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明細書 :アプタマーの同定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4706019号 (P4706019)
公開番号 特開2007-014292 (P2007-014292A)
登録日 平成23年3月25日(2011.3.25)
発行日 平成23年6月22日(2011.6.22)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
発明の名称または考案の名称 アプタマーの同定方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/115       (2010.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAZ
C12N 15/00 A
C12N 15/00 H
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 13
全頁数 15
出願番号 特願2005-200823 (P2005-200823)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
審査請求日 平成20年3月11日(2008.3.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】池袋 一典
【氏名】早出 広司
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100106840、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 耕司
【識別番号】100105991、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 玲子
【識別番号】100114465、【弁理士】、【氏名又は名称】北野 健
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 特表2003-502078(JP,A)
特開2003-116583(JP,A)
化学と教育,2003年,vol.51 no.1,pp.26-27
CICSJ Bulletin,2008年,vol.26 no.3,pp.78-82
調査した分野 IPC
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68

DB名
CA/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
CiNii
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法であって、
(a) 標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体とを用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、そして
(d) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項2】
工程(b)と工程(c)との間に、第1の担体を第2の担体から分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法であって、
(a) 標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体を用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(d) 回収した1本鎖核酸を増幅し、
(e) 増幅した1本鎖核酸を、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(f) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(g) 必要により工程(d)-(f)を繰り返し、そして
(h) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項4】
工程(b)と工程(c)との間に、第1の担体を第2の担体から分離する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)と工程(f)との間に、第1の担体を第2の担体から分離する工程をさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法であって、
(a) 標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体を用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(d) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定し、
(e) 決定された塩基配列に基づいて1本鎖核酸の第2のライブラリを用意し、ここで、1本鎖核酸の第2のライブラリは、一部の配列が前記決定された塩基配列と同じであり残りの配列が前記決定された塩基配列と異なる塩基配列を有する複数の1本鎖核酸から構成されており、
(f) 1本鎖核酸の第2のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(g) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(h) 必要により工程(e)-(g)を繰り返し、そして
(i) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項7】
工程(b)と工程(c)との間に、第1の担体を第2の担体から分離する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(f)と工程(g)との間に、第1の担体を第2の担体から分離する工程をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
第1の標的分子と結合しうるアプタマーと第2の標的分子と結合しうるアプタマーとを同定する方法であって、
(a) 第1の標的分子を固定化した第1の担体と、第2の標的分子を固定化した第2の担体とを用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体と第2の担体とを分離し、
(d) 第1の担体上に固定化された第1の標的分子と結合した1本鎖核酸と第2の担体上に固定化された第2の標的分子と結合した1本鎖核酸を別々に回収し、そして
(e) 回収した各1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法。
【請求項10】
1本鎖核酸を回収する工程が、標的分子に結合することが知られているリガンドを用いて行われる、請求項1-9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
担体が蛋白質を固定化しうる膜である、請求項1-10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
担体が蛋白質を固定化しうるビーズである、請求項1-10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
担体がマイクロ流路上に備えられている、請求項1-10のいずれかに記載の方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はアプタマーを同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アプタマーとは、特定の分子に結合する核酸リガンドである。アプタマーは、1990年にGoldらによって初めてその概念が報告されており、Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment (SELEX)と呼ばれる方法を用いて獲得される(Tuerk, C. and Gold L. (1990), Science, 249, 505-510)。この方法では、通常1種類の標的分子を担体に固定化し、これに核酸ライブラリを添加し、標的分子に結合する核酸を回収し、これを増幅して再び標的分子を固定化した担体に添加する。この工程を10回程度繰り返すことにより、標的分子に対して結合力の高いアプタマーを濃縮し、その塩基配列を決定して、標的分子を認識するアプタマーを取得する。
【0003】
従来のSELEX法では、原理的にはすべての標的分子に対してこれに結合するアプタマーを探索できるはずであるが、実際には固定化に用いる担体に対して非特異的に吸着するアプタマーを排除することができない。
【0004】
SELEX法は、基本的に、(1)標的分子を固定化した担体へのライブラリの添加、(2)結合しなかった核酸の除去、(3)標的分子に結合したアプタマーの回収、(4)回収したアプタマーのPCR等による増幅の4つの工程を繰り返す手法である。この(4)の増幅の過程は、通常PCRにより行われるが、PCRでは安定な高次構造を形成する核酸は増幅されにくいため、増幅されやすいアプタマーが大量に増幅され、標的分子に強く結合するアプタマーが必ずしも増幅されない。これは、標的分子に結合するアプタマーは安定な高次構造をとっている場合が多いと考えられ、したがって、PCRの段階で標的分子に強く結合するアプタマーが排除され、固定化担体に非特異的に結合した核酸ばかりが増幅されるためであると考えられる。実際、原理的にはすべての標的分子に対してアプタマーを取得できるはずであるが、これまで取得されたアプタマーの種類は必ずしも多くはない。
【0005】
すなわち、従来技術のSELEXの問題点は、非特異的に固定化担体に結合するアプタマーを排除することが難しいことと、増幅段階でその非特異的吸着アプタマーが増幅されやすい点にある。
【0006】
本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある。

【特許文献1】特許2763958
【非特許文献1】Tuerk, C. and Gold L. (1990), Science, 249, 505-510
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のSELEXの問題点を解決し、標的分子に特異的に結合しうるアプタマーを効率よく取得する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、標的分子と非標的分子とを異なる場所に固定化した担体を用意し、これに核酸ライブラリを添加し、標的分子に結合したアプタマーを分離することにより、標的分子に対して特異性の高いアプタマーが得られることを見出した。
【0009】
第1の観点においては、本発明は標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法であって、
(a) 標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体とを用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、そして
(d) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法を提供する。
【0010】
好ましくは、本発明の方法において、1本鎖核酸のライブラリを担体と接触させる工程と、標的分子と結合した1本鎖核酸を回収する工程との間に、第1の担体を第2の担体から分離する工程をさらに含む。
【0011】
また好ましくは、1本鎖核酸を回収する工程は、標的分子に結合することが知られているリガンドを用いて行われる。
【0012】
別の観点においては、本発明は、標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法であって、
(a) 標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体を用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(d) 回収した1本鎖核酸を増幅し、
(e) 増幅した1本鎖核酸を、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(f) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(g) 必要により工程(d)-(f)を繰り返し、そして
(h) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法を提供する。
【0013】
別の観点においては、本発明は、標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法であって、
(a) 標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体を用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(d) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定し、
(e) 決定された塩基配列に基づいて1本鎖核酸の第2のライブラリを用意し、ここで、1本鎖核酸の第2のライブラリは、一部の配列が前記決定された塩基配列と同じであり残りの配列が前記決定された塩基配列と異なる塩基配列を有する複数の1本鎖核酸から構成されており、
(f) 1本鎖核酸の第2のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(g) 第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収し、
(h) 必要により工程(e)-(g)を繰り返し、そして
(i) 回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法を提供する。
【0014】
別の観点においては、本発明は、第1の標的分子と結合しうるアプタマーと第2の標的分子と結合しうるアプタマーとを同定する方法であって、
(a) 第1の標的分子を固定化した第1の担体と、第2の標的分子を固定化した第2の担体とを用意し、
(b) 1本鎖核酸のライブラリを、前記第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、前記第1の担体および第2の担体と接触させ、
(c) 第1の担体と第2の担体とを分離し、
(d) 第1の担体上に固定化された第1の標的分子と結合した1本鎖核酸と第2の担体上に固定化された第2の標的分子と結合した1本鎖核酸を別々に回収し、そして
(e) 回収した各1本鎖核酸の塩基配列を決定する、
の各工程を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法を提供する。本明細書において、「アプタマー」とは、特定の分子に結合する核酸リガンドを表す。アプタマーは、DNAであってもRNAであってもよく、PNA等の核酸模倣体であってもよい。また、アプタマーは、塩基、糖、および/またはヌクレオチド間結合に種々の修飾を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の第1の態様においては、第1工程において、標的分子を固定化した第1の担体と、少なくとも1つの非標的分子を固定化した第2の担体とを用意する。
【0017】
「標的分子」とは、その分子に結合するアプタマーを同定することが望まれる目的の分子を表し、例えば、核酸、蛋白質、ペプチド、糖類、天然または合成の化学物質等が挙げられるが、これらに限定されない。「非標的分子」とは、標的分子以外の任意の分子を表す。本発明の方法において用いられる非標的分子の数には限定はないが、特異性の高いアプタマーを得るためには、多数の非標的分子を用いることが好ましい。「担体」とは、その表面に標的分子を固定化することができる物質をいい、例えば、セルロース、プラスチック、ガラス、樹脂等が挙げられる。担体は、管状、膜状、多孔質状、ビーズ状などの形態でありうる。好ましい担体には、ニトロセルロース膜、PVDF膜、PES(ポリエチルスルホネート)膜、ラテックスビーズ、ポリスチレンビーズ、アガロースゲルビーズ、CPG(制御多孔ガラス)ビーズ、金ナノ粒子、磁性微粒子、シリコンチップなどが含まれる。また、担体はマイクロ流路上に備えられていてもよい。標的分子を担体に固定化する技術は当該技術分野においてよく知られている。
【0018】
第2工程においては、1本鎖核酸のライブラリを、上述の第1の担体および第2の担体と接触させる。「1本鎖核酸のライブラリ」とは、ランダムな配列を有する1本鎖核酸の集合物であり、核酸はDNAであってもRNAであってもよい。核酸の長さは、取得が望まれるアプタマーのサイズ、ならびに標的分子のサイズと構造によって異なり、特に制限されるものではないが、一般に10-80塩基、好ましくは15-60塩基、より好ましくは20-40塩基である。ランダムな配列とは、塩基配列の全部または一部の位置について異なる種類の塩基の混合物である1本鎖核酸の集合物の配列をいう。例えば、配列中の特定の位置においてA、G、CおよびTが各25%の確率で存在する核酸の集合物は塩基配列はランダムな配列である。各塩基の存在の確率は25%に限定されず、様々でありうる。また、1本鎖核酸の塩基配列のうち、特定の位置の塩基配列が固定されていてもよい。例えば、ライブラリのすべての1本鎖核酸が、配列中の同じ位置に、増幅やシークエンシングのために都合のよい配列を含んでいてもよい。また、後述する子孫ライブラリの場合に見られるように、前回のラウンドで得られた配列情報に基づいて塩基配列の特定の位置のみをランダムとし、残りの位置の配列が固定されているようにライブラリを作成してもよい。
【0019】
1本鎖核酸のライブラリは、当該技術分野においてよく知られる方法により、適当な核酸モノマーユニットの混合物を用いて、核酸合成装置により容易に製造することができる。また、1本鎖核酸は検出可能な標識により標識されていてもよく、このことにより標的と核酸の結合のモニターや、後の工程における回収が容易になる。
【0020】
この第2工程における1本鎖核酸と担体との接触は、第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合するような条件下で行う。すなわち、別々のチューブで行うのではなく、例えば、同時に同じ容器中で接触させる。このことにより、担体や非標的標的分子に対して親和性を有するアプタマーが標的分子に結合する確率が低くなり、標的分子に特異的に結合するアプタマーをより選択的に取得することができる。具体的には、競合する条件下における接触は、以下のようにして行うことができる。標的分子と非標的分子を1枚の膜状の担体(PVDF、ニトロセルロースなど)の異なる場所にスポットして固定化させ、適当な溶液に溶解した1本鎖核酸のライブラリをこの膜に加えて適当な時間インキュベートする。あるいは、標的分子を固定化した担体(膜、ビーズなど)と非標的分子を固定化した担体とを同じ容器に入れ、1本鎖核酸のライブラリをこの容器に加えてインキュベートしてもよい。また、標的分子を固定化したカラムと非標的分子を固定化したカラムとを用意し、適当な溶液に溶解した1本鎖核酸のライブラリをこれらのカラムに繰り返し通してもよい。あるいは、蛋白質アレイやビーズアレイに1本鎖核酸のライブラリを加えてインキュベートしてもよい。
【0021】
第2工程の後、好ましくは担体を洗浄して、いずれの担体にも結合しなかった1本鎖核酸を除去する。洗浄は、第2工程において1本鎖核酸のライブラリを溶解した溶液を用いてもよく、この溶液に界面活性剤などを加えた溶液を用いてもよく、あるいはpHや塩濃度の異なる適当な溶液を用いてもよい。洗浄は通常1回から数回行う。次に、好ましくは、第1の担体と第2の担体とを分離する。分離は、例えば、標的分子と非標的分子を1枚の膜状の担体の異なる場所にスポットした場合には担体の標的分子をスポットした部分を切り取ることにより、標的分子と非標的分子を異なる担体に固定化した場合には標的分子を固定化した第1の担体のみを取り出すことにより、行うことができる。
【0022】
第3工程においては、第1の担体上に固定化された標的分子と結合した1本鎖核酸を回収する。回収は、当該技術分野においてよく知られるように、標的分子と核酸との結合を解離させることができる溶液を用いて、アプタマーを溶出させることにより行うことができる。あるいは、標的分子に結合することが知られている既知のリガンドを適用して、アプタマーを溶出させてもよい。ここで回収される1本鎖核酸は、異なる塩基配列を有する複数の1本鎖核酸の混合物でありうる。
【0023】
第4工程においては、回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する。塩基配列の決定は、当該技術分野においてよく知られる方法、例えばジデオキシ法を用いて容易に行うことができる。あるいは自動化シークエンス装置を用いて配列を決定してもよい。このようにして、標的分子と結合しうる1またはそれ以上のアプタマーを同定することができる。
【0024】
本発明の方法の第2の態様は、標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法において、標的分子と結合する1本鎖核酸を回収した後に、これを増幅して再び担体と接触させることを特徴とする。この方法の第1-第3工程は第1の態様と同じである。第4工程においては、回収した1本鎖核酸を増幅する。増幅とは、回収された1本鎖核酸のコピー数を増やすことをいい、適当なベクター中にサブクローニングして適当な宿主に導入することにより行ってもよく、PCRにより行ってもよい。PCRは、高次構造をとる核酸の増幅効率が低いと考えられるので、PCRを用いる場合には反応のサイクル数を少なくすることが好ましい。
【0025】
第5工程においては、このようにして増幅した1本鎖核酸を、第2工程と同様にして、第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、第1の担体および第2の担体と接触させる。第6工程においては、第3工程と同様にして、標的分子と結合した1本鎖核酸を回収する。上述したように、第5工程と第6工程との間において、好ましくは洗浄を行い、また好ましくは第1の担体と第2の担体とを分離する。
【0026】
必要により、第4工程から第6工程までを繰り返すことができる。繰り返しは、一般に2-10ラウンド、好ましくは3-6ラウンド行う。このことにより、標的分子に対して高い結合親和性を有する1本鎖核酸を濃縮することができる。次に、第1の態様の第4工程と同様にして、回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する。このようにして、標的分子と結合しうる1またはそれ以上のアプタマーを同定することができる。
【0027】
本発明の方法の第3の態様は、標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法において、回収された1本鎖核酸の塩基配列を決定した後に、この配列情報に基づいて第2のライブラリを作成することを特徴とする。この方法の第1-第4工程は第1の態様と同じである。第5工程においては、第4工程において決定された塩基配列に基づいて、1本鎖核酸の第2のライブラリを用意する。この第2のライブラリはいわゆる子孫ライブラリである。通常第4行程で決定される塩基配列は複数であり、この子孫ライブラリは、この複数のアプタマーの塩基配列に基づき、下記の方法で設計する。まず、それらの複数の決定された塩基配列を例えば3~5塩基程度の配列ブロックに分割し、これらの配列ブロックを、コンピューター上で、複数個体間でシャッフリングし、これを混成させた新しいアプタマーの塩基配列を多数生じさせる。更に生じさせた新しい塩基配列のランダムな部位に、コンピューター上で1個あるいは複数の変異を生じさせ、更に多数の新しいアプタマーの塩基配列を発生させる。これらの塩基配列に基づいて新規アプタマーを多数合成し、子孫ライブラリとする。
【0028】
第6工程および第7工程では、このようにして得られた第2のライブラリを用いて、第2および第3工程と同様にして、ライブラリを第1の担体および第2の担体と接触させ、標的分子と結合した1本鎖核酸を回収する。
【0029】
必要により、第5工程から第7工程までを繰り返すことができる。繰り返しは、一般に2-10ラウンド、好ましくは3-6ラウンド行う。このことにより、標的分子に対して高い結合親和性を有する1本鎖核酸が選択的に濃縮される。次に、第1の態様の第4工程と同様にして、回収した1本鎖核酸の塩基配列を決定する。このようにして、標的分子と結合しうる1またはそれ以上のアプタマーを同定することができる。
【0030】
本発明の方法の第4の態様は、標的分子と結合しうるアプタマーを同定する方法において、複数の標的分子にそれぞれ特異的に結合する複数のアプタマーを同定することを特徴とする。この方法の第1工程においては、第1の標的分子を固定化した第1の担体と、第2の標的分子を固定化した第2の担体とを用意する。第2工程においては、1本鎖核酸のライブラリを、第1の担体と第2の担体とが1本鎖核酸との結合について競合する条件下で、第1の担体および第2の担体と接触させる。第3工程においては、第1の担体と第2の担体とを分離する。第1-第3工程における、担体の具体例、および固定化、接触、分離の手順は、第1の態様の第1-第3工程と同様である。複数の標的分子が1本鎖核酸との結合について競合する条件下で接触工程を実施することにより、それぞれの標的分子に対してより高い結合親和性を有し、他の標的分子に対してより低い結合親和性を有するアプタマーを効率よく取得することができる。
【0031】
次に、第4工程において、第1の担体上に固定化された第1の標的分子と結合した1本鎖核酸と第2の担体上に固定化された第2の標的分子と結合した1本鎖核酸を別々に回収し、そして、第5工程において、回収した各1本鎖核酸の塩基配列を決定する。このようにして、標的分子と結合しうる1またはそれ以上のアプタマーを同定することができる。
【0032】
第4工程において1本鎖核酸を回収した後、本発明の方法の第2の態様と同様にしてこれを増幅して、標的分子および非標的分子を固定化した担体と接触させる次のラウンドを実施することにより、標的分子に対して特異的に結合しうるアプタマーを濃縮してもよい。また、第5工程において1本鎖分子の塩基配列を決定した後、本発明の方法の第3の態様と同様にして子孫ライブラリを作成し、次のラウンドを実施してもよい。
【0033】
この方法は、2種類の標的分子のみならず、多数の標的分子に対するアプタマーを同時に同定するために用いることができる。1本鎖核酸との結合について競合する標的分子が反応系に多数存在すればするほど、それぞれの標的に結合するアプタマーの特異性が高くなると考えられる。したがって、本発明の方法は、例えば、多数の蛋白質をプレートやチップ上に固定化したプロテインアレイや、それぞれ異なる蛋白質を固定化したビーズを多数並べたビーズアレイとともに用いるのに特に適している。
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の方法の具体的手順を示す。
【0035】
図1は、担体として膜を用いてアプタマーを同定する方法の具体例を示す。PVDF膜に標的分子と非標的分子をスポットして固定化させ、この膜に1本鎖核酸ライブラリを加えてインキュベートする。膜を洗浄した後、標的分子をスポットした部分を切り取って、この部分に結合した1本鎖核酸を抽出する。次に、抽出した1本鎖核酸を増幅し、標的分子と非標的分子が固定化された新たなPVDF膜に加えて、選択の第2ラウンドを開始する。このようにして数ラウンドの選択を行った後、得られた1本鎖核酸の塩基配列を決定することにより、非標的分子に結合せず標的分子に特異的に結合するアプタマーを同定することができる。
【0036】
図2は、担体として膜を用いて複数の標的分子にそれぞれ特異的に結合するアプタマーを同定する方法の別の態様を示す。PVDF膜に複数の標的分子をスポットして固定化させ、図1の態様と同様にして、この膜に1本鎖核酸ライブラリを加えてインキュベートする。膜を洗浄した後、複数の標的分子に結合した1本鎖核酸を一緒にして抽出し、増幅した後、新たなPVDF膜に加えて、選択の第2ラウンドを開始する。このようにして数ラウンドの選択を行った後、各標的分子に結合した1本鎖核酸を別々に単離して、それぞれの塩基配列を決定することにより、複数の標的分子にそれぞれ特異的に結合する複数のアプタマーを同定することができる。
【0037】
図3は、ビーズアレイを用いてアプタマーを同定する方法の具体例を示す。ビーズアレイとは、くぼみが形成されているプレート上に、表面上に蛋白質が固定化されているビーズが多数配置されているアレイである。ビーズアレイは、Nagai H, Murakami Y, Morita Y, Yokoyama K, Tamiya E. Development of a microchamber array for picoliter PCR, Anal Chem. 2001 Mar 1;73(5):1043-7. に材料、形状、作成方法が記載されている、マイクロチャンバーアレイにビーズを添加し、展開することにより作製できる。多数の標的分子および所望により非標的分子を各ビーズの上に固定化して、アレイ上の所定の位置に配置する。このアレイに1本鎖核酸ライブラリを加えてインキュベートする。次に、各ビーズを回収し、標的分子に結合した1本鎖核酸を回収して、その配列を決定することができる。あるいは、ビーズをアレイ上に無作為に配置し、1本鎖核酸ライブラリと結合させた後にビーズを回収し、ビーズ上の1本鎖核酸の配列を決定するとともに、同じビーズ上の蛋白質を質量分析等の慣用の方法により同定することも可能である。このようにして、多数の標的分子についてそれぞれ結合するアプタマーを同定することができる。なお、ビーズは必ずしもアレイ上に配置されていなくてもよく、1つのビーズには1種類の標的分子を固定化し、これらを混合してマイクロチューブに入れ、同時に1本鎖核酸ライブラリを加えて競合させることもできる。色分けされた蛍光ビーズを用いれば、FACSにより分離することが可能である。また、上述のように蛋白質を質量分析等の方法により同定してもよい。
【0038】
図4は、マイクロ流路を用いてアプタマーを同定する方法の具体例を示す。マイクロ流路とは、ガラス、金属、プラスチックなどの基板上に約10μm-約1mmの幅で設けられている流路であり、基板上には流路上の液体の流れを制御するためのポンプおよびバルブ等が設けられている。このマイクロ流路に複数の標的分子を固定化し、1本鎖核酸ライブラリを流路に循環させながら流す。流路を適当な洗浄溶液で洗浄した後、これらの標的分子の1つと結合することが知られているリガンドを流路に流すと、その標的分子と結合した1本鎖核酸は溶出される。再び流路を洗浄した後、別の標的分子と結合することが知られているリガンドを流路に流す。このようにして、多数の標的分子に結合する1本鎖核酸を順次回収することができる。回収された1本鎖核酸の塩基配列を決定することにより、多数の標的分子についてそれぞれ結合するアプタマーを同定することができる。
【0039】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
固定化担体としてPVDF(ポリビニリデンジフルオリド)膜を用いて、複数の蛋白質(インスリン、グルカゴン、PQQGDF(ピロロキノリンキノングルコースデヒドロゲナーゼ))に結合するDNAアプタマーの探索を行った。
【0041】
PVDF膜を2cmx2cmに切り、エタノールに3分間浸漬した。膜を約30mlのMilliQ(登録商標)水で5分間洗浄した後、約30mlの結合バッファ(10mMTris-HCl、pH7.4、100mM KCl)で15分間洗浄した。洗浄したPVDF膜の一面にそれぞれ5μg/10μlのインスリン、グルカゴンおよびPQQGDHを添加し、固定化した。膜を結合バッファで洗浄した後、CBBで染色して、蛋白質が固定化されていることを確認した。
【0042】
FITC修飾した30merのssDNAのランダムライブラリ(5'-gTACCAgCTTATTCAATTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNAgATAgTATgTTCATCAg-3')を依頼合成により製造した。ssDNAを結合バッファで1nmol/100μlに調製し、95℃で3分間加熱した後、30分間で室温の25℃まで徐冷することにより、フォールディングさせた。調製したssDNA溶液を結合バッファで3000μlに希釈し、蛋白質を固定化したPVDF膜に加えて、室温25℃で1時間インキュベートした。
【0043】
膜を約30mlの0.05% Tweenを含む結合バッファで洗浄した。膜の各蛋白質をブロットした部分を切り抜き、これに400μlのフェノールおよび200μlの7M尿素を添加し、30分間振盪した。これを5分間遠心分離(15000rpm、4℃)し、得られた上清をクロロホルム処理した。エタノール沈殿によりssDNAを回収し、乾燥し、20μlのMilliQ(登録商標)水で溶解した。FITCの蛍光強度からssDNA濃度を算出した。
【0044】
得られたssDNAを、FITC修飾したプライマー(GTACCAGCTTATTCAATT)とビオチン修飾したプライマー(CTGATGAACATACTATCT)を用いてPCR増幅し(20サイクル、94℃、34sで変性、46℃、30sでアニーリング、72℃、30sで伸長反応)、得られたdsDNAをアビジン固定化ビーズに添加し、0.15M NaOHで溶出することによりssDNAを調製した。次に、1ラウンド目で回収したインスリン、グルカゴンおよびPQQGDHに結合するライブラリを、それぞれ別のPVDF膜に添加して、2ラウンド目を開始した。同様にして、計6ラウンドの濃縮を行った。
【0045】
各ラウンドにおける添加したライブラリのモル数に対する、結合したライブラリのモル数の割合を表に示す。
【0046】
【表1】
JP0004706019B2_000002t.gif

【0047】
1-3ラウンド目で溶出したライブラリの割合は際だっては増えなかったが、若干PQQGDHに対して結合したアプタマーの割合が高いことが観察された。4ラウンド目でPQQGDHに結合したアプタマーの回収率の増加が見られ、ある程度PQQGDHを認識するDNAアプタマーが得られたと考えられる。
【0048】
これまでにPQQGDHについて、これを単独でアガロースビーズやマイクロタイタープレートに吸着させてSELEXを試みたが、非特異的吸着を示すアプタマーばかりが増幅され、PQQGDHに特異性を示すアプタマーを取得することができなかった。本発明にしたがって、同一の固定化担体上に複数の蛋白質を固定化し、ssDNAとの結合を競合させることによって、PQQGDHに特異的に結合するアプタマーが得られたものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にしたがって同定されるアプタマーは、核酸、蛋白質、糖類等の標的分子の検出、定量、ならびに機能および相互作用の解析に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、担体として膜を用いてアプタマーを同定する本発明の方法の具体例を示す。
【図2】図2は、担体として膜を用いてアプタマーを同定する方法の別の態様を示す。
【図3】図3は、ビーズアレイを用いてアプタマーを同定する本発明の方法の具体例を示す。
【図4】図4は、マイクロ流路を用いてアプタマーを同定する本発明の方法の具体例を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3