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明細書 :電子顕微鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3791839号 (P3791839)
公開番号 特開2003-208866 (P2003-208866A)
登録日 平成18年4月14日(2006.4.14)
発行日 平成18年6月28日(2006.6.28)
公開日 平成15年7月25日(2003.7.25)
発明の名称または考案の名称 電子顕微鏡
国際特許分類 H01J  37/252       (2006.01)
G01N  23/227       (2006.01)
H01J  49/48        (2006.01)
H01J  37/244       (2006.01)
FI H01J 37/252 Z
G01N 23/227
H01J 49/48
H01J 37/244
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2002-007387 (P2002-007387)
出願日 平成14年1月16日(2002.1.16)
審査請求日 平成16年11月29日(2004.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】大門 寛
個別代理人の代理人 【識別番号】100101915、【弁理士】、【氏名又は名称】塩野入 章夫
審査官 【審査官】堀部 修平
参考文献・文献 特開2001-291486(JP,A)
特開平09-171793(JP,A)
特開2000-215841(JP,A)
特開平06-068844(JP,A)
特開平04-118848(JP,A)
大門 寛,二次元表示型球面鏡アナライザについて,SPring-8利用者情報,日本,財団法人 高輝度光科学研究センター,2001年 9月19日,第6巻,第5号,pp.372-376
調査した分野 H01J 37/252
H01J 49/44 - 49/48
特許請求の範囲 【請求項1】
入射側アパーチャから入射した電子像を二次元的にエネルギー選別し、出射側アパーチャから出射する二次元表示型球面鏡分析器と、
前記二次元表示型球面鏡分析器の入射側アパーチャの前方に設けたレンズ系と、
前記二次元表示型球面鏡分析器の出射側アパーチャの後方位置に配置したスクリーンとを備え、
前記レンズ系は、
当該レンズ系が備える各レンズの強度及び/又は比率の切り替えによって、
当該レンズ系に入射した電子像を用いて行う、試料から出た電子の角度分布を表す回折像の形成と、拡大した顕微鏡像の形成との切り替えを行うと共に、
当該レンズ系に入射した電子像を、二次元表示型球面鏡分析器の入射側アパーチャの位置で絞った後、当該二次元表示型球面鏡分析器内に入射させ、
当該二次元表示型球面鏡分析器内で二次元的にエネルギー選別した電子像を、二次元表示型分析器の出射側アパーチャの位置で再度絞った後、当該出射側アパーチャから出射した電子像をスクリーン上に結像させることを特徴とする、電子顕微鏡。
【請求項2】
前記レンズ系は電界レンズ又は磁界レンズであり、電界又は磁界に印加する電圧値及び/又は比率を調整することによって、回折像と顕微鏡像の切り替えを行うことを特徴とする、請求項1に記載の電子顕微鏡。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子顕微鏡として、透過電子顕微鏡(TEM)や走査電子顕微鏡(SEM)が一般的であるが、見ている原子の種類がわからなかったり、原子の立体配列がわからないという欠点がある。原子の種類が識別できる顕微鏡として、従来より低速電子顕微鏡(LEEM)や光電子顕微鏡(PEEM)が知られている。これらの電子を用いた顕微鏡では、試料に電子や光を照射することによって放出される電子を加速したり収束することによって顕微鏡像を形成する。これらの電子顕微鏡の分解能は10nm程度が限界であり、原子配列を測定するまでの高倍率とすることはできないという問題がある。
【0003】
また、原子の立体配列を立体写真によって観察するものとして二次元表示型分析器を用いた立体原子顕微鏡が知られている。この立体原子顕微鏡は倍率が高すぎるため低倍率の情報を得ることができず、試料のどの部分を観察しているかの把握が難しいという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来の電子顕微鏡や原子顕微鏡では、低倍率あるいは高倍率の何れか一方の機能のみを備えるものであるため、低倍率の情報と高倍率の情報の両情報を必要とする場合には2種類の顕微鏡を用意する必要がある。また、低倍率の顕微鏡と高倍率の顕微鏡の2種類の顕微鏡を用意することで、それぞれ低倍率の情報と高倍率の情報が得られるとしても、観察に要する顕微鏡が異なるため同一の試料について観察位置を合わせることは困難である。したがって、一つの顕微鏡で低倍率の情報と高倍率の情報を得ることが望まれている。
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、一つの装置で低倍率から高倍率まで観察することができる電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子像を二次元的に検出する二次元電子検出手段と、この二次元電子検出手段の前方の試料側に設け、試料から得られる電子の電子像を形成するレンズ系とを備える構成とする。レンズ系は各レンズの強さを切り替えることによって回折像又は拡大した顕微鏡像の2種の電子像を形成し、二次元電子検出手段はレンズ系で形成された電子像を二次元的に検出する。
【0006】
レンズ系を、回折像を形成するモードに設定した場合には、試料から出た電子の角度分布を表す回折像が得られる。この回折像を二次元電子検出手段で検出することによって、試料の原子配列を観察することができる。また、二次元電子検出手段によって電子エネルギー選別を行うことによって、所定の原子、さらには所定の化学状態の原子のまわりの原子配列を観察することができる。
【0007】
レンズ系を、顕微鏡像を形成するモードに設定した場合には、試料の表面状態を表す拡大像が得られる。この拡大像を二次元電子検出手段で検出することによって、試料の表面状態を観察することができる。
【0008】
レンズ系は電界レンズ又は磁界レンズにより構成することができる。電界レンズ又は磁界レンズは、印加電圧や電流によって発生する電場又は磁場を調整し、これによって形成する電子像のモードを切り替え、回折像又は顕微鏡像を形成する。
【0009】
二次元電子検出手段として二次元表示型球面鏡分析器等の二次元表示型分析器を用いることができ、検出した電子像を画像として表示する他、写真像として形成することもできる。また、二次元電子検出手段は二次元表示型分析器の他、一次元や0次元(ある角度のみを検出する)の分析器を移動して二次元パターンを測定する構成、分析器と試料の回転を組み合わせて測定する構成とすることもできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の電子顕微鏡の概略構成を説明するための概略図である。電子顕微鏡1は、試料Sから順に、試料Sから得られる電子の電子像を形成するレンズ系2と、電子像のエネルギーを選別する二次元電子検出手段3と、二次元電子検出手段3で選別された電子像を投影するスクリーン4を備える。
【0011】
試料Sに紫外線や軟X線等の励起光を照射することによって光電子を得ることができ、また、試料Sに電子線を照射することによってオージェ電子を得ることができる。
レンズ系2は、試料Sから得られた電子の電子像をアパーチャ5aを通過させて結像する。二次元電子検出手段3は、レンズ系2で結像された電子のエネルギーを二次元的に選別する。エネルギー選別した二次元の電子像はアパーチャ5bを通過した後、スクリーン4上で検出あるいは表示する。
【0012】
レンズ系2は、回折像を得る回折モードと拡大された顕微鏡像を得る顕微鏡モードの2種類の機能モードを切り替え自在に備える。
回折モードでは、レンズ系の設定により回折像を結像する。この回折像には、試料から出た電子の角度分布の情報が含まれる。二次元電子検出手段3はこの回折像を検出してスクリーン4上に二次元像として投影する。これによって、試料の原子配列を観察することができる。また、この二次元電子検出手段3は電子エネルギーを選別する機能を有する。この機能により電子像の電子エネルギーを選別することで、所定の原子の回りの原子配列や所定の化学状態の原子のまわりの原子配列を観察することができる。
【0013】
また、顕微鏡モードでは、拡大された顕微鏡像を得る。この顕微鏡像は、試料の表面状態を表す拡大像である。この拡大された顕微鏡像を二次元電子検出手段で検出することによって、試料の表面状態を観察することができる。
二次元電子検出手段3は、レンズ系で形成された電子像を二次元的に検出する手段であり、二次元表示型球面鏡分析器等の二次元表示型分析器を用いることができる。検出した電子像は、蛍光板等のスクリーン上に画像として表示する他、写真像とすることもできる。また、二次元電子検出手段は二次元表示型分析器を用いる他、一次元の分析器や角度のみを検出する0次元の分析器を移動することによって電子像を二次元的に検出することも、あるいは、これら一次元あるいは0次元の分析器と試料の回転を組合わせることによって電子像を二次元的に検出することもできる。
【0014】
次に、図2,図3を用いて回折モード及び顕微鏡モードについて説明する。
図2は、回折モードを説明するための概略図であり、図2(a)は回折像を二次元的に検出する状態を示し、図2(b)は拡大した領域の回折像を二次元的に検出する状態を示している。なお、図2(a),(b)において、角度a及び角度bは試料Sの角度情報を概括的に示している。
【0015】
図2(a)において、試料Sに対して紫外線や軟X線等の励起光、あるいは電子線を照射すると、試料Sから光電子又はオージェ電子等の電子が放出される。レンズ系2は、試料から放出された電子を結像し回折像を得る。この回折像には試料Sの角度情報が含まれている。二次元電子検出手段3は、レンズ系2が結像した回折像を二次元的に検出しスクリーン4上に投影することによって電子の角度分布を観察することができる。
【0016】
この回折モードでは、レンズ系によって回折像を結像する領域を拡大し、この拡大した領域について回折像を得ることもできる。図2(b)は拡大した領域の回折像を二次元的に検出する場合を示している。レンズ系2は、図2(a)と同様にして試料Sから放出された電子について結像する領域を拡大し、この拡大した領域の回折像を二次元的に検出しスクリーン4上に投影することによって、拡大した領域における電子の角度分布を観察することができる。
【0017】
また、回折モードにおいて、試料Sに照射する励起光として円偏光軟X線を用いることによって原子配列の立体像を観察することもできる。この場合には、回転方向が異なる2つの円偏光を試料に照射し、この円偏光照射によって生じる円2色性の光電子前方散乱ピークによって、形成方向を異にする2つの光電子回折パターンを形成し、この2つの光電子回折パターンをレンズ系2及び二次元電子検出手段3によって二次元的に検出してスクリーン4上に投影する。投影像は、画像として表示する他、写真像によって観察することができ、左右の視差角の原子配列像とすることによって原子配列を立体的に観察することができる。
【0018】
図3は、顕微鏡モードを説明するための概略図であり、顕微鏡像を二次元的に検出する状態を示している。なお、図3中に示すA,B,Cの符号は試料S中の位置を概括的に示している。
図3において、試料Sに対して紫外線や軟X線等の励起光、あるいは電子線を照射すると、試料Sから光電子又はオージェ電子等の電子が放出される。レンズ系2は、図2と同様にして試料Sから放出された電子を結像し顕微鏡像を得る。この顕微鏡像には試料Sの表面形状情報が含まれている。二次元電子検出手段3は、レンズ系2が結像した顕微鏡像を二次元的に検出しスクリーン4上に投影することによって試料の表面形状を観察することができる。
【0019】
なお、図2に示す回折モード、及び図3に示す顕微鏡モードにおいて、二次元電子検出手段3により電子のエネルギーを選別し、選別した電子をスクリーンに投影することによって、所定の原子のマッピングや所定の化学状態の原子のマッピングを観察することができる。
【0020】
図4は、本発明の電子顕微鏡の一構成例を説明するための図である。なお、図4に示す構成例では、電子顕微鏡1は、紫外線や軟X線等の励起光や電子線あるいは円偏光軟X線を集光して試料Sに照射するための集光鏡6と、試料Sから放出された電子を結像するレンズ系2と、レンズ系2が結像した電子像を二次元的に検出し、蛍光板4A等のスクリーンに投影するための二次元表示型分析器3Aと、アパーチャ5(5a,5b)を備える。
なお、アパーチャ5aはレンズ系2と二次元表示型分析器3Aとの間に設け、アパーチャ5bは二次元表示型分析器3Aと蛍光板4Aの間に設ける。
【0021】
レンズ系2は、電界レンズ又は磁界レンズで構成することができ、この電界レンズ又は磁界レンズに印加する電圧値や比率を調整することによって形成される電場又は磁場を調整し、倍率を切り替えると共に、回折像を得る回折モードと顕微鏡像を得る顕微鏡モードの切り替えを行う。
【0022】
この構成によれば、レンズ系2において回折モードと顕微鏡モードの切替えを行うことによって、同一試料の同一観察位置における回折像と顕微鏡像とを切り替えて求めることができる。また、試料Sと二次元表示型分析器3Aとの間にレンズ系2を配置することによって、試料Sと分析器との間の距離に余裕を持たせることができ、試料Sの取り扱いが容易になるという効果を奏することができる。
【0023】
試料から放出される電子を二次元表示型分析器によって直接観察する場合には、電子の放出状態を単に二次元的に表示するのみであって、顕微鏡像を得ることはできない。また、試料から放出される電子を効率的に取り込むために、試料と二次元表示型分析器との間隔を狭める必要があり、試料の取り扱いが難しいという問題がある。これに対して、本発明の構成によれば、この問題を解決して、回折像と顕微鏡像とを切り替えて求めることができる他、試料の取り扱いを容易とすることができる。
【0024】
図5は、レンズ系の構成例、及びレンズ系における回折モードと顕微鏡モードの状態を説明する図であり、図5(a)は回折モードを示し、図5(b)は顕微鏡モードを示している。
レンズ系2は、試料S側から二次元電子検出手段側に向かって、対物レンズ2a,制限視野絞り2b,第1中間レンズ2c,制限視野絞り2d,第2中間レンズ2e,投影レンズ2fを順に備える。対物レンズ2a,第1中間レンズ2c,第2中間レンズ2e,及び投影レンズ2fの各レンズは、電界レンズ又は磁界レンズで構成することができる。これらの各レンズに印加する電圧値や比率を調整することで、回折モードと顕微鏡モードの切替えや拡大率の変更を行う。
【0025】
図5(a)に示す回折モードでは、投影レンズ2fの手前に回折像を形成し、この回折像を二次元電子検出手段のスクリーン4上に投影することによって、回折像を観察する。また、図5(b)に示す顕微鏡モードでは、投影レンズ2fの手前に試料の拡大像を形成し、この拡大像を二次元電子検出手段のスクリーン4上に投影することによって、顕微鏡像を観察する。なお、図5に示すレンズ系は一構成例であり、他の構成とすることもできる。
【0026】
本発明の形態によれば、一つの装置によって、試料の表面形状を観察する低倍率から原子配列を観察する高倍率まで測定することができる。
本発明の形態によれば、二次元電子検出手段で電子のエネルギーを選別することによって、所定の原子のマッピングや所定の化学状態の原子のマッピングを観察することができる。
【0027】
本発明の形態によれば、試料と二次元電子検出手段との間にレンズ系を設ける構成によって、回折像と顕微鏡像とを切り替えて求めることができる他、試料の取り扱いを容易とすることができる。
また、本発明の形態によれば、試料に円偏光を照射し、得られる形成方向を異にする2つの光電子回折パターンを表示することによって、原子配列を立体的に観察することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子顕微鏡によれば、一つの装置で低倍率から高倍率まで観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子顕微鏡を説明するための概略図である。
【図2】本発明の回折モードを説明するための概略図である。
【図3】本発明の顕微鏡モードを説明するための概略図である。
【図4】本発明の電子顕微鏡の一構成例を説明するための図である。
【図5】本発明のレンズ系の構成例、及びレンズ系におけるの回折モードと顕微鏡モードの状態を説明する図である。
【符号の説明】
1…電子顕微鏡、2…レンズ系、2a…対物レンズ、2b,2d…制限視野絞り、2c…第1中間レンズ、2e…第2中間レンズ、2f…投影レンズ、3…二次元電子検出手段、3A…二次元表示型分析器、4…スクリーン、4A…蛍光板、5,5a,5b…アパーチャ、6…集光鏡、S…試料。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4