TOP > 国内特許検索 > 細胞死誘導ペプチド、MAP化細胞死誘導ペプチド、細胞死誘導剤及び抗癌剤 > 明細書

明細書 :細胞死誘導ペプチド、MAP化細胞死誘導ペプチド、細胞死誘導剤及び抗癌剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5034005号 (P5034005)
公開番号 特開2007-223958 (P2007-223958A)
登録日 平成24年7月13日(2012.7.13)
発行日 平成24年9月26日(2012.9.26)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
発明の名称または考案の名称 細胞死誘導ペプチド、MAP化細胞死誘導ペプチド、細胞死誘導剤及び抗癌剤
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
C07K  17/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07K 7/06 ZNA
C07K 17/00
A61K 37/02
A61P 43/00 111
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 19
出願番号 特願2006-048016 (P2006-048016)
出願日 平成18年2月24日(2006.2.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年8月25日社団法人日本生化学会発行の「生化学第77巻第8号・臨時増刊号第781ページ」に発表
特許法第30条第1項適用 平成17年10月20日神戸国際展示場で開催された社団法人日本生化学会主催の「第78回日本生化学会大会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成18年1月18日発行の「FEBS Lett. 580(2006)885-889」に電気通信回線を通じて発表
審査請求日 平成21年2月23日(2009.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】本多 裕之
【氏名】大河内 美奈
【氏名】加藤 竜司
【氏名】中西 麻里
個別代理人の代理人 【識別番号】100097733、【弁理士】、【氏名又は名称】北川 治
審査官 【審査官】戸来 幸男
参考文献・文献 特開2005-306762(JP,A)
特開2005-053855(JP,A)
化学工学会年会研究発表講演要旨集,2005年,2005, vol.70,p.303[G202]
化学工学会秋季大会研究発表講演要旨集,2005年,vol.37,p.F201-202
日本生物工学会大会講演要旨集,2004年,p.69[1pC16-5]
中部化学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集,2004年,vol.35,p.40[1F07], [1F08]
調査した分野 C07K 7/00-7/66
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(3)、(4)、(6)及び(7)のいずれかのアミノ酸配列からなる細胞死誘導ペプチドを有効成分とすることを特徴とする細胞死誘導剤。
(3)GIACFLKE
(4)ACFLKEDD
(6)SPCWQVKW
(7)CWQVKWQL
【請求項2】
前記細胞死誘導ペプチドが可溶化状態のものであり、あるいはそのアミノ基又はカルボキシル基において固定化された状態のものであることを特徴とする請求項1に記載の細胞死誘導剤
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の細胞死誘導ペプチドの1種又は2種以上をMAP(Multiple Antigenic Peptide)化したものであるMAP化細胞死誘導ペプチドを有効成分とすることを特徴とする細胞死誘導剤
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の細胞死誘導ペプチド、及び、請求項3に記載のMAP化細胞死誘導ペプチドを有効成分とすることを特徴とする細胞死誘導剤
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の細胞死誘導ペプチド、及び/又は、請求項3に記載のMAP化細胞死誘導ペプチドを有効成分とすることを特徴とする抗癌剤
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞死誘導ペプチド、MAP化細胞死誘導ペプチド、細胞死誘導剤及び抗癌剤に関し、更に詳しくは、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンドTRAIL(TNF-related apotosis inducing ligand)の細胞外ドメインのアミノ酸配列に由来して、又はその配列に関する知見に基づいて発明された細胞死誘導ペプチドと、この細胞死誘導ペプチドをMAP化したMAP化細胞死誘導ペプチドと、これらの細胞死誘導ペプチド及び/又はMAP化細胞死誘導ペプチドを有効成分とする細胞死誘導剤及び抗癌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
TRAILは、TNFファミリーに属するサイトカインであり、281個のアミノ酸からなる2型膜透過性のタンパク質である。このTRAILは例えば下記の非特許文献1において報告されているように、受容体(デスレセプター)を介して癌細胞にアポトーシスを誘導する。しかも、TRAILは正常細胞には余り影響を及ぼさない。
【0003】

【非特許文献1】Wilev et al., Immunity, 3:673-682(1995), Pitti etal., J. Biol. Chem., 271:12697 従って、TRAILは副作用のない癌治療に利用できることが考えられ、例えば下記の非特許文献に例示されるように、癌治療、免疫疾患等に関連した研究が進められている。
【0004】

【非特許文献2】Garber, K., Arbor, A., Nat. Biotech., 23, 409-411(2005) しかし、TRAILの受容体との結合様式はまだ詳細に解明されてはおらず、その安定した大量生産プロセスもまだ未開発である。
【0005】
一方、一般的に、タンパク質そのものに比べてペプチドのような小さい分子の方が生体吸収性が高く、標的化分子や他の薬剤分子による化学的修飾が簡便であることが知られている。又、ペプチドは、タンパク質と比較して、低分子でありながら生体内において様々な生理活性を有する。多くの生体ホルモンやサイトカインの他、抗菌性ペプチドや、細胞接着性ペプチドなど、多くの機能を持つペプチドがこれまで報告されている。又、ペプチドの有機合成化学は非常に発展しており、薬剤として安定供給が可能である。
【0006】
従来、抗菌活性、細胞接着の促進、アポトーシスや、その他のタンパク質活性阻害剤等、細胞機能性ペプチドの多くの研究例がある。しかし、短いペプチドであって細胞障害性を有するペプチドの報告例は、下記の非特許文献3や非特許文献4が挙げられるとしても、非常に少ない。更に、そのような活性を有するペプチドであっても、ペプチド末端が固定化された状態で活性を保持するものは報告がなかった。
【0007】

【非特許文献3】Buckley CD, et al., RGD peptides induce apoptosisby direct caspase-3 activation., "Nature", (UK), 1999, Vol.397(6719)p.534-9
【非特許文献4】Terui Y, et al., NH2-terminal pentapeptide ofendothelial interleukin 8 is responsible for the induction ofapoptosis in leukemic cells and has an antitumor effect in vivo.,"Cancer Res.", 1999, Vol.59(22), p.5651-5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、細胞死誘導ペプチド及びこのようなペプチドを多量体化したMAP化細胞死誘導ペプチドを提供すること、更には、これらのペプチドを有効成分とする細胞死誘導剤及び抗癌剤を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【0009】
本願発明者は、TRAILにおける受容体との相互作用部位である細胞外ドメインのアミノ酸配列を部分重複的に網羅したペプチドライブラリーを構築した。そしてこれらのペプチドについて、白血病細胞の細胞死誘導性の検定を通じて細胞死誘導ペプチドのスクリーニングを行い、複数の有力な細胞死誘導ペプチドを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列におけるアミノ酸番号39~281の領域から選ばれる連続した4~12個のアミノ酸からなるペプチドであって、以下の(a)及び(b)に該当する、細胞死誘導ペプチドである。
(a)SNLHLの内の連続した3個以上のアミノ酸を含まない。
(b)当該ペプチドを固定化したチップ上での48時間の細胞培養による細胞死誘導検定後の生細胞数測定平均値が、コントロールとしてのペプチド非固定化チップ上での同一検定後の生細胞数測定平均値の80%以下である。
【0012】
なお、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列はTRAILのアミノ酸配列であって、その内、アミノ酸番号39~281の領域は細胞外ドメインである。
【0013】
第1発明の細胞死誘導ペプチドは、ペプチド固定化チップ上での細胞死誘導検定において、コントロールであるペプチド非固定化チップ上での同一検定の場合に比較して、生細胞数測定平均値が80%以下であると言う有意な細胞死誘導性を示す。従って、ペプチドドラッグとしての細胞死誘導剤や抗癌剤の有効成分として、十分に利用できると考えられる。又、これらの細胞死誘導ペプチドは新薬リード化合物としても有用である。
【0014】
又、前記したように、TRAILは正常細胞には余り影響を及ぼさないことが知られており、従って、その部分アミノ酸配列からなる第1発明の細胞死誘導ペプチドも、正常細胞には殆ど影響を及ぼさないと考えられる。
【0015】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係るペプチドの生細胞数測定平均値がコントロールの生細胞数測定平均値の70%以下である、細胞死誘導ペプチドである。
【0016】
本発明の細胞死誘導ペプチドとして、ペプチドの生細胞数測定平均値がコントロールの生細胞数測定平均値の70%以下であると言う、特に細胞死誘導活性の高いペプチドも相当数に見出されている。これらの細胞死誘導ペプチドは、とりわけ有効である。このパーセンテージは、更に好ましくは65%以下である。
【0017】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、以下の(1)~(14)のいずれかのアミノ酸配列を有する、細胞死誘導ペプチドである。
(1)YSKSGIAC
(2)KSGIACFL
(3)GIACFLKE
(4)ACFLKEDD
(5)KEDDSYWD
(6)SPCWQVKW
(7)CWQVKWQL
(8)QVKWQLRQ
(9)KWQLRQLV
(10)LRNGELVI
(11)NGELVIHE
(12)KENTKNDK
(13)NTKNDKQM
(14)KNDKQMVQ
第3発明に規定する上記(1)~(14)のいずれかの細胞死誘導ペプチドのアミノ酸配列は、いずれも配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列におけるアミノ酸番号39~281の領域から見出されたものである。後述の実施例において述べるように、これらの細胞死誘導ペプチドは、いずれも第1発明の(b)に該当する細胞死誘導活性が具体的に確認されている。
【0018】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第3発明に係る(1)~(14)のいずれかのアミノ酸配列において任意の1個又は2個のアミノ酸が置換・欠失・又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、当該ペプチドを固定化したチップ上での48時間の細胞培養による細胞死誘導検定後の生細胞数測定平均値が、コントロールとしてのペプチド非固定化チップ上での同一検定後の生細胞数測定平均値の80%以下である、細胞死誘導ペプチドである。
【0019】
任意の機能を有するタンパク質やペプチドのアミノ酸配列において、あるいは任意の機能を有する遺伝子等の塩基配列において「配列のゆらぎ」として一般的に見られるように、上記の第3発明に係る細胞死誘導ペプチドに関しても、そのアミノ酸配列中の任意の1個又は2個のアミノ酸が置換・欠失・又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ機能同等である多数の細胞死誘導ペプチド群が存在する。
【0020】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、1個以上のCを含む4~12個のアミノ酸からなり、かつ、前記Cのカルボキシル末端側には芳香族アミノ酸が結合している、細胞死誘導ペプチドである。
【0021】
TRAILの細胞外ドメインのアミノ酸配列中には合計3個のC(システイン:Cys )が含まれるが、これらのCはいずれも第3発明において前記した典型的に有効な細胞死誘導ペプチドの構成要素となっている。しかも、前記3個のCのカルボキシル末端側には、いずれの場合にも芳香族アミノ酸(F:Phe 又はW:Trp )が結合している。そのため、未だ実験的に確認していないが、細胞死誘導ペプチドにおいては、システイン残基とそのカルボキシル末端側に結合した芳香族アミノ酸とを含むことが細胞死誘導性の重要な要素の1つであると考えることが、一層合理的である。
【0022】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係る細胞死誘導ペプチドにおいて、前記芳香族アミノ酸のカルボキシル末端側には、任意の種類の1個又は2個のアミノ酸を介してKが結合している、細胞死誘導ペプチドである。
【0023】
上記した第5発明に関して、前記Cのカルボキシル末端側に結合した芳香族アミノ酸に対して、そのカルボキシル末端側には、いずれの場合にも任意の種類の1個又は2個のアミノ酸を介してK(リシン:Lys )が結合している。そのため、未だ実験的に確認していないが、細胞死誘導ペプチドにおいては、システイン残基と、そのカルボキシル末端側に結合した芳香族アミノ酸と、任意の種類の1個又は2個のアミノ酸を介してリシンが結合すると言うアミノ酸配列部分を含むことが細胞死誘導性の重要な要素の1つであると考えることが、特に合理的である。
【0024】
(第7発明)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第1発明~第6発明のいずれかに係る細胞死誘導ペプチドが可溶化状態のものであり、あるいは、そのアミノ基又はカルボキシル基において固定化された状態のものである、細胞死誘導ペプチドである。
【0025】
上記した第1発明~第6発明のいずれかに係る細胞死誘導ペプチドは、可溶化状態(遊離状態)であっても、N末端側又はC末端側が固定化された状態であっても、有効な細胞死誘導活性を示す。固定化とは、ベースとなる任意の化合物や材料に対する化学的結合又はこれに準ずる状態の固定化を言う。固定化された細胞死誘導ペプチドが有効である点から、次に述べるMAP化細胞死誘導ペプチドの発明が成立する。
【0026】
(第8発明)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、第1発明~第6発明のいずれかに係る細胞死誘導ペプチドの1種又は2種以上をMAP化したものである、MAP化細胞死誘導ペプチドである。
【0027】
ここに「MAP」とは、「Multiple Antigenic Peptide」のことであり、細胞死誘導ペプチドの複数の単位を相互に化学結合させたものを言う。MAP化細胞死誘導ペプチドにおいては、同一種類の細胞死誘導ペプチドを複数結合させても良いし、2種以上の異なる細胞死誘導ペプチドを複数結合させても良い。
【0028】
MAP化細胞死誘導ペプチドにおいては、細胞死誘導ペプチドが細胞に対して高密度に作用するので、実施例において確認されているように、細胞死誘導活性を一層向上させることができる。
【0029】
MAP化の形態としては、例えば、塩基性アミノ酸における複数のアミノ基にそれぞれ細胞死誘導ペプチドのカルボキシル基を結合させることにより、又は、酸性アミノ酸における複数のカルボキシル基にそれぞれ細胞死誘導ペプチドのアミノ基を結合させることにより、細胞死誘導ペプチドが各枝を構成するMAP化形態を例示できる。1個の塩基性アミノ酸又は酸性アミノ酸により1個の分枝部分を構成できるから、これらを直列式に2段階に結合させれば2段階の分枝部分を構成でき、結果的に合計4個の細胞死誘導ペプチドを分枝状にMAP化させることができる。
【0030】
又、下記の非特許文献5に開示された方法に従い、細胞死誘導ペプチドをパルミチン酸等の脂質と結合させたもとでリポソームに取り込ませ、抗癌剤等としてより有効な親油性(細胞親和性)のMAP化細胞死誘導ペプチドとすることもできる。
【0031】
<nplcit num="5"><text>FEBS Lett. 2003; 540(1-3): 133-40.Liposome entrapment and immunogeni studies of a synthetic lipophilicmultiple antigenic peptide bearing VP1 and VP3 domains of thehepatitis A virus: a robust method for vacccine design. Haro I, et al. 更に、任意のベース材料に固定化された細胞死誘導ペプチドも細胞死誘導活性を維持することから、例えばチップ基板に多数の細胞死誘導ペプチドを固定化させ、あるいはmm~μmオーダーの微小なベース材粒子(例えば粘度鉱物粒子)に多数の細胞死誘導ペプチドを固定化させた形態のMAP化細胞死誘導ペプチドとすることもできる。官能基を備える有機高分子材料の当該官能基に対して多数の細胞死誘導ペプチドを固定化させた形態のMAP化細胞死誘導ペプチドとすることもできる。</text></nplcit>
【0032】
(第9発明)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、第1発明~第7発明のいずれかに係る細胞死誘導ペプチド、及び/又は、第8発明に係るMAP化細胞死誘導ペプチドを有効成分とする、細胞死誘導剤である。
【0033】
(第10発明)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、第1発明~第7発明のいずれかに係る細胞死誘導ペプチド、及び/又は、第8発明に係るMAP化細胞死誘導ペプチドを有効成分とする、抗癌剤である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によって、血球系癌細胞等の癌細胞に対して有効な細胞死誘導ペプチドが提供される。これらの細胞死誘導ペプチドは、可溶化状態だけでなく固定化状態においても有効な細胞死誘導活性を示すので、種々の機能性材料等への応用が可能であり、応用範囲が広い。又、本発明によって更に効果の高いMAP化細胞死誘導ペプチドが提供される。これらの細胞死誘導ペプチドやMAP化細胞死誘導ペプチドは、細胞死誘導剤や抗癌剤の有効成分として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0036】
〔細胞死誘導ペプチドのスクリーニング〕
本願発明者は、細胞死誘導活性を有するペプチドを同定するための手法として、ハイスループットコンビナトリアルケミストリーにおいてペプチドチップを使用した。この方法は、新規な生理活性を持つペプチドのスクリーニングに有用であり、チップ上での細胞培養を可能にする。
【0037】
細胞死誘導ペプチドのスクリーニング対象として、配列表の配列番号1に示すTRAILにおける細胞外ドメイン(アミノ酸番号39~281の領域)のアミノ酸配列を対象として、細胞死誘導部位の探索を行った。探索に当たり、細胞外ドメインの全領域を網羅するように、8残基のアミノ酸からなるペプチドのライブラリーを構築した。ライブラリーを構成する各ペプチドは、その両端の2残基のアミノ酸が、配列中において両側に隣接するアミノ酸配列をカバーするペプチドと互いに2残基ずつのアミノ酸が重複するように(即ち、2残基ずつ順次ズラして)設定した。
【0038】
その結果、前記第3発明の(1)~(14)に列挙するアミノ酸配列を有するペプチドがガン細胞に対して高い細胞死誘導活性を示すことを見出した。これらの細胞死誘導ペプチドはチップ上への固定化状態において、及び、可溶化状態において、高い細胞死誘導活性を示した。MAP化細胞死誘導ペプチドとして固定化された状態では、同時に作用するペプチドの密度が高いため、特に強い細胞死誘導活性を示す。
【0039】
上記(1)~(14)に列挙するアミノ酸配列を有するペプチドは、いずれも、当該ペプチドを固定化したチップ上での48時間の細胞培養による細胞死誘導検定後の生細胞数測定平均値が、コントロールとしてのペプチド非固定化チップ上での同一検定後の生細胞数測定平均値の80%以下である。
【0040】
上記の細胞死誘導ペプチドは互いに末端の2残基ずつのアミノ酸が重複するように設定されたものであり、しかも特定の数残基のアミノ酸を共通して包含する細胞死誘導ペプチドが幾つも見出されている。このため、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列におけるアミノ酸番号39~281の領域から選ばれる連続した4~12個のアミノ酸からなるペプチドであって、以下の(a)及び(b)に該当する細胞死誘導ペプチドも提案することができる。
(a)SNLHLの内の連続した3個以上のアミノ酸を含まない。
(b)当該ペプチドを固定化したチップ上での48時間の細胞培養による細胞死誘導検定後の生細胞数測定平均値が、コントロールとしてのペプチド非固定化チップ上での同一検定後の生細胞数測定平均値の80%以下である。
【0041】
「SNLHLの内の連続した3個以上のアミノ酸を含まない」ことを条件とする理由は、これらの細胞死誘導ペプチドが、特開2005-306762号公報(特願2004-124338号)において既に開示されているためである。
【0042】
以上の第1発明に係る細胞死誘導ペプチド群の内、特に好ましいものとして、上記した細胞死誘導ペプチドの生細胞数測定平均値が、コントロールの生細胞数測定平均値の70%以下であるものを挙げることができる。
【0043】
更に、前記(1)~(14)のいずれかのアミノ酸配列において任意の1個又は2個のアミノ酸が置換・欠失・又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、当該ペプチドを固定化したチップ上での48時間の細胞培養による細胞死誘導検定後の生細胞数測定平均値が、コントロールとしてのペプチド非固定化チップ上での同一検定後の生細胞数測定平均値の80%以下である細胞死誘導ペプチド群も提案することができる。
【0044】
一般的に言えば、上記の「アミノ酸の置換」として、置換されたポリペプチドの活性に対してほとんど影響を有さず、総電荷、疎水性/親水性、及び/又は、置換したアミノ酸の立体的な大きさをほぼ保存するような、いわゆる保存的置換を好ましく例示することができる。
【0045】
更に本願発明者は、第5発明又は第6発明で前記したように、TRAIL由来の細胞死誘導ペプチドにおけるシステイン(C)の役割に注目した。即ち、1個以上のシステインを含む4~12個のアミノ酸からなるペプチドは、有力な細胞死誘導ペプチドである可能性が高い。そのようなペプチドであって、システインのカルボキシル末端側に芳香族アミノ酸が結合しているものは、更に有力な細胞死誘導ペプチドである可能性が高い。しかも、その芳香族アミノ酸のカルボキシル末端側に、任意の種類の1個又は2個のアミノ酸を介してリシン(K)が結合している場合、とりわけ有力な細胞死誘導ペプチドである可能性が高い。
【0046】
本発明の細胞死誘導ペプチドは、例えば固相合成法や液相合成法等の公知の各種ペプチド合成法によって製造することができる。当該ペプチドの一部を構成し得るペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することで目的のペプチドを製造できる。ペプチドの合成には公知の任意の自動合成機を使用しても良い。
【0047】
具体的には、例えばFmoc法を使用して、樹脂に固定したアミノ酸誘導体に1個ずつアミノ酸をカルボキシル末から結合させていく固相合成で合成することができる。Fmoc法では、塩基(例えばピペリジン)で除去できるFmoc基によってα-アミノ基が保護されているペプチド誘導体を使用する。この保護基を除いた後、N,N ‐ジメチルホルムアミド(DMF )等で洗浄して乾燥させ、次の縮合剤(例えば HOBt )でカルボキシル基を活性化させたアミノ酸誘導体(たとえば、HOBtとのエステル)を縮合させる。次いで、DMF 等で洗浄後、次のサイクルのための脱保護を行う。上記サイクルを繰り返して所望の配列の合成ペプチドを得ることができる。
【0048】
こうして得られたペプチドは、リンカーによって末端の位置で樹脂に結合している。又、ペプチドの側鎖には保護基が付いている。次に、この樹脂との結合を切断することによって遊離のペプチドが得ることができる。例えば、還元条件下でトリフルオロ酢酸処理をし、側鎖保護基の脱保護および樹脂からの切断を行えば良い。脱保護及び切断処理後のペプチドは、ジエチルエーテル等で数回洗浄することによって遊離した保護基を除去することができる。又、メンブレンに固定化されたペプチドを得るためには、以下の実施例に記載したようにペプチドを合成し、切断処理を行わずに使用すればよい。
【0049】
本発明の細胞死誘導ペプチドは、これをコードするDNA を導入した形質転換体の培養によっても製造できる。例えば、本発明のペプチドをコードするDNA を適切な発現ベクター内のプロモーターの制御下に組み込み、該ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることにより、本発明のペプチドを発現させることができる。このように発現されたペプチドを精製し単離して使用すれば良い。ペプチドの精製には、公知の分離・精製法を適切に組合わせて採用できる。分離・精製法として、塩析、溶媒沈殿、透析、限外濾過、ゲル濾過、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動を例示できる。
【0050】
得られた細胞死誘導ペプチドは、細胞死誘導活性が損なわれない限り、透析、凍結乾燥を行い、乾燥粉末とすることもできる。又、本発明の細胞死誘導ペプチドはC末端が固定化されていても細胞死誘導活性を有し、従って官能基を有する様々な化合物に結合(修飾)することができ、又、担体に固定化されていてもよい。担体としては、例えば、脂質を利用したリポソーム、糖質デンドリマーを利用した多価ペプチドポリエチレングリコール、無機質のベース材への固定化が挙げられる。
【0051】
又、本発明の細胞死誘導ペプチドはC末端(カルボキシル基)又はN末端(アミノ基)が固定化されていても細胞死誘導活性を有するので、ポリエチレングリコール(PEG)と結合させることによって、PEGハイブリット体とすることもできる。この方法については、下記の非特許文献6を参照されたい。
【0052】
<nplcit num="6"><text>Gene Ther. 2000; 7(11): 1183-92Protective copolymers for nonviral gene vectors: synthesis, vectorcharacterization and application in gene delivery. Finsinger D et al. 放射状に分岐したリシンのデンドリマーからなる小型コア分子を基本構造にして、その上に一連のペプチドを結合させることにより、三次元配座を有する巨大な高分子を作製することができる。このような高分子にデザインすることにより、細胞認識機能が向上する。従って、細胞に(特に、癌細胞に)投与したときの殺細胞効果を増強することができる。</text></nplcit>
【0053】
次に、本発明に係る細胞死誘導剤及び抗癌剤について述べる。これらの細胞死誘導剤及び抗癌剤は上記いずれかの細胞死誘導ペプチド(の1種又は2種以上)、及び/又は、上記いずれかのMAP化細胞死誘導ペプチド(の1種又は2種以上)を有効成分とする。有効成分のみを単独に用いても良く、あるいは薬理学的に許容される担体に固定化又は混合されていても良い。
【0054】
これらの薬剤は、当業者であれば、当該技術分野において既知の方法を使用して、容易に製剤とすることができる。これらの細胞死誘導剤および抗癌剤は経口的又は非経口的(例えば、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
【0055】
本発明の細胞死誘導剤や抗癌剤は、合成高分子を利用したメンブレン、天然高分子を利用したハイドロゲル、ヒドロキシアパタイトのような無機担体に固定化されたペプチド単独であっても良く、担体に固定化されたペプチドを含む製剤としても良い。近年、ペプチドはそれ自身が自己組織化することでゲルを形成することが知られるため、ペプチドそのものをマテリアルとして利用しても良い。これらの態様の場合、細胞死を誘導したい細胞、組織等に直接適用しても良い。
【0056】
本発明の細胞死誘導剤及び抗癌剤の製造に用いられても良い薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機高分子あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば液状製剤における溶剤、溶解補助剤、及び懸濁化剤、あるいは固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤等が挙げられる。更に必要に応じ、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を含むこともできる。
【0057】
賦形剤としては、例えば、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0058】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0059】
崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0060】
溶剤としては、例えばプロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
【0061】
溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン等が例示される。
【0062】
懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0063】
本発明の細胞死誘導剤および抗癌剤において、有効成分(細胞死誘導ペプチド及び/又はMAP化細胞死誘導ペプチド)は、通常、製剤全体に対して約0.1~100重量%、好ましくは約10~99.9重量%、更に好ましくは約20~90重量%程度に配合される。有効成分やその担体以外の成分の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常、製剤全体に対して約10~99.9重量%、好ましくは約20~90重量%程度である。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は実施例によって制約されない。
【0065】
〔実施例の前提〕
ペプチドチップは、非常に高密度で網羅的なチップの作製が可能であり、現在、8000spot/ membraneが可能である。ハイスループットコンビナトリアルケミストリーとして新規生理活性を持つペプチドのスクリーニングに有用であることが期待される。
【0066】
本実施例では、細胞死誘導活性(特に、抗腫瘍性の機能)を有する新規ペプチドの探索手法としてペプチドチップを使用し、腫瘍細胞に対する細胞死誘導活性のスクリーニングを行った。スクリーニング対象として、アポトーシス誘導因子として知られるTRAILの細胞外ドメインのアミノ酸配列(配列表の配列番号1におけるアミノ酸番号39~281の領域)を用いた。
【0067】
〔実施例1〕
TRAILの細胞外ドメインの全領域を網羅し、かつアミノ酸を前記のように2残基ずつ順次ズラして、それぞれ8残基のアミノ酸からなるペプチドを、合計119種類、前記の Fmoc 法で固相合成した。これらのペプチドには、配列表の配列番号1におけるアミノ酸番号の若い方から順に Peptide number (ペプチド試料としての通し番号)を付与した。即ち、Peptide No. 1はアミノ酸番号39~46に相当するアミノ酸配列を持つペプチド、Peptide No. 2はアミノ酸番号41~48に相当するアミノ酸配列を持つペプチド、・・・である。セルロースメンブレンに、固相合成したペプチドのスポットを直径6mmに切り出して、96穴プレートの底面に入れた。
【0068】
無血清培地 RPMI (Gibco )を使用して、Jurkat細胞(ヒトTリンパ球培養細胞) をその上で培養した。細胞濃度2.0×10cell/mLに調整し、プレート1wellに対し100μL入れた。この細胞を、37°C、5%COの条件下、各チップ上で48時間培養した。
【0069】
その後、蛍光試薬により細胞を染色し、Labsystems社製の蛍光プレートリーダー Fluoroskan Ascentを用いて培養後の生細胞及び細胞死の様子を測定した。蛍光試薬には、生細胞数については calcein AM (molecular probes)(測定:励起485nm、蛍光538nm)、細胞死については Cytotoxone (Promega )(測定:励起560nm、蛍光590nm)を使用した。
【0070】
ペプチドチップは、ペプチド自動合成機 ASP 222(Intavis 社製)を使用して、β- アラニンでコートしたセルロースメンブレン上に以下のように作成した。即ち、メンブレン上のβ-アラニンのアミノ基に Fmoc アミノ酸溶液(濃度0.25mol/L)を1.5μLスポッティングし、最初のアミノ基のカルボキシル基をメンブレンに結合させる。洗浄操作の後、次のアミノ酸を Fmoc アミノ酸として反応して固定化させる。以下、順次アミノ酸を結合させて、目的の配列を持つペプチドを合成した。合成したペプチドのC末端部分はメンブレンと結合した状態で固定されている。
【0071】
以上の実施例のプロセスに関し、ペプチドチップの作成について説明する図1、及び実施例の方法について説明する図2を、それぞれ参考に提示する。
【0072】
〔実施例1の結果〕
図3に、ペプチドチップによる増殖阻害活性、即ち細胞死誘導活性の解析結果を示す。図3の横軸は Peptide No.を示す。図3の縦軸は、コントロール(チップ上にペプチドを固定化せずに行った測定例)における蛍光強度の測定値を1とした場合の、各 Peptide No.の比蛍光強度である。実際には各 Peptide No.についてそれぞれ9回の測定を行っており、図3にはそれらの平均値を表記した。又、図3中の上下に挿入した破線は、効果判定の一つの指標として記載したものである。
【0073】
各 Peptide No.の内、相対的に優れた測定値を示した例に係る Peptide No.とそのアミノ酸配列及び測定の平均値と誤差範囲を図4に棒グラフ形式で列挙し、一方で、特に優れた測定値を示した例に係る Peptide No.とそのアミノ酸配列及び測定の平均値と誤差範囲を図5に数値で示した。
【0074】
本願発明者は、実際のところ、比蛍光強度が0.80以下のもの、即ち、当該ペプチドを固定化したチップ上での48時間の細胞培養による細胞死誘導検定後の生細胞数測定平均値が、コントロールとしてのペプチド非固定化チップ上での同一検定後の生細胞数測定平均値の80%以下であるペプチドは、細胞死誘導ペプチドとして実用可能であると考えている。
【0075】
又、実施例1の考察から、第5発明~第7発明に関して前記したように、以下の3点が合理的に推測された。
【0076】
1)1個以上のCを含み、そのCのカルボキシル末端側に芳香族アミノ酸が結合している、4~12個のアミノ酸からなるペプチドが、細胞死誘導ペプチドとして有効に利用できる可能性。
【0077】
2)上記の1)の細胞死誘導ペプチドにおいて、芳香族アミノ酸のカルボキシル末端側に任意の種類の1個又は2個のアミノ酸を介してKが結合しているペプチドが、細胞死誘導ペプチドとしてとりわけ有効に利用できる可能性。
【0078】
〔実施例2〕
実施例1は固定化状態にある細胞死誘導ペプチドについての活性測定であるため、次に、実施例1で効果が確認された幾つかの細胞死誘導ペプチドについて、その可溶化状態における細胞死誘導活性を検定した。
【0079】
簡単に述べると実施例2は次の要領で行った。Jurkat細胞2.0×10cell/mLを含む RPMI 培地(血清有り)に可溶性ペプチドを2mMの濃度で添加し、37°C、5%COのインキュベータで48時間培養した。そして、培養開始から24時間後及び48時間後の細胞を前記蛍光色素 calcein AM により染色し、その蛍光強度により、生細胞数を算出した。
【0080】
実施例2の結果を図6に説明する。図6(a)は、ペプチドチップ上で比蛍光強度が低下した配列のものについて行った例であって、アミノ酸配列を表示した3種類の細胞死誘導ペプチドについての測定結果を示す。図6(a)の右端部分に表記したように、「no peptide」とはペプチド無添加のコントロールを意味している。又「1mM,2mM,0.1mM」とは、上記の実施例2の実施要領における RPMI 培地中に、可溶性ペプチドを、それぞれ表示した濃度に添加した例を意味している。又、「TRAIL 」とは、図6(a)に示す三つの図の下部に表記したアミノ酸配列を有する細胞死誘導ペプチドの添加例を示し、その添加濃度は2mM,1mM,0.1mMである。更に、図6(a)に示す三つの図について、横軸は培養開始後の経過時間を、縦軸は生存している(増殖した)細胞数のカウント結果である。
【0081】
次に、図6(b)は、細胞死の見られなかったペプチド(RERGPQRV)について行った例であって、図の見方は図6(a)と同様であるが、図6(b)の「TRAIL 」は、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンドである。
【0082】
図6(a)から、本発明の細胞死誘導ペプチドは可溶化状態においても濃度依存的に細胞死誘導活性を示すことが分かる。
【0083】
〔実施例3〕
図7に示す4種類のペプチドを用い、Jurkat細胞1.0×10cell/mLを含む RPMI 培地(血清有り)に可溶性ペプチドを2mMの濃度で添加し、37°C、5%COの条件下で24時間培養した後に、前記 Cytotoxone を添加し、10分間インベートした。次に反応停止液を加えて10秒間攪拌してから560nmの励起で590nmの蛍光を測定し、死細胞の放出するLDHを測定した。なお「No peptide」とは、上記において Jurkat の培地にペプチドを添加しなかった例である。
【0084】
図7の結果から、ペプチドによって細胞増殖が抑制されているのではなく、積極的に細胞死が誘導されていることが分かる。
【0085】
〔実施例4〕
図8(b)に示すMAP化細胞死誘導ペプチド(Lys 残基の側鎖によって枝別れをしたMAP)を合成した。MAPに用いられた4単位の細胞死誘導ペプチドのアミノ酸配列も、図8(b)に示されている。一方、これと同じ細胞死誘導ペプチドを直鎖状に多量体化したものも合成した。
【0086】
これらを用いて前記の実施例2と同様の検定を行い、図8(a)に示す結果を得た。図8(a)の見方は図6の場合と同様である。又、図8(a)において、「MAP(0.5mM)」とあるのは上記の枝別れをしたMAPを0.5mM添加した例を意味する。「linear」は上記の直鎖状に多量体化したペプチドを意味する。又、「TRAIL 」は、100ng/mL濃度に添加した結果を示す。
【0087】
図8から分かるように、「TRAIL 」と「MAP(0.5mM)」がほぼ同等の強い細胞死誘導活性を示している。そして両者のモル濃度を考慮した場合、分枝状のMAPが、直鎖状の細胞死誘導ペプチドに比較して、実質的に細胞死誘導活性が大きく増強されていることが分かる。
【0088】
〔実施例全体の評価〕
上記の各実施例の結果から、本発明の細胞死誘導ペプチド及びMAP化細胞死誘導ペプチドは、癌細胞に対する有効な細胞死誘導活性を有することが明らかとなった。従って、癌細胞を殺滅するペプチド医療への応用の可能性があり、又、本研究によって確立したスクリーニング法を用いた更なる有用な細胞死誘導ペプチドの発見が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本願発明によって、癌細胞に対する有効な細胞死誘導活性を有する細胞死誘導ペプチド及びMAP化細胞死誘導ペプチドと、これらを有効成分とする細胞死誘導剤及び抗癌剤が提供される。

〔配列表〕
SEQUENCE LISTING
<110> National University Corporation Nagoya University
<120> 細胞死誘導ペプチド、MAP化細胞死誘導ペプチド、細胞死誘導剤及び抗癌剤
<130> POK-05-028
<160> 17

<210> 1
<211> 281
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 1
Met Ala Met Met Glu Val Gln Gly Gly Pro Ser Leu Gly Gln Thr Cys 16
Val Leu Ile Val Ile Phe Thr Val Leu Leu Gln Ser Leu Cys Val Ala 32
Val Thr Tyr Val Tyr Phe Thr Asn Glu Leu Lys Gln Met Gln Asp Lys 48
Tyr Ser Lys Ser Gly Ile Ala Cys Phe Leu Lys Glu Asp Asp Ser Tyr 64
Trp Asp Pro Asn Asp Glu Glu Ser Met Asn Ser Pro Cys Trp Gln Val 80
Lys Trp Gln Leu Arg Gln Leu Val Arg Lys Met Ile Leu Arg Thr Ser 96
Glu Glu Thr Ile Ser Thr Val Gln Glu Lys Gln Gln Asn Ile Ser Pro 112
Leu Val Arg Glu Arg Gly Pro Gln Arg Val Ala Ala His Ile Thr Gly 128
Thr Arg Gly Arg Ser Asn Thr Leu Ser Ser Pro Asn Ser Lys Asn Glu 144
Lys Ala Leu Gly Arg Lys Ile Asn Ser Trp Glu Ser Ser Arg Ser Gly 160
His Ser Phe Leu Ser Asn Leu His Leu Arg Asn Gly Glu Leu Val Ile 176
His Glu Lys Gly Phe Tyr Tyr Ile Tyr Ser Gln Thr Tyr Phe Arg Phe 192
Gln Glu Glu Ile Lys Glu Asn Thr Lys Asn Asp Lys Gln Met Val Gln 208
Tyr Ile Tyr Lys Tyr Thr Ser Tyr Pro Asp Pro Ile Leu Leu Met Lys 224
Ser Ala Arg Asn Ser Cys Trp Ser Lys Asp Ala Glu Tyr Gly Leu Tyr 240
Ser Ile Tyr Gln Gly Gly Ile Phe Glu Leu Lys Glu Asn Asp Arg Ile 256
Phe Val Ser Val Thr Asn Glu His Leu Ile Asp Met Asp His Glu Ala 272
Ser Phe Phe Gly Ala Phe Leu Val Gly 281

<210> 2
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 2
Tyr Ser Lys Ser Gly Ile Ala Cys 8

<210> 3
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 3
Lys Ser Gly Ile Ala Cys Phe Leu 8

<210> 4
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 4
Gly Ile Ala Cys Phe Leu Lys Glu 8

<210> 5
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 5
Ala Cys Phe Leu Lys Glu Asp Asp 8

<210> 6
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 6
Lys Glu Asp Asp Ser Tyr Trp Asp 8

<210> 7
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 7
Ser Pro Cys Trp Gln Val Lys Trp 8

<210> 8
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 8
Cys Trp Gln Val Lys Trp Gln Leu 8

<210> 9
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 9
Gln Val Lys Trp Gln Leu Arg Gln 8

<210> 10
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 10
Lys Trp Gln Leu Arg Gln Leu Val 8

<210> 11
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 11
Leu Arg Asn Gly Glu Leu Val Ile 8

<210> 12
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 12
Asn Gly Glu Leu Val Ile His Glu 8

<210> 13
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 13
Lys Glu Asn Thr Lys Asn Asp Lys 8

<210> 14
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 14
Asn Thr Lys Asn Asp Lys Gln Met 8

<210> 15
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 15
Lys Asn Asp Lys Gln Met Val Gln 8

<210> 16
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 16
Ser Ala Arg Asn Ser Cys Trp Ser 8

<210> 17
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 17
Arg Asn Ser Cys Trp Ser Lys Asp 8

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例1におけるペプチドチップの作成を説明する図である。

【0091】
【図2】実施例1におけるプロセス方法を説明する図である。

【0092】
【図3】実施例1における細胞死誘導活性の解析結果を示す図である。

【0093】
【図4】実施例1におけるペプチドの細胞死誘導活性測定値を棒グラフ形式で示す図である。

【0094】
【図5】実施例1における特に優れた効果を示すペプチドを列挙する図である。

【0095】
【図6】実施例2における可溶化状態のペプチドの細胞死誘導活性を示す図である。

【0096】
【図7】実施例3における細胞死誘導の証拠を示す図である。

【0097】
【図8】実施例4におけるMAP化細胞死誘導ペプチドの効果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7