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明細書 :共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3975273号 (P3975273)
公開番号 特開2004-266100 (P2004-266100A)
登録日 平成19年6月29日(2007.6.29)
発行日 平成19年9月12日(2007.9.12)
公開日 平成16年9月24日(2004.9.24)
発明の名称または考案の名称 共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子及びその製造方法
国際特許分類 H01L  51/30        (2006.01)
H01L  51/40        (2006.01)
H01L  51/00        (2006.01)
G02F   1/361       (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
FI H01L 29/28 220D
H01L 29/28 250F
H01L 29/28 310D
H01L 29/28 100Z
H01L 29/28 220A
G02F 1/361
H01L 31/04 D
請求項の数または発明の数 2
全頁数 70
出願番号 特願2003-054719 (P2003-054719)
出願日 平成15年2月28日(2003.2.28)
審査請求日 平成15年2月28日(2003.2.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】小夫家 芳明
【氏名】佐竹 彰治
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】恩田 春香
参考文献・文献 特許第3383839(JP,B2)
特許第3303053(JP,B2)
特許第3256742(JP,B2)
特開2003-231688(JP,A)
特開2002-53578(JP,A)
特許第3536199(JP,B2)
特開2000-86666(JP,A)
調査した分野 H01L 51/30
G02F 1/361
H01L 51/00
H01L 51/40
H01L 51/42
C07D 487/22
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式(VIII)又は(VIII'):
【化1】
JP0003975273B2_000050t.gif
【化2】
JP0003975273B2_000051t.gif
(式中、
aは、H、アルキル基またはアリール基を表し、
Xは、-O-、-S-、>NR101(ここで、R101は、Hまたはアルキル基を表わす。)、CH2または単結合を表わし、
Yは、=O、=Sまたは2Hを表わし、
mは、0~4の整数を表わし、
nは、0~6の整数を表わし、
1は、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環を表わし、
2は、電子受容体もしくは電子供与体となり得る官能基を有する基、又はポルフィリン多量体の末端基となり得る基を表し、
Dは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基を表わし、
Eは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基を表わし、
Mは、典型金属及び遷移金属から選択される金属のイオンを表し、
Qは、単結合または二価の連結基を表わし、
pは、1以上の整数を表す。)
で表される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子。
【請求項2】
次の工程を含む、共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子の製造方法:
(1)次の式(I):
【化3】
JP0003975273B2_000052t.gif
{式中、
a、b及びdは、各々独立してH、アルキル基またはアリール基を表わし、
Xは、-O-、-S-、>NR101(ここで、R101は、Hまたはアルキル基を表わす。)、CH2または単結合を表わし、
Yは、=O、=Sまたは2Hを表わし、
mは、0~4の整数を表わし、
nは、0~6の整数を表わし、
1は、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環を表わし、
1は、
【化4】
JP0003975273B2_000053t.gif
(式中、Dは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基を表わし、Eは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基を表わし、R3は、Hまたはアセチル基を表わす。)を表わす。}
で表されるリンカー分子を基板上に固定化する工程、及び前記リンカー分子由来のポルフィリン残基に、典型金属及び遷移金属から選択される金属Mを導入する工程により、次の式(II)または(II’):
【化5】
JP0003975273B2_000054t.gif
(式中、各置換基は、上で規定したとおり)で表される単分子膜体を得る工程(だだし、前記リンカー分子を基板上に固定する工程と、前記金属Mを導入する工程とは、いずれが先でもよい)と、
(2)前記単分子膜体のポルフィリン残基と、
次の式(III):
【化6】
JP0003975273B2_000055t.gif
{式中、
a、b、d、X、Y、m、n、M及びZ1は、上で規定したとおりであり、
Qは、単結合または二価の連結基を表わす。}で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの一方のポルフィリン残基とを2つの配位結合により連結し、次の式(IV)または(IV'):
【化7】
JP0003975273B2_000056t.gif
(式中、各置換基は、上で規定したとおりであり、pは、1である。)で表される第一積層体を得る工程と、
(3)前記第一積層体のリンカー分子由来のポリフィリン残基のオレフィン部分と、前記リンカー分子由来のポリフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分とを、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、これらのポルフィリン間を共有結合で固定化し、次の式(V)または式(V'):
【化8】
JP0003975273B2_000057t.gif
(式中、各置換基は、上で規定したとおりであり、pは、1である。)で表される固定化第一積層体を得る工程と、
(4)必要に応じて、前記工程(2)と同様に、前記固定化第一積層体の末端に位置するポルフィリン残基と、前記式(III)で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの一方のポルフィリン残基とを、配位結合により連結し、第二積層体(前記式(IV)又は式(IV')において、pは、2以上の整数を表す。)を得、次いで、前記第二積層体において、前記工程(3)と同様に、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、固定化第二積層体(前記式(V)又は式(V')において、pは、2以上の整数を表す。)を得る工程を1回またはそれ以上繰り返すことにより固定化第q積層体(前記式(V)又は式(V')において、pは、qを表し、qは、2以上の整数である。)を得る任意の工程と、
(5)前記工程(3)で得られた固定化第一積層体又は前記工程(4)で得られた固定化第q積層体の末端に位置するポルフィリン残基と、次の式(VI):
【化9】
JP0003975273B2_000058t.gif
(式中、
1、M、X、Y、m、n、a、b及びdは、上で規定したとおりであり、
2は、電子受容体もしくは電子供与体となり得る官能基を有する基、又はポルフィリン多量体の末端基となり得る基を表す。)で表される、ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基とを2つの配位結合により連結し、次の式(VII)又は式(VII'):
【化10】
JP0003975273B2_000059t.gif
【化11】
JP0003975273B2_000060t.gif
(式中、各置換基は、上で規定したとおり。)で表される光機能分子前駆体を得る工程と、
(6)前記ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基のオレフィン部分と、前記ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分とを、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、これらのポルフィリン間を共有結合で固定化し、次の式(VIII)又は(VIII'):
【化12】
JP0003975273B2_000061t.gif
【化13】
JP0003975273B2_000062t.gif
(式中、各置換基は、上で規定したとおり。)で表される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子を得る工程。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に有する素子の製造方法に関する。本発明の方法により製造される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に有する素子は、光機能分子素子、具体的には、例えば、有機太陽電池のような光電変換素子や3次の非線形有機材料として使用することが出来る。
【0002】
【従来の技術】
ポルフィリン多量体は緑色植物の葉緑体や光合成細菌に見られるような高効率の光捕集能および電子伝達媒体として期待されており、電極上にポルフィリンを化学修飾させることで有機太陽電池、光半導体などの分子素子としての応用が考えられる。分子レベルで配列制御されたポルフィリン薄膜の作製法として交互積層法が報告されている。国武らはポリカチオンとアニオン性ポルフィリンを交互積層させることによってポルフィリン多層膜を作製している(例えば、非特許文献1参照。)。また金属配位子を有するポルフィリンと金属イオンを交互に積層させることでも基板上にポルフィリンを固定化でき(例えば、非特許文献2参照。)、このようなポルフィリン多層膜において電位勾配を構築することで光電変換も行われている(例えば、非特許文献3~5参照。)。
【0003】
またポルフィリンはp-型半導体として機能することが知られており、CVDや電解重合膜によって積層されたポルフィリン膜で p-n, p-p’接合界面を作り、光電変換素子、光整流界面あるいはSchottkyダイオードの作製を試みた例もある(例えば、非特許文献6~9参照。)。
【0004】
一方、われわれはイミダゾール置換ポルフィリン金属錯体が分子間で相補的に配位結合することで、以下に示するように光合成細菌中に見られる二量体と同様の超分子構造形成することを見いだしている(例えば、非特許文献10参照。)。
【0005】
【化14】
JP0003975273B2_000002t.gif
【0006】
このポルフィリン二量体の特長は励起子分裂により広い波長領域において光吸収できること、光励起種が二量体間に非局在化するため電荷分離状態を長寿命化できることであり、効率よい光増感反応に最適である。さらにイミダゾール置換ポルフィリンに側鎖アリル置換基を導入すると、Grubbs錯体を使ったメタセシス閉環反応によってこの二量体構造を共有結合で固定でき、しかもその電子スペクトルは溶媒の影響を受けず強い励起子相互作用を示した。(例えば、非特許文献11参照。):
【化15】
JP0003975273B2_000003t.gif
【0007】
この共有結合によって固定化されたイミダゾール置換ビス亜鉛ポルフィリンユニットによって, 更に高次に階層化した超分子構造の設計が可能になった。すなわちイミダゾール置換ビスポルフィリンは一次元方向に伸長した配位組織体を形成するが(例えば、非特許文献12参照。)、これをメタセシス反応によって段階的に共有結合で固定化すると、つぎの官能基を有するイミダゾール置換亜鉛ポルフィリンを段階的に導入、固定化することが出来る:
【化16】
JP0003975273B2_000004t.gif
【0008】
一方、実用的なデバイスへと展開するためには電極などの固体基板上にこのようなポルフィリン多量体を構築する必要がある。我々は初期の研究として、金基板上にリンカーポルフィリンをつけた後、イミダゾール置換亜鉛ポルフィリン溶液に基板を浸漬し、配位結合によってポルフィリン多量体を積層する実験をおこなった。そして実際に積層化された素子の光電流測定を行い、動作することを確認した。(例えば、非特許文献13参照。):
【化17】
JP0003975273B2_000005t.gif
【0009】
さらにこのような素子の機能をより向上させるためには、性質の異なるポルフィリン多量体を固体基板上の一定方向に順次導入する方法が必要となる。そうすれば、エネルギーロスの少ない効率のよい素子が構築できるからである。上記で述べたような基板をただ浸漬し積層する方法では、2回目の積層の際に1回目の層もはがれて交換が起こってしまうので、このような目的を達するのは不可能であった。
【0010】
【非特許文献1】
K. Ariga, Y. Lvov, T, Kunitake, J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 2224-2231
【非特許文献2】
D.-J. Quian, C. Nakamura, T. Ishida, S.-O. Wenk, T. Wakayama, S. Takeda, J. Miyake, Langmuir 2002, 18, 10237-10242
【非特許文献3】
K. Araki, M. J. Wagner, M. S. Wrighton, Langmuir, 1996, 12, 5393-5398
【非特許文献4】
F. B. Abdelrazzaq, R. C. Kwong, M. E. Thompson, J. Am. Chem. Soc. 2001, 124, 4796-4803
【非特許文献5】
A. Ikeda, T. Hatano, S. Shinkai, T. Akiyama, S. Yamada, J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4855-4856
【非特許文献6】
F. J. Kampas, M. Gouterman, J. Phys. Chem. 1977, 81, 690-695
【非特許文献7】
F. J. Kampas, K. Yamashita, J. Fajer, Nature 1980, 284, 40-42
【非特許文献8】
Y. Harima, K. Yamashita, J. Phys. Chem. 1985, 89, 5325-5327
【非特許文献9】
H. Segawa, N. Nakayama, T, Shimidzu, J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1992, 784-786
【非特許文献10】
Y. Kobuke, H. Miyaji, J. Am. Chem. Soc., 1994, 116, 4111-4112
【非特許文献11】
第82回 有機合成シンポジウム講演要旨集 2-2、p.65-68(2002)
【非特許文献12】
K. Ogawa, Y. Kobuke, Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 4070-4073
【非特許文献13】
A. Nomoto, Y. Kobuke, Chem. Commun., 2002, 1104-1105
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、エネルギーロスの少ない効率のよい光機能分子素子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究した結果、次の共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子及びその製造方法が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
次の式(VIII)又は(VIII'):
【化18】
JP0003975273B2_000006t.gif
【0013】
【化19】
JP0003975273B2_000007t.gif
【0014】
(式中、aは、H、アルキル基またはアリール基を表し;Xは、-O-、-S-、>NR101(ここで、R101は、Hまたはアルキル基を表わす。)、CH2または単結合を表わし;Yは、=O、=Sまたは2Hを表わし;mは、0~4の整数を表わし;nは、0~6の整数を表わし;Z1は、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環を表わし;Z2は、電子受容体もしくは電子供与体となり得る官能基を有する基、又はポルフィリン多量体の末端基となり得る基を表し;Dは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基を表わし;Eは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基を表わし;Mは、典型金属及び遷移金属から選択される金属のイオンを表し;Qは、単結合または二価の連結基を表わし;pは、1以上の整数を表す。)で表される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子を提供する。
【0015】
また、本発明は、次の工程を含む、共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子の製造方法も提供する。
【0016】
(1)次の式(I):
【化20】
JP0003975273B2_000008t.gif
【0017】
{式中、a、b及びdは、各々独立してH、アルキル基またはアリール基を表わし;Xは、-O-、-S-、>NR101(ここで、R101は、Hまたはアルキル基を表わす。)、CH2または単結合を表わし;Yは、=O、=Sまたは2Hを表わし;mは、0~4の整数を表わし;nは、0~6の整数を表わし;Z1は、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環を表わし;R1は、
【化21】
JP0003975273B2_000009t.gif
【0018】
(式中、Dは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基を表わし、Eは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基を表わし、R3は、Hまたはアセチル基を表わす。)を表わす。}で表されるリンカー分子を基板上に固定化する工程、及び前記リンカー分子由来のポルフィリン残基に、典型金属及び遷移金属から選択される金属Mを導入する工程により、次の式(II)または(II’):
【化22】
JP0003975273B2_000010t.gif
【0019】
(式中、各置換基は、上で規定したとおり)で表される単分子膜体を得る工程(だだし、前記リンカー分子を基板上に固定する工程と、前記金属Mを導入する工程とは、いずれが先でもよい)と、
【0020】
(2)前記単分子膜体のポルフィリン残基と、
次の式(III):
【化23】
JP0003975273B2_000011t.gif
【0021】
{式中、a、b、d、X、Y、m、n、M及びZ1は、上で規定したとおりであり;Qは、単結合または二価の連結基を表わす。}で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの一方のポルフィリン残基とを2つの配位結合により連結し、次の式(IV)または(IV'):
【化24】
JP0003975273B2_000012t.gif
【0022】
(式中、各置換基は、上で規定したとおりであり、pは、1である。)で表される第一積層体を得る工程と、
【0023】
(3)前記第一積層体のリンカー分子由来のポリフィリン残基のオレフィン部分と、前記リンカー分子由来のポリフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分とを、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、これらのポルフィリン間を共有結合で固定化し、次の式(V)または式(V'):
【化25】
JP0003975273B2_000013t.gif
【0024】
(式中、各置換基は、上で規定したとおりであり、pは、1である。)で表される固定化第一積層体を得る工程と、
【0025】
(4)必要に応じて、前記工程(2)と同様に、前記固定化第一積層体の末端に位置するポルフィリン残基と、前記式(III)で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの一方のポルフィリン残基とを、配位結合により連結し、第二積層体(前記式(IV)又は式(IV')において、pは、2以上の整数を表す。)を得、次いで、前記第二積層体において、前記工程(3)と同様に、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、固定化第二積層体(前記式(V)又は式(V')において、pは、2以上の整数を表す。)を得る工程を1回またはそれ以上繰り返すことにより固定化第q積層体(前記式(V)又は式(V')において、pは、qを表し、qは、2以上の整数である。)を得る任意の工程と、
【0026】
(5)前記工程(3)で得られた固定化第一積層体又は前記工程(4)で得られた固定化第q積層体の末端に位置するポルフィリン残基と、次の式(VI):
【化26】
JP0003975273B2_000014t.gif
【0027】
(式中、Z1、M、X、Y、m、n、a、b及びdは、上で規定したとおりであり;Z2は、電子受容体もしくは電子供与体となり得る官能基を有する基、又はポルフィリン多量体の末端基となり得る基を表す。)で表される、ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基とを2つの配位結合により連結し、次の式(VII)又は式(VII'):
【化27】
JP0003975273B2_000015t.gif
【0028】
【化28】
JP0003975273B2_000016t.gif
【0029】
(式中、各置換基は、上で規定したとおり。)で表される光機能分子前駆体を得る工程と、
【0030】
(6)前記ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基のオレフィン部分と、前記ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分とを、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、これらのポルフィリン間を共有結合で固定化し、次の式(VIII)又は(VIII'):
【化29】
JP0003975273B2_000017t.gif
【0031】
【化30】
JP0003975273B2_000018t.gif
【0032】
(式中、各置換基は、上で規定したとおり。)で表される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子を得る工程。
【0033】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の式(VIII)または式(VIII')で表される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子について詳細に説明する。
【0034】
式(VIII)において、aは、各々独立してH、アルキル基またはアリール基を表わす。複数個のaは、同じでも異なっていてもよいが、同じであることが製造上の容易性の観点から好ましい。
【0035】
ここで、アルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状の1価の飽和脂肪族基をいう(以下、他の置換基がアルキル基である場合においても同じ)。また、アリール基は、1価の芳香族炭化水素基をいい、単環であっても、2環以上の縮合環でもよい(以下、他の置換基がアリール基である場合においても同じ)。さらに、アルキニル基は、直鎖、分岐鎖または環状の不飽和の脂肪族基をいう。これらのアルキル基、アルキニル基及びアリール基は、可能な場合は、置換基を有することができる(以下、アルキル基及びアリール基以外の基についても同じ。
【0036】
aにより表されるアルキル基の炭素原子数は、一方のaが結合する炭素原子と他方のaが結合する炭素原子のとの間の二重結合が、閉環メタセシス反応に供され得るか否か、原料化合物の合成の容易性、生成物に期待される機能等を考慮して選択することができるが、通常、1~8であり、1~2程度が好ましい。
【0037】
aにより表わされるアリール基の炭素原子数も、同様の観点から選択することができ、通常、6~20であり(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ナフタセニル)、6~10程度が好ましい。
【0038】
式(VIII)において、Xは、-O-、-S-、>NR101(ここで、R101は、Hまたはアルキル基を表わす。)、CH2または単結合を表わす。
【0039】
101により表わされるアルキル基の炭素原子数は特に制限はないが、1~4程度が好ましい。
【0040】
式(VIII)において、Xは、原料化合物の合成の容易性、生成物に期待される機能等を考慮すると、-O-が好ましい。
【0041】
式(VIII)において、Yは、=O、=Sまたは2Hを表わす。ここで、Yが2Hであるとは、Yが結合する炭素原子に2つの水素原子が単結合により結合した状態を意味する。
【0042】
Yは、原料化合物の合成の容易性、生成物に期待される機能等を考慮すると、=Oが好ましい。
【0043】
式(VIII)において、mは、0~4の整数を表わす。mは、原料化合物の合成の容易性、生成物に期待される機能等を考慮すると、1が好ましい。
【0044】
式(VIII)において、nは、0~6の整数を表わす。nは、原料化合物の合成の容易性、生成物に期待される機能等を考慮すると、2が好ましい。
【0045】
式(VIII)において、Z1は、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環基を表わす。ここで、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環基とは、窒素原子を少なくとも1個有する5若しくは6員のヘテロ環であって、芳香族性を有するものであれば特に制限はない。窒素以外のヘテロ原子として、酸素、硫黄等を有することができる。含窒素配位性ヘテロ芳香族環基に構造異性体が存在する場合は、それらの構造異性体が含まれる。
【0046】
5員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環基及び6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環基には、次のイミダゾリル基、オキサゾリル基及びチアゾリル基、並びにピリジル基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化31】
JP0003975273B2_000019t.gif
【0048】
上記イミダゾリル基において、R2で表わされるアルキル基は、原料化合物の合成の容易性、生成物に期待される機能等を考慮すると、通常、炭素原子数1~10にすることができ、1程度が好ましい。
【0049】
式(VIII)において、Z1は、ポルフィリン金属錯体の中心金属との結合の強さ等を考慮すると、イミダリル基が好ましい。
【0050】
式(VIII)において、Z2は、電子受容体もしくは電子供与体となり得る官能基を有する基、又はポルフィリン多量体の末端となり得る基を表す。
【0051】
2で表される電子受容体となり得る官能基を有する基の具体例には、次の各基が含まれるが、これらに限定されるものではなく、励起されたポルフィリンから電子を受け取る性質のあるもの(例えば、還元電位が励起されたポルフィリンのエネルギー順位より低い金属錯体)等も電子受容体となり得る官能基を有する基となり得る:
【化32】
JP0003975273B2_000020t.gif
【0052】
[式中、D’は、式(VIII)のDで規定したものに加えて、単結合、
【化33】
JP0003975273B2_000021t.gif
【0053】
{式中、R5は、H、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシ基を表す。ただし、2つのR5は、同じでも異なっていてもよい。M’は、2H、又はMで表される典型金属もしくは遷移金属から選択される金属のイオンを表す。}を表す。]。
【0054】
2で表されるポルフィリンの末端基となり得る基にはアルキル基、アリール基及びアルキニル基等が含まれる。アルキル基、アリール基の場合の炭素原子数は、上述した置換基aについて述べたものと同義である。また、アルコキシ基のアルキル部分は、置換基aのアルキル基と同義である。Z2で表される基がアルキニル基の場合の炭素原子数は、2~18程度にすることができ、2程度が好ましい。
【0055】
また、R5で表される基が、アルキル基、アリール基、アルコキシ基である場合の炭素原子数も上述したものと同義である。R5で表される基がハロゲン原子である場合の具体例には、F、Cl、Br、I等が含まれる。
【0056】
一方、Z2で表される電子供与体となり得る官能基を有する基の具体例には、次の各基が含まれるが、これらに限定されるものではなく、酸化されたポルフィリンに電子を与える性質のあるもの(例えば、酸化電位が1電子酸化されたポルフィリンのエネルギー順位より高い金属錯体)も電子供与体となり得る官能基を有する基となり得る:
【化34】
JP0003975273B2_000022t.gif
【0057】
[式中、D’は、式(VIII)のDで規定したものに加えて、単結合、
【化35】
JP0003975273B2_000023t.gif
【0058】
{式中、R5は、H、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシ基を表す。ただし、複数個のR5は、同じであっても異なっていてもよい。M’は、2H、又はMで表される典型金属もしくは遷移金属から選択される金属のイオンを表す。}を表す。]。
【0059】
式(VIII)において、Dは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基を表わし、Eは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基を表わし、R3は、Hまたはアセチル基を表わす。)を表わす。
【0060】
上記Dで表わされるアリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基とは、両末端にアリーレン基及び/またはアルキレン基を有する二価の基であって、通常、これらの両末端基の間に、1またはそれ以上のエーテル基、カルボニル基、ヘテロ原子を含む官能基(例えば、エステル基、アミド基)が介在する基をいうが、これらの基が介在していなくてもよい。これらの両末端基の間に介在する基は、リンカー分子を合成する際、ポルフィリン環と、硫黄原子含有基とを連結する際に使用することができる基である。アリーレン基及びアルキレン基の炭素原子数に特に制限はないが、通常、アルキレン基の場合は1~18に、アリーレン基の場合は6~13にすることができる。
【0061】
上記Eで表わされるアリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基とは、上述したDで表わされる基から水素原子を1つ除いたものをいう。
【0062】
式(VIII)において、Mは、典型金属及び遷移金属から選択される金属のイオンを表わす。ここで、典型金属とは、長周期表において、1A、2A、2B、3B~7B及び0族の金属をいい、具体的には、Mg、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi等を挙げることができる。遷移金属とは、3A~7A、8及び1B族の金属をいい、具体的には、Sc、Y、ランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au等を挙げることができる。これらの金属の価数は、ポリフィリン金属錯体の中心金属となり得るものであれば特に制限はないが、通常、II価またはIII価である。
【0063】
Mは、上述したZとの間で配位結合を形成できる限り特に制限はないが、反応性、結合の強さ、生成物に期待される機能等の観点からは、Zn、Mg、Co及びFe等が好ましい。
【0064】
式(VIII)において、Qは、単結合または直線状二価の連結基を表わす。直線状二価の連結基は、生成物に期待される機能(電子あるいはエネルギーの伝導度、ポルフィリン環同士を結合する強さ、立体配置を維持する能力等)を考慮して選択することができる。
【0065】
ここで、直線状二価の連結基とは、(ア)両末端の結合手の向きが直線状または(イ)両末端の結合手の向きが互いに平行に配置される二価の連結基をいう。ここで、両末端の結合手の向きが「直線状」とは、幾何学的に完全な直線であることを必ずしも意味するものではない。また、「平行」についても同様に、幾何学的に完全な平行であることを必ずしも意味するものではない。したがって、この直線状二価の連結基により構成される多量体が環状ではなく、多量体全体としてほぼ直線的な鎖状であればかまわない。特に、この直線状二価の連結基により構成される多量体が比較的長いものである場合、この直線状二価の基の両末端の結合手の向きが幾何学的に完全な直線状や完全に互いに平行でなく、ほぼ直線的あるいはほぼ平行であれば鎖状多量体を形成することができる。以下、本明細書では、このようなほぼ直線的あるいはほぼ平行な状態を、それぞれ単に、直線状あるいは平行と表現して説明する。
【0066】
(ア)両末端の結合手の向きが直線状に配置される基の具体例としては、二価の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基{例えば、炭素原子数1~3のアルキル基(-CH2-等)、-C≡C-};二価の飽和または不飽和の炭化水素環基{例えば、炭素原子数3~20程度の単環または縮合環(1,3-シクロブチレン(トランス体)、1,4-フェニレン、2,7-ピレニレン等)};二価の飽和または不飽和のヘテロ環基(例えば、6員のヘテロ環であって、ヘテロ原子として、N、S、O、P等を1以上含むもの(2,5-ピリジン等);及びこれらの二価の基の2つ以上の組み合わせを挙げることができる。二価の基を2以上組み合わせる場合、同じ基同士(いわゆるビス体)でも、異なる基でもよいが、同じ基同士を組み合わせたもののほうが原料化合物の合成の容易性等の環点から好ましい。また、二価の基を2以上組み合わせる場合、-O-や-C(=O)-のような両末端の結合手の向きが直線状に配置される基が介在することができ、さらにその他の基でも、最終的にQにより表わされる基の両末端の結合手の向きが直線状に配置されれば介在していてもかまわない。
【0067】
(イ)両末端の結合手の向きが互いに平行に配置される基には、二価の飽和または不飽和の直鎖状炭化水素基{例えば、炭素原子数3~5の直鎖アルキル基(n-プロピレン等)、-C=C-(トランス体)};二価の芳香族炭化水素環基{例えば、炭素原子数10~20程度の縮合環(2,6-ナフチレニル、1,6-ピレニレン等)}が含まれる。
【0068】
また、両末端の結合手の向きが結果として直線状または互いに平行に配置されるならば、上記(ア)として説明した両末端の結合手の向きが直線状に配置される基と(イ)として説明した両末端の結合手の向きが互いに平行に配置される基との組み合わせであってもよい。
【0069】
以下に、両末端の結合手の向きが直線状(ア)または互いに平行(イ)に配置される二価の連結基の具体例を挙げるが、Qで表わされる基はこれらに限定されるものではない。
【0070】
【化36】
JP0003975273B2_000024t.gif
【0071】
式(VIII)において、Qは、結合の強度、安定性、原料化合物の合成の容易さ等を考慮すると、単結合またはアルキニレン基{(-C≡C-)n(ここで、nは、1~3の整数を表わす。)}が好ましい。
【0072】
式(VIII)において、pは、1以上の整数を表す。pの値は、本発明の共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子の用途等に応じて適宜選択することができる。pの値の上限値は、特に制限はなく、10,000程度までのものが製造可能であると考えているが、現段階では、pの値が100程度のものまで製造することができる。
【0073】
式(VIII)で表される光機能分子素子には、2種類以上のポルフィリンを任意の順番で積層、固定化したものも含まれる。例えば、以下の模式図1に示すように、エネルギー順位の異なるポルフィリン多量体を段階的に固定化すると、式(VIII)の光機能分子素子は、電位勾配をもつ傾斜機能材料となる。これによって電子や空孔(ホール)の流れる方向を制御(整流作用)することが可能になる。構成単位であるポルフィリンは光励起電子移動を起こすので、式(VIII)の光機能分子素子は光機能分子素子として使用することができる。具体的には、作成した素子が光電変換素子として機能することを確認した(実施例3参照)。
【0074】
【化37】
JP0003975273B2_000025t.gif
【0075】
式(VIII)において、用いることできる基板としては、金属材料としては金以外に銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、などの良伝性金属、およびこれらを固体基板(例えば、スライドガラス、マイカ(雲母)、シリコンウエハー)に蒸着(通常、50~1,000Åの厚み)したものがある。また半導体としてはTiO2, SnO2, ITO(indium tin oxide), CdS, CdSe, GaAs, GaP, Si, InP, CdTeや、これらに電子受容体や電子供与体を添加してバンド構造を変化させたものも含む。また、有機の固体基板として各種高分子ポリマーやポリマーを固体基板に塗布(通常、50~1,000Åの厚み)したものも含まれる。特に導電性、半導電性ポリマー(PPV(ポリフェニレンビニレン系)、P3OT(ポリチオフェン系)、ポリピロール系、ポリアセチレン系、ポリジアセチレン系)はポルフィリン素子と組み合わせることで全有機素子として構築できるため特に有望である。
【0076】
式(VIII)では、基板から-S-結合を介して1本のポルフィリン鎖が伸びた状態として示しているが、通常、本発明の光機能分子素子は、基板上に層状に広がりをもって形成されている。一例を挙げると、基板として金を使用した場合、Au-Sの還元的脱着法によって求めた値では、表面被覆率が約7×1013分子/cm2(10-10mol/cm2)、すなわち1分子あたりの金基板上での分子の占有面積は、約3nm2/分子となる。ポルフィリン環の幅は、約1nmであるので、基板上にはかなり密に膜が形成されていることになる。
【0077】
式(VIII)では、基板表面に対してポルフィリン鎖が法線方向へ伸びているが、この角度は、必ずしも実際の角度を反映するものではない。なお、上述したように分子占有面積から分子が密に並んでいること、組織がきちんと伸張することなどから判断すると、ある程度の角度で基板表面から立った状態で結合していると考えられる。
【0078】
式(VIII')で表される光機能分子素子は、リンカー分子が基板上に2点を介して結合している点で式(VIII)の光機能分子素子とは異なるが、置換基等の規定は同じである。式(VIII')で表される光機能分子素子は、リンカー分子が基板上に2点を介して結合しているので、(VIII)で表される光機能分子素子よりも強い結合力で積層ポルフィリンが基板上に固定されている。このような式(VIII')で表される光機能分子素子は、ポルフィリン多量体を伸張する際の浸漬、洗浄工程でポリフィリンがはがれ落ちにくいという利点を有する。例えば、式(VIII)の光機能分子素子のように、1点を介して基板上に結合したものでは、浸漬、洗浄工程でポルフィリンの吸収が半分程度にまで減少することがあるが、式(VIII')の光機能分子素子では、その原料の度合いは小さく、はがれ落ちが少ないと考えられる。
【0079】
次に、本発明の式(VIII)または式(VIII')で表される光機能分子素子の製造方法を詳細に説明する。以下の説明において、別段の断りがない限り各置換基は上述した式(VIII)及び式(VIII')について述べたものと同義である。
【0080】
本発明の式(VIII)または式(VIII')で表される光機能分子素子の製造方法には、次の工程(1)~(6)が含まれる。
【0081】
(工程1)
次の式(I):
【化38】
JP0003975273B2_000026t.gif
【0082】
{式中、a、b及びdは、各々独立してH、アルキル基またはアリール基を表わし、Xは、-O-、-S-、>NR101(ここで、R101は、Hまたはアルキル基を表わす。)、CH2または単結合を表わし、Yは、=O、=Sまたは2Hを表わし、mは、0~4の整数を表わし、nは、0~6の整数を表わし、Z1は、5若しくは6員の含窒素配位性ヘテロ芳香族環を表わし、R1は、
【化39】
JP0003975273B2_000027t.gif
【0083】
(式中、Dは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む二価の基を表わし、Eは、アリーレン基及びアルキレン基の少なくとも一方を含む三価の基を表わし、R3は、Hまたはアセチル基を表わす。)を表わす。}で表されるリンカー分子を基板上に固定化する工程、及び前記リンカー分子又は基板上に固定化したリンカー分子のポルフィリン残基に、典型金属及び遷移金属から選択される金属Mを導入する工程により、次の式(II)または(II’):
【化40】
JP0003975273B2_000028t.gif
【0084】
(式中、各置換基は、上で規定したとおり)で表される単分子膜体を得る。
【0085】
上記工程1では、前記リンカー分子を基板上に固定する工程と、前記金属Mを導入する工程とは、いずれが先でもよいがリンカー分子を基板上に固定した後に金属Mを導入したほうがきれいな単分子膜が形成されるので好ましい。
【0086】
工程1で用いる金等を蒸着した基板は、市販品または市販品から文献記載の方法で調製することができる。
【0087】
リンカー分子は、リンカー分子溶液(溶媒は、CH2Cl2、クロロホルム、ブロモベンゼン、メタノール、ピリジン等)に基板を浸漬させる(通常、一晩)ことにより基板上に固定化することができる。
【0088】
金属Mは、導入すべき金属の塩(例えば、酢酸塩、塩酸塩)の溶液(溶媒は、CHCl3、メタノール等)に、リンカー分子を固定化した基板を浸漬させる(通常、60~120分程度)ことによりポルフィリン環内に導入することができる。この際、加熱し、40~50℃程度に昇温することが好ましい。なお、リンカー分子を基板に固定化する前に金属Mを導入する場合も、同様の条件下で行うことができる。
【0089】
工程1で得られた式(II)又は式(II')で表される単分子膜体は、必要に応じて洗浄工程を経て次の工程2に供される。使用可能な洗浄溶媒には、メタノール、ヘキサン、塩化メチレン等が含まれるがこれらに限定されるものではない。以下に説明する各工程の間でも、同様の洗浄工程を施すことができる。
【0090】
(工程2)
上記工程1で得られた単分子膜体のポルフィリン残基と、次の式(III):
【化41】
JP0003975273B2_000029t.gif
【0091】
{式中、a、b、d、X、Y、m、n及びZ1は、上で規定したとおりであり、Mは、典型金属及び遷移金属から選択される金属のイオンを表わし、Qは、単結合または二価の連結基を表わす。}で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの一方のポルフィリン残基とを2つの配位結合により連結し、次の式(IV)または(IV'):
【化42】
JP0003975273B2_000030t.gif
【0092】
(式中、各置換基は、上で規定したとおりであり、pは、1である。)で表される第一積層体を得る。
【0093】
工程2では、工程1で得られた単分子膜体を、上記式(III)で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの溶液(溶媒は、20mM程度のピリジンを含むCH2Cl2、クロロホルム等)に、浸漬させる(通常、1~5時間程度)ことにより第一積層体が得られる。
【0094】
(工程3)
工程2で得られた第一積層体のリンカー分子由来のポリフィリン残基のオレフィン部分と、前記リンカー分子由来のポリフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分とを、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、これらのポルフィリン間を共有結合で固定化し、次の式(V)または式(V'):
【化43】
JP0003975273B2_000031t.gif
【0095】
(式中、各置換基は、上で規定したとおりであり、pは、1である。)で表される固定化第一積層体を得る。
【0096】
工程3で用いるGrubbs触媒とは、Grubbsらによって開発されたオレフィンメタセシス反応に活性を示すルテニウムカルベン錯体の総称である。この錯体を用いるとエステルやケトン、アミドなどさまざまな官能基を持つオレフィン化合物を反応基質として用いた場合でもオレフィン部位とのみ選択的に反応が進行する(Grubbsらの総説(T. M. Trnka, R. H. Grubbs, Acc. Chem. Res. 34, 18 (2001))を参照)。
【0097】
工程3の閉環メタセシス反応は、Grubbs触媒溶液(溶媒は、CH2Cl2、クロロホルム等)に工程2で得られた第一積層体を浸漬(通常、5~20分)させることにより行うことができる。この反応は、窒素又はアルゴンのような不活性雰囲気下で行うことが好ましいが、空気中であっても反応は問題なく進行する。
【0098】
工程3の閉環メタセシス反応は、第一積層体のリンカー分子由来のポリフィリン残基のオレフィン部分と、前記リンカー分子由来のポリフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分の間で起こり、式(III)のメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリン間では起こらない。これは、第一積層体のコンフォーメーションの関係によるものである。
【0099】
(工程4:任意工程)
本発明の方法では、上述した工程2と同様に、前記固定化第一積層体の末端に位置するポルフィリン残基と、上記式(III)で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの一方のポルフィリン残基とを、配位結合により連結し、第二積層体(上記式(IV)又は式(IV')において、pは、2以上の整数を表す。)を得、次いで、この第二積層体において、上述した工程3と同様に、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、固定化第二積層体(上記式(V)又は式(V')において、pは、2以上の整数を表す。)を得る工程を1回またはそれ以上繰り返すことにより固定化第q積層体(上記式(V)又は式(V')において、pは、qを表し、qは、2以上の整数である。)を得る工程を必要に応じて行うことができる。
【0100】
この工程4の繰り返し数を調節することにより、本発明の光機能分子素子の積層数を所望の値にすることができる。この工程4を1回行うことにより積層する分子の数は、ポルフィリン溶液の濃度や浸漬時間、反応温度等の条件に依存して変化する。例えば、後述する実施例1の条件では、pの値は、2~3程度ずつ増加していると考えられる。
【0101】
また、この工程4で使用する式(III)で表されるメソ-メソ連結ヘテロ芳香族置換ビスポルフィリンの種類を変更することにより、上記模式図1に示したような電位勾配をもつ傾斜機能材料を調製することができる。
【0102】
(工程5)
工程5では、上述した工程3で得られた固定化第一積層体、又は任意の工程4で得られた固定化第q積層体の末端に位置するポルフィリン残基と、次の式(VI):
【化44】
JP0003975273B2_000032t.gif
【0103】
(式中、Z1、M、X、Y、m、n、a、b及びdは、上で規定したとおりであり、Z2は、電子受容体又は電子供与体となり得る官能基を有する基、又はポルフィリン多量体の末端基となり得る基を表す。)で表される、ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基とを2つの配位結合により連結し、次の式(VII)又は式(VII'):
【化45】
JP0003975273B2_000033t.gif
【0104】
【化46】
JP0003975273B2_000034t.gif
【0105】
(式中、各置換基は、上で規定したとおり。)で表される光機能分子前駆体を得る。
【0106】
この工程5では、固定化第一積層体、又は任意の工程4で得られた固定化第q積層体を、上記式(VI)で表される電子受容性又は電子供与性基を有するポルフィリン誘導体の溶液(溶媒は、20mM程度のピリジンを含むCH2Cl2、クロロホルム等)に、浸漬させる(通常、1~5時間程度)ことにより、光機能分子前駆体が得られる。
【0107】
(工程6)
工程6では、前記ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基のオレフィン部分と、前記ポルフィリン誘導体のポルフィリン残基に配位結合したポルフィリン残基のオレフィン部分とを、Grubbs触媒の存在下に閉環メタセシス反応させ、これらのポルフィリン間を共有結合で固定化し、次の式(VIII)又は(VIII'):
【化47】
JP0003975273B2_000035t.gif
【0108】
【化48】
JP0003975273B2_000036t.gif
【0109】
(式中、各置換基は、上で規定したとおり。)で表される共有結合により固定化されたポルフィリン多量体を基板上に積層させた光機能分子素子を得る。
【0110】
工程6の閉環メタセシス反応は、工程3の閉環メタセシス反応と同様の条件下に行うことができる。
【0111】
【実施例】
本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
<実施例1>
(1-1)ポルフィリン分子の合成
(1-1-1)一般操作
合成した化合物は以下に示す方法により同定を行った。生成物の単離に使用したカラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60(Merck)を担体に用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)の担体はシリカゲル60F254(Merck)を用い、スポットの検出にはヨウ素発色、リンモリブデン酸10 %エタノール溶液、UV発光(short 254 nm, long 365 nm)を併用した。NMRスペクトルはCDCl3あるいはDMSO-d6に試料を溶解し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質として、装置はJEOL JNM EX 270分光計(270 MHz)またはJEOL ECP 600分光計(600 MHz)を用いて測定した。赤外吸収(IR)スペクトルはニコレーAVATAR320ESを用い、KBr錠剤法にて測定した。紫外-可視(UV-VIS)スペクトルは島津UV-3100PCを用い、セルは光路長10 mmまたは1 mmの石英セルを使用して測定した。蛍光スペクトルは、日立F-4500を用いた。質量分析にはマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間分解型質量分析 (MALDI-TOF MS)法により行った。装置としてPerSeptive Biosystems VoyagerDE-STRを使用し、金プレートに試料とともにマトリックスとしてDithranol(Aldrich)を塗布して測定を行った。
【0113】
(1-1-2)以下のスキームAに示す反応により、化合物A-5を得た。
【0114】
【化49】
JP0003975273B2_000037t.gif
【0115】
3,5-Bis(10-hydroxydecyloxyl) benzaldehyde A-3
10-Bromodecane-1-ol A-1 4.47 g(18.8 mmol, 2.2 eq.)のDMF 100 mLの溶液に3,5-dihydroxybenzaldehyde A-2 1.18 g (8.56 mmol)、K2CO3 6.15 g (44.5 mmol, 5.2 eq.)を加えて窒素雰囲気下50 ℃で48時間攪拌した。室温に戻した後、水50 mLを加えて反応を停止し、有機層をエーテルで抽出(100 mL×3)した。有機層をまとめて、飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒をエバポレーターで除去し、茶色の液体A-3を得た。 粗収量 4.418 g この段階では精製せずに次の反応に用いた。
【0116】
TLC Rf = 0.63 (展開溶媒:CHCl3/MeOH = 10/1, 検出:UV 254 nm、リンモリブデン酸10%エタノール溶液)
1H-NMR (270 MHz, CDCl3) δ9.88 (s, 1H; Ha), 6.98 (d, J = 6.0 Hz, 2H; Hb), 6.70 (t, J = 6.0 Hz, 1H; Hc), 3.98 (t, 4H; Hd), 3.62 (t, J = 16.8 Hz, 4H; He), 1.85-1.26 (m, Hf).
※原料の10-Bromodecane-1-olが残っているのでHe、Hfの積分値は一致しない。
【0117】
【化50】
JP0003975273B2_000038t.gif
【0118】
3,5-Bis[10-(p-toluenesulfonyloxyl)decyloxyl] benzaldehyde A-4
未精製のA-3 2 g (4.44 mmol)をChloroform 50 mLに溶かし, p-TsCl 3.38 g (17.8 mmol, 4 eq.), pyridine 1.40 g (17.8 mmol, 4 eq.)を加えた。溶液を0 ℃で攪拌し、9時間反応させた。反応溶液を水で洗浄(50 mL×3)し、NaHCO3で洗浄後、無水Na2SO4に少量のNa2CO3を加えて乾燥した。溶媒をエバポレーターで除去しオレンジ色の液体を得た。この粗生成物をシリカゲルカラム(CHCl3 / hexane=3/2)で単離して、淡黄色オイル状のA-4を得た。 収量 2.20 g (収率 65 %)
【0119】
TLC Rf = 0.34 (展開溶媒:hexane/EtOAc = 3/1, 検出:UV 254 nm、リンモリブデン酸10%エタノール溶液)
1H-NMR (270 MHz, CDCl3)δ9.89 (s, 1H; Ha), 7.79 (d, J = 8.4 Hz, 2H; Hb), 7.34 (d, J = 8.1 Hz, 2H; Hc), 6.98 (d, J = 2.2 Hz , 2H; Hd), 6,69 (t, J = 2.4 Hz, 1H; He), 4.04-3.96 (m, 8H; Hf), 6,69 (s, 6H; Hg), 1.81-1.25 (m, 32H; Hh)。
【0120】
【化51】
JP0003975273B2_000039t.gif
【0121】
3,5-Bis(10-thioacetyldecyloxyl)benzaldehyde A-5
3,5-Bis[10-(p-toluenesulfonyloxyl)decyloxyl] benzaldehyde A-4 800 mg (1.05 mmol)を、ethanol 40 mLに溶かし、チオ酢酸カリウム361 mg(3.16 mmol, 3 eq.)を加え2時間攪拌、還流した。室温に戻して反応溶液に水20 mLを加え、ジエチルエーテル(50 mL×3)で抽出した。エーテル層をまとめて飽和食塩水で洗浄後、無水Na2SO4で乾燥し溶媒をエバポレーターで除去した。これよりベージュ色の固体A-5を得た。収量447 mg (収率75 %)
TLC Rf = 0.72 (展開溶媒:hexane/EtOAc = 3/1, 検出:UV 254 nm、リンモリブデン酸10%エタノール溶液)。
【0122】
1H-NMR (270 MHz, CDCl3)δ9.887 (s, 1H; Ha), 7.263 (d, 2H; Hb), 6.981 (t, 2H; Hc), 3.982 (t, J = 6.75 Hz, 4H; Hd), 2.863 (t, J = 7.02 Hz, 4H; He), 2.321 (s, 6H; Hf), 1.812-1.305 (m, 32H; Hg)
【0123】
【化52】
JP0003975273B2_000040t.gif
【0124】
(1-1-3)以下のスキームBに示す反応により、化合物B-3を得た。
【0125】
【化53】
JP0003975273B2_000041t.gif
【0126】
4-Allyloxy-1-butanol B-1 ref. Kodama, I.; Kawada, M.; Gevorgyan, V.; Yamamoto, Y. J. Org. Chem. 1997, 62, 7439.
水素化ナトリウム 1.5 g (61mmol) を n-hexane で洗浄して THF 30 mL に分散し, 氷浴下 butanediol 22 g (249 mmol) を滴下して 1時間攪拌した. allylbromide 7.6 g (63 mmol)をさらに滴下し 1時間氷浴下で攪拌した後, 3時間加熱還流した(ベージュ色の臭化ナトリウムが析出). 水に注いで反応を停止して油相を分離し, さらに水相を Et2O で抽出して先の油相と併せて茫硝で乾燥し, 溶媒を減圧留去した. 減圧蒸留(79-82 ℃/0.3 kPa)にて精製し無色透明の液体を得た(収量6.8 g, 収率 82 %)。
【0127】
1H-NMR (270 MHz, CDCl3)δ1.64-1.72 (m, -(CH2)2-, 4H), 2.68 (br, -OH, 1H), 3.48 (t, J = 6.0 Hz, -OCH2-, 2H), 3.64 (t, J = 6.0 Hz, -CH2OH, 2H), 3.99 (dd, J = 5.9, 1.4 Hz, CH2=CHCH2O-, 2H), 5.20 (d, J = 10.5 Hz, β-cis-allyl, 1H), 5.37 (dd, J = 17.3, 1.6 Hz, β-trans-allyl, 1H), 5.91 (m, α-allyl, 1H)
【0128】
4-Allyloxy-1-butanal B-2
-80 ℃ に冷却した oxaryl chloride (5.8 mL, 66 mmol) の CHCl3 123 mL 溶液に DMSO 13 mL (246mmol) を徐々に加えて 3分間攪拌し, 続いて4-allyloxy-1-butanol 6.8 g (52 mmol) を加えた. 15分間攪拌した後, triethylamine 43 mL (594 mmol) を添加して室温に戻しながらさらに 10時間攪拌した. 蒸留水を加えて反応を止め, CHCl3層を分離し, 希塩酸, 飽和重曹水, 飽和食塩水で洗浄して茫硝で乾燥した. 溶媒を減圧留去して淡黄色液体を得た(収量6.0 g, 収率 90 %)。
【0129】
1H-NMR (270 MHz, CDCl3)δ1.93 (m, -CH2CH2CH2-, 2H), 2.54 (m, -CH2CHO, 2H), 3.47 (t, J = 5.9 Hz, allyl-OCH2-, 2H), 3.99 (ddd, J = 5.1, 1.4, 1.4 Hz, CH2=CHCH2O-, 2H), 5.17 (dd, J = 10.5, 1.9 Hz, β-cis-allyl, 1H), 5.25 (dd, J = 15.4, 1.6 Hz, β-trans-allyl, 1H), 5.91 (m,α-allyl, 1H), 9.78 (s, -CHO, 1H).
bp.45-48 ℃/0.3 kPa
【0130】
meso-(3-Allyloxypropyl)dipyrromethane B-3
4-allyl-1-butanal 6.0 g (47 mmol) を 60等量の pyrrole (200 mL) に溶解し, 窒素バブリングした. 0.1等量のTFA 0.362 mL (4.7 mmol) を添加して 17時間攪拌し(この間溶液は褐色に着色), CHCl3を加えて飽和重曹水, 飽和食塩水で分液洗浄し, 茫硝乾燥した. 溶媒を減圧留去し, 過剰の pyrrole を減圧蒸留で回収した. シリカゲルカラム(hexane/ethyl acetate 5/1 v/v, TLC Rf = 0.28)で飴色粘稠液体の目的物9.3 g を得た(収率 81 %)。
【0131】
1H-NMR (270 MHz, CDCl3)δ1.58 (m, -CH2CH2CH2-, 2H), 2.04 (m, -CH2CH2-dipyrro, 2H), 3.43 (t, J = 6.2 Hz, allyl-OCH2-, 2H), 3.93 (t, J = 1.4 Hz, CH2=CHCH2O-, 2H), 4.02 (t, methine, 1H), 5.16 (d, J = 10.5 Hz, β-cis-allyl, 1H), 5.25 (dd, J = 17.1, 1.4 Hz, β-trans-allyl, 1H), 5.89 (m, α-allyl, 1H), 6.05 (s, 3,3'-pyrrole ring, 2H), 6.14 (m, 4,4'-pyrrole ring, 2H), 6.62 (s, 5,5'-pyrrole ring, 2H), 7.88 (br, NH, 2H)
【0132】
(1-1-4)以下のスキームCに示す反応により、化合物C-3を得た。
【0133】
【化54】
JP0003975273B2_000042t.gif
【0134】
5,15-Bis(allyloxypropyl)-10-[3,5-bis(10-thioacetyldecyloxyl)phenyl]-20-(1-methyl-2-imidazol) porphyrin C-1
2-Formyl-1-methylimidazole 142 mg (1.29 mmol, 1 eq.) をCHCl3 250 mLに溶かした溶液にmeso-(allyloxypropyl)dipyrromethane B-3 612 mg (2.59 mmol, 2 eq.), 3,5-bis(10-thioacetyldecyloxyl)-benzaldehyde A-5 733 mg (1.29 mmol, 1eq.)を加え、窒素ガスを10分間吹き込んだ。この溶液に酸触媒としてtrifluoroacetic acid 199 μL (2.59 mmol, 2 eq.)を加え窒素雰囲気下、遮光し室温で5時間攪拌した。さらに、酸化剤としてp-chloranil 954 mg (3.88 mmol, 3 eq.)を加えて一晩攪拌して反応を終了した。反応溶液をそのままシリカゲルに通して、カラムクロマトグラフィー(溶離液CHCl3 → CHCl3/acetone = 9/1, v/v)によりタール成分と副生成物を除去した。再びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液CHCl3 / acetone = 9/1 →CHCl3 / acetone = 1/1, v/v)にてTLCでRf = 0.40(展開溶媒:CHCl3 / acetone = 9/1,v/v)の分画を分取してC-1を単離した。収量 59.6 mg (収率 4.1 %)。
【0135】
TLC Rf = 0.40 (展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1, 検出:UV 365 nm、可視)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3)δ9.53 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 9.47 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 9.00 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 8.77 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 7.69 (s, 1H; imidazole ring), 7.48 (s, 1H; imidazole ring), 7.39 (s, 1H; phenyl), 7.30 (s, 1H; phenyl), 6.91 (s, 1H; phenyl), 6.08 (ddt, J = 6.0, 9.6, 16.2 Hz, 2H; Allylβ), 5.42 (dd, J = 1.8, 16.2 Hz, 2H; Allylγ), 5.23 (dd, J = 1.8, 9.6 Hz, 2H; Allylγ), 5.10 (t, J = 7.2 Hz, 4H; CH2α), 4.12 (m, 4H; phOCH2-), 4.08 (m, 4H; Allylα), 3.66 (t, , J = 4.8 Hz 4H; -CH2OAllyl), 3.40 (s, 3H; NCH3), 2.83 (m, 4H; -CH2SAc), 2.79 (m, 4H; CH2β), 2.28 (s, 6H; -SCOCH3), 1.88-1.25 (m, 32H; Alkyl), -2.65 (s, 2H; inner proton).
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1123.96 (M+H)+,Calcd(C66H86N6O6S2)1122.61
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):419.0(0.1109), 516.0 (0.0075), 554.5(0.0030) 588.5(0.0028), 649.0(0.0020)
蛍光スペクトル (溶媒:CHCl3, λEX:419 nm) λEM/nm (蛍光強度):653(211.0), 719.8(102.1)。
【0136】
5,15-Bis(allyloxypropyl)-10-[3,5-bis(10-thioacetyldecyloxyl)phenyl]-20-(1-methyl-2-imidazolyl) porphyrinatozinc C-2
窒素雰囲気下でC-1 28 mg (24.9 μmol)をCHCl3 6 mLに溶解させ、飽和酢酸亜鉛メタノール溶液1 mLを加え2時間攪拌した。TLC(展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1,v/v)においてC-1が消失し、かわりにRf = 0.80にC-2が現れたので反応を終了した。反応溶液にCHCl3を5 mL加えて、飽和重曹水、蒸留水で洗浄し、水層の色が無くなるまでCHCl3で抽出した。有機層をまとめて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/acetone = 9/1,v/v)にてC-2を単離した。収量 26.6 mg (収率 90 %)。
【0137】
TLC Rf = 0.80 (展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1, 検出:UV 365 nm、可視)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3)δ9.62 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 9.51 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 8.95 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 7.87 (s, 1H; phenyl), 7.31 (s, 1H; phenyl), 6.98 (s, 1H; phenyl), 6.19 (ddt, J = 6.0, 10.2, 16.8 Hz, 2H; Allylβ), 5.53 (dd, J = 1.2, 16.8 Hz, 2H, Allylγ), 5.52 (d, J = 1.8 Hz, 1H; imidazole ring), 5.41 (d, J = 4.8 Hz, 2H; Porβ), 5.34 (dd, J = 1.2, 10.2 Hz, 2H; Allylγ), 5.23 (m, 4H; CH2α), 4.37 (t, J = 7.2 Hz, 2H; PhOCH2-), 4.08 (ddt, J = 1.2, 6.0, 10.2 Hz, 4H; Allylα), 4.12 (t, J = 6.6 Hz, 2H; PhOCH2-), 3.94 (m, 4H; -CH2OAllyl), 3.11 (m, 2H; CH2β), 3.00 (m, 2H; CH2β), 2.83 (t, J = 7.2 Hz, 2H; -CH2SAc), 2.83 (t, J = 7.2 Hz, 2H; -CH2Sac), 2.32 (s, 3H; -SCOCH3), 2.27 (s, 3H; -SCOCH3), 2.12 (d, J = 1.8 Hz, 1H; imidazole ring), 1.67 (s, 3H; NCH3), 2.06-1.26 (m, 32H; Alkyl).
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1185.89 (M+H)+,Calcd(C66H84N6O6S2Zn)1184.52
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):414.0(0.0851), 437.0(0.0991), 566.0(0.0082), 618.5(0.0045)
蛍光スペクトル (溶媒:CHCl3, λEX:437 nm) λEM/nm (蛍光強度):622.8(167.5), 678.2(55.27)。
【0138】
5,15-Bis(allyloxypropyl)-10-[3,5-bis(10-mercaptodecyloxyl)phenyl]-20-(1-methyl-2-imidazolyl) porphyrin C-3
C-2 26.6 mg(22.4 μmol)をCHCl3 / MeOH (= 4/1, v/v)の混合溶媒10 mLに溶かし5分間N2バブリングした。これにKOH溶液(KOH 5 g + H2O 10 mL + MeOH 15 mL)の1 mLを加えて室温で30分間攪拌した。 MALDI-TOF MassスペクトルによりC-2の消失を確認し、蒸留水を加えて反応を終了した。 蒸留水で2回洗浄し、水層を色がつかなくなるまでCHCl3で抽出した。
【0139】
有機層をまとめ、溶液の色が鮮やかな緑色に変化するまでconc.HCl / MeOH (= 1 / 10, v/v) を加え、2時間室温で攪拌した。MALDI-TOF MassスペクトルおよびTLC (CHCl3 / acetone = 9 / 1)で、Rf=0.40の目的物C-3の生成を確認した。反応溶液を飽和重曹水(50 mL)、蒸留水(50 mL)で洗浄し、水層をCHCl3で抽出し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒をエバポレーターで除去し、真空乾燥することによりC-3を得た。収量 20.3 mg (収率 87 %)。
【0140】
TLC Rf = 0.40 (展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1, 検出:UV 365 nm、可視)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3)δ9.45 (d, J = 4.2 Hz, 2H; Porβ), 9.39 (d, J = 4.2 Hz, 2H; Porβ), 8.92 (d, J = 4.2 Hz, 2H; Porβ), 8.70 (d, J = 4.2 Hz, 2H; Porβ), 7.61 (s, 1H; imidazole ring), 7.39 (s, 1H; imidazole ring), 7.32 (s, 1H; phenyl), 7.22 (s, 1H; phenyl), 6.83 (s, 1H; phenyl), 6.00 (ddt, J = 6.0, 9.6, 16.2 Hz 2H; Allylβ), 5.34 (dd, J = 1.8, 18.0 Hz, 2H; Allylγ), 5.18 (dd, J = 1.8, 10.2 Hz, 2H; Allylγ), 5.11 (t, J = 7.80 Hz 4H; CH2α), 4.06 (m, 4H; phOCH2-), 4.00 (m, 4H; Allylα), 3.58 (t, J = 6.0 Hz 4H; -CH2OAllyl), 3.31 (s, 3H; NCH3), 2.71 (m, 4H; CH2β), 2.40 (m, 4H; -CH2SH), 1.81-0.77 (m, 32H; Alkyl), -2.77 (s, 2H; inner proton).MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1039.68 (M+H)+,Calcd(C62H82N6O4S2)1038.58
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):418.5(0.1128), 515.5 (0.0059), 553.5(0.0024) 589.5(0.0022), 648.0(0.0018)
蛍光スペクトル (溶媒:CHCl3, λEX:419 nm) λEM/nm (蛍光強度):653(177.3), 718.6(84.28)。
【0141】
(1-1-5)以下のスキームDに示す反応により、化合物D-3を得た。
【0142】
【化55】
JP0003975273B2_000043t.gif5,15-Bis(allyloxypropyl)-10-(4-formylphenyl)-20-(1-methyl-2-imidazolyl) porphyrin D-1
2-Formyl-1-methylimidazole 225 mg (2.05 mmol, 1 eq.) をCHCl3 400 mLに溶かした溶液に5-(allyloxypropyl)dipyrromethane B-3 1.00 g (4.09 mmol, 2 eq.), terephthalaldehyde 274 mg (2.05 mmol, 1eq.)を加え、窒素ガスを10分間吹き込んだ。この溶液に酸触媒としてtrifluoroacetic acid 315 μL (4.09 mmol, 2 eq.)を加え窒素雰囲気下、遮光し室温で30分間攪拌した。さらに、酸化剤としてchloranil 1.51 g (6.14 mmol, 3 eq.)を加え一晩攪拌して反応を終了した。 反応溶液中のタールを吸引ろ過により除去し、残渣をCHCl3で洗浄した。ろ液を飽和重曹水200 mL、蒸留水200 mLで洗浄し、水層をCHCl3で抽出し、無水Na2SO4で乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液CHCl3 → CHCl3 / MeOH = 9/1, v/v)によりタール成分と副生成物を除去し、再びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液 CHCl3/acetone = 1/1, v/v)にてTLCでRf = 0.48(展開溶媒:CHCl3/acetone = 1/1,v/v)の分画を単離してD-1を得た。収量 65.3 mg (収率 4.6 %)。
【0143】
TLC Rf = 0.48 (展開溶媒:CHCl3/acetone = 1/1, 検出:UV 365 nm、可視)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ10.41 (s, 1H; -CHO), 9.55 (d, J = 4.2 Hz, 2H; Porβ), 9.51 (d, J = 4.2 Hz, 2H; Porβ), 8.81 (d, J = 5.4 Hz, 2H; Porβ), 8.80 (d, J = 5.4 Hz, 2H; Porβ), 8.42 (d, J = 7.2 Hz, 1H; phenyl), 8.31 (t, 2H; phenyl), 8.28 (d, J = 7.2 Hz, 1H; phenyl), 7.69 (s, 1H; imidazole ring), 7.49 (s, 1H; imidazole ring), 6.08 (ddt, J = 6.0, 9.6, 16.2 Hz 2H; Allylβ), 5.43 (dd, J = 1.2, 17.4 Hz 2H; Allylγ), 5.26 (dd, J = 1.2, 10.2 Hz 2H; Allylγ), 5.01 (t, J = 7.20 Hz 4H; CH2α), 4.08 (m, 4H; Allylα), 3.66 (t, , J = 5.4 Hz 4H; -CH2OAllyl), 3.31 (s, 3H; NCH3), 2.28 (m, 4H; CH2β), -2.69 (s, 2H; inner proton).
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 691.34 (M+H)+,Calcd(C43H42N6O3)690.33
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):418.0(0.8446), 515.5(0.0455), 551.0(0.0222), 591.0(0.0147), 648.0(0.0120)
蛍光スペクトル (CHCl3λEX:418 nm) λEM/nm (蛍光強度):653.0(158.9), 711.8(64.28)。
【0144】
5,15-Bis(allyloxypropyl)-10-[4-phenyl-2-(N-methyl)fulleropyrrolidinyl]-20- (1-methyl-2-imidazolyl) porphyrin D-2
D-1 37.5 mg (54.2 μmol)をtoluene 60 mLに溶解させ、fullerene 78.1 mg (109 μmol, 2 eq.)およびN-methylglycine (sarcosine) 96.7 mg (1.09 mmol, 20 eq.)を加え窒素雰囲気下、遮光し、100 ℃で12時間加熱した。MALDI-TOF MassスペクトルでD-1の消失とD-2の生成を確認し反応を終了した。反応溶液をそのままシリカゲルカラムに通し、始めtolueneのみでfullereneを溶出し回収した。続いて溶離液をCHCl3/acetone (= 9/1,v/v) にしてTLCでRf = 0.35(展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1,v/v)に相当する赤いバンドを分取することにより、D-2を単離した。収量 32 mg (収率 41 %)。
【0145】
TLC Rf = 0.35 (展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1, 検出:UV 365 nm、可視)
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1439.96 (M+H)+,Calcd(C105H47N7O2)1437.38
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):419.0(1.0652), 516.0(0.0582), 551.0(0.0277), 591.5(0.0184), 648.5(0.0140)
蛍光スペクトル (CHCl3λEX:419 nm) λEM/nm (蛍光強度):655.0(1.521), 711.8(1.507)。
【0146】
5,15-Bis(allyloxypropyl)-10-[4-phenyl-2-(N-methyl)fulleropyrrolidinyl]-20- (1-methyl-2-imidazolyl) porphyrinatozinc D-3
窒素雰囲気下でD-2 7.7 mg (5.35 μmol)をCHCl3 15 mLに溶解させ、飽和酢酸亜鉛メタノール溶液1 mLを加え室温で2時間攪拌した。TLC(展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1,v/v)においてD-2が消失し、Rf=0.85にD-3が現れたので反応を終了した。反応溶液にクロロホルムを5 mL加えて、飽和重曹水、蒸留水で洗浄し、水層の色が無くなるまでクロロホルムで抽出した。有機層をまとめて飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒をエバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/acetone = 9/1,v/v) で分取することによりD-3を単離した。 収量 7.2 mg (収率 90 %)。
【0147】
TLC Rf = 0.85 (展開溶媒:CHCl3/acetone = 9/1, 検出:UV 365 nm、可視)
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1502.77 (M+H)+,Calcd(C105H45N7O2Zn)=1499.29
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):414.0(0.0824), 438.5(0.1113), 565.5 (0.0099), 619.5(0.0063)
蛍光スペクトル (CHCl3λEX:438 nm) λEM/nm (蛍光強度):620.6(0.581), 675.0(0.300)。
【0148】
(1-1-6)以下のスキームEに示す反応により、化合物E-6を得た。
【0149】
【化56】
JP0003975273B2_000044t.gif
【0150】
meso-(methoxycarbonylethyl)dipyrromethane E-1
メトキシカルボニルプロパナール (11.6 g, 0.1 mol) とピロール (280 mL, 4 mol) をトリフルオロ酢酸 (1.4 mL, 10 mmol)存在下、攪拌することによって合成した。シリカゲルクロマトグラフィー(hexane/EtOAc 5/1)によって精製しmeso-(メトキシカルボニルエチル)ジピロメタンE-1を17 g(73%)で得た。
【0151】
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 2.22-2.26 (m, 2H), 2.29-2.33 (m, 2H), 3.63 (s, 3H), 3.99 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.05-6.07 (m, 2H, pyH4), 6.12-6.14 (m, 2H, pyH5), 6.58 - 6.62 (m, 2H, pyH2), 7.78 (br, 2H, NH); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 29.5, 31.9, 36.9, 51.6, 105.8, 108.1, 117.3, 132.4, 174.0。
【0152】
5-(1-methylimidazol-2-yl)-10,20-bis(2-methoxycarbonylethyl)porphyrin E-2
無水MgSO4 2.6 g (22 mmol), paraformaldehyde 0.8 g (20 mmol)を分散した CHCl3 500 mL を窒素バブリング後, TFA 0.75 mL (9.8 mmol) を加えて 40秒間超音波をかけ, imidazolealdehyde 0.55 g (5.0 mmol), dipyrromethaneE-1 2.35 g (10 mmol)を加えて 50分攪拌した. つぎに chloranil 3.5 g (14 mmol)を加えて 20分間攪拌したあと, 飽和重曹水で分液洗浄して TFA を除去して溶媒を減圧留去した.シリカゲルカラム(CHCl3-CHCl3/acetone 9/1 v/v)で目的のポルフィリンを含む分画を分取した. 酢酸亜鉛のメタノール飽和溶液でポルフィリンに亜鉛を導入してシリカゲルカラム(CHCl3)で分取した. 得られた分画を diethylether で洗浄して析出した微結晶E-2を得た(収量96 mg, 収率3.1 %)。
【0153】
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 1.59 (s, N-CH3, 3H), 1.85 (s, 5-imidazolyl, 1H), 3.87-3.91 (m, -CH2COOMe, 4H), 3.91 (s, -COOCH3, 6H), 5.42 (s, 3,7-β-pyrrole, 2H), 5.44 (s, 4-imidazolyl, 1H), 5.52 (t, J = 8.6 Hz, -CH2CH2COOMe, 4H), 8.95 (d, J = 4.6 Hz, 2, 8-β-pyrrole, 2H), 9.54, 9.74 (d, 4.32 Hz, 12,13, 17,18-β-pyrrole, 4H), 10.29 (s, meso-proton, 1H).
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 625.35 (M+H)+, Calcd 624.15 (M+)
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):408, 430, 559, 608。
【0154】
15,15'-Bis{5-(1-methylimidazol-2-yl)-10,20-bis(2-methoxycarbonyl-ethyl)}-porphyrin E-3 (meso-meso bisporphyrin)
前駆体となる亜鉛ポルフィリンE-2 174 mg (0.27 mmol), I2 39 mg (0.15 mmol)を CHCl3 90 mL に溶解し, 5分間窒素バブリングを行い窒素雰囲気とした. この溶液に AgPF6 47 mg (0.18 mmol)の acetonitrile溶液数滴を添加し, 室温で 18分間攪拌した. チオ硫酸ナトリウム水溶液, 飽和重曹水, 飽和食塩水で分液洗浄して反応をクエンチし, 希塩酸/メタノール溶液処理して脱亜鉛を行い茫硝乾燥した. シリカゲルカラム(CHCl3/acetone 9/1 v/v)3回行いn-hexanaeで洗浄することで目的のメソ位直結型ポルフィリンE-3を得た(収量74 mmol, 収率49%)。
【0155】
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ -2.17 (s, NH, 4H), 3.53 (s, N-CH3 + -CH2COOMe, 6H + 8H), 3.70 (d, J = 3.24 Hz, -COOCH3, 6H), 5.33 (m, -CH2CH2COOMe, 8H), 7.56 (d, J = 1.4 Hz, 5-imidazolyl, 2H), 7.76 (d, J = 1.4 Hz, 4-imidazolyl, 2H), 7.99, 8.14 (d, J = 4.7 Hz, 13,13',17,17'-β-pyrrole, 4H), 8.94 (d, J = 4.1 Hz, 4,4',7,7'-β-pyrrole, 4H), 9.14 (dd, J = 10.8, 5.1 Hz, 12,12',18,18'-β-pyrrole, 4H), 9.59 (dd, J = 2.3, 3.0 Hz, 3,3',9,9'-β-pyrrole, 4H). MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1123.82
(M+H)+, Calcd 1122.45 (M+).
UV-Vis スペクトル(溶媒:CHCl3)λmax/nm (吸光度):413, 453, 526, 596, 655。
【0156】
15,15'-Bis{5-(1-methylimidazol-2-yl)-10,20-bis(2-allyloxycarbonyl-ethyl)}-porphyrin E-5
ポルフィリンメチルエステル体E-3 21 mg (0.019 mmol)を toluene/allylalcohol 10/1 v/v に溶解し, 10等量のスズ触媒E-4(大寺らの方法に従い合成して使用した。Junzo Otera, Nobuhisa Dan-oh, Hitosi Nozaki, J. Org. Chem. 1991, 56, 5307-5311) 104 mg (0.19 mmol)を加えて加熱(バス温 80-90 ℃)しながら 6時間攪拌した. MALDI-TOF MSでエステル交換反応が完了したことを確認し, 反応溶液をエバポレータで濃縮してシリカゲルカラム(CHCl3/acetone 5/1 v/v → 1/1 v/v, CHCl3/acetone 1/1 v/v - CHCl3/acetone 1/1 v/v + MeOH )にて精製し、E-5を得た(収量12 mg, 収率51%)。
【0157】
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ -2.16 (s, NH, 4H), 3.53 (s, N-CH3 + -CH2COOMe, 6H + 8H), 3.50 (m, -CH2COO- 6H), 3.53 (s, N-CH3, 6H), 4.62 (m, -COOCH2-, 8H), 5.15 (d, J =10.26 Hz, β-allyl, 4H), 5.23 (d, J =2.7 Hz, β-allyl, 4H), 5.29 (m, -CH2CH2COO-, 8H), 5.84 (m,α-allyl, 4H), 7.25 (s, 5-imidazolyl, 2H), 7.57 (d, J = 1.1 Hz, 4-imidazolyl, 2H), 7.99, 8.15 (d, J = 4.7 Hz, 13,13',17,17'-β-pyrrole, 4H), 8.95 (d, J = 4.3 Hz, 4,4',7,7'-β-pyrrole, 4H), 9.18 (dd, J = 13.5, 4.9 Hz, 12,12',18,18'-β-pyrrole, 4H), 9.59 (dd, J = 2.3, 3.0 Hz, 3,3',9,9'-β-pyrrole, 4H).
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1227.58 (M+H)+, Calcd 1226.51 (M+)。
【0158】
15,15'-Bis{5-(1-methylimidazol-2-yl)-10,20-bis(2-allyloxycarbonyl-ethyl)}-porphyrinatezinc E-6
フリーベース体 E-5 (12 mg)をクロロホルム(20 mL)に溶解し、酢酸亜鉛のメタノール飽和溶液(2 mL)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液をエチレンジアミン四酢酸水溶液, 飽和食塩水で分液洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去することによって亜鉛錯体E-6 (12 mg)を得た。
MALDI-TOF Mass スペクトル (Dithranol):m/z Found 1351.35 (M+H)+, Calcd 1350.34 (M+).
UV-Vis スペクトル(溶媒:CH2Cl2)λmax/nm (吸光度):407, 490, 582, 633.
蛍光スペクトル (CH2Cl2λEX:490 nm) λEM/nm (蛍光強度):670。
【0159】
(1-2)ポルフィリン組織化基板の調製
(1-2-1)金基板の作製
スライドガラス(76×26×1.2 mm, Iwaki製)を30% H2O2/conc.HCl(10/1, v/v)混合溶液に1.5-2時間浸した後、純水で洗浄し、ヒートガンで乾燥した。この基板を蒸着装置に設置し、300 ℃、10-6 Torr程度の条件下でまずCrを50 Å(蒸着速度ca. 0.3 nm/sec)蒸着後、その上にAuを200 Å(蒸着速度ca. 0.1 nm/sec)蒸着した。蒸着後180 ℃に放冷(約1時間)した後、基板を取り出した。蒸着装置にはアルバックテクノ株式会社 小型高真空蒸着装置 VPC-260 を用いた。このようにして作成した基板をF-1とする。
【0160】
(1-2-2)自己組織化亜鉛ポルフィリン単分子膜(Zn-SAM F-3)の調製
以下のスキームFaに示す反応により、化合物F-3を得た。
【0161】
【化57】
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【0162】
金基板F-1を10 mm x 26 mmの大きさに分割し、その表面をメタノールで拭いて窒素気流下で乾燥した。別途C-3の0.1 mM CH2Cl2溶液を調製し、アルゴンガスをバブリングして脱気後、分割した金基板を室温で一晩浸漬させた。浸漬後、基板表面をCH2Cl2で洗浄した。さらに、窒素気流下で乾燥し、金表面にフリーベースポルフィリンを修飾した自己組織化単分子膜の基板F-2を得た。Au-S結合の還元的脱離法によって基板上におけるポルフィリン分子の専有面積を求めたところ表面被覆率が約7×1013分子/cm2(10-10mol/cm2)、すなわち1分子あたりの金基板上での分子の占有面積は、約3nm2/分子であり、金基板全体にポルフィリン分子が密に配列していることを確認した。
【0163】
次に基板上でポルフィリン部への亜鉛の導入をおこなった。CHCl3 4 mLに飽和酢酸亜鉛メタノール溶液を3、4滴加え、窒素バブリングによる脱気後、この溶液にFb-SAM基板 F-2を浸漬させ、30分おきに軽く攪拌しながら50 ℃で2時間加熱した。表面をCHCl3、MeOH、CH2Cl2の順に洗浄し、窒素気流下で乾燥し、ポルフィリンに亜鉛が導入された基板Zn-SAM F-3を得た。
【0164】
(1-2-3)C60- ZnSAM/Au F-4の作製
以下のスキームFbに示す反応により、化合物F-4を得た。
【0165】
【化58】
JP0003975273B2_000046t.gif
【0166】
亜鉛ポルフィリン単分子膜をもつ基板Zn-SAM F-3をフラーレン置換イミダゾリルポルフィリンD-3の0.1 mM CH2Cl2(20 mMのpyrideneを含む)溶液に室温で2時間浸漬後、CH2Cl2で洗浄し、窒素気流下で乾燥した。さらに、この基板をGrubbs触媒(Fluka 09587 Benzylidene-bis(tricyclohexyiphosphine)-dichlororutheniumを購入して使用した。)の溶液(Grubbs cat. 0.7 mg , 0.85μmol in CH2Cl2 4 mL)にアルゴン雰囲気下で10分間浸してメタセシス反応を行った。その後CH2Cl2、MeOH、CH2Cl2の順に洗浄し、SAM表面に電子アクセプターを固定化した基板(C60- ZnSAM/Au) F-4を得た。
【0167】
(1-2-4)Antenna-ZnSAM/Au F-5の作製
以下のスキームFcに示す反応により、化合物F-5を得た。
【0168】
【化59】
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【0169】
基板 F-3をmeso-meso連結bisporphyrin E-6 の1 mM CH2Cl2 (20 mMのpyrideneを含む)溶液に1時間(1)浸漬し、基板表面をCH2Cl2で洗浄してpyridineを除去することで基板上にE-6のoligomerを組織化させた。この基板をGrubbs触媒の溶液(Grubbs cat. 0.7 mg , 0.85μmol in CH2Cl2 4 mL)にアルゴン雰囲気下で10分間浸し、(2)メタセシス反応を行った。余分な触媒および共有結合で固定されていないporphyrinを除去するために過剰のCH2Cl2、MeOH、CH2Cl2の順に(3)洗浄し、窒素気流下で乾燥した。(1)浸漬、(2)メタセシス反応、(3)洗浄の操作を1サイクルとして、この操作を合計5回繰り返して吸光度0.15程度までポルフィリン多量体を規則正しく固定化した。こうして得た基板をAntenna-ZnSAM/Au F-5とする。
【0170】
図1に、Zn-SAM F3と、各サイクルごとの生成物の吸収スペクトルを示す。
【0171】
(1-2-5)C60-Antenna-ZnSAM/Au F-6 の作製
以下のスキームFdに示す反応により、化合物F-6を得た。
【0172】
【化60】
JP0003975273B2_000048t.gif
【0173】
光捕集アンテナを組織化させた基板 F-5をフラーレン置換イミダゾリルポルフィリンD-3の0.1 mM CH2Cl2(20 mMのpyrideneを含む)溶液に室温で2時間浸漬後、CH2Cl2で洗浄し、窒素気流下で乾燥した。さらに、この基板をGrubbs触媒の溶液(Grubbs cat. 0.7 mg , 0.85 μmol + CH2Cl2 4 mL)にアルゴン雰囲気下で10分間浸し、メタセシス反応を行った。その後CH2Cl2、MeOH、CH2Cl2の順に洗浄した。この一連の操作によって得られた基板をC60-Antenna-ZnSAM/Au F-6とする。
【0174】
<実施例2>
上記実施例1では、異なるポルフィリンとして2種類のみ用いたが、2種類以上のポルフィリンを任意の順番で積層、固定化することができる。例えば、次のスキームGに示すように、ビスポルフィリン16の後に励起エネルギー順位の低いビスポルフィリン26を用い、さらに電子受容体を有するイミダゾールポルフィリンを結合することによってエネルギー順位に傾斜をつけた素子を構築することができる。この方法によって様々な電位勾配を有するヘテロ界面の構築が可能になる。
【0175】
【化61】
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【0176】
<実施例3>
(3-1)光電流測定
上記実施例1で合成したZnSAM/Au F-3、C60- ZnSAM/Au F-4、Antenna-ZnSAM/Au F-5及びC60-Antenna-ZnSAM/Au F-6の光電流測定を行った。
【0177】
(3-2)測定装置
200 W 高安定Hg-Xeランプ
電源:XENON LAMP POWER SUPPLY C7535 HAMAMATSU
ランプハウス:LAMPHOUSE UNIT E7536 HAMAMATSU
モノクロメーター:SPG-120S SHIMADZU
【0178】
(3-3)測定系
基板の光電流測定を行うために三極系電気化学セルに光学セルを組み合わせた光電気化学セルを使用した(図2)。ポルフィリンを修飾した金電極(作用極)は0.28 cm2の大きさの窓を開けたゴムを介してセルに固定した。このセルを200-W Xeランプのランプハウスから30 cmのところに設置し、IRカットフィルターあるいはモノクロメーターを通すことで白色光または単色光を基板表面に光学セルを通して照射した。外光の影響を除くために、この装置全体を箱で覆い遮光した。セルに支持電解質として0.1 M Na2SO4水溶液、犠牲試薬5 mM methylviologen水溶液を加えて、対極(白金線)および参照極(Ag/Ag+, CH3CN, tetra-t-butylammonium perchlorate(TBAP))を溶液に浸して1時間窒素バブリングを行った後測定した。
【0179】
測定開始後50秒はシャッターをoffにして電流値を安定させた。その後20秒間隔で光照射のon-offを行った。
【0180】
作製したZnSAM/Au F-3 、C60- ZnSAM/Au F-4 、Antenna-ZnSAM/Au F-5 、C60-Antenna-ZnSAM/Au F-6基板について、光照射時と非照射時における電流と電圧の関係を本装置によって計測した。図3及び図4に結果を示す。
【0181】
また、Antenna-ZnSAM/Au F-5については電解質を50 mMトリエタノールアミンに換えて同様に光照射時と非照射時における電流と電圧の関係を計測した。図5に結果を示す。
【0182】
【発明の効果】
本発明の基板上に多量体を積層させた式(VIII)又は式(VIII')で表される素子は、その構成単位であるポルフィリンの光励起電子移動作用により、光機能分子素子として使用することができる。具体的には、本発明の光機能分子素子は、有機太陽電池や3次の非線形有機材料への応用が期待できる。
【0183】
また、本発明の光機能分子素子は、固体基板上において配位結合で組織化されたポルフィリン多量体を共有結合によって固定化している。特に、この共有結合による固定化により、本発明の光機能分子素子を使用する環境(用いる溶媒)への依存性が少なく、多量体の形態を安定に維持することができる。さらに、多量体を積層する際の浸漬、洗浄工程中に既に積層した層がはがれる可能性が低く、厚みのある積層体を形成することができる。
【0184】
また、本発明の光機能分子素子では、固定化するポルフィリンは任意に選択することができ、1方向のみに段階的に成長させることができる。従って、例えば、エネルギー順位の異なるポルフィリン多量体を段階的に固定化すると電位勾配をもつ傾斜機能材料となる。これによって電子や空孔(ホール)の流れる方向を制御(整流作用)することが可能になる。
【0185】
また、本発明の光機能分子素子は、従来の無機半導体を用いた電子材料に比べて、軽量化可能、薄膜化可能、曲げに強い、コストを下げられる、使用後は自然分解するなど多くのメリットが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、Zn-SAM F-3及びAntenna-ZnSAM/Au F-5が得られるまで(5サイクル)の各サイクル毎の吸光度を示すグラフ。
【図2】 図2は、実施例で使用した三極系電気化学セルに光学セルを組み合せた光電気化学セルを備えた装置の概略図。
【図3】 図3は、Zn-SAM F-3(白ダイア:光電流;黒ダイア:暗電流)及びC60-ZnSAM/Au F-4(白丸:光電流;黒丸暗電流)の光電流測定結果を示すグラフ。
【図4】 図4は、Zn-SAM F-3(白三角:光電流;黒三角:暗電流)、Antenna-ZnSAM/Au F-5(白四角:光電流;黒四角:暗電流)及びC60-Antenna-ZnSAM/Au
F-6(白丸:光電流;黒丸:暗電流)の光電流測定結果を示すグラフ。
【図5】 図5は、Antenna-ZnSAM/Au F-5(白丸:光電流;黒丸:暗電流)光電流測定結果を示すグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4