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明細書 :Ti-Al-N膜の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4912572号 (P4912572)
公開番号 特開2005-330517 (P2005-330517A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
公開日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発明の名称または考案の名称 Ti-Al-N膜の形成方法
国際特許分類 C23C  14/06        (2006.01)
FI C23C 14/06 L
C23C 14/06 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2004-148320 (P2004-148320)
出願日 平成16年5月18日(2004.5.18)
審査請求日 平成19年5月15日(2007.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000080
【氏名又は名称】タマティーエルオー株式会社
発明者または考案者 【氏名】湯本 敦史
【氏名】山本 剛久
【氏名】廣木 富士男
【氏名】塩田 一路
【氏名】丹羽 直毅
個別代理人の代理人 【識別番号】100094053、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 隆久
審査官 【審査官】深草 祐一
参考文献・文献 特開2002-157481(JP,A)
湯本敦史 他,超音速フリージェットPVDによるTiAl皮膜,(Ti,Al)N皮膜の形成,日本金属学会講演概要,日本金属学会,2004年 3月10日,Vol.134th,Page.123
丹羽直毅 他,ナノクラスタを用いたコーティング技術の開発,工学院大学総合研究所年報,工学院大学総合研究所,2003年10月,No.10,Page.69-72
I.J.R. BAUMVOL,New trends in hard coatings technology,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B,1994年,Vol.85,p.230-235
調査した分野 C23C 14/00~14/58
WPI
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
窒素雰囲気中でチタンおよび/またはアルミニウムを含む蒸発源材料から窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を、蒸発チャンバー内で生成する工程と、
前記微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、前記真空チャンバー中に配置した基板上に物理蒸着させ、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有する、膜厚が10~200μmであるTi-Al-N膜を形成する工程とを有し、
前記気流は、前記微粒子の生成時において前記蒸発チャンバー内に、1.5~6.5リットル/分の範囲の流量で供給されるHeガス、および0~4.0リットル/分の範囲の流量で、かつ該流量が供給中に増加していくように供給されるNガスが前記真空チャンバー中に噴出されるときに生じる気流である
Ti-Al-N膜の形成方法。
【請求項2】
窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を生成する工程においては、窒素を含む雰囲気中で前記蒸発源材料に向けて放電して得られるプラズマによって前記蒸発源材料を加熱して蒸発させる
請求項1に記載のTi-Al-N膜の形成方法。
【請求項3】
前記蒸発源材料として、チタン、アルミニウム、および/または、チタンとアルミニウムの合金を用いる
請求項1または2に記載のTi-Al-N膜の形成方法。
【請求項4】
前記基板として鉄鋼材料の基板を用いる
請求項1~3のいずれかに記載のTi-Al-N膜の形成方法。
【請求項5】
前記基板としてチタン基板を用いる
請求項1~3のいずれかに記載のTi-Al-N膜の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はチタンアルミニウム窒化膜(Ti-Al-N膜)およびその形成方法に関し、特に超音速フリージェットPVD法を用いて形成したTi-Al-N膜と、それを用いるTi-Al-N膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
γ-TiAl、α2-Ti3Al、TiAlNなどのTi-Al系材料は、低密度、高温下などでの高強度、高耐磨耗性である特性を有していることや、自動車用材料、航空宇宙材料および切削道具などの応用分野が広いことで注目を集めている。
特に、近年、構造材料としてTi-AlおよびTi-Al-N膜に対する多くの実験がなされている。
Ti-Al-N膜とは、Ti、AlおよびNの3つの元素からなる膜であり、3つの元素から選択された元素からなる相を複数有している。
【0003】
Ti-Al-N膜は、反応性マグネトロンスパッタリング法(非特許文献1および非特許文献2参照)、イオンビームを用いた成膜(非特許文献3および非特許文献4)およびメッキ、および、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法(非特許文献5および非特許文献6)により、成膜に成功した。
しかし、これらの工程は、成膜速度が遅く、また、厚く高密度な膜を形成することが困難であるという欠点を有していた。

【非特許文献1】M. Zhou, Y. Makino, M. Nose and K. Nogi: Thin SolidFilms 369 (1999) 203-208
【非特許文献2】S. Inoue, H. Uchida, K. Koterazawa and Y. Yoshinaga: Thin Solid Films 300 (1997) 171-176
【非特許文献3】I. Nakamura, M. Kamiya, I. Takano and Y. Sawada: Jpn. J. Appl. Phys., 36 (1997) 2308-2312
【非特許文献4】I. Takano, I. Nakamura, M. Kamiya and H. Yoshida: Surf. Coat. Technol., 84 (1996) 409-413
【非特許文献5】J. Shieh and M. H. Hon: Thin Solid Films 391 (2001)101-108
【非特許文献6】J. Shieh and M. H. Hon: J. Vac. Sci. Technol. A, 19(2001) 87-92
【非特許文献7】A. Yumoto, T. Yamamoto, F. Hiroki, I. Shiota and N.Niwa: Mater. Trans., JIM 43 (2002) 2932-2934
【非特許文献8】A. Yumoto, F. Hiroki, I. shiota and N. Niwa: Surf. coat. Technol., 169-170 (2003) 499-503
【非特許文献9】A. Yumoto, F. Hiroki, I. Shiota and N. Niwa: J. Japan Inst. Metals 65 (2001) 635-643
【非特許文献10】A. Yumoto, F. Hiroki, I. Shiota and N. Niwa: Netsu Shori 42 (2002) 83-90
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、従来のTi-Al-N膜の形成方法では、成膜速度を高めて、厚く高密度な膜を形成することが困難である点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のTi-Al-N膜は、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有して、基板に形成されたTi-Al-N膜であって、プラズマ中で生成された窒素とチタンおよび/またはアルミニウムからなる微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、前記真空チャンバー中に配置した前記基板上に物理蒸着させて形成したことを特徴とする。
【0006】
上記の本発明のTi-Al-N膜は、プラズマ中で生成された窒素とチタンおよび/またはアルミニウムからなる微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、真空チャンバー中に配置した基板上に物理蒸着させて形成した膜である。
【0007】
また、本発明のTi-Al-N膜は、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有して、基板に形成されたTi-Al-N膜であって、前記Ti-Al-N膜の面内方向と厚み方向とで粒界の密度が略等しいことを特徴とする。
【0008】
上記の本発明のTi-Al-N膜は、Ti-Al-N膜の面内方向と厚み方向とで粒界の密度が略等しい構造を有する。
【0009】
本発明のTi-Al-N膜の形成方法は、窒素雰囲気中でチタンおよび/またはアルミニウムを含む蒸発源材料から窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を生成する工程と、前記微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、前記真空チャンバー中に配置した基板上に物理蒸着させ、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有するTi-Al-N膜を形成する工程とを有する。
【0010】
上記の本発明のTi-Al-N膜の形成方法は、まず、窒素雰囲気中でチタンおよび/またはアルミニウムを含む蒸発源材料から窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を生成する。次に、得られた微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、真空チャンバー中に配置した基板上に物理蒸着させ、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有するTi-Al-N膜を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のTi-Al-N膜は、窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、成膜速度を高めて形成された、厚く高密度な膜である。
【0012】
本発明のTi-Al-N膜の形成方法は、窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出することにより、成膜速度を高めて、厚く高密度な膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係るTi-Al-N膜およびその形成方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係るTi-Al-N膜は、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有して、基板に形成されたTi-Al-N膜であって、プラズマ中で生成された窒素とチタンおよび/またはアルミニウムからなる微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、真空チャンバー中に配置した基板上に物理蒸着させて形成したことを特徴とする。
【0015】
また、本実施形態に係るTi-Al-N膜は、チタン、アルミニウムおよび窒素を含有して、基板に形成されたTi-Al-N膜であって、Ti-Al-N膜の面内方向と厚み方向とで粒界の密度が略等しいことを特徴とする。
上記の窒化されたチタンおよび/またはアルミニウムを含む微粒子を超音速フリージェットの気流に乗せて真空チャンバー中に噴出して、形成されたTi-Al-N膜は、柱状構造ではない緻密な膜となっている。
【0016】
本実施形態に係るTi-Al-N膜は、好ましくは、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、および、窒化アルミニウムの各相を有する。
窒化チタンは、例えば、Ti2N、TiN、TiN0.26、TiN0.76、TiN0.90、Ti31.29の各組成の相である。窒化チタンアルミニウムは、例えば、Ti2AlN、Ti3AlN、Ti3Al22の各組成の相である。窒化アルミニウムは、例えば、AlNの相である。本実施形態に係るTi-Al-N膜は、上記の種々の相を複数含んでいる。
種々の組成比あるいは結晶構造などのナノ粒子が堆積することで、種々の相を有する膜が構成されている。
【0017】
図1は、上記の本実施形態に係るTi-Al-N膜を成膜するための超音速フリージェット(SFJ;Supersonic Free Jet)-PVD(Physical Vapor Deposition)装置の模式構成図である。
本実施形態のSFJ-PVD装置は、第1蒸発チャンバー10、第2蒸発チャンバー20および成膜用の真空チャンバーである成膜チャンバー30を備える。
【0018】
第1蒸発チャンバー10には真空ポンプVP1に接続した排気管11が設けられており、真空ポンプVP1の作動により第1蒸発チャンバー10内が排気され、また、第1蒸発チャンバー10に接続して設けられたマスフローコントローラ12からHeあるいはN2などのガスが供給され、第1蒸発チャンバー10内が所定の圧力雰囲気とされる。
【0019】
第1蒸発チャンバー10内には、水冷された銅製のるつぼ13が設けられ、この中にTiまたはTi-50原子%Alなどの蒸発源材料14が入れられている。蒸発源材料14に向けて放電するように電極15が設けられており、所定の圧力雰囲気下での放電で得られる移行式アークプラズマ(transferred arc plasma)によって蒸発源材料14が加熱されて蒸発し、蒸発源材料のナノメートルオーダーの直径の微粒子(以下ナノ粒子と称する)が得られる。
得られたナノ粒子は第1蒸発チャンバー10内の雰囲気ガスとともに移送管16を通して成膜チャンバー30へと移送される。
【0020】
第2蒸発チャンバー20には真空ポンプVP2に接続した排気管21が設けられており、真空ポンプVP2の作動により第2蒸発チャンバー20内が排気され、また、第2蒸発チャンバー20に接続して設けられたマスフローコントローラ22からHeなどのガスが供給され、第2蒸発チャンバー20内が所定の圧力雰囲気とされる。
【0021】
第2蒸発チャンバー20内には、グラファイト製のるつぼ23が設けられ、この中にAlなどの蒸発源材料が入れられている。るつぼ23の周囲にはTaリボンヒーターが設けられており、これにより蒸発源材料が加熱されて蒸発し、蒸発源材料のナノ粒子が得られる。
得られたナノ粒子は第2蒸発チャンバー20内の雰囲気ガスとともに移送管24を通して成膜チャンバー30へと移送される。
【0022】
成膜チャンバー30には真空ポンプVP3が設けられており、この作動により成膜チャンバー30内が排気される。
成膜チャンバー30内には、X-Y方向に駆動するステージ31が設けられ、このステージ31に電気抵抗加熱システムを有する基板ホルダー32が接続され、成膜用の基板33が固定される。基板33の温度は、基板33の成膜領域に近接した点において不図示の熱電対により測定され、電気抵抗加熱システムにフィードバックされて温度制御される。
【0023】
第1蒸発チャンバー10からの移送管16の先端に設けられた超音速ノズル34および第2蒸発チャンバー20からの移送管24の先端に設けられた超音速ノズル35が、それぞれ基板33の表面に向けて設けられている。超音速ノズル(34,35)の外周にはコイルヒーター36が設けられて、加熱可能となっている。
【0024】
基板としては、特に限定はないが、例えば、純チタン板(JISグレード1)、A1050アルミニウム合金板、SUS304ステンレススチール板などを用いることができ、基板の厚みは例えば1mmとする。Ti-Al-N膜を成膜するには、純チタン板を好ましく用いることができる。また、鉄鋼材料の基板も好ましく用いることができる。
基板は成膜チャンバーにセットする前にアセトン中で超音波洗浄してから用いる。
また、基板の成膜領域は例えば7mm角とする。
【0025】
上記の第1蒸発チャンバー10および/または第2蒸発チャンバー20においてナノ粒子が生成されると、第1および第2蒸発チャンバー(10,20)と成膜チャンバー30の間の圧力差によりガスの流れが生じ、ナノ粒子は雰囲気ガスとともに移送管を通して成膜チャンバー30へと移送される。
第1および第2蒸発チャンバー(10,20)から成膜チャンバー30へと接続する移送管(16,24)の先端に取り付けられた特別にデザインされた超音速ノズル(34,35)によって、ナノ粒子はマッハ3.6程度の超音速にまで加速され、ナノ粒子が超音速フリージェットの気流に乗って成膜チャンバー30中に噴出し、基板ホルダー32にセットされた基板33上に堆積する。
【0026】
上記のSFJ-PVD装置を用いてTi-Al-N膜を成膜する際、第2蒸発チャンバー20に設けられたTaリボンヒーターは高温でN2中において窒化タンタルを形成してダメージを受けるので、本実施形態においてTi-Al-N膜を成膜するには第2蒸発チャンバー20は用いずに、第1蒸発チャンバー10のみを用いる。即ち、第1蒸発チャンバー10の蒸発源材料14としてTi-50原子%Alを用い、雰囲気ガスにN2を含むガス用いる。
これにより、蒸発源材料14の蒸発で形成されるプラズマ中でN2と反応して、TiNなどの窒化チタン、Ti3AlNなどの窒化チタンアルミニウム、AlNなどの窒化アルミニウムなど、窒素とチタンおよび/またはアルミニウムからなる微粒子が形成される。
例えば、本実施形態においては、Heガス雰囲気中でTi-50原子%Alの蒸発を開始し、徐々にHeに対するN2ガスの流量を多くして、基板上にTi-Al-Nの組成の膜を形成する。
また、リボンヒーターなどにN2ガス耐性のある蒸発チャンバーを用いる場合には、第1蒸発チャンバーと第2蒸発チャンバーの両者を用いて形成することも可能であり、この場合には、第1蒸発チャンバーと第2蒸発チャンバーのそれぞれの蒸発源材料として、チタン、アルミニウム、および/または、チタンとアルミニウムの合金を用い、各チャンバーの雰囲気ガスにN2を含むガス用いることができる。
【0027】
Ti-Al-N膜を形成するための上記の他の調製条件としては、例えば、蒸発パワーは0.4kWとし、Heガス流量は6.5~1.5リットル/分とし、N2ガス流量は0~4.0リットル/分とする。基板としてはTi(JIS-1)を用い、基板温度は500℃、ノズルヒーターは900Wとする。
本実施形態のTi-Al-N膜の形成方法の上記以外の成膜条件として、例えば非特許文献7~10に記載されている成膜条件を適用することができる。
【0028】
(実施例1)
上記のようにして成膜したTi-Al-N膜の試料の断面をEDX(Energy Dispersive X-ray)アナライザーを備えた走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した。測定用の試料はSiC紙で#1500まで研磨し、その後0.3μmのAl23で機械的に研磨した。
【0029】
図2は、上記のようにして撮影したTi基板上のTi-Al-N膜の断面のSEM写真である。
滑らかで、緊密で、欠陥のない界面(interface)および皮膜が形成されていることを示している。
【0030】
図3は、上記のTi-Al-N膜の表面から深さdに対する原子濃度cの変化を示す。
Ti-Al-N膜の組成は、Ti基板の表面から開始して、膜の表面から約130μmの位置において突然変化し、Nが増加してAlが減少し、膜の表面から約100μmまでの領域RにおいてはTiとNがそれぞれ約40原子%程度、Alが20原子%程度で、いずれも略一定の値となっていることを示す。これは、N2ガス流量の増加に伴い、Ti-50原子%Alの蒸発源材料においてAlの蒸発よりもTiの蒸発が優先されていることを示唆する。
【0031】
(実施例2)
30mA、15kWのCuKα放射線でのX線回折(XRD)により、2θが20~80°の範囲で、上記のようにして成膜したTi-Al-N膜の試料の相を同定した。
特性ピークとJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)に記載のピークとを照らし合わせて、相を同定した。
【0032】
図4は、上記のTi-Al-N膜のXRDプロファイルである。
Ti-Al-N膜中に、TiN、Ti3Al22、Ti3AlN、および、AlNの相が存在することを示している。
【0033】
従来方法によるTi-Al-N膜では膜強度が低い柱状構造となる場合や、皮膜中にボイドやクラックなどが入ってしまっていたが、本実施形態に係るTi-Al-N膜は、ナノ粒子を堆積させて形成しており、Ti-Al-N膜の面内方向と厚み方向とで粒界の密度が略等しく、柱状構造ではない高密度な膜であり、ボイドやクラックのない緊密な膜となっている。
また、本実施形態に係るTi-Al-N膜は、高密度であるために高硬度であり、耐磨耗性の高い。
さらに、本実施形態に係るTi-Al-N膜は、例えば800℃程度以上での高温下での耐酸化性が高い。
【0034】
また、従来方法では1~10μm程度の膜厚でしか形成できなかったTi-Al-N膜について、本実施形態のTi-Al-N膜の形成方法によれば数100μm程度にまで厚膜化することができる。
本実施形態において、蒸発チャンバー中でのHeとN2のガス雰囲気を制御することで、Ti-Al-N膜を成膜することができる。
XRD解析は、Ti-Al-N膜が、TiN、Ti3Al22、Ti3AlN、および、AlNからなることを示している。
【0035】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、上記の実施形態においては1つの蒸発チャンバーを用いて蒸発させているが、複数の蒸発チャンバーでそれぞれ蒸発源材料を蒸発させ、複数の超音速ノズルを用いて1つの基板上に堆積させて形成することも可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のTi-Al-N膜は、自動車用材料、航空宇宙材料および切削道具などの高強度、高耐磨耗性の材料に適用することができる。
【0037】
本発明のTi-Al-N膜の形成方法は、自動車用材料、航空宇宙材料および切削道具などの高強度、高耐磨耗性の材料を形成する方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るTi-Al-N膜を成膜するための超音速フリージェットPVD装置の模式構成図である。
【図2】図2は実施例1において撮影したTi基板上のTi-Al-N膜の断面のSEM写真である。
【図3】図3は実施例1におけるTi-Al-N膜の表面から深さdに対する原子濃度cの変化を示す。
【図4】図4は実施例2におけるTi-Al-N膜のXRDプロファイルである。
【符号の説明】
【0039】
10…第1蒸発チャンバー
11,21…排気管
12,22…マスフローコントロール
13,23…るつぼ
14…蒸発源材料
15…電極
16,24…移送管
20…第2蒸発チャンバー
30…成膜チャンバー
31…ステージ
32…基板ホルダー
33…基板
34,35…超音速ノズル
36…コイルヒーター
VP1,VP2,VP3…真空ポンプ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3