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明細書 :液晶流動を用いた物体回転機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4273341号 (P4273341)
登録日 平成21年3月13日(2009.3.13)
発行日 平成21年6月3日(2009.6.3)
発明の名称または考案の名称 液晶流動を用いた物体回転機構
国際特許分類 F03G   7/00        (2006.01)
B81B   5/00        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI F03G 7/00 H
B81B 5/00
H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2004-570178 (P2004-570178)
出願日 平成15年3月31日(2003.3.31)
国際出願番号 PCT/JP2003/004141
国際公開番号 WO2004/087562
国際公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
審査請求日 平成17年10月25日(2005.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597154966
【氏名又は名称】学校法人高知工科大学
発明者または考案者 【氏名】蝶野 成臣
【氏名】辻 知宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100089222、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 康伸
審査官 【審査官】▲高▼辻 将人
参考文献・文献 特開2001-260097(JP,A)
特開2001-260100(JP,A)
特開2001-13895(JP,A)
特開2000-201489(JP,A)
特開平11-230023(JP,A)
特開平6-294374(JP,A)
特開平11-223178(JP,A)
調査した分野 F03G 7/00
B81B 5/00
H02N 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに対向する対向面を有し、該対向面同士を対向させた状態で相対的に移動可能に設けられた一対の部材と、該一対の部材の対向面間に設けられた液晶と、該液晶の液晶分子を、前記一対の対向面のうち、一の対向面と交差する交差面内で回転させる液晶分子回転手段とからなる回転機構であって、該液晶分子回転手段が、前記一対の部材の対向面にそれぞれ形成された一対の配向膜を備えており、該一対の配向膜に、前記一対の部材に交差する同一の交差線上に中心を有する円の円周に沿って、該交差線周りの回転方向が互いに逆向きのラビング処理が施されていることを特徴とする液晶流動を用いた物体回転機構。
【請求項2】
互いに対向する対向面を有する一対の部材と、該一対の部材の対向面間に設けられた液晶と、該液晶の液晶分子を、前記一対の対向面のうち、一の対向面と交差する交差面内で回転させる液晶分子回転手段と、前記一対の部材の対向面とそれぞれ対向する一対の移動側対向面を有し、該一対の移動側対向面を前記一対の部材の対向面と対向させた状態で、該一対の部材に対して相対的に移動可能に設けられた移動部材とからなる回転機構であって、前記液晶分子回転手段が、前記一対の部材の対向面にそれぞれ形成された一対の配向膜と、前記移動部材の一対の移動側対向面にそれぞれ形成された一対の移動側配向膜とを備えており、前記一対の配向膜に、前記一対の部材および前記移動部材に交差する同一の交差線上に中心を有する円の円周に沿って、該交差線周りの回転方向が同じ向きのラビング処理が施されており、前記一対の移動側配向膜に、前記交差線上に中心を有する円の円周に沿って、該交差線周りの回転方向が、対向する配向膜と逆向きのラビング処理が施されていることを特徴とする液晶流動を用いた物体回転機構。
【請求項3】
前記回転機構が、前記交差線と同軸な出力軸を備えていることを特徴とする請求項2記載の液晶流動を用いた物体回転機構。
【請求項4】
前記回転機構が、前記回転機構が複数段設けられており、各回転機構が、その交差線が同一線上に位置するように配設されており、該交差線と同軸に配設され、各回転機構の移動部材が取り付けられた出力軸が設けられていることを特徴とする請求項2記載の液晶流動を用いた物体回転機構。
【請求項5】
前記液晶分子回転手段が、前記液晶に、電界または磁界を加えるための配向装置を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の液晶流動を用いた物体回転機構。
【請求項6】
互いに対向前記液晶分子回転手段が、前記配向装置が液晶に電界または磁界を加えるタイミングを制御する制御装置を備えており、該制御装置が、前記液晶に電界または磁界を断続的に加えることを特徴とする請求項5記載の液晶流動を用いた物体回転機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、液晶流動を用いた物体回転機構に関する。液晶とは、流動性はあるが、光学的には異方性で、複屈折を示し、結晶のような性質をもつ状態又はそのような状態を示す物質をいう。この液晶に対して電界や磁界を加えると、全ての液晶分子は、その重心回りに同じ方向に回転し、その軸方向が電界や磁界の方向に対して液晶固有の角度に配向する。本発明は、かかる液晶の性質を利用した液晶流動を用いた物体回転機構に関する。
【背景技術】

従来から、液晶は、液晶分子が配向することによってその光学的性質が変化するため、この性質を利用して液晶ディスプレー等の情報表示装置に使用されている。
また、液晶は、電界や磁界を加えて液晶分子の配向方向を変化させると液晶自体の粘性が変化する、つまり電気粘性流体としての性質も有している。このため、電気粘性流体としての性質を利用した軸受やダンパー等が開発されている。
一方、液晶に対して、電界や磁界を加えると、液晶流動が発生することが知られている。この液晶流動を工業的に利用する技術として、特許文献1~3に示す技術が開示されている。これらの技術は、いずれも一対の平行板間に配置された液晶に対して、この平行板と垂直な電界や磁界を加えると、平行板と平行な軸周りの対流が生じるという理論に基づいて開発されたものである。つまり、液晶流動とは、液晶分子が平行板と垂直な方向、つまり電界や磁界の方向と平行な方向にも移動することを前提として開発されたものである。

【特許文献1】特開2001-260100号公報
【特許文献2】特開2001-13895号公報
【特許文献3】特開2001-260100号公報
【図面の簡単な説明】

図1は、第一実施形態の液晶流動を利用した物体回転機構の概略説明図である。
図2は、第一実施形態の物体回転機構の概略断面図であり、(A)は中心軸Cを含む縦断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図3は、(A)は一対の部材11,11間に電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図であり、(B)は一対の部材11,11間に発生する液晶流動の速度分布を示した図である。
図4は、(A)、(B)は電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図であり、(C)は液晶分子mの回転により発生する速度勾配を示した図である。
図5は、(A)、(B)は平行板11上に載せられた液晶LCに電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図であり、(C)は液晶分子mの回転により発生する速度勾配を示した図であり、(D)は液晶流動の速度分布を示した図である
図6は、第二実施形態の物体回転機構の説明図である。
図7は、複数段の回転機構を備えた物体回転機構の説明図である。
図8は、液晶分子のチルト角と、円板の中心からの距離との関係を示す図である。
【発明の開示】

第1発明の液晶流動を用いた物体回転機構は、互いに対向する対向面を有し、該対向面同士を対向させた状態で相対的に移動可能に設けられた一対の部材と、該一対の部材の対向面間に設けられた液晶と、該液晶の液晶分子を、前記一対の対向面のうち、一の対向面と交差する交差面内で回転させる液晶分子回転手段とからなる回転機構であって、該液晶分子回転手段が、前記一対の部材の対向面にそれぞれ形成された一対の配向膜を備えており、該一対の配向膜に、前記一対の部材に交差する同一の交差線上に中心を有する円の円周に沿って、該交差線周りの回転方向が互いに逆向きのラビング処理が施されていることを特徴とする。
第1発明によれば、液晶分子回転手段によって一の部材の対向面と交わる面内で液晶分子を回転させれば、一対の部材の対向する対向面間に、その対向面に沿った液晶流動を発生させることができる。すると、一対の部材は、対向面を対向させた状態で互いに移動可能であるから、一方の部材を固定すれば、他方の部材を液晶流動の方向に移動させることができる。しかも、一対の部材の対向面に形成されている配向膜には、交差線周りの回転方向が互いに逆向きのラビング処理が施されているから、この一対の配向膜間、つまり一対の部材間には、交差線を中心として回転する液晶流動が発生する。よって、一方の部材を固定すれば、他方の部材を、交差線周りに回転させることができる。すると、一対の部材間に発生する液晶流動を、部材の回転移動に利用することができるので、液晶を利用した搬送装置やターンテーブル等に応用することができる。
第2発明の液晶流動を用いた物体回転機構は、互いに対向する対向面を有する一対の部材と、該一対の部材の対向面間に設けられた液晶と、該液晶の液晶分子を、前記一対の対向面のうち、一の対向面と交差する交差面内で回転させる液晶分子回転手段と、前記一対の部材の対向面とそれぞれ対向する一対の移動側対向面を有し、該一対の移動側対向面を前記一対の部材の対向面と対向させた状態で、該一対の部材に対して相対的に移動可能に設けられた移動部材とからなる回転機構であって、前記液晶分子回転手段が、前記一対の部材の対向面にそれぞれ形成された一対の配向膜と、前記移動部材の一対の移動側対向面にそれぞれ形成された一対の移動側配向膜とを備えており、前記一対の配向膜に、前記一対の部材および前記移動部材に交差する同一の交差線上に中心を有する円の円周に沿って、該交差線周りの回転方向が同じ向きのラビング処理が施されており、前記一対の移動側配向膜に、前記交差線上に中心を有する円の円周に沿って、該交差線周りの回転方向が、対向する配向膜と逆向きのラビング処理が施されていることを特徴とする。
第2発明によれば、液晶分子回転手段によって一の部材の対向面と交わる面内で液晶分子を回転させれば、一対の部材の対向面と移動部材の移動側対向面との間に、その対向面および移動側対向面に沿った液晶流動を発生させることができる。しかも、対向面の配向膜と移動側対向面の移動側配向膜には、交差線周りの回転方向が互いに逆向きのラビング処理がされているから、対向する配向膜と移動側配向膜との間、つまり一の部材と移動部材の間および他の部材と移動部材の間には、それぞれ交差線を中心とし、かつ交差線周りに同じ方向に回転する液晶流動が発生する。そして、移動部材と一対の部材は、対向面と移動側対向面を対向させた状態で互いに移動可能であるから、一対の部材を固定すれば、移動部材を、交差線周りに回転させることができるし、逆に、移動部材を固定させれば、一対の部材を交差線周りに回転させることができる。すると、一対の部材間に発生する液晶流動を、一対の部材や移動部材の回転移動に利用することができるので、液晶を利用した搬送装置やターンテーブル等に応用することができる。
第3発明の液晶流動を用いた物体回転機構は、第2発明において、前記回転機構が、前記交差線と同軸な出力軸を備えていることを特徴とする。
第3発明によれば、回転機構の移動部材が回転すれば、出力軸がその軸周りに回転するので、移動部材の回転運動のエネルギを、出力軸の回転トルクとして取り出すことができる。よって、回転機構が発生する運動エネルギを容易に取り出すことができる。
第4発明の液晶流動を用いた物体回転機構は、第2発明において、前記回転機構が複数段設けられており、各回転機構が、その交差線が同一線上に位置するように配設されており、該交差線と同軸に配設され、各回転機構の移動部材が取り付けられた出力軸が設けられていることを特徴とする。
第4発明によれば、複数の回転転機構が発生する運動エネルギを一本の回転軸から取り出すことができるので、出力軸に発生する回転トルクを大きくすることができる。
第5発明の液晶流動を用いた物体回転機構は、第1または2発明において、前記液晶分子回転手段が、前記液晶に、電界または磁界を加えるための配向装置を備えたことを特徴とする。
第5発明によれば、配向装置によって電界又は磁界を加えれば、液晶分子が、その軸方向が電界や磁界の方向に対して液晶固有の角度に配向する。液晶分子は配向するときにその重心周りに回転するので、液晶分子の回転に起因する液晶流動を発生させることができる。
第6発明の液晶流動を用いた物体回転機構は、第5発明において、前記液晶分子回転手段が、前記配向装置が液晶に電界または磁界を加えるタイミングを制御する制御装置を備えており、該制御装置が、前記液晶に電界または磁界を断続的に加えることを特徴とする。
第6発明によれば、配向装置によって断続的に電界又は磁界を加えると、一定の方向に断続的な液晶流動を発生させることができる。また、電界又は磁界を加える時間間隔や、電界又は磁界の大きさを変化させれば、液晶流動の流量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、液晶流動をより連続的な流れに近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】

まず、本発明の液晶流動を用いた物体回転機構を説明する前に、液晶に電界や磁界を加えたときに、液晶流動が発生する原理を説明する。
なお、液晶は、電界や磁界を加えたときに、電界や磁界の方向に対して液晶分子の軸方向が液晶固有の角度に配向するが、以下には、電界や磁界を加えたときに、液晶分子の軸方向が電界や磁界の方向と平行になるような液晶について説明する。
また、液晶分子は、電界、磁界いずれを加えた場合でも配向するので、以下には電界を加える場合のみを説明する。
図4は(A)、(B)は電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図であり、(C)は液晶分子mの回転により発生する速度勾配を示した図である。図5(A)、(B)は平行板11上に載せられた液晶LCに電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図であり、(C)は液晶分子mの回転により発生する速度勾配の説明図であり、(D)は液晶流動の速度分布の説明図である。図4に示すように、液晶LCに、その液晶分子mの軸方向と交差するように電界efを加えると、液晶分子mは、その回転角度が小さくなる方向(図4(A)では矢印の方向)に、その軸方向が電界efと一致するまで回転する(図4(B))。すると、各液晶分子mの周囲には速度勾配が発生するので、液晶流動が発生するのである(図4(C))。
図5(A)において、符号12は平行板11上に設けられた配向膜を示している。この配向膜12の素材は、例えばポリイミド等の高分子物質である。この平行板11の配向膜12に液晶LCの一部を接触させると、平行板11近傍の液晶分子mは平行板11の配向膜12に拘束(以下、アンカリングという)される。すると、電界efを加えても、平行板11の近傍に位置する液晶分子mは、その軸方向が電界efと一致するまで回転することができず、回転量が小さくなる(図5(B))。しかも、液晶分子mの回転量は、平行板11に近づくほど小さくなり、平行板11上では0となるので、液晶分子mの回転によって、その周囲に形成される速度勾配も、平行板11に近づくほど小さくなる(図5(C))。
したがって、液晶LCにおいて、その一部の液晶分子mの動きを平行板11の配向膜12によってアンカリングすれば、液晶LC内に、図5(D)に示すような速度分布を有する液晶分子mの流れが発生するのである。
さて、本発明の液晶流動を用いた物体回転機構を説明する。
図1は第一実施形態の液晶流動を利用した物体回転機構の概略説明図である。図2は第一実施形態の物体回転機構の概略断面図であり、(A)は中心軸Cを含む縦断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。図3は(A)は一対の部材11,11間に電界が加えられたときにおける液晶分子mの動きの説明図であり、(B)は一対の部材11,11間に発生する液晶流動の速度分布を示した図である。
図1および図2において、符号11は、一対の部材11,11を示している。この一対の部材11,11は、互いに対向する一対の対向面B,Bを備えている。この一対の対向面B,Bは、互いに平行であって、いずれの対向面Bも平坦面に形成されている。そして、一対の部材11,11は、一対の対向面B,Bを対向させた状態で、相対的に移動可能に設けられている。具体的には、下方の部材11を固定すると、上方の部材11が、一対の対向面B,Bが平行に保たれたまま、下方の部材11に対して回転したり前後左右に移動できるように設けられている。
なお、対向する一対の対向面B,Bは平行でなくてもよく、一方の対向面Bに対して他方の対向面Bが傾斜していてもよい。
さらになお、各対向面Bは平坦面でなくてもよい。例えば一方の対向面Bが平坦面であって他方の対向面Bが凹凸を有する面でもよいし、いずれの対向面Bも凹凸を有する面であってもよい。
この一対の部材11,11の一対の対向面B,B間には、液晶LCが入れられている。この液晶LCは、例えばネマティック液晶やスメクティック液晶、コレステリック液晶、ディスコティック液晶等であるが、電界を加えたときに、液晶分子mが回転する液晶であれば、特に限定はない。
この液晶LCと前記一対の対向面B,Bとの間には、一対の配向膜12,12がそれぞれ設けられている。この一対の配向膜12,12は、その素材が、例えばポリイミド等の高分子物質である。
そして、この一対の配向膜12,12の対向する面には、いずれもラビング処理が施されているため、液晶LCのうち、一対の配向膜12,12と接触する液晶分子mは、一対の配向膜12,12にアンカリングされる。すると、各配向膜12と接触する液晶分子mは、その軸方向をラビングした方向に向けて配列され、ラビングしたときの下流側の端部が配向膜12から離れるように配列(以下、単にチルトという)される(図3(A)参照)。
第一実施形態の物体回転機構では、一対の配向膜12,12は、その対向する面において、一対の部材11,11に交差する同一の交差線Cに中心を有する円に沿ってラビング処理が行なわれている。しかも、ラビング処理の方向aは、下方の配向膜12では、前記交差線Cの軸方向上方からみて反時計回りに行なわれており、上方の配向膜12では、前記交差線Cの軸方向上方からみて時計回りに行なわれている。つまり、上方の配向膜12に施されているラビング処理は、その方向が、下方の配向膜12に施されているラビング処理の方向に対して、交差線C周りの回転方向が互いに逆向きとなるように行なわれているのである。
すると、一対の部材11,11間の液晶LCは、一対の配向膜12,12間において、その全ての液晶分子mが、下方の配向膜12に対して上傾した状態で、かつその軸方向が交差線Cを中心とする円の接線方向を向くように配列するのである。
図2に示すように、液晶分子mは、その配向膜12に対する上傾が、交差線Cの近傍において、交差線Cから半径方向に離れた位置における液晶分子mの上傾よりも急激に大きくなるように配向するため、交差線C近傍における液晶分子mの配向の連続性が維持される。この原理は、発明者らによって解明されたものであり、この原理に基づかなければ、一対の部材11,11を相対的に回転させることはできないが、その理由は後述する。
なお、液晶LCと前記一対の対向面B,Bとの間に配向膜12を設けなくてもよく、一対の部材11,11の対向面B,Bにラビングレス処理をしてやればよい。
また、前記一対の対向面B,Bと前記一対の配向膜12,12との間には、それぞれ一対の電極E,Eが設けられている(図2(A)参照)。この一対の電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の対向面B,Bと垂直になるように配設されている。また、この一対の電極E,Eは、電源を有する制御装置Dに接続されている。
このため、制御装置Dによって一対の電極E,Eに電圧を加えれば、一対の対向面B,B間に、一対の対向面B,Bと垂直な電界efを形成することができる。この一対の電極E,Eが、特許請求の範囲にいう配向装置であり、一対の配向膜12,12、一対の電極E,Eおよび制御装置Dが特許請求の範囲にいう液晶分子回転手段を構成している。
なお、一対の電極E,Eは、両者を結ぶ線が一対の対向面B,Bと垂直になるように配設しなくてもよく、一対の電極E,Eに形成される電界efによって液晶LCの液晶分子mをいずれか一方の対向面Bと交わる面内で回転するように配設すればよい。
なお、一対の電極E,Eを一対の部材11,11の外面に取り付けてもよい。この場合、一対の部材11,11の素材を導電体や電界が透過できる素材とすれば、一対の対向面B,B間に電界efを形成することができる。
さらになお、一対の部材11,11の素材を導電体とした場合、制御装置Dを直接一対の部材11,11に接続すれば、制御装置Dによって一対の部材11,11に電圧を加えれば、一対の対向面B,B間に電界efを発生させることができる。
つぎに、第一実施形態の物体回転機構の作用と効果を説明する。
まず、一対の部材11,11のうち、下方の部材11を固定した状態で制御装置Dによって一対の電極E,E間に電圧を加えると、一対の対向面B,B間に、一対の対向面B,Bと垂直な方向の電界efが発生する。すると、液晶LCの液晶分子mは、その軸方向が電界efと平行になる方向に回転する(図3(A))。すると、液晶分子mの回転によって、その周囲に速度勾配が発生するが、その速度勾配は配向膜12から離れるほど大きくなる(図5(c)参照)。すると、各液晶分子mによって生じる速度勾配が、積算されて一対の対向面B,B間の液晶LCには、液晶分子mが上傾している方向と逆向きであって、図3(B)のごとき速度分布を有する液晶流動が発生する。
電界efを加えたときに、交差線Cの近傍における液晶分子mも当然に回転するが、その液晶分子mの回転により発生する速度勾配が大きくなると、交差線Cを挟む両側で互いに逆向きかつ相対的な速度差が大きい液晶流動が生じることとなり、交差線C近傍における液晶流動の連続性が保てなくなる。しかし、上述した、本発明者の解明した原理によれば、交差線C近傍における液晶分子mの配向膜12に対する上傾が大きくなっており、交差線C近傍の液晶分子mに発生する速度勾配は非常に小さく、また、交差線C極近傍では液晶分子mは電界efの方向を向いた状態に配列されれば電界efを加えても速度勾配は発生しない。すると、交差線C近傍において液晶流動が不連続とならない。
よって、一対の対向面B,B間には、交差線Cを中心として回転し、かつ、交差線Cの部分でも連続な液晶流動が発生するから、上方の部材11は、下方の部材11に対して交差線Cの軸方向上方からみて、交差線Cを中心として時計回りに回転されるのである(図1(B))。
ついで、一対の電極E,E間への電圧の印加をやめると、液晶分子mは、電圧を加える前の状態に戻る。このとき、液晶分子mは一対の電極E,E間への電圧の印加したときと逆方向に回転するから、液晶分子mが上傾している方向の速度勾配が発生する。したがって、一対の対向面B,B間の液晶LCには、図5(B)に示した速度分布と逆向きの速度分布が形成され、上方の部材11は、下方の部材11に対して交差線Cの軸方向上方からみて、交差線Cを中心として反時計回りに回転される。
しかし、電圧の印加をやめたときに生じる液晶分子mの回転は、その回転速度が電圧を印加したときに生じる液晶分子mの回転速度よりも遅い。このため、電圧の印加をやめたときに生じる速度勾配は、電圧を印加したときに生じる液晶分子mの速度勾配よりも小さくなる。よって、電圧の印加をやめたときにおける反時計回りの上方の部材11の回転量は、電圧を印加したときにおける時計回りの回転量に比べて小さくなる。
したがって、一対の電極E,E間に瞬間的に電圧を印加すると、上方の部材11には、反時計回りの回転量と時計回りの回転量の差の分だけ時計回り、つまり上方の配向膜12のラビング方向と同じ方向の回転移動が発生するのである。
よって、第一実施形態の物体回転機構によれば、上方の部材11上に移動させたい物体を載せれば、上方の部材11とともに、その物体を下方の部材11に対して回転移動移動させることができるのである。
また、制御装置Dによって、一対の電極E,E間にパルス状の電圧を断続して加えれば、下方の部材Pに対して上方の部材11を、断続して回転移動させることができる。しかも、一対の電極E,E間に加えるパルス状の電圧の時間間隔、つまり電界を加える時間間隔を変化させれば、上方の部材11の回転量を変化させることができる。さらに、電界又は磁界を加える時間間隔を短くすれば、上方の部材11をより連続的に回転させることができる。
つぎに、第二実施形態の物体回転機構を説明する。
第二実施形態の物体回転機構は、前記第一実施形態の物体回転機構を応用したものであり、その基本的な作動原理は同じであるから、作動原理および重複する構成の詳細な説明は省略する。以下には、第二実施形態の物体回転機構の構成およびその作用効果を説明する。
図6は第二実施形態の物体回転機構の説明図である。同図において、符号20は第二実施形態の物体回転機構のケーシングを示している。このケーシング20は、その上壁20aおよび下壁20bの内面に、互いに対向する一対の対向面21,21を備えたものであり、その内部に液晶LCが充填されている。
そして、このケーシング20の一対の対向面21,21には、それぞれ配向膜22,22が設けられており、この配向膜22,22には、その対向する面において、上下の内面21,21に交差する同一の交差線Cに中心を有する円に沿って、交差線C周りの回転方向が同じ向きのラビング処理が行なわれている。具体的には、交差線Cの軸方向上方からみて、いずれの配向膜22,22にも時計回りにラビング処理が行なわれているのである。
また、このケーシング20内には、移動部材30が配設されている。この移動部材は、ケーシング20の一対の対向面21,21とそれぞれ対向する一対の移動側対向面31,31を有しており、この一対の移動側対向面31,31を前記一対の対向面21,21に対向させた状態で、ケーシング20に対して移動可能に設けられている。
前記ケーシング20の一対の対向面21,21には、それぞれ移動側配向膜32,32が設けられており、各移動側配向膜32には、前記交差線C周りの回転方向が、対向する配向膜22のラビング処理に対して逆向きのラビング処理が施されている。具体的には、交差線Cの軸方向上方からみて反時計回りにラビング処理が行なわれているのである。
すると、ケーシング20の上方の対向面21とこの対向面21と対向する移動側配向膜32との間に配置されている液晶分子mは、移動側配向膜32に対して、交差線Cの軸方向上方からみて反時計回りの下流側が上傾した状態で、かつその軸方向が交差線Cを中心とする円の接線方向を向くように配列する。
一方、ケーシング20の下方の対向面21とこの対向面21と対向する移動側配向膜32との間に配置されている液晶分子mは、移動側配向膜32に対して、交差線Cの軸方向上方からみて反時計回りの下流側が下傾した状態で、かつその軸方向が交差線Cを中心とする円の接線方向を向くように配列する。
つまり、ケーシング20の上方の対向面21と移動側配向膜32との間に配置される液晶分子mと、ケーシング20の下方の対向面21と移動側配向膜32との間に配置される液晶分子mは、いずれも交差線Cを中心とする円の接線方向を向くように配列するが、対応する位置、言い換えれば交差線Cと平行な線上に位置する液晶分子mは、その下方の対向面21に対する傾きが逆になるように配向されるのである。
そして、ケーシング20の各対向面21と配向膜22との間、および移動部材30の移動側対向面31と移動側配向膜32との間には、いずれも図示しない制御装置Dに接続された図示しない電極Eが設けられている。このため、制御装置Dによって各電極Eに電圧を加えれば、対向面22と移動側対向面32間に電界efを形成することができる。この電極Eが特許請求の範囲にいう配向装置であり、一対の配向膜22,22、一対の移動側配向膜32,32、電極Eおよび制御装置Dが特許請求の範囲にいう液晶分子回転手段を構成している。
第二実施形態の物体回転機構は、ケーシング20を固定した状態で制御装置Dによって電極Eに電圧を加えると、対向面12と移動側対向面32間に電界efが形成され、両者の間に配置されている液晶分子mがその重心周りに回転し、対向面12と移動側対向面32間の液晶LCには液晶流動が発生する。
すると、上方の対向面22と移動側対向面32との間、および下方の対向面22と移動側対向面32には、交差線Cを中心とし、かつ交差線C周りに同じ方向、つまり交差線Cの軸方向上方から見て反時計回りの液晶流動が発生するので、移動部材30を交差線Cの軸方向上方から見て反時計回りに回転させることができるのである。
上記のケーシング20の上壁20aおよび下壁20b、移動部材30および上述した液晶分子回転手段によって特許請求の範囲にいう回転機構が構成されているのである。
また、図6(B)に示すように、移動部材30に、前記交差軸Cと同軸な出力軸33を設け、この出力軸33を、その先端が前記ケーシング20の外方に突出し、かつその先端部をケーシング20に対して回転可能に取り付けておけば、移動部材30が回転したときに、移動部材30とともに、出力軸33をその軸周りに回転させることができる。すると、移動部材30の回転運動のエネルギを、出力軸33の回転トルクとして取り出すことができるから、回転機構が発生する運動エネルギを容易に取り出すことができる。具体的には、出力軸33を主軸とする液晶モータと採用することができる。そして、このような液晶モータは、微弱な電力などによって駆動させることができるので、例えばマイクロマシーンの駆動源や、マイクロマシーンに付随する作業機械等の動力源などとして有効である。
そして、図7に示すように、前記ケーシング20内に、複数段のプレート24を設け、隣接する一対のプレート24,24間に前記出力軸33に取り付けられた移動部材30を配置し、隣接するプレート24,24の対向する面に上述したような配向膜22を設け、移動部材30に上述したような移動側配向膜32を設けてもよい。つまり、隣接する一対のプレート24,24および移動部材30によってそれぞれ上述したような回転機構を構成してもよい。この場合、複数の回転機構の移動部材30が発生する運動エネルギを、一本の出力軸30から取り出すことができるので、出力軸30に発生する回転トルクを大きくすることができる。
次に、本願のごとき一本の軸を中心として回転する液晶流動を利用した物体回転機構を実現する上では、上述した理論に基づく回転中心における液晶分子の配向の連続性が充足される必要がある。そこで、以下では、上述した理論が正しいことを、数値計算によって確認した。
今回は、ランダウ・ドジャン理論を用いて、中心軸周りにラビング処理された一対の平行な円板間の各位置における液晶分子の配向角を計算した。計算する空間の離散化には有限差分法を使用して計算を行なった。使用した言語はC言語、計算機はEWSである。
また、今回、計算領域は円板の半径方向は、円板間隔の5倍まで計算し、そのときの差分格子は、円板間隔を100等分した正方格子(格子数は101×501)とした。
図8は液晶分子のチルト角と、円板の中心軸からの距離との関係を示す図である。図において、横軸rは,円板の中心軸からの距離を円板間隔で除した無次元半径位置,縦軸φは、円板と垂直な方向から計った液晶分子の配向角を示しており、φ=0degは液晶分子が円板と垂直な方向を向いた状態を表しており、φ=90degは液晶分子が円板と平行な方向を向いている状態を示している。また、パラメータzは円板間隔で無次元化した円板と垂直な方向の位置であり、z=0は下部円板の表面を示しており、z=0.5は二枚の円板間の中央,z=1.0は上部円板の表面を示している。
図8に示すように、円板中心軸上の液晶分子は、その配向角がφ=0degとなっている。つまり、液晶分子は、円板に平行ではなく垂直方向に配向しているのである。そして、垂直方向に配向しているので、特異点、つまり円板中心軸上において配向が不連続にならないことが確認でき、上述した理論が正しいことが確認できる。
そして、円板中心軸上の液晶分子の配向角φを0degとするために、円板中心軸に近づくにつれ液晶分子の配向角φは小さくなることが確認できるが、円板と垂直な方向において両円板から最も離れているz=0.5の液晶分子であっても、r=1程度(二枚の円板間隔)となれば配向角φは90degとなる。このことから、円板中心軸上において液晶分子の配向角φが0degとなる影響は、円板の半径方向において円板の中心軸からおおよそr=1程度(二枚の円板間隔)までしか及ばないことが確認できる。言い換えれば、円板間隔に比べて、円板の半径が大きくなれば、円板中心軸近傍における特異性が液晶分子の配向に与える影響、つまり液晶流動に与える影響は小さくなることが確認できるのである。
以上の結果から、円板間隔と半径が同程度のような極端に径の小さい円板を用いない限り,円板の中心軸近傍に配置された液晶分子の配向角の変化ほぼ無視することができるから、液晶分子の挙動は半径位置に依存しないと仮定して円板の回転により発生するトルクを計算することができることが確認できる。
【産業上の利用可能性】

本発明によれば、電気的なエネルギを液晶流動を介して物体の回転移動に利用できるし、液晶流動を介して工業的に利用可能な運動エネルギに変換することができるから、微細な物体を移動させる搬送機構やターンテーブル、あるいは微細なモータを製造することが可能となる。 しかるに、本願の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、液晶流動が液晶分子の回転によって生じる速度勾配に起因して発生すること、および、液晶流動が発生したときに、液晶分子は電界や磁界の方向と垂直な方向には移動するが、電界や磁界の方向には移動しないことを解明した。そして、この原理に基づいて液晶流動を工業的に利用する機構を発明した。
本発明はかかる事情に鑑み、液晶流動を工業的に利用することができる物体回転機構を提供することを目的とする。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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