TOP > 国内特許検索 > 放電加工方法及び放電加工装置 > 明細書

明細書 :放電加工方法及び放電加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5124762号 (P5124762)
公開番号 特開2007-038391 (P2007-038391A)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月23日(2013.1.23)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
発明の名称または考案の名称 放電加工方法及び放電加工装置
国際特許分類 B23H   1/00        (2006.01)
B23H   1/08        (2006.01)
FI B23H 1/00 A
B23H 1/08
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2005-331253 (P2005-331253)
出願日 平成17年11月16日(2005.11.16)
優先権出願番号 2005199015
優先日 平成17年7月7日(2005.7.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年10月21日(2008.10.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】早川 伸哉
【氏名】須藤 優美香
【氏名】大宮 健司
【氏名】中村 隆
【氏名】糸魚川 文広
審査官 【審査官】山崎 孔徳
参考文献・文献 再公表特許第2002/102538(JP,A1)
再公表特許第2002/040209(JP,A1)
特開2001-105239(JP,A)
実開昭50-044794(JP,U)
調査した分野 B23H 1/00 - 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
放電加工において液中加工の状態から気中加工の状態へ加工を継続したまま徐々に移行させることを特徴とする放電加工方法。
【請求項2】
液中放電によって加工液が気化・分解して生じる気泡を工具電極、工作物及び放電加工装置のいずれかに取り付けた容器により捕集し、当該容器内に気泡が溜まることによって当該容器内の液面が低下することで液中加工から気中加工へ移行させることを特徴とする請求項1記載の放電加工方法。
【請求項3】
具電極、工作物及び放電加工装置のいずれかに取り付けた捕集容器に不活性ガスや窒素などの気体を供給して当該容器内の液面を低下させることで液中加工から気中加工へ移行させることを特徴とする請求項1記載の放電加工方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の放電加工方法を実施するのに用いる放電加工装置であって、工具電極を工作物と対向させて加工液中に設置し、当該工具電極、工作物及び放電加工装置のいずれかがガスを捕集するための容器を備え、前記容器の下縁が放電面より下に位置していることを特徴とする放電加工装置。
【請求項5】
請求項4の放電加工装置において、ガスを捕集するための容器内に外部から不活性ガスや窒素などの気体を供給する装置を備えたことを特徴とする請求項4記載の放電加工装置。
【請求項6】
加工槽内の加工液中に工具電極を工作物と対向させて設置し、当該加工槽内の加工液を排出して液面を低下させることで液中加工から気中加工へ移行させることを特徴とする請求項1記載の放電加工方法
【請求項7】
工液が純水であることを特徴とする請求項又は6記載の放電加工方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工方法及び放電加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電加工では通常は油や水などの加工液中でパルス放電を発生させることで除去加工が行われる.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の放電加工では、加工面の表面粗さを小さくするにはパルス放電の放電電流値と放電持続時間を小さくして仕上げ加工を行う必要があるため,加工に長時間を要するという問題点があった.また、加工面の様子が本件技術の場合と類似している加工方法として吹きかけ加工と呼ばれる方法があるが,その方法は火災の危険があるため現在は火災予防条例で禁止されている.
解決しようとする問題点は,加工面の表面粗さを小さくするための仕上げ加工に長時間を要する点である.
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明の放電加工方法は、液中加工の状態から気中加工の状態へ加工を継続したまま徐々に移行させることを特徴としており、液中加工から気中加工に移行するとパルス放電のプラズマの状態が変化し,そのことが放電加工機の主軸制御に反映されるため,工具電極と工作物の距離(極間距離)が増大する。気中放電になったことと極間距離が増大したことで放電中のプラズマの直径が増大し,工作物に流入する熱流束が小さくなるため,放電点で工作物材料が溶融する形状は液中放電の場合よりも広く浅くなる。気中放電になったことと極間距離が増大したことはまた,放電点の溶融部を除去する作用(放電衝撃力)を小さくする。したがって,工作物の放電点では広く浅く溶融した材料が除去されずに再凝固するため,表面粗さが小さくなるものである。
【0005】
第2の発明の放電加工方法は、液中放電によって加工液が気化・分解して生じる気泡を工具電極、工作物及び放電加工装置のいずれかに取り付けた容器により捕集し、当該容器内に気泡が溜まることによって当該容器内の液面が低下することで液中加工から気中加工へ移行させることを特徴とする。このようにして、第1の発明の特徴である、液中加工の状態から気中加工の状態へ移行させる放電加工方法を行うものである。
【0006】
第3の発明の放電加工方法は、第1発明の放電加工方法において、工具電極、工作物及び放電加工装置のいずれかに取り付けた捕集容器に不活性ガスや窒素などの気体を供給して当該容器内の液面を低下させることで液中加工から気中加工へ移行させることを特徴とする。このようにして、第1の発明の特徴である、液中加工の状態から気中加工の状態へ移行させる放電加工方法を行うものである。第4の発明の放電加工装置は、工具電極を工作物と対向させて加工液中に設置し、当該工具電極、工作物及び放電加工装置のいずれかがガスを捕集するための容器を備え、容器の下縁が放電面より下に位置していることを特徴とする。この装置により上記の第1~3の発明の放電加工方法を行うものである。第5発明の放電加工装置は、第4発明の放電加工装置において、ガスを捕集するための容器内に外部から不活性ガスや窒素などの気体を供給する装置を備えていることを特徴とする。第6の発明の放電加工方法は、加工槽内の加工液中に工具電極を工作物と対向させて設置し、当該加工槽内の加工液を排出して液面を低下させ放電加工を行うことを特徴とする。第1~5の発明の放電加工方法および放電加工装置では火災防止のため放電点に酸素が存在しないようにするために捕集容器を用いていたが、加工液に純水を用いる場合は酸素が存在しても火災は発生しないため、捕集容器を用いる必要もない。つまり、第6の発明のように加工中に加工槽内の加工液を排出して液面を低下させるだけで安全に気中加工へ移行させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により放電加工面の表面粗さが短時間で小さくなる効果がある。加工液として純水を用いる場合は加工液に起因する,火災も防止できる。
【0008】
本発明により加工面の溶融再凝固層の厚さが加工面全体にわたって均一になる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施例1,2及び3を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、第1,2及び第4の発明の実施例の説明図である。発生ガス5を捕集するための容器4を取り付けた工具電極1を工作物2と対向させて設置し,捕集容器4内に加工液3を満たした状態から加工を開始する。はじめは加工液3中でのパルス放電が続くため,加工液が気化・分解したガス5が容器4内に溜まることで容器内の液面が徐々に低下していく。液面が放電面に達すると気中放電に移行してそれ以降はガスが発生しなくなるため,液面はその高さで安定する。その状態で加工を継続する。実験は突合せ加工で行い,荒加工のパルス条件を選定した.加工条件を表1に示す。
【0011】
【表1】
JP0005124762B2_000002t.gif


【0012】
図2は、表1に示す加工条件で加工した場合の加工面の表面粗さを測定した結果を示す図である。本発明の方法(図2中では気液界面放電加工と称している)では気中加工の状態に移行してから1分間だけ加工を行った。次に,液中放電加工と気液界面放電加工の加工面の比較をするために、液中放電加工の加工面を図3の(a)に、気液界面放電加工の加工面を図3の(b)に示す。ここで,気液界面放電加工の試片は,液面が放電面に達したときから60秒後の状態である。両図から気液界面放電加工を行った場合には放電面全体に光沢があることがわかる。また,液中放電加工の場合は一つ一つの放電痕が識別できるのに対して気液界面放電加工では判別することができない。次に,液中放電加工による放電面の断面の金属組織を観察した結果を図4の(a)に示す。また、気液界面放電加工
による放電面の断面の金属組織を観察した結果を図4の(b)に示す。両図中の白く見える層は一度溶融して再凝固した部分である。両図から,液中放電加工の溶融再凝固層は,表面の凹凸が激しいのに対し,気液界面放電加工の溶融再凝固層は表面が滑らかであことがわかる。また,気液界面加工の溶融再凝固層は放電面全体にわたって厚さが均一であることが確認できた。
気液界面加工の特徴は次の通りである。
・ 荒加工の条件で加工を行っても短時間で表面粗さが小さくなる。表1の条件の場合,液中加工の中心線平均粗さRaが約15μmであるのに対し気液界面加工は約5μmになる。
・ 液中加工の加工面は1つ1つの放電痕が識別できるのに対して,気液界面加工の場合は識別できない。
・ 加工面全体に光沢がある。
・ 白層厚さが一様である。
【実施例2】
【0013】
図5は、第3、5及び7の発明の実施例の説明図である。気液界面で放電している状態から不活性ガスや窒素などの気体を外部から供給することで液面をさらに下げても同様な加工結果を得ることができた.したがって,気液界面で放電させることが必ずしも必要ではなく,液中放電から気中放電へ移行させることにより,上で述べたような特徴的な加工面が得られる.
また、純水を加工液として気液界面放電加工を行う場合,水素と酸素が発生して爆発する危険があるため,前記実施例1で示した図1の方法及び装置をそのまま用いることはできない.そこで図1のように放電により発生するガスを溜めるのではなく,図5に示すように捕集容器内に外部から不活性ガスや窒素などの気体をガスボンベなどから供給し注入することで容器内の液面を低下させ放電加工を行う.前記のように液面が放電面より低下しても構わないため,液面が十分に低下するまで外部から該気体を急速に注入することで,安全に気液界面放電加工を行うことができる.
【実施例3】
【0014】
図6は、第6及び7の発明の実施例の説明図である。前記実施例1の図1では放電点に酸素が存在しないようにするために捕集容器を用いていた.しかし,加工液に純水を用いる場合は酸素が存在しても火災は発生しないため,捕集容器を用いる必要もない.つまり,図6で示すように加工中に加工槽内の加工液を排出して液面を低下させるだけで安全に気液界面放電加工が行える.加工液に純水を用いた場合,表1のパルス条件では気液界面加工に特有な加工面が部分的にしか得られなかったが,その原因は気中放電の不安定性にあり,さらにその原因としてパルス条件が適切でなかった可能性が考えられる.そこで,パルス条件を様々に変化させて加工を行い,気中放電に移行後の加工の安定性を調べた.多くのパルス条件では気中放電は不安定であり,加工面は一様にならなかったが,放電持続時間と休止時間が短い表2のパルス条件で加工したときは,均一な加工面を得ることができた.純水を用いて表2のパルス条件で加工した場合について,液中加工と気液界面加工の工作物加工面の比較を図7に示す.ここで,気液界面加工の試片は,気中放電へ移行後120秒間加工したときの結果である.図7から,液中加工の加工面は放電痕が識別できるのに対し,気液界面加工の加工面は放電痕が識別できず,また一様に白くなっていることがわかる.次に,図7の場合について液中加工と気液界面加工の加工面の表面粗さを測定した結果を図8に示す.ここでは一様な加工面が得られたため中央部と周辺部を分けずに表面粗さを測定した.図8より,この場合も液中加工と気液界面加工の加工面の表面粗さは同程度であることがわかる.気中放電の不安定さはやや改善したものの解消するまでには至らず,極間距離の増大もなかったため,表面粗さの低下がみられなかったことがいえる.
【0015】
【表2】
JP0005124762B2_000003t.gif


【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1,2及び第4の発明の実施例の説明図である。
【図2】表1に示す加工条件で加工した場合の加工面の表面粗さを測定した結果を示す図である。
【図3】液中放電加工と気液界面放電加工の加工面の比較をするために、液中放電加工の加工面を図3の(a)に、気液界面放電加工の加工面を図3の(b)に示す図である。
【図4】液中放電加工による放電面の断面の金属組織を観察した結果を図4の(a)に示し、また、気液界面放電加工による放電面の断面の金属組織を観察した結果を図4の(b)示す図である。
【図5】図5は、第3、5及び7の発明の実施例の説明図である。
【図6】第6及び7の発明の実施例の説明図である。
【図7】純水を用いて表2のパルス条件で加工した場合の液中加工と気液界面加工の工作物加工面の比較を示す図である。
【図8】図7の場合について液中加工と気液界面加工の加工面の表面粗さを測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 工具電極
2 工作物
3 加工液
4 捕集容器
5 発生ガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7