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明細書 :並列型高速電子線回折装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3057437号 (P3057437)
公開番号 特開2000-090867 (P2000-090867A)
登録日 平成12年4月21日(2000.4.21)
発行日 平成12年6月26日(2000.6.26)
公開日 平成12年3月31日(2000.3.31)
発明の名称または考案の名称 並列型高速電子線回折装置
国際特許分類 H01J 37/295     
H01L 21/203     
FI H01J 37/295
H01L 21/203
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願平10-258971 (P1998-258971)
出願日 平成10年9月11日(1998.9.11)
審査請求日 平成11年9月2日(1999.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】鯉沼 秀臣
【氏名】川崎 雅司
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸 (外1名)
審査官 【審査官】堀部 修平
参考文献・文献 特開 平5-217539(JP,A)
特開 昭53-59486(JP,A)
特開 平7-211637(JP,A)
特開 昭61-215287(JP,A)
実公 昭44-29151(JP,Y1)
調査した分野 H01J 37/295
H01L 21/203
特許請求の範囲 【請求項1】
電子銃から出た電子線を偏向する第1偏向コイルと、この第1偏向コイルにより偏向した電子線を再度偏向する第2偏向コイルとを備えた電子線回折装置において、
基板及び基板の所定領域のいずれか、あるいは両方に可動マスクが覆ったりはずしたり異なるマスクパターンに順次交換することで元素の組合せが異なる薄膜やそれらの積層シーケンスが異なる薄膜を単分子層ごとにエピタキシャル成長して形成するコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーにあって、単分子層ごとのエピタキシャル成長している上記基板又は上記基板の所定領域に対して、上記可動マスクと連動して上記第1偏向コイル及び上記第2偏向コイルを制御して設定した角度で平行電子線を入射しスキャンすることを特徴とする、並列型高速電子線回折装置。

【請求項2】
前記第1偏向コイルと前記第2偏向コイルとを電気的に制御して前記基板の所定領域の任意の位置に任意の入射角度で電子線を入射してロッキングカーブを得るようにしたことを特徴とする、請求項に記載の並列型高速電子線回折装置。

【請求項3】
電荷結合素子で時系列に取り込んだ電子線回折像を各ピクセルごとに収集し、かつ、独立して並列的に処理して表示するようにしたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の並列型高速電子線回折装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】この発明は、電子線を任意の角度で平行に走査して広範囲又は複数の領域で薄膜のエピタキシャル成長を分子層単位で正確に制御し且つそのモニタリングをするための並列型高速電子線回折装置に関する。

【02】

【従来の技術】従来の高速電子線回折装置(以下、「RHEED」という)では、試料の一部に電子線を照射し、その回折像を電荷結合素子(以下、「CCD」という。)でコンピュータに入力し、回折像や強度の変化をモニターしながらエピタキシャル成長薄膜の作製を行ってきた。

【03】
図7は従来のRHEEDの使用状態を示す概略図であり、電子線と試料とを上面から見た図である。図7を参照して、従来のRHEEDは電子銃2から出た電子がx-yの2軸に電磁力を作用する偏向コイル4,4により曲げられて試料6に当たり、反射してスクリーン8に当たってCCD9で回折強度を検知するようになっており、分子線エピタキシーなどの高真空プロセスでRHEEDを用いることにより電子線の鏡面反射強度が表面の原子一層レベルでの凹凸を反映して振動するので、原子一層精度での成膜及びそのモニタリングが可能になっている。

【04】
また回折のロッキングカーブをとるためには、電子線を試料に対して入射角を変化させる必要があるが、従来のRHEEDでは図8に示すように、試料6をチルト機構で様々な角度に調節したり、さらに図9に示すように、試料6を上下移動機構により上下に移動させて電子線の入射角を調節したりすることも行われていた。なお、図8及び図9においてA及びBは電子銃2から出た電子線を示す。

【05】
しかしながら、従来のRHEEDでは、異なる位置の回折像を得るとき試料に対して平行に走査できなかったため、例えば10mm角程度の一枚の基板上に厚さや組成などの異なる複数の薄膜を並行して作製するようなコンビナトリアル合成では、各点でのRHEED像を独立に並行して収集し、解析することができなかった。さらに回折のロッキングカーブを得る場合、チルト機構で試料を様々な角度に調節させるにはユーセントリックステージが必要であり、機械的機構を作動させるため低速である。また試料を上下移動機構で上下させるには大がかりな機構が必要であり、上下の位置と電子線の偏向を同期させることが必要で、しかも動作が低速である。

【06】

【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は以上の点にかんがみ、電子線を任意の角度で入射するとともに平行に走査して、広範囲又は複数の領域で薄膜のエピタキシャル成長を分子層単位で正確に制御し且つそのモニタリングをすることのできる並列型高速電子線回折装置を提供することを目的とする。

【07】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の並列型高速電子線回折装置は、電子銃から出た電子線を偏向する第1偏向コイルと、この第1偏向コイルにより偏向した電子線を再度偏向する第2偏向コイルとを備えた電子線回折装置において、基板及び基板の所定領域のいずれか、あるいは両方に可動マスクが覆ったりはずしたりして原料の異なる薄膜を単分子層ごとにエピタキシャル成長して形成するコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーにあって、単分子層ごとのエピタキシャル成長している基板又は基板の所定領域に対して、可動マスクと連動して第1偏向コイル及び第2偏向コイルを制御し設定した角度で平行電子線を入射しスキャンすることを特徴とするものである。また請求項2記載の発明は上記構成に加え、第1偏向コイルと第2偏向コイルとを電気的に制御して基板の所定領域の任意の位置に任意の入射角度で電子線を入射してロッキングカーブを得るようにしたことを特徴とする。さらに請求項3記載の発明は、電荷結合素子で時系列に取り込んだ電子線回折像を各ピクセルごとに収集し、かつ、独立して並列的に処理して表示するようにしたことを特徴とするものである。

【08】
このような構成の本発明では、第1偏向コイルと第2偏向コイルとを有しているので、電子線を任意の角度で入射することができ、ロッキングカーブを高速に得ることができる。さらに平行電子線を、任意の角度で基板及び基板の所定領域に対して広範囲に走査することができる。したがって、基板の広範囲又は複数の領域で薄膜のエピタキシャル成長を分子層単位で正確に制御し、モニターすることができる。

【09】

【発明の実施の形態】以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の実施形態にかかる並列型高速電子線回折装置の使用状態を示す概略図であり、電子線と試料とを上面から見た図である。図1を参照して、本実施形態の並列型高速電子線回折装置は、電子銃12と、この電子銃12から出た電子線をx-y方向に偏向する第1偏向コイル14,14と、偏向された電子線を任意の角度に調整し、特に平行にする第2偏向コイル15,15とを備え、電子線が試料16に対して任意の角度で平行に走査し反射してスクリーン18に当たり、CCD19で鏡面反射強度を検出するようになっている。

【10】
その際、コンピュータ11はRHEEDパターンをCCDとイメージプロセッサを用いて高速に並列処理し、電子線の制御と試料16の電子線照射領域との対応関係及びこの照射領域の電子線の鏡面反射強度とを集中管理制御している。さらにコンピュータ11は、第1偏向コイル14,14及び第2偏向コイル15,15を増幅器13を介して電子線の制御をする。

【11】
次に、本実施形態の並列型高速電子線回折装置の作用について説明する。図2は本実施形態の電子線の軌跡を示す図であり、(a)は試料に対して垂直方向の、(b)は試料面内での電子線の軌跡を示す図である。図2を参照して、電子銃12から出た電子線を第1偏向コイルで任意の角度に拡げ、かつ、垂直方向に任意の角度にして走査し、第2偏向コイルに入射する。この第2偏向コイルで走査する電子線の広がりを平行にするとともに、試料16の所定領域へ照射するために、走査する電子線の角度を調節する。このように本実施形態では試料16を平行電子線で走査でき、試料の所定領域をねらって、つまり入射角度を調節して平行電子線を走査することができる。

【12】
次に、回折のロッキングカーブをとる方法を説明する。図3は本実施形態でロッキングカーブをとるための動作を示す概略図である。図3を参照して、試料に対して鈍い入射角度にする場合、電子銃12から出た電子線を第1偏向コイル14,14で所定角度に調節して第2偏向コイル15,15に入射し、この第2偏向コイルで所定角度に調節して試料16に電子線が入射する。なお、本実施形態では試料16を固定したままである。試料16に対して鋭い入射角度にする場合、電子銃12から出た電子線を第1偏向コイル14,14で所定角度で下方に曲げて第2偏向コイル15,15に入射し、この第2偏向コイルで所定角度で上方に曲げて試料に電子線が入射する。なお、試料面内の電子線の走査は図2で説明したように平行電子線にできる。

【13】
このように本実施形態では、第1偏向コイル14,14及び第2偏向コイル15,15の電気的制御だけで、試料16の任意の位置へ任意の入射角度で電子線を走査することができる。したがって、本発明では機械的機構を必要としないため、高速に回折のロッキングカーブを得ることができる。

【14】
次に、本実施形態の並列型高速電子線回折装置をコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーに適用した例を用いる場合の動作を説明する。コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーは固体原料のターゲットにレーザー光を照射して気化し、この気化した原料に対して基板又は基板の所定領域を可動マスクが覆ったりはずしたりして原料の異なる薄膜を単分子層ごとにエピタキシャル成長して形成するものである。

【15】
図4はコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーでの薄膜形成概略図である。なお、基板の加熱源等は省略した。図4を参照して、コンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーでは、KrFのエキシマレーザー21をターゲット22に照射してプリカーサー24を発生させ、このプリカーサー24に対して可動マスク26,26で基板27を覆ったりはずしたりして移動し、基板27の各所定領域に元素の組合せが異なる薄膜やそれらの積層シーケンスが異なる薄膜を堆積させる。このとき可動マスク26に連動して基板上の各領域に堆積する単分子層ごとのエピタキシャル成長を平行電子線28でスキャンする。

【16】
可動マスクは、例えば異なるマスクパターンを形成したものでもよく、この場合異なるマスクパターンを順次交換する機構を備えていればよい。したがって、基板の所定領域に対して可動マスクで異なるマスクパターンに順次交換することで、元素の組合せが異なる薄膜やそれらの積層シーケンスが異なる薄膜を単分子層ごとにエピタキシャル成長することもできる。

【17】
並列型高速電子線回折装置の10~50keVの平行電子線28を基板表面に1~2度程度の浅い角度で入射させることにより、原子層又は分子層ごとの周期でRHEED強度振動が生じる。基板表面への入射角度は第1偏向コイル14,14で設定し、この偏向した電子線を第2偏向コイル15,15で基板の所定領域に向けて角度を調整し、かつ、平行電子線にしている。

【18】
図5はコンビナトリアルレーザー分子線エピタキシーの超格子合成の例である。なお、図5中の符号は図4と同様である。図5(a)で示すように可動マスク26,26の移動するにつれて所定領域、例えば29a,29b,29c,29d等で単分子層ごとのエピタキシャル成長を並列型高速電子線回折装置でモニターしながら材料Aを堆積させる。このとき各領域で材料Aのエピタキシャル成長する分子層が異なっている。

【19】
並列型高速電子線回折装置の電子線は基板27の各領域に入射する角度を第1偏向コイル14,14で設定し、第2偏向コイル15,15で所定領域に向かう入射角度の平行電子線にしてスキャンし、所定の分子層がエピタキシャル成長したら、可動マスクと連動して次の領域をスキャンする。このとき基板上の各成長領域ごとの電子線回折パターンを図1に示したCCDで時系列に取り込んだ画像を各ピクセルごとに収集し、各ピクセルの画像の系的変化を独立にして並列処理し、ディスプレイ11(図1)で表示している。

【20】
次に図5(b)に示すように、基板27が90度回転し、図5(c)に示すように材料Bが各領域で所定数の分子層ごとに堆積する。このようにして図5(d)に示すように、例えば領域29aでは材料Aと材料Bとが4分子層ずつ交互に堆積し、領域29bでは材料Aの1分子層と材料Bの4分子層とが交互に堆積し、領域29cでは材料Bの1分子層と材料Aの4分子層とが交互に堆積し、領域29dでは材料Aと材料Bとが1分子層ずつ交互に堆積する。

【21】
図6は本実施形態の並列型高速電子線回折装置におけるRHEED振動の図である。図6において、aはピクセル1(P1)とピクセル2(P2)が可動マスクで覆われ、ピクセル3(P3)だけが単分子層ごとのエピタキシャル成長していることを示す。またbはピクセル1(P1)だけが可動マスクで覆われ、ピクセル2(P2)とピクセル3(P3)とが単分子層ごとのエピタキシャル成長をしていることを示す。さらにcはピクセル1(P1),ピクセル2(P2)及びピクセル3(P3)が可動マスクをはずしており、単分子層ごとのエピタキシャル成長をしていることを示す。したがって、図6中、ピクセル1(P1)はSrTiO3 とBaTiO3 とを2分子層ずつエピタキシャル成長させたとき、ピクセル2(P2)は、SrTiO3 とBaTiO3 とを4分子層ずつエピタキシャル成長させたとき、ピクセル3(P3)はSrTiO3 とBaTiO3 とを6分子層ずつエピタキシャル成長させたときのRHEEDの振動を示している。

【22】
以上のように本実施形態の並列型高速電子線回折装置では、基板上の各点での電子線の入射方向を平行に保ったまま電子線を走査できる。さらに基板上のそれぞれの点での電子線の入射角度を任意に設定するとができる。また電子線の走査と同期して、各点でのRHEEDパターンをCCDとイメージプロセッサを用いて高速に収集かつ並列処理することにより、各点でのRHEED像や強度の時間変化を同時に解析することができる。

【23】

【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明の並列型高速電子線回折装置では、基板に対して電子線を任意の角度で入射することができ、ロッキングカーブを高速に得ることができる。さらに、平行電子線を任意の角度で基板及び基板の所定領域に対して広範囲に走査することができる。したがって、基板の広範囲又は複数の領域で薄膜のエピタキシャル成長を分子層単位で正確に制御し、且つ、モニターすることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図5】
7
【図6】
8