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明細書 :可逆性感熱記録材料、及びそれを用いた記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4572298号 (P4572298)
公開番号 特開2007-118420 (P2007-118420A)
登録日 平成22年8月27日(2010.8.27)
発行日 平成22年11月4日(2010.11.4)
公開日 平成19年5月17日(2007.5.17)
発明の名称または考案の名称 可逆性感熱記録材料、及びそれを用いた記録媒体
国際特許分類 B41M   5/337       (2006.01)
FI B41M 5/18 101A
B41M 5/18 101C
請求項の数または発明の数 8
全頁数 25
出願番号 特願2005-314589 (P2005-314589)
出願日 平成17年10月28日(2005.10.28)
審査請求日 平成19年10月31日(2007.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 敏行
【氏名】平田 修造
個別代理人の代理人 【識別番号】100081271、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 芳春
審査官 【審査官】藤井 勲
参考文献・文献 特許第2502785(JP,B2)
特開平11-149663(JP,A)
特開2000-085250(JP,A)
特開2000-094838(JP,A)
特開2005-288975(JP,A)
調査した分野 B41M 5/28 - 5/34
特許請求の範囲 【請求項1】
電子供与性呈色化合物、電子受容性化合物、及び可逆剤を含有し、前記電子供与性呈色化合物と前記電子受容性化合物との間の呈色反応を利用した可逆性感熱記録材料であって、前記電子供与性呈色化合物の呈色状態であるときに該電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動を行うための発光性化合物と、発光性化合物の光吸収を促進するための光吸収補助剤とをさらに含有することを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項2】
請求項1記載の可逆性感熱記録材料において、発光性化合物は、電子供与性呈色化合物の呈色状態における紫外可視吸収スペクトルの一部に対して少なくとも一部が重なるような発光スペクトルを有することを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可逆性感熱記録材料において、吸収補助剤の発光スペクトルに対して少なくとも一部が重なるような吸収スペクトルを有するエネルギー移動補助剤を含有することを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の可逆性感熱記録材料において、発光性化合物の吸収スペクトルに対して少なくとも一部が重なるような発光スペクトルを有するエネルギー移動補助剤を含有することを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか記載の可逆性感熱記録材料を基材上に設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
請求項記載の可逆性感熱記録媒体において、可逆性感熱記録材料上に保護層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
請求項5又は6記載の可逆性感熱記録媒体の所定位置を可逆剤の融点まで加熱した後冷却することで発光性化合物を発光させる工程、及び前記所定位置とは異なる位置を可逆剤の結晶化温度まで加熱した後冷却することで発光性化合物を消光させる工程と、を有することを特徴とする可逆性感熱記録媒体の記録方法。
【請求項8】
請求項5又は6記載の可逆性感熱記録媒体に対して、励起光を照射することで画像を表示する工程、を有することを特徴とする可逆性感熱記録媒体の表示方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の呈色反応を利用した感熱記録材料に関するものである。また、本発明は、この感熱記録材料を用いた記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、呈色剤とも言う)と電子受容性化合物(以下、顕色剤とも言う)との間の呈色反応を利用した感熱記録材料は広く知られている。このような感熱記録材料の中でも呈色と消色とを繰り返し行うことができ、かつ、呈色状態や消色状態を室温で保持できる可逆性感熱記録材料としては、これまでに、電子受容性化合物として没食子酸とフロログルシノールを組み合わせたものを用いたもの(特許文献1)、電子受容性化合物にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いたもの(特許文献2)、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(特許文献3~5)、電子受容性化合物にアスコルビン酸誘電体を用いたもの(特許文献6)、電子受容性化合物にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いたもの(特許文献7、8)などが開示されている。
【0003】
また、(特許文献9)には、電子受容性化合物として長鎖脂肪族炭化水素基を有する有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、またはフェノール化合物を用い、これと、電子供与性呈色化合物であるロイコ染料と組み合わせることによって、呈色と消色を加熱冷却条件により容易に行わせることができ、しかもその呈色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも呈色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色性組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体が提案されている。
また、(特許文献10)には、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造のものを使用することが提案されている。
さらに、(特許文献11~15)には、種々の消色促進剤を添加することにより、高速消去特性を付与することが提案されている。
【0004】
しかしながら、上述の可逆性感熱記録材料は、周囲の光を吸収して材料の色を表現する材料であり、周囲が明るい状況でのみ効能を発揮する材料であった。そのため、上述のような可逆性感熱記録材料は以下の問題点を有するものであった。例えば、表示材料などとして用いた場合には、周囲が暗い状況では呈色状態や消色状態を認識できず、補助白色光源を用いて視認することになる。しかし、この場合には白色光の散乱などの影響により、コントラストが低下する問題がある。また、記録材料として用いた場合にも、発光性の材料ではないために、記録を行う前後で励起光を照射した際の発光強度が弱く、高感度の読み出しには適さない材料であった。
【0005】
また、(非特許文献1)には、発光性の感熱記録材料として、フォトクロミック化合物と発光性化合物を高分子媒体中に分散し、フォトクロミック化合物を光異性化したものが提案されている。この感熱記録材料は、励起光源を用いることで発光と非発光のON/OFFを行うものである。
【0006】
しかしながら、上記のフォトクロミック化合物と発光性化合物を高分子媒体中に分散した感熱記録材料は、記録が励起光照射により破壊されてしまうために発光寿命と消光寿命が短いという問題点があった。
【0007】

【特許文献1】特開昭60-193691号公報
【特許文献2】特開昭61-237684号公報
【特許文献3】特開昭62-138556号公報
【特許文献4】特開昭62-138568号公報
【特許文献5】特開昭62-140881号公報
【特許文献6】特開昭63-173684号公報
【特許文献7】特開平2-188293号公報
【特許文献8】特開平2-188294号公報
【特許文献9】特開平5-124360号公報
【特許文献10】特開平6-210954号公報
【特許文献11】特開平8-310128号公報
【特許文献12】特開平9-272262号公報
【特許文献13】特開平9-270563号公報
【特許文献14】特開平9-300817号公報
【特許文献15】特開平9-300820号公報
【非特許文献1】Macromolecules, 36, 964(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の状況に鑑み、可逆的に発光強度を制御することができ、かつ寿命が長い可逆性感熱記録材料、及びそれを用いた感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の可逆性感熱記録材料は、電子供与性呈色化合物、電子受容性化合物、及び可逆剤を含有し、前記電子供与性呈色化合物と前記電子受容性化合物との間の呈色反応を利用した可逆性感熱記録材料であって、前記電子供与性呈色化合物の呈色状態であるときに該電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動を行うための発光性化合物をさらに含有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前記電子供与性呈色化合物の呈色状態であるときに該電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動を行うための発光性化合物を材料として用いることで、発光状態および消光状態のコントラストが高く、かつ可逆的に発光強度を制御することができる可逆性の感熱記録材料が得られる。なお、電子供与性呈色化合物が呈色状態にあるときの発光性化合物から電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動は、直接的あるいは間接的に行われることを含む概念である。間接的とは発光性化合物から他の化合物を介して電子供与性呈色化合物へエネルギー移動が行われることをいう。
【0011】
また、請求項2に係る可逆性感熱記録材料は、請求項1記載の可逆性感熱記録材料において、発光性化合物は、電子供与性呈色化合物の呈色状態における紫外可視吸収スペクトルの一部に対して少なくとも一部が重なるような発光スペクトルを有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る可逆性感熱記録材料は、請求項1又は2記載の可逆性感熱記録材料において、電子供与性呈色化合物の呈色状態における吸光度が極大吸光度の25%以上である吸収波長帯と、発光性化合物の発光強度が極大発光強度の25%以上である発光波長帯と、が一部重なることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る可逆性感熱記録材料は、請求項1~3のいずれか記載の可逆性感熱記録材料において、発光性化合物の極大発光波長が電子供与性呈色化合物の消色状態における吸光度が極大吸光度の50%以上である吸収波長帯と、発光性化合物の発光強度が極大発光強度の50%以上である発光波長帯と、が重ならないことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、適当な発光性化合物を用いることで、発光状態及び消光状態のコントラストが高く、かつ可逆的に発光強度を制御することができる可逆性の感熱記録材料が得られる。そして、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との間の呈色反応を利用しており、長期に渡って安定性が保たれる。
【0015】
また、請求項5に係る可逆性感熱記録材料は、請求項1~4のいずれか記載の可逆性感熱記録材料において、光吸収を促進するための光吸収補助剤を含有することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、光吸収補助剤を用いることで吸収した光エネルギーを増加させることができるので、発光性化合物の発光強度を増大させることが可能となる。
【0017】
また、請求項6に係る可逆性感熱記録材料は、請求項5記載の可逆性感熱記録材料において、吸収補助剤の発光スペクトルに対して少なくとも一部が重なるような吸収スペクトルを有するエネルギー移動補助剤を含有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に係る可逆性感熱記録材料は、請求項1~6のいずれか記載の可逆性感熱記録材料において、発光性化合物の吸収スペクトルに対して少なくとも一部が重なるような発光スペクトルを有するエネルギー移動補助剤を含有することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、吸収した光エネルギーを発光性化合物に移動することができるので、様々な波長の励起光に対して可逆性感熱記録材料として用いることが可能となる。
【0020】
また、請求項8に係る可逆性感熱記録媒体は、請求項1~7のいずれか記載の可逆性感熱記録材料を基材上に設けたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項9に係る可逆性感熱記録媒体は、請求項8記載の可逆性感熱記録媒体において、可逆性感熱記録材料上に保護層を設けたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、上記の可逆性感熱記録材料を利用した可逆性感熱記録媒体が得られる。また、可逆性感熱記録材料が保護層により保護されるため、外気に触れることがなく、可逆性感熱記録材料に直接汚れなどが付着することがない。また、ガスバリア性を有する材料を保護膜に用いることで、励起時の発光性化合物の酸化分解を防ぐことができ耐光性が上昇する。また、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、を付与することができる。
【0023】
また、請求項10に係る可逆性感熱記録媒体の記録方法は、請求項8又は9記載の可逆性感熱記録媒体の所定位置を可逆剤の融点まで加熱した後冷却することで発光性化合物を発光させる工程、及び前記所定位置とは異なる位置を可逆剤の結晶化温度まで加熱した後冷却することで発光性化合物を消光させる工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
上記手段によれば、可逆性感熱記録媒体の位置に応じて加熱温度を変化させることで各々の位置を発光あるいは消光させることができるので、画像等の形成が可能となる。
【0025】
また、請求項11に係る可逆性感熱記録媒体の表示方法は、請求項8又は9記載の可逆性感熱記録媒体に対して、励起光を照射することで画像を表示する工程、を有することを特徴とする。
【0026】
上記手段によれば、本発明の可逆性感熱記録媒体に励起光を照射するので、発光及び消光のコントラストが高い表示を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の可逆性感熱記録材料によれば、適当な発光性化合物を用いており発光状態及び消光状態のコントラストが高いため、視認性に優れる。また、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との間の呈色反応を利用しており、発光状態と消光状態との間の可逆変化を安定的に行うことができるので書き換え耐久性がある。また、励起光を照射した際に、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との間の関係が変化することがないので、発光寿命、消光寿命ともに長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明の可逆性感熱記録材料は、電子供与性呈色化合物、電子受容性化合物、及び可逆剤を含有し、前記電子供与性呈色化合物と前記電子受容性化合物との間の呈色反応を利用した可逆性感熱記録材料であって、前記電子供与性呈色化合物の呈色状態であるときに該電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動を行うための発光性化合物をさらに含有することを特徴とする。
【0029】
まず、本発明の可逆性感熱記録材料の発光状態と消光状態とのメカニズムについて図1に基づいて説明する。図1(a)及び図1(b)に示すように、可逆剤の融点以上の温度T2に加熱した後に急冷して室温に戻した場合には、非晶質にガラス化された可逆剤中に電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物、及び発光性化合物が分子レベルで分散した状態になる。分散した状態においては、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物の距離は離れており、電子供与性呈色化合物から電子受容性化合物へのプロトン移動は生じず、電子供与性呈色化合物は消色状態である。この際、消色状態の電子供与性呈色化合物の吸収波長帯と発光性化合物の発光波長帯との重なりが小さくなるように電子供与性呈色化合物と発光性化合物の組み合わせを選択することが好ましい。可逆剤の融点以上の温度に加熱した後に急冷して室温に戻して得られた可逆性感熱記録材料は、図1(c)に示すように、励起光を用いて発光性化合物の励起状態を形成すると、発光性化合物から電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動はほとんど生じることがないため発光する。
【0030】
一方、本発明の可逆性感熱記録材料を可逆剤の融点以下の結晶化温度に加熱した後急冷して室温に戻した場合には、図1(d)に示すように、可逆剤と発光性化合物のみが結晶化し、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物が可逆剤と相分離した状態になる。相分離した状態においては、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物の距離は縮まり、図1(e)に示すように、電子受容性化合物から電子供与性呈色化合物がプロトンをもらい呈色状態になる。ここで、電子供与性呈色化合物の呈色状態の吸収波長帯が発光性化合物の発光波長帯に重なるように電子供与性呈色性化合物と発光性化合物の組み合わせを選択することが好ましい。可逆剤の融点以上の温度に加熱した後に急冷して室温に戻して得られた可逆性感熱記録材料は、図1(f)に示すように、励起光により発光性化合物の励起状態を形成すると、発光性化合物から電子供与性呈色性化合物へエネルギー移動し、消光する。
【0031】
そして、可逆剤の融点以上に加熱した後に室温まで急冷する記録工程と、可逆剤の融点以下の結晶化温度に加熱した後に室温まで急冷する記録工程を繰り返し、各記録工程毎に励起光を照射することで発光のON/OFFを行うことが可能となる。各記録工程はサーマルヘッドや光の照射を用いて可逆性感熱記録材料を加熱することで行うことができ、各記録工程より文字や静止画のパターン化が可能である。
【0032】
本発明の可逆性感熱記録材料に用いる発光性化合物は、電子供与性呈色化合物の呈色状態であるときに該電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動を行うことができるものであればよい。そして、発光性化合物としては、電子供与性呈色化合物の呈色状態における紫外可視吸収スペクトルの一部に対して少なくとも一部が重なるような発光スペクトルを有するものを用いることが好ましい。この場合、励起光により発光性化合物の励起状態を形成すると、発光性化合物から電子供与性呈色化合物へエネルギー移動し、消光することとなる。また、電子供与性呈色化合物の呈色状態における吸光度が極大吸光度の25%以上、さらに好ましくは50%以上である吸収波長帯と、発光性化合物の発光強度が極大発光強度の25%以上、さらに好ましくは50%以上である発光波長帯と、が一部重なることが特に好ましい。この場合、発光性化合物から電子供与性呈色化合物へエネルギー移動が大きく、消光状態における発光強度を低く抑えることが可能となる。そして、発光性化合物の極大発光波長が電子供与性呈色化合物の消色状態における吸光度が極大吸光度の25%以上、さらに好ましくは10%以上である吸収波長帯と、発光性化合物の発光強度が極大発光強度の25%以上、さらに好ましくは10%以上である発光波長帯と、が重ならないことがさらに好ましい。この場合、励起光により発光性化合物の励起状態を形成した際、発光性化合物から電子供与性呈色化合物へのエネルギー移動が低く抑えられるため、発光性化合物の発光強度が強く保たれる。また、発光性化合物としては、希薄状態での蛍光量子収率が大きい、濃度消光がしにくく、吸光係数の大きい化合物であることが望ましい。
【0033】
また、具体的に発光性化合物として用いる化合物は、有機材料、無機材料のいずれも用いることが可能である。無機材料を用いた場合は、粒子の大きさが大きい場合、呈色性化合物へのエネルギー移動が起こりにくくなるので、粒子の大きさは小さい方が望ましい。例えば青色材料としてはBaMgAl1017:Euなど、緑色材料としてはZnSiO:Mnなど、赤色材料としては(Y,Gd)BO:Euなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、有機材料の場合は低分子材料と高分子材料のいずれも用いることが可能である。低分子材料の発光性化合物を用いる場合には、青色発光性化合物としては、例えば9,19-ジ(9-エチル-3-カルバゾビニレン]-2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシロキシ)ベンゼン(412、449)、4,4’-(ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル(382、432)、トリス(8-ヒドロキシキノレート)ガリウム、クマリン誘導体、などが挙げられる。緑色発光性化合物としては、例えばクマリン誘導体、9,18-ジヒドロ-9,18-ジメチルベンゾ[h]ベンゾ[7,8]キノ[2,3-B]アクリジン-7,16-ジオン、7,16-ジヒドロ-7,16-ヂメチルベンゾ[a]ベンゾ[5,6]キノ[3,2-I]アクリジン-9,18-ジオン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチルキノリジノ-(9,9a,1-gh)クマリン(423、532)、トリス-(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムなどが挙げられる。黄色発光性化合物としては、ジフェニルボラン-8-ヒドロキシキノレート、ビス(8-ヒドロキシキノレート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノレート)亜鉛、やキナクリドン誘導体などが挙げられる。赤色発光性化合物としては、例えばクマリン誘導体などが挙げられる。これらの低分子系発光性化合物の配合量は、得られる可逆性感熱記録材料全体の0.01~10wt%、さらに好ましくは0.1~5wt%であることが望ましい。発光性化合物の配合量が0.01wt%未満であると発光に対して十分な効果を示さない。また、発光性化合物の配合量が10wt%より多い場合は、記録材料のガラス転移温度Tgや融点m.p.を大きく変化させてしまうだけでなく、発光のクエンチが激しいため好ましくない。高分子材料の発光性化合物を用いる場合には、青色発光性化合物としては、例えばポリフルオレン誘導体など、緑色発光性化合物としては、例えばポリパラフェニレンビニレン誘導体など、赤色発光性化合物としては、例えばポリパラフェニレンビニレン誘導体やポリアルキルチオフェン誘導体などが挙げられる。しかしこれらに限定させるものではない。また、発光性化合物においては、上記無機材料や有機低分子材料、有機高分子材料を1種類もしくは、2種類以上を組み合わせて用いることで、様々な波長を発光することが可能となる。
【0034】
また、本発明の可逆性感熱記録材料には電子供与性呈色化合物を含有する。電子供与性呈色化合物としては従来公知の電子供与性呈色化合物を任意に用いることができ、特に好ましくは以下の化合物が単独もしくは混同して用いられる。
【0035】
【化1】
JP0004572298B2_000002t.gif
(式中、R11、R12、は低級アルキル基、水素原子を示し、さらにR12、R13は互いに結合し環を形成してもよい。R13は低級アルキル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、またR14は低級アルキル、ハロゲン原子、水素原子または(化2)で示すような置換アニリノ基を示す。)
【0036】
【化2】
JP0004572298B2_000003t.gif
(式中、R15は低級アルキル基または水素原子を示し、Yは低級アルキル基またはハロゲン原子を示す。Zは0から3の整数を示す。)
【0037】
【化3】
JP0004572298B2_000004t.gif
(式中、R16からR19はアルキル基または水素原子を表し、R20はアルキル基、アルコキシ基または水素原子を表す。)
【0038】
【化4】
JP0004572298B2_000005t.gif
(式中、R21からR24は低級アルキル基または水素原子を表し、R25、R26はアルキル基、アルコキシ基または水素原子を表す。)
【0039】
以下に本発明で用いられる電子供与性呈色化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジ(n-ブチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6(N-n-プロピル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-イソプロピル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-イソブチル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-n-アミル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-sec-ブチル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-n-アミル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-iso-アミル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-n-プロピル-N-イソプロピルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(m-トリクロロメチルアニリノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(m-トリフロロメチルアニリノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(m-トリクロロメチルアニリノ)-3-メチル-6-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)フルオラン、2-(2,4-ジメチルアニリノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(N-エチル-p-トルイジノ)-3-メチル-6-(N-エチルアニリノ)フルオラン、2-(N-エチル-p-トルイジノ)-3-メチル-6-(N-プロピル-p-トルイジノ)フルオラン、2-アニリノ-6-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(o-クロロアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(o-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、2-(m-トリフロロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2,3-ジメチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-ブロモ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-6-ジプロピルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-ブロモ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-クロロ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(o-クロロアニリノ)-3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-(m-トリフロロメチルアニリノ)-3-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(2,3-ジクロロアニリノ)-3-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンゾ-6-ジエチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-(m-トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-7-アザフタリド、3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-7-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-N-n-アミル-N-メチルアミノフェニル)-4-アザフタリド-(3-1-メチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-7-アザフタリド。
【0040】
本発明で用いる電子供与性呈色化合物は前記のフルオラン化合物、アザフタリド化合物の他にも、従来公知の電子供与性呈色化合物を単独または混合して使用することができる。具体的には、2-(p-アセチルアニリノ)-6-(N-n-アミル-N-n-ブチルアミノ)フルオラン、2-ベンジルアミノ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-ベンジルアミノ-6-(N-メチル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-ベンジルアミノ-6-(N-エチル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-ベンジルアミノ-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-ベンジルアミノ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(ジ-p-メチルベンジルアミノ)-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(α-フェニルエチルアミノ)-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-メチルアミノ-6-(N-メチルアニリノ)フルオラン、2-メチルアミノ-6-(N-エチルアニリノ)フルオラン、2-メチルアミノ-6-(N-プロピルアニリノ)フルオラン、2-エチルアミノ-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-メチルアミノ-6-(N-メチル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-エチルアミノ-6-(N-エチル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-ジメチルアミノ-6-(N-メチルアニリノ)フルオラン、2-ジメチルアミノ-6-(N-エチルアニリノ)フルオラン、2-ジエチルアミノ-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-ジエチルアミノ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-ジプロピルアミノ-6-(N-メチルアニリノ)フルオラン、2-ジプロピルアミノ-6-(N-エチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-メチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-エチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-プロピルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-プロピル-p-トルイジノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-メチル-p-エチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-エチル-p-エチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-プロピル-p-エチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-メチル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-エチル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-プロピル-2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-メチル-p-クロロアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-エチル-p-クロロアニリノ)フルオラン、2-アミノ-6-(N-プロピル-p-クロロアニリノ)フルオラン、1,2-ベンゾ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、1,2-ベンゾ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンゾ-6-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)フルオラン、1,2-ベンゾ-6-(N-エチル-N-トルイジノ)フルオラン、その他。
【0041】
また、本発明において好ましく用いられる他の電子供与性呈色化合物の具体例を以下に示す。2-アニリノ-3-メチル-6-(N-2-エトキシプロピル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(p-クロロアニリノ)-6-(N-n-オクチルアミノ)フルオラン、2-(p-クロロアニリノ)-6-(N-n-パルミチルアミノ)フルオラン、2-(p-クロロアニリノ)-6-(ジ-n-オクチルアミノ)フルオラン、2-ベンゾイルアミノ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(o-メトキシベンゾイルアミノ)-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-ジベンジルアミノ-4-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-ジベンジルアミノ-4-メトキシ-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(ジベンジルアミノ-4-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(α-フェニルエチルアミノ)-4-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(p-トルイジノ)-3-(t-ブチル)-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(o-メトキシカルボニルアミノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アセチルアミノ-6-(N-メチル-p-トルイジノ)フルオラン、4-メトキシ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-エトキシエチルアミノ-3-クロロ-6-ジブチルアミノフルオラン、2-ジベンジルアミノ-4-クロロ-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、2-(α-フェニルエチルアミノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(N-ベンジル-p-トリフルオロメチルアニリノ)-4-クロロ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ピロリジノフルオラン、2-アニリノ-3-クロロ-6-ピロリジノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)フルオラン、2-メシジノ-4’,5’-ベンゾ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(m-トリフルオロメチルアニリノ)-3-メチル-6-ピロリジノフルオラン、2-(α-ナフチルアミノ)-3,4ベンゾ-4’-ブロモ-6-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2-ピペリジノ-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(N-n-プロピル-p-トリフルオロメチルアニリノ)-6-モルフォリノフルオラン、2-(ジ-N-p-クロロフェニル-メチルアミノ)-6-ピロリジノフルオラン、2-(N-n-プロピル-m-トリフルオロメチルアニリノ)-6-モルフォリノフルオラン、1,2-ベンゾ-6-(N-エチル-N-n-オクチルアミノ)フルオラン、1,2-ベンゾ-6-ジアリルアミノフルオラン、1,2-ベンゾ-6-(N-エトキシエチル-N-エチルアミノ)フルオラン、ベンゾロイコメチレンブルー、2-[3,6-ビス(ジエチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、2-[3,6-(ジエチルアミノ)-9-(o-クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3-ビス-(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジエチルアミノフタリド、3,3-ビス-(p-ジメチルアミノフェニル)-6-クロロフタリド、3,3-ビス-(p-ジブチルアミノフェニル)フタリド、3-(2-メトキシ-4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-4,5-ジクロロフェニル)フタリド、3-(2-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メトキシ-5-クロロフェニル)フタリド、3-(2-ヒドロキシ-4-ジメトキシアミノフェニル)-3-(2-メトキシ-5-クロロフェニル)フタリド、3-(2-ヒドロキシ-4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メトキシ-5-ニトロフェニル)フタリド、3-(2-ヒドロキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(2-メトキシ-5-メチルフェニル)フタリド、3-(2-メトキシ-4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-4-クロロ-5-メトキシフェニル)フタリド、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ジメチルアミノフタリド、6’-クロロ-8’-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、6’-ブロモ-2’-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、その他。
【0042】
また、本発明の可逆性感熱記録材料に用いる電子受容性化合物としては、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等が挙げられ、これらを1種または2種類以上混合して用いることも可能である。
【0043】
また、本発明の可逆性感熱記録材料に用いる可逆剤としては、結晶性と非結晶性とを合わせ持つものや結晶性のものなどを用いることができる。可逆剤が結晶性と非晶質性を合わせ持つ場合には、電子受容性化合物または電子供与性呈色化合物のいずれかと可逆剤との相互作用、あるいは電子受容性化合物または電子供与性呈色化合物のいずれかと可逆剤が相互に溶解することにより、得られる可逆性感熱記録材料は非晶質状態の消色状態となる。また、加熱や応力変化により、電子受容性化合物または電子供与性呈色化合物のいずれかが可逆剤から相分離することにより、可逆剤の粒界に電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物が溶出もしくは偏析することとなり得られる可逆性感熱記録材料は呈色状態となる。一方、可逆剤が結晶質の場合には、電子受容性化合物または電子供与性呈色化合物のいずれかが可逆剤とともに混晶を形成して、他方の電子供与性呈色化合物または電子受容性化合物とほぼ完全に相分離されるので、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との相互作用が減少して消色状態となる。また、加熱や応力変化により、電子受容性化合物または電子供与性呈色化合物のいずれかが可逆剤から相分離することにより、可逆剤の粒界に電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物が溶出もしくは偏析することとなり呈色状態となる。
【0044】
本発明に好適な可逆剤としては、ステロイド骨格のように円柱状に近く嵩高い分子骨格を有したアルコール基を含有する化合物などであり、逆に分子量が100未満の低分子化合物や分子量が100以上であっても直鎖状長鎖アルキル誘導体や平面状芳香族化合物は適さない。このような可逆剤に好適な具体的な材料としてはステロイド系アルコール、より具体的にはコレステロール、ステグマステロール、プレグネノロン、メチルアンドロステンジオール、エストラジオールベンゾエート、エピアンドロステン、ステノロン、β-シトステロール、プレグネノロンアセテート、β-コレスタロール、5,16-プレグナディエン-3β-オール-20-ワン、5α-プレグネン-3β-オール-20-ワン、5-プレグネン-3β,17-ジオール-20-ワン-21-アセテート、5-プレグネン-3β,17-ジオール-20-ワン-17-アセテート、5-プレグネン-3β,21-ジオール-20-ワン-21-アセテート、5-プレグネン-3β,17-ジオールジアセテート、ロコゲニン、チゴゲニン、エスミラゲニン、ヘコゲニン、ジオスゲニン及びそれらの誘導体、及びそれらを含む混合物などが挙げられる。
【0045】
なお、結晶性と非晶質性を合わせ持つステロイド系アルコールの可逆剤に対応させて相分離制御剤を配合することが好ましい。相分離制御剤としては、炭素数が8以上の長直鎖(CH部と極性基(例えばOH,CO,COOH等)を有する結晶性の強い低分子有機材料が好適である。具体的には、1-ドコサノール、1-テトラコサノール、1-ヘキサコサノール、1-オクタコサノールなどを代表とする直鎖高級1価アルコール、あるいは1,12-ドデカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオールなどを代表とする直鎖高級多価アルコール、あるいはベヘン酸、1-ドコサン酸、1-テトラコサン酸、1-ヘキサコサン酸、1-オクタコサン酸などを代表とする直鎖高級脂肪酸、あるいはドデカン2酸、1,12-ドデカンジカルボキシル酸などを代表とする直鎖高級多価脂肪酸、ステアロンを代表とする直鎖高級ケトン、あるいはステアリン酸イソプロパノールアミド、ベヘン酸イソプロパノールアミド、ベヘン酸ヘキサノールアミドなどを代表とする直鎖高級脂肪酸アルコールアミド、あるいはエチレングリコールラウリン酸ジエステル、カテコールラウリン酸ジエステル、シクロヘキサンジオールラウリン酸ジエステルなどを代表とする直鎖高級脂肪酸ジオールジエステルなどを単体もしくは複数材料の混合体があることを実験により確認した。また、混合体の一例としては、エステル系ワックス、アルコール系ワックス、ウレタン系ワックスに、相分離制御剤として使用できる材料がある。本発明に用いられる記録媒体中に相分離制御剤が混合される場合の配合比は、電子供与性呈色化合物1重量部に対し0.1~100重量部、さらには1~50重量部とすることが好ましい。相分離制御剤が0.1重量部未満だと、組成系の相分鞋速度を高める効果がほとんど得られない。相分離制御剤が100重量部を越えると、組成系の非平衝状態が不安定になり、記録の熱安定性が低下するおそれがある。
【0046】
そして、本発明の可逆性感熱記録材料は、組成系のガラス転移温度Tgが低く室温に近い場合には、環境温度のわずかな上昇により電子供与性呈色化合物や電子受容性化合物の拡散による相分離や系の結晶化の進行が進みやすく、記録の熱安定性が低下することがある。したがって、可逆性感熱記録材料を安定した記録材料として用いる場合には、本発明で組成系の全体または一部が非晶質を形成したときのガラス転移温度Tgが25℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが特には好ましい。そして、得られる可逆性感熱記録媒体では組成系中に配合される電子供与性呈色化合物、電子受容性化合物及び可逆剤としても、それぞれ個々にガラス転移温度Tgが25℃以上であることが好ましく、さらには50℃以上であることが好ましい。そして、電子供与性呈色化合物としては、特に分子量が大きく、重量あたりの融解エンタルビΔHが小さい化合物を用いることが好ましい。このような化合物としては、例えば球状に近く嵩高い分子骨格を有する化合物や、分子間で水素結合を形成し得る複数のサイトを有する化合物が挙げられる。また、記録の熱安定性の観点からは、特に可逆剤の融点は100℃以上であることが望ましい。
【0047】
一方、本発明において組成系のガラス転移温度Tgが高すぎる場合には、情報の記録や消去を行う際に、結晶化温度Tc以上融点Tm未満あるいは融点Tm以上の温度まで組成系を加熱する際に、大きな熱エネルギーが必要となり省エネルギーの点で不利となる。また、有機系の発光性化合物を用いる場合には、例えば150℃以上では有機発光性化合物の熱分解が顕著となるため好ましくない。したがって、本発明における組成系のガラス転移温度Tgは150℃以下であることが好ましい。
【0048】
また、得られる可逆性感熱記録材料の組成系のガラス転移温度Tgが低く、室温に近い場合には、記録された情報が所望の期間だけ保有された後に、自然に消去される書換え型の感熱記録媒体を実現することも可能となる。さらに、ガラス転移温度Tgが室温より低い組成系の場合には、冷蔵が必要な物質を収納する冷蔵庫で故障や運搬等に一時的な温度上昇が発生した場合に組成系の結晶化に伴う着色状態の変化を表示するような特殊な媒体が考えられる。
【0049】
なお、本発明の可逆性感熱記録材料、及びこの記録材料に含まれる各成分のガラス転移温度Tgに関しては、例えば示差走査型熱量分析装置(DSC)を用いて、可逆性感熱記録材料の全体、一部、あるいは材料中の各成分ごとに測定することができる。ここで、混合物のガラス転移温度Tgは、一般に、配合された各成分のガラス転移温度Tgの重量平均的な値を示すことが知られており、各成分のそれぞれのガラス転移温度Tgを制御することで、本発明の可逆性感熱記録材料のガラス転移温度Tgを所望の値に設定するができる。また、明確なガラス転移温度Tgを有する非晶質を形成しやすい成分では、一般にガラス転移温度Tgと融点Tmの間にTg=a・Tm(aは0.65~0.8;ただしTg、Tmは絶対温度)が成立する。このため、組成系や組成系中の各成分のガラス転移温度Tgを高く設定すると、結果的に組成系の融点Tmも高くなる。この場合、記録の熱安定性の向上を図ることができる反面、組成系を融解する際に非常に高温まで加熱する必要がある。これに伴って、例えば耐熱他の優れた基板が求められ、実用性が低下する。この問題を回避するには、複数の結晶形を形成する組成系を用いることが有効である。具体的に複数の結晶形を形成する組成系を調製するには、例えば組成系中の電子受容性化合物や可逆剤について、複数の結晶形を形成し得る成分を用いればよい。
【0050】
また、本発明の可逆性感熱記録材料においては、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との配合比は、電子供与性呈色化合物1重量部に対し電子受容性化合物が0.1~50重量部、さらには1~20重量部に設定することが好ましい。電子受容性化合物が0.1重量部未満だと、記録または消去時に、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との相互作用を十分に増大させることが困難である。逆に、電子受容性化合物が50重量部を超えると、記録または消去時に、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との相互作用を十分に減少させることが困難となる。また可逆剤の配合比は、電子供与性呈色化合物1重量部に対し10~1000重量部、さらには10~100重量部に設定することが好ましい。可逆剤が1重量部未満では、組成系の結晶質一非晶質転移あるいは相分離状態の変化を起すことが困難になる。可逆剤が1000重量部を超えると、可逆剤中に分散した発光性化合物と呈色状態の電子供与性呈色化合物の平均距離が大きくなるので、消光記録時に発光が十分消光されない傾向がある。
【0051】
そして、本発明の可逆性感熱記録材料は、さらに発光性化合物の光吸収を促進するための光吸収補助剤を含有することが好ましい。光吸収補助剤としては、目的の波長帯での吸収係数が大きい化合物を用いることが望ましい。そして、発光性化合物が目的とする波長帯において吸光係数を小さい場合に特に好ましく用いられる。なお、紫外線を用いて発光性化合物を励起したい場合には、例えば公知の紫外線吸収剤を用いることができ、各種の染顔料中間体、医農薬やその中間体、あるいは電荷移動物質として知られる有機珪素化合物、C60等の炭素化合物(いわゆるバックミンスターフラーレン)等で350nm付近に吸収を示すもの等が挙げられる。また、紫外線吸収剤には、有機高分子類や有機化合物の塩類で近紫外線吸収能力の有るものなども挙げられる。好ましい有機系の紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられ、それぞれについて下記に例を示す。ただし、本発明に用いてもよい紫外線吸収剤は以下の具体例によって限定されるものではない。
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
2-(2′-ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′-t-ブチル-5′-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-5′-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-5′-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-3′-(3″,4″,5″,6″-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5′-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′-n-ドデシル-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール。
・ベンゾフェノン系紫外線吸収剤
2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
・他の紫外線吸収剤
フェニルサリチレート、p-t-ブチルフェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤。2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、エチル2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤。
【0052】
また、紫外線吸収剤としては近紫外線吸収性の無機化合物を用いることも可能である。無機の紫外線吸収剤の具体例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、二酸化チタンなどが挙げられる。二酸化チタンはルチル型とアナターゼ型と2通りが有るがいずれも好ましく用いられる。例えば、青色光で発光性化合物を励起したい場合には、LD473、クマリン478、クマリン480、クマリン481、クマリン485、クマリン487、LD489、クマリン490、クマリン6H、クマリン498、クマリン500、クマリン503、クマリン510、クマリン515、クマリン519、クマリン521、クマリン522、クマリン522B、クマリン523、クマリン525、クマリン535、クマリン540、クマリン540A、クマリン545、Fluorol7GAなどの色素を用いることが好ましい。また、緑色光で赤色発光性化合物を励起したい場合には、例えばキナクリドン誘導体などが挙げられる。これらの光吸収補助剤は、全体の0.01~10wt%、さらに好ましくは0.1~5wt%であることが望ましい。光吸収補助剤が0.01wt%未満の場合には光吸収に対して十分な効果を示さない。また、10wt%以上の場合は、系のガラス転移温度Tgや融点を大きく変化させてしまうため好ましくない。
【0053】
さらに、本発明の可逆性感熱記録材料は、吸収した光エネルギーを効率よく発光性化合物に伝えるためのエネルギー移動補助剤を含有することが好ましい。特に光吸収補助剤を用いた場合には、光吸収補助剤から発光性化合物に効率よくエネルギー移動が行われない際に用いることが望ましく、具体的には、吸収補助剤の発光スペクトルに対して少なくとも一部が重なるような吸収スペクトルを有すること化合物が好適に用いられる。さらには、エネルギー移動補助剤の発光スペクトルの波長帯が発光性化合物の吸収スペクトルの波長帯に重なることが望ましい。具体的には、エネルギー移動補助剤の極大発光度の25%以上、さらに好ましくは50%以上である発光波長帯と、発光性化合物の吸光度が極大吸光度の25%以上、さらに好ましくは50%以上である吸収波長帯と、が重なることが好ましい。これにより、吸収した光エネルギーを発光性化合物に効率よく移動することができるので、様々な波長の励起光に対して発光性化合物を励起させることが可能となる。また、一般的にエネルギー移動補助剤の吸光係数は大きいことが望ましい。エネルギー移動補助剤の配合量は、全体の0.1~10wt%、さらに好ましくは0.5~3wt%であることが望ましい。光吸収補助剤が0.1wt%未満であるとエネルギー移動に対して十分な効果を示さない場合がある。また、光吸収補助剤の配合量が10wt%より多い場合は、記録材料のTgや融点を大きく変化させてしまうことがある。
【0054】
次に本発明の可逆性感熱記録材料を用いた可逆性感熱記録媒体について説明する。本発明の可逆性感熱記録媒体は、例えば前述の可逆性感熱記録材料を基材上に設けたものや、前述の可逆性感熱記録材料を基材間に注入したものが挙げられる。用いられる基材としては、例えば紙、合成紙、プラスチックフィルム、ガラス基板、等である。また、可逆性感熱記録材料を基材上に設けたり、基材間に注入する場合には、必要に応じてバインダー樹脂などを用いて保持することができる。また、可逆性感熱記録材料を基材上に設けた場合には、保護層を設けてガスバリア性、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性等を付与することができる。保護層としては、水溶性高分子、疎水性化合物の水性エマルジョン、樹脂などにより形成された被膜が挙げられる。そして、得られた可逆性感熱記録媒体に対する記録は、可逆性感熱記録媒体の所定位置を可逆剤の融点まで加熱した後冷却することで発光性化合物を発光させる工程、及び前記所定位置とは異なる位置を可逆剤の結晶化温度まで加熱した後冷却することで発光性化合物を消光させる工程と、を行うことで可能となる。そして、得られた可逆性感熱記録媒体に対して、励起光を照射することで画像を表示する工程を行うことで可逆性感熱記録媒体の表示をすることができる。また、得られた可逆性感熱記録媒体は、加熱温度または加熱時間を変化することで発光コントラストを制御することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、電子供与性呈色化合物、電子受容性化合物、及び可逆剤を含有する場合について述べたが、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含有し、可逆剤を含有しない組成とすることも可能である。この場合、電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との配合此は、電子供与性呈色化合物1重量部に対し電子受容性化合物を0.02~100重量部、さらには0.2~5重量部に設定することが好ましい。電子受容性化合物が0.02重量部未満だと、記録または消去時に電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物との相互作用を十分に増大させることが困難である。逆に電子受容性化合物が100重量部を超えると、呈色状態での呈色濃度が低下する傾向がある。
【実施例】
【0056】
次に、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
電子供与性呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン(以下CVL)を1.0重量部、電子受容性化合物としてα-α-α’-トリス(4-ハイドロキシフェニル)-1-エチル-4-イルを10重量部、可逆剤としてコレステロール100重量部、発光性化合物としてナイルレッド1.0重量部を配合して粉末試料を得た。そして、得られた粉末試料を一度150℃まで加熱してコレステロールを融解させることで、他の化合物をコレステロール中に溶解させた。そして、この試料を150℃の液体状態で、厚さ2μmの2枚のガラスプレート中に毛細管現象により注入し、その後室温まで急冷することで記録媒体を作製した。
【0057】
(実施例2)
発光性化合物として4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(以下DCM2)1.0重量部を配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0058】
(実施例3)
発光性化合物として5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン(以下ルブレン)1.0重量部を配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0059】
(実施例4)
発光性化合物としてN-N’ジメチルキナクリドン(以下DMQA)1.0重量部を配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0060】
(実施例5)
発光性化合物としてクマリン6を1.0重量部配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0061】
(実施例6)
発光性化合物としてクマリン307を1.0重量部配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0062】
(実施例7)
発光性化合物として1,1,4,4-テトラフェニル-1,3-ブタジエン(以下TPB)1.0重量部を配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0063】
(実施例8)
電子供与性呈色性化合物として2-アニリノ-3-メチル-6-(N,N-ジブチルアミノ)フルオランを10重量部を配合した以外は(実施例1)と同様に記録媒体を作製した。
【0064】
(比較例1)
フォトクロミック化合物であるCMTEを1重量部、発光性化合物としてクマリン6を1重量部、高分子バインダーとしてPVK98重量部をクロロホルム5000重量部に溶解させた。この溶液をガラス基板上にスピンコート法にて200nmの厚みで薄膜を成膜することで記録媒体を作成した。なお、薄膜をガラス基板上に製膜する工程は450nm以下の光が遮断された環境下で行った。
【0065】
(得られた記録材料の発光強度及び発光波長)
以上により得られた記録媒体に対して1mW/cmの365nmの紫外光を照射し、記録媒体が発する発光強度を色彩色差計(コニカミノルタ社製,CS100)により測定した。続いて、得られた記録媒体を90℃で10秒加熱し、その後室温まで急冷して、記録媒体を消光状態とした。その後、1mW/cmの365nmの紫外光を照射し、90℃加熱後における記録媒体の発光強度を色彩色差計により測定した。次に、記録媒体を150℃で1分間加熱し、その後室温まで急冷して、記録媒体を発光状態とした。その後、1mW/cmの365nmの紫外光を照射し、150℃加熱後における記録媒体の発光強度を色彩色差計により測定した。また、各記録媒体の発光スペクトルをポリクロメータにて測定した。
【0066】
表1に(実施例1~8)の結果として、表2に(比較例1)の結果として、発光状態と消光状態のときの発光強度の変化を示す。表1及び2に示すように、(実施例1~8)で得られた記録媒体は、加熱温度を変えて記録することで、(比較例1)と同様に発光強度が数倍~50倍程度変化することがわかる。また、表1より、得られた記録媒体は、波長として400nm程度から650nm程度までの青色発光から赤色発光までが可能であることがわかった。
【0067】
【表1】
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【表2】
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【0068】
(得られた記録媒体の安定性)
(実施例5)で得られた記録媒体にクマリン6の励起波長である450nmの青色光を0.5mW/cmのパワーで照射した際の発光強度の経時変化をポリクロメータにより測定した。続いて、記録媒体を90℃で10秒加熱し、その後室温まで急冷した。その後、0.5mW/cmの450nmの青色光を照射し、90℃加熱後における記録媒体の発光強度の経時変化を色彩色度計により測定した。次に、記録媒体を150℃で1分間加熱し、その後室温まで急冷した。その後、0.5mW/cmの450nmの紫外光を照射し、150℃加熱後における記録媒体の発光強度の経時変化を色彩色度計により測定した。
(比較例1)で得られた記録媒体にクマリン6の励起波長である450nmの青色光を0.5mW/cmのパワーで照射した際の発光強度の経時変化をポリクロメータにより測定した。次に、記録媒体に1.6mW/cmの345nmの紫外光を10秒照射した。その後、0.5mW/cmの450nmの青色光を照射した際の発光強度の経時変化をポリクロメータにより測定した。そして、記録媒体に4.2mW/cmの565nmの黄色光を60秒照射した後、0.5mW/cmの450nmの青色光を照射した際の発光強度の経時変化をポリクロメータにより測定した。
【0069】
図2及び図3に(実施例5)及び(比較例1)で得られたそれぞれの記録媒体について安定試験を行った結果を示す。図3から分かるように、(比較例1)すなわちフォトクロミック化合物と発光性化合物の組み合わせを化合物として用いた場合には、ごく初期においては消光状態となる。このことは、フォトクロミック化合物であるCMTEの消色状態と呈色状態における紫外可視吸収スペクトルを示した図4からもわかるように、(比較例1)で得られた記録媒体ではフォトクロミック化合物の呈色状態がクマリン6の発光を消失するからである。しかしながら、(比較例1)で得られた記録媒体は、図3に示すように経過時間とともに消光状態の記録が破壊されていくことが明らかである。一方、(実施例5)で得られた記録媒体のように電子供与性呈色性化合物、電子受容性化合物、可逆剤、及び発光性化合物を用いた場合においては、図2に示すように発光強度は時間と共に変化せず、非破壊な発光記録が達成されており安定性に優れていることがわかる。
【0070】
(発光性化合物の発光スペクトルと電子供与性呈色化合物の紫外可視吸収スペクトルとの関係)
また、(実施例1~8)、及び(比較例1)で使用した発光性化合物、電子供与性化合物、または光吸収剤の紫外可視吸収スペクトルを紫外可視光吸収測定装置(日本分光社製、V-560)を用いて測定した。さらに、(比較例1)で使用したフォトクロミック化合物の紫外可視吸収スペクトルを同様に測定した。図5には、(実施例1~8)、(比較例1)で使用した発光性化合物の発光スペクトルを示す。また、図6には、(実施例7)において使用した発光性化合物のTPBと、電子供与性呈色化合物のCVLの消色状態と呈色状態における紫外可視吸収スペクトルを示す。また、図7には、(実施例8)において使用した発光性化合物のTPBと、電子供与性呈色化合物の2-アニリノ-3-メチル-6-(N,N-ジブチルアミノ)フルオランの消色状態と呈色状態における紫外可視吸収スペクトルを示す。
【0071】
(実施例7)で得られた記録媒体は表1に示すように消光の効率が比較的小さいことがわかる。このことは、図6に示すようにCVLの呈色状態時の吸収が、発光性化合物であるTPBの発光スペクトルである400nm~500nmにおいて小さいためと考えられる。なお、このように発光強度の変化が小さい場合でも本実施例で得られた記録媒体は発光性を有するため、実際の使用には十分な視認性を有するものである。
【0072】
また、表1に示すように、(実施例8)で得られた化合物はさらに発光を効率良く消光していることがわかる。このことは、図7に示すように、電子供与性呈色性化合物として用いた2-アニリノ-3-メチル-6-(N,N-ジブチルアミノ)フルオランが、消色状態では400nm~500nmに吸収をもたず、呈色状態ではTPBの発光スペクトルと重なる400nm~500nmにも大きな吸収を持つためと考えられる。
【0073】
そして、これらのことから発光状態と消色状態のコントラストを向上させるためには、呈色時の電子供与性呈色化合物の紫外可視吸収スペクトルの波長帯は、発光媒体の発光スペクトルの波長帯に重なるように各化合物を選択することが好ましく、さらには、消色時の電子供与性呈色化合物の紫外可視吸収スペクトルの波長帯が、発光性化合物の発光スペクトルの波長帯に重ならないように各化合物を選択するが特に好ましいことがわかる。
【0074】
(記録書き換え耐久試験)
安定試験と同様に、まず(実施例5)で得られた記録媒体にクマリン6の励起波長である450nmの青色光を0.5mW/cmのパワーで照射した際の発光強度をポリクロメータにより測定した。続いて、記録媒体を90℃で10秒加熱し、その後室温まで急冷した。その後、0.5mW/cmの450nmの青色光を照射し、90℃加熱後における記録媒体の発光強度を色彩色度計により測定した。次に、記録媒体を150℃で1分間加熱し、その後室温まで急冷した。その後、0.5mW/cmの450nmの紫外光を照射し、150℃加熱後における記録媒体の発光強度を色彩色度計により測定した。そして、これらの操作を繰り返して行い、得られた記録媒体の発光強度を測定した。
【0075】
図8に(実施例5)で得られた記録媒体の記録書き換え耐久試験を行った結果を示す。図8に示すように、記録書き換え耐久試験により20回の書き換えを行った後も記録は数10回書き換えが可能であることがわかる。
【0076】
(記録温度の影響)
また、(実施例1)で得られた記録媒体に対して、60℃、65℃、75℃、90℃それぞれで加熱しながら、1mW/cmの365nmの紫外光を照射し、記録媒体が発する発光強度の時間変化をポリクロメータにより測定した。
図9には、(実施例1)で得られた記録媒体の消光記録書き込み時の加熱温度依存性と加熱時間依存性を示す。加熱温度や加熱時間を制御することで、発光状態と消光状態における発光強度のコントラストを変化させることができることがわかる。
【0077】
(配合量の影響)
次に、(実施例5)において用いた電子供与性呈色化合物のCVLと、可逆剤のコレステロールの配合量を変えて試験した。
表3は、試験結果から得られた記録媒体中の電子受容性化合物及び可逆剤の配合量と発光コントラストとの関係を示したものである。なお、記録媒体中の電子供与性呈色化合物の配合量は1.0重量部、発光性化合物の配合量は1.0重量部とした。また、発光コントラストは、記録媒体の消光状態での発光強度に対する発光状態での発光強度の比を示したものである。表3に示すように、電子供与性呈色化合物1.0重量部に対して電子受容性化合物が1.0~50重量部であることが好ましく、さらには、1.0~20重量部であることが特に好ましいことがわかる。また、可逆剤の配合比は、電子供与性呈色化合物1.0重量部に対して10~2000重量部であることが好ましく、10~100重量部であることが特に好ましい。
【0078】
【表3】
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【0079】
また、表4は、記録媒体中の電子供与性呈色化合物の配合量と発光コントラストの関係を示したものである。なお、記録媒体中の電子受容性化合物の配合量は10重量部、発光性化合物の配合量は1.0重量部、可逆剤の配合量は100重量部とした。表4から、電子供与性呈色化合物の配合比は、電子受容性化合物10重量部に対して0.01~50重量部であることが好ましく、0.1~50重量部であることが特に好ましいことがわかる。
【0080】
【表4】
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【0081】
さらに、表5には、記録媒体中の発光性化合物の配合比と発光記録時の発光強度の関係を示す。なお、電子供与性呈色化合物の配合量を10重量部、電子受容性化合物の配合量を10重量部、可逆剤の配合量を100重量部とした。表5から各化合物の全重量に対して、発光性化合物が0.01~10wt%、さらに好ましくは0.1~5wt%であることがわかる。
【0082】
【表5】
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【0083】
(透明度)
さらに、(実施例5)で得られた記録媒体は、図10に示すように、書き換え時における膜の吸光度変化は0.1程度であり、色変化はほとんどない。また、厚さ2μmの記録媒体においては結晶化に伴う膜の透過率変化も10%程度の変化しかなく、透明状態が保たれることがわかる。バックライト上にこの薄膜を介装することで、正面から記録状態を発光強度として認識することができる。また、バックライトにより発光記録と消光記録を表面より観察した様子から、バックライトによる表示が可能であることがわかった。
【0084】
(実施例9)
上記(実施例5)において、さらに光吸収剤としてクマリン450を1.0重量部添加した以外は同様に記録媒体を作製した。
【0085】
(実施例10)
上記(実施例1)において、さらにエネルギー移動補助剤としてクマリン6を1.0重量部添加した以外は同様に記録媒体を作製した。
【0086】
(実施例11)
上記(実施例1)において、さらにエネルギー移動補助剤としてIr(PPy)2acacを1.0重量部添加した以外は同様に媒体を配合し記録媒体を作製した。
【0087】
(光吸収補助剤の添加)
表6に(実施例9~11)の結果として、発光状態と消光状態のときの発光強度の変化を示す。表6に示すように、(実施例9)で得られた記録媒体は(実施例5)で得られた記録媒体と比較すると、同じ膜厚において、光吸収補助剤を添加することで吸収が増加し、発光強度が増加していることがわかる。光吸収補助剤であるクマリン450の紫外可視吸収スペクトルを図11に示す。
【0088】
(エネルギー移動補助剤の添加)
さらに、表1の(実施例1)と表6の(実施例10)とを比較すると、エネルギー移動補助剤を添加することで、発光強度が増加していることがわかる。また、表1の(実施例1)と表6の(実施例10)と(実施例11)とを比較すると、目的とする波長領域において吸光度の小さい材料をエネルギー移動補助剤として用いた場合には、発光強度の上昇割合が小さいことがわかる。
【0089】
図12には、クマリン6及びIr(PPy)2acacの紫外可視吸収スペクトルと発光スペクトルを示す。図12に示すようにIr(PPy)2acacは、クマリン6と比較して目的とする波長領域において吸光度が小さいことがわかる。
【0090】
【表6】
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【0091】
(実施例12)
電子供与性呈色性化合物としてCVLを1.0重量部、電子受容性化合物としてα-α-α’-トリス(4-ハイドロキシフェニル)-1-エチル-4-イルを10重量部、可逆剤としてコレステロール100重量部、発光性化合物としてクマリン6を1.0重量部配合した後、トルエン1000重量部中にいれて150℃まで加熱する。そして、150℃において5分間放置した後に室温まで冷却して、室温においても液体に各化合物全てが溶解している状態の試料溶液を作製した。そして、スピンコーターにより得られた試料溶液をガラス基板上に塗膜した後室温にて自然乾燥することで厚さ1μmの記録層を得た。その後、この記録層上に透明状の光硬化性エポキシ樹脂を塗布後、光硬化させて膜厚5μmの保護膜を形成し記録媒体を得た。
【0092】
(実施例13)
基板をPET(ポリエチレンテレフタレート)基板にした以外は(実施例12)と同様に薄膜を形成して、記録媒体を得た。
【0093】
表7に(実施例12、13)の結果として、発光状態と消光状態のときの発光強度の変化を示す。また、表7に示すように、(実施例12)及び(実施例13)から、媒体は2枚のガラスプレート中ではなく、基板上に塗布するのみでも形成することができ、かつ発光可逆特性が出現することがわかる。また、(実施例13)に示すようにガラス基板上のみでなく、PETなどの高分子フィルム上でも記録/消去可能であることがわかる。
【0094】
【表7】
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【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明の記録材料は励起光照射による発光状態において高コントラスト、非破壊、フルカラー等の特性を兼ね備えており、可逆性感熱記録材料、書き換え用発光表示素子用材料、インテリア用材料、センシング用材料等さまざまな分野に活用できる可能性がある材料である。なかでも特に、本発明の記録材料は感熱式可逆記録発光表示体や、記録媒体などへの応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の可逆性感熱記録材料の発光状態及び消光状態について説明した図である。
【図2】(実施例5)で得られた記録材料の消光状態及び発光状態における発光強度の経時変化を示す図である。
【図3】(比較例1)で得られた記録材料の消光状態及び発光状態における発光強度の経時変化を示す図である。
【図4】クマリン6の発光スペクトルとCMTEの紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図5】(実施例1~8)及び(比較例1)で使用した発光性化合物の発光スペクトルを示す図である。
【図6】TPBの発光スペクトルとCVLの紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図7】TPBの発光スペクトルと2-アニリノ-3-メチル-6-(N,N-ジブチルアミノ)フルオランの紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図8】(実施例5)で得られた可逆性感熱記録材料の記録書き換え数に対する発光強度の変化を示す図である。
【図9】(実施例5)で得られた可逆性感熱記録媒体の消光記録書き込み時における発光強度の加熱温度依存性と加熱時間依存性を示す図である。
【図10】(実施例5)で得られた可逆性感熱記録媒体の可逆発光前後における紫外可視吸収スペクトルの変化を示す図である。
【図11】クマリン450の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【図12】クマリン6の紫外可視吸収スペクトル及び発光スペクトルと、Ir(PPy)2acacの紫外可視吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0097】
A 発光性化合物
B 消色状態の電子供与性呈色化合物
呈色状態の電子供与性呈色化合物
C 中性状態の電子受容性化合物
アニオン状態の電子受容性化合物
D 可逆剤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11