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明細書 :原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法および原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3762993号 (P3762993)
公開番号 特開2004-233166 (P2004-233166A)
登録日 平成18年1月27日(2006.1.27)
発行日 平成18年4月5日(2006.4.5)
公開日 平成16年8月19日(2004.8.19)
発明の名称または考案の名称 原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法および原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡
国際特許分類 G01N  13/10        (2006.01)
G01N  13/12        (2006.01)
G12B  21/00        (2006.01)
FI G01N 13/10 F
G01N 13/12 A
G12B 1/00 601Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 20
出願番号 特願2003-020979 (P2003-020979)
出願日 平成15年1月29日(2003.1.29)
審査請求日 平成15年1月29日(2003.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】服部 賢
【氏名】金光 義彦
【氏名】大門 寛
【氏名】長村 俊彦
【氏名】宮武 優
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】100113701、【弁理士】、【氏名又は名称】木島 隆一
【識別番号】100116241、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 一郎
審査官 【審査官】小野 忠悦
参考文献・文献 特開平9-178759(JP,A)
特開平8-178934(JP,A)
特開平5-340899(JP,A)
特許第3153366(JP,B2)
特開平8-304418(JP,A)
特開平6-207819(JP,A)
特開平7-225136(JP,A)
特開2003-28817(JP,A)
特開平8-110314(JP,A)
特開平7-248217(JP,A)
辻幸一,我妻和明,杉山和正,長谷川幸雄,ナノワールドへご招待 元素の識別 —X線照射による元素分析型STMの試み—,バウンダリー,1999年,第15巻、第8号,p.10-13
調査した分野 G01N 13/10-13/24
G12B 21/00-21/24
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにし、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、
形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出工程とを含むとともに、
上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行ない、
上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、
上記検出工程では、上記プローブが試料表面に近接する周期に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なうことを特徴とする原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法。
【請求項2】
プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにし、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、プローブの先端を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、
形成された空孔準位よりも浅い、試料表面を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子がプローブの先端を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出工程とを含むとともに、
上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行ない、
上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、
上記検出工程では、上記プローブが試料表面に近接する周期に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なうことを特徴とする原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法。
【請求項3】
空孔形成工程では、電子線またはX線を照射することでエネルギーを印加することを特徴とする請求項1または2に記載の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法。
【請求項4】
走査工程で、プローブまたは試料表面にバイアス電圧を周期的に印加することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法。
【請求項5】
プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測する計測手段と、
プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査手段と、
試料表面の凹凸形状を観察する観察手段と、
プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させ、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにする近接手段と、
試料表面から10分の数nmの距離に近接したプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加する印加手段と、
プローブに対して試料表面を相対的に走査しているときに、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子といった、異なる原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出手段とを備えており、
上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、
上記検出手段は、上記プローブが試料表面に近接する周期に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なうものであることを特徴とする原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡。
【請求項6】
エネルギーの印加手段が、電子銃またはX線発生装置であることを特徴とする請求項5に記載の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡。
【請求項7】
プローブまたは試料表面にバイアス電圧を周期的に印加するバイアス印加手段をさらに備えることを特徴とする請求項5または6に記載の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を、試料表面の観察と同時に行なうことのできる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法、およびそのための原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
走査プローブ顕微鏡法とは、走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を用いて、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査することで、試料表面の凹凸形状を観察する方法である。
【0003】
SPMの例としては、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)や、走査トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)が挙げられる。
【0004】
AFMでは、ピエゾ素子等を利用して3次元的に微小に操作される試料表面に対して、振動する微小な板状のレバーの先端に取り付けられた、先端が先鋭化された微小なプローブを試料表面に接近させて、プローブと試料表面との間に生じる原子間力をレバーの固有振動数の変化として検出する。そしてプローブと試料とを2次元的に走査しつつ、原子間力による振動数の変化が一定になるようにプローブと試料との間隔を調整し、その間隔を調整する場合にピエゾ素子に印加する電圧に基づいて、試料表面の原子間力を反映した凹凸形状が測定される。
【0005】
このとき、原子間力は10分の数nmの間隔で変化するため、AFMを用いれば、試料表面の原子間力を反映した凹凸形状を原子レベルで観察することができる。
【0006】
STMでは、ピエゾ素子等を利用して3次元的に微小に走査される試料に対して、導電性の針状のプローブを接近させて、プローブと試料との間に流れる微小なトンネル電流に基づいて、試料表面の電子状態を反映した凹凸形状が測定される。
【0007】
近年では、SPMと他の分析機器とを組み合わせた様々な複合装置も開発されている。このような複合装置として、例えば、SPMおよび試料内部から放出される二次電子の検出を行なう走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を組み合わせた装置が挙げられる(非特許文献1を参照)。
【0008】
【非特許文献1】
http://www.omicron.de/products/gemini/nanoprobe-gemini.html
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の走査プローブ顕微鏡法では、観察している試料表面の凹凸形状を構成する元素の種類を同定することはできないという問題がある。また上述したように、様々な複合装置が開発されているが、これまでに上記の問題を解決できるものは開発されていない。
【0010】
そこで本発明は、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を、試料表面の観察と同時に行なうことのできる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法、およびそのための原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにし、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出工程とを含むとともに、上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行なうことを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、プローブの先端と試料表面との間の距離を10分の数nmとすることで、試料表面を構成する原子は、プローブの先端を構成する原子の電子軌道と重なる電子軌道を持つ。このようなときに、プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加して、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成させると、形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移する。そしてこれにより、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーが放出される。
【0013】
試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーは、プローブの先端を構成する原子および試料表面を構成する原子元素の組み合わせや、プローブ、あるいは試料表面に印加するバイアス電圧によって決定される。したがって、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出すれば、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0014】
また上記の構成によれば、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔が形成されると、直ちにこの空孔準位より浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が遷移する。したがって、空孔形成工程と、走査工程とを同時に行なう、あるいは、検出工程と走査工程とを同時に行なうことで、観察している試料表面を構成する元素の種類の同定を、試料表面の観察と同時に行なうことができる。
【0015】
また、本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにし、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、プローブの先端を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、形成された空孔準位よりも浅い、試料表面を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子がプローブの先端を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出工程とを含むとともに、上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行なうことを特徴としている。
【0016】
これによれば、形成された空孔準位よりも浅い、試料表面を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が、プローブの先端を構成する原子の内殻準位に形成された空孔に遷移することで、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーが放出される。このようにして放出される原子間遷移エネルギーは、プローブの先端を構成する原子および試料表面を構成する原子元素の組み合わせや、プローブ、あるいは試料表面に印加するバイアス電圧によって決定される。それゆえ、この原子間遷移エネルギーを検出することで、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0017】
また、本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、上記検出工程では、上記プローブが試料表面に近接する周期(周波数)に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なうことを特徴としている。
【0018】
また、本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、空孔形成工程では、電子線またはX線を照射することでエネルギーを印加することを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、電子線やX線を照射することでエネルギーを印加すれば、原子間オージェ電子および/または原子間特性X線が、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーとして放出される。
【0020】
原子間オージェ電子の運動エネルギーや、原子間特性X線のエネルギー(波長)は、プローブの先端を構成する原子および試料表面を構成する原子元素の組み合わせや、プローブ、あるいは試料表面に印加するバイアス電圧によって決定される。したがって、上記の構成によれば、原子間オージェ電子の運動エネルギー、あるいは、原子間特性X線のエネルギーを検出することで、試料表面を構成する原子のうち、プローブ先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0021】
また、本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、走査工程で、プローブまたは試料表面にバイアス電圧を周期的に印加することを特徴としている。
【0022】
一般に、物質に電子線あるいはX線を照射することでエネルギーを印加した場合、原子内オージェ電子や原子内特性X線が、原子内遷移エネルギーとして放出される。したがって、本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法において、プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加すれば、プローブを構成する原子および試料表面を構成する原子から、原子内遷移エネルギーが、原子間遷移エネルギーとともに放出される。
【0023】
ここで、プローブ、あるいは試料表面に、バイアス電圧を周期的に印加すれば、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーのみを周期的に変化させることができるので、ノイズ強度に対する信号強度の比率をより良くして、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを効率よく検出することができる。
【0024】
また、本発明では、原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供する。本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測する計測手段と、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査手段と、試料表面の凹凸形状を観察する観察手段と、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させ、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにする近接手段と、試料表面から10分の数nmの距離に近接したプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加する印加手段と、プローブに対して試料表面を相対的に走査しているときに、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子といった、異なる原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出手段とを備えていることを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、試料表面から10分の数nmの距離に近接したプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加して、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子といった、異なる原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを、プローブに対して試料表面を相対的に走査しながら検出することができる。これによれば、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を試料表面の観察と同時に行なうことのできる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができる。
【0026】
また本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、上記検出手段は、上記プローブが試料表面に近接する周期(周波数)に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なうものであることを特徴としている。
【0027】
また本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、エネルギーの印加手段が、電子銃またはX線発生装置であることを特徴としている。
【0028】
上記の構成によれば、電子線あるいはX線を照射することで、エネルギーを印加する原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができる。
【0029】
また、本発明の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、プローブまたは試料表面にバイアス電圧を周期的に印加するバイアス印加手段をさらに備えることを特徴としている。
【0030】
一般に、物質に電子線あるいはX線を照射することでエネルギーを印加した場合、原子内オージェ電子や原子内特性X線が原子内遷移エネルギーとして放出される。したがって、印加手段によってプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加すれば、プローブを構成する原子および試料表面を構成する原子から、原子内遷移エネルギーが、原子間遷移エネルギーとともに放出される。
【0031】
ところで、原子間遷移エネルギーは、プローブまたは試料表面に印加するバイアス電圧によって決定される。そこで、プローブ、または試料表面に、バイアス電圧を周期的に印加すれば、原子間遷移エネルギーのみを周期的に変化させることができるので、ノイズ強度に対する信号強度の比率をより良くして、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを効率よく検出することができる。それゆえ、プローブ、あるいは試料表面にバイアス電圧を周期的に印加するバイアス印加手段をさらに備えることで、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を効率よく行なえる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図1~図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0033】
まず、本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法の説明を行なう前に、本発明がどのような原理に基づいて発案されたかについて説明する。
【0034】
<原子内遷移エネルギーについて>
試料表面を構成する原子の内殻準位に存在する電子、すなわち内殻電子を励起するエネルギー(以下、このエネルギーを「励起エネルギー」という)を試料表面に印加すると、内殻準位には空孔が形成される。このとき、形成された空孔準位よりも浅い、同原子内の内殻準位または価電子帯にある電子が、内殻準位に形成された空孔を満たすために遷移してくるが、その際に、真空中にエネルギーが、オージェ電子や特性X線などの形態で放出される。このようにして放出されるエネルギーは、原子内で生じる電子遷移に基づくことから、ここでは、「原子内遷移エネルギー」という。
【0035】
原子内遷移エネルギーは、試料表面を構成する原子元素の種類によって異なる。したがって、原子内遷移エネルギーを調べれば、試料表面を構成する原子の元素の種類を同定することができる。
【0036】
例えば、電子線やX線を照射して、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成すれば、空孔が形成された内殻準位よりも浅い、同原子内の内殻準位または価電子帯の電子が、内殻準位に形成された空孔に遷移することによって、原子内オージェ電子および/または原子内特性X線が、原子内遷移エネルギーとして放出される。
【0037】
原子内オージェ電子の運動エネルギーや、原子内特性X線のエネルギー(波長)は、試料表面を構成する原子の元素の種類によって異なる。そこで、原子内オージェ電子の運動エネルギー、あるいは原子内特性X線のエネルギーを調べれば、試料表面を構成する原子の元素の種類を同定することができる。
【0038】
<原子間遷移エネルギーについて>
ここで、試料表面から10分の数nmの距離に、他の原子(以下、この原子を「原子A」と呼ぶ)が存在しているときに、試料表面にエネルギーを印加することによって、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔が形成された場合を考える。
【0039】
試料表面から10分の数nmの距離に原子Aがあれば、試料表面を構成する原子の電子軌道と、原子Aの電子軌道とが重なることになる。このように互いの電子軌道が重なっているときに、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔が形成されると、この空孔が形成された内殻準位よりも、より浅いエネルギーをもつ、原子A側の内殻準位または価電子帯に存在する電子が、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔を満たすために遷移する。そしてこの電子の遷移によって、エネルギーが放出される。このとき放出されるエネルギーは、試料表面を構成する原子と、原子Aといった、異なる原子間での電子の遷移によって生じることから、ここでは、「原子間遷移エネルギー」という。
【0040】
原子間遷移エネルギーは、試料表面を構成する原子および原子Aの元素の組み合わせによって決まる、ある特定のエネルギーをもっている。そのため、その特定のエネルギーを計測すれば、試料表面を構成する原子のうち、原子Aと重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0041】
例えば、試料表面を構成する原子の電子軌道と、原子Aの電子軌道とが重なっているときに、電子線やX線を照射して、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成すれば、形成された空孔準位よりも浅い、原子Aの内殻準位または価電子帯の電子が試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔に遷移することで、原子間オージェ電子および/または原子間特性X線が、原子間遷移エネルギーとして放出される(このとき、放出される原子間オージェ電子と原子間特性X線との強度比率は、様々な条件に依存する)。
【0042】
原子間オージェ電子の運動エネルギーや、原子間特性X線のエネルギー(波長)は、試料表面を構成する原子および原子Aの原子元素の種類によって異なる。そこで、原子間オージェ電子の運動エネルギーや、原子間特性X線のエネルギーを調べれば、原子Aと重なる電子軌道をもつ、試料表面上の局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0043】
本発明は、このように、異なる種類の原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを利用したものである。以下、本実施形態にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法、および原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡について、具体的に説明する。
【0044】
<原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法について>
本実施形態にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出する検出工程とを含むとともに、上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行なう構成である。なお、本実施形態において、上述した「空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位」とは、プローブの先端を構成する原子内の複数の内殻準位のうち、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔の空孔準位よりも電子エネルギーのより高い(真空準位側に向かう方向)内殻準位、言い換えれば、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔の空孔準位よりも束縛エネルギーのより浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位を示している。
【0045】
本実施形態において、プローブを構成する材質は、特に限定されるものではない。例えば、走査工程において、物性値としてプローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力を計測する場合には、プローブを電気伝導体から構成すればよく、具体的には、金属コートのシリコンなどを用いることができる。
【0046】
また、走査工程において、物性値としてプローブと試料表面との近接相互作用によって決定されるトンネル電流を計測する場合には、プローブを電気伝導体から構成すればよい。このとき電気伝導体として、例えば、白金・イリジウム(Pt-Ir)を使用すればよい。
【0047】
プローブの曲率半径は、数10nm~数100nm程度とすればよく、特に限定されるものではない。
【0048】
また、本実施形態において、試料表面としては、電荷移動によってチャージアップしない程度の導電性を有する表面物質を用いればよい。
【0049】
本実施形態では、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離(いわゆる結晶の原子間距離程度)に近接させる。このとき、プローブの先端と試料表面との間の距離が、0.2nm~0.3nmの範囲内になることがより好ましい。これによって、プローブの先端を構成する原子の電子軌道と、試料表面を構成する原子の電子軌道とが重なる。
【0050】
このようにプローブの先端と試料表面とを近接させて、図1に示すように、プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加して、試料表面を構成する原子の内殻準位に存在する電子(内殻電子)を励起するとともに、この内殻準位に空孔を形成する。
【0051】
試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔には、形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が遷移する。そしてこれにより試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーが放出される。
【0052】
本実施形態では、上述のようにして放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出する。原子間遷移エネルギーの検出には、分析器(アナライザー)を用いればよい。
【0053】
このようにして放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーは、試料表面およびプローブ先端を構成する原子内で生じる電子遷移によって放出される原子内遷移エネルギーとは異なるエネルギーを有している。また、原子間遷移エネルギーは、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子の元素の組み合わせや、プローブ、あるいは試料表面に印加するバイアス電圧に依存する。
【0054】
なお、本実施形態では、同原子内、すなわち試料表面を構成する原子内の、形成された空孔準位よりも浅い内殻準位または価電子帯にある電子が、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔を満たすために遷移してくることで、試料表面原子内遷移エネルギーが放出される。
【0055】
また、エネルギーを印加することで、プローブを構成する原子の内殻準位にも空孔が形成され、この空孔には、プローブを構成する原子内の、プローブを構成する原子に形成された空孔準位よりも浅い内殻準位または価電子帯にある電子が遷移してくる。そしてこれによりプローブ先端原子内遷移エネルギーが放出される。
【0056】
試料表面原子内遷移エネルギーおよびプローブ先端原子内遷移エネルギーは、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーとともに放出されるため、原子間遷移エネルギーを判別するのが困難になる虞がある。ここで、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーは、プローブまたは試料表面に印加するバイアス電圧によって決定されることから、本実施形態では、プローブ、または試料表面に、バイアス電圧を周期的に印加させる。そうすれば、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーのみが周期的に変化するので、試料表面原子内遷移エネルギーおよびプローブ先端原子内遷移エネルギーと、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーとを分離することで、ノイズ強度に対する信号強度の比率をより良くすることができる。そしてこれにより、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを効率よく検出することができる。
【0057】
また、プローブを試料表面に周期的に近接させる構成とすれば、原子間遷移エネルギーは、プローブが試料表面に近接したときのみ放出される。そこで、プローブが試料表面に近接する周期(周波数)に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なうようにすれば、より高感度で、原子間遷移エネルギーを検出することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、例えば電子線やX線を照射することで、エネルギーを印加することができる。電子線やX線のエネルギーは、特に限定されるものではないが、1keV以上が好ましい。また、電子線やX線のビーム径は、数十μm以下が最も望ましいが、1mm以下であればよく、特に限定されるものではない。
【0059】
電子線やX線を照射すると、試料表面を構成する原子の内殻準位に存在する電子が励起されるとともに、内殻準位には空孔が形成される。そしてこの空孔に、形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯に存在する電子が遷移し、これによって原子間オージェ電子および/または原子間特性X線が、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーとして放出される。本実施形態では、放出される原子間オージェ電子の運動エネルギー、あるいは、原子間特性X線のエネルギー(波長)を検出する。
【0060】
図2に、電子線やX線の照射によって、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔が形成されたときに、この空孔に、試料表面を構成する原子の価電子帯から電子が遷移してくるときと、プローブの先端を構成する原子の価電子帯から電子が遷移してくるときとの、それぞれの場合を示す電子エネルギーダイアグラムを示す。
【0061】
同図に示すように、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔に、試料表面を構成する原子の価電子帯から電子が遷移してくることで、運動エネルギー(Ek1)を有する原子内オージェ電子が放出される。
【0062】
一方で、上記空孔に、プローブの先端を構成する原子の価電子帯から電子が遷移してくると、運動エネルギー(Ek2)を有する原子間オージェ電子が放出される。これら、原子内オージェ電子(Ek1)、原子間オージェ電子(Ek2)は、それぞれ、図3に示すように、異なる運動エネルギーを有している。また、原子間オージェ電子の運動エネルギーは、プローブを構成する原子と試料表面を構成する原子との原子元素の組み合わせや、プローブに印加するバイアス(Vs)に依存する。そのため、原子内オージェ電子の運動エネルギー(Ek1)と、原子間オージェ電子の運動エネルギー(Ek2)とを判別することができる。したがって、原子間オージェ電子の運動エネルギーを検出すれば、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0063】
ここでは図示しないが、電子線やX線を照射することで放出される原子間特性X線は、原子内特性X線のエネルギーと異なるエネルギーを有している。そしてまた、原子間特性X線のエネルギーは、プローブ原子と試料表面原子との組み合わせや、プローブに印加するバイアス(Vs)に依存する。それゆえ、原子内特性X線のエネルギーと、原子間特性X線のエネルギーとを判別することができる。したがって、原子間特性X線のエネルギーを検出すれば、試料表面を構成する原子のうち、プローブ先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0064】
本実施形態によれば、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔が形成されると、直ちにこの空孔へとプローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が遷移する。したがって、プローブの先端を試料表面から10分の数nm距離に近接させて、このプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程、あるいは、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が、試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される原子間遷移エネルギーを検出する検出工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブに対して試料表面を相対的に走査させる走査工程とを同時に行なえば、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を、試料表面の観察と同時に行なうことができる。
【0065】
このようなことから、本実施形態にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法によれば、試料表面を構成する原子一つ一つを、元素を区別しながら観察することができる。それゆえ、本実施形態にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法を、例えば、ナノメータースケールに細線化した、半導体表面パターンの評価に利用することができる。
【0066】
また例えば、アトミック・マニュピュレーションの技術を利用して、少量ではあるが、機能性のある任意の分子や、クラスターを将来的に作成することもできると考えられる。
【0067】
なお、本実施形態にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法の「空孔形成工程」、「検出工程」を、それぞれ、「プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、プローブの先端を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程」、「形成された空孔準位よりも浅い、試料表面を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子がプローブの先端を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出する検出工程」としてもよい。
【0068】
この場合には、プローブの先端を構成する内殻準位に形成された空孔準位よりも浅い、試料表面を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が、プローブの先端を構成する原子の内殻準位に形成された空孔に遷移し、これにより試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーが放出される。そこで、この原子間遷移エネルギーを検出すれば、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定することができる。
【0069】
<原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡について>
次に、本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡について説明する。本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、図4に示すように、主として、計測手段(図示せず)と、走査手段1と、観察手段(図示せず)と、近接手段(図示せず)と、印加手段2と、検出手段3とを備えて構成されている。
【0070】
計測手段は、走査手段1の備えるプローブ4と、該走査手段1の図示しない試料ステージに搭載される試料5表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測するものである。走査手段1は、プローブ4に対して、試料5表面を相対的に走査するものである。観察手段は、試料5表面の凹凸形状を観察するものである。
【0071】
近接手段は、プローブ4の先端を試料5表面から10分の数nmの距離に近接させるものである。印加手段2は、試料5表面から10分の数nmの距離に近接したプローブ4の先端および試料表面にエネルギーを印加するものである。
【0072】
検出手段3は、プローブ4に対して試料5表面を相対的に走査しているときに、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子といった、異なる原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出するものである。検出手段3としては、分析器(アナライザー)を用いればよい。
【0073】
なお、本実施形態では、印加手段2および検出手段の位置は、必要に応じて適宜、調節可能に設けられているものとする。
【0074】
本実施形態において、印加手段2としては、特に限定されているものではない。したがって、印加手段2として、例えば、電子銃、あるいはX線発生装置を用いることができる。
【0075】
このような構成において、試料5表面に対して、プローブ4の先端が10分の数nmの距離に近接したときに、印加手段2を介してプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加する。そして、エネルギーの印加によって、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子といった、異なる原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを、検出手段3で検出する。このとき、プローブ4に対して試料5表面を相対的に走査しながら、原子間遷移エネルギーを検出するので、観察している試料5表面を構成する原子のうち、プローブを構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を、試料5表面の観察と同時に行なうことができる。
【0076】
本実施形態では、上述した構成に加えて、さらに、プローブ4または試料5表面に、バイアス電圧を周期的に印加するバイアス印加手段(図示せず)を備える構成とすることが好ましい。
【0077】
原子間遷移エネルギーは、プローブ4を構成する原子と試料5表面を構成する原子との原子元素の組み合わせだけではなく、プローブ4、または試料5表面に印加するバイアス電圧によっても決定されるので、プローブ4または試料5表面にバイアス電圧を周期的に印加すれば、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーのみが周期的に変化する。これによれば、ノイズ強度に対する信号強度の比率をより良くして、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを効率よく検出することができる。このようにすれば、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を効率よく行なえる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができる。
【0078】
以上のように、本実施形態の原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡によれば、原子間遷移エネルギーを検出しながら、プローブ4に対して試料5表面を相対的に走査することで、試料5表面の凹凸形状を原子レベルで観察できるとともに、その凹凸形状を構成する原子の元素の種類を同定することのできる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡とすることができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0080】
図5は、本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡の一例として、原子間オージェ分析走査プローブ顕微鏡の構成を概略的に示している。
【0081】
同図に示すように、原子間オージェ分析走査プローブ顕微鏡は、内部が真空状態とされる真空容器10内に設置された試料操作部40、該試料操作部40に対向して配置されたプローブ部50、プローブ部50および試料操作部40に焦点をもつ電子線源部20、該電子線源部20に対向して配置された蛍光板部60、および電子分光部80を有している。
【0082】
プローブ部50および試料操作部40は、真空容器10内に配置された支持台11上に保持されている。支持台11は、真空容器10の外部より操作できる動作伝達機構を備えたXYZステージ12上に保持されている。
【0083】
プローブ部50には、短冊形のレバー部51a先端に突起部51bを持つカンチレバー51が設けられている。カンチレバー51を保持するカンチレバーホルダ52には、ピエゾ素子53が設置されている。このピエゾ素子53に交流電圧を印加することにより、カンチレバー51のレバー部51aを振動させることができる。
【0084】
試料操作部40には、表面観察および元素分析が行なわれる試料41が載置され、試料41を固定する試料ステージ42が、円筒状の走査ピエゾ素子43上に保持されている。走査ピエゾ素子43は、進退駆動部44内に配置されており、進退駆動部44はその下部に設置された試料ステージ台45にシェアピエゾ46を介して載置されている。
【0085】
試料ステージ台45に載置された進退駆動部44は、シェアピエゾ46による電歪効果に基づいて数mmにわたり、プローブ部50に対して接近あるいは離れる方向に移動する。
【0086】
試料ステージ42を保持している走査ピエゾ43は、そのもう一端を進退駆動部44に保持されている。走査ピエゾ43は、試料ステージ42を試料面鉛直方向であるZ方向に移動させるZ方向移動用ピエゾ素子(不図示)と、試料ステージ42を試料面内方向であるX-Y方向に移動させるX方向移動用ピエゾ素子(不図示)、およびY方向移動用ピエゾ素子(不図示)によって構成されている。これらのピエゾ素子は電圧の制御による電歪効果によって、試料41とカンチレバー51の相対位置を、3次元的に制御することができる。
【0087】
真空容器10には、試料41およびカンチレバー51に向かい、電子線源部20が配置されている。
【0088】
電子線源部20に対向する位置には、電子線源部20から放出され、試料41およびカンチレバー51周辺を通過した電子線を光信号に変換する蛍光板部60が配置され、電子線の通過位置を視覚的に感知することができる。
【0089】
真空容器10には、試料41およびカンチレバー51に向かい、電子検出部70が配置されている。電子検出部70は、スリット71、引き込み電極72、光電子増倍管73を有している。電子線源部20より放出された電子は、試料41あるいはカンチレバー51に衝突する。このとき、試料41あるいはカンチレバー51から放出さる2次電子はスリット71を通過し、引き込み電極72により加速され、光電子増倍管73に進入する。光電子増倍管73に進入した電子は、10倍程度に増幅され、電気信号として検出される。
【0090】
真空容器10には、電子分光部80が、試料41およびカンチレバー51に向かい配置されている。電子分光部80は、スリット81、電子引き込み部82、エネルギー分光部83、および電子検出部84から構成されている。試料41およびカンチレバー51から放出された電子は、スリット81を通過し、電子引き込み部82内で収束され、エネルギー分光部83に進入する。エネルギー分光部83は半球状の外部電極83a、および内部電極83bにより構成されている。エネルギー分光部83に進入した電子は、外部電極83a、および内部電極83bの間の真空空間を飛行し、外部電極83a、および内部電極83bの電位差により進行方向を変えられ、特定の運動エネルギーで進入した電子のみが、外部電極83a、および内部電極83bに衝突することなく、電子検出部84に進入する。エネルギー分光部83を通過し、電子検出部84に進入する電子の運動エネルギーは、外部電極83a、および内部電極83bの電位差により選択できる。
【0091】
このような構成の原子間オージェ分析走査プローブ顕微鏡は、試料ステージ42上に配置された試料41表面の形状を、試料41表面およびカンチレバー51先端部との間で働く原子間力による、カンチレバー51の共鳴周波数の変化に基づいて測定することができるとともに、試料41およびカンチレバー51から放出されるオージェ電子による元素分析も可能になっている。
【0092】
原子間力に基づいて試料41の表面を測定する場合は、試料41は試料ステージ42上に載置されて保持されている。
【0093】
カンチレバー51は、交流電圧を印加することにより、電歪効果により周期的な振動を発生するピエゾ素子53を備えた、カンチレバーホルダ52に保持されている。
【0094】
カンチレバー51の振動は、図示しない変位検出機構によって電子的な信号に変換され、信号電圧は図示しない増幅回路、および位相調整回路を介し、ピエゾ素子53に印加される。この電圧によりピエゾ素子53は振動し、その振動がカンチレバー51に伝達され、カンチレバー51からは再び信号電圧が出力される。このような自励発振回路により、カンチレバー51は、その固有振動数で発振状態となり、振動を続ける。
【0095】
このような状態でカンチレバー51の発振周波数を測定しつつ、試料操作部40に取り付けられた進退駆動部44を前進させ、試料41表面をカンチレバー突起部51bに接近させる。
【0096】
そして、試料41表面とカンチレバー突起部51b表面の距離が十分の数nmまで接近されると、試料41表面とカンチレバー突起部51b表面間で働く力によって、カンチレバー51の発振周波数が変化する。そして、この周波数の変化が一定になるように、試料ステージ42が走査ピエゾ43によってZ方向(上下方向)に制御される。このとき、試料41がプローブ部50に対して水平に走査されるように、走査ピエゾ43によって、試料ステージ42がX-Y方向に走査される。
【0097】
これにより、試料41表面のX-Y座標の各点上でのカンチレバー突起部51bと、試料41表面の相対的な距離、すなわち試料表面の凹凸が測定される。測定された凹凸は、画像表示装置によって画像表示される。
【0098】
このように試料41およびカンチレバー51に働く力は、両表面を構成する原子間に作用するファンデルワールス力などに基づいており、したがって試料41表面を原子レベルで測定することができる。
【0099】
さらに、カンチレバー51あるいは試料41表面から放出される原子間オージェ電子を測定する場合には、上述の場合と同様、カンチレバー51は発振状態で試料41表面に接近している。
【0100】
このような状態で、電子線源20から、試料41およびカンチレバー51先端に向かい、電子線を照射する。このとき、蛍光板部60に投影される電子線の影を観察するか、あるいは電子検出部70に進入する2次電子強度を観察する、もしくはカンチレバー51に電子が照射されることにより流れる電流を検出することにより、電子線源部20から放出された電子線を、カンチレバー51先端および試料41表面に集中的に照射するよう調整する。
【0101】
試料41表面に照射された電子線は、試料41中の原子の内殻電子を励起してオージェ過程を誘発し、試料41からはオージェ電子が放出される。
【0102】
試料41から放出されたオージェ電子の一部はスリット81および電子引き込み部82を通過し、エネルギー分光部83に進入する。
【0103】
エネルギー分光部83の外部電極83a、および内部電極83bには、それぞれ適当な電圧が印加されており、両者電極間には電界が形成されている。エネルギー分光部83に進入したオージェ電子の軌道は、上述電界内で曲げられ、所定のエネルギーを有するオージェ電子のみが、電子検出部84に進入する。このことにより、試料41から放出されるオージェ電子のエネルギー分析が可能になる。
【0104】
このように、検出されるオージェ電子は、電子線照射位置全域から放出されたオージェ電子であり、したがって、観察領域の平均的な元素分析が可能である。
【0105】
さらに、カンチレバー51による試料41表面の観察を行なう場合、カンチレバー51は試料41上で振動しているため、カンチレバー51先端は周期的に試料41表面に接近する。このとき、カンチレバー51の振幅は数十nmであり、最近接時は、試料41表面に10分の数nmまで接近する。
【0106】
このような状態で、試料41表面の観察位置に電子線源部20より電子線を照射すると、試料41に照射された電子線は試料41の原子の内殻電子を励起し、試料41の原子の内殻準位に空孔を生じさせる。このときカンチレバー51先端が10分の数nmまで接近していると、カンチレバー51先端の外殻電子(価電子)が試料41の原子の内殻準位に生じた空孔に供給される。このときカンチレバー51から原子間の電子の授受により生成するオージェ電子、すなわち原子間オージェ電子が放出される。そのエネルギーは、カンチレバー51の元素と試料表面の元素の組み合わせにより決定される。
【0107】
さらにこのとき、試料41あるいはプローブ部51にバイアス電圧を印加することにより、前記原子間オージェ電子のエネルギーは、バイアス電圧に依存して変化する。これにより、試料41、およびカンチレバー51内でおこる原子内オージェ電子と、前記オージェ電子を分離して検出することができる。
【0108】
このような原子間オージェ過程は、カンチレバー51先端と試料41表面の原子間のみで起こるため、原子間オージェ電子を測定することにより、カンチレバー51による試料41の表面構造観察点の元素分析を、原子レベルの空間分解能で測定することができる。
【0109】
また、上述の原子間オージェ電子は、カンチレバー51が試料41表面に周期的に数オングストロームまで接近するときのみ生成する。したがって電子分光部80における検出をカンチレバー51の発振周波数に同期させることにより、高感度での検出が可能である。
【0110】
電子分光部80の外部電極83a、および内部電極83bには、上述の原子間オージェ電子がもつエネルギーの電子がエネルギー分光部83を通過できるような所定の電圧を印加し、前述のカンチレバー51による表面形状観察を行いながら、電子分光部80の電子検出部84にて検出される電子の強度を画像化することにより、試料41表面における表面構造の観察と、特定元素の濃度分布を同時に観察することができる。
【0111】
【発明の効果】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、以上のように、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにし、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、試料表面を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、形成された空孔準位よりも浅い、プローブの先端を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子が試料表面を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出工程とを含むとともに、上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行なう構成である。
【0112】
また、本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、以上のように、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させて、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにし、該プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加することで、プローブの先端を構成する原子の内殻準位に空孔を形成する空孔形成工程と、形成された空孔準位よりも浅い、試料表面を構成する原子の内殻準位または価電子帯の電子がプローブの先端を構成する原子の内殻準位に形成された空孔へ遷移するときに放出される試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出工程とを含むとともに、上記2つの工程のうちの少なくとも1つの工程と、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測しながら、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査工程とを同時に行なう構成である。
【0113】
それゆえ、プローブを構成する原子と試料表面を構成する原子との原子元素の組み合わせや、プローブ、または試料表面に印加するバイアス電圧によって決まる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを利用することで、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を、試料表面の観察と同時に行なうことができるという効果を奏する。
【0114】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、以上のように、上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、上記検出工程では、上記プローブが試料表面に近接する周期(周波数)に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なう構成である。
【0115】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、以上のように、空孔形成工程では、電子線またはX線を照射することでエネルギーを印加する構成である。
【0116】
これによれば、原子間遷移エネルギーとして放出される原子間オージェ電子、あるいは原子間特性X線のエネルギーを検出することで、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を行なうことができるという効果を奏する。
【0117】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法は、以上のように、走査工程で、プローブまたは試料表面にバイアス電圧を周期的に印加する構成である。
【0118】
それゆえ、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーのみを周期的に変化させることができるので、ノイズ強度に対する信号強度の比率をより良くして、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを効率よく検出することができるという効果を奏する。
【0119】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、以上のように、プローブと試料表面との近接相互作用によって決定される原子間力やトンネル電流などの物性値を計測する計測手段と、プローブに対して試料表面を相対的に走査する走査手段と、試料表面の凹凸形状を観察する観察手段と、プローブの先端を試料表面から10分の数nmの距離に近接させ、試料表面を構成する原子の電子軌道とプローブの先端を構成する原子の電子軌道とを重なるようにする近接手段と、試料表面から10分の数nmの距離に近接したプローブの先端および試料表面にエネルギーを印加する印加手段と、プローブに対して試料表面を相対的に走査しているときに、プローブを構成する原子と、試料表面を構成する原子といった、異なる原子間での電子の遷移によって生じる試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを検出し、試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類を同定する検出手段とを備えている構成である。
【0120】
それゆえ、観察している試料表面を構成する原子のうち、プローブの先端を構成する原子と重なる電子軌道をもつ、局所的な原子のみの元素の種類の同定を、試料表面の観察と同時に行なうことのできる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができるという効果を奏する。
【0121】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、以上のように、上記プローブは試料表面に周期的に近接させる構成であって、上記検出手段は、上記プローブが試料表面に近接する周期(周波数)に合わせて、原子間遷移エネルギーの検出を行なう構成である。
【0122】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、以上のように、エネルギーの印加手段が、電子銃またはX線発生装置である構成である。
【0123】
それゆえ、電子線あるいはX線を照射することで、エネルギーを印加する原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができるという効果を奏する。
【0124】
本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡は、以上のように、プローブまたは試料表面に、バイアス電圧を周期的に印加するバイアス印加手段をさらに備える構成である。
【0125】
それゆえ、原子間遷移エネルギーのみを周期的に変化させることができるので、ノイズ強度に対する信号強度の比率をより良くして、試料・プローブ間の原子間遷移エネルギーを効率よく検出することができる。それゆえ、試料表面を構成する元素の種類の同定を効率よく行なえる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡法において、プローブの先端および試料表面にエネルギーを印加しているときの、プローブおよび試料表面の様子を示す図である。
【図2】 試料表面を構成する原子、およびプローブを構成する原子の電子エネルギーダイアグラムを示す図である。
【図3】 放出される電子エネルギーに対する、原子内オージェ電子、および原子間オージェ電子それぞれの運動エネルギー(信号強度)を示すグラフである。
【図4】 本発明の実施の一形態にかかる原子間遷移エネルギー分析走査プローブ顕微鏡の概略の構成を示す正面図である。
【図5】 実施例に示す原子間オージェ分析走査プローブ顕微鏡の概略の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 走査手段
2 印加手段
3 検出手段
4 プローブ
5 試料
10 真空容器
11 支持台
12 XYZステージ
20 電子線源部
40 試料操作部
41 試料
42 試料ステージ
43 走査ピエゾ
44 進退駆動部
45 試料ステージ台
46 シェアピエゾ
50 プローブ部
51 カンチレバー
52 カンチレバーホルダ
53 ピエゾ素子
60 蛍光板部
61 蛍光板
70 電子検出部
71 スリット
72 引き込み電極
73 光電子増倍管
80 電子分光部
81 スリット
82 電子引き込み部
83 エネルギー分光部
84 電子検出部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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