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明細書 :液晶流動形成機構、液晶流動形成方法および液晶流動を用いた物体移動機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3586734号 (P3586734)
公開番号 特開2003-113814 (P2003-113814A)
登録日 平成16年8月20日(2004.8.20)
発行日 平成16年11月10日(2004.11.10)
公開日 平成15年4月18日(2003.4.18)
発明の名称または考案の名称 液晶流動形成機構、液晶流動形成方法および液晶流動を用いた物体移動機構
国際特許分類 F15B 21/06      
FI F15B 21/06
請求項の数または発明の数 20
全頁数 26
出願番号 特願2001-305581 (P2001-305581)
出願日 平成13年10月1日(2001.10.1)
審査請求日 平成15年12月18日(2003.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597154966
【氏名又は名称】学校法人高知工科大学
発明者または考案者 【氏名】蝶野 成臣
【氏名】辻 知宏
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100089222、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 康伸
審査官 【審査官】森本 康正
参考文献・文献 特開平06-046584(JP,A)
特開2001-013895(JP,A)
特開2001-260100(JP,A)
特開平05-289083(JP,A)
調査した分野 F15B 21/06
B81B 1/00- 7/04
C10M 171/00
C10N 40:14
特許請求の範囲 【請求項1】
流路と、
該流路の壁面に沿って移動可能に設けられた液晶と、
該液晶の液晶分子に対して電界または磁界を加えて、該液晶の液晶分子を前記流路の壁面と交わる面内で回転させる液晶分子回転手段とからなり、
前記液晶分子回転手段が、
前記液晶を、前記流路の壁面と交差する軸周りにツイストさせ、かつ、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えている
ことを特徴とする液晶流動形成機構
【請求項2】
前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、
該流路の一対の壁面間に、前記液晶が入れられており、
前記拘束手段が、
前記対向する一対の壁面に設けられ、同じ向きにラビング処理された一対の配向膜を備えている
ことを特徴とする請求項記載の液晶流動形成機構。
【請求項3】
前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、
該流路の一対の壁面間に、前記液晶が入れられており、
前記拘束手段が、
前記対向する一対の壁面に設けられ、互いに交差する向きにラビング処理された一対の配向膜を備えている
ことを特徴とする請求項記載の液晶流動形成機構。
【請求項4】
前記液晶分子が、前記流路の壁面に対してチルトしている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の液晶流動形成機構。
【請求項5】
前記液晶分子回転手段が、前記液晶に電界または磁界を加えるタイミングおよび前記液晶に加える電界または磁界の大きさを制御する制御装置を備えており、
該制御装置が、前記液晶に電界または磁界を断続的に加える
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の液晶流動形成機構。
【請求項6】
移動が固定された固定部材と、
該固定部材の上面と対向する下面とを有し、該固定部材に対して、その上面に沿って移動可能に配設された移動部材と、
移動部材の下面と前記固定部材の上面との間に配設された液晶と、
該液晶の液晶分子に対して電界を加えて、該液晶の液晶分子を、前記固定部材の上面と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、
前記液晶分子回転手段が、
前記移動部材および前記固定部材にそれぞれ設けられた一対の電極と、
前記移動部材および前記固定部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えている
ことを特徴とする物体移動機構。
【請求項7】
移動が固定された固定部材と、
該固定部材の上面と対向する下面とを有し、該固定部材に対して、その上面に沿って移動可能に配設された移動部材と、
該移動部材の下面と前記固定部材の上面との間に配設された液晶と、
該液晶の液晶分子に対して磁界を加えて、該液晶の液晶分子を、前記固定部材の上面と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、
前記液晶分子回転手段が、
前記移動部材および前記固定部材にそれぞれ設けられた一対の磁極と、
前記移動部材および前記固定部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えている
ことを特徴とする物体移動機構。
【請求項8】
前記拘束手段が、前記移動部材の下面および前記固定部材の上面にそれぞれ設けられ、ラビング処理された一対の配向膜である
ことを特徴とする請求項6または7記載の物体移動機構。
【請求項9】
前記拘束手段が、前記移動部材の下面と前記固定部材の上面との間において、前記液晶をツイストさせる
ことを特徴とする請求項6、7または8記載の液晶流動形成機構。
【請求項10】
中空な空間を有する外側部材と、
該外側部材の中空な空間の内部に、前記外側部材に対して回転自在に配設された内側軸と、
前記外側部材の内面と前記内側軸の外周面との間に入れられた液晶と、
該液晶の液晶分子に対して、前記内側軸の中心軸から前記外側部材の内面に向う方向に沿って電界を加えて、該液晶の液晶分子を前記内側軸の軸方向と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、
前記液晶分子回転手段が、
前記内側軸および前記外側部材にそれぞれ設けられた一対の電極と、
前記内側軸および前記外側部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えている
ことを特徴とする物体移動機構。
【請求項11】
中空な空間を有する外側部材と、
該外側部材の中空な空間の内部に、前記外側部材に対して回転自在に配設された内側軸と、
前記外側部材の内面と前記内側軸の外周面との間に入れられた液晶と、
該液晶の液晶分子に対して、前記内側軸の中心軸から前記外側部材の内面に向う方向に沿って磁界を加えて、該液晶の液晶分子を前記内側軸の軸方向と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、
前記液晶分子回転手段が、
前記内側軸および前記外側部材にそれぞれ設けられた一対の磁極と、
前記内側軸および前記外側部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えている
ことを特徴とする物体移動機構。
【請求項12】
前記拘束手段が、前記内側軸の外周面および前記外側部材の内面にそれぞれ設けられた一対の配向膜であり、
前記内側軸の外周面に設けられた前記配向膜には、前記内側軸の外周面に沿って、かつ、該内側軸の軸方向と交差する方向にラビング処理がされており、
前記外側部材の内面に設けられた前記配向膜には、前記外側部材の内面に沿って、かつ、前記内側軸の軸方向と交差する方向に沿ってラビング処理がされている
ことを特徴とする請求項10または11記載の物体移動機構。
【請求項13】
前記拘束手段が、前記内側軸の外周面と前記外側部材の内面との間において、前記液晶をツイストさせる
ことを特徴とする請求項10、11または12記載の液晶流動形成機構。
【請求項14】
互いに対向する一対の壁面を備えた外側部材と、
該外側部材の一対の壁面間における左右方向の中間に配置され、該一対の壁面間に形成されている空間を右方空間と左方空間に分割し、かつ、該一対の壁面に沿って左右方向に移動可能に設けられた内側部材と、
前記外側部材の一対の壁面間に配置された液晶と、
該液晶の液晶分子に対して電界または磁界を加えて、該液晶の液晶分子を、前記外側部材の内面と交わる面内において、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように回転させる液晶分子回転手段とからなり、
該液晶分子回転手段が、
前記液晶を、前記外側部材の壁面と交差する軸周りにツイストさせ、かつ、前記内側部材を挟んで対称な位置に配置された液晶分子同士が互いに逆方向に回転するように拘束する拘束手段とを備えている
ことを特徴とする物体移動機構。
【請求項15】
前記拘束手段が、
前記外側部材における右方空間を挟む一対の壁面に設けられ、いずれも左方から右方に向けてラビング処理された一対の右方配向膜と、
前記外側部材における左方空間を挟む一対の壁面に設けられ、いずれも右方から左方に向けてラビング処理された一対の左方配向膜とからなる
ことを特徴とする請求項14記載の物体移動機構。
【請求項16】
前記液晶分子回転手段が、前記液晶に電界または磁界を加えるタイミングおよび前記液晶に加える電界または磁界の大きさを制御する制御装置を備えており、
該制御装置が、前記液晶に電界または磁界を断続的に加える
ことを特徴とする請求項6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載の物体移動機構。
【請求項17】
液晶を流路内に配置し、
該流路内において、前記液晶が、前記流路の壁面と交差する軸周りにツイストし、かつ、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束手段によって液晶分子を拘束し、
該拘束手段によって拘束されている液晶に対して、液晶分子回転手段によって、前記流路の壁面と交わる方向に沿って電界または磁界を加える
ことを特徴とする液晶流動形成方法。
【請求項18】
前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、
前記拘束手段が、前記対向する一対の壁面に設けられ、同じ向きにラビング処理された一対の配向膜である
ことを特徴とする請求項17記載の液晶流動形成方法。
【請求項19】
前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、
前記拘束手段が、前記対向する一対の壁面に設けられ、互いに交差する向きにラビング処理された一対の配向膜である
ことを特徴とする請求項17記載の液晶流動形成方法。
【請求項20】
前記液晶分子回転手段が、前記液晶に電界または磁界を加えるタイミングおよび前記液晶に加える電界または磁界の大きさを制御する制御装置を備えており、
該制御装置によって、前記液晶に電界または磁界を断続的に加える
ことを特徴とする請求項17、18または19記載の液晶流動形成方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶流動を用いた物体移動機構および液晶流動形成方法に関する。液晶とは、流動性はあるが、光学的には異方性で、複屈折を示し、結晶のような性質をもつ状態又はそのような状態を示す物質をいう。この液晶に対して電界や磁界を加えると、全ての液晶分子は、その重心回りに同じ方向に回転し、その軸方向が電界や磁界の方向に対して液晶固有の角度に配向する。本発明は、かかる液晶の性質を利用した液晶流動を用いた物体移動機構、液晶流動形成機構および液晶流動形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から液晶は、液晶分子が配向することによってその光学的性質が変化するため、この性質を利用して液晶ディスプレー等の情報表示装置に使用されている。
また、液晶は、電界や磁界を加えて液晶分子の配向方向を変化させると液晶自体の粘性が変化する、つまり電気粘性流体としての性質も有している。このため、電気粘性流体としての性質を利用した軸受やダンパー等が開発されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、液晶分子が配向するときに、液晶流動が発生することが知られている。例えば、図9に示すように、一対の固定平行板P,P間に液晶を入れて、その液晶分子mを、その軸方向が一対の固定平行板P,Pと平行になるように配列する。そして、この液晶に、一対の固定平行板P,Pと垂直な電界を加えれば、液晶分子mが回転し、この液晶分子mの回転に起因する液晶流動が発生する。つまり、液晶を用いることによって、電気エネルギを運動エネルギに変換することができるのである。
しかし、この液晶分子mの運動エネルギ、つまり液晶流動を工業的に利用することを考えた者は未だおらず、当然のごとくこの液晶流動を積極的に利用する方法や装置は存在していない。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑み、工業的に利用可能な液晶流動を形成することができる液晶流動形成機構および液晶流動形成方法、および液晶流動を利用した物体移動機構を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の液晶流動形成機構は、流路と、該流路の壁面に沿って移動可能に設けられた液晶と、該液晶の液晶分子に対して電界または磁界を加えて、該液晶の液晶分子を前記流路の壁面と交わる面内で回転させる液晶分子回転手段とからなり、前記液晶分子回転手段が、前記液晶を、前記流路の壁面と交差する軸周りにツイストさせ、かつ、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えていることを特徴とする
求項の液晶流動形成機構は、請求項記載の発明において、前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、該流路の一対の壁面間に、前記液晶が入れられており、前記拘束手段が、前記対向する一対の壁面に設けられ、同じ向きにラビング処理された一対の配向膜を備えていることを特徴とする。
請求項3の液晶流動形成機構は、請求項1記載の発明において、前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、該流路の一対の壁面間に、前記液晶が入れられており、前記拘束手段が、前記対向する一対の壁面に設けられ、互いに交差する向きにラビング処理された一対の配向膜を備えていることを特徴とする。
請求項の液晶流動形成機構は、請求項1、2または3記載の発明において、前記液晶分子が、前記流路の壁面に対してチルトしていることを特徴とする。
請求項の液晶流動形成機構は、請求項1、2、3または4記載の発明において、前記液晶分子回転手段が、前記液晶に電界または磁界を加えるタイミングおよび前記液晶に加える電界または磁界の大きさを制御する制御装置を備えており、該制御装置が、前記液晶に電界または磁界を断続的に加えることを特徴とする。
請求項の物体移動機構は、移動が固定された固定部材と、該固定部材の上面と対向する下面とを有し、該固定部材に対して、その上面に沿って移動可能に配設された移動部材と、移動部材の下面と前記固定部材の上面との間に配設された液晶と、該液晶の液晶分子に対して電界を加えて、該液晶の液晶分子を、前記固定部材の上面と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、前記液晶分子回転手段が、前記移動部材および前記固定部材にそれぞれ設けられた一対の電極と、前記移動部材および前記固定部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えていることを特徴とする。
請求項7の物体移動機構は、移動が固定された固定部材と、該固定部材の上面と対向する下面とを有し、該固定部材に対して、その上面に沿って移動可能に配設された移動部材と、該移動部材の下面と前記固定部材の上面との間に配設された液晶と、該液晶の液晶分子に対して磁界を加えて、該液晶の液晶分子を、前記固定部材の上面と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、前記液晶分子回転手段が、前記移動部材および前記固定部材にそれぞれ設けられた一対の磁極と、前記移動部材および前記固定部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えていることを特徴とする。
請求項8の物体移動機構は、請求項6または7記載の発明において、前記拘束手段が、前記移動部材の下面および前記固定部材の上面にそれぞれ設けられ、ラビング処理された一対の配向膜であることを特徴とする。
請求項9の物体移動機構は、請求項6、7または8記載の前記拘束手段が、前記移動部材の下面と前記固定部材の上面との間において、前記液晶をツイストさせることを特徴とする。
請求項10の物体移動機構は、中空な空間を有する外側部材と、該外側部材の中空な空間の内部に、前記外側部材に対して回転自在に配設された内側軸と、前記外側部材の内面と前記内側軸の外周面との間に入れられた液晶と、該液晶の液晶分子に対して、前記内側軸の中心軸から前記外側部材の内面に向う方向に沿って電界を加えて、該液晶の液晶分子を前記内側軸の軸方向と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、前記液晶分子回転手段が、前記内側軸および前記外側部材にそれぞれ設けられた一対の電極と、前記内側軸および前記外側部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えていることを特徴とする。
請求項11の物体移動機構は、中空な空間を有する外側部材と、該外側部材の中空な空間の内部に、前記外側部材に対して回転自在に配設された内側軸と、前記外側部材の内面と前記内側軸の外周面との間に入れられた液晶と、該液晶の液晶分子に対して、前記内側軸の中心軸から前記外側部材の内面に向う方向に沿って磁界を加えて、該液晶の液晶分子を前記内側軸の軸方向と交わる面内において回転させる液晶分子回転手段とからなり、前記液晶分子回転手段が、前記内側軸および前記外側部材にそれぞれ設けられた一対の磁極と、前記内側軸および前記外側部材に設けられた、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束する拘束手段とを備えていることを特徴とする。
請求項12の物体移動機構は、請求項10または11記載の発明において、前記拘束手段が、前記内側軸の外周面および前記外側部材の内面にそれぞれ設けられた一対の配向膜であり、前記内側軸の外周面に設けられた前記配向膜には、前記内側軸の外周面に沿って、かつ、該内側軸の軸方向と交差する方向にラビング処理がされており、前記外側部材の内面に設けられた前記配向膜には、前記外側部材の内面に沿って、かつ、前記内側軸の軸方向と交差する方向に沿ってラビング処理がされていることを特徴とする。
請求項13の物体移動機構は、請求項10、11または12記載の発明において、前記拘束手段が、前記内側軸の外周面と前記外側部材の内面との間において、前記液晶をツイストさせることを特徴とする。
請求項14の物体移動機構は、互いに対向する一対の壁面を備えた外側部材と、該外側部材の一対の壁面間における左右方向の中間に配置され、該一対の壁面間に形成されている空間を右方空間と左方空間に分割し、かつ、該一対の壁面に沿って左右方向に移動可能に設けられた内側部材と、前記外側部材の一対の壁面間に配置された液晶と、該液晶の液晶分子に対して電界または磁界を加えて、該液晶の液晶分子を、前記外側部材の内面と交わる面内において、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように回転させる液晶分子回転手段とからなり、該液晶分子回転手段が、前記液晶を、前記外側部材の壁面と交差する軸周りにツイストさせ、かつ、前記内側部材を挟んで対称な位置に配置された液晶分子同士が互いに逆方向に回転するように拘束する拘束手段とを備えていることを特徴とする。
請求項15の物体移動機構は、請求項14記載の発明において、前記拘束手段が、前記外側部材における右方空間を挟む一対の壁面に設けられ、いずれも左方から右方に向けてラビング処理された一対の右方配向膜と、前記外側部材における左方空間を挟む一対の壁面に設けられ、いずれも右方から左方に向けてラビング処理された一対の左方配向膜とからなることを特徴とする。
請求項16の物体移動機構は、請求項6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載の発明において、前記液晶分子回転手段が、前記液晶に電界または磁界を加えるタイミングおよび前記液晶に加える電界または磁界の大きさを制御する制御装置を備えており、該制御装置が、前記液晶に電界または磁界を断続的に加えることを特徴とする。
請求項17の液晶流動形成方法は、液晶を流路内に配置し、該流路内において、前記液晶が、前記流路の壁面と交差する軸周りにツイストし、かつ、各液晶分子がそれぞれ一方向にのみ回転するように拘束手段によって液晶分子を拘束し、該拘束手段によって拘束されている液晶に対して、液晶分子回転手段によって、前記流路の壁面と交わる方向に沿って電界または磁界を加えることを特徴とする。
請求項18の液晶流動形成方法は、請求項17記載の発明において、前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、前記拘束手段が、前記対向する一対の壁面に設けられ、同じ向きにラビング処理された一対の配向膜であることを特徴とする。
請求項19の液晶流動形成方法は、請求項17記載の発明において、前記流路が、対向する一対の壁面を有しており、前記拘束手段が、前記対向する一対の壁面に設けられ、互いに交差する向きにラビング処理された一対の配向膜であることを特徴とする。
請求項20の液晶流動形成方法は、請求項17、18または19記載の発明において、前記液晶分子回転手段が、前記液晶に電界または磁界を加えるタイミングおよび前記液晶に加える電界または磁界の大きさを制御する制御装置を備えており、該制御装置によって、前記液晶に電界または磁界を断続的に加えることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、液晶に電界または磁界を加えれば、各液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができる。しかも、液晶が壁面と交差する軸周りにツイストしているから、液晶分子回転手段によって流路の壁面と交わる面内で液晶分子を回転したときに、流路の壁面と交差する断面に、流量が0とならない液晶流動を流路内に発生させることができるから、この液晶流動を、物体を移動させる装置やセンサ、アクチュエータなどに容易に利用することができる
求項の発明によれば、対向する一対の壁面に、同じ向きにラビング処理された一対の配向膜が設けられているから、一対の壁面間で、液晶は180度ツイストされる。すると、ラビング方向と直交する断面では、ラビング方向と逆向きかつ流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。
請求項の発明によれば、対向する一対の壁面に、互いに交差する向きにラビング処理された一対の配向膜が設けられているから、一対の壁面間において、液晶が、一対の配向膜におけるラビング処理の交差角に応じた量だけ、液晶がツイストされる。すると、対向する一対の壁面と交差する断面に、流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。しかも、液晶をツイストさせる角度によって液晶流動の方向を変化させることができるので、液晶をツイストする角度を調整すれば、所望の方向への液晶流動を発生させることができる
求項の発明によれば、液晶分子がチルトされているので、液晶分子回転手段によって液晶分子を回転させたときに、常に一定の方向に液晶を回転させることができる。よって、常に一定の方向に液晶流動を発生させることができる。
請求項の発明によれば、制御装置によって断続的に電界又は磁界を加えると、一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができる。また、電界又は磁界を加える時間間隔や、電界又は磁界の大きさを変化させれば、液晶流動の流量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
請求項の発明によれば、液晶に電界を加えれば、液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができ、電極と共に移動部材を、固定部材に対して液晶流動の方向に移動させることができる。よって、液晶の流動を部材の移動に利用することができるので、液晶を利用した搬送装置等に応用することができる。
請求項7の発明によれば、液晶に磁界を加えれば、各液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができ、磁極と共に移動部材を、固定部材に対して液晶流動の方向に移動させることができる。よって、液晶の流動を部材の移動に利用することができるので、液晶を利用した搬送装置等に応用することができる。
請求項8の発明によれば、一対の配向膜のラビング方向を調整すれば、一対の配向膜間において液晶をツイストさせることができ、ツイストする角度によって、液晶流動の方向を変化させることができるので、一対の配向膜のラビング方向を調整すれば、一方の部材に対して他方の部材を所望の方向に移動させることができる。
請求項9の発明によれば、対向する一対の壁面間において液晶をツイストさせているから、液晶をツイストさせる角度によって液晶流動の方向を変化させることができる。よって、液晶をツイストする角度を調整すれば、一方の部材に対して他方の部材を所望の方向に移動させることができる。
請求項10の発明によれば、液晶に電界を加えれば、各液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができる。すると、外側部材の中空な空間内において、内側軸が、その軸周りに回転自在に設けられているので、内側軸を固定すれば、電極と共に外側部材を内側軸の中心軸周りに回転させることができる。逆に、外側部材を固定すれば、電極と共に内側軸を、その中心軸周りに回転させることができる。よって、液晶の流動を部材の回転に利用することができるので、液晶を利用したモータやドリル等に応用することができる。
請求項11の発明によれば、液晶に磁界を加えれば、各液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができる。すると、外側部材の中空な空間内において、内側軸が、その軸周りに回転自在に設けられているので、内側軸を固定すれば、磁極と共に外側部材を内側軸の中心軸周りに回転させることができる。逆に、外側部材を固定すれば、磁極と共に内側軸を、その中心軸周りに回転させることができる。よって、液晶の流動を部材の回転に利用することができるので、液晶を利用したモータやドリル等に応用することができる。
請求項12の発明によれば、内側軸の外周面に設けられている配向膜のラビング方向および外側部材の内面に設けられている配向膜のラビング方向を調整すれば、一対の配向膜間において液晶をツイストさせることができ、ツイストする角度によって、液晶流動の方向を内側軸の接線方向に対して傾けることができるので、内側軸および外側部材を、内側軸の中心軸周りに回転させるだけでなく、内側軸の中心軸に沿った方向へも移動させることができる。
請求項13の発明によれば、内側軸の外周面と外側部材の内面との間において液晶をツイストさせているから、液晶をツイストさせる角度によって液晶流動の方向を内側軸の接線方向に対して傾けることができる。よって、内側軸および外側部材を、内側軸の中心軸周りに回転させるだけでなく、内側軸の中心軸に沿った方向へも移動させることができる。
請求項14の発明によれば、液晶に電界または磁界を加えれば、液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができる。そして、液晶が、拘束手段によって、外側部材の壁面と交差する軸周りにツイストされ、かつ、内側部材を挟んで対称な位置に配置された液晶分子同士が互いに逆方向に回転するように拘束されているから、液晶分子回転手段によって外側部材の内面と交わる面内で液晶分子を回転させれば、右方空間、左方空間のいずれの液晶にも、内側部材に向かう流れ、または内側部材から外方に向う流れを発生させることができる。このため、内側部材を挟むいずれかの一方の空間の液晶を液晶分子回転手段によって回転させれば、内側部材を外側部材の内面に沿って移動させることができる。つまり、液晶流動を内側部材の移動に変換することができるので、液晶を作動流体とするアクチュエータ等に応用することができる。
請求項15の発明によれば、右方空間の一対の右方配向膜には、いずれも左方から右方に向けてラビング処理されており、左方空間の一対の左方配向膜には、いずれも右方から左方に向けてラビング処理されているから、液晶分子回転手段によって外側部材の内面と交わる面内で液晶分子を回転させれば、右方空間、左方空間のいずれの液晶にも、内側部材に向かう流れを発生させることができる。このため、内側部材を挟むいずれかの一方の空間の液晶を液晶分子回転手段によって回転させれば、内側部材を外側部材の内面に沿って移動させることができる。つまり、液晶流動を内側部材の移動に変換することができるので、液晶を作動流体とするアクチュエータ等に応用することができる。
請求項16の発明によれば、制御装置によって断続的に電界又は磁界を加えると、一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができる。また、電界又は磁界を加える時間間隔や、電界又は磁界の大きさを変化させれば、液晶流動の流量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
請求項17の発明によれば、液晶に電界または磁界を加えれば、各液晶分子が、その重心周りに一方向にのみ回転するから、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができる。しかも、液晶が壁面と交差する軸周りにツイストしているから、液晶分子回転手段によって流路の壁面と交わる面内で液晶分子を回転したときに、流路の壁面と交差する断面に、その断面の法線方向における速度成分の総和の絶対値が正となる速度分布が形成される。このため、液晶分子を回転したときには、壁面と交差する断面において、流量が0とならない液晶流動を流路内に発生させることができる。すると、この液晶流動の方向と垂直な断面では、液晶流動によってその断面に働く力をその断面全体で平均しても0とならないので、この液晶流動を、物体を移動させる装置やセンサ、アクチュエータなどに容易に利用することができる。
請求項18の発明によれば、対向する一対の壁面に、同じ向きにラビング処理された一対の配向膜が設けられているから、一対の壁面間で、液晶は180度ツイストされる。すると、ラビング方向と直交する断面では、ラビング方向と逆向きかつ流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。
請求項19の発明によれば、対向する一対の壁面に、互いに交差する向きにラビング処理された一対の配向膜が設けられているから、一対の壁面間において、液晶を、一対の配向膜におけるラビング処理の交差角に応じた量だけ、液晶がツイストされる。すると、対向する一対の壁面と交差する断面に、流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。しかも、液晶をツイストさせる角度によって液晶流動の方向を変化させることができるので、液晶をツイストする角度を調整すれば、所望の方向への液晶流動を発生させることができる。
請求項20の発明によれば、液晶に対して断続的に電界又は磁界を加えると、一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔や、電界又は磁界の大きさを変化させれば、液晶流動の流量を変化させることができるし、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、本発明の液晶流動形成機構を説明する前に、液晶に電界や磁界を加えたときに、液晶流動が発生する原理を説明する。
なお、液晶は、電界や磁界を加えたときに、電界や磁界の方向に対して液晶分子の軸方向が液晶固有の角度に配向するが、以下には、電界や磁界を加えたときに、液晶分子の軸方向が電界や磁界の方向と平行になるような液晶について説明する。
また、液晶分子は、電界、磁界いずれを加えた場合でも配向するので、以下には電界を加える場合のみを説明する。
【0008】
図3は電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図である。図4は平行板P上に載せられた液晶LCに電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図である。図3に示すように、液晶LCに、その液晶分子mの軸方向と交差するように電界efを加えると、液晶分子mは、その回転角度が小さくなる方向(図3(A) では矢印の方向)に、その軸方向が電界efと一致するまで回転する(図3(B) )。すると、各液晶分子mの周囲には速度勾配が発生するので、液晶流動が発生するのである(図3(C) )。
【0009】
図4(A) において、符号Fは平行板P上に設けられた配向膜を示している。この配向膜Fの素材は、例えばポリイミド等の高分子物質である。この平行板Pの配向膜Fに液晶LCの一部を接触させると、平行板P近傍の液晶分子mは平行板Pの配向膜Fに拘束(以下、アンカリングという)される。すると、電界efを加えても、平行板Pの近傍に位置する液晶分子mは、その軸方向が電界efと一致するまで回転することができず、回転量が小さくなる(図4(B) )。しかも、液晶分子mの回転量は、平行板Pに近づくほど小さくなり、平行板P上では0となるので、液晶分子mの回転によって、その周囲に形成される速度勾配も、平行板Pに近づくほど小さくなる(図4(C) )。
したがって、液晶LCにおいて、その一部の液晶分子mの動きを平行板Pの配向膜Fによってアンカリングすれば、液晶LC内に、図4(D) に示すような速度分布を有する液晶分子mの流れが発生するのである。
【0010】
さて、本発明の液晶流動形成機構を説明する。
図1は本発明の液晶流動形成機構の概略説明図であり、(A) はYZ断面図であり、(B) はYZ断面図において電界を加えたときにおける液晶分子の配列を示した図であり、(C) はYZ断面図において電界を加えたときに一対の壁面B間に発生する液晶の速度分布を示した図である。
【0011】
図1において、符号Lは、後述する液晶LCが流動する流路を示している。この流路Lは、対向する一対の壁面B,Bを備えている。この一対の壁面B,Bは、互いに平行かつ、いずれの壁面Bも平坦面に形成されている。
なお、対向する一対の壁面B,Bは平行でなくてもよく、一方の壁面Bに対して他方の壁面Bが傾斜していてもよい。
さらになお、各壁面Bは平坦面でなくてもよい。例えば一方の壁面Bが平坦面であって他方の壁面Bが凹凸を有する面でもよいし、いずれの壁面Bも凹凸を有する面であってもよい。
【0012】
前記流路Lの一対の壁面B,B間には、液晶LCが入れられている。この液晶LCは、例えばネマティック液晶やスメクティック液晶、コレステリック液晶、ディスコティック液晶等であるが、電界を加えたときに、液晶分子が回転する液晶であれば、特に限定はない。
【0013】
この液晶LCと前記一対の壁面B,Bとの間には、一対の配向膜F ,Fがそれぞれ設けられている。この一対の配向膜F ,Fは、その素材が、例えばポリイミド等の高分子物質である。
この一対の配向膜F ,Fは、その対向する面がいずれもラビングされている。そして、そのラビング方向は、いずれも右から左である。
【0014】
このため、液晶LCのうち、一対の配向膜F ,Fと接触する液晶分子mは、一対の配向膜F ,Fにアンカリングされる。
すると、下方の壁面Bに設けられた配向膜Fと接触する液晶分子mは、その軸方向を左右方向、つまりラビングした方向に向けて配列する。しかも、液晶分子mは、左端部が配向膜Fから上傾するように配列する、つまりラビングしたときの下流側の端部が配向膜Fから離れるように配列(以下、単にチルトという)される。
一方、液晶LCの液晶分子mのうち、上方の壁面Bに設けられた配向膜Fと接触する液晶分子mは、その軸方向を左右方向、つまりラビングした方向に向けて配列し、しかも、左端部が配向膜Fから下傾するように配向する、つまりラビングしたときの下流側の端部がチルトする。
また、下方の配向膜Fと接触する液晶分子mと、上方の配向膜Fと接触する液晶分子mとの間に位置する液晶分子mは、隣接する液晶分子m間の配向の変化がもっとも小さくなるように配列するのである。
【0015】
したがって、流路Lの一対の壁面B,B間に入れられた液晶LCは、一対の壁面B,B間において、壁面Bに対して垂直な軸周りに180°ねじれた状態で配列する、つまり、液晶LCは一対の壁面B,B間で180°ツイストされるのである。
【0016】
なお、液晶LCと前記一対の壁面B,Bとの間に配向膜Fを設けなくてもよく、流路Lの一対の壁面B,Bにラビングレス処理をしてやればよい。
【0017】
流路Lの内部において、前記一対の壁面B ,Bと前記一対の配向膜F ,Fとの間には、それぞれ一対の電極E,Eが設けられている。この一対の電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の壁面B ,Bと垂直になるように配設されている。また、この一対の電極E,Eは、電源を有する制御装置Dに接続されている。
このため、制御装置Dによって一対の電極E,Eに電圧を加えれば、一対の壁面B,B間に、一対の壁面B,Bと垂直な電界efを形成することができる
の一対の電極E,E、前記一対の配向膜F,Fおよび制御装置Dが液晶分子回転手段CBを構成している。
【0018】
なお、一対の電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の壁面B ,Bと垂直になるように配設しなくてもよく、一対の電極E,Eに形成される電界efによって液晶LCの液晶分子mをいずれか一方の壁面Bと交わる面内で回転するように配設すればよい。
【0019】
なお、一対の電極E,Eを前記流路Lの外面に取り付けてもよい。この場合、流路Lの素材を導電体や電界が透過できる素材とすれば、一対の壁面B,B間に電界efを形成することができる。
さらになお、流路Lの素材を導電体とした場合、制御装置Dを直接流路Lに接続すれば、制御装置Dによって流路Lに電圧を加えれば、一対の壁面B,B間に電界efを発生させることができる。
【0020】
つぎに、本実施形態の液晶流動形成機構の作用と効果を説明する。
まず、制御装置Dによって一対の電極E,E間に電圧を加えると、流路L内の一対の壁面B,B間に、一対の壁面B,Bと垂直な方向の電界efが発生する。すると、液晶LCの液晶分子mは、その軸方向が電界efと平行になるように回転する(図1(B) )。すると、液晶分子mの回転によって、その周囲に速度勾配が発生する。
【0021】
このとき、上方の壁面B近傍の液晶分子mおよび下方の壁面B近傍の液晶分子mの軸方向は、いずれも左側端部がチルトしており、しかも両者の間の液晶分子mが一対の壁面B,B間で180°ツイストしているので、ラビング方向に対して垂直な方向から見ると、液晶分子mは上下反対称に配置する。
このため、一対の壁面B,B間において、その中間よりも上方の液晶分子mは反時計回りに回転し、その中間よりも下方の液晶分子mは時計回りに回転するので、上方の壁B近傍の液晶分子mが形成する速度勾配と、下方の壁B近傍の液晶分子mが形成する速度勾配は上下対称となる。
【0022】
しかも、一対の壁面B,B間の中間における液晶分子mの軸方向は、図1では紙面に対して垂直な面と平行な方向に向いている。つまり、ラビング方向に対して水平面内で90°回転しているから、この液晶分子mが回転してもラビング方向(図1では左右方向)の速度成分は発生しない。したがって、流路L内には、図1(C) に示すような速度分布が形成され、右向き、つまりラビング方向と逆向きの液晶流動が発生する。
【0023】
ついで、一対の電極E,E間への電圧の印加をやめると、液晶分子mは、電圧を加える前の状態に戻る。このとき、一対の壁面B,B間において、その中間よりも上方の液晶分子mは時計回りに回転し、その中間よりも下方の液晶分子mは反時計回りに回転する。つまり、いずれの液晶分子mも一対の電極E,E間への電圧の印加したときと逆方向に回転する。したがって、流路L内には、図1(C) に示した速度分布とy軸に対して逆向きの速度分布が形成され、左向き、つまりラビング方向の液晶流動が発生する。
【0024】
しかし、電圧の印加をやめたときに生じる液晶分子mの回転は、その回転速度が電圧を印加したときに生じる液晶分子mの回転速度よりも遅い。このため、電圧の印加をやめたときに生じる左方向への液晶流動の流量は、電圧を印加したときに生じる液晶分子mの右方向への液晶流動の流量よりも少なくなる。
【0025】
したがって、流路L内において一対の電極E,E間に瞬間的に電圧を印加すると、右方向への液晶流動の流量と左方向への液晶流動の流量の差の分だけ右向き、つまりラビング方向と逆向きの流量が発生するのである。
【0026】
図2は本発明の液晶流動形成機構の概略説明図であり、(A) はXY断面図であり、(B) はXY断面図において電界を加えたときにおける液晶分子の配列を示した図であり、(C) はXY断面図において電界を加えたときに一対の壁面B間に発生する液晶の速度分布を示した図である。図2(A) および図2(B) に示すように、液晶LCを、壁面B近傍の液晶分子mの軸方向から見ると、液晶分子mは上下反対称に配置する。しかも、一対の壁面B,B間の中央部における液晶LCの液晶分子mは、その軸方向が、ラビング方向に対して垂直な面と平行な方向を向いている。このため、ラビング方向に対して垂直な方向には、一対の壁面B,B間の中央部に対して上下反対称な速度分布が形成される。
したがって、流路L内には、図2(C) に示すような速度分布が形成され、ラビング方向と垂直な方向には、液晶流動の流量は0となるのである。
【0027】
よって、本発明の液晶流動形成機構によれば、流路L内において、液晶LCが一対の壁面B,B間で180°ツイストした状態で入っているので、一対の電極E,E間に瞬間的に電圧を印加すると、ラビング方向と垂直な断面において、ラビング方向と逆向きな流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。
したがって、ラビング方向に対して垂直な断面、つまり液晶流動の方向と垂直な断面では、液晶流動によってその断面に働く力を、その断面全体で平均しても0とならないので、この液晶流動を、物体を移動させる装置やセンサ、アクチュエータなどに容易に利用することができる。
【0028】
また、液晶分子回転手段CBの制御装置Dによって、一対の電極E,E間にパルス状の電圧を断続して加えれば、電圧が印加されるたびに液晶流動が発生するので、流路L内に断続した液晶LCの流れを発生させることができる。しかも、一対の電極E,E間に加えるパルス状の電圧の時間間隔、つまり電界を加える時間間隔を変化させれば、液晶流動の流量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
【0029】
なお、一対の配向膜F ,Fにおいて、その対向する面をラビングする方向は、同じ方向にしなくてもよい。例えば、下方の配向膜Fのラビング方向に対して、上方の配向膜Fの配向方向を傾けてもよい。この場合、一対の壁面B ,B間において、上方の壁面B近傍の液晶分子mは、その軸方向が下方の壁面B近傍の液晶分子mの軸方向に対して、下方の配向膜Fのラビング方向に対する上方の配向膜Fのラビング方向の傾きの分(以下、単にラビング方向の傾きという)だけ傾くように配設され、一対の壁面B ,B間において、液晶LCが、ラビング方向の傾きの分だけねじれる。つまり、ラビング方向の傾きの分だけ、液晶LCをツイストさせることができる。
すると、下方の配向膜Fのラビング方向と平行な方向(図2ではYZ断面)における速度分布だけでなく、下方の配向膜Fのラビング方向と垂直な方向(図2ではXY断面)における速度分布も上下反対称でなくなる。すると、下方の配向膜Fのラビング方向と垂直な方向における液晶流動の流量も0ではなくなるので、液晶LCには、下方の配向膜Fのラビング方向に対して傾いた液晶流動を発生させることができる。
そして、この下方の配向膜Fのラビング方向に対して傾いた液晶流動は、その断面における流量が0とならない。したがって、この液晶流動と垂直な断面では、液晶流動によってその断面に働く力を、その断面全体で平均しても0とならないので、この液晶流動を、物体を移動させる装置やセンサ、アクチュエータなどに容易に利用することができる。
【0030】
しかも、液晶LCのねじれ角によって、下方の配向膜Fのラビング方向と平行な方向の流量、および下方の配向膜Fのラビング方向と垂直な方向の流量を変化させることができる。よって、液晶LCをツイストする角度を調整すれば、所望の方向への液晶LCの流れを発生させることができるのである。
【0031】
さらになお、液晶LCがねじれる方向を規制するカイラル剤を液晶LCに混合すれば、液晶LCがツイストする角度を自在に変えることができる。例えば、下方の配向膜Fのラビング方向に対して、上方の配向膜Fのラビング方向を時計回りに90°傾けた場合、液晶LCに、そのツイストする方向が時計回りとなるように規制するカイラル剤を混合すれば、一対の壁面B ,B間において、液晶LCを時計回りに90°ねじることができる。逆に、液晶LCに、そのツイストする方向が反時計回りとなるように規制するカイラル剤を混合すれば、一対の壁面B ,B間において、液晶LCを反時計回りに270°ツイストさせることができる。
【0032】
さらになお、電界を加えたときに液晶分子mの軸方向が電界の方向と垂直になるような液晶の場合には、流路L内において、液晶分子mの軸方向が一対の壁面B,Bと垂直に対してわずかに傾くように配設すればよい。そして、この液晶を一対の壁面B,B間で180°ねじって入れておけば、液晶に電界を加えたときに、流路L内に、図1(C) のような速度分布形成することができる。
【0033】
さらになお、流路Lは、対向する一対の壁面B ,Bを有していなくてもよく、例えば円管や、一対の壁面が交わるような断面視三角形状の樋状の流路や、単なる平板等でもよい。
流路が円管の場合、液晶LCを流路の壁面と交差する軸周りにツイストしておけば、円管の軸方向に沿った液晶流動を発生させることができる。
また、流路が樋状の場合、液晶LCを流路のいずれか1つの壁面と交差する軸周りにツイストしておけば、その壁面に沿って、所望の方向に液晶流動を発生させることができる。
さらに、流路が平板の場合には、液晶LCを平板と交差する軸周りにツイストしておけば、平板上に所望の方向の液晶流動を発生させることができるし、たとえツイストしていなくても平板上に液晶流動を発生させることができる。
【0034】
つぎに、本発明の物体移動機構について説明する。
まず、第一実施形態の物体移動機構を説明する。
図5は第一実施形態の物体移動機構の説明図である。同図において、符号Pは一対の部材を示している。この一対の部材P ,Pは、互いに平行かつ、いずれの部材Pの対向する壁面も平坦面に形成されている。この一対の部材P ,Pのうち、一方の部材P(図5では下方の部材P)は固定されているが、他方の部材P(図5では上方の部材P)は一方の部材Pに対して相対的に移動可能に設けられている。
【0035】
この一対の部材P ,Pにおいて、上方の部材Pの下面と下方の部材Pの上面との間には、液晶LCが入れられている。この液晶LCは、例えばネマティック液晶やスメクティック液晶、コレステリック液晶、ディスコティック液晶等であるが、電界を加えたときに、液晶分子が回転する液晶であれば、特に限定はない。
【0036】
この液晶LCと、上方の部材Pの下面および下方の部材Pの上面との間には、一対の配向膜F ,Fがそれぞれ設けられている。この一対の配向膜F ,Fは、その素材が、例えばポリイミド等の高分子物質である。
この一対の配向膜F ,Fは、その対向する面がいずれもラビングされており、下方の部材Pの上面に設けられた配向膜Fは右から左にラビングされており、上方の部材Pの下面に設けられた配向膜Fは左から右にラビングされている。
【0037】
このため、上下一対の部材P ,P間において、全ての液晶分子mは、その軸方向を左右方向、つまりラビングした方向に向けて配列し、しかも、左端部が上傾するように配列する。
【0038】
なお、液晶LCと一対の部材P ,Pの対向する壁面との間に配向膜Fを設けなくてもよく、流路Lの一対の部材P ,Pの壁面にラビングレス処理をしてやればよい。
【0039】
前記上下一対の部材P ,Pと前記一対の配向膜F ,Fとの間には、それぞれ一対の電極E,Eが設けられている。この一対の電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の部材P ,Pと垂直になるように配設されている。また、この一対の電極E,Eは、図示しない電源を有する制御装置Dに接続されている。
このため、制御装置Dによって一対の電極E,Eに電圧を加えれば、一対の部材P ,P間に、一対の部材P ,Pと垂直な電界efを形成することができる。この一対の電極E,E、前記一対の配向膜F ,および図示しない制御装置Dが、特許請求の範囲にいう液晶分子回転手段を構成している。
【0040】
なお、一対の電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の部材P ,Pと垂直になるように配設しなくてもよく、一対の電極E,Eに形成される電界efによって液晶LCの液晶分子mがいずれか一方の部材Pと交わる面内で回転するように配設すればよい。
【0041】
なお、一対の電極E,Eを前記一対の部材P ,Pの外面に取り付けてもよい。この場合、一対の部材P ,Pの素材を導電体や電界が透過できる素材とすれば、一対の部材P ,P間に電界efを形成することができる。
さらになお、一対の部材P ,Pの素材を導電体とした場合、制御装置Dを直接一対の部材P ,Pに接続すれば、制御装置Dによって流路Lに電圧を加えれば、一対の部材P ,P間に電界efを発生させることができる。
【0042】
このため、一対の電極E ,Eに電圧を加えて上下一対の部材P ,Pに垂直な電界efに形成すれば、液晶LCには、一対の部材P ,Pに平行かつラビング方向と平行な流れが発生する。すると、下方の部材Pは固定されているに対し、上方の部材Pは下方の部材Pに対して相対的に移動可能であるから、液晶LCの流れの方向に下方の部材Pを、ラビング方向に沿って移動させることができる(図5(B) )。
【0043】
また、一対の配向膜F ,Fのラビング方向を変えて、上方の部材Pに設けられた配向膜Fのラビング方向を、下方の部材Pに設けられた配向膜Fのラビング方向に対して交差するように設ければ、上方の部材Pに隣接する液晶分子mの軸方向が、下方の部材Pに隣接する液晶分子mの軸方向に対して傾くように液晶LCがねじれる。つまり、一対の部材P ,P間で、液晶LCが部材Pと交差する軸周りにツイストされる。
すると、下方の部材Pに設けられた配向膜Fのラビング方向に対して一対の部材P ,Pに発生する液晶LCの流動方向を、自由に変えることができるので、下方の部材Pに対して上方の部材Pを、水平面内で所望の方向に移動させることができる。
【0044】
したがって、第一実施形態の物体移動機構によれば、上方の部材P上に移動させたい物体を載せれば、液晶LCの流動によって、その物体を下方の部材Pに対して、水平面内で所望の方向に移動させることができるのである。
【0045】
また、図示しない制御装置Dによって、一対の電極E,E間にパルス状の電圧を断続して加えれば、下方の部材Pに対して上方の部材Pを、断続て移動させることができる。しかも、一対の電極E,E間に加えるパルス状の電圧の時間間隔、つまり電界を加える時間間隔を変化させれば、上方の部材Pの移動量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、上方の部材Pをより連続的に移動させることができる。
【0046】
なお、対向する一対の部材P,Pは平行でなくてもよく、例えば下方の部材Pの壁面に対して上方の部材Pの壁面が傾斜していてもよい。この場合、上方の部材Pと平行な面に沿って、上方の部材Pを移動させることができる。つまり、下方の部材Pに対して上方の部材Pを3次元的に移動させることができる。
さらになお、各部材Pの対向する壁面は平坦面でなくてもよい。例えば一方の部材Pの壁面が平坦面であって他方の部材Pの壁面が凹凸を有する面でもよいし、いずれの部材Pの壁面も凹凸を有する面であってもよい。
【0047】
つぎに、第二実施形態の物体移動機構を説明する。
図6は第二実施形態の物体移動機構の説明図である。第一実施形態の物体移動機構は一対の部材P ,Pの間に液晶LCを入れているが、第二実施形態の物体移動機構では、外側部材Aと、この外側部材A内に配設された内側軸Cとの間に液晶LCを入れたことが特徴である。
【0048】
図6に示すように、内側軸Cは、外側部材A内に収容されており、その中心軸が外側部材Aの中心軸と同軸になるように配設されている。また、この内側軸Cは、外側部材A内において、その軸周りに回転自在に取り付けられている。
【0049】
前記内側軸Cと外側部材Aとの間には、液晶LCが入れられており、この液晶LCと、内側軸Cの外面および外側部材Aの内面との間には、一対の配向膜F ,Fがそれぞれ設けられている。外側部材Aの内面に設けられた配向膜Fは、図6(A) では時計回りにラビングされており、内側軸Cの外面に設けられた配向膜Fは反時計回りにラビングされている。よって、上下一対の部材P ,P間において、全ての液晶分子mは、その軸方向を内側軸Cの外面の接線方向に配列し、しかも、下流側が上傾するように配列する。
【0050】
なお、図示しないが、外側部材Aおよび内側軸Cには、電圧を加えると、外側部材Aおよび内側軸Cの半径方向に電界が形成されるようにそれぞれ一対の電極が設けられている。
【0051】
このため、外側部材Aを固定した状態で、外側部材Aと内側軸Cの間にその半径方向の電界efを形成すれば、液晶LCには、内側軸Cの接線方向に沿って流れが発生する。すると、内側軸Cは、外側部材Aの中空な空間内において、その軸周りに回転可能であるから、液晶LCの流れの方向に沿って、内側軸Cを反時計回りに回転させることができる。
逆に、内側軸Cを固定した状態で、外側部材Aと内側軸Cの間にその半径方向の電界efを形成すれば、液晶LCには、外側部材Aの内面の接線方向に沿って流れが発生する。すると、外側部材Aは、内側軸Cの軸周りに回転可能であるから、液晶LCの流れの方向に沿って、外側部材Aを反時計回りに回転させることができる。
【0052】
また、外側部材Aと内側軸Cの間において、液晶がねじれるように一対の配向膜F ,Fをラビングすれば、外側部材Aと内側軸Cの間における液晶LCの流れを内側軸Cの接線方向に対して傾けることができる。つまり、内側軸Cおよび外側部材Aを、内側軸Cの軸周りに回転させるだけでなく、内側軸Cの軸方向へも移動させることができる。
【0053】
したがって、第二実施形態の物体移動機構によれば、液晶LCの流動によって、内側軸Cおよび外側部材Aを、内側軸Cの軸周りに回転させることができる。
【0054】
また、図示しない制御装置Dによって、外側部材Aと内側軸Cの間に断続して電界efを加えれば、内側軸Cや外側部材Aに断続して回転力を与えることができる。しかも、電界を加える時間間隔を変化させれば、内側軸Cや外側部材Aの回転数を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、内側軸Cおよび外側部材Aの任意の時間における回転角速度を一定に近づけることができる。
【0055】
さらに、外側部材Aと内側軸Cの間において、液晶がねじれるように一対の配向膜F ,Fをラビングすれば、内側軸Cおよび外側部材Aを、内側軸Cの軸周りに回転させるだけでなく、内側軸Cの軸方向へも移動させることができる。
【0056】
つぎに、第三実施形態の物体移動機構を説明する。
図7は第三実施形態の物体移動機構の説明図である。同図において、符号Lは外側部材を示している。この外側部材Lは、その内部に、例えば対向する一対の壁面B ,Bを有する、断面が方形の中空な空間が形成されている。この外側部材Lの左右両端間は、連結通路CPによって連通されている。
【0057】
なお、外側部材Lの内部に形成される中空な空間は、対向する一対の壁面B ,Bを有しておれば、その断面形状は方形でなくてもよい。
さらになお、外側部材Lの内部に形成される中空な空間は、対向する一対の壁面B ,Bを有していなくてもよく、その断面形状が円形であってもよく、特に限定はない。
【0058】
前記外側部材Lの中空な空間の内部において、前記外側部材Lの左右方向の中間には、この中空な空間を左右に分割するように内側部材IPが収容されている。この内側部材IPは、その外周面を、外側部材Lの壁面Bに接触させたままで、外側部材Lの壁面Bに沿って左右方向に移動することができるように配設されている。
【0059】
また、前記外側部材Lの中空な空間の内部および前記連結通路CP内には、液晶LCが入れられている。この液晶LCは、例えばネマティック液晶やスメクティック液晶、コレステリック液晶、ディスコティック液晶等であるが、電界を加えたときに、液晶分子が回転する液晶であれば、特に限定はない。
【0060】
この液晶LCと、外側部材Lの対向する一対の壁面B ,Bとの間には、一対の配向膜F ,Fがそれぞれ設けられている。この一対の配向膜F ,Fは、その素材が、例えばポリイミド等の高分子物質である。
この一対の配向膜F ,Fのうち、下方の壁面Bに設けられた配向膜Fにおいて、図7における内側部材IPより右側の部分は左から右にラビングされており、内側部材IPより左側の部分は右から左にラビングされている。
一方、一対の配向膜F ,Fのうち、上方の壁面Bに設けられた配向膜Fにおいても、内側部材IPより右側の部分は左から右にラビングされており、内側部材IPより左側の部分は右から左にラビングされている。
つまり、一対の配向膜F ,Fは、いずれも、内側部材IPより右側の部分は左から右にラビングされ、内側部材IPより左側の部分は右から左にラビングされているのである。
【0061】
このため、液晶Lは、外側部材Lの対向する一対の壁面B ,B間において180°ツイストされ、しかも全ての液晶分子mの内側部材IPから遠い側の一端がチルトするように配列するのである。
【0062】
なお、液晶LCと対向する一対の壁面B ,Bとの間には、配向膜Fを設けなくてもよく、流路Lの一対の壁面B ,Bにラビングレス処理をしてやればよい。
【0063】
さらになお、一対の壁面B ,B間において、液晶LCのツイスト角は180°に限られず、内側部材IPに向かう流れを発生させることができれば、特に限定はない。
【0064】
前記流路Lの一対の壁面B ,Bと前記一対の配向膜F ,Fとの間において、内側部材IPの左右両側には、二組の電極E,Eが設けられている。この二組の電極E,Eは、いずれも両者を結ぶ線が一対の壁面B ,Bと垂直になるように配設されている。また、この二組の電極E,Eは、電源を有する制御装置Dに接続されている。
また、この二組の電極E,Eと制御装置Dとの間には、切り換えスイッチSWが設けられている。この切り換えスイッチSWは、右側の電極E,Eと制御装置Dを接続する位置と、左側の電極E,Eと制御装置Dを接続する位置と、いずれの電極にも制御装置Dを接続しない中立位置とを備えている。
このため、切り換えスイッチSWによって、二組の電極E,Eのうちいずれか一方の電極E,Eと制御装置Dを接続し、制御装置Dによって電圧を加えれば、内側部材IPの左右いずれか一方の電極E,E間に、一対の壁面B ,Bと垂直な電界efを形成することができる。この二組の電極E,E、前記一対の配向膜F ,F、切り換えスイッチSWおよび制御装置Dが、特許請求の範囲にいう液晶分子回転手段を構成している。
【0065】
なお、各電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の壁面B ,Bと垂直になるように配設しなくてもよく、各電極E,E間に形成される電界efによって液晶LCの液晶分子mがいずれか一対の壁面B ,Bと交わる面内で回転するように配設すればよい。
【0066】
さらになお、電極E,Eを前記流路Lの外面に取り付けてもよい。この場合、流路Lの素材を導電体や電界が透過できる素材とすれば、電極E,E間に電界efを形成することができる。
【0067】
このため、切り換えスイッチSWによって、二組の電極E,Eのうち右側の電極E,Eを制御装置Dと接続し、制御装置Dによって電圧を加えれば、内側部材IPより右側の液晶LCには右から左に向かって流れる液晶流動が発生する。つまり、液晶LCによって内側部材IPが左に押される。すると、内側部材IPより左側に入っていた液晶LCは、連結通路CPを通っての内側部材IPより右側に移動することができるので、内側部材IPは左に移動するのである。
また、切り換えスイッチSWを切り換えて、左側の電極E,Eを制御装置Dと接続し、制御装置Dによって電圧を加えれば、液晶LCによって内側部材IPが右に押され、内側部材IPより右側に入っていた液晶LCは、連結通路CPを通っての内側部材IPより左側に移動することができるので、内側部材IPは右に移動する。
したがって、切り換えスイッチSWを切り換えて、左右いずれか一方の電極E,E間に電圧を加えれば、内側部材IPを左右に移動させることができるのである。
【0068】
したがって、第三実施形態の物体移動機構によれば、切り換えスイッチSWを切り換えて、左右いずれか一方の電極E,E間に電圧を加えれば、液晶LCの流動によって、流路Lの壁面Bに沿って、内側部材IPを左右に移動させることができるのである。
とくに、液晶LCの液晶分子m、内側部材IPに対して面対称となるように配列すれば、内側部材IPを左右から押す力を同じにすることができ、内側部材IPを安定して移動させたり元の位置に復帰させたりすることができるので好適である。
【0069】
また、制御装置Dによって、一対の電極E,E間にパルス状の電圧を断続して加えれば、内側部材IPを、断続して移動させることができる。しかも、一対の電極E,E間に加えるパルス状の電圧の時間間隔、つまり電界を加える時間間隔を変化させれば、内側部材IPの移動量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、内側部材IPをより連続的に移動させることができる。
【0070】
さらに、切り換えスイッチSWを、連続的に切り換えて、内側部材IPの右側左側の電極E,E間に電圧を交互に加えれば、内側部材IPを左右に振動させることもできる。
【0071】
なお、液晶Lは、全ての液晶分子mの内側部材IPから遠い側の一端がチルトするように配列しているが、液晶Lの全ての液晶分子mが、その内側部材IP側の一端がチルトするように配列してもよい。この場合、二組の電極E,Eのうち右側の電極E,Eを制御装置Dと接続して電圧を加えれば、内側部材IPより右側の液晶LCには左から右に向かって流れる液晶流動が発生する。すると、内側部材IPより右側に入っていた液晶LCは連結通路CPを通っての内側部材IPより左側に移動するので、内側部材IPが右に押され、内側部材IPを右に移動させることができる。逆に、左側の電極E,Eを制御装置Dと接続して電圧を加えれば、内側部材IPより左側に入っていた液晶LCは連結通路CPを通っての内側部材IPより右側に移動するので、内側部材IPを右に移動させることができるのである。
【0072】
上記のごとき構成であるので、本発明の物体移動機構は、以下のように応用することができる。
第一実施形態の物体移動機構を応用すれば、液晶を利用した搬送装置を作ることができる。そして、このような搬送装置等は、非常にコンパクトに作ることができ、しかも微弱な電力などによって駆動させることができるので、例えばマイクロマシーンに付随する作業機械等に適用可能である。
また、第二実施形態の物体移動機構を応用すれば、液晶を利用したモータを作ることができるし、自動で軸方向に移動するドリルや、刃のみが軸周りに回転するカッタなども作ることも可能である。そして、このようなモータ等は、非常にコンパクトに作ることができ、しかも微弱な電力などによって駆動させることができるので、例えばマイクロマシーンの駆動装置等に適用可能である。
さらに、第三実施形態の物体移動機構を応用すれば、液晶を作動流体とするアクチュエータに応用することができる。そして、このようなアクチュエータは、非常にコンパクトに作ることができ、しかも微弱な電力などによって作動させることができるので、例えばマイクロマシーンに付随する作業機械等に適用可能である。
【0073】
また、第一~第三実施形態の物体移動機構のいずれの場合でも、微弱な電力によって液晶流動を発生させることができるので、微弱な電流が流れたときに発生する磁界や電界を感知して、作動するセンサなどにも応用可能である。
【0074】
【計算例】
次に、上下一対の無限平板間に液晶を挿入した状態において、この液晶に無限平板と垂直に電界を加えた場合に、上下一対の無限平板間に発生する液晶流動を計算した結果を示す。流量は、図1および図2におけるX軸およびZ軸方向の流量を求めた。
【0075】
今回の数値計算には、連続体理論に基づいて1968年に開発されたLeslie-Ericksen理論を用いた。空間の離散化には有限差分法を、時間積分にはルンゲクッタ法を使った、使用した言語はフォートラン、計算機はEWSである。
また、今回は、以下の条件で計算を行った。
平行平板間距離:1mm
分割数 :100分割
時間刻み :10-7秒,
磁場強度 :次式で定義されるゾッヘル数が45
ゾッヘル数=L×H×(Δχ/K112
(Lは平板間距離,Hは磁場強度,Δχは磁化率の異方性,K1は広がりに関するフランク弾性定数)
ツイスト角 :0度~540度
液晶 :p-azoxyanisole (PAA)
なお、上下一対の無限平板間において、液晶は、ツイスト角が180°の場合、液晶分子が図1および図2の状態となるようにツイストしている。
【0076】
図8は、(A) は液晶のツイスト角に対するZ軸方向の流量を示した図であり、(B) は液晶のツイスト角に対するX軸方向の流量を示した図であり、(C) は流動方向のZ軸の正の部分に対する角度を、液晶のツイスト角に対して示した図である。同図(A) に示すように、液晶のツイスト角が0°から変化すると、Z軸方向には、Z軸の負の方向(図1では右方向)への流量が発生し、ツイスト角が200°近傍で最大流量となっている。そして、Z軸方向には、必ず負の流量が発生することが示されている。つまり、今回の条件では、Z軸方向には、Z軸の負の方向(図1では右方向)への流量が発生することが確認できる。
一方、X軸方向では、液晶のツイスト角が0°から変化すると、まず正の方向(図2では左方向)への流量が発生し、ツイスト角が90°近傍で最大流量となる。そして、ツイスト角が180°で再び流量が0となり、ツイスト角が180°以上では、全て負の流量へと転じている。つまり、今回の条件では、ツイスト角をかえることによって、X軸方向には正負いずれの方向への流量も発生させることができることが確認できる。
【0077】
そして、図8(C) に示すように、液晶がツイストされていない場合、つまりツイスト角が0°の場合には、X軸方向およびZ軸方向のいずれの方向も液晶の流量は0となり、液晶内には流量が発生しない。しかし、液晶が少しでも反時計回りにツイストされると、X軸方向およびZ軸方向には流量が0とならない液晶流動が発生する。このX軸方向およびZ軸方向の流量を合成した流量、つまり上下一対の無限平板間に発生する液晶流動の方向は、液晶LCのツイスト角の増加にともなって、Z軸の正の部分に対する反時計回りの傾きが直線的に大きくなる。そして、液晶LCのツイスト角が180°になると、Z軸の正の部分に対する液晶流動の傾きが180°、つまりZ軸の負の方向への流れとなり、さらに液晶をツイストしてそのツイスト角が360°になると、Z軸の正の部分に対する液晶流動の傾きが270°、つまりX軸の負の方向への流れとなるのである。つまり、液晶LCをツイスト方向を時計回り、反時計回りで変えれば、Z軸方向から360°の範囲で液晶流動の方向を変化させることができる。
【0078】
したがって、上下一対の無限平板間において、液晶LCをツイストする角度を調整すれば、上下一対の無限平板間のX軸Z軸平面と平行な方向では、所望の方向に液晶流動を発生させることができることが確認できる。
【0079】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、壁面に沿って、流量が0とならない液晶流動を発生させることができ、しかもこの液晶流動を、物体を移動させる装置やセンサ、アクチュエータなどに容易に利用することができる。
請求項2の発明によれば、ラビング方向と直交する断面では、ラビング方向と逆向きかつ流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。
請求項3の発明によれば、液晶をツイストする角度を調整すれば、所望の方向への液晶流動を発生させることができる
求項の発明によれば、常に一定の方向に液晶流動を発生させることができる。
請求項の発明によれば、一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができ、液晶流動の流量を変化させることができ、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
請求項の発明によれば、一方の部材を固定すれば、一方の部材に対して他方の部材を所望の方向に移動させることができる。
請求項7の発明によれば、一方の部材を固定すれば、一方の部材に対して他方の部材を所望の方向に移動させることができる。
請求項の発明によれば、一対の配向膜のラビング方向を調整すれば、一方の部材に対して他方の部材を所望の方向に移動させることができる。
請求項9の発明によれば、液晶をツイストする角度を調整すれば、一方の部材に対して他方の部材を所望の方向に移動させることができる。
請求項10の発明によれば、内側軸または外側部材のいずれか一方を固定すれば、他方を内側軸の中心軸周りに回転させることができる。
請求項11の発明によれば、内側軸または外側部材のいずれか一方を固定すれば、他方を内側軸の中心軸周りに回転させることができる。
請求項12の発明によれば、内側軸の外周面に設けられている配向膜のラビング方向および外側部材の内面に設けられている配向膜のラビング方向を調整すれば、内側軸および外側部材を、内側軸の中心軸周りに回転させるだけでなく、内側軸の中心軸に沿った方向へも移動させることができる。
請求項13の発明によれば、内側軸および外側部材を、内側軸の中心軸周りに回転させるだけでなく、内側軸の中心軸に沿った方向へも移動させることができる。
請求項14の発明によれば、内側部材を挟むいずれの一方の空間の液晶を液晶分子回転手段によって回転させれば、内側部材を外側部材の内面に沿って移動させることができる。
請求項15の発明によれば、内側部材を挟むいずれの一方の空間の液晶を液晶分子回転手段によって回転させれば、内側部材を外側部材の内面に沿って移動させることができる。
請求項16の発明によれば一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができ、液晶流動の流量を変化させることができ、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
請求項17の発明によれば、壁面に沿って、流量が0とならない液晶流動を発生させることができ、しかもこの液晶流動を、物体を移動させる装置やセンサ、アクチュエータなどに容易に利用することができる。
請求項18の発明によれば、ラビング方向と直交する断面では、ラビング方向と逆向きかつ流量が0とならない液晶流動を発生させることができる。
請求項19の発明によれば、液晶をツイストする角度を調整すれば、所望の方向への液晶流動を発生させることができる。
請求項20の発明によれば一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができ、液晶流動の流量を変化させることができ、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶流動形成機構の概略説明図であり、(A) はYZ断面図であり、(B) はYZ断面図において電界を加えたときにおける液晶分子の配列を示した図であり、(C) はYZ断面図において電界を加えたときに一対の壁面B間に発生する液晶の速度分布を示した図である。
【図2】本発明の液晶流動形成機構の概略説明図であり、(A) はXY断面図であり、(B) はXY断面図において電界を加えたときにおける液晶分子の配列を示した図であり、(C) はXY断面図において電界を加えたときに一対の壁面B間に発生する液晶の速度分布を示した図である。
【図3】電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図である。
【図4】平行板P上に載せられた液晶LCに電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図である。
【図5】第一実施形態の物体移動機構の説明図である。
【図6】第二実施形態の物体移動機構の説明図である。
【図7】第三実施形態の物体移動機構の説明図である。
【図8】(A) は液晶のツイスト角に対するZ軸方向の流量を示した図であり、(B) は液晶のツイスト角に対するX軸方向の流量を示した図であり、(C) は流動方向のZ軸の正の部分に対する角度を、液晶のツイスト角に対して示した図である。
【図9】電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図である。
【符号の説明】
L 流路
B 壁面
F 配向膜
LC 液晶
m 液晶分子
ef 電界
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図2】
7
【図9】
8