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明細書 :コーヒー属植物の形質転換法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4016075号 (P4016075)
公開番号 特開2003-274954 (P2003-274954A)
登録日 平成19年9月28日(2007.9.28)
発行日 平成19年12月5日(2007.12.5)
公開日 平成15年9月30日(2003.9.30)
発明の名称または考案の名称 コーヒー属植物の形質転換法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   1/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
A01H 1/00 A
C12N 5/00 C
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願2002-088758 (P2002-088758)
出願日 平成14年3月27日(2002.3.27)
審査請求日 平成17年3月25日(2005.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】荻田 信二郎
【氏名】佐野 浩
【氏名】小泉 望
【氏名】新名 惇彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100083149、【弁理士】、【氏名又は名称】日比 紀彦
【識別番号】100060874、【弁理士】、【氏名又は名称】岸本 瑛之助
【識別番号】100079038、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 彰
【識別番号】100069338、【弁理士】、【氏名又は名称】清末 康子
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 特開2000-245485(JP,A)
Plant Cell Reports, vol.19, pp.382-389 (2000)
Plant Cell Reports, vol.19, pp.106-110 (1999)
Hort.Sci., vol.29, pp.172-174 (1994)
調査した分野 C12N 15/09
A01H 1/00
C12N 5/10
BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
CAplus(STN)
AGRICOLA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
コーヒー属植物の切断組織片をアグロバクテリウム細菌に感染させて外来遺伝子を導入することにより形質転換コーヒーを得るに当たり、アグロバクテリウム細菌感染の前に、フェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地で切断組織片を前培養することを特徴とするコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項2】
フェニルウレアタイプのサイトカイニンが4-CPPU(N-2-クロロ-4-ピリジル-N-フェニルウレア)またはTDZ(チジアズロン)である請求項1記載のコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項3】
コーヒー属植物がコーヒー・アラビカ種(Coffea arabica)、コーヒー・カネフォラ種(Coffea canephora)、コーヒー・リベリカ種(Coffea liberica)またはコーヒー・デウェブレイ種(Coffea dewevrei)である請求項1または2記載のコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項4】
切断組織片が葉の切断組織片である請求項1~3のいずれかに記載のコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項5】
培地がMS培地、B5培地またはそれらの改変培地である請求項1~4のいずれかに記載のコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項6】
培地中のフェニルウレアタイプのサイトカイニンの濃度が0.1~40μMである請求項1~5のいずれかに記載のコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項7】
前培養を5~30日行う請求項1~6のいずれかに記載のコーヒー属植物の形質転換法。
【請求項8】
さらに、フェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地、または、フェニルウレアタイプのサイトカイニンおよびオーキシンを加えた培地に切断組織片を移植して培養する請求項1~7のいずれかに記載のコーヒー属植物の形質転換法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーヒー形質転換方法に関し、より詳しくはコーヒー属植物の形質転換不定胚を効率的に誘導し増殖させて、形質転換コーヒー属植物を大量に創出する方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
コーヒーに含まれるプリンアルカロイドの一種であるカフェインは、覚醒作用や心機能の増進といった効果を有する一方で、不眠・動機・めまいなどをきたす副作用を有する。そのため、カフェインレスコーヒーの需要が高く、従来は主に有機溶媒抽出など物理化学的な分離手法によりこれを生産していた。しかし、この方法では生産コストがかかる上に、コーヒー本来の味・香りが損なわれてしまう難点があり、新しいカフェインレスコーヒーの創出技術開発が望まれている。また、商業用コーヒー品種の多くは選抜された優良形質個体のモノカルチャーであり、高品質品種の需要は高い。さらに、病虫害や除草剤に高い抵抗性を示す新品種の創出も望まれている。
【0003】
【従来の技術】
コーヒー属植物の育種は、元来、交配による優良品種の選抜、種子繁殖あるいは接木による増殖を主流としている。しかし交配選抜による育種は長い年月を要し、コーヒー種子は貯蔵条件により急激に発芽率低下をきたす。接木による増殖は優良形質品種のクローン増殖に有効であるが、広い育種場の確保や台木の更新などが必要となる。
【0004】
その後、選抜・交配育種に替わるコーヒー属植物の育種技術として組織培養技術が開発されてきた(Staritsky, Acta Bot Neerl, 19: 509-514, 1970; Berthouly and Etienne, Somatic Embryogenesis in Woody Plants, Vol. 5, Kluwer: 259-288, 1999)。この技術によれば、栄養成分や植物ホルモンなど植物の成長を制御する物質を組み合わせた至適な培地中でコーヒー属植物の一部組織(例えば葉の切断組織片)を培養することにより、多数の植物体を得ることができる。近年、遺伝子組換え技術により形質転換植物を創出することが可能になり、コーヒー属植物においても形質転換例が幾つか報告されている(Spiral et al., Biotechnology in Agriculture and Forestry, Vol.44, Transgenic Trees, Springer-Verlag: 55-76, 1999)。これによると、コーヒー属植物の形質転換法は、主に、最初に▲1▼カルス、▲2▼不定胚形成細胞(不定胚を形成する能力のある細胞であって、通常はエンブリオジェニックカルス、あるいはエンブリオジェニックセルなどと定義される)、あるいは▲3▼不定胚と呼ばれる培養細胞塊(▲1▼から▲3▼を総称する用語として定義される)を誘導し、次にこれを充分量増殖させ、その後アグロバクテリウム法により形質転換を行い、形質転換細胞を選抜した後に、形質転換植物を得る。この方法は、植物体分化能力の高い培養細胞塊誘導・増殖の難易、すなわち材料によって誘導・増殖率がばらつくこと(Berthouly and Michaux-Ferriere, Plant Cell, Tissue and Organ Culture 44: 169-176, 1996)や、培養細胞塊の誘導・増殖に時間がかかること、さらに形質転換効率に左右されること等のため、必ずしも実用的な方法とは言えない。
【0005】
【発明の課題】
上述のような状況下において、実用レベルのコーヒー分子育種を進めるためには、さらに汎用性の高く簡便な形質転換技術開発が望まれる。
【0006】
本発明は、組織培養および形質転換の技術を応用した新しいコーヒー属植物の育種技術を提供すること、より詳しくは、コーヒー属植物の形質転換不定胚を効率的に誘導し増殖させて、形質転換コーヒー属植物を大量に創出するコーヒー属植物の形質転換法を提供することを目的とし、ひいてはコーヒーよりカフェイン合成酵素関連遺伝子の発現を抑制することによりカフェイン含量の少ないコーヒー属植物を創出することを企図とするものである。
【0007】
【課題の解決手段】
本発明によるコーヒー属植物の形質転換法は、コーヒー属植物の切断組織片をアグロバクテリウム細菌に感染させて外来遺伝子を導入することにより形質転換コーヒーを得るに当たり、アグロバクテリウム細菌感染の前に、フェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地で切断組織片を前培養することを特徴とする。
【0008】
植物ホルモンであるフェニルウレアタイプのサイトカイニンとしては、4-CPPU(N-2-クロロ-4-ピリジル-N-フェニルウレア)またはTDZ(チジアズロン)が好ましい。
【0009】
本発明による形質転換法が適用できるコーヒー属植物は、世界のマーケットで需要の高いコーヒー種であるコーヒー・アラビカ種(Coffea arabica)およびコーヒー・カネフォラ種(Coffea canephora)の外、コーヒー・リベリカ種(Coffea liberica)およびコーヒー・デウェブレイ種(Coffea dewevrei)であってもよい。
【0010】
コーヒー属植物の切断組織片は、好ましくは新葉、特に好ましくは枝先端の第一展開葉の切断葉組織片である。
【0011】
好ましい培地は、MS培地、B5培地またはそれらの改変培地である。培地中のフェニルウレアタイプのサイトカイニンの濃度は、好ましくは0.1~40μM、より好ましくは0.5~20μM、最も好ましくは1~10μMである。
【0012】
前培養の期間は好ましくは5~30日、より好ましくは7~14日である。
【0013】
フェニルウレアタイプサイトカイニン含有培地での培養の後、さらに、フェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地、または、フェニルウレアタイプのサイトカイニンおよびオーキシンを加えた培地に切断組織片を移植して培養することが好ましい。
【0014】
本発明方法により、フェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地で切断組織片を前培養することによって、切断面の細胞分裂を促進することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明方法を詳しく説明する。
【0016】
(1) コーヒー属植物組織、好ましくは新葉、特に好ましくは枝先端の第一展開葉を採取後、滅菌処理し(例えば、採取物を70%エタノール中に1分間、次いで2%次亜塩素酸水溶液中に10分間浸漬する。この浸漬により滅菌はほぼ100%達成される)、滅菌組織を例えば2~20mm角に切断する。
【0017】
(2) 各種栄養成分を含む液体あるいは固体培地、例えばMS培地(Murashige, Physiol. Plant 15: 473-497, 1962 )やB5培地(Gamborg, Exp. Cell. Res. 50: 151-158, 1968)、あるいはそれらの改変培地に、植物ホルモンとして、フェニルウレアタイプのサイトカイニン(4-CPPU:N-2-クロロ-4-ピリジル-N-フェニルウレアまたはTDZ:チジアズロン)を添加する。改変培地は、例えば、無機塩類のみを通常の濃度から1/2に低下させた改良MS培地(modified 1/2 MS:以下m1/2MSと略記する)である。植物ホルモンの濃度は、好ましくは0.1~40μM、より好ましくは0.5~20μM、最も好ましくは1~10μMである。この培地にショ糖を好ましくは10~100g/l、より好ましくは20~50g/l添加し、pHを至適値例えば5.6~5.8に調節した後、培地固化剤を加える(以下、固体培地とはゲランガムで固化した培地をいう。また培地とは、特にことわりの無い限りは固体培地をいう。)。培地固化剤としてはゲランガムが好ましく、その添加量は2~4g/lである。その後、この培地を高圧高温条件下で滅菌する。この滅菌条件は、好ましくは温度115~125℃、10~20分、具体的には温度121℃、期間15分である。
【0018】
次いで、この滅菌培地に葉切断組織片を植え付け、培養する。
【0019】
培養条件は、従来のコーヒー属植物組織培養(例えばBerthouly and Michaux-Ferriere, Plant Cell, Tissue and Organ Culture 44: 169-176, 1996) で用いられている条件と同じであってよく、例えば温度25~28℃、期間30日である。この培養は好ましくは暗所で行う。この培養は、巨視的に細胞分裂の促進、すなわち培養細胞塊の誘導が確認できる程度の期間(約5から30日間)、継続して行うことが望ましい。
【0020】
(3) その後、好ましくは、上記と同じ組成のm1/2MS培地、または、上記と同じ組成にオーキシンの1種である2,4-D:2,4-ジクロロフェノキシ酢酸を0.1μM添加したm1/2MS培地(すなわち[4-CPPU]+[2,4-D]の組み合わせ)に、もしくは、前者の培地ついで後者の培地に、上記組織片を移植して培養する。この追加培養の培養条件も、従来のコーヒー属植物組織培養の条件と同じであってよく、例えば温度25~28℃、期間30日である。この培養も好ましくは暗所で行う。
【0021】
こうして、コーヒー属植物の切断組織片をフェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地で前培養することによって、組織片の切断部で細胞分裂が大幅に促進され、多量の不定胚形成組織、カルス、培養細胞塊が形成される。
【0022】
(4) こうして得られた前培養物をアグロバクテリウム法による遺伝子導入操作に供する。アグロバクテリウム法による遺伝子導入は常法によって行ってよい。植物組織への外来遺伝子導入はアグロバクテリウムのバイナリーベクター法により行うことができる。アグロバクテリウム細菌およびベクターには多くの種類があり、それらを適宜用いることができるが、コーヒー属植物の形質転換に有効なアグロバクテリウム細菌として用いられている(Hatanaka et al., Plant Cell Rep. 19: 106-110, 1999)アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) の1種であるEHA101(Hood et al., J. Bacteriol 168: 1291-1301, 1986)が好ましい。遺伝子導入用のベクターとしてpIG121-Hm(=pBIH1-IG)(Ohta et al., Plant Cell Physiol. 31: 805-831, 1990)およびその改良ベクターであるpBIH1-GFPが好ましい。pIG121-HmはNOSプロモータによって制御されるカナマイシン耐性遺伝子、植物において強力な転写活性を示すプロモーターであるカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター(CaMV35S)によって制御されるイントロンを含むGUS(β-グルクロニダーゼ)遺伝子、およびハイグロマイシン耐性遺伝子が組み込まれたベクターである。したがって、これら3つの遺伝子が植物に組み込まれる。この場合ターミネーターとしてはNOSターミネーターが好ましい。改良ベクターpBIH1-GFPは、イントロンを含むGUS遺伝子を制限酵素で切断した後、GFP(Green Fluorescent Protein:グリーンフルオレセントプロテイン)遺伝子を新たに組み込んだベクターである。コーヒー属植物への遺伝子導入に先立ち、ベクター:pIG121-HmおよびpBIH1-GFPをエレクトロポーレーション法によりアグロバクテリウム細菌:EHA101に組み込む。ベクターを組み込んだアグロバクテリウム細菌を抗生物質であるカナマイシンおよびハイグロマイシンを加えた培地で増殖させ、アグロバクテリウム懸濁液を調製する。
【0023】
この懸濁液に上記前培養葉切断組織を浸漬し、アグロバクテリウム細菌に感染させる。浸漬時間は好ましくは15~30分である。水分除去後、アセトシリンゴン(遺伝子発現誘導剤)を加えた固体m1/2MS培地(4-CPPUを好ましくは約1μMおよび2,4-Dを好ましくは約0.1Mμ含有)で上記葉切断組織を培養することが好ましい。
【0024】
(5) アセトシリンゴン含有培地で培養後の葉切断組織を、アグロバクテリウム細菌の除菌剤としてセフォタキシンを添加した液体m1/2MS培地で洗浄し、セフォタキシンと抗生物質としてハイグロマイシンを加えた固体m1/2MS培地(4-CPPUを好ましくは約1μMおよび2,4-Dを好ましくは約0.1Mμ含有)で培養する。次いでセフォタキシンを除き、抗生物質を添加した培地で培養する。以後、これを同一組成の培地(抗生物質濃度やホルモン条件は適宜改良する必要があるので、改変培地を用いてもよい)に移植する。こうして、順次形質転換体を得る。
【0025】
【実施例】
本発明を下記の実施例により具体的に説明する。
【0026】
実施例1
(1) 温室内で栽培しているコーヒー属植物(カネフォラ種)の鉢植え個体から、新葉を採取し、滅菌処理し、クリーンベンチ内で約7mm角に切断し、30個の葉切断組織片を得た。滅菌操作では、採取葉を70%エタノール中に1分間、次いで2%次亜塩素酸水溶液中に10分間浸漬した。
【0027】
(2) m1/2MS培地にフェニルウレアタイプのサイトカイニンの1種である4-CPPU(1μM)を添加し、さらにショ糖を30g/l添加し、pHを5.7に調節した後、培地固化剤としてゲランガムを3g/l加えた。この培地を121℃で20分間高圧高温条件下で滅菌した。
【0028】
この滅菌m1/2MS培地に上記葉切断組織片を植え付け、その後10日間、25℃で暗黒条件下に培養した。この培養により、全ての葉切断組織片において、巨視的に細胞分裂の促進、すなわち培養細胞塊の誘導を確認した。
【0029】
(3) こうして得られた前培養物を、アグロバクテリウムのバイナリーベクター法による植物組織への外来遺伝子導入操作に供した。アグロバクテリウム細菌としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) の1種であるEHA101を用い、ベクターとして改良ベクターpBIH1-GFPを用いた(前培養物30個のうち15個)。このベクターをエレクトロポーレーション法によりアグロバクテリウム細菌EHA101に組み込んだ。
【0030】
ベクターを組み込んだアグロバクテリウム細菌を抗生物質であるカナマイシンおよびハイグロマイシンを100mg/lの濃度で含む培地で増殖させ、600nmにおける吸光度約0.5のアグロバクテリウム懸濁液を調製した。
【0031】
この懸濁液に上記前培養葉切断組織を30分間浸漬し、アグロバクテリウム細菌に感染させた。次いで滅菌したろ紙上で葉切断組織から水分を除した後、アセトシリンゴン(遺伝子発現誘導剤)50mg/lを含む固体m1/2MS培地(4-CPPUを1μMおよび2,4-Dを0.1Mμ含有)で上記葉切断組織を1日培養した。
【0032】
(4) アセトシリンゴン含有培地で培養後の葉切断組織を、アグロバクテリウム細菌の除菌剤としてセフォタキシン300mg/lを添加した液体m1/2MS培地で洗浄した後、セフォタキシン300mg/lと抗生物質としてハイグロマイシンを50mg/lの濃度で加えた固体m1/2MS培地(4-CPPUを1μMおよび2,4-Dを0.1Mμ含有)で培養した。次いでセフォタキシンを除き、抗生物質を100mg/lの濃度で添加した培地で約2ヶ月間培養した。以降はこれを3週間毎に同一組成の培地に移植した。こうして、順次抗生物質耐性を示す形質転換体が得られた。
【0033】
このように不定胚形成細胞が抗生物質耐性を示すことにより、ハイグロマイシン耐性遺伝子が導入され発現したことが確認された。また、図2に示すように、GFP遺伝子を導入した形質転換不定胚形成細胞を蛍光照射の顕微鏡下で観察すると、緑色の蛍光を発しており、この点からもGFP遺伝子が発現していることことが確認された。
【0034】
実施例2
実施例1の工程(2) の後に、上記組織片を移植して20日間、25℃で暗黒条件下に追加培養した。こうして得られた前培養物を実施例1の工程(4) に供した。上記の点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0035】
実施例3
植物ホルモンとして、フェニルウレアタイプのサイトカイニンの1種であるTDZ(ジアズロン)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0036】
実施例4
前培養物30個のうち残りの15個について、ベクターとして、pBIH1-GFPの代わりにpIG121-Hmを用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0037】
実施例5
コーヒー属植物として、カネフォラ種の代わりにアラビカ種のものを用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0038】
比較例1
植物ホルモンとして、アデニンタイプのサイトカイニンの1種である2ip(2-イソペンテニルアデニン)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0039】
比較例2
植物ホルモンとして、アデニンタイプのサイトカイニンの1種であるBA(N -ベンジルアデニン)を用いた点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0040】
比較例3
植物ホルモンを添加してない培地において前培養を行った点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0041】
比較例4
対照条件として、実施例1の工程(1) で得られた葉切断組織片を前培養せずにそのまま実施例1の工程(4) に供した点を除いて、実施例1と同じ操作を行った。
【0042】
評価試験
a)細胞分裂促進効果
培養細胞塊の誘導に要する期間を比較した。この結果を表2に示す。表2から分かるように、2ipを用いた場合には培養細胞塊を巨視的に確認するまでに概ね2~3ヶ月を要するのに対して、4-CPPUによって10日から30日以内にほぼ全ての葉切断組織片より培養細胞塊が誘導された。
【0043】
b)実施例および比較例における前培養の前後の葉切断組織片の生重量を、表1にまとめて示す。また、前培養を行う前の葉切断組織片の平均生重量を100とした時の、前培養後の葉切断組織片の生重量の比を図1に示す。表1および図1中、「無添加前培養」は植物ホルモンを添加してない培地において前培養を行った例を示す。「2ip 1/2,4-D 0」は、2ipを濃度1μM含む培地で30日間培養を行った例を示し、「2ip 1/2,4-D 1」は、2ipを濃度1μM含む培地で10日間培養を行い、その後2ip を1μMと2,4-Dを濃度1μM含む培地で20日間培養を行った例を示す。4-CPPUおよびTDZについても同じである。
【0044】
表1および図1から分かるように、従来用いられていた2ipに比べて4-CPPUおよびTDZは格段に生重量を増加させた。すなわちコーヒー属植物の切断組織片をフェニルウレアタイプのサイトカイニンを加えた培地で前培養することによって、組織片の切断部で細胞分裂が大幅に促進され、多量の不定胚形成組織、カルス、培養細胞塊が形成された。
【0045】
c)抗生物質耐性を示す形質転換体の獲得サンプル数を、4-CPPUを含む培地での前処理の前後について比較した。その結果を表3に示す。表3から分かるように、サイトカイニンのうち4-CPPUを含む培地で前処理を行った場合に、格段に高い頻度で抗生物質耐性を示す形質転換体が得られた。
【0046】
【表1】
JP0004016075B2_000002t.gif【0047】
【表2】
JP0004016075B2_000003t.gif【0048】
【表3】
JP0004016075B2_000004t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は前培養条件と生重量増加比の関係を示すグラフである。
【図2】 図2(a) はGFP遺伝子を導入した形質転換不定胚形成細胞を白色光で顕微鏡下で観察した時の写真(倍率:200倍)、図2(b) は同形質転換不定胚形成細胞を蛍光照射の顕微鏡下で観察した時の写真(倍率:200倍)である。
図面
【図1】
0
【図2】
1