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明細書 :放電発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4355789号 (P4355789)
公開番号 特開2004-146318 (P2004-146318A)
登録日 平成21年8月14日(2009.8.14)
発行日 平成21年11月4日(2009.11.4)
公開日 平成16年5月20日(2004.5.20)
発明の名称または考案の名称 放電発生装置
国際特許分類 H01T  19/00        (2006.01)
A61L   9/16        (2006.01)
B01D  53/32        (2006.01)
B01J  19/08        (2006.01)
FI H01T 19/00
A61L 9/16 Z
B01D 53/32
B01J 19/08 ZABB
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2002-346520 (P2002-346520)
出願日 平成14年10月24日(2002.10.24)
審査請求日 平成17年10月17日(2005.10.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】門脇 一則
【氏名】木谷 勇
個別代理人の代理人 【識別番号】100119367、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 理
審査官 【審査官】高橋 学
参考文献・文献 特開平11-276842(JP,A)
特開平11-251879(JP,A)
調査した分野 H01T 1/00-23/00
A61L 9/16
B01D 53/32
B01J 19/08
特許請求の範囲 【請求項1】
伝送線路と、伝送線路を充電する直流電源と、伝送線路を構成する2つの導体同士を片側において短絡させる短絡スイッチと、他端側においてをそれぞれの導体に接続された放電用電極およびこれに対向する電極と、他端側において導体間に接続された絶縁材料を有し、短絡スイッチによって導体同士を片側において短絡させてもう片側における導体間の電界の方向を反転させるとともに、絶縁材料によって放電用電極より対向する電極へ向けた放電空間の電界強度を充電電圧による電界強度より強めるようになし、パルス放電を発生させる放電発生装置。
【請求項2】
前記伝送線路に同軸ケーブルが用いられていて、前記電放電用電極およびこれに対向する電極の間に絶縁材料が挿入されている請求項1に記載の放電発生装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガスや排水中に含まれる有害物質の分解を簡易かつ高効率で行うために用いられる放電発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所、工場、ディーゼル車などから出される排気ガスや、排水中に含まれる様々な有害物質の分解あるいは微生物の死滅を目的として、放電を利用した乾式の分解処理方法が実用化されている。放電により有害物質を効率よく分解するには、電子温度のみが高く分子温度は低いといういわゆる非平衡プラズマ状態を作り出すことが重要である。定常的に非平衡プラズマ状態を維持するのは難しいため、ナノ秒領域で急激な電界の変化を引き起こす高電圧パルスを繰り返し印加するという方法が検討され、その有効性は既に認められている。
【0003】
従来のパルス電圧発生装置の場合、装置に蓄積されたエネルギーを、1回のスイッチング動作で短時間の内に取り出すことにより、1発の高電圧パルスが放電電極に印加される。そのため、放電の発生周期を高めるためには、スイッチング周波数の向上が必要不可欠であった。スイッチング周波数を向上させるためには、モータと連結したスイッチを高速回転させることによりオンオフの動作を高速で繰り返す方法がよく用いられてきた。また最近では、高速サイリスタ素子を用いた高電圧用半導体スイッチを適用することにより、スイッチング周波数を飛躍的に早くする方法が開発され、実用化に至っている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】
安井、「パルスコロナ放電による排ガス処理技術」、電気学会誌、Vol.119-A、No.5、pp.274-277(1999)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
半導体スイッチを用いることによりスイッチング周波数は高まるものの、装置を使用する現場での保守および管理が難しくなるため、装置の汎用性が乏しくなる本発明者が解決しようとする課題は、単純な構造でありながらパルス電圧を発生させることが可能であり、強い放電を発生することができ、かつ保守管理の容易な汎用性に富んだ放電発生装置を開発することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するために、以下に示す(1)から(4)のように構成した放電発生装置を提供するものである。
(1) 充電された伝送線路の片側において線路を構成する2つの導体同士を短絡させると、もう片側における導体間の電界の方向が反転するという原理を用いて、パルス放電を発生させる放電発生装置。
(2) (1)に記載の伝送線路に同軸ケーブルが用いられていることを特徴とする放電発生装置。
(3) 伝送線路の特性インピーダンスよりも、短絡部のインピーダンスが小さいことを特徴とする(1)または(2)に記載の放電発生装置。
(4) 伝送線路の他端部側(短絡部でない側)に放電用電極が接続されており、該放電用電極から進展する放電により、放電の広がる空間に存在する物質の化学反応もしくは形状変化を促進させることを目的として使用される(1)ないし(3)のいずれかに記載の放電発生装置。
(5) 伝送線路の他端部側(短絡部でない側)に放電用電極が接続されており、該放電用電極から進展する放電により、放電の広がる領域に存在する微生物の死滅を目的として使用される(1)ないし(3)のいずれかに記載の放電発生装置。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係るひとつの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1にパルス放電発生装置の構成を示すと共に、放電の繰り返し状態を調べるための光学系の構成を示す。図1において放電発生装置のひとつの実施形態として、伝送線路111、短絡用スイッチ112、直流電源113、高抵抗114(50MΩ)、放電用電極115、短絡防止用絶縁板116、ガラス製放電管117、電圧波形観測用プローブ118が用いられた。なお、図1に記載されている放電観測用光学系121は、本発明に基づく放電発生装置の有効性を確認するために配置されたものである。したがってこれら光学系の種類、その相対配置などはこの発明における必須の構成要件ではない。
【0008】
直流電源113により伝送線路111は充電され、線路の導体間電圧は上昇する。この状態から、短絡用スイッチ112を投入した直後に電圧プローブ118にて測定されたパルス電圧波形を図2に示す。この時の充電電圧は-20kVであった。図2のグラフにおける時間0ナノ秒の時点で短絡がなされており、それから170ナノ秒後に開放端電圧の最初の反転が起き、その後350ナノ秒の周期で反転を繰り返した。最初の反転における立ち上がり時間は20ナノ秒であった。また、繰り返し数の増大にともない立ち上がり時間は遅くなる傾向にあるものの、非平衡プラズマを引き起こすには十分な早さを有するパルス電圧が繰り返し印加されていることがわかった。
【0009】
本実施例においては、伝送線路として特性インピーダンス52Ωの同軸ケーブル(最大外径22mm、長さ35m)を用いたが、これ以外にも平行平板よりなるストリップ線路などを用いることもできる。
【0010】
本実施例における短絡用スイッチ112は、円筒形の金属容器およびその中に納められた球対球ギャップを主たる構成要素とした。ギャップ間の距離は可変であり、充電後にギャップ間の距離を縮めることにより火花放電を起こして短絡させた。充電用の電源としては、本実施例のように直流電源を用いても良いが、これに限らず例えば正弦波交流電源を用いることもできる。交流電圧を印加する場合には、正弦波電圧が正負それぞれの最大値付近に到達する各位相において短絡が起きるように、ギャップ間の距離や充電回路の時定数を調節することにより、正弦波電圧の周波数に等しい周期でのスイッチングが行われた。金属容器内には、その内部の雰囲気が調節可能なように排気弁120が取り付けられており、乾燥した空気や六フッ化硫黄などのガスを封入することにより安定したスイッチング特性を得ることができた。なお、充電された伝送線路を短絡する方法としては、これ以外にも回転機に取り付けられた電極が円運動を繰り返しながら充電と短絡を繰り返す方法も可能である。
【0011】
同軸ケーブルの中心導体に接続された放電用電極115としては、針電極のような突起を有するものがよく、櫛形電極、刀状電極、線上電極、のこぎり状電極等を用いることもできる。針電極から伸びるストリーマ放電は、針電極と対向する下部電極に向かって伸びてゆくが、この時に電極間が閃絡すると正の反射が生じないので、これを防止するために電極間に絶縁板が挿入された。さらに本実施例においては、下部電極側に電位調節用スイッチ119が取り付けられた。このスイッチの切り替えにより下部電極の電位は、接地電位あるいは直流電源113の出力電圧のどちらかと等しくすることができる。下部電極を接地した場合、電極間電圧の時間変化は図2の波形と等しくなるため、正負のパルス電圧が交互に印加されることになる。下部電圧を接地することの利点は、充電中に電極間に形成される直流電界により引き起こされるコロナ放電がガス中の粉塵、有害ガスあるいは微生物等を帯電せしめ、それらに作用する静電気力により絶縁板上に捕獲することができる点である。電圧が反転した瞬間、これらのイオン性物質はいわゆるヘテロ空間電荷として振舞うために放電空間の電界強度を高める方向に作用する。この空間電荷効果により、波高値が同程度の単一パルス電圧を印加した場合よりも強い放電を得ることが可能となる。しかも絶縁板表面に到達した放電はイオン化した有害物質の堆積する領域に沿って進展するため、充電中に捕獲された有害物質が効率よく放電に曝されるという効果も有する。一方、下部電極の電位を充電電圧と等しくしておけば、ケーブル充電中における針電極と下部電極間の電位差は無くなるものの、短絡直後に電極間に印加される電圧パルスの波高値は充電電圧の2倍となるため、この場合も強い放電を得ることができる。
【0012】
本実施例においては、絶縁板としてポリテトラフロロエチレン板を用いたが、装置の寿命を延ばすためには絶縁劣化の少ない無機絶縁材料を用いるのが好ましいことは公知であり、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン等の金属酸化物よりなる成形品を用いても良い。さらにこれらの絶縁板に白金等の光触媒効果を有する物質を坦持させてもよい。
【0013】
図3は図1に記載の光学系を用いて、空気中における放電の初期発光像を観測した結果である。電圧が-15kVから15kVに反転した時、3cmの電極間を伸びる放電を反転開始から50ナノ秒間撮影したものを図3(a)に示し、絶縁板上に針電極先端を近づけた状態のもとで電圧が-15kVから15kVに反転した時、絶縁板上に広がる沿面放電を反転開始から30ナノ秒間撮影したものを図3(b)に示す。いずれの場合も、わずか数十ナノ秒の間に放電が広い範囲に伸びていることを示している。
【0014】
-20kVにて充電された状態のもとでスイッチを短絡した時に、ギャップ長3cmの空間を伸びる放電の繰り返し発光を光電子増倍管にて観測した結果を図4(a)に示すと共に、-25kVにて充電された状態のもとでスイッチを短絡した時に、絶縁板上の針電極先端から広がる沿面放電の繰り返し発光を光電子増倍管にて観測した結果を図4(b)に示す。各グラフにおいて、光信号波形が負の電圧を示している時点で発光が起きている。図4(b)にて顕著なように、1回のスイッチングで放電が繰り返し起きることが確認された。また発光の周期は350ナノ秒であり、これは同軸ケーブル内を進行波が往復する時間に等しい。この結果は、短絡部で負の反射が起きる一方で、放電電極側では正の反射が起きているため、進行波が往復するたびに放電電極の電位が反転していることを証明している。繰り返し数を増やすには、充電エネルギーに対する1回の放電で消費されるエネルギーの比率を小さくすればよい。具体的にはケーブル長を長くする、ケーブルを並列にする、充電電圧を大きくするなどの対処をとることができる。
【0015】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、電極間の放電空間の電界強度を充電電圧による電界強度より強めることにより強い放電を発生させることができる
【図面の簡単な説明】
【図1】放電発生装置を示す構成図である。
【図2】1回のスイッチングにより正負のパルス電圧が交互に印加されていることを示すグラフである。
【図3】放電電極からストリーマ放電が伸びていることを示す写真である。
【図4】放電が繰り返し起きていることを示す光信号のグラフである。
【符号の説明】
111 伝送線路
112 短絡用スイッチ
113 直流電源
114 抵抗
115 放電用電極
116 絶縁板
117 放電管
118 電圧プローブ
119 電位調節用スイッチ
120 排気弁
121 放電観測用光学系
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3