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明細書 :血栓検知方法及びこれを利用した血栓観察装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4461254号 (P4461254)
公開番号 特開2006-247200 (P2006-247200A)
登録日 平成22年2月26日(2010.2.26)
発行日 平成22年5月12日(2010.5.12)
公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
発明の名称または考案の名称 血栓検知方法及びこれを利用した血栓観察装置
国際特許分類 A61M   1/14        (2006.01)
A61B  10/00        (2006.01)
A61M   1/36        (2006.01)
G01M  19/00        (2006.01)
G01N  21/49        (2006.01)
FI A61M 1/14 530
A61M 1/14 553
A61B 10/00 K
A61M 1/36 500
G01M 19/00 Z
G01N 21/49 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2005-069531 (P2005-069531)
出願日 平成17年3月11日(2005.3.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年9月15日 日本人工臓器学会発行の「人工臓器 第33巻 第2号〈第42回大会予稿集〉」に発表
審査請求日 平成20年2月22日(2008.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】末田 泰二郎
【氏名】黒崎 達也
個別代理人の代理人 【識別番号】100121795、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴亀 國康
審査官 【審査官】川島 徹
参考文献・文献 特開2002-345787(JP,A)
特開2000-009740(JP,A)
特開平10-090158(JP,A)
黒崎達也、外6名,医療材料抗血栓性の新しい評価方法-人工臓器内での血液凝固の可視化の試み-,人工臓器,日本,日本人工臓器学会,2003年 9月15日,第32巻,第2号,p.S-66
黒崎達也、外6名,医療材料抗血栓性の新しい評価方法-血栓形成の可視化の試み-,日本血栓止血学会誌 ,日本,2004年10月 1日,第15巻,第5号,p.459
黒崎達也,佐藤克敏,宮崎政則,渡橋和政,二宮伸治,福永信太郎,末田泰二郎 ,医療材料抗血栓性の新しい評価方法-血栓形成の可視化の試み-,人工臓器,日本,日本人工臓器学会,2004年 9月15日,第33巻,第2号,p.S-129
調査した分野 A61M 1/14
A61B 10/00
A61M 1/36
G01M 19/00
G01N 21/49
特許請求の範囲 【請求項1】
血液循環回路を構成する被試験体の内部に生成される血栓を検知する方法であって、
抗凝固処理された生血液から赤血球が除かれた血液を前記血液循環回路に循環させつつ、該血液を温度5~15℃に冷却する段階と、
該冷却された血液の抗凝固作用を中和する段階と、
該中和された血液を0.5~1.5℃/minの昇温速度で昇温するとともに被試験体の内部を循環する血液にレーザシート光を照射してそのレーザ散乱光から画像を取得する段階と、を順に実施してなる血栓を検知する方法
【請求項2】
被試験体、血液ポンプ及びこれらを連通する導管から構成された血液循環回路と、
該血液循環回路内を循環する生血液から赤血球が除かれた血液に薬剤、補液を供給する補給手段と、
前記血液循環回路内を循環する血液を5~15℃に冷却し、その後0.5~1.5℃/minの昇温速度で加熱する温度制御手段と、
前記血液循環回路内を循環する血液にレーザシート光を照射してそのレーザ散乱光から画像を取得する画像取得手段と、
を有してなる血栓観察装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験体となる人工心臓や透析装置等を組み入れた血液循環回路に赤血球を除いた血液を循環させ、被試験体の内部で形成される血栓の検知方法及びこれを利用した血栓観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工心臓、透析装置、各種カテーテル等の医療用機器の開発においては、血栓の発生をいかに防止するかということが重要な課題の一つになっている。このため、それらの装置内で血栓がどのように形成され、その後どのような成長過程を経るかということを知り得る手段が求められている。
【0003】
このような要請に対し、例えば非特許文献1には、血栓は血流のよどみ部に生じやすいという知見に基づき、まず、被試験体を組み込んだ模擬血液循環回路に蛍光スチレンビーズをトレーサとした食塩水を循環させ、これにArレーザシート光を照射して高速ビデオ収録した映像を4時刻粒子追跡法を用いてよどみ部を発見し、次に実際に血液ポンプを埋め込んだ動物実験により血栓が形成されるか否かを確認する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献1には、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの光を吸収・反射する性質により、レーザ光の光路内に血栓など通常の組成でない物質が入り込んだ場合に、部分的なヘモグロビン(Hb)密度の違いや反射率の違いを生じるため、血栓の存在が光量の変化となって現れてくることを利用した血栓検知方法が提案されている。すなわち、血液にレーザ光又は発光ダイオード光をパルス光又は連続光として照射し、上記パルス光又は連続光に対する反射光又は散乱透過光の光量を計測して、この計測のデータから上記血液中の血栓を計測する方法が提案されている。
【0005】

【非特許文献1】工業技術院 機械技術研究所発行 機械研NEWS 2000 No.12 p1~3
【特許文献1】特開2002-345787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1による方法では、血栓の発生個所や成長状況を知ることは困難であり、しかもその方法は手間がかかるという問題がある。特許文献1による方法では、レーザ光が照射された血液から得られる信号には、正常なヘモグロビンからの信号及び血栓部分に存在するヘモグロビンからの信号が複雑に混じり、さらに、血流状態が変化するために生ずるノイズが無視できないため、血栓であるとの確定をするには複雑な解析をしなければならないという問題がある。また、特許文献1による方法は、血栓形成の有無のモニタリングはできるが、血栓の発生個所を正確に特定できないという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる社会的な要請及び従来の問題点に鑑み、正確に血栓の発生個所を検知することができ、また、血栓が成長していく過程を視覚的に観察することができる方法及びこれを利用した被試験体内での血栓の発生状況を正確に観察することができる血栓観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、血栓は先ずフィブリンが析出しこれが成長することにより形成されること、また、血液にレーザ光を照射した場合に正常な血液部分のヘモグロビンからの信号と血栓部分に存在するヘモグロビンからの信号を判別することは容易ではないことに着目し、ヘモグロビンを含む赤血球を除去した血液を用いることによって血栓の析出をノイズのない鮮明な画像で検知できるという知見に基づいて本発明を完成させた。なお、人又は動物等採取された血液を生血液といい、該生血液から赤血球が除去された血液を単に血液という。
【0009】
本発明に係る血栓検知方法は、血液循環回路を構成する被試験体の内部に生成される血栓の検知方法であって、抗凝固処理された生血液を生体より取り出す段階と、該生血液から赤血球を除いたその血液を前記血液循環回路に循環させつつ、該血液を所定温度まで冷却する段階と、該冷却された血液の抗凝固作用を中和する段階と、該中和された血液を昇温するとともに被試験体の内部を循環する血液にレーザシート光を照射してそのレーザ散乱光から画像を取得する段階と、を有してなる。
【0010】
上記血栓検知方法において、抗凝固処理された血液は5~15℃に冷却するのが好ましく、抗凝固作用中和後の血液を徐々に加熱するには、0.5~1.5℃/minの範囲で徐々に昇温するのが好ましい。
【0011】
上記血栓検知方法は以下の血栓観察装置により好適に実施することができる。すなわち、その血栓観察装置は、被試験体、血液ポンプ及びこれらを連通する導管から構成された血液循環回路と、該血液循環回路内の血液に薬剤、補液を供給する補給手段と、前記血液循環回路内を循環する血液を所定温度に冷却し、その後所定の加熱速度で加熱する温度制御手段と、前記血液循環回路内を循環する血液にレーザシート光を照射してそのレーザ散乱光から画像を取得する画像取得手段と、を有してなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る血栓検知方法は、複雑な解析手段等を要せず、正確に血栓の発生個所を検知することができ、血栓が成長していく過程を視覚的に観察することができる。また、上記の血栓検知方法を利用した血栓観察装置は、簡単な構造で、容易かつ正確に血栓の発生個所を観察しその成長過程を視覚的に観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る血栓検知方法は、抗凝固処理され赤血球が除去された血液を用いる。このため、まず、人又は動物等から血液を採取するに際し、例えば公知のヘパリンナトリウムにより抗凝固処理をしたうえで、生血液を採取する。
【0014】
つぎに、該生血液を例えば遠心分離機等にかけて赤血球を除去し、該赤血球が除去された血液を所定の温度に冷却した血液循環回路に循環させる。その後、血液が冷却されその温度が所定の温度に安定した後に、抗凝固作用を公知の硫酸プロタミンで中和する。
【0015】
上記において、生血液から赤血球を除去するには、遠心分離機で800~1100rpm、10分間の遠心分離を行う程度でよい。また、血液の冷却は、5~15℃の範囲に冷却するのがよく、特に8~12℃が好ましい。このような血液は、血液の抗凝固作用を中和後にも血栓が形成されにくいのでよい。
【0016】
つぎに、抗凝固作用を中和した血液を徐々に加熱しつつ、被試験体にレーザシート光を照射し、該レーザシート光による被試験体中を循環する血液からの信号を撮像デバイスによってとらえ、その信号を画像処理装置によって画像化する。この画像を監視することによって血栓の形成箇所、成長過程を観察する。
【0017】
レーザシート光の照射は、被試験体の全体にレーザシート光が照射されるように走査される。このため本血栓検知方法によれば、被試験体中のいずれの部分に形成される血栓も確実に観察することができる。
【0018】
レーザシート光は、例えば、35mWのHe-Neレーザによるものを使用することができる。撮像デバイスは、例えば高速度CCDカメラを使用することができる。画像処理装置は撮像デバイスからの信号を処理することができる例えば公知のパーソナルコンピュータを使用することができる。
【0019】
上記血栓観察過程において、抗凝固作用を中和した血液の加熱速度は、0.5~1.5℃/minで昇温させるのがよい。これにより、血栓の形成過程を正確に観察することができる。
【0020】
上記血栓検知方法は、以下に説明する血栓観察装置により好適に実施することができる。図1は、そのような血栓観察装置の一実施例を模式的に示すレイアウト図である。本例の血栓観察装置は、被試験体11、血液ポンプ13及びこれらを連通する導管21、22から構成された血液循環回路10と、血液循環回路10内の血液に薬剤、補液を供給する補給手段30と、血液循環回路10内を循環する血液を所定温度に冷却し、その後所定の加熱速度で加熱する温度制御手段40と、血液循環回路10内を循環する血液にレーザシート光を照射してそのレーザ散乱光から画像を取得する画像取得手段50と、を有している。
【0021】
図1において、被試験体11は円筒形状のものであるが、実際に使用を予定する、例えば人工心臓や透析装置等を用いることができる。この被試験体11は、レーザシート光が照射された血液からの信号が得られやすいように透明な材料から構成されるのがよい。
【0022】
血液ポンプ13は、例えば公知のローラポンプを使用することができ、導管21、22は内径8mmのシリコンゴム管を使用することができる。これにより、導管21、22の内部での血栓の形成が防止され、該導管部分での血液の温度変動を無視することができる。
【0023】
補給手段30は、貯留タンク32、供給管26及びコック25からなる。この補給手段30を通じて、補給用の血液又は生理食塩水31、この血液又は生理食塩水31に添加される添加剤、あるいは血液の抗凝固作用を中和させる硫酸プロタミンが血液循環回路10内に供給される。なお、不要の血液の排出は、コック27、ドレン28を通じて行われる。
【0024】
温度制御手段40は、被試験体11を収容する水タンク45、水タンク45内の水の冷却又は加熱を行う発熱又は冷却体41、該水の温度を測定する温度計43及び温度計43からの信号に基づき発熱又は冷却体41の制御を行う温度制御装置48からなる。発熱又は冷却体41、温度制御装置48は、特にその構成を問わない。常温の血液を5℃以下にまで冷却でき、0.5~1.5℃/minで昇温可能なものを使用することができる。
【0025】
レーザ散乱光の画像取得手段50は、レーザシート光を発光可能なレーザ51、レーザシート光を照射された血液からの信号をとらえる撮像デバイス53、撮像デバイス53からの信号を処理して画像化させる画像処理装置55からなる。レーザ51は、35mW以上のHe-Neレーザがよい。撮像デバイス53は撮影速度30~100fpsの高速度CCDカメラがよい。画像処理装置55は、例えば公知のパーソナルコンピュータを使用することができる。
【実施例1】
【0026】
図1に示す血栓観察装置を用い被試験体の中に形成される血栓の観察試験を行った。被試験体11は、容量20×10-3L、透明アクリル樹脂製の円筒形状のものを用いた。生血液はヘパリンナトリウムにより抗凝固処理をした犬から採取した。この生血液をTOMY社製RL-101型遠心分離機により1100rpm、10分間の遠心分離を行い、赤血球を取り除いた。該血液200×10-3Lを用いて試験を行った。抗凝固作用の中和処理は市販の硫酸プロタミンで行った。血液は10℃まで冷却し、抗凝固作用の中和後、1℃/minの昇温速度で徐々に加熱した。レーザ51はMELLES GRIOT社製05-LHP-121型の35mW、He-Neレーザ、撮像デバイス53はアルゴ社製LU125M型高速度CCDカメラを使用した。水タンク45の容量は10Lであった。
【0027】
図2に得られた画像を示す。図2(a)は、血液の抗凝固作用中和後血液の加熱を行う前の最初の状態を示し、同図(b)は、その後13分経過後、血液の温度が24℃のときの画像を示す。図2(c)は、25分経過後血液の温度が36℃のときの画像を示す。
【0028】
図2(b)によると、血栓が被試験体11の内部の血液中に浮遊する状態で形成されていることが分かる。図2(b)と(c)を比較すると、時間経過及び温度の上昇に伴い、浮遊する血栓が増大していることが分かる。なお、図中の黒い部分が血栓であることは、JOEL社製JSM-5510S電子顕微鏡を用いて組織学的に確認した。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る血栓検知方法を実施する血栓観察装置を模式的に示すレイアウト図である。
【図2】試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
10 血液循環回路
11 被試験体
13 血液ポンプ
21、22 導管
25 コック
26 供給管
27 コック
28 ドレン
30 補給手段
31 血液又は生理食塩水
32 貯留タンク
40 温度制御手段
41 発熱又は冷却体
43 温度計
45 水タンク
48 温度制御装置
50 画像取得手段
51 レーザ
53 撮像デバイス
55 画像処理装置
図面
【図1】
0
【図2】
1