3
M.W.: 360.87
Rf=0.41 (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)
1H-NMR (CDCl3, 200MHz) δ: 1.62 (s, 6H), 2.05 (s, 6H), 2.14 (s 3H), 3.77 (dd, 2H, J=17.6, ν=80.8 Hz), 7.46 (d, 2H, J = 7.0 Hz), 7.67 (t, 1H, J = 7.5Hz), 7.83 (d, 1H, J = 7.2 Hz)
HPLC (AD-H 2連結, hexane:2-propanol=99:1, 0.5 ml/min, 254 nm, tR=40.4 min (major, +体), 48.0 min (minor, -体))
[α]D24 +19.2 (c 1.00, CHCl3) (97% ee)
IR (neat) 2911, 2853, 1754, 1731, 1606, 1590 cm-1
EIMS m/z 345 (M+), 346(M++1)

【実施例2】
【0010】
【化2】
JP0004644805B2_000003t.gif



【0011】
Ni(ClO4)2・6H2O (4.4 mg, 0.012 mmol, 10 mol%), DBFOX-Ph (6.1 mg, 0.013 mmol, 11 mol%)を入れ, 減圧した後, MS4Å (60.1 mg)入れ10分撹拌した。CH2Cl2 (1.0 ml)入れ, 1 h撹拌した。1-インダノン-2-カルボン酸t-ブチル(27.9 mg, 0.12 mmol, 1.0 equiv.), CH2Cl2(2.0 ml)を入れ, 30分撹拌した。 トリフルオロメタンスルホニルクロリド(24.3 mg, 0.144 mmol, 1.2 equiv.)を入れ, 室温で撹拌した。17時間後, 炭酸水素ナトリウム水溶液, brineで抽出し, 硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮後, プレパラTLC (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し, 収率72 % (23.0 mg), 97% eeで上記構造式で示される 2-クロロ-1-インダノン-2-カルボン酸t-ブチルを得た。
分子式 C14H15ClO3
M.W.: 266.72
Rf=0.38 (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)
1H-NMR (CDCl3, 200MHz) δ: 1.36 (s, 1H), 3.45 (d, 2H, J=17.6), 3.93(d, 2H, J=17.8), 7.34-7.41 (m, 2H), 7.57-7.64 (m, 1H), 7.75-7.78 (m, 1H)
HPLC (OJ-H 2連結, hexane:2-propanol=70:30, 0.5 ml/min, 254 nm, tR=26.8 min (major, +体), 32.7 min (minor, -体))
[α]D24 +25.4 (c 0.34, CHCl3) (97% ee)
IR (KBr) 3427, 2978, 2931, 1752, 1720, 1604, 1589 cm-1
EIMS m/z 266 (M+), 267(M++1)

【実施例3】
【0012】
【化3】
JP0004644805B2_000004t.gif

【0013】
Ni(ClO4)2・6H2O (3.4 mg, 0.0093 mmol, 10 mol%), DBFOX-Ph (4.7 mg, 0.010 mmol, 11 mol%)を入れ, 減圧した後, MS4Å (46.5 mg)入れ10分撹拌した。CH2Cl2 (1.0 ml)入れ, 1 h撹拌した。1-インダノン-2-カルボン酸 (-)-メンチル(29.2 mg, 0.093 mmol, 1.0 equiv.), CH2Cl2 (2.0 ml)を入れ, 30分撹拌した。 トリフルオロメタンスルホニルクロリド (14.7 mg, 0.139 mmol, 1.2 equiv.)を入れ, 室温で撹拌した。17時間後, 炭酸水素ナトリウム水溶液, brineで抽出し, 硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮後, プレパラTLC (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し, 収率66 % (21.3 mg), 94% deで上記構造式で示される 2-クロロ-1-インダノン-2-カルボン酸 (-)-メンチルを得た。
分子式 C20H25ClO3
M.W.: 348.86
Rf=0.64 (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)
1H-NMR (CDCl3, 200MHz) δ: 0.71 (d, 3H, J=7.4 Hz), 0.83 (d, 3H, J=7.0 Hz), 0.89 (d, 3H, J=6.6 Hz), 1.00-1.78 (m, 8H), 2.02 (AB q, 1H, J=17.9 Hz, ν=80.4 Hz), 4.73 (td, 1H, J=10.9, 4.5 Hz), 7.42-7.30 (m, 2H), 7.68 (t, 1H, J=7.4 Hz), 7.85 (d, 1H, J=7.2 Hz)
HPLC (OJ-H 2連結, hexane:2-propanol=98:2, 0.3 ml/min, 254 nm, tR=67.3 min (minor, -体), 85.3 min (major, +体))
[α]D25 -21.5 (c 0.28, CHCl3) (94% de)
IR (neat) 2956, 2932, 2862, 1734, 1606, 1465 cm-1
EIMS m/z 348 (M+), 349 (M++1)
【実施例4】
【0014】
【化4】
JP0004644805B2_000005t.gif


【0015】

Ni(ClO4)2・6H2O (2.3 mg, 0.0062 mmol, 10 mol%), DBFOX-Ph (3.1 mg, 0.0068 mmol, 11 mol%)入れ, 減圧した後, MS4Å(32.0 mg)入れ10分撹拌した。CH2Cl2 (1.0 ml)入れ, 1 h撹拌した。1-テトラロン-2-カルボン酸アダマンチル(20.8 mg, 0.064 mmol, 1.0 equiv.), CH2Cl2 (2.0 ml)を入れ, 30分撹拌した。トリフルオロメタンスルホニルクロリド(12.0 mg, 0.074 mmol, 1.2 equiv.)を入れ, 室温で撹拌した。45時間後, 炭酸水素ナトリウム水溶液, brineで抽出し, 硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮後, プレパラTLC (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し, 収率62 % (14.2mg), 98% ee (原料回収差し引いた収率71 %)で上記構造式で示される 2-クロロ-1-テトラロン-2-カルボン酸アダマンチルを得た。
分子式 C22H27ClO3
M.W.: 358.16
Rf=0.5 (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)
1H-NMR (CDCl3, 200MHz) δ: 1.62-1.65 (m, 5H), 2.04-2.16 (m, 10H), 2.45-2.57 (m, 1H), 2.90-3.08 (m, 2H), 3.15-3.35 (m, 1H), 7.23-7.38 (m, 2H), 7.48-7.52 (m, 1H), 8.05-8.10 (m, 1H)
HPLC (AD-H 2連結, hexane:2-propanol=99:1, 1.0 ml/min, 254 nm, tR=29.1 min (major, +体), 34.7 min (minor, -体))
[α]D26 +4.89 (c 0.21, CHCl3) (98% ee)
IR (neat) 2915, 2850, 1752, 1692, 1600 cm-1
EIMS m/z 358 (M+), 359 (M++1)
【実施例5】
【0016】
【化5】
JP0004644805B2_000006t.gif


【0017】
Ni(ClO4)2・6H2O (1.2 mg, 0.0048 mmol, 10 mol%), DBFOX-Ph (2.4 mg, 0.0053 mmol, 11 mol%)入れ, 減圧した後, MS4Å (24 mg)入れ10分撹拌した。tBuOMe (1.0 ml)入れ, 1 h撹拌した。2-オキソ-3-フェニルインドリン-1-カルボン酸t-ブチル(14.1 mg, 0.046 mmol, 1.0 equiv.), tBuOMe (2.0 ml)を入れ, 30分撹拌した。トリフルオロメタンスルホニルクロリド(9.8 mg, 0.058 mmol, 1.2 equiv.)をtBuOMe (1.0 ml)に溶解し, シリンジポンプを使って2時間かけて滴下した後, 室温で撹拌した。19時間後, 炭酸水素ナトリウム水溶液, brineで抽出し, 硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮後, シリカゲルカラムクロマトグラフィー (フラッシュシリカゲル 6.0 g, ヘキサン:酢酸エチル =95:5)で精製し, 収率93 % (14.6 mg), 61% eeで上記構造式で示される 3-クロロ-2-オキソ-3-フェニルインドリン-1-カルボン酸t-ブチルを得た。
分子式 C19H18ClNO3
M.W.: 343.80
Rf=0.61 (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)
1H-NMR (CDCl3, 200MHz) δ: 1.62 (s, 9H), 7.22-7.52 (m, 8H), 7.95-7.99 (m, 1H)
HPLC (OJ-H, hexane:2-propanol=90:10, 0.25 ml/min, 254 nm, tR=35.0 min (minor, +体), 44.0 min (major, -体))
[α]D24 -81.9 (c 0.18, CHCl3) (61% ee)
IR (neat) 3059, 2981, 2933, 1779, 1738, 1606 cm-1
EIMS m/z 343(M+), 344 (M++1)
【実施例6】
【0018】
【化6】
JP0004644805B2_000007t.gif

【0019】
Ni(OAc)2・4H2O (1.5 mg, 0.0060 mmol, 10 mol%), DBFOX-Ph (3.1 mg, 0.0068 mmol, 11 mol%)入れ, 減圧した後, MS4Å (22.9 mg)入れ10分撹拌した。tBuOMe (1.0 ml)入れ, 1 h撹拌した。N-tert-ブチル-3-クロロ-3-(2-クロロ-5-メトキシフェニル)-6-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オン(18.0 mg, 0.041 mmol, 1.0 equiv.), tBuOMe (2.0 ml)を入れ, 30分撹拌した。トリフルオロメタンスルホニルクロリド(9.2 mg, 0.054 mmol, 1.2 equiv.)を入れ, 室温で撹拌した。17時間後, 炭酸水素ナトリウム水溶液, brineで抽出し, 硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮後, シリカゲルカラムクロマトグラフィー (フラッシュシリカゲル 6.7 g, ヘキサン:酢酸エチル =95:5)で精製し, 収率93 % (18.0 mg), 60% eeで上記構造式で示される N-tert-ブチル-3-クロロ-3-(2-クロロ-5-メトキシフェニル)-6-(トリフルオロメチル)インドリン-2-オンを得た。
分子式 C21H18Cl2F3NO4
M.W.: 476.27
Rf=0.79 (ヘキサン:酢酸エチル=8:2)
1H-NMR (CDCl3, 200MHz) δ: 1.62 (s, 9H), 7.22-7.52 (m, 8H), 7.95-7.99 (m, 1H)
HPLC (OJ-H, hexane:2-propanol=98:2, 0.50 ml/min, 254 nm, tR=13.1 min (major, +体), 16.1 min (minor, -体)).
IR (KBr) 2974, 2927, 1777, 1745, 1486, 1439 cm-1
EIMS m/z 475 (M+), 476 (M++1)

【0020】
本発明により,これまで不斉合成に使用されたことのなかったペルフルオロアルキスルホニルクロリド類を用い,ビスオキサゾリン型不斉配位子の遷移金属錯体の存在下に,汎用性の高い基質から,光学純度が高い光学括性α-塩素化合物を製造する方法が提供された。この光学活性なα-塩素化合物は,様々な用途があるが,特に医農薬や機能性材料の合成中期体として有効である。