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明細書 :立体原子顕微鏡、原子配列の立体観察方法、及び原子配列の立体写真測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3905338号 (P3905338)
公開番号 特開2002-139466 (P2002-139466A)
登録日 平成19年1月19日(2007.1.19)
発行日 平成19年4月18日(2007.4.18)
公開日 平成14年5月17日(2002.5.17)
発明の名称または考案の名称 立体原子顕微鏡、原子配列の立体観察方法、及び原子配列の立体写真測定方法
国際特許分類 G01N  23/227       (2006.01)
FI G01N 23/227
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2001-233651 (P2001-233651)
出願日 平成13年8月1日(2001.8.1)
優先権出願番号 2000238452
優先日 平成12年8月7日(2000.8.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年11月29日(2004.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】大門 寛
個別代理人の代理人 【識別番号】100101915、【弁理士】、【氏名又は名称】塩野入 章夫
審査官 【審査官】横井 亜矢子
参考文献・文献 特開昭63-126148(JP,A)
特開平10-227998(JP,A)
特開2001-330571(JP,A)
大門寛,“円偏光で励起された光電子の角運動量の観測”,日本物理学会誌,1997年 7月11日,Vol.52, No.7,pp.525-528
調査した分野 G01N23/00-23/227
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
回転方向が異なる2つの円偏光を試料に照射する円偏光照射手段と、
照射された円偏光によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークで形成される形成方向を異にする光電子回折パターンを二次元的に検出する二次元光電子検出手段と、
前記両光電子回折パターンを左右の視差角の原子配列画像として形成する像形成手段とを備えることを特徴とする立体電子顕微鏡。
【請求項2】
回転方向が異なる2つの円偏光を試料に照射し、
該円偏光照射によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークによって、形成方向を異にする2つの光電子回折パターンを形成し、
該両光電子回折パターンを左右の視差角の原子配列画像とすることを特徴とする原子配列の立体観察方法。
【請求項3】
回転方向が異なる2つの円偏光を試料に照射し、
該円偏光照射によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークによって、形成方向を異にする2つの光電子回折パターンを形成し、
該両光電子回折パターンの画像を左右の視差角に対応する写真像として測定することを特徴とする原子配列の立体写真測定方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子配列の観察に関し、原子構造を立体的に観察する立体原子顕微鏡、及び立体観察方法、立体写真の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、原子構造を直接立体的に観察することが求められており、顕微鏡は原子構造の立体的観察を究極的な目的としている。現在、種々の顕微鏡が提案されているが、立体像を得ることができる顕微鏡は未だ提供されていない。例えば、電子顕微鏡は、原子配列の投影像を得ることができるが、立体像を得ることはできない。また、走査トンネル顕微鏡(STM)は試料表面の原子配列の凹凸像を得ることができるが、表面原子と下層にある原子の位置関係を得ることはできない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来提案されている顕微鏡及び観察方法は、原子配列を平面的に観察するものであり、原子構造を立体的に直接目で観察することができないという問題がある。
原子構造を立体的に観察する一手法として、各種の測定データに基づいて各原子間の配置を測定あるいは推定し、コンピュータグラフィックによって画像化することが考えられる。しかしながら、この手法では、観察部位における全原子について正確な位置関係を得るために複数種の測定データが必要であり、データ処理に時間がかかり、リアルタイムでの観察は困難である。
【0004】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、原子配列の立体構造を立体的に直接目で観察することを目的とし、さらに詳細には、原子配列の立体構造を立体的に直接目で観察することができる立体原子顕微鏡を提供することを目的とし、原子配列の立体構造を立体的に直接目で観察することができる立体観察方法、及び該立体観察に好適な立体写真を測定する測定方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光電子回折における円2色性を用いることによって原子配列を異なる2方向から見た2つの像を求め、この2方向から見た2つの像をそれぞれ左右の目で見る像に対応させることによって、原子配列の立体的な観察を行うものである。
本発明による原子配列の立体的観察は、光電子回折における円2色性を用いることによって視差角を有した像を得ることができる点に基づいており、観察原子について異なる視点から見た2つの像を円2色性を用いて求め、該2つの像をそれぞれ左右の目で見ることによって三次元像として認識し立体的に観察する。
【0006】
本発明は、光電子回折における円2色性を用いる手段として、円偏光を用いる。円偏光を試料に照射すると、光電子が放出され、まわりの原子によって散乱されることにより前方散乱ピークを生じるが、光電子の前方散乱ピークの放出方向は円偏光の持つ角運動量によって散乱原子の方向からずれる。この光電子がずれる方向は円偏光の回転方向(右円偏光及び左円偏光)に応じて変わり、右円偏光と左円偏光とではそれぞれ光電子は異なる方向にずれる。この円偏光でずれた2つの像を、左右の目で見たときの各像と対応づけることによって、原子配列を立体的に観察することができる。
また、本発明による立体的観察による倍率は、立体物を左右の目で見たときの視差角と光電子回折における円2色性を用いて得られる像の視差角が角度によらず定数倍だけ異なるという点に基づいて定めることができる。
【0007】
本発明の一形態は立体原子顕微鏡である。立体原子顕微鏡は、円偏光を試料に照射する円偏光照射手段と、照射された円偏光によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークで形成される光電子回折パターンを二次元的に検出する二次元光電子検出手段とを備える構成とする。
円偏光照射手段は、試料に対して円偏光を照射して光電子を発生させる手段であり、円偏光の回転方向を右円偏光と左円偏光で切り替えることによって、異なる角運動量を持つ光電子を放出させる。異なる角運動量の光電子が形成する2つの(円2色性の)光電子回折パターンは、原子配列を異なる方向から観察したパターンに対応しており、該2つの回折パターンをそれぞれ左右の目で見ることによって立体像として観察することができる。
【0008】
また、試料に対して浅い角度で円偏光を入射させることによって、視差角の角度依存性が実際のものと一致するようになり、歪みの少ない立体像を得ることができる。なお、円偏光照射手段として、例えば、シンクロトロンや電子蓄積リングと円偏光アンジュレータを組み合わせた左右円偏光発生装置を用いることができ、SPring-8等の放射光施設で得られる十分に高エネルギーの円偏光を照射することによって、原子配列の観察精度を高めることができる。
【0009】
二次元光電子検出手段は、光電子回折パターンを二次元的に検出する手段であり、検出した回折パターンは画像とし表示手段に表示することも、あるいは写真像として形成することもできる。なお、二次元光電子検出手段は、二次元表示型球面鏡分析器等の二次元表示型分析装置を用いることが最も簡便であるが、一次元や0次元(ある角度のみを検出するもの)の分析器を動かして二次元光電子回折パターンを測定しても良いし、一次元や0次元の分析器と試料の一次元や二次元の回転とを組み合わせて測定することもできる。
【0010】
また、円偏光照射手段による左右円偏光の切替えを高速で行うことによって、原子配列の実時間測定が可能となる。このとき、二次元光電子検出手段において2つの光電子回折パターンを円偏光の切り替えと同期して検出し、画像表示することによって、原子配列の変化を実時間で観察することができる。
【0011】
本発明の他の形態は原子配列の立体観察方法である。本発明の原子配列の立体観察方法は、回転方向が異なる2つの円偏光を試料に照射し、該円偏光照射によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークによって、形成方向を異にする2つの光電子回折パターンを形成し、該2つの光電子回折パターンを左右の視差角の原子配列画像とすることによって、原子配列を立体的に観察するものである。
原子配列の観察は、光電子回折パターンを画像として表示手段に表示したり、あるいは写真像によって行うことができる。また、円偏光を高速で切替えることによって、原子配列を実時間で測定することができる。
【0012】
また、本発明の別の形態は原子配列の立体写真測定方法である。本発明の原子配列の立体写真測定方法は、回転方向が異なる2つの円偏光を試料に照射し、該円偏光照射によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークによって、形成方向を異にする2つの光電子回折パターンを形成し、該2つの光電子回折パターンの画像を左右の視差角に対応する写真像として測定することによって、原子配列の立体写真を測定するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の立体原子顕微鏡を説明するための概略図である。立体原子顕微鏡1は、円偏光照射手段2、及び二次元光電子検出手段3を備え、さらに、撮影手段4、画像処理手段5、表示手段6、及び制御手段7を備える。
円偏光照射手段2は、回転方向の異なる2つの円偏光(右円偏光及び左円偏光)を形成して試料Sに照射する。2つの円偏光の試料Sへの照射は、切り替えて行うことができる。二次元光電子検出手段3は、円偏光照射によって発生した光電子を二次元的に検出して光電子パターンを得る。この光電子パターンは円偏光の照射位置における原子配列を表しており、光電子パターンによって原子配列を観察することができる。
【0014】
本発明の立体原子顕微鏡1は、円偏光照射手段2からの回転方向の異なる2つの円偏光によって得られる2つの光電子パターンを二次元光電子検出手段3で検出し、この2つの光電子パターンを右目及び左目で観察する各像に対応させることによって、原子配列を立体的に観察する。
立体原子顕微鏡1が備える撮影手段4、画像処理手段5、表示手段6、及び制御手段7は、二次元光電子検出手段3で検出した2つの光電子パターンを画像あるいは写真として出力する構成である。
撮影手段4は、検出した2つの光電子パターンを写真像とする手段であり、観察者はこの2つの光電子パターンの写真像を左目及び右目でそれぞれ見ることによって、原子配列を立体的に観察することができる。
【0015】
また、画像処理手段5、表示手段6、及び制御手段7は、検出した2つの光電子パターンを画像処理して画像データとし記録や表示を行う構成である。画像処理手段5は、二次元光電子検出手段3等による像の歪みを補正する画像処理を含むことができる。制御手段7は、円偏光照射手段2における円偏光の回転方向の切替えを制御したり、回転方向の切替えに応じて画像処理手段5を制御する。
円偏光照射手段2としては、例えば、シンクロトロンや電子蓄積リングと円偏光アンジュレータを組み合わせた左右円偏光発生装置を用いることができる。また、SPring-8等の放射光施設によれば、高エネルギーの円偏光を得ることができ、原子配列の観察精度を高めることができる。
【0016】
また、二次元光電子検出手段3としては、例えば、二次元表示型球面鏡分析器等の二次元表示型分析装置を用いることができる。二次元表示型球面鏡分析器を用いる場合には、像の歪みが無いため、歪みを補正することなく、立体画像及び立体写真を得ることができる。
【0017】
次に、本発明による原子配列の立体的観察の手順を、図2のフローチャートに従って説明する。
はじめに、円偏光照射手段2によって円偏光を形成する。このとき、いずれか一方の回転方向の円偏光を形成し(ステップS1)、形成した円偏光を試料Sに照射する。照射する円偏光は、例えば800eV~1keV程度のエネルギーを持ち、試料Sの原子(放出原子)に吸収されることによって、数百eV以上(例えば、400eV~500eV)の運動エネルギーを持つ光電子を放出する(ステップS2)。
【0018】
放出された光電子は、原子配列中の周囲の原子によって散乱され、光電子回折パターンを形成する。この光電子回折パターンは、放出角度分布パターンを表しており、光電子を放出した放出原子とその周囲の散乱原子とを結ぶ方向に前方散乱ピークと呼ばれる鋭いピークが観察される。
このとき、放出される光電子は、円偏光から角運動量をもらって回転しながら放射されるため、原子配列の散乱原子に対して所定のずれ角度で入射することになり、光電子回折パターンは該ずれ角だけずれたパターンとなる。二次元光電子検出手段3によって、この光電子回折パターンを検出し(ステップS3)、検出した光電子回折パターンを画像あるいは写真によって測定する(ステップS4)。
【0019】
次に、ステップS1で形成した円偏光と逆の回転方向の円偏光を形成する(ステップS5,6)。逆の回転方向の円偏光を用いて、前記ステップS2~ステップS4を繰り返し、回転方向が逆の円偏光による光電子回折パターンを検出して、回転方向を異にする円偏光で得られる2つの光電子回折パターンの画像あるいは写真を測定する。回転方向を逆とする円偏光によって得られる光電子回折パターンは、前記ずれ角のずれ方向を逆とするものである。したがって、回転方向を異にする円偏光で得られる2つの光電子回折パターンは、原子配列の散乱原子に対してそれぞれ反対方向から所定のずれ角度で入射して得られるパターンとなる。
【0020】
得られた2つの像(写真)は、左用画像(左用写真)と右用画像(右用写真)に対応しており、これら画像(写真)を表示(配置)して立体画像(立体写真)を形成する。表示(配置)された立体画像(立体写真)は、原子配列を左右にずれた方向から観察した画像(写真)に対応するものであり、それぞれの画像(写真)を右目及び左目で見ることによって、原子配列を立体的に観察することができる(ステップS7)。
【0021】
次に、本発明によって得られる2つの画像(写真)が原子配列を立体的に表すものであることを、図3~図6を用いて説明する。
図3は、立体を左右の目で見たときの視差角を説明するための図である。立体を左右の目で見るとき、それぞれの目が捕らえる像は、観測者から立体までの距離によって視差角を異にする2つの像となる。この一組の像は立体像あるいは立体写真を形成し、左右それぞれの目で各像を見ることによって、立体までの距離及び方向を三次元的に認識する。
【0022】
ここで、視差角(±Δ)は、観測者から立体までの距離Rに逆比例する。図3において、z軸方向を頭上とし、x軸方向(θ=90°,φ=0°)に顔が向いているとし、y軸上にある右の目E(R=b,θ=90°,φ=-90°)及び左の目F(R=b,θ=90°,φ=90°)から、極座標表示で(R,θ,0)にある物体Aを見ると、視差角Δ1は、
Δ1=arctan(b/(R・sinθ)) …(1)
で表される。ここで、両目の間隔は2bとしている。
【0023】
一方、図4は、原子配列において放出原子から放出された光電子の散乱原子に対する視差角を説明するための図である。
図4において、点Oにある放出原子Bに対してz軸方向に円偏光を照射すると、放出原子Bから光電子が放出される。ここで、放出原子から(θ=θ,φ=0°)の方向に放出された光電子が散乱原子Cによって散乱され、放出原子Bと散乱原子Cと結ぶ方向に形成される前方散乱を考える。
【0024】
放出原子Bから放出された光電子は、円偏光から角運動量をもらって回転しながら放射され、散乱原子Cに対してずれ角Δ2(x,y面上の角度)で入射し、このずれ角Δ2の方向は円偏光の回転方向によって逆となり、光電子の前方散乱ピークの方向における2色性を示す。このずれ角Δ2は、以下の式で表される。
JP0003905338B2_000002t.gifここで、mは光電子の角運動量のz成分を表す量子数(磁気量子数)、kは波数、rは放出原子から散乱原子までの距離、θは円偏光の進行方向と放出原子から散乱原子を向く方向との成す角である。
【0025】
立体を左右の目で見たときの視差角Δ1と、散乱原子に対する光電子のずれ角Δ2とを比較すると、距離R,rに反比例する点で共通し、k,bの定数、磁気量子数m、及びsinθの次数の点で相違している。ここで、相違点について検討すると、k,bは角度θによらない定数である。一方、磁気量子数mは角度θに依存し、例えば、W4f(タングステンの一エネルギー軌道)ではsinθにほぼ比例している。
【0026】
したがって、磁気量子数mを(α・sinθ)と表すと(αを比例係数とする)、ずれ角Δ2は以下の式で表される。
Δ2=arctan(α/(k・r・sinθ)) …(3)
したがって、式(1)のΔ1と式(3)のΔ2とを比較すると、比例倍だけ異なる等価な式であって、ずれ角Δ2は立体視の際の視差角Δ1として扱えることを表している。
このことは、2つの光電子回折パターンのそれぞれのずれ角Δ2を視差角Δ2として左右の目で見ることによって、光電子回折パターンに寄与している散乱原子配列を立体像として観察することができることを意味している。
なお、図3中のHは物体Aのxy平面に投影した位置を示し、図4中のHは散乱原子Cのxy平面に投影した位置を示している。
【0027】
図5を用いて、ずれ角を視差角とすることによる立体像の観察、及び立体像の倍率について説明する。
図5(a)は,円偏光の2色性による光電子回折のずれ角を模式的に示している。放出原子Bから放出された光電子は、角運動量を持つことによって散乱原子Cに対してずれ角Δ2で入射する。光電子回折パターンは、主に散乱原子Cの前方散乱ピークから形成されており、該光電子回折パターン像の中のピークのずれ角もΔ2となる。
【0028】
図5(b)は、求めた光電子回折パターン像を目によって観察する状態を示している。光電子回折パターン像による原子配列の観察は、光電子回折パターン像を目E,Fから距離Rだけ離し、視差角Δ2の角度で配置することによって行うことができる。
【0029】
光電子回折パターン像を目で観察したときの倍率は、例えば、図5(b)中で示されるRと、図5(a)で示されるBC間の距離rとの比率によって表すことができる。後で例示するW4fの原子配列の場合には、この倍率は2×1010倍となる。
なお、視差角Δ1の正接は前記式(1)からtanΔ1=b/(R・sinθ)で表され、ずれ角Δ2の正接は前記式(3)からtanΔ2=α/(k・r・sinθ)で表され、倍率は(k・b)/αで表される。
【0030】
光電子回折パターン像の画像あるいは写真を目で観察する際において視差角を測定時のずれ角に合わせるには、図5(b)に示すように、2bを右目及び左目との間隔として、右用画像(写真)と左用画像(写真)をそれぞれ右目及び左目と対向して、光電子回折パターンの測定角度範囲がそのパターンを目で見たときの角度範囲と一致するように配置する。画像(写真)中の原子Cの像が重なるように目を動かすと、その像は目との間隔R=b/(tanΔ2・sinθ)を満たす位置に認識される。このようにして視差角を測定時のずれ角と合わせることによって、光電子パターンにおける角度関係と画像(写真)及び目との角度関係を合わせることができ、原子配列を立体的に観察することができる。異なるRを持つ原子の像は、視差角がΔ2からΔ3に変化しているため、両目の視差角をΔ3にしたときに像が重なり倍率がΔ2/Δ3倍だけ変化して、原子の相対位置関係はそのまま保たれて立体的に観察される。画像(写真)と目との位置関係が上記のものと異なっていても、倍率が異なるが立体的に観察される。
【0031】
図6は、本発明による測定例を示すものである。図6(a),(b)は、Wの(110)面から放出された、運動エネルギーが800eVのW4f光電子の光電子回折パターンであり、図6(a)と図6(b)は円偏光の回転方向が反対の場合を示している。
また、図6(c)は、図6(a)及び図6(b)に対応する結晶軸方向を模式的に示しており、図6(a)及び図6(b)では[100],[111],[311],[210]等の結晶軸の方向に前方散乱ピークが観察されている。
【0032】
図6(a)及び図6(b)の実測されるピーク位置と、図6(c)のピーク位置と比較すると、実測されるピーク位置は左右にずれて観察されている。このずれが、立体像(立体写真)の視差角と同じになっており、これらの立体像(立体写真)を左右の目で見ることによって、立体的に観察することができる。
また、図6(d)は、[010]方向から(110)面に円偏光を照射したときの、[100],[111],[311],[210]方向等に対する関係を模式的に示している。
【0033】
また、図7は、二次元光電子検出手段の一例である二次元表示型球面鏡分析器の概略構成を示している。二次元表示型球面鏡分析器は、光電子回折された光電子を仮想的な球面鏡で反射させた状態で、光電子回折パターンを二次元検出面(スクリーン)に表示させるものである。この二次元表示型球面鏡分析器では、試料に対して円偏光をすれすれとなる浅い角度で入射させる。これによって、磁気量子数mの放出角依存性がほぼsinθに比例し、歪みの無い立体像を得ることができる。
本発明の実施の形態によれば、左右の目で原子配列を見ると同等の観察を行うことができる。
また、円偏光の回転方向の切替えを高速で行うことによって、実時間測定を行うことができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の立体原子顕微鏡、立体観察方法によれば、原子配列の立体構造を立体的に直接目で観察することができる。また、本発明の測定方法によれば、立体観察に好適な立体写真を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の立体原子顕微鏡を説明するための概略図である。
【図2】本発明による原子配列の立体的観察の手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】立体を左右の目で見たときの視差角を説明するための図である。
【図4】原子配列において放出原子から放出された光電子の散乱原子に対する視差角を説明するための図である。
【図5】ずれ角を視差角とすることによる立体像の観察、及び立体像の倍率を説明するための図である。
【図6】本発明による測定例を示すものである。
【図7】二次元表示型球面鏡分析器の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1…立体原子顕微鏡、2…円偏光照射手段、3…二次元光電子検出手段、4…撮影手段、5…画像処理手段、6…表示手段、7…制御手段。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6