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明細書 :炭素材料、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4887483号 (P4887483)
公開番号 特開2006-240937 (P2006-240937A)
登録日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発行日 平成24年2月29日(2012.2.29)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
発明の名称または考案の名称 炭素材料、及びその製造方法
国際特許分類 C01B  31/06        (2006.01)
D01F   9/127       (2006.01)
FI C01B 31/06 A
D01F 9/127
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2005-060955 (P2005-060955)
出願日 平成17年3月4日(2005.3.4)
審査請求日 平成19年12月12日(2007.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 敏行
【氏名】曽根 正人
【氏名】須賀 陽介
個別代理人の代理人 【識別番号】100081271、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 芳春
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 特公昭42-015365(JP,B1)
特開平02-088497(JP,A)
特開平02-233511(JP,A)
国際公開第2004/107825(WO,A1)
DAVIDSON,J.L. et al,Direct observations of the elastic modulus and tensile strength of CVD diamond films and fibers. ,Diam Based Compos Relat Mater,1997年,p.229-240
調査した分野 C01B 31/00-31/36
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ダイヤモンド構造を有する多面体の結晶が繊維状に連結してなり、前記多面体の結晶の径が30~150nmであることを特徴とする炭素材料。
【請求項2】
前記ダイヤモンド構造を有する多面体の結晶が連結して繊維状の物質を形成し、前記繊維状の物質の複数が網状に絡まっている請求項1に記載の炭素材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭素材料の製造方法であって、超臨界状態にした二酸化炭素中でプラズマ放電を行う炭素材料の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法において、プラズマ放電を行う電極として白金、金、亜鉛、亜鉛めっき鉄、又は真鍮から選ばれる金属製電極を用いることを特徴とする炭素材料の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の製造方法において、プラズマ放電を行う際に、高周波電源を用いて電力を印加することを特徴とする炭素材料の製造方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の製造方法において、プラズマ放電を行う際に、直流電源を用いて電力を印加することを特徴とする炭素材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は炭素材料の技術分野に属する。さらに詳しくは、従来のフラーレンやカーボンナノチューブ等とは異なる新規な構造(ダイヤモンド構造)を有するナノ炭素材料、及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素材料は物性や構造が非常に多様性のある物質群を構成しており、古くからダイヤモンドやグラファイトが良く知られている。近年ではフラーレン、カーボンナノチューブなどの新しい炭素材料が発見され、その効率的な製造方法の開発と、応用分野の探索が進んでいる。
【0003】
従来の炭素材料、及びその製造方法の例として、(特許文献1)には、カーボンナノチューブを10GPa以上に加圧し、1600℃以上に加熱することを特徴とするナノダイヤモンドの製造方法が開示されている。また、(特許文献2)には、=C=等の結合を含む炭素材料に対し、X線、マイクロ波及び超音波の少なくとも1種を照射することにより、反応させて、ダイヤモンド薄膜、微粒子状ダイヤモンド等を形成させることを特徴とする機能性炭素材料の製法が記載されている。
上記のような種々の炭素材料は、電気・電子・磁気分野、エネルギー分野、表面改質分野(耐摩耗性等)、プローブ・センサ分野、医療・診断分野など、広汎な分野への応用が将来へ向け期待されており、より優れた物性を持つ炭素材料の開発が強く望まれている。
【0004】

【特許文献1】特開2002-66302号公報(請求項5)
【特許文献2】特開2000-109310号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、高密度、高拡散性、低粘性の特徴をもつ超臨界流体に注目し、超臨界流体中でのプラズマ放電による反応について研究を行ってきた。その結果、超臨界二酸化炭素下の反応によって、電極板上に新規構造の炭素材料が生成することを確認し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明では、ダイヤモンド構造を有する新規な炭素材料と、その製造方法を提供することを目的とする。この炭素材料は、耐摩耗性材料、分散強化材料、水素吸蔵材料、電子線放射エミッター、ダイヤモンド半導体、その他の電子材料等として用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1として、ダイヤモンド構造を有する多面体の結晶が繊維状に連結してなる炭素材料を提供するものである。
【0007】
また、請求項2は、ダイヤモンド構造を有する多面体の結晶が連結して繊維状の物質を形成し、前記繊維状の物質の複数が網状に絡まっている炭素材料である。
【0008】
また、請求項3は、請求項1又は2記載の炭素材料において、多面体の結晶の径が30~150nmであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4は、請求項1~3のいずれか記載の炭素材料の製造方法であって、超臨界状態にした二酸化炭素中でプラズマ放電を行う炭素材料の製造方法である。
【0010】
上記構成によれば、プラズマ放電によって二酸化炭素が分解し、電極上にダイヤモンド構造の物質を生成する。なお、ここで超臨界状態とは、液相と気相両者の密度が等しくなり区別がつかなくなる点(臨界点)を超えた温度・圧力下にある状態をいい、液体的な性質と気体的な性質をもった濃い蒸気と言うことができる。二酸化炭素の場合には、臨界温度が31.1℃、臨界圧力は7.38MPaである。
【0011】
また、請求項5は、請求項4記載の製造方法において、プラズマ放電を行う電極として白金、金、亜鉛、亜鉛めっき鉄、又は真鍮から選ばれる金属製電極を用いることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6は、請求項4又は5記載の製造方法において、プラズマ放電を行う際に、高周波電源を用いて電力を印加することを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項7は、請求項4又は5記載の製造方法において、プラズマ放電を行う際に、直流電源を用いて電力を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、超臨界状態の二酸化炭素を雰囲気流体かつ原料としてプラズマ放電を行うことにより、新規な炭素材料を得ることができる。この炭素材料は、ダイヤモンド構造の多面体結晶が繊維状に連結した構造を有しており、高強度、耐摩耗性に優れた材料である。分散強化材料、耐摩耗性材料、ダイヤモンド半導体その他の電子材料、水素吸蔵材料、電子線放射エミッター等として利用することが可能である。
【0015】
また現在、二酸化炭素は温室効果ガスとして悪名高いが、生物、または我々人類が生活するには排出せざるを得ない物質である。しかし二酸化炭素は不活性ガスとして極めて安定な物質であり、炭素の固定化は自然界で行われる光合成や触媒を利用した例が挙げられるのみであった。本発明によって炭素の直接固定化を図ることができ、二酸化炭素削減の観点から見ても産業上の利用可能性は極めて大きいといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳述する。
本発明の炭素材料は、ダイヤモンド構造を有する多面体の結晶が、繊維状に連結した物質である。個々の多面体の結晶の径は30~150nm程度であり、これらがネックレス状(数珠状)に繋がっている。
【0017】
多面体結晶の径は、材料の作製条件(反応時間、温度、圧力等)によって制御することが可能であり、上記の数値範囲に限定されるものではないが、一般に30nm未満であると微結晶質で粒界が多く、ダイヤモンド固有の特性が得られにくい傾向がある。また、150nmを超えると結晶が多面体から球状に変化して繊維表面の凹凸が大きくなり、材料の用途によっては適さない場合があるため、作製する炭素材料の用途等を考慮して条件が適宜設定される。また、上記ネックレス状の炭素材料の長さは、通常0.3~1000μm程度である。
【0018】
このような炭素材料は、ダイヤモンド構造を有していることから、高強度、耐摩耗性に優れた材料であり、この特徴を生かして、分散強化材料、研磨剤、耐摩耗性材料、ダイヤモンド半導体その他の電子材料、水素吸蔵材料、電子線放射エミッター等に応用することができる。また、生体適合性が良いため、メディカル分野への適用することができる。
【0019】
以上のような炭素材料は、次の方法により好適に製造することができる。
図1には、本発明の炭素材料の製造装置の一実施形態を示す。図1の製造装置は、恒温槽21中に耐圧の反応器10が備えられ、反応器10内に板状の電極11、12が平行に配置されている。そして、ボンベ22に封入された液化二酸化炭素が、送液ポンプ24、圧力調整弁25を介して反応器10内へ導入されるように構成されている。なお、送液ポンプ24は、冷却器23を用いて冷却されている。これにより、目的とする圧力まで速やかに加圧し、圧力を安定させることができる。また、排圧調整弁26により反応器10内の圧力を調整している。さらに、電極11、12には高周波電源27が整合器28を介して接続されている。
【0020】
電極11、12としては、プラズマ放電が可能な材質であれば適用可能であり、具体的には、ニッケル、コバルト、銅、銀、白金、金、亜鉛、鉄、錫などの純金属電極や、銀メッキ鉄、亜鉛めっき鉄、錫めっき鉄などの被めっき電極、また真鍮、鉄ニッケル合金、鉄コバルト合金などの合金電極等を用いることができ、その中でも好ましくは、白金、金、亜鉛、亜鉛めっき鉄、真鍮である。また、電極間距離は、反応器10内の温度、圧力、又は放電条件によっても異なるため特に限定されるものではないが、通常0.1~5.0mm程度に設定される。
【0021】
反応を行う際には、まず反応器10内に二酸化炭素を導入し、その後加圧・加温して二酸化炭素を超臨界状態とする。純物質が気体と液体の平衡状態で密閉した容器にある場合、液体は温度の上昇とともに熱膨張し密度は低下し、一方で気体は蒸気圧の増加により密度は増大するが、最後に液相と気相両者の密度が等しくなり区別がつかなくなる点を臨界点といい、そのときの温度、圧力を臨界温度(Tc)、臨界圧力(Pc)という。超臨界状態とは、温度及び圧力が臨界点以上にある状態をいい、流体は流体的な性質と気体的な性質をもった濃い蒸気のような状態となる。二酸化炭素の場合、臨界温度は室温に近い31.1℃(304.25K)、臨界圧力は7.38MPaである。
【0022】
温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態とすることを必須条件とする以外は適宜設定できるが、目的の炭素材料を安定に生成させる観点から、好ましい温度範囲は304.5Kから573.2K、最も好ましくは304.25K~473.2Kである。また圧力は7.38MPa以上である限り特に限定されないが好ましくは7.387MPa~40.387MPa、最も好ましくは7.4MPa~20.387MPaである。
【0023】
二酸化炭素を超臨界状態とした後、高周波電源27により電極11、12間に電力を印加し、プラズマ放電を行う。その際の放電条件は、電極間距離や圧力によって異なるが、例えば電源の周波数を1~50MHz、電力を10~4000W程度、好ましくは120~1200W程度に設定する。また、反応時間も反応器のスケールや放電条件に応じて適宜設定できるが、一般には数分間程度とすることが適当である。
【0024】
プラズマ放電を行うことにより、電極上に目的の炭素材料が生成する。具体的には、電極の表面に、ダイヤモンド構造を有する多面体の結晶が連結した繊維状の物質が網状に絡まった層が形成される。したがって、耐食性や低付着性を期待して金型へのコーティング材へ応用したり、生体適合性が良いためメディカル分野のコーティング材として適宜用いることができる。
【0025】
また、電極上に生成した炭素材料を回収し、適宜精製を行うことにより、繊維状のナノ炭素材料を得ることができる。この材料は、高強度かつ耐摩耗性に優れるため、分散強化材料、研磨剤、耐摩耗性材料、水素吸蔵材料、電子線放射エミッター、ダイヤモンド半導体その他の電子材料として有効に利用することができる。
【0026】
なお、上述の例では、プラズマ放電を行う際に高周波電源を用いる場合について説明したが、これに代えて直流電源を用いることもできる。高周波電源の場合には、目的の炭素材料が両方の電極上に生成するが、直流電源を用いると片方の電極(陰極)上に効率良く炭素材料を生成させることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
炭素材料の製造装置として図1に示す装置を用いた。ポンプ、及び圧力調整弁には、日本分光製の二酸化炭素送液ポンプ、全自動圧力調整弁、全自動排圧調整弁を用いた。電極材質は10mm×20mmの真鍮、亜鉛めっき鉄、鉄を使用した。反応器はSUS316L製の通電可能な6穴式セルを使用した。高周波電源と整合器は東京ハイパワー社製PSG-1301(交流発生器)、PA-150(高周波発生器)、PS-330(直流変換器)、HC-2000(整合器)を用いた。流体源は純度99.99%の液化炭酸ガスを使用した。そして、プラズマ化学的気相成長法(プラズマCVD)を基に平行平板電極付耐圧セルを用いた装置を組み、電極間距離は0.5mmに設定した。
【0028】
耐圧セル(100ml)中の雰囲気ガスを二酸化炭素で置換した。その後加圧(7.5MPa)、昇温(313K)した。約60分放置した後、高周波電源(13.56MHz)を用いて約3分間120Wの電力を極板間に印加し、プラズマ放電を行った。続いて、氷水で60分冷却し、減圧操作を0.1MPa/minで行った。
【0029】
電極板上に生成した物質を反射型光学顕微鏡(キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH-8000)を用いて表面観察を行った。また、走査型電子顕微鏡(日立製FE-SEM S-4500)を用いて表面観察を行った。その際、SEM観察用試料作製においてE-1030型日立イオンスパッターを用いて白金-パラジウム合金を成長速度6.7nm/minで2分間コーティングした。
【0030】
実験の結果、亜鉛めっき鉄電極、鉄電極には黒色物質が生成した。また、真鍮電極上には茶褐色物質が生成した。
放電腐食の跡が全ての電極に存在するため、超臨界流体中で放電が起きたと考えられる。また、黒色や茶褐色の物質が付着していることから、二酸化炭素が放電によりプラズマ化したことが示唆された。
光学顕微鏡で観察したところ、放電腐食の跡は大きさが電極材質によって異なるが、ほぼ同形状の円形の跡が連続的に重なっていることが分かった。反応器内の上下の電極に同じ跡が見られることから円柱状のプラズマが発生していることが考えられる。
【0031】
図2~図4は、亜鉛めっき鉄電極の表面を走査型電子顕微鏡により観察した写真を示したものである。図2に示すように、多数の繊維状の物質が生成し、それらが互いに絡まり全体として網状に堆積する様子が観察された。さらに図3、図4の写真は、図2を拡大したものであるが、繊維状に見えた生成物は多面体の微粒子が連結したものであることが分かった。原料となるものが二酸化炭素しか存在しないため、炭素主体の生成物であることが考えられる。図4に示すように、一つ一つの微粒子は六角形等の幾何学形状を有する多面体であり、粒子径が大きくなると球状に近いものも存在していた。なお、繊維を構成する粒子の径は約40~100nmであった。
このような繊維状の物質は、亜鉛めっき鉄電極の他、鉄、真鍮電極のいずれにも生成しており、明確な電極材質依存性は確認されなかった。
【0032】
生成物の構造を調べるため、ラマン分光測定をレーザーラマン分光光度計(日本分光社製NRS-1000)を用いて行った。励起光の波長は647nmで測定した。分解能は0.54cm-1である。
【0033】
ラマン測定の結果を図5に示す。これによれば、生成物のラマンスペクトルは1300cm-1に強いピークを示した。ダイヤモンドライクカーボン膜の場合には、ダイヤモンドに特有の1351cm-1とグラファイトに特有の1581cm-1にピークが見られる。したがって、本実施例の生成物は純粋なダイヤモンドの結晶であることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る炭素材料を製造する際の装置構成を示す図である。
【図2】本発明に係る炭素材料を示すSEM画像である。
【図3】本発明に係る炭素材料を示すSEM画像である。
【図4】本発明に係る炭素材料を示すSEM画像である。
【図5】本発明に係る炭素材料を示すラマンスペクトルである。
【符号の説明】
【0035】
10 反応器
11、12 電極
21 恒温槽
22 ボンベ
23 冷却器
24 送液ポンプ
25 圧力調整弁
26 排圧調整弁
27 高周波電源
28 整合器
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4