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明細書 :架橋キトサンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5272168号 (P5272168)
公開番号 特開2007-224090 (P2007-224090A)
登録日 平成25年5月24日(2013.5.24)
発行日 平成25年8月28日(2013.8.28)
公開日 平成19年9月6日(2007.9.6)
発明の名称または考案の名称 架橋キトサンの製造方法
国際特許分類 C08B  37/08        (2006.01)
FI C08B 37/08 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2006-044314 (P2006-044314)
出願日 平成18年2月21日(2006.2.21)
審査請求日 平成21年2月10日(2009.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】馬場 由成
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】三木 寛
参考文献・文献 特開平06-227813(JP,A)
Permeability of silver sulfadiazine through crosslinked chitosan matrixes,Journal of the Korean Chemical Society,KR,1996年,Vol.40(9),p.640-648
馬場由成,キトサンを利用した選択性キレート樹脂の開発 廃水中の貴金属を選択的に回収するキトサン誘導体,水,1995年 6月,vol.37、No.7,16-25
平成15年度 委託研究成果報告 6(詳細版)(産学連携戦略・次世代産業創出事業)分子鋳型によるキトサンの高機能化と金属選択的吸着材への応用,KITEC Inf,2004年 9月,No.211,p.8-12
機能性イオン交換体シリ-ズ 2-3 キトサンおよび化学修飾キトサンの金属イオン吸着・分離特性 その3 ピリジル基,チエニル基およびチオエ-テル基を導入したキトサン誘導体の金属イオン吸着・分離特性,日本イオン交換学会誌,1997年12月,Vol.8 No.4,p.227-234
キトサンおよび化学修飾キトサンの金属イオン吸着・分離特性 その2: オキシン型化学修飾キトサンの金属イオン吸着・分離特性,日本イオン交換学会誌,1997年 9月,Vol.8 No.3,p.180-187
機能性イオン交換体シリ-ズ 2-1 キトサンおよび化学修飾キトサンの金属イオン吸着・分離特性 (その1),日本イオン交換学会誌,1997年 6月,Vol.8 No.2,p.115-121
調査した分野 C08B 37/08
CA/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
キチンと架橋剤とを反応させて架橋キチンを得て、架橋キチンのアセチルアミノ基の脱アセチル化を行なって架橋キトサンを得る工程;及び
架橋キトサンに、2-ピリジンカルボキシアルデヒド、3-ピリジンカルボキシアルデヒド、4-ピリジンカルボキシアルデヒド、2-チオフェンアルデヒドおよび3-チオフェンアルデヒドからなる群より選択されるキレート形成基を有するアルデヒド化合物を反応させてアミノ基にシッフ塩基を形成させ、次いで、シッフ塩基を還元することにより、キレート形成基含有架橋キトサンを得る工程;
を含む、キレート形成基含有架橋キトサンの製造方法。
【請求項2】
前記キレート形成基を有するアルデヒド化合物が2-ピリジンカルボキシアルデヒドである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記架橋剤がエピクロロヒドリンである請求項1または2に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオンの吸着剤として有用な架橋キトサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エビ、カニ等の甲殻類の殻にはカルシウム、天然多糖類であるキチン、タンパク質がほぼ等量づつ含まれている。キチンをアルカリ水溶液中で加熱するとアミノ基を含み反応性に富むキトサンが得られるため、多くの分野で有効利用の研究が進められている。
【0003】
本発明者らは先にキトサンが特定の金属イオンに対して高い選択性を有し、且つ飽和吸着量も相当大きいことを報告している[ Chem,Lett. p.1281(1988)]。これは天然多糖類キトサンの持つ、(1)高い親水性、(2)柔軟性に富んだ骨格構造及び、(3)多くの活性アミノ基の存在、によるものと考えられる。
【0004】
また、本発明者らは酸に安定であり貴金属イオンに対して高い吸着性を示す架橋ピリジルメチルキトサンを報告している(特開平06-227813号公報)。当該公報に記載の架橋ピリジルメチルキトサンは、まずキトサンのアミノ基にキレート形成能を有する官能基を導入し、次いでこれを架橋反応を行なうことにより製造している。
【0005】
しかしながら、キレート形成能を有する官能基の種類によっては、その後のキトサンの架橋反応によって、キトサンのアミノ基と架橋剤が反応し、吸着座を潰し吸着能力を激減させる。そのため、導入できる官能基が制限されたり、あるいは得られる架橋キトサンの金属イオン吸着能が著しく低下する恐れがあるという問題がある。
【0006】

【特許文献1】特開平06-227813号公報
【非特許文献1】Chem, Lett. p.1281(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高い金属イオン吸着能を有する架橋キトサンの容易な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、キチンを出発原料とし、架橋キチンを経由して架橋キトサンを製造することにより当該課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は:
キレート形成基含有架橋キトサンの製造方法であって:
(a)キチンと架橋剤とを反応させて架橋キチンを得て;
(b)架橋キチンのアセチルアミノ基の脱アセチル化を行なって架橋キトサンを得て;
(c)架橋キトサンとキレート形成基を有するアルデヒド化合物とを反応させて、脱アセチル化されたアミノ基にシッフ塩基を形成させ;次いで、
(d)シッフ塩基を還元する;
(e)あるいは、(c)及び(d)の工程に代えて、クロロメチル化物、酸塩化物又はビニル化合物を反応させる;
ことを含むキレート形成基含有架橋キトサンの製造方法である。
【0010】
より詳細には、本発明は以下の発明を包含する。
(1)キチンと架橋剤とを反応させて架橋キチンを得て、架橋キチンのアセチルアミノ基の脱アセチル化を行なって架橋キトサンを得ることを含む架橋キトサンの製造方法。
(2)架橋キトサンにキレート形成基を有するアルデヒド化合物を反応させてアミノ基にシッフ塩基を形成させ、次いで、シッフ塩基を還元することを含むキレート形成基含有架橋キトサンの製造方法。
(3)架橋キトサンにキレート形成基を有するクロロメチル化物、酸塩化物、ビニル化合物のいずれかを反応させることを含むキレート形成基含有架橋キトサンの製造方法。
(4)前記キレート形成基を有するアルデヒド化合物が2-ピリジンカルボキシアルデヒドである前記(2)記載の製造方法。
(5)前記架橋剤がエピクロロヒドリンである前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、工程数が少なく、種々のキレート形成能を有する官能基を導入することができ、高い金属イオン吸着能を有する架橋キトサンを容易に製造する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の製造方法ではキチンを出発物質として用いる。キチンの原料としては特に制限されるものではなく、水産加工場で廃棄されるエビ、カニ等甲殻類の殻から通常の方法により精製されて得られるものでもよいし、化学合成により得られるものでもよい。
本発明の製造方法では、まずキチンの架橋反応を行なって架橋キチンを製造する。
【0013】
【化1】
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【0014】
キチン分子間を架橋する架橋剤は特に限定されるものではないが、例えば、架橋反応における反応性が高く安定した架橋結合を形成するエピクロロヒドリン、グルタルアルデヒド、ジグリシジルエーテル類、ポリグリシジルエーテル類、ジカルボン酸ジグリジリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル類、ジイソシアネート、エチレンジアミン-N,N’-2酢酸、エチレンジアミン-4酢酸、ジチオシアネート等が好ましい。
【0015】
次いで、架橋キチン中のグルコサミン単位の2位のアセチルアミノ基の脱アセチル化を行って架橋キトサン(CLAC)を得る。
【0016】
【化2】
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【0017】
キチンの脱アセチル化によりキトサンを製造する方法はよく知られており、上記架橋キチンの脱アセチル化も通常の方法により行なうことができる。一例を挙げれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を含むアルカリ水溶液中で、0.5~10時間程度加熱することにより行なうことができる。
【0018】
キトサンは中性溶液中では溶解しないが、塩酸その他酸性溶液中ではグルコサミン単位中に含まれるアミノ基と塩を作って溶解する。これに対して、架橋キトサンは強固な架橋構造を有するため酸に溶解せず、また耐アルカリ性も高い。また。ほとんど膨潤することがないのでキレート樹脂のベースとして適している。
【0019】
次に、架橋キトサン(CLAC)とキレート形成能を有する官能基を分子内に有するアルデヒド化合物とを反応させて、脱アセチル化されたアミノ基にシッフ塩基を形成させる。シッフ塩基を形成させる反応条件としては通常のシッフ塩基形成条件でよい。
【0020】
キレート形成能を有する官能基としては、例えば、ピリジル基、チエニル基、カルボン酸、チオカルボン酸、オキシム基、アミドキシム基、スルホン酸、チオール基、リン酸基、ホスホン酸、ヒスチジン基、グアニジン基、ピロール基、エチレンジアミン基、ポリアミン類、イミノ2酢酸基、ジオキシム基、フェノール基、ジオール基、アミド基、アミン類、チオアミド基、チオフェノール基、チオアルコール基、チオアルデヒド基、ジチオカルボン酸、チオシアナート基、チオ尿素基等が挙げられる。このようなキレート形成能を有する官能基を分子内に有するアルデヒド化合物、クロロメチル化物、ブロモメチル化物、酸塩化物等およびビニル化合物であれば全ての化合物が利用できるが、具体例としては、例えば、2-ピリジンカルボキシアルデヒド、3-ピリジンカルボキシアルデヒド、4-ピリジンカルボキシアルデヒド、2-チオフェンアルデヒド、3-チオフェンアルデヒド、カルボキシアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド等がある。また、クロロメチル化物としては、例えば、2-クロロメチルピリジン、2-チオフェンアセチルクロライド、クロロメチルチオフェン、クロロ酢酸、クロロメチルフェノール、クロロメチル安息香酸、クロロアセトン、クロロアセトニトリル、クロロアセトフェノン類等があり、酸塩化物としては、例えば、ピリジンカルボニルクロライド、チオフェンカルボニルなどがある。ビニル化合物としては、例えば、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、ビニルリン酸、ビニルカルボン酸、ビニルアセトフェノン、ビニル安息香酸、ビニルアセトニトリル等がある。また、ピリジンカルボン酸、チオフェンカルボン酸等のカルボン酸誘導体やチオカルボン酸やチオリン酸等のようにチオール基を有する化合物でもホルムアルデヒドを共存させれば、容易に架橋キトサンに固定化することができる。上記アルデヒド化合物、クロロメチル化物、酸塩化物、チオール化物、カルボン酸類、ビニル化合物としては、1種類だけでもよいし、又は2種類以上を用いてもよい。
【0021】
なお、アルデヒド化合物の代わりに、クロロメチル化物、ブロモメチル化物、酸塩化物およびビニル化合物を用いた場合、シッフ塩基の形成及びその還元工程を省くことができるため好ましい。
【0022】
下記に、アルデヒド化合物としてピリジンカルボキシアルデヒドを用いてシッフ塩基を形成する例を示す。
【0023】
【化3】
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【0024】
グルコサミン単位のアミノ基中の上記アルデヒド化合物が結合している比率は特に限定されないが、全アミノ基のうち80%以上、さらには90%以上が結合していることが好ましい。
【0025】
次いで、シッフ塩基を還元剤をもちいて還元することにより架橋キトサン(PMAC)を得ることができる。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム、ヒドラジン等を用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1:架橋キチンの合成
【化4】
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【0028】
キチン110 gをエピクロロヒドリン600 mlとジメチルスルホキシド400 mlの混合溶液に混ぜ、氷浴中3時間撹拌した。そこに0.5N NaOHを600 ml混合した。架橋中に水酸化ナトリウムによる脱アセチル化を防ぐために氷浴中で48時間撹拌して架橋キチンを得た。
【0029】
実施例2:架橋キトサンの合成
【化5】
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【0030】
実施例1で得られた架橋キチンを40 wt%NaOHに混合し、130℃で3時間加熱撹拌した。溶液を中和し、ろ過した後、蒸留水、エタノール、酢酸、HCl、NaOHで洗浄し、最後に蒸留水でpHが中性になるまで洗浄を繰り返した。乾燥器で乾燥して架橋キトサン(CLAC)を得た。生成物の確認はFT-IR(SIMADZU FT-IR-8200)を用いて行った。脱アセチル化度は塩酸の吸着によりほぼ90%であった。
【0031】
実施例3:シッフ塩基の形成
【化6】
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【0032】
実施例2で得られた架橋キトサンと反応させるアルデヒド化合物として2-ピリジンカルボキシアルデヒドを用いた。
【0033】
架橋キトサン5gとジメチルスルホキシド250mlを三口フラスコ中60℃で3時間撹拌した。そこに、2-ピリジンカルボキシアルデヒドをゆっくり滴下し、48時間60℃で撹拌した。ろ過し、蒸留水とエタノールを用いてろ液が透明になるまで何度も洗浄して目的とするシッフ塩基を得た。
【0034】
実施例4:シッフ塩基の還元による架橋キトサン(PMAC)の合成
【化7】
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【0035】
実施例3で得られたシッフ塩基を洗浄して蒸留水に分散させ、そこにテトラヒドロホウ酸ナトリウム(水素化ホウ素ナトリウム)5gを粉末のまま少量ずつ加え、24時間室温で撹拌した。ろ過を行い蒸留水で十分に洗浄を行った後、1N HCl及び1N NaOHで洗浄し、最終的にpHが中性になるまで蒸留水で洗浄を繰り返した。洗浄後、乾燥器で乾燥させて架橋キトサン(PMAC)を得た。生成物の確認はFT-IR(SIMADZU FT-IR-8200)を用いて行った。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は金属イオンの吸着剤として有用なキトサン誘導体の簡便な製造方法として有用である。また、本発明の製造方法を用いることにより、架橋キトサンに種々のキレート形成基を効率よく導入することが可能となる。