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明細書 :測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4350411号 (P4350411)
公開番号 特開2004-325223 (P2004-325223A)
登録日 平成21年7月31日(2009.7.31)
発行日 平成21年10月21日(2009.10.21)
公開日 平成16年11月18日(2004.11.18)
発明の名称または考案の名称 測定装置
国際特許分類 G01N  21/49        (2006.01)
G01N   3/00        (2006.01)
FI G01N 21/49 Z
G01N 3/00 K
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2003-119769 (P2003-119769)
出願日 平成15年4月24日(2003.4.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年10月25日社団法人計測自動制御学会関西支部主催「計測自動制御学会関西支部シンポジウム」において文書をもって発表
審査請求日 平成18年4月20日(2006.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】杉浦 忠男
【氏名】湊 小太郎
【氏名】菅 幹生
個別代理人の代理人 【識別番号】100067828、【弁理士】、【氏名又は名称】小谷 悦司
【識別番号】100096150、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 孝夫
【識別番号】100099955、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 次郎
【識別番号】100109438、【弁理士】、【氏名又は名称】大月 伸介
審査官 【審査官】横井 亜矢子
参考文献・文献 特開平10-227737(JP,A)
特開2002-174778(JP,A)
特開2004-085242(JP,A)
特開2004-108793(JP,A)
特開2003-065930(JP,A)
Yoshimasa Kawata et al.,Application of laser-trapping technique for measuring the three-dimensional distribution of viscosity,OPTICS COMMUNICATIONS,2002年 2月19日,Vol.202,No.1/3,Page.1-8
調査した分野 G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/74
G01N 3/00- 3/62
G01N 11/00-11/16
G01N 19/00-19/10
G02B 21/00
G02B 21/06-21/36
JSTPlus(JDream2)
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
生体組織の粘弾性力を測定する測定装置であって、
前記生体組織及び微粒子を貯留する貯留手段と、
前記微粒子を捕捉するためのレーザ光を出力するレーザ出力手段と、
測定者からの操作指令を受け付ける操作手段と、
前記操作手段が受け付けた操作指令に応じて、前記レーザ出力手段が出力したレーザ光によって補足された微粒子を移動させるために、前記レーザ光を偏向させる偏向手段と、
前記偏向手段が偏向したレーザ光を前記貯留手段に導き、かつ、前記レーザ光に前記微粒子を捕捉させるために前記貯留手段において前記レーザ光を集光させる集光手段と、
四角形状の受光領域に対応する測定エリアにおける前記微粒子の位置を検出する検出器と、
記微粒子を前記生体組織に押し当てることにより生じた前記レーザ光の前記測定エリアでの位置に対する前記微粒子の前記測定エリアでの位置のずれ量を算出するずれ量算出手段と、
前記ずれ量算出手段が算出したずれ量を基に、前記生体組織の粘弾性力を算出する算出手段とを備え、
前記操作手段は、ハプティックデバイスであり、
前記算出手段が算出した前記生体組織の粘弾性力に基づいて、前記ハプティックデバイスに付与する力覚を算出し、算出した力覚を前記ハプティックデバイスに付与する力覚付与手段をさらに備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記検出は、前記微粒子の散乱光を前記偏向手段を介して受光する4分割ディテクタを含むことを特徴とする請求項記載の測定装置。
【請求項3】
前記操作手段は、前記偏向手段と通信可能に接続することにより、遠隔地に配設することを特徴とする請求項1又は2記載の測定装置。
【請求項4】
前記生体組織を切断するための切断用レーザ光を出力する切断用レーザ光出力手段と、
前記切断用レーザ光を偏向させるための測定者からの操作指令を受け付ける切断用操作手段と、
前記切断用操作手段が受け付けた操作指令に応じて、前記切断用レーザ光を偏向させる切断用レーザ光偏向手段と、
前記切断用レーザ光偏向手段が偏向した切断用レーザ光を前記貯留手段に導く光学系とを備えることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の測定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞等の生体組織の粘弾性力を調べる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞等の生体組織は、その種類によって硬さが異なることが知られている。したがって、生体組織の定量的な硬さを測定し、測定した硬さを基に、その細胞の種類(例えばがん細胞)を特定することができれば、患者の病気を特定することができる。
【0003】
従来より、細胞等の生体組織の定量的な硬さを測定する方法として磁気共鳴弾性率測定法(Magnetic Resonance Elastorography)が知られている(非特許文献1)。この方法は、組織の表面に横方向の振動を与えるとともに、MRI(磁気共鳴イメージング装置)を用いて生体組織の断面画像を取得し、その振動が組織中を伝搬していく速度を、MRIで得られた断面画像を基に算出し、算出した速度を基に組織の硬さを算出するものである。この手法によれば、生体組織の堅さを非侵襲で計測することができるとともに、組織中での硬さ(剛性率)の分布を計測することができる。
【0004】
【非特許文献1】
MR elastography 松田哲也 菅幹生 日磁医誌 第20巻6号(2000)291~300頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記手法では、MRIが数cmオーダー以下の物質の断面画像を取得することが困難であるため、測定物の大きさが数cmオーダーとなり、それよりも小さな生体組織の粘弾性力を測定することは不可能であった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、数cmオーダーよりも小さな生体組織の粘弾性力を定量的に測定することができる測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る測定装置は、生体組織の粘弾性力を測定する測定装置であって、前記生体組織及び微粒子を貯留する貯留手段と、前記微粒子を捕捉するためのレーザ光を出力するレーザ出力手段と、測定者からの操作指令を受け付ける操作手段と、前記操作手段が受け付けた操作指令に応じて、前記レーザ出力手段が出力したレーザ光によって補足された微粒子を移動させるために、前記レーザ光を偏向させる偏向手段と、前記偏向手段が偏向したレーザ光を前記貯留手段に導き、かつ、前記レーザ光に前記微粒子を捕捉させるために前記貯留手段において前記レーザ光を集光させる集光手段と、四角形状の受光領域に対応する測定エリアにおける前記微粒子の位置を検出する検出器と、前記微粒子を前記生体組織に押し当てることにより生じた前記レーザ光の前記測定エリアでの位置に対する前記微粒子の前記測定エリアでの位置のずれ量を算出するずれ量算出手段と、前記ずれ量算出手段が算出したずれ量を基に、前記生体組織の粘弾性力を算出する算出手段とを備え、前記操作手段は、ハプティックデバイスであり、前記算出手段が算出した前記生体組織の粘弾性力に基づいて、前記ハプティックデバイスに付与する力覚を算出し、算出した力覚を前記ハプティックデバイスに付与する力覚付与手段をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、レーザ光は貯留手段で集光するように貯留手段へ導かれ、集光位置において微粒子を捕捉し、捕捉した微粒子を貯溜手段に貯留されている生体組織に押し当て、押し当てた際に生じる微粒子のレーザ光に対するずれ量が検出され、検出されたずれ量に対して所定の演算が施されて生体組織の粘弾性力が測定される。ここで、レーザ光は、放射圧により、例えば、直径が100nm~数十μmの非常に小さな微粒子を捕捉することができる。そのため、数cmオーダーよりも小さな生体組織の粘弾性力あるいは、生体組織の極めて小さな領域(例えば数cmオーダーよりも小さな領域)における粘弾性力を測定することが可能となる。
【0010】
また、この構成によれば、操作手段として、ハプティックデバイスを用いるとともに、算出された生体組織の粘弾性力から力覚が算出され、この力覚がハプティックデバイスに付与されるため、測定者は、生体組織の粘弾性力を体感することができる。
【0011】
また、前記検出手段は、前記微粒子の散乱光を前記偏向手段を介して受光する4分割ディテクタを含むことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、微粒子の散乱光を偏向手段を介して受光する4分割ディテクタを用いたため、検出手段の測定結果がそのままずれ量として表れることとなり、粘弾性力の測定手順が一部簡略化される。
【0013】
また、前記操作手段は、前記偏向手段と通信可能に接続することにより、遠隔地に配設してもよい。この構成によれば、偏向手段を遠隔操作することができる。
【0014】
また、前記生体組織を切断するための切断用レーザ光を出力する切断用レーザ光出力手段と、前記切断用レーザ光を偏向させるための測定者からの操作指令を受け付ける切断用操作手段と、前記切断用操作手段が受け付けた操作指令に応じて、前記切断用レーザ光を偏向させる切断用レーザ光偏向手段と、前記切断用レーザ光偏向手段が偏向した切断用レーザ光を前記貯留手段へ導く切断用光学系とを備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、切断用レーザ光は、操作者からの操作指令に応じて偏向され、貯留手段へと導かれ、生体組織を照射することにより生体組織を切断する。このため、生体組織を所望する長さに切断し、切断した生体組織の各断片の粘弾性力を個別に求めることができるとともに、生体組織として細胞膜を用い、細胞膜が切断された際の粘弾性力の経時的な変化を解析することにより、細胞膜の骨格の状態について診断することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る測定装置(以下、第1の測定装置という)の全体構成図を示している。第1の測定装置は、微粒子Pを捕捉するための捕捉用のレーザ光を出力するレーザ出力装置1と、微粒子Pを捕捉するために捕捉用のレーザ光を集光する集光レンズ2と、第1の測定装置全体を統括制御する制御装置3とを備えている。レーザ出力装置1と集光レンズ2との間には、レーザ光の下流側に向けて、偏向装置5、2波長性ミラー6が順番に配設されている。2波長性ミラー6の図中上側には集光レンズ7を介して検出器8が配設されている。制御装置3には、検出器8が電気的に接続されている。制御装置3には、レーザ光の偏向量を調整するための操作部9が電気的に接続されている。集光レンズ2の下側には微粒子P及び生体組織Oを貯留する容器10が配設されている。微粒子P及び生体組織Oは、例えば水によって浸漬されている。微粒子Pは、直径が100nmから数十μmの誘電体又は金属からなる粒子である。第1の測定装置(第2~第4の測定装置も同じ)では、微粒子Pとして直径2μmのポリスチレンラテックス粒子を用いている。
【0017】
レーザ出力装置1は、例えばレーザダイオード及びレーザダイオードに駆動電流を供給する駆動回路等(いずれも図略)から構成され、容器10が収容する微粒子Pを捕捉するためのレーザ光を出力する。なお、駆動回路は、制御装置3と電気的に接続されており、制御装置からの制御信号にしたがって、駆動電流のレベルを決定し、レーザダイオードに出力する。
【0018】
集光レンズ2は、2波長性ミラー6から出力されたレーザ光を受光して容器10内の所定の集光位置CPに集光させる。また、微粒子のレーザ光による散乱光を受光して2波長性ミラー6側に導く。微粒子Pは集光位置CPにおいてレーザ光からの放射圧を受けて集光される。
【0019】
偏向装置5は、2個のガルバノミラー51,52で構成されている。ガルバノミラーは、可動コイル及び可動コイルの軸に取り付けられた小型反射ミラーを含み、小型反射ミラーは、可動コイルに流れる電流によって傾きが制御される。
【0020】
ここで、集光位置CPを通り、レーザ光の光軸と垂直平面上に、図2に示すような横方向の一辺にX軸が設定され、縦方向の一辺にY軸が設定された四角形状の測定エリアMAを想定する。
【0021】
ガルバノミラー51は、測定エリアMAのX軸方向へのレーザ光の偏向量を決定し、ガルバノミラー52は、測定エリアMAのY軸方向へのレーザ光の偏向量を決定する。これにより図2に示す測定エリアMA上でのレーザ光の位置LPが決定される。なお、レーザ光の位置LPは集光位置CPに対応している。詳細には、ガルバノミラー51は、例えば傾斜角度が0度のときX=0、傾斜角度が90度のときX=X1(測定エリアMAのX軸上の最大値)となるように傾斜角度に応じてレーザ光のX方向の偏向量を決定する。また、ガルバノミラー52は、例えば傾斜角度が0度のときY=0、傾斜角度が90度のときY=Y1(測定エリアMAのY軸上の最大値)となるように傾斜角度に応じてレーザ光のY方向の偏向量を決定する。
【0022】
2波長性ミラー6は、偏向装置5からのレーザ光を反射させて、集光レンズ2側に導くとともに、集光レンズ2からの微粒子Pの散乱光を透過して集光レンズ7側へ導く。2波長性ミラー6を透過した散乱光は、集光レンズ7により集光されて検出器8に導かれる。
【0023】
検出器8は、例えばポジションセンシティブディテクタ(PSD)から構成され、微粒子Pの散乱光を受光することにより、微粒子Pの位置を検出する。PSDは、光を受光するディテクタ面を備えており、このディテクタ面での散乱光の受光位置(スポット位置)から容器10内の微粒子Pの位置を検出する。ディテクタ面には四角形状の受光領域が設定されており、この受光領域は、測定エリアMAと対応している。そして、受光領域には、測定エリアMAと対応するようにX軸及びY軸が設定されている。検出器8は、スポット位置のX座標の値に対応するレベルの電圧信号と、Y座標の値に対応するレベルの電圧信号とを制御装置3に出力する。図3は、測定エリアMAにおいて、レーザ光をX軸と平行に72μm移動させたときの、スポット位置(微粒子の位置)とPSDが生成する電圧との関係を示したグラフであり、縦軸はPSDの出力電圧を示し、横軸は位置を示している。図3中破線はレーザ光を示しており、実線は微粒子Pを示している。図3から分かるように測定エリアMAの周辺部では、微粒子Pの電圧値は、若干ドリフトしているが、中心部ではほぼ直線状に変化していることが分かる。
【0024】
操作部9は、制御装置3と電気的に接続されたハプティックデバイスで構成され、ベース91、本体部92及び操作スティック93を備えている。本体部92は、ベース91に対して図1のHで示す方向に回転自在に取り付けられている。また、操作スティック93は、本体部92に対して図Vで示す方向に回転自在に取り付けられている。操作スティック93を把持した測定者が操作スティック93を介して本体部92をH方向に回転させると、操作部9は、その回転量に応じたレベルの操作指令信号を制御装置3に出力する。これにより、ガルバノミラー51は、本体部92の回転量に応じた角度で傾斜する。また、測定者が操作スティック93をV方向に回転させると、操作部9は、その回転量に応じたレベルの操作指令信号を制御装置3に出力する。これにより、ガルバノミラー52は、操作スティックの回転量に応じた角度で傾斜する。したがって、測定者は、後述する表示装置34に表示された測定エリアMAの画像を観測しながら、操作部9を操作することにより、測定エリアMAおけるレーザ光の位置LPを所望する位置に移動させることができる。
【0025】
CCDカメラ11は、集光レンズ2と2波長性ミラー6との間に配設され、測定エリアMAを撮影する。
【0026】
次に、微粒子Pがレーザ光によって捕捉されるレーザトラッピングの原理について説明する。なお、レーザトラッピングの技術は1986年にAshkinらによって開発されたものである。(A.Ashki,J.M.Dziedzic,J.E.Bjorkholm and Steven Chu:Observation of a Single-Beam Gradient Force Optical Trap for Dielectric Particles,Optics Letters,11-5,288/290(1986))
図4は、レーザトラッピングの原理を説明するための図である。微粒子Pにレーザ光が照射されると、レーザ光は、周囲の媒質と異なる屈折率をもつ粒子の表面で屈折され、進行方向が変化する。これにより散乱が起こる。光を構成するフォトンは運動量を持っており、その運動量は粒子によって屈折・散乱時にも保存される。図4に示すように、Paの方向に進行してきたレーザ光が屈折によりPa´の方向へと変化すると、この時の運動量変化分はFaの方向を向いている。単位時間当たりのフォトンの運動量変化分が粒子に対して作用する力となる。同様に微粒子Pにレーザ光が照射している全ての部分における力を重ね合わせると、結果として微粒子Pには、レーザ光の焦点位置の方向に引き寄せられる力が働くこととなる。
【0027】
これは、媒質の屈折率が微粒子Pの屈折率よりも小さい場合の挙動であるが、逆に媒質の屈折率が微小粒子の屈折率よりも大きい場合は、レーザ光の屈折する方向が逆となり、レーザ光の集光位置から遠ざかる方向へ力が働く。第1の測定装置は、媒質が水であり操作対象がポリスチレンビーズや生体細胞・分子の場合を想定しているため、媒質の屈折率が微粒子Pの屈折率よりも小さい。したがって、微粒子Pは集光位置CPで捕捉される。
【0028】
図5は、第1の測定装置における制御装置3の機能を説明するためのブロック構成図である。制御装置3は、CPU(中央処理装置)31、ROM(リードオンリーメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、表示装置34を備えている。
【0029】
RAM33は、CPU31の作業領域として用いられ種々のデータを一時的に記憶する。表示装置34は、CRT(陰極線管)あるいは液晶パネルから構成され、CCDカメラ11によって撮影された測定エリアMAの画像や測定された生体組織の粘弾性力等を表示する。
【0030】
CPU31は、操作受付部311、ずれ量算出部312、粘弾性力算出部313及び力覚算出部314を機能的に備えている。
【0031】
操作受付部311は、操作部9から出力された操作指令信号を受信し、受信した操作指令信号のレベルに応じた角度でガルバノミラー51,52を傾斜させるための傾斜指令信号を生成し、偏向装置5に出力する。また、操作受付部311は、ガルバノミラー51,52の傾斜角度から特定されるレーザ光の測定エリアMA上での位置LP(XL,YL)を決定する。ガルバノミラー51の傾斜角度が決定されると測定エリアMAのX座標の値が一意に決定されるとともに、ガルバノミラー52の傾斜角度が決定されると測定エリアMAのY座標の値が一意に決定されるため、操作受付部311は、ガルバノミラー51,52のそれぞれの傾斜角度を基に、測定エリアMAにおけるレーザ光の位置LPを決定することができる。
【0032】
ずれ量算出部312は、検出器8が検出した微粒子Pの測定エリアMA上での位置PP(XP,YP)及び操作受付部311が決定したレーザ光の位置LP(XL,YL)とを用いて、ΔX=XL-XP、ΔY=YL-YPの演算を行うことにより、測定エリアMA上におけるレーザ光に対する微粒子Pのずれ量ΔL(ΔX,ΔY)を算出する。
【0033】
粘弾性力算出部313は、ずれ量算出部312が算出したずれ量ΔL(ΔX,ΔY)を式(1)に代入することにより、生体組織Oの粘弾性力f(fX、fY)を算出する。
【0034】
f=-kΔL+6πηrv・・・式(1)
ここで、kは光ピンセットのバネ定数、ηは容器10内の液体(水)の粘性、rは微粒子Pの半径、v(v、v)は微粒子Pの併進速度を表している。
【0035】
レーザ光が照射された微粒子Pは、レーザ光からの放射圧によって集光位置CPで捕捉される。捕捉された微粒子Pを生体組織Oに押し当てると、微粒子Pは生体組織Oからの外力を受けてレーザ光の位置LPからΔLずれる。ここで、微粒子Pに働く力Fは式(2)によって表される。
【0036】
F=kΔL+6πηrv+f・・・式(2)
fは外力(生体組織Oの粘弾性力)であり、右辺第1項は微粒子Pに働く捕捉力、右辺第2項は微粒子Pの併進運動で働く周りの媒質(水)から受ける粘性抵抗力である。そして、微粒子Pの質量をm、微粒子Pの加速度をaとすると、微粒子Pの運動方程式は、式(3)のように表される。
【0037】
F=ma・・・式(3)
微粒子Pの質量mは非常に小さいため、捕捉力や粘性抵抗力に比べて無視できるとすると、式(3)でF=0とすることができる。そして、式(3)をfについて求めると式(1)が算出される。そして、式(1)において、η、r及びvが既知とすると、ΔLの値が分かれば、粘弾性力fを算出することができる。
【0038】
力覚算出部314は、粘弾性力算出部313が算出した粘弾性力fに対して所定の演算を施すことにより、ハプティックデバイスからなる操作部9に付与する力覚を算出する。測定者が存在するマクロ世界は弾性力が支配する世界であり、微粒子Pが存在するマイクロ世界は摩擦や粘性が支配的な世界である。このような物理的特性の違いからマクロ世界とマイクロ世界との位置変位情報や力覚情報は単純に定数倍する方法では操作性の面で適切でないと考えられる。そこで、力覚算出部314は、マイクロ環境下の作業感覚をそのまま測定者に提示するのではなく、測定者が操作する上で慣れたマクロ環境下の作業感覚に合うように力覚を算出している。詳細には、微粒子Pには周囲の媒質(水)との摩擦力、ブラウン運動による力が主に働いていると考えられる。そこで、力覚算出部314は、これらの力を近似的に
=-kX・・・式(4)
とすることにより力覚を算出している。
ここで、Fは微粒子Pに働く力、kはばね定数、Xは微粒子の位置変位である。
【0039】
なお、第1の測定装置は、容器10が貯留手段に相当し、レーザ出力装置1がレーザ出力手段に相当し、操作部9が操作手段に相当し、偏向装置5が偏向手段に相当し、2波長性ミラー6及び集光レンズ2が集光手段に相当し、検出器8、操作受付部311及びずれ量算出部312が検出手段に相当し、粘弾性力算出部313が算出手段に相当し、力覚算出部314が力覚付与手段に相当する。
【0040】
次に、第1の測定装置の動作について説明する。図1に示すレーザ出力装置1から出力されたレーザ光は、偏向装置5、2波長性ミラー6及び集光レンズ2を介して集光位置CPへと導かれる。容器10内の微粒子Pはレーザ光からの放射圧を受けて、レーザ光によって集光位置CPで捕捉される。そして、測定者が操作部9を操作することで、レーザ光により捕捉された微粒子Pは容器10内を移動する。
【0041】
図6は、微粒子PをX軸と平行に右方向に27μm移動させ、引き続き27μm左方向に移動させたときの微粒子Pの位置と時間との関係を示したグラフであり、(a)は2秒間で1往復させたとき、(b)は1秒間で1往復させたときを示している。両グラフとも、縦軸がX座標上の位置を示し、横軸が時間を示している。曲線1は微粒子Pの位置と時間との関係を示しており、曲線2はレーザ光の位置と時間との関係を示している。
【0042】
(a)、(b)に示すように、レーザ光を右方向に移動させているときは、曲線1は曲線2に対して右方向にずれており、レーザ光を左方向に移動させているときは、曲線1は曲線2に対して左方向にずれているため、微粒子Pはレーザ光より少し遅延して移動していることが分かる。また、(a)、(b)を比較すると、レーザ光の移動速度を大きくした場合、微粒子Pのレーザ光に対する遅延量は増大していることが分かる。この曲線1及び曲線2の差が各時刻における微粒子Pのずれ量ΔLとなる。
【0043】
図1に示すレーザ光に捕捉された微粒子Pは、生体組織Oに押し当られる。微粒子Pのレーザ光による散乱光は集光レンズ2、2波長性ミラー6及び集光レンズ7を介して検出器8に導かれ、微粒子Pの位置が検出される。そして、検出器8が検出した微粒子Pの位置は電圧信号として制御装置3に出力される。
【0044】
図7は、制御装置3の処理を示したフローチャートである。ステップS1において、操作受付部311は、ガルバノミラー51,52の傾斜角度からレーザ光の位置LPを算出する。ステップS2において、ずれ量算出部312は、操作受付部311が算出したレーザ光の位置LPと検出器8が検出した微粒子Pとを用いて両者のずれ量ΔLを算出する。
【0045】
ステップS3において、粘弾性力算出部313は、ステップS2で算出されたずれ量ΔLを式(1)に代入することにより、粘弾性力fを算出する。図8は、図6(b)で示したように微粒子Pを移動させたときのレーザ光による微粒子Pの捕捉力と、微粒子Pの粘性抵抗力との関係を示したグラフであり、縦軸は粘性抵抗力(単位はμN)を、横軸は時間を示している。また、実線で示す曲線は粘性抵抗を示し、破線で示す曲線は捕捉力を示している。なお、この場合、バネ定数kはk=0.25μN/mとしている。式(1)に示すように、両曲線の差、すなわち粘性抵抗と捕捉力との差が微粒子Pにかかる外力(生体組織Oの粘弾性力)fとなる。
【0046】
ステップS4において、力覚算出部314は、ステップS3で算出された粘弾性力fを用いて力覚を算出する。そして、操作部9には、算出された力覚が付与される。これにより、測定者は操作時に粘弾性力fに応じた抵抗力を操作部9から受けることとなり、生体組織Oの粘弾性力を体感することができる。
【0047】
以上説明したように、第1の測定装置によれば、直径1マイクロメートルの微粒子Pをレーザ光により捕捉して、生体組織Oに押し当てることで生体組織Oの粘弾性力fを測定しているため、マイクロメートルオーダーの極めて小さな生体組織、あるいは、生体組織の極めて小さな領域における粘弾性力fを測定することができる。また、微粒子を捕捉する力が非常に小さいため(数十フェムトニュートンから数ナノニュートンオーダー)、非侵襲で生体組織Oの粘弾性力を測定することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る測定装置(以下、第2の測定装置という)の全体構成図を示している。第2の測定装置は、レーザ出力装置1と偏向装置5との間に2波長性ミラー21を、2波長性ミラー21の図中上側に検出器8を配設するとともに、検出器8として4分割ディテクタを採用した。
【0049】
2波長性ミラー21は、レーザ出力装置1から出力されたレーザ光を透過させて偏向装置5側に導くとともに、レーザ光による微粒子Pの散乱光を偏向装置5を介して受光し、受光した散乱光を反射させて、検出器8側へ導く。
【0050】
図10は4分割ディテクタの受光面を示した図である。4分割ディテクタは、4つの受光素子D1~D4を備えており、中心点Sは、測定エリアMA上でのレーザ光の位置LPと対応するように配設されている。中心点Sを含む円状の破線Tは、4分割ディテクタが受光する散乱光を示している。受光素子D1~D4のそれぞれが受光する散乱光の強度をI1,I2,I3,I4とすると、ずれ量ΔLは式(5)で表される
ΔX=G((I1+I2)-(I3+I4))
ΔY=H((I1+I3)-(I2+I4))・・・式(5)
ここで、G,Hは比例定数で、実験によって求められる。4分割ディテクタを採用することにより、検出器8の測定結果がそのまま微粒子Pのレーザ光に対するずれ量ΔLとなり、ずれ量ΔLの算出手順を一部簡略化することができるとともに、ずれ量ΔLの検出精度を高めることができる。
【0051】
なお、第2の測定装置では、検出器8は強度I1~I4を電気信号に変換し、制御装置3に出力する。ずれ量算出部312は、式(5)及び強度I1~I4を用いてずれ量ΔL(ΔX,ΔY)を算出する。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る測定装置(以下、第3の測定装置という)の全体構成図を示している。第3の測定装置は、第1の測定装置に対して、操作部9を通信装置300を介して接続することにより遠隔操作を可能としている。通信装置300は、制御装置3と通信回線3Aを介して接続されている。通信装置300は、CPU、RAM、ROM等を備える通常のコンピュータに、通信装置として機能させるためのソフトウェアをインストールすることにより実現される。通信装置300は、操作部9からの操作指令信号を例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコル体系に準拠したデータに変換して、制御装置3に出力する。なお、TCP/IPプロトコル体系のトランスポート層のプロトコルとしては、コネクション型のプロトコルであるTCPを採用し、通信の正確性を高めている。
【0052】
通信回線3Aとしては、例えば100BASE/TXを採用している。それに伴って、通信装置300及び制御装置3には、100BASE/TXに対応する通信ボードを装着している。また、制御装置3には、通信装置300との間でTCP/IPによる通信を可能とするためのソフトウェアがインストールされている。
【0053】
制御装置3は、通信装置300からの操作指令信号を通信回線3Aを介して受信し、傾斜指令信号に変換して、偏向装置5に出力する。また、制御装置3は、CCD11が撮影した測定エリアMAの画像をTCP/IPプロトコル体系に準拠したデータに変換し通信装置300に出力し、通信装置300は受信したデータから測定エリアMAの画像を取り出し表示装置301に表示する。これにより、測定者は、測定エリアMAの画像を見ながら遠隔的な操作を行なうことができる。さらに制御装置3は、力覚算出部314が算出した力覚をTCP/IPプロトコル体系に準拠した通信データに変換し、通信装置300に送信する。通信装置300は、この通信データをから力覚を取り出し、操作部9に力覚を付与する。これにより、測定者は、生体組織Oの粘弾性力を体感することができる。
【0054】
なお、第3の測定装置は、第2の測定装置に対して、通信装置300を介して操作部9を接続する構成を採用することにより、遠隔操作を可能としてもよい。
【0055】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係る測定装置(第4の測定装置)の全体構成図を示している。第1の測定装置に対して、生体組織Oを切断するためのレーザ光(切断レーザ光)を出力するレーザ出力装置41と、切断レーザ光の測定エリアMA上での位置を移動させる偏向装置42と、偏向装置42からのレーザ光を集光レンズ2側へ導く2波長性ミラー43と、切断レーザ光の測定エリアMA上での位置をコントロールするための操作部44とがさらに付加されている。
【0056】
レーザ出力装置41は、生体組織Oを切断するのうえで好適な光量及び波長を有するレーザ光、例えば、紫外域の波長を持つレーザ光や、フェムト秒スケールのパルス幅を持つ超短波パルスレーザ光を出力する。偏向装置42は、2枚のガルバノミラー421,422から構成される。ガルバノミラー421,422は、ガルバノミラー51,52と同様に、操作部44からの操作指令に従って、それぞれ傾斜角度が変更され、切断用レーザ光の測定エリアMA上でのX及びY座標の値を決定し、切断用レーザ光の照射位置を決定する。
【0057】
2波長性ミラー43は、偏向装置42からの切断用レーザ光を反射させて集光レンズ2側へ導くとともに、生体組織Oの散乱光を透過させて検出器8側へ導く。
【0058】
操作部44は、制御装置3と電気的に接続され、本体部441と操作スティック442とを備えている。測定者が操作スティック442をある方向に倒すと、操作スティック442が倒された方向を示す操作指令信号が制御装置3に出力される。操作受付部311は、操作指令信号が示す方向に切断用のレーザ光が移動するように、傾斜指示信号をガルバノミラー421,422に出力し、ガルバノミラー421,422の傾斜角度を変更させる。
【0059】
このように、第4の測定装置によれば、生体組織Oを切断するための機構を付加したため、生体組織Oを所望する長さに切断し、切断した生体組織Oの各断片の粘弾性力fを個別に求めることが可能となる。また、生体組織Oとして細胞膜を用い、この細胞膜を引っ張った状態とし、切断用レーザ光を用いて引っ張られた状態の細胞膜を切断し、切断した際に生じる粘弾性力の経時的な変化(力が緩和していく過程)を解析することにより、細胞膜の骨格の状態について診断することができる。
【0060】
第4実施形態では、第1の測定装置に生体組織Oを切断するための機構を付加したが、これに限定されず、第2、第3の測定装置に生体組織Oを切断するための機構を付加してもよい。第3の測定装置に生体組織を切断するための機構を付加した場合、図11に示す通信装置300に操作部44を接続するとともに、通信装置300に、操作部44からの操作指令信号を通信回線3Aに出力するためのソフトウェアをインストールすればよい。これにより、遠隔操作によって生体組織Oを切断することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、非常に小さな微粒子(例えば、直径1マイクロメートル)を生体組織に押し当てることで生体組織の粘弾性力を測定しているため、極めて小さな生体組織、あるいは、生体組織の極めて小さな領域における粘弾性力を測定することができる。また、微粒子を補足する力が非常に小さい(例えば、数十フェムトニュートンから数ナノニュートンオーダー)ため、非侵襲で生体組織Oの粘弾性力を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る測定装置の全体構成図を示している。
【図2】 測定エリアを示した図である。
【図3】 測定エリアにおいて、レーザ光をX軸と平行に72μm移動させたときの、スポット位置(微粒子の位置)とPSDが生成する電圧との関係を示したグラフであり、縦軸はPSDの出力電圧を示し、横軸は位置を示している。
【図4】 レーザトラッピングの原理を説明するための図である。
【図5】 第1の測定装置における制御装置3の機能を説明するためのブロック構成図である。
【図6】 微粒子PをX軸と平行に右方向に27μm移動させ、引き続き27μm左方向に移動させたときの微粒子Pの位置と時間との関係を示したグラフであり、(a)は2秒間で1往復させたとき、(b)は1秒間で1往復させたときを示している。
【図7】 制御装置の処理を示したフローチャートである。
【図8】 図6(b)で示したように微粒子Pを移動させたときのレーザ光による微粒子Pの捕捉力と、微粒子Pの粘性抵抗力との関係を示したグラフであり、縦軸は力(単位はμN)を、横軸は時間を示している。
【図9】 本発明の第2実施形態に係る測定装置の全体構成図を示している。
【図10】 4分割ディテクタの受光面を示した図である。
【図11】 本発明の第3実施形態に係る測定装置の全体構成図を示している。
【図12】 本発明の第4実施形態に係る測定装置の全体構成図を示している。
【符号の説明】
1 レーザ出力装置
2 集光レンズ
3 制御装置
5 偏向装置
6 2波長性ミラー
7 集光レンズ
8 検出器
9 操作部
10 容器
21 2波長性ミラー
34 表示装置
41 レーザ出力装置
42 偏向装置
43 2波長性ミラー
44 操作部
51 52 ガルバノミラー
311 操作受付部
312 ずれ量算出部
313 粘弾性力算出部
314 力覚算出部
421 422 ガルバノミラー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11