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明細書 :液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構並びにこの機構を用いた速度・変位量センサ並びに歪み速度・歪み量センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4803344号 (P4803344)
公開番号 特開2006-220457 (P2006-220457A)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年10月26日(2011.10.26)
公開日 平成18年8月24日(2006.8.24)
発明の名称または考案の名称 液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構並びにこの機構を用いた速度・変位量センサ並びに歪み速度・歪み量センサ
国際特許分類 G01P   3/36        (2006.01)
G01P   3/46        (2006.01)
G02F   1/13        (2006.01)
G02F   1/1337      (2006.01)
FI G01P 3/36 Z
G01P 3/46 Z
G02F 1/13 505
G02F 1/1337 525
請求項の数または発明の数 16
全頁数 18
出願番号 特願2005-032129 (P2005-032129)
出願日 平成17年2月8日(2005.2.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年8月9日 社団法人日本流体力学会発行の「日本流体力学会誌『ながれ』 第23巻別冊 日本流体力学会年会2004講演論文集」に発表
特許法第30条第1項適用 2004年(平成16年)9月4日 社団法人日本機械学会発行の「2004年度年次大会講演論文集(2)」に発表
審査請求日 平成19年11月13日(2007.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】509093026
【氏名又は名称】公立大学法人高知工科大学
発明者または考案者 【氏名】蝶野 成臣
【氏名】辻 知宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100082072、【弁理士】、【氏名又は名称】清原 義博
審査官 【審査官】大谷 純
参考文献・文献 特開平05-196527(JP,A)
特開2003-113814(JP,A)
特開昭62-159059(JP,A)
特開平08-254682(JP,A)
特開2002-202509(JP,A)
調査した分野 G01P 3/36
G01P 3/46
G02F 1/13
G02F 1/1337
特許請求の範囲 【請求項1】
液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、
前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、
前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶からなり、
前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に歪みを生じせしめ、
前記第1配向面が配向処理により形成され、
該配向処理の方向が、前記第2部材の移動方向に対して平行であり、
時間変動しない液晶配向場の歪みを発生することができる
ことを特徴とする液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構。
【請求項2】
液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、
前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、
前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶からなり、
前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に歪みを生じせしめ、
前記第1配向面が配向処理により形成され、
該配向処理の方向が、前記第2部材の移動方向に対して平行ではなく、一定周期で変動する液晶配向場の歪み発生することができる
ことを特徴とする液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構。
【請求項3】
前記第1部材及び前記第2部材が平行平板であることを特徴とする請求項1記載の液晶分子場歪み発生機構。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材が平行平板ではないことを特徴とする請求項2記載の液晶分子場歪み発生機構。
【請求項5】
液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、
前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、
前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって誘起される液晶の配向場の時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みにより生ずる第1配向面と第2配向面間の電位差を計測する電位差測定手段を備えることを特徴とする速度・変位量センサ。
【請求項6】
前記電位差測定手段が、前記第1配向面と前記第2配向面のそれぞれ対向する位置に配設される導電体と、
該導電体と電気的に接続する電圧計からなることを特徴とする請求項5記載の速度・変位量センサ。
【請求項7】
液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する光透過性の第1部材と、
前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶に対する束縛力を有する第2配向面を備える光透過性の第2部材と、
前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と、
前記第1部材及び前記第2部材に光を照射し、前記第1部材及び前記第2部材との間に
形成される液晶配向場を通過する光を測定する光測定手段を備え、
前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みを生じせしめることを特徴とする速度・変位量センサ。
【請求項8】
前記光測定手段が、前記液晶配向場に光線を照射する光源と、
前記光源からの光線を受光する受光器からなることを特徴とする請求項7記載の速度・変位量センサ。
【請求項9】
前記光測定手段が、前記光源からの光の光量を測定することを特徴とする請求項8記載の速度・変位量センサ。
【請求項10】
前記光測定手段が、前記光源からの光の波長を測定することを特徴とする請求項8記載の速度・変位量センサ。
【請求項11】
液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、
前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、
前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と、
前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって誘起される液晶の配向場の歪みにより生ずる第1配向面と第2配向面間の電位差を計測する電位差測定手段と、
前記計測された電位差から、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差を算出し、該速度差を前記第1配向面と前記第2配向面との間の間隔で除する演算装置からなり、
前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みを生じせしめることを特徴とする液晶の流動による歪み速度・歪み量センサ。
【請求項12】
前記電位差測定手段が、前記第1配向面と前記第2配向面のそれぞれに対向する位置に配設される導電体と、
該導電体と電気的に接続する電圧計からなることを特徴とする請求項11記載の歪み速度・歪み量センサ。
【請求項13】
液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する光透過性の第1部材と、
前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶に対する束縛力を有する第2配向面を備える光透過性の第2部材と、
前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と、
前記第1部材及び前記第2部材に光を照射し、前記第1部材及び前記第2部材との間に形成される液晶配向場を通過する光を測定する光測定手段と、
前記計測された光から、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差を算出し、該速度差を前記第1配向面と前記第2配向面との間の間隔で除する演算装置からなり、
前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みを生じせしめることを特徴とする液晶の流動による歪み速度・歪み量センサ。
【請求項14】
前記光測定手段が、前記液晶配向場に光線を照射する光源と、
前記光源からの光線を受光する受光器からなることを特徴とする請求項13記載の歪み速度・歪み量センサ。
【請求項15】
前記光測定手段が、前記光源からの光の光量を測定することを特徴とする請求項14記載の歪み速度・歪み量センサ。
【請求項16】
前記光測定手段が、前記光源からの光の波長を測定することを特徴とする請求項14記載の歪み速度・歪み量センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶分子場に歪みを生じさせる液晶分子場歪み発生機構並びに該液晶分子場歪み発生機構の応用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての物質には気体・液体・結晶の3状態があることは、一般によく知られている。ある種の物質は、この3状態に加えて、液体と結晶の中間的状態をとる場合があり、該中間的状態が「液晶状態」と呼ばれる。「液晶状態」をとる物質は、該物質の構成分子が棒状或いは円板状等の特別な形状を有する。
【0003】
「液晶状態」をとる物質は、「結晶状態」とされると、その分子配列が重心位置及び分子の向きがともに規則正しく並んでいる状態となり、「液晶状態」とされると、重心位置が不規則となる一方で、分子の向きの規則性は略維持された状態となり、「液体状態」とされると、重心位置及び分子の向きが不規則な状態となる。「液晶状態」のときの、液晶分子の局所的平均配向方向は、「配向方向」或いは「ディレクタ」と表される。
液晶は、その構成分子の配向状態により、「ネマティック液晶」、「コレステリック液晶」、「スメクティック液晶」の3種類に大別される。
このような「液晶状態」をとる物質、即ち、液晶は液晶ディスプレイを筆頭に様々な工業製品に応用されている。近年になり、液晶における圧電効果が発見され圧電材料としての利用用途が期待されている。
【0004】
液晶の圧電効果について説明する。図1は、分子の分極状態を示す図であり、図1(a)は液晶分子の永久双極子モーメントが分子長軸方向を向いている楔形状分子において、液晶分子の配向場に歪みを生じさせる前の状態を示し、図1(b)は、図1(a)に示す配向場に歪みを生じさせた後の状態を示す。図1(c)は液晶分子の永久双極子モーメントが分子軸に対して垂直方向を向いているバナナ形状分子において、液晶分子の配向場に歪みを生じさせる前の状態を示し、図1(d)は、図1(c)に示す配向場に歪みを生じさせた状態を示す。図1中矢印は永久双極子モーメントの方向を示す。
ある物質は、特定の方向に力を加えると応力に応じた電気分極を生じ、一対の物質表面に正負の電荷が生ずる。この現象は、圧電効果或いは正圧電効果と呼ばれる。また、このような物質に電場をかけると電場に応じた歪みが発生する。この現象は、逆圧電効果と呼ばれる。
このような圧電効果は、気体や液体の状態にある物質においては、該物質を構成する分子がたとえ永久双極子モーメントを有するものであったとしても、自由な分子運動のためにその分子の向きはランダムとなり、巨視的な分極を生じ得ない。また、結晶状態の物質においても、その構成分子が反転対称中心を有する場合には、その分子配列の対称性から巨視的な分極を生ずるものとはならない。
液晶は、流動性を有するものの、短距離とはいえ分子配向の秩序を有する。したがって、液晶分子の配向場に歪みを与えると、巨視的な分極を生ずるものとなる。これは、フレクソエレクトリック効果と呼ばれる。
【0005】
図1(a)及び(c)に示すように、分子が外力を受けていない場合においては、永久双極子モーメントが対称性を保つ。したがって、分子の形状効果は相殺され、巨視的な分極は発生しない。しかしながら、図1(b)及び(d)に示すように、液晶分子の配向場に歪みを生じさせると、分子配列の対称性が崩れ、巨視的な分極を生ずる。
【0006】
上述の如く、液晶材料は液晶ディスプレイ等の既によく知られた工業製品への応用のみならず、新たな技術的利用分野への応用が試みられている。特許文献1には、液晶の特性を応用した新規な技術的応用装置が開示されている。特許文献1に開示される装置は、一対の平板間に封入された液晶に所定電圧を加えることによって、該液晶の分子を回転させ、平板間の液晶を流動可能とするものである。この装置は液晶の流動エネルギを利用してアクチュエータなどの装置に利用可能なものである。
【0007】

【特許文献1】特開2003-113814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在のところ、静止した状態の液晶に電磁エネルギを付加し、ディレクタを動作させるという現象の利用のみが研究されており、液晶分子場の歪みから得られる物理的変動を利用する研究は行われていない。
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、液晶分子場を歪ませ、該歪み発生現象から得られるさまざまな物理的変動を利用するための機構並びに該機構を利用した応用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶からなり、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に歪みを生じせしめ
前記第1配向面が配向処理により形成され、
該配向処理の方向が、前記第2部材の移動方向に対して平行であり、
時間変動しない液晶配向場の歪みを発生することができることを特徴とする液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構である
請求項記載の発明は、液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、 前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶からなり、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に歪みを生じせしめ、前記第1配向面が配向処理により形成され、該配向処理の方向が、前記第2部材の移動方向に対して平行ではなく、一定周期で変動する液晶配向場の歪み発生することができることを特徴とする液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構である。
請求項記載の発明は、前記第1部材及び前記第2部材が平行平板であることを特徴とする請求項記載の液晶分子場歪み発生機構である。
請求項記載の発明は、前記第1部材及び前記第2部材が平行平板ではないことを特徴とする請求項2記載の液晶分子場歪み発生機構である。
【0010】
請求項記載の発明は、液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって誘起される液晶の配向場の時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みにより生ずる第1配向面と第2配向面間の電位差を計測する電位差測定手段を備えることを特徴とする速度・変位量センサである。
請求項記載の発明は、前記電位差測定手段が、前記第1配向面と前記第2配向面のそれぞれ対向する位置に配設される導電体と、該導電体と電気的に接続する電圧計からなることを特徴とする請求項記載の速度・変位量センサである。
【0011】
請求項7記載の発明は、液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する光透過性の第1部材と、前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶に対する束縛力を有する第2配向面を備える光透過性の第2部材と、前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と、前記第1部材及び前記第2部材に光を照射し、前記第1部材及び前記第2部材との間に形成される液晶配向場を通過する光を測定する光測定手段を備え、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みを生じせしめることを特徴とする速度・変位量センサである。
請求項8記載の発明は、前記光測定手段が、前記液晶配向場に光線を照射する光源と、前記光源からの光線を受光する受光器からなることを特徴とする請求項7記載の速度・変位量センサである。
請求項9記載の発明は、前記光測定手段が、前記光源からの光の光量を測定することを特徴とする請求項8記載の速度・変位量センサである。
請求項10記載の発明は、前記光測定手段が、前記光源からの光の波長を測定することを特徴とする請求項8記載の速度・変位量センサである。
【0012】
請求項11記載の発明は、液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する第1部材と、前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶配向に対する束縛力を有する第2配向面を備える第2部材と、前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって誘起される液晶の配向場の歪みにより生ずる第1配向面と第2配向面間の電位差を計測する電位差測定手段と、前記計測された電位差から、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差を算出し、該速度差を前記第1配向面と前記第2配向面との間の間隔で除する演算装置からなり、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みを生じせしめることを特徴とする液晶の流動による歪み速度・歪み量センサである。
請求項12記載の発明は、前記電位差測定手段が、前記第1配向面と前記第2配向面のそれぞれ対向する位置に配設される導電体と、該導電体と電気的に接続する電圧計からなることを特徴とする請求項11記載の歪み速度・歪み量センサである。
【0013】
請求項13記載の発明は、液晶に対する配向処理を施された第1配向面を有する光透過性の第1部材と、前記第1配向面に対向する面に該第1配向面と異なる強さの液晶に対する束縛力を有する第2配向面を備える光透過性の第2部材と、前記第1配向面と前記第2配向面の間に形成される空間内に流動可能に封入される液晶と、前記第1部材及び前記第2部材に光を照射し、前記第1部材及び前記第2部材との間に形成される液晶配向場を通過する光を測定する光測定手段と、前記計測された光から、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差を算出し、該速度差を前記第1配向面と前記第2配向面との間の間隔で除する演算装置からなり、前記第1部材と前記第2部材との間の速度差によって、前記液晶の配向場に時間変動しないか、又は一定周期で変動する歪みを生じせしめることを特徴とする液晶の流動による歪み速度センサである。
請求項14記載の発明は、前記光測定手段が、前記液晶配向場に光線を照射する光源と、前記光源からの光線を受光する受光器からなることを特徴とする請求項13記載の歪み速度・歪み量センサである。
請求項15記載の発明は、前記光測定手段が、前記光源からの光の光量を測定することを特徴とする請求項14記載の歪み速度・歪み量センサである。
請求項16記載の発明は、前記光測定手段が、前記光源からの光の波長を測定することを特徴とする請求項14記載の歪み速度・歪み量センサである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、第1部材と第2部材間の相対速度によって、第1配向面と第2配向面に挟まれる液晶配向場に歪みを生じさせることができる。また、請求項記載の発明によれば、時間変動しない液晶配向場の歪みを発生させることができる。
請求項記載の発明によれば、一定周期で変動する液晶配向場の歪みを発生させることができる。
請求項記載の発明によれば、第1部材と第2部材間の相対速度によって、第1配向面と第2配向面に挟まれる液晶配向場に歪みを生じさせることができる。また、比較的単純なディレクタの運動を伴う液晶配向場の歪みを得ることができる。
請求項記載の発明によれば、第1部材並びに第2部材の材料選択に制限を受けない液晶分子場歪み発生機構を得ることが可能である。
【0015】
請求項5及び6記載の発明によれば、液晶配向場の歪みにより生ずる電位差を計測可能となり、計測された電位差から第1部材と第2部材間の相対的速度を求めることができる。
請求項7乃至10記載の発明によれば、第1部材と第2部材間の速度差によって歪まされた液晶配向場を通過する光を計測可能となり、第1部材と第2部材間の相対的速度並びに第1部材と第2部材間の相対的変位量を求めることができる。
【0016】
請求項11及び12記載の発明によれば、液晶配向場の歪みにより生ずる電位差を計測可能となり、計測された電位差から第1部材と第2部材間の液晶分子場の歪み速度並びに歪み量を求めることができる。
請求項13乃至16記載の発明によれば、第1部材と第2部材間の速度差によって歪まされた液晶配向場を通過する光を計測可能となり、第1部材と第2部材間の液晶分子場の歪み速度並びに歪み量を求めることができる。


【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構及びその応用装置について、図を参照しつつ説明する。図2は、図1を用いて説明した液晶分子の分極発生原理を利用した液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構の概略図である。図2(a)は、液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構作動前の状態を示し、図2(b)は、液晶の流動による液晶分子場歪み発生機構作動後の状態を示す。
図2に示す液晶分子場歪み発生機構(1)は、一対の平板からなり、下側に配される平板が第1部材(2)であり、上側に配される平板が第2部材(3)である。
第1部材(2)上面は、ラビング処理が施され、液晶分子を強く束縛(anchoring)する第1配向面(21)とされる。第1配向面(21)に対向する第2部材(3)の下面は、軽いラビング処理が施される或いはラビング処理が施されない第2配向面(31)であり、第2配向面(31)は液晶分子をほとんど或いは全く束縛しない。尚、第1配向面(21)並びに第2配向面(31)に対して施される処理は、ラビング処理に限られるものではなく、液晶を一定方向に配向させるための全ての処理が適用可能である。
第1部材(2)と第2部材(3)の間の空間には液晶が配設され、該液晶は該空間内を流動可能である。図2において、矩形状に示される複数のディレクタ(4)が示されている。上述の如く、ディレクタ(4)は液晶分子の局所的平均配向方向を表す。
【0018】
図2において、取られる座標は、右方をX軸正の向きとし、上方をY軸正の向きとしている。また、第1配向面(21)と第2配向面(31)との距離は「H」の記号で示されている。
図2に示す液晶分子場歪み発生機構(1)の第2部材(3)は、X軸方向に平行移動可能とされている。一方、第1部材(2)は静止状態を維持するものとされる。ここで、第2部材(3)がX軸正方向に速度Uで移動すると、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間に配設された液晶にせん断歪みを生じ、液晶配向場に歪みを生ずる(図2(b)参照)。
【0019】
第1配向面(21)のラビング処理の方向はX軸に平行とされ、図2(a)に示す如く、第2部材(3)動作前においては、ディレクタ(4)は第1配向面(21)のラビング処理方向に従い、その長軸をX軸に平行に且つ第1配向面(21)に平行に横たわる。尚、この状態においては、液晶配向場には歪みが生じておらず、液晶分子の永久双極子モーメントが対称性を保った状態にあるので、ディレクタ(4)として表される局所領域において巨視的な分極は発生していない。
第2部材(3)をX軸正方向に移動させると、第1配向面(21)と第2配向面(31)の間にある液晶が流動する。液晶の流動に伴い、ディレクタ(4)はディレクタ(4)として表される局所領域の重心位置を軸として回転運動する。図2(b)に示す例においては、第2部材(3)の移動方向はX軸正方向であるので、各ディレクタ(4)は時計回りに回転する。尚、第2部材(3)をX軸負方向に移動させると、各ディレクタ(4)は反時計回りに回転する。
第1配向面(21)は、その束縛作用により、各ディレクタ(4)の回転量に影響を与え、第1配向面(21)近傍にあるディレクタ(4)はほとんど回転せず、第1配向面(21)から離れるほど、ディレクタ(4)の回転量は増加する。
【0020】
各ディレクタ(4)の回転動作は、液晶分子の長距離弾性力によって、一定の回転量で停止する。即ち、第2部材(3)の移動動作によって生ずる液晶の流動によるエネルギとこれに反発する液晶分子の長距離弾性力によるエネルギが釣り合うとき、ディレクタ(4)の回転が停止し、各ディレクタ(4)は第2部材(3)の移動速度に応じた回転位置、即ち傾斜状態を保つ。
【0021】
図2(b)に示す如く、各ディレクタ(4)は第2部材(3)の移動速度及びY軸方向位置に応じた角度でそれぞれ異なる角度で傾斜している。即ち、ディレクタ(4)として表されている局所領域における液晶配向場は、第2部材(3)の移動動作によって生ずる液晶の流動によって歪み、該局所領域内の液晶分子配列の対称性が崩れ、巨視的な分極を生ずるものとなる。この分極により、ディレクタ(4)として表される局所領域は一方の側にプラスの電荷を有し、他方の側にマイナスの電荷を有するものとなる。プラス及びマイナスの電荷がいずれの端部に現れるかは、用いられる液晶の種類によって定まる。
ディレクタ(4)は上述の如く回転動作をするため、第1部材(2)側に、ディレクタ(4)のプラス若しくはマイナスの電荷を備えるディレクタ(4)端部が集まり、第2部材(3)側に、ディレクタ(4)のマイナス若しくはプラスの電荷を備えるディレクタ(4)端部が集まる。これにより、第1部材(2)と第2部材(3)との間に電位差が生ずる。
【0022】
上述の如く、各ディレクタ(4)の傾斜角度は、第2部材(3)の移動速度によって定まる。したがって、第2部材(3)の移動速度によって、第1部材(2)と第2部材(3)との間に生ずる電位差が定まる。したがって、第1部材(2)と第2部材(3)との間の電位差を計測することにより、第2部材(3)の移動速度を求めることが可能となる。
【0023】
その他の方法として、光の測定によって第2部材(3)の移動速度を求めることも可能である。光の測定として、透過光の光量或いは透過光の波長の測定が例示できる。光の測定により第2部材(3)の移動速度を求める場合には、第1部材(2)と第2部材(3)との間に電位差を生じせしめる必要がないので、液晶分子場で分極を生じている必要を要さない。第1部材(2)及び第2部材(3)を通過する光の透過率及び波長はディレクタ(4)の傾斜角度に応じて定まる。上述の如く、第2部材(3)の移動速度に応じてディレクタ(4)の傾斜角度が定まるので、第1部材(2)及び第2部材(3)を透過する光の透過率及び/又は波長を計測することで、第2部材(3)の速度を計測することができる。
【0024】
図3は、他の応用例を示す。図3(a)は、図2(a)に示す状態からX軸正方向に第2部材(3)を移動させている状態を示し、図3(b)は図3(a)に示す状態から第2部材(3)の移動動作を停止させた状態を示す。尚、図3において、第1部材(2)と第2部材(3)の間には、7つのディレクタ(4)が示され、これら各ディレクタ(4)には、第1部材(2)に近いほうからY軸正方向に向かって、符号41乃至47が付されている。
図3(a)に示す状態において、ディレクタ(45乃至47)は初期状態(図2(a)に示す状態)から90°以上の回転量で傾斜している。その他のディレクタ(41乃至44)は初期状態から90°未満の回転量で傾斜した状態である。
この状態で、第2部材(3)の移動動作を停止させると、ディレクタ(41乃至47)は、傾斜した状態から、第1配向面(21)に平行になろうとする。このとき各液晶分子(41乃至47)は、平行状態となるために最も近い経路を辿ろうとするので、傾斜角度が90°以上であったディレクタ(45乃至47)は、初期状態に対して、略反転した状態(即ち、180°回転した状態)となり、他のディレクタ(41乃至44)は初期状態に戻る。
次に第2部材(3)を、図3(a)で示す第2部材の移動動作と反対方向に且つ同じ速度で移動させると、ディレクタ(4)は、図3(a)と逆方向の回転動作をする。そして、第2部材(3)を停止させると、整列したディレクタ(4)全てが同一の方向となり、初期状態に戻る。
【0025】
このように第2部材(3)を同速度で往復移動させることにより、第1部材(2)と第2部材(3)の間に配されるディレクタ(4)の所定個数が、第2部材(3)の停止状態時において、180°反転した状態となる。整列する全てのディレクタ(4)が同一の方向にあるとき(即ち、図2(a)に示す状態)と、整列するディレクタ(4)のうちいくつかが略180°回転した状態にあるとき(即ち、図3(b)に示す状態)とでは、光の透過率及び波長が異なる。したがって、この光の透過率及び/又は波長の差異を読み取ることによって、液晶分子場歪み発生機構(1)はメモリ機能及びスイッチング機能を備えることとなる。
尚、図3(b)に示すように、略180°回転した状態のディレクタ(45乃至47)は若干の傾斜を有している。これは、液晶分子の長距離弾性力により、初期状態側に引っ張られるためである。これら略180°回転した状態のディレクタ(45乃至47)の傾斜により生ずる電位差を計測することによって、液晶分子場歪み発生機構(1)にメモリ機能及びスイッチング機能を持たすことができる。
尚、上記において、ディレクタ(4)が略180°回転したときの状態を示したが、これに限られるものではなく、略180°の倍数(360°、540°、720°など)であれば、メモリ機能及びスイッチング機能を備える装置に適用可能である。
【0026】
図4は、液晶分子場歪み発生機構(1)の他の実施形態を示す。図4(a)は円筒型の液晶分子場歪み発生機構(1)を示し、図4(b)は円盤型の液晶分子場歪み発生機構(1)を示す。
上述において、単純化のために平行平板を用いた液晶分子場歪み発生機構(1)について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図4(a)に示すような形態を採用してもよい。図4(a)に示す円筒型の液晶分子場歪み発生機構(1)は、小径に形成された円筒形状の第1部材(2)と第1部材(2)外周面に対して所定間隔を空けて覆うように配設される大径に形成された円筒形状の第2部材(3)を備える。第1部材(1)外周面は、その周方向にラビング処理が施され、第1配向面(21)を形成している。第1配向面(21)に対向する第2部材(3)内壁面は、液晶分子をほとんど或いは全く束縛しない第2配向面(31)である。第1配向面(21)と第2配向面(31)との間には液晶が流動可能に配されている。
ここで、第1部材(2)を固定し、第2部材(3)をその中心軸周りに回転させると、図2を用いて説明したのと同様に、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間の液晶配向場に歪みを生じ、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間に電位差を生ずる。該電位差或いは液晶配向場の歪みに起因する光の透過率及び/又は波長の変化を測定することにより、第2部材(3)の回転速度を計測可能となる。
或いは、第2部材(3)を一方向に回転させた後停止させ、次に逆方向に第2部材(3)を他の方向に同速度で回転させた後停止させ、それぞれの停止状態における光の透過率及び/又は波長或いは第1配向面(21)と第2配向面(31)間の電位差を計測可能とすることで、円筒形状をしたメモリ素子或いはスイッチング素子とすることができる。
【0027】
図4(b)に示すような円盤型の液晶分子場歪み発生機構(1)も形成可能である。
円盤型の液晶分子場歪み発生機構(1)は、一対の円盤状板からなり、下側に配設される円盤状板は第1部材(2)であり、上側に配設される円盤状板は第2部材(3)である。第1部材(2)上面には環状にラビング処理が施され、第1配向面(21)を形成している。第2部材(3)下面は、液晶分子をほとんど或いは全く束縛しない第2配向面(31)である。第1配向面(21)と第2配向面(31)の間には、液晶が流動可能に配されている。
第2部材(3)をその軸心周りに回転させると、上述と同様に、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間に形成される液晶配向場に歪みが生ずる。該歪みによって生ずる第1配向面(21)と第2配向面(31)との間の電位差或いは光の透過率及び/又は波長を計測することで第2部材(3)の回転速度を計測可能となる。
或いは、第2部材(3)を一方向に回転させた後停止させ、次に逆方向に第2部材(3)を他の方向に同速度で回転させた後停止させ、それぞれの停止状態における光の透過率及び/又は波長或いは第1配向面(21)と第2配向面(31)間の電位差を計測可能とすることで、円筒形状をしたメモリ素子或いはスイッチング素子とすることができる。
【0028】
上述において、第1部材(2)を固定し、第2部材(3)を平行移動或いは回転させる例を示してきたが、本発明はこれに限られるものではなく、第1部材(2)と第2部材(3)との間に速度差が生ずればよい。例えば、上述の例とは逆に、第1部材(2)を平行移動或いは回転させ、第2部材(3)を固定してもよい。或いは、第1部材(2)を第2部材(3)の移動方向と同方向に且つ第2部材(3)の移動速度と異なる速度で移動させてもよい。或いは、第1部材(2)と第2部材(3)を反対方向に移動させてもよい。
【0029】
更には、上記説明において、第1配向面(21)と第2配向面(31)とが平行に整列した例を示してきたが、本発明はこれに限られるものではない。即ち、本発明においては、第1配向面(21)と第2配向面(31)とが液晶に対する異なる束縛力を備え、且つ、第1部材(2)と第2部材(3)との間に速度差を生じ、液晶分子場に歪みを発生させればよく、この条件を満たす限り、本発明の適用は可能である。したがって、第1部材(2)並びに第2部材(3)にフィルム等の変形しやすい材料をも適用可能であり、或いは第1配向面(21)並びに第2配向面(31)が不規則に波打つような形状をも採用可能である。よって、本発明は適用場所や適用材料に何ら限定されず、広い用途に適用可能である。
【0030】
図5に、上記液晶分子場歪み発生機構(1)を速度・変位量センサに応用した例を示す。図5(a)は液晶配向場の歪みにより生ずる電位差を測定することにより速度を計測する速度・変位量センサの構成図であり、図5(b)は液晶配向場を透過する光の透過率及び/又は波長を測定することにより速度を計測する速度・変位量センサの構成図である。
図5(a)に示す速度・変位量センサ(10)は、図3で示した平行平板型の液晶分子場歪み発生機構(1)を用いている。しかしながら、上述の円筒型或いは円盤型の液晶分子場歪み発生機構(1)若しくはその他形状の液晶分子場歪み発生機構(1)も同様に適用可能である。第1部材(2)は透明なガラス板(22)とガラス板(22)上面に配設された配向膜(23)から形成されている。配向膜(23)は例えばポリイミド等の高分子物質からなり、その上面には第2部材(3)移動方向に平行な方向にラビング処理が施され、第1配向面(21)を形成するものとなる。配向膜(23)には金属箔(5a)が埋設されている。
尚、ここでは、第1部材(2)は固定されている。
また第1部材(2)と第2部材(3)の間に配される液晶には、MBBA(4-methoxybenzylidene-4'-butylaniline)が用いられているが、回転可能な液晶分子を有する液晶であれば適用可能である。
【0031】
第2部材(3)は、ガラス板からなる。第2部材(3)下面上の前記金属箔(5a)と対向する位置には他のもう一つの金属箔(5b)が配設される。これら金属箔(5)は、液晶の流動を乱さぬように第1部材(2)上面、第2部材(3)下面とそれぞれ面一とされる。この一対の金属箔(5)は電圧計(51)と電気的に接続している。電圧計(51)により、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間に形成される液晶配向場の歪みによって生ずる電位差を計測可能となる。上述の如く電位差と第2部材(3)の移動速度とは相関関係があるので、電位差を測定することで、第2部材(3)の移動速度を測定可能となる。また、移動速度を積分演算することで、変位量を求めることが可能となる。尚、本実施例において、金属箔を用いているが、金属以外の材料からなる導電体も使用可能である。
【0032】
図5(a)において、第2部材(3)はシリンダ(6)と接続し、平行移動するようにされている。尚、第2部材(3)はシリンダ(6)等のアクチュエータによって能動的に動かされる必要はなく、速度計測の対象物と接続され、該対象物の移動に伴い移動されるようにされてもよい。
【0033】
シリンダ(6)を作動させると、第2部材(3)はシリンダ(6)のロッドの動作に追従して第1部材(2)に対して平行に移動する。この移動に伴い、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間に形成される液晶配向場に歪みが生じ、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間に電位差が生ずる。金属箔(5)に電気的に接続する電圧計(51)は、この電位差を計測する。電位差と第2部材(3)の速度の相関関係により第2部材(3)の移動速度が検知される。また、検知された移動速度を積分演算することで、第2部材(3)の変位量を求めることができる。
【0034】
図5(b)に示す速度・変位量センサ(10)は、図5(a)に示す速度・変位量センサ(10)と略同一の構成を備えるが、金属箔(5)及び電圧計(51)の代わりに、光源(7)及び受光器(71)を用いている。
光源(7)には、小型赤外線レーザ等の光源装置が適用可能である。受光器(71)は光源(7)からの光を受光し、その受光量を測定する。この受光量は第2部材(3)の速度と相関関係があるので、第2部材(3)の移動速度が検知可能となる。
尚、光量を測定する以外にも、受光される光の波長を検出することによっても、第2部材(3)の移動速度が検知可能となる。また、得られた速度データから第2部材(3)の変位量を求めることも可能となる。
【0035】
更に、第1部材(2)と第2部材(3)との間に液晶分子場の歪み速度を検知することも可能である。
上記速度・変位量センサ(10)の構成に演算装置を加える。演算装置は、第1部材(2)と第2部材(3)との間の速度差に対する液晶分子の分極によって発生する電位差、或いは液晶分子場の歪みにより変化する透過光の光量或いは透過光の波長のキャリブレーション・データを備える。速度・変位量センサ(10)から得られる入力値、即ち、電圧データ、光量データ或いは波長データが、演算装置に入力される。また演算装置は、第1配向面(21)と第2配向面(31)との間の間隔、即ち液晶分子場の厚さのデータが入力可能とされる。
演算装置は、上記速度・変位量センサ(10)から得られる入力値に応じて、キャリブレーション・データから第1部材(2)と第2部材(3)との間の速度差を算出する。そして、液晶分子場の厚さの値で、算出された速度差を除する。この除された結果が液晶分子場の歪み速度となる。演算装置は、算出された液晶分子場の歪み速度を出力する。この出力された歪み速度を時間で積分した値により、液晶分子場の歪み量の算出値を得ることが可能となる。このように、上記速度・変位量センサ(10)を応用して、液晶分子場の歪み速度並びに歪み量を検知可能な歪み速度・歪み量センサを構築可能である。
【0036】
尚、図5(a)及び図5(b)に示すシリンダ(6)のロッドを同一速度で伸長及び収縮させることで速度・変位量センサ(10)はメモリ素子或いはスイッチング素子となる。
例えば、シリンダ(6)が収縮状態にあるときの電圧計(51)の計測する電圧値に応じて、電圧計(51)と接続する回路をオン状態とし、シリンダ(6)が伸長状態にあるときの電圧計(51)の計測する電圧値に応じて、電圧計(51)と接続する回路をオフ状態としてもよい。或いは、電圧値に代えて、受光器(71)の計測する受光量或いは受光される光の波長に応じて受光器(71)に接続する回路のオン・オフの切換を行うことも可能である。
【0037】
上述の説明では、初期状態においてディレクタ(4)の長軸を液晶の流動方向、即ちX軸に平行に配した例を示したが、Y軸に平行としてもよい。
図6に、図2で示す平行平板型の液晶分子場歪み発生機構(1)の第2部材(3)を平行移動させたときのディレクタ(4)の傾斜角度を計算したシミュレーション結果を示す。尚、シミュレーションにおいて、初期条件として、ディレクタ(4)の長軸はY軸に平行とされている。また、図6に示すシミュレーション結果は、第2部材(3)が移動動作を開始して、液晶の流動が定常状態となったときのディレクタ(4)の傾斜角度を現わしている。
図6(a)はエリクセン数Erを1000としたときのシミュレーション結果であり、図6(b)はエリクセン数Erを500としたときのシミュレーション結果である。尚、ここで、エリクセン数Erは粘性力と弾性力の比を表す液晶固有の無次元数である。高いErは第2部材(3)の速度が高いことを意味する。
また図6に示す結果は、第2部材(3)下面に形成される第2配向面(31)の液晶に対する束縛力を変化させたときのディレクタ(4)の傾斜状態の変化を示し、該束縛力は図6中、Aeで示されている。Aeは壁面におけるディレクタ(4)の束縛力と弾性力の比を表し、Aeの値が大きくなるほど、第2配向面(31)の束縛力が増加する。
図6において、横軸には第1配向面(21)と第2配向面(31)間の距離Hを無次元化した値yを用い、「y=0」は第1配向面(21)上にあることを示し、「y=1」は第2配向面(31)上にあることを示す。また、縦軸にはディレクタ(4)の角度θを取り、「θ=90」はY軸に平行であることを示し、「θ=0」はY軸に対して直角であることを示す。
【0038】
図6に示すように、第2配向面(31)の束縛力Aeを変化させることによって、液晶配向場のディレクタ(4)の傾斜角度の分布形態を変化させることができる。したがって、第2配向面(31)のラビング処理の有無、或いはラビング処理による細溝の深さの調整によって、液晶の巨視的分極を調整可能となる。
また、図6(a)と図6(b)に示すグラフ曲線の形状の差異から、第2部材(3)の速度がディレクタ(4)の傾斜角度に影響を与えることが分かる。例えば、「Er=1000」(即ち、高速度で第2部材(3)を移動させたとき(図6(a)参照))のときは、「y>0.2」の領域にあるディレクタ(4)の傾斜角度が略一定となっているのに対し、「Er=500」(即ち、低速度で第2部材(3)を移動させたとき(図6(b)参照))のときは、「y>0.4」の領域にあるディレクタ(4)の傾斜角度が略一定となっている。このことは、第2部材(3)の速度を増加させると、より広い領域で、ディレクタ(4)のより大きな回転量を得ることが出来るということを意味する。このように、ディレクタ(4)の傾斜角度分布が、第2部材(3)の移動速度によって影響を受けるので、上述のように液晶配向場に生ずる電位差を測定し、或いは液晶配向場を通過する光の透過量を計測することによって、第2部材(3)の移動速度を測定することが可能である。
【0039】
上述において、二次元配向場を考えてきたが、三次元の配向場においても、本発明は適用可能である。
図7は、3次元配向場のモデル図である。上述と同様に、下方に第1配向面(21)が形成された第1部材(2)を配設し、第1部材(2)と平行に第2部材(3)を配設している。第2配向面(31)が第2部材(3)の下面に形成されている。第1配向面(21)と第2配向面(31)との間には、液晶が流動可能に満たされている。尚、図7中には1つのディレクタ(4)が示されているが、初期状態において、ディレクタ(4)はY軸に沿って複数整列している。
ディレクタ(4)は、X-Y平面においてその長軸はY軸に平行であるが、Y-Z平面において僅かにZ軸方向に傾斜している。この場合、第1配向面(21)に施されるラビング処理の方向は、X-Z平面上で、X軸及びZ軸方向に正方向に増加する方向である。尚、ここで用いられる液晶は8CB(4'-n-Octyl-4-cyanobiphenyl)であるが、回転可能な液晶分子を有する液晶であれば、特に制限されるものではない。
【0040】
ここで、第2部材(3)を速度UでX軸正方向に平行移動させた場合の分極の大きさの変動について説明する。分極の大きさ(P)は次式で表される。尚、次式中、e11及びe13はフレクソ係数と呼ばれる液晶の物性値である。また、nはディレクタであり、分子の局所平均配向を表す単位ベクトルである。
【0041】
【数1】
JP0004803344B2_000002t.gif

【0042】
図8は上記分極の大きさPを表す式に基づいて算出された結果である。図8中、「P」は上式第1項の値を表し、「P」は上式第2項の値を表す。図8中横軸に取られる「t」は、第1配向面(21)と第2配向面(31)間の距離「H」をフレクソ係数e11及びe13で無次元化したものであり、第2部材(3)の移動時間を示す。
図8に示す如く、上式第1項の値Pと第2項Pの値は周期的変動を示す。第2項の値Pの周期は、第1項の値Pの周期の2倍である。この周期的変動は時間経過に関わらず一定であり、減衰しない。したがって、上記のようにモデル化された3次元配向場においては、ディレクタ(4)は常に回転運動を続けることが分かる。また、分極の大きさは周期的変動を示す。この周期は、第2部材(3)の移動速度によって変化し、第2部材(3)の移動速度の増加は、変動周期を短縮させる。
【0043】
このような3次元配向場を備える液晶分子場歪み発生機構(1)を利用して、液晶配向場に生ずる電位差を測定すれば、その測定値は周期的変動を示すこととなる。その周期的変動の周波数から第2部材(3)の移動速度を求めることが可能となる。また、3次元配向場を通過する光量の変動を測定し、光量の変動周波数を求めることによっても、第2部材(3)の移動速度を求めることが可能となる。
【0044】
図9は、3次元配向場を備える液晶分子場歪み発生機構(1)において、第2部材(3)を平行移動させたときの第2配向面上でのディレクタ(4)の配向変化を表すグラフである。
縦軸はディレクタの変化角度を表し、横軸には図8に関連して説明された「t」が用いれ、横軸は、第2部材(3)の移動時間を示している。
図9中、L1で示す曲線は、Ae=50,Er=500の条件であり、L2で示す曲線は、Ae=100,Er=500の条件であり、L3で示す曲線は、Ae=125,Er=500の条件であり、L4で示す曲線は、Ae=200,Er=500の条件であり、L5で示す曲線は、Ae=250,Er=500の条件であり、L6で示す曲線は、Ae=300,Er=500の条件である。
【0045】
曲線L1からL6に示すように、Erが一定の条件で、束縛力Aeを変化させると、ディレクタ(4)の配向変化量が増加する。また曲線L1及びL2に示す条件においては、ディレクタ(4)の配向変化は一定の周期性を示す。
このように束縛力Aeを変更することによって、ディレクタ(4)の配向量の変化状態を変えることができる。このことは、第2配向面(31)の束縛力Aeによって、例えば、液晶分子場歪み発生機構(1)がセンサとして用いられた場合、センサの感度を変えることが可能である。即ち、束縛力Aeを小さくすればセンサの感度を上昇させることができ、逆に束縛力Aeを大きくすればセンサの感度を下げることができる。
【0046】
また第2部材(3)の移動時間tを増加させると、ディレクタ(4)の第2配向面(31)上での回転状態が略0°(Ae=300)、略-180°(Ae=250、200)、略-360°(Ae=125)、略-540°(A=100)、略-720°(Ae=50)となる位置に収束する。したがって、束縛力Aeの強さに応じて、異なるディレクタの回転収束状態を作り出すことができ、異なる複数の信号を発生可能なメモリ・スイッチング装置を作ることが可能となる。
【0047】
図10は、図9の曲線L6で示す条件でのディレクタ(4)の時間経過に伴う変化を示す。図10中の矢印は第1部材(2)と第2部材(3)との間に配された液晶の速度を示している。
図10に示す如く、ディレクタ(4)の配列は、第2部材(3)の移動につれて、ねじれていく。尚、このねじれ形態にもかかわらず、第1配向面(21)及び第2配向面(31)上にあるディレクタ(4)は、束縛されているため、その配向は略一定である。
図10中、「t=2000」でよく表されるように、ディレクタ(4)の変化の影響を受けて、液晶の流速分布が影響を受ける。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、速度・変位量センサ並びに歪み速度・歪み量センサに好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】分子の分極状態を示す図である。(a)は液晶分子の永久双極子モーメントが分子長軸方向を向いている楔形状分子において、液晶分子の配向場に歪みを生じさせる前の状態を示し、(b)は(a)に示す配向場に歪みを生じさせた後の状態を示す。(c)は液晶分子の永久双極子モーメントが分子軸に対して垂直方向を向いているバナナ形状分子において、液晶分子の配向場に歪みを生じさせる前の状態を示し、(d)は、(c)に示す配向場に歪みを生じさせた状態を示す。
【図2】図1を用いて説明した液晶分子の分極発生原理を利用した液晶分子場歪み発生機構の概略図である。(a)は、液晶分子場歪み発生機構作動前の状態を示し、(b)は、液晶分子場歪み発生機構作動後の状態を示す。
【図3】他の応用例を示す図である。(a)は、図2(a)に示す状態からX軸正方向に第2部材を移動させている状態を示し、(b)は(a)に示す状態から第2部材の移動動作を停止させた状態を示す。
【図4】液晶分子場歪み発生機構の他の実施形態を示す。(a)は円筒型の液晶分子場歪み発生機構を示し、(b)は円盤型の液晶分子場歪み発生機構を示す。
【図5】液晶分子場歪み発生機構を速度・変位量センサに応用した例を示す図である。(a)は液晶配向場の歪みにより生ずる電位差を測定することにより速度を計測する速度センサの構成図であり、(b)は液晶配向場を透過する光の透過率及び/又は波長を測定することにより速度を計測する速度・変位量センサの構成図である。
【図6】平行平板型の液晶分子場歪み発生機構の第2部材を平行移動させたときのディレクタの傾斜角度を計算したシミュレーション結果を示す図である。(a)はエリクセン数Erを1000としたときのシミュレーション結果であり、(b)はエリクセン数Erを500としたときのシミュレーション結果である。
【図7】3次元配向場のモデル図である。
【図8】分極の大きさPを表す式に基づいて算出された結果を示す図である。
【図9】3次元配向場を備える液晶分子場歪み発生機構において、第2部材を平行移動させたときの第2配向面上でのディレクタの配向変化を表すグラフである。
【図10】図9の曲線L6で示す条件でのディレクタの時間経過に伴う変化を示す。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・・液晶分子場歪み発生機構
2・・・・・第1部材
21・・・・第1配向面
3・・・・・第2部材
31・・・・第2配向面
4・・・・・液晶分子
5・・・・・金属箔
51・・・・電圧計
7・・・・・光源
71・・・・受光器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9