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明細書 :ホルムアルデヒドの測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4769940号 (P4769940)
公開番号 特開2007-218866 (P2007-218866A)
登録日 平成23年7月1日(2011.7.1)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 ホルムアルデヒドの測定方法
国際特許分類 G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
G01N  31/02        (2006.01)
G01N  21/77        (2006.01)
G01N  21/82        (2006.01)
FI G01N 31/00 V
G01N 31/00 Y
G01N 31/22 122
G01N 31/02
G01N 21/77 B
G01N 21/82
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2006-042850 (P2006-042850)
出願日 平成18年2月20日(2006.2.20)
審査請求日 平成21年1月15日(2009.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】田口 茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100090206、【弁理士】、【氏名又は名称】宮田 信道
審査官 【審査官】草川 貴史
参考文献・文献 特開2002-328122(JP,A)
特開2004-333329(JP,A)
特開2002-267652(JP,A)
特開平04-069570(JP,A)
山口県公害センター年報,1979年,No.5,31-40
田口茂、関絵里子、村居景太、波多宣子、倉光英樹,膜捕集を利用した水中のホルムアルデヒドの簡易目視定量法の開発と水道水への応用,分析化学,日本,2006年 7月 5日,Vol.55,No.7,Page.525-529
調査した分野 G01N 31/00-31/22
JSTPlus(JDreamII)
CiNii
CAplus(STN)

特許請求の範囲 【請求項1】
一定量だけ抽出された試料水に、一定量の3-メチル-2-ベンゾチアゾロンヒドラゾン(以下、MBTHと記載)を添加して、試料水に含有しているホルムアルデヒドをアジンに変換する第一工程と、
前記第一工程による反応が完了した後、一定量の酸化剤を添加して、試料水に残存しているMBTHを酸化型MBTHに変換する第二工程と、
前記アジンと前記酸化型MBTHとが結合することで、青色陽イオン色素が生成される第三工程と、
から構成される初期処理の後、
試料水に、一定量のテトラフェニルホウ酸ナトリウムを添加して、該テトラフェニルホウ酸ナトリウムから生成されたテトラフェニルホウ酸イオンと前記酸化型MBTHとの疎水性相互作用による黄色イオン会合体と、該テトラフェニルホウ酸イオンと前記青色陽イオン色素との疎水性相互作用による青色イオン会合体と、が生成される疎水化工程を実施して、
次に試料水をメンブランフィルター(3)によって濾過する濃縮工程を実施して、
最後に前記メンブランフィルター(3)に定着した色彩と、基準となる標準色列表(4)とを目視比較して濃度を判定することを特徴とするホルムアルデヒドの測定方法。
【請求項2】
前記メンブランフィルター(3)は、硝酸セルロースを主原料とするセルロース混合エステル製であることを特徴とする請求項1記載のホルムアルデヒドの測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道などから抽出された試料水に含有しているホルムアルデヒドの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドは、一個の炭素原子と一個の酸素原子と二個の水素原子とから構成される比較的簡単な構造で、様々な分子を重合する性質があり、保存薬や接着剤の原料として広く使用されている。しかし誤飲などで多量に摂取された場合、網膜を始めとする全身のタンパク質を変質させて、重大な健康被害を及ぼす恐れがあり、また近年はシックハウス症候群の原因物質にも挙げられている。このような要因から、平成16年4月1日から施行された改正水道法によって、ホルムアルデヒドは水道水1リットル当たり0.08mg以下という水道水質基準が追加された。また水道水以外の井戸水や工場排水などについても、周辺の生活環境を悪化させないよう、必要に応じて調査が行われている。
【0003】
水中に含有しているホルムアルデヒドの濃度の測定は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC/MS)などを用いた高精度な方法が確立しており、浄水場などで公式な測定に使用されている。また他にも、試薬を用いて光学的に判定を行なう方法として、MBTH法、クロモトロープ酸法、AHMT法などが開発されており、そのうちMBTH法については、下記特許文献が公開されている。この文献に記載されている技術は、アルデヒドの含有率が高い消毒液などを測定の対象としており、試験サンプル中に、3-メチル-2-ベンゾチアゾロンヒドラゾン(以下、MBTHと記載)を滴下して、酸化工程などを経て、試験サンプルの色の観察によりアルデヒドの存在を決定している。

【特許文献1】特開2002-328122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GC/MSによるホルムアルデヒドの濃度の測定は、高価で大掛かりな設備が必要な上、測定結果が判明するまでに少なくとも3時間程度を要する他、工程が複雑で操作に熟練を要するといった問題がある。そのためこの方法は、水道の末端や水源地など、様々な場所で直ちに測定結果を把握したいという要望に応えることができない。しかし浄水場などにおいては、公式な測定に先だって簡易な方法で予備的な測定を実施したいという要望がある他、井戸水などの安全性を自力で確認したいという要望もある。このような背景から、特別な設備や知識や技術を必要とせず、あらゆる場所で実施可能で、しかも費用や時間も抑制可能な測定方法が待ち望まれている。
【0005】
前記のような光学的に判定を行なう方法は、一部に高精度な光学機器を必要とするものがある他、水道水について規定されている0.08mg/Lといった基準値の付近では精度が不足しているものが多い。ただし一部のMBTH法は、この基準値に対してもある程度の感度を持っている。しかしその判定は、同一の色彩において濃淡の違いだけを視覚的に比較することで実施されるため、測定者の主観が入り込みやすく、また周囲の日差しや照明の具合も誤差の要因になり精度の確保が難しい。このような背景から、測定者によってバラツキが出る可能性を排除でき、しかも光の状態などの影響を受けにくい客観性のある測定方法が待ち望まれている。
【0006】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、様々な場所で簡単に実施可能で、しかも費用や時間を抑制でき、さらに精度が高く客観性にも優れている、例えば水道水などに含有しているホルムアルデヒドの測定方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一定量だけ抽出された試料水に、一定量の3-メチル-2-ベンゾチアゾロンヒドラゾン(以下、MBTHと記載)を添加して、試料水に含有しているホルムアルデヒドをアジンに変換する第一工程と、前記第一工程による反応が完了した後、一定量の酸化剤を添加して、試料水に残存しているMBTHを酸化型MBTHに変換する第二工程と、前記アジンと前記酸化型MBTHとが結合することで、青色陽イオン色素が生成される第三工程と、から構成される初期処理の後、試料水に、一定量のテトラフェニルホウ酸ナトリウムを添加して、該テトラフェニルホウ酸ナトリウムから生成されたテトラフェニルホウ酸イオンと前記酸化型MBTHとの疎水性相互作用による黄色イオン会合体と、該テトラフェニルホウ酸イオンと前記青色陽イオン色素との疎水性相互作用による青色イオン会合体と、が生成される疎水化工程を実施して、次に試料水をメンブランフィルターによって濾過する濃縮工程を実施して、最後に前記メンブランフィルターに定着した色彩と、基準となる標準色列表とを目視比較して濃度を判定することを特徴とするホルムアルデヒドの測定方法である。
【0008】
本発明は、試料水に含有しているホルムアルデヒドの濃度の測定方法に関するものだが、主な目的は水道水など、飲料に用いる水の安全性を判断することにあり、前記のような1リットル当たり0.08mgといった基準値の付近で高い精度が発揮できるよう考慮されている。なお測定に使用される試料水は、あらかじめ正確に計量する必要があるが、その具体的な数値は何らの限定もなく、また各試薬については、試料水の体積に応じて使用量が決定される。
【0009】
第一工程は、正確に所定分量だけが抽出された試料水に、MBTHを添加する工程である。これによってホルムアルデヒドがMBTHと結合してアジンが生成され、その結果ホルムアルデヒドは減少していく。なお試料水中のホルムアルデヒドは、全量をアジンに変換する必要があるため、ホルムアルデヒドの濃度が測定範囲の上限にある場合でも、全量をアジンに変換できるだけのMBTHが必要である。
【0010】
第二工程は、試料水に酸化剤を添加する工程だが、これはアジンの生成が完全に終わった後に実施する必要がある。酸化剤は、アジンの生成に寄与できず残存しているMBTHを酸化させて、酸化型MBTHを生成する役割がある。この酸化型MBTHは一価の陽イオンであり、試料水中で薄い黄色を呈する。なお酸化剤は、試料水中に残存するMBTHの全量を、酸化型MBTHに変換する必要がある。また酸化剤の種類については限定されないが、塩化第二鉄が最適である。
【0011】
第三工程は、人為的な操作を介せずに反応が自然に進行する工程である。第一工程で添加されたMBTHは、第二工程を終えた段階で、アジンまたは酸化型MBTHのいずれかに変化している。そしてアジン分子と酸化型MBTH分子は、やがて一対一で結合して「青色陽イオン色素」と称される化合物が生成される。これは一価の陽イオンであり、試料水中で薄い青色を呈する。
【0012】
以上の工程から構成される初期処理については従来技術であり、前記の特許文献1にも類似する技術が記載されている。青色陽イオン色素は、アジンが生成されない場合(ホルムアルデヒドが存在しない)や、酸化型MBTHが生成されない場合(MBTHの全量がアジンに変化した)には生成されないが、ホルムアルデヒドとMBTHの分子が特定の割合で存在している場合には効率よく生成される。また酸化型MBTHは試料水中で黄色を呈し、青色陽イオン色素は青色を呈することから、この色の違いを利用して濃度の判断が可能である。しかし色の違いは極めて微妙で視覚的に判定することは難しく、更なる工程が必要である。
【0013】
初期処理の後に実施する疎水化工程は、試料水中に陰イオン性有機化合物の一つであるテトラフェニルホウ酸ナトリウムを添加して、酸化型MBTHを黄色イオン会合体に、青色陽イオン色素を青色イオン会合体に、それぞれ変化させる工程である。初期処理によって生成された酸化型MBTHおよび青色陽イオン色素は、いずれも陽イオンで水分子との親和性があり、水中に溶解可能である。しかしこれらはいずれも、水分子との親和性が低い有機物としての性格も併せ持っており、些細な要因で溶解が不可能になる場合もある。したがって試料水中にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを添加すると、これがテトラフェニルホウ酸イオンに変化して、酸化型MBTHおよび青色陽イオン色素と電気的に引き寄せ合い、最終的には疎水性相互作用により、酸化型MBTHは黄色イオン会合体に、青色陽イオン色素は青色イオン会合体に変化する。なお疎水性相互作用の際、それぞれの分子が有する色彩は変化せず、当初の黄色または青色が維持される。
【0014】
疎水性相互作用によって生成した黄色イオン会合体および青色イオン会合体は、陽イオンでも陰イオンでもなく電気的に中性な有機物であるため、親水性が失われて疎水性が顕著になっていき、次第に試料水中に浮遊し始める。そのため両イオン会合体は、フィルターなどを用いて容易に捕捉できるようになる。
【0015】
濃縮工程は、黄色イオン会合体および青色イオン会合体だけを試料水中から回収する工程である。両イオン会合体が浮遊している試料水が呈する色彩は希薄であることから、試料水をメンブランフィルター(膜濾過器)に注いで、濾過による濃縮を行う。濾過を終えるとメンブランフィルターには、両イオン会合体の持つ色彩が濃縮されて鮮明に現れる。なおメンブランフィルターに注ぐ試料水の量については、特に制限はないが、色彩が安定して定着できる程度は最低限必要である。
【0016】
最後は、メンブランフィルターに定着した色彩と、標準色列表とを目視比較してホルムアルデヒドの濃度を判定する工程である。標準色列表は事前に製作されているもので、ホルムアルデヒドの濃度と色彩との関係が提示されており、濃度が0mg/L、0.02mg/L、0.08mg/Lなどといった各段階ごとの色彩が並んでいる。したがってこの中からメンブランフィルターに定着した色彩に最も近い候補を選択して、そこに記載されている数値が測定値となる。なお濃度の変化に応じて色彩は、黄色・黄緑色・緑色・青緑色・青色と大きく変化するため、判定は極めて容易である。
【0017】
請求項2記載の発明は、濃縮工程に関するもので、メンブランフィルターは、硝酸セルロースを主原料とするセルロース混合エステル製であることを特徴としている。これまでの実験結果では、このような親水性のある素材が、最も効率よく両イオン会合体を捕捉できることが判明している。一方でPTFEや酢酸セルロースなど撥水性のある素材は、捕捉性が悪くしかも色ムラも発生しやすく本発明には適さない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明のように、初期処理の後、陰イオン性有機化合物であるテトラフェニルホウ酸ナトリウムを添加することで、いずれも疎水性のある黄色イオン会合体と青色イオン会合体とが生成され、この両イオン会合体は、メンブランフィルターによって効率よく捕捉できるため、濾過による濃縮で鮮明な色彩を得ることが可能になる。しかもこの色彩は、ホルムアルデヒドについて水道水質基準で規定されている0.08mg/Lといった基準値の付近において、黄色・黄緑色・緑色・青緑色・青色と、濃度に応じて大きく変化していく。そのため標準色列表との比較が容易であり、従来の濃淡の違いを利用した方法に比べて、測定者の主観による差が発生しない他、周辺の光にも影響を受けにくい。また測定に際しては、定量の試料水を確保した後、三種類の試薬を順に添加して濾過を行うだけよく、マニュアルや小分けされた試薬などを用意するだけで、専門知識を有しない場合でも比較的簡単に実施できる。さらに特別な装置や危険性のある薬品を使用しないため、費用を抑制でき実施場所の制約もない。しかも本発明は三十分程度で全てが終了するため、従来に比べて大幅な時間短縮も可能である。
【0019】
請求項2記載の発明のように、メンブランフィルターとして、硝酸セルロースを主原料とするセルロース混合エステル製で親水性のある素材を利用することで、イオン会合体を効率よく回収でき、しかも色ムラも発生しないことが判明している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明を実施する際の工程を時系列で示している。各所で採集された試料水は、あらかじめ決められた一定量だけを試験管などの反応容器1に注入する。図1(A)は最初に実施される第一工程で、10mL(ミリリットル)の試料水中に濃度が80ミリmol/LのMBTH溶液を0.5mLだけ添加する。MBTHは一個のアミノ基を持っているが、このアミノ基がホルムアルデヒドと反応して新たにアジンが生成される。したがってアジンの生成に伴いホルムアルデヒドは消滅していく。またホルムアルデヒドの完全な消滅によってアジンに変化できなかったMBTHは、そのまま試料水中に残存する。このような背景からMBTH溶液は、測定範囲において十分な感度を示すよう、濃度や使用量を調整する必要があり、前記の数値は実験の上で決定されている。なお本図のように10m程度の試料水を用いた場合、常温において反応が完了するまでに最低でも5分程度は掛かるため、余裕をみて10分程度経過した後、次の工程に進む必要がある。
【0021】
図1(B)は第二工程および第三工程を示し、試料水中に濃度が200ミリmol/Lの塩化第二鉄を0.5mLだけ添加する。この塩化第二鉄は残存するMBTHを酸化するためのもので、酸化作用があれば塩化第二鉄以外も使用可能である。前の工程でアジンに変化できず残存しているMBTHは、ここでアミノ基が酸化されて、酸化型MBTHに変化する。この酸化型MBTHはさらにアジンと化合して、新たに青色陽イオン色素が生成される。なお青色陽イオン色素は、アジンと酸化型MBTHの各分子が一対一で結合する。そしてこの工程で生成された酸化型MBTHは、試料水中でわずかに黄色を呈し、対する青色陽イオン色素は、試料水中でわずかに青色を呈する。なお第三工程も、反応が完了するまでに最低でも5分程度は掛かるため、余裕をみて10分程度経過した後、次の工程に進む必要がある。
【0022】
第二工程において、試料水中に当初からホルムアルデヒドが存在しない場合、アジンが生成されないため、青色陽イオン色素も生成されない。またホルムアルデヒドの濃度が高い場合、MBTHが残存せず酸化型MBTHが生成されないため、同様に青色陽イオン色素が生成されない。しかしアジンに対して酸化型MBTHの分子の数が過剰の場合、効率よく青色陽イオン色素が生成される。
【0023】
図1(C)は疎水化工程であり、酸化型MBTHと青色陽イオン色素とを変化させる工程である。この二つの化合物は、いずれも陽イオンで水分子との親和性があるため、試料水中に溶解した状態を維持できる。しかしこの二つの化合物は、いずれも水との親和性が低い有機物という性質も併せ持っており、わずかな環境の変化により溶解した状態を維持できなくなる。具体的には、試料水中において陰イオンになる有機物(陰イオン性有機化合物)を添加することで、電気的な引き寄せ合いと疎水性相互作用が発生して、新たに溶解度の低いイオン会合体が生成される。
【0024】
このような疎水性相互作用を発生させるため、濃度が0.06ミリmol/Lのテトラフェニルホウ酸ナトリウム溶液を5mL添加する。これによって酸化型MBTHは、黄色イオン会合体に変化するが、同時に疎水性が生じるため、粒子状になって試料液中に浮遊し始める。なおこの際、黄色の色彩は維持される。対する青色陽イオン色素も、同様に青色イオン会合体に変化して試料水中に浮遊し始める。こちらも青色の色彩は維持される。このように生成された疎水性のある両イオン会合体は、フィルターなどで容易に分離が可能である。なおこの工程で使用するテトラフェニルホウ酸ナトリウムは、水中では溶解してテトラフェニルホウ酸イオンに変化する。
【0025】
図1(D)は濃縮工程の前半であり、試料水の一部を注射器2によって抽出している。また図1(E)は注射器2によって抽出された試料水を、メンブランフィルター3に注いで色彩を定着する濃縮工程の後半である。なおメンブランフィルター3は、上下を板状のメンブランフィルター・ホルダー5によって挟まれており、この上面に注射器2を押し付けながら試料水を滴下していく。これに伴い黄色または青色の色彩を持つ両イオン会合体は、次第にメンブランフィルター3によって捕捉されていき、着色が徐々に濃くなっていく。しかしある程度の滴下量を過ぎると色彩の変化は止まる。したがって図1(D)における試料水の抽出量は、この色彩の変化が止まるだけの量を確保する必要がある。
【0026】
図1(F)は、ホルムアルデヒドの濃度を判定する最後の工程である。試料水の濾過を終えたメンブランフィルター3は、メンブランフィルター・ホルダー5を外して余分な水分を落とした後、標準色列表4との比較によって濃度を判定する。標準色列表4は、測定範囲における濃度と、その際の色彩が図のように段階的に提示されており、測定者はメンブランフィルター3に定着した色彩に最も類似した色彩を選択して、この濃度を読み取って判定が行われる。なお標準色列表4に提示される実際の色彩は、左から順に黄色・黄緑色・緑色・青緑色・青色と大きく変化して一目瞭然の違いがあり、判定は極めて容易である。
【0027】
図2は、本発明に係わる反応と各物質の化学式を示している。このように試料水中に含有しているホルムアルデヒドは、MBTHよってアジンに変化する。またアジンに変化できなかったMBTHは、塩化第二鉄による酸化作用によって、酸化型MBTHに変化していくが、この一部はさらにアジンと化合して、青色陽イオン色素が生成される。そして酸化型MBTHと青色陽イオン色素は、いずれも陽イオンで試料水中に溶解しているが、テトラフェニルホウ酸イオンにより疎水性相互作用が発生して、酸化型MBTHは黄色イオン会合体に、青色陽イオン色素は青色イオン会合体に変化して、メンブランフィルターによる濾過を経て目視比較で濃度が判明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施する際の工程を時系列で示している図である。
【図2】本発明に係わる反応と各物質の化学式を示している図である。
【符号の説明】
【0029】
1 反応容器
2 注射器
3 メンブランフィルター
4 標準色列表
5 メンブランフィルター
図面
【図1】
0
【図2】
1