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明細書 :インスリン分泌誘導剤及びインスリン分泌誘導組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4520951号 (P4520951)
公開番号 特開2007-209214 (P2007-209214A)
登録日 平成22年5月28日(2010.5.28)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
発明の名称または考案の名称 インスリン分泌誘導剤及びインスリン分泌誘導組成物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A61K 37/02
A61P 3/10
C07K 14/47
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2006-029965 (P2006-029965)
出願日 平成18年2月7日(2006.2.7)
審査請求日 平成19年3月5日(2007.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】509290762
【氏名又は名称】リッチランド・バイオ・メディカル株式会社
発明者または考案者 【氏名】豊島 秀男
【氏名】横尾 友隆
【氏名】山田 信博
個別代理人の代理人 【識別番号】100116872、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 和子
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 国際公開第03/073826(WO,A1)
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,2003年,Vol.100, No.24,p.14109-14114
Genome Res.,2003年,Vol.13,p.2265-2270
調査した分野 C12N 15/12
C12N 15/63
A61K 38/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
次の(a)~(c)の少なくともいずれか1つを有効成分とするインスリン分泌誘導剤;
(a)配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチド、
(c)インスリン分泌誘導作用を持つ(a)又は(b)のポリペプチドのフラグメント。
【請求項2】
配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドが配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項1記載のインスリン分泌誘導剤。
【請求項3】
次の(d)~(f)の少なくともいずれか1つを有効成分とするインスリン分泌誘導剤;
(d)配列番号3又は配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(e)配列番号3又は配列番号6に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチド、
(f)インスリン分泌誘導作用を持つ(d)又は(e)のポリペプチドのフラグメント。
【請求項4】
配列番号6に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項3記載のインスリン分泌誘導剤。
【請求項5】
インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントが配列番号10に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチドである請求項3記載のインスリン分泌誘導剤。
【請求項6】
インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントが配列番号11に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチドである請求項3記載のインスリン分泌誘導剤。
【請求項7】
インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントが配列番号12に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチドである請求項3記載のインスリン分泌誘導剤。
【請求項8】
配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号10に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド、配列番号11に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド、配列番号12に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド、の少なくともいずれか1つを有効成分として含有するインスリン分泌誘導組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病をはじめとする種々の代謝性疾患の治療に有効なインスリン分泌誘導剤及びインスリン分泌誘導組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日本人のライフスタイルの欧米化により、糖尿病、高脂血症、高血圧や肥満といった生活習慣病がクローズアップされている。このような中で消化管は食事中の栄養分を吸収するだけでなく消化管ホルモンを産生する内分泌器官として注目されており、胃で産生されるグレリンの他、消化管から分泌されるグルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-like peptide-1:GLP-1)や胃酸分泌抑制ポリペプチド(Gastric inhibitory polypeptide:GIP)などが既にクローニングされている。グレリンは摂食亢進作用を持ちエネルギー代謝と関連がある。GLP-1やGIPはインクレチンとして食事負荷により膵臓に働きインスリン分泌を誘導する。また、GIPは脂肪にも発現しておりGIPレセプターのノックアウトマウスは痩せる事からも肥満との関連も示唆されている。このように、消化管ホルモンはエネルギー代謝や摂食行動などに関わっており、生活習慣病においてその成因の新しいメカニズムの解明につながってきている。しかしながら、消化管ホルモンの全容は未だ明らかにされておらず、不明な部分も多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、これまでに知られていない消化管由来のタンパク質をコードする遺伝子の探索を行い、見出された遺伝子をもとに新たな医薬用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、SST法(Signal Sequence Trap法:Nat Biotechnol. 1999 May;17(5):487-90. A signal sequence trap based on a constitutively active cytokine receptor. Kojima T, Kitamura T.)を採用してマウスの腸管から単離したcDNA断片をもとに取得したクローンCF266(mCF266)が腸管において特異的な発現をしていること、このmCF266の培養上清にはインスリン分泌誘導作用があること、アデノウイルスベクターを使用した強制発現系においてmCF266がin vivoでインスリンの分泌誘導作用を示すことを見出した。
【0005】
上記の知見に基づいてなされた本発明のインスリン分泌誘導剤は、請求項1記載の通り、次の(a)~(c)の少なくともいずれか1つを有効成分とすることを特徴とする;
(a)配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチド、
(c)インスリン分泌誘導作用を持つ(a)又は(b)のポリペプチドのフラグメント。
また、請求項2記載のインスリン分泌誘導剤は、請求項1記載のインスリン分泌誘導剤において、配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドが配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであることを特徴とする。
また、本発明のインスリン分泌誘導剤は、請求項3記載の通り、次の(d)~(f)の少なくともいずれか1つを有効成分とすることを特徴とする;
(d)配列番号3又は配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(e)配列番号3又は配列番号6に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチド、
(f)インスリン分泌誘導作用を持つ(d)又は(e)のポリペプチドのフラグメント。
また、請求項4記載のインスリン分泌誘導剤は、請求項3記載のインスリン分泌誘導剤において、配列番号6に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドが配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドであることを特徴とする。
また、請求項5記載のインスリン分泌誘導剤は、請求項3記載のインスリン分泌誘導剤において、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントが配列番号10に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチドであることを特徴とする。
また、請求項6記載のインスリン分泌誘導剤は、請求項3記載のインスリン分泌誘導剤において、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントが配列番号11に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチドであることを特徴とする。
また、請求項7記載のインスリン分泌誘導剤は、請求項3記載のインスリン分泌誘導剤において、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントが配列番号12に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチドであることを特徴とする。
また、本発明のインスリン分泌誘導組成物は、請求項8記載の通り、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号10に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド、配列番号11に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド、配列番号12に記載のアミノ酸配列を少なくとも含むポリペプチド、の少なくともいずれか1つを有効成分として含有することを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、糖尿病をはじめとする種々の代謝性疾患の治療に有効なインスリン分泌誘導剤及びインスリン分泌誘導組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のインスリン分泌誘導剤は、次の(a)~(c)の少なくともいずれか1つを有効成分とすることを特徴とするものである;
(a)配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1又は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチド、
(c)インスリン分泌誘導作用を持つ(a)又は(b)のポリペプチドのフラグメント。
【0008】
本発明において、本発明者らがマウスの腸管から取得したmCF266は配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAであるが、このDNAはマウスの筋肉に発現している膜タンパクTm4sf20(Transmembrane 4 L six family member 20)をコードするDNAとして公知の全長1505bpのものである(NCBI:LOCUS NM 025453)。mCF266のCDSは41..721であり、配列番号3に記載の226個のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしている(配列番号2参照)。しかしながら、このポリペプチドがインスリン分泌誘導作用を持つことについての報告はこれまでのところ存在しない。また、本発明者らは、mCF266に対応するヒトCF266(hCF266)についてもmCF266と同様の作用を有することを確認している。hCF266は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAであり、ヒトTM4SF20をコードするDNAとして公知の全長2308bpのものである(NCBI:LOCUS NM 024795)。hCF266のCDSは38..727であり、配列番号6に記載の229個のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードしている(配列番号5参照)。しかしながら、このポリペプチドがインスリン分泌誘導作用を持つことについての報告もまたこれまでのところ存在しない。
【0009】
配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドとしては、例えば、hCF266の一塩基多型(SNPs)に基づく配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされる配列番号9に記載の229個のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる(配列番号8参照)。配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの相違は、27番目のアミノ酸が前者がバリン(hCF266(27V))であるのに対して後者がアラニン(hCF266(27A))であることである。
【0010】
インスリン分泌誘導作用を持つポリペプチドのフラグメントとしては、例えば、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの98~116番目に相当する19個のアミノ酸配列ALYCMLISIQALLKGPLMC(配列番号10)を少なくとも含むポリペプチド、同78~96番目に相当する19個のアミノ酸配列CNNRTGMFLSSLFSVITVI(配列番号11)を少なくとも含むポリペプチド、同161から179番目に相当する19個のアミノ酸配列TSNDTMASGWRASSFHFDS(配列番号12)を少なくとも含むポリペプチドが挙げられる。
【0011】
本発明のインスリン分泌誘導剤の有効成分となるポリペプチドやそのフラグメントは、例えば、自体公知の方法で配列番号1や配列番号4や配列番号7に記載の塩基配列からなるDNAを外来遺伝子として胎児腎臓上皮細胞であるHEK293細胞やHEK293T細胞の他、CHO-K1細胞に例示される動物細胞などを宿主細胞として組み込み、当該細胞を培養して遺伝子発現させることで、その培養上清から得ることができるが、化学合成により製造してもよい。これらの分離・精製は、例えば、イオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどのペプチド化学において通常使用される方法によって行うことができる。
【0012】
本発明のインスリン分泌誘導剤は、例えば、その有効成分となるポリペプチドやそのフラグメントを必要に応じて自体公知の方法で薬学的に許容される塩酸塩などの無機酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩などに変換した上で凍結乾燥品として製剤化し、必要時に生理食塩水などに溶解して注射剤の形態で静脈内投与することでインスリンの分泌を誘導することができる。その用法用量は患者の性別、年齢、体重、病態などによって適宜決定すればよい。なお、本発明のインスリン分泌誘導剤の有効成分となるポリペプチドやそのフラグメントは、高度に精製された純品を単独で使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよく、種々のインスリン分泌誘導組成物の形態で使用することができる。
【0013】
また、本発明の説明に供する、遺伝子治療によりインスリン分泌誘導を行うためのウイルスベクターは、外来遺伝子の発現が可能なウイルスベクターに外来遺伝子として配列番号1、配列番号4、配列番号7のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA又はこれらのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを組み込んでなることを特徴とするものである。ここで「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、対象とするDNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを採用することにより取得できるDNAを意味し、例えば、コロニーやプラーク由来のDNAを固定化したフィルタを使用し、0.7~1.0M塩化ナトリウム存在下65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2×SSC溶液(1×SSCの組成:150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を使用し、65℃条件下でフィルタを洗浄することにより同定できるDNAなどが挙げられる(必要であれば例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 1989.などを参照のこと)。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列の、プローブとして使用するDNAの塩基配列との相同性は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。本発明の説明に供する、遺伝子治療によりインスリン分泌誘導を行うためのウイルスベクターの具体例としては、自体公知の方法で配列番号1、配列番号4、配列番号7のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAをCAGプロモーターなどに連結して構築したアデノウイルスベクターなどが挙げられ、このようなウイルスベクターは静脈内投与することで体内において優れたインスリン分泌誘導作用を示す。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって何ら限定して解釈されるものではない。
【0015】
参考例1:mCF266が腸管に特異的に発現していることの確認
SST法を採用してマウスの腸管から取得したmCF266のmRNAの臓器発現分布をノザンブロット法により検討を行った。具体的には、マウスより各臓器を摘出し、TRIzol(invitrogen)により添付の説明書に従いtotal RNAを抽出し、定法に従い10μg/laneとなるようにメンブレンを作製し、[α-32P]dCTPを使用して標識したmCF266のcDNA(mRNAクローン)をプローブにしてハイブリダイズすることで行った。その結果を図1に示す。図1から明らかなように、mCF266は小腸(Intestine)において特異的な発現をしていることがわかった。
【0016】
実施例1:マウス膵β細胞由来培養細胞株MIN6細胞に対するCF266の培養上清のインスリン分泌誘導作用
10cm dishに5%FCSと抗生物質(ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン10mg/mL)を添加したDMEM培地で継代したHEK293T細胞を1×10撒き、その翌日にmCF266発現ベクター(pCAGGS-mCF266)をFuGENE6(Roche)を使用してHEK293T細胞にトランスフェクトしてmCF266を強制発現させ、その24h後にOpti-MEM培地に交換し、さらにその24h後に培養上清を回収した。15%FCSと抗生物質(ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン10mg/mL)と2-メルカプトエタノールを添加したDMEM培地(High Glucose、GIBCO;現Invitrogen)で継代したMIN6細胞を24wellプレートに3×10/well撒き、その翌日、KRBH緩衝液(2.8mMグルコース)を0.5mL/well添加して30分間前培養した後、上記の培養上清とKRBH緩衝液との混合液(1:1(v/v))を0.5mL/well添加して1時間刺激を行い、MIN6細胞のグルコース応答性のインスリン分泌(GSIS)を測定した。測定は培養液中のインスリンをELISA法(シバヤギのレビスインスリンキットを使用:以下同じ)で測定することで行った。なお、インスリン値はMIN6細胞の総タンパクで補正した。その結果を、上記の方法と同様の方法で空ベクター(pCAGGS)をHEK293T細胞にトランスフェクトして得た培養上清を添加した場合の結果(Mock)と、ヒト腸管cDNAライブラリー(クローンテック;現BD Biosciences)からクローニングした配列番号4に記載の塩基配列からなるDNA(hCF266(27V))と公知の方法でDNA(hCF266(27V))に対して変異導入することで取得した配列番号7に記載の塩基配列からなるDNA(hCF266(27A))のそれぞれの発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクトしてそれぞれを強制発現させて得た培養上清を添加した場合の結果とともに図2に示す。図2から明らかなように、CF266を強制発現させた培養上清はMIN6細胞に対してグルコース応答性のインスリン分泌を誘導し、その作用はとりわけhCF266(27V)を強制発現させた場合が優れていた。
【0017】
参考例2:mCF266のin vivoでのインスリン分泌誘導作用
CAGプロモーターにmCF266を連結して構築したアデノウイルスベクター(Invitrogenの商品名ViraPowerを使用して作製)を、高脂肪高ショ糖負荷食を与えた糖尿病モデルマウスKK/Ayマウスに5×10PFU静脈内投与した。その4日後、静脈内糖負荷試験(i.v.GTT)を行い、経時的に採血し、血清中の血糖値、インスリン値を測定した。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、糖尿病モデルマウスの体内でmCF266を発現させると、対照としてGFPを発現させた場合と比較して、血糖値は低い傾向が見られるに過ぎなかったが(図3左)、インスリン値は明らかに高く、mCF266の発現はインスリンの分泌を誘導することがわかった(図3右)。
【0018】
実施例:マウス膵臓ランゲルハンス氏島細胞に対するhCF266(27V)の培養上清に含まれるポリペプチドのインスリン分泌誘導作用
実施例1に記載の方法でhCF266(27V)の発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクトしてhCF266(27V)を強制発現させて得た培養上清を陰イオン交換カラム(POROS HQカラム、ABI)を使用して分画した。マウスから単離した膵臓ランゲルハンス氏島細胞を24wellプレートに10islets/well撒き、RPMI1640培地(10%FCS、GIBCO;現Invitrogen)中で2時間培養した後、KRBH緩衝液(2.8mMグルコース)を0.5mL/well添加して30分間前培養した後、上記の培養上清画分とKRBH緩衝液との混合液(1:1(v/v))を0.5mL/well添加して1時間刺激を行い、マウス膵臓ランゲルハンス氏島細胞のグルコース応答性のインスリン分泌(GSIS)を測定した。測定は培養液中のインスリンをELISA法で測定することで行った。インスリン分泌誘導活性が認められた画分を質量分析装置(TOF-MAS)で解析し、特異的に見られたピークの質量から予測された19個のアミノ酸配列からなるポリペプチド、ALYCMLISIQALLKGPLMC(ポリペプチドA:配列番号10)、CNNRTGMFLSSLFSVITVI(ポリペプチドB:配列番号11)、TSNDTMASGWRASSFHFDS(ポリペプチドC:配列番号12)を化学合成した。これら3種類のポリペプチドA~CのそれぞれをKRBH緩衝液に10nMの濃度で溶解した溶液を、上記の方法と同様の方法で30分間前培養したマウス膵臓ランゲルハンス氏島細胞に0.5mL/well添加して30分間刺激を行い、上記の方法と同様の方法でマウス膵臓ランゲルハンス氏島細胞のグルコース応答性のインスリン分泌を測定した。なお、インスリン値はマウス膵臓ランゲルハンス氏島細胞の総DNAで補正した。その結果を、KRBH緩衝液のみを添加して刺激を行ったこと以外は上記の方法と同様の方法で実験を行った場合の結果、hCF266(27V)の培養上清とKRBH緩衝液との混合液(1:1(v/v))を添加して刺激を行ったこと以外は上記の方法と同様の方法で実験を行った場合の結果、ヒトGLP-1(ペプチド研究所)をKRBH緩衝液に10nMの濃度で溶解した溶液を添加して刺激を行ったこと以外は上記の方法と同様の方法で実験を行った場合の結果とともに図4に示す。また、KRBH緩衝液(2.8mMグルコース)に代えてKRBH緩衝液(20mMグルコース)を使用して実験を行った場合の結果を図4にあわせて示す。図4から明らかなように、配列番号4に記載の塩基配列からなるhCF266(27V)によりコードされる配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドのフラグメントである3種類のポリペプチドA~Cは、マウス膵臓ランゲルハンス氏島細胞に対してグルコース応答性のインスリン分泌を誘導することがわかった。
【0019】
製剤例1:
自体公知の方法で配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを滅菌してから凍結乾燥することで静脈注射剤として製剤化した。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、糖尿病をはじめとする種々の代謝性疾患の治療に有効なインスリン分泌誘導剤及びインスリン分泌誘導組成物を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例におけるmCF266が腸管に特異的に発現していることを示すノザンブロットの結果である。
【図2】同、CF266の培養上清のインスリン分泌誘導作用を示すグラフである。
【図3】参考例における、mCF266のin vivoでのインスリン分泌誘導作用を示すグラフである。
【図4】実施例における、hCF266によりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドのフラグメントのインスリン分泌誘導作用を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3