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明細書 :カーボンナノチューブ複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3823157号 (P3823157)
公開番号 特開2005-162790 (P2005-162790A)
登録日 平成18年7月7日(2006.7.7)
発行日 平成18年9月20日(2006.9.20)
公開日 平成17年6月23日(2005.6.23)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブ複合体
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
C08G  73/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
C08L  79/00        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
C08G 73/00
B82B 1/00
C08L 79/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 26
出願番号 特願2003-400691 (P2003-400691)
出願日 平成15年11月28日(2003.11.28)
審査請求日 平成15年11月28日(2003.11.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】小夫家 芳明
【氏名】佐竹 彰治
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特表2004-506530(JP,A)
特開2003-012313(JP,A)
調査した分野 C01B 31/00-31/36
JSTPlus(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンナノチューブを4官能性イミンポリマーにより修飾してなることを特徴とするカーボンナノチューブ複合体。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの4官能性イミンポリマーによる修飾は、4つのアルデヒド基又はアミノ基を有する化合物Aと1つ又は2つのアミノ基又はアルデヒド基を有する化合物Bとを、カーボンナノチューブの存在下で反応させてなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ複合体。
【請求項3】
前記化合物Aは、下記式(1)により表わされ、前記化合物Bは、下記式(2)により表わされることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ複合体。
A’-X-A-X-A’ (1)
(式中、Aは、下記式(1a-1)~(1a-31)からなる群から選ばれ、A’は、下記式(1b-1)又は(1b-2)により表わされる4官能性基であり、Xは、存在しないか又は、アルキレン、アリーレン、(CH-O-、(CH-CO-、及び(CH-OC-(nは整数)からなる群から選ばれる基である。)
【化1】
JP0003823157B2_000023t.gif
【化2】
JP0003823157B2_000024t.gif
B’-B-B’ (2)
(式中、Bは、下記式(2-1)~(2-10)からなる群から選ばれ、B’はアミノ基又はアルデヒド基である。)
【化3】
JP0003823157B2_000025t.gif

【請求項4】
前記化合物Aが4つのアルデヒド基を有する化合物であり、前記化合物Bは、1つ又は2つのアミノ基を有する化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載のカーボンナノチューブ複合体。
【請求項5】
前記化合物Aがポルフィリンテトラアルデヒド又は芳香族テトラアルデヒドであり、前記化合物Bは、芳香族ジアミンであることを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノチューブ複合体。
【請求項6】
前記化合物Aが4つのアミノ基を有する化合物であり、前記化合物Bは、1つ又は2つのアルデヒド基を有する化合物であることを特徴とする請求項2又は3に記載のカーボンナノチューブ複合体。
【請求項7】
前記化合物Aがポルフィリンテトラアミン又は芳香族テトラアミンであり、前記化合物Bは、芳香族ジアルデヒドであることを特徴とする請求項6に記載のカーボンナノチューブ複合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電子特性及び光学特性を有するとともに、溶媒への分散性に優れたカーボンナノチューブ複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、電子特性に優れており、微細で、かつ高強度であることから、様々な用途における電子材料として有望視されている。カーボンナノチューブ単独を材料として用いる研究は、すでに様々な面で行われているが、今後は、カーボンナノチューブに別の機能性分子を結合させるなどして修飾し、複合材料としての利用法を模索してゆく必要性があると考えられている。
【0003】
近年、光機能性材料を用いた技術が急速に発展しており、光機能性材料とカーボンナノチューブの電子特性を組み合わせた新規な複合材料は、特に有望である。一方、現在合成されているカーボンナノチューブは長い繊維が集合した束であり、通常の溶媒への分散性が極めて低い。このことは、複合化に溶液プロセスを使用することができないなど、大きな問題点となっている。従って、カーボンナノチューブを機能性分子によって修飾し、溶媒への分散性を向上させる技術が必要となっている。
【0004】
即ち、束になっているカーボンナノチューブを、単分子や薄膜として取り扱うためには、適当な媒体に分散させる必要がある。これまでカーボンナノチューブの溶媒への分散性を向上させる方法として、カーボンナノチューブを酸化により切断する方法(例えば、非特許文献1参照)、ポリメタフェニレン-ビニレン系ポリマーでラッピングする方法(例えば、非特許文献2参照)などが開発されている。
【0005】
これらの方法のうち、酸化により切断する方法は、カーボンナノチューブの表面も同時に酸化され、電子的特性が損なわれてしまうため、電子デバイスに用いるには好ましくない。また、ポリメタフィニレン-ビニレン系ポリマーでラッピングする方法では、光学特性が不十分である。従って、溶媒への高い分散性を有するとともに、より優れた電子特性及び光学特性を有するカーボンナノチューブ複合体が求められている。

【非特許文献1】Chen, J.; Hamon, M.A.; Hu, H.; Chen, Y.; Rao, A.M.; Eklund, P.C.; Haddon, R.C. Science 1998, 282, 95-98.
【非特許文献2】A. Star, J.F. Stoddart, D. Steuerman, M. Diehl, A. Boukai, E.W. Wong, X. Yang, S.-W. Chung, H. Choi, J.R. Heath, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1721-1725.
【非特許文献3】S. Bandow, A.M. Rao, K.A. Williams, A. Thess, R.E. Smalley, P.C. Eklund, J. Phys. Chem. B 1997, 101, 8839-8842.
【非特許文献4】Takanori Fukushima, Atsuko Kosaka, Yoji Ishimura, Takashi Yamamoto, Toshikazu Takigawa, Noriyuki Ishii, and Takuzo Aida Science 2003; 300: 2072-2074.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情の下になされ、溶媒への高い分散性を有するとともに、より優れた電子特性及び光学特性を有するカーボンナノチューブ複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポルフィリン等の光機能性物質と、電子特性の優れたカーボンナノチューブとの複合化について検討を重ね、4官能性を有するポルフィリン等が大きなπ平面を有していることに着目し、ポルフィリン等とカーボンナノチューブとのπ-π相互作用の下でイミンポリマーを形成することにより、光機能性物質をカーボンナノチューブに固定化し得ることを見出した。そして、得られたカーボンナノチューブ複合体が、溶媒への高い分散性を有するとともに、優れた電子特性及び光学特性を有することを見出した。
【0008】
本発明は、このような知見に基づくものである。
即ち、本発明は、カーボンナノチューブを4官能性イミンポリマーにより修飾してなることを特徴とするカーボンナノチューブ複合体を提供する。
【0009】
本発明のカーボンナノチューブ複合体において、カーボンナノチューブの4官能性イミンポリマーによる修飾は、4つのアルデヒド基又はアミノ基を有する化合物Aと1つ又は2つのアミノ基又はアルデヒド基を有する化合物Bとを、カーボンナノチューブの存在下で反応させることにより行うことが出来る。
【0010】
この場合、化合物Aは、下記式(1)により表わされ、化合物Bは、下記式(2)により表わされるものとすることが出来る。
【0011】
A’-X-A-X-A’ (1)
(式中、Aは、下記式(1a-1)~(1a-31)からなる群から選ばれ、A’は、下記式(1b-1)又は(1b-2)により表わされる4官能性基であり、Xは、存在しないか又は、アルキレン、アリーレン、(CH-O-、(CH-CO-、及び(CH-OC-(nは整数)からなる群から選ばれる基である。)
【化4】
JP0003823157B2_000002t.gif

【0012】
【化5】
JP0003823157B2_000003t.gif

【0013】
B’-B-B’ (2)
(式中、Bは、下記式(2-1)~(2-10)からなる群から選ばれ、B’はアミノ基又はアルデヒド基である。)
【化6】
JP0003823157B2_000004t.gif

【0014】
また、化合物Aが4つのアルデヒド基を有する化合物であり、化合物Bは、1つ又は2つのアミノ基を有する化合物とすることが出来る。
【0015】
この場合、化合物Aがポルフィリンテトラアルデヒド又は芳香族テトラアルデヒドであり、化合物Bは、芳香族ジアミンであることが望ましい。
【0016】
更に、化合物Aが4つのアミノ基を有する化合物であり、化合物Bは、1つ又は2つのアルデヒド基を有する化合物とすることが出来る。
【0017】
この場合、化合物Aがポルフィリンテトラアミン又は芳香族テトラアミンであり、化合物Bは、芳香族ジアルデヒドであることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、カーボンナノチューブを4官能性イミンポリマーにより修飾することにより、導電性が高く、分子配線や単分子デバイスとしての応用が期待されるカーボンナノチューブと光機能物質とが複合化され、優れた電子特性及び光学特性を有するカーボンナノチューブ複合体を得ることが出来る。
【0019】
このようにして得られたカーボンナノチューブ複合体では、カーボンナノチューブと4官能性イミンポリマーとが、π-π相互作用に基づく非共有結合的相互作用により結合しているため、溶媒への高い分散性を示すとともに、カーボンナノチューブは何ら破壊されないにもかかわらず、溶媒中で剥離することはない。
【0020】
特に、本発明者らが開発したカーボンナノチューブの4官能性イミンポリマーによる修飾方法は、定量的に反応が進行するアルデヒドとアミンの脱水縮合を利用するものであって、非常に簡便かつ効率的な方法であるため、新しい光・電子デバイスの開発ニ大きく寄与するものと考えられる。例えば、カーボンナノチューブ複合体を1本ずつ制御することで、ナノメートルサイズの光・電子デバイス、ナノ電極として利用すること、及び薄膜として利用することにより光応答性導電フィルムとして利用することが考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、具体的に説明する。
本発明の一形態に係るカーボンナノチューブ複合体は、4つのアルデヒド基又はアミノ基を有する化合物Aと1つ又は2つのアミノ基又はアルデヒド基を有する化合物Bとを、カーボンナノチューブの存在下で反応させることにより、カーボンナノチューブを4官能性イミンポリマーにより修飾してなることを特徴とする。
【0022】
カーボンナノチューブとしては、長さ数ミクロンの市販のカーボンナノチューブを、短くすることなくそのまま用いることができる。
【0023】
複合体の形成は、アルデヒドとアミンの脱水縮合を利用するもので、所定のアルデヒドとアミンを、カーボンナノチューブ存在下で加熱するだけで、カーボンナノチューブを傷つけることなく、容易に行うことができる。反応温度は、70~100℃、反応時間は、3~10時間程度とすることが好ましい。
【0024】
4つのアルデヒド基又はアミノ基を有する化合物Aと1つ又は2つのアミノ基又はアルデヒド基を有する化合物Bとの好ましい反応例として、以下の4つの反応例を挙げることが出来る。
【0025】
1.下記反応式(1)に示すような、ポルフィリンテトラアルデヒドと芳香族ジアミンとの反応
【化7】
JP0003823157B2_000005t.gif

【0026】
(式中、Mは、遷移金属又は典型金属であり、Rは、H、アルキル、アリール、-CHCHCOR、-(CH)m-O-(CHCHO)nRからなる群から選ばれる基であり、Xは、存在しないか又は、アルキレン、アリーレン、(CH-O-、(CH-CO-、及び(CH-OC-(nは整数)からなる群から選ばれる基であり、Arはアリーレンである。)
2.下記反応式(2)に示すような、ポルフィリンテトラアミンと芳香族ジアルデヒドとの反応
【化8】
JP0003823157B2_000006t.gif

【0027】
(式中、M、R、X、Arは、上と同様に定義される。)
3.下記反応式(3)に示すような、芳香族テトラアルデヒドと芳香族ジアミンとの反応
【化9】
JP0003823157B2_000007t.gif

【0028】
(式中、M、R、X、Arは、上と同様に定義される。)
4.下記反応式(4)に示すような、芳香族テトラアミンと芳香族ジアルデヒドとの反応
【化10】
JP0003823157B2_000008t.gif

【0029】
(式中、M、R、X、Arは、上と同様に定義される。)
以上のような反応により、イミンポリマーが形成されるとともに、このイミンポリマーがカーボンナノチューブを修飾して、カーボンナノチューブ複合体を形成することが出来る。イミンポリマーによるカーボンナノチューブの修飾は、非共有結合的修飾であって、4つのアルデヒド基又はアミノ基を有する化合物のπ系とカーボンナノチューブのπ系とのπ-π相互作用に基づく修飾である。
【0030】
このようなカーボンナノチューブ複合体の具体的構造は、必ずしも明確ではないが、ポルフィリンテトラアルデヒド又はポルフィリンテトラアミンを用いた場合(反応式(1)又は(2)の場合)、恐らく、図1に示すような構造であることが予想される。
【0031】
図1において、破線の部分がカーボンナノチューブであり、その周囲をイミンポリマーが巻き付いている構造である。なお、図1において、[ ]内のポルフォリン部は、他のポルフォリン部の裏側に位置している。
【0032】
なお、イミンポリマー1分子中のモノマーの数は、好ましくは2~約300であり、特に好ましくは10~20である。
【0033】
以上のような構造を有するカーボンナノチューブ複合体は、有機溶媒、例えばクロロホルムへの良好な分散性を示す。例えば、長さ数ミクロンの長いカーボンナノチューブ複合体であっても、有機溶媒中に均一に分散させることが出来る。
【0034】
また、このように溶媒への分散性が高いため、溶媒中でカーボンナノチューブ複合体が凝集することが無く、分散液を基板上に塗布する、滴下する、又は流下させる等を行った後、乾燥することにより、例えば20nm~100nm程度の膜厚の薄膜を形成することが可能である。この場合、傾斜した基板上に分散液を流下させること等により、基板上に形成された薄膜中におけるカーボンナノチューブの方向を制御することも可能である。
【0035】
また、ポルフォリン等を用いたカーボンナノチューブ複合体は、可視光を吸収するため、太陽電池等の、可視光を使った分子デバイスへの応用が可能である。更に、光により伝導度が変化するため、電子デバイスへの応用が可能である。その他、様々な官能基の導入が可能であるため、官能基の機能に応じた様々な機能を有するカーボンナノチューブ複合体を得ることが出来る。
【0036】
実施例
以下、ポリフィリンテトラアルデヒドの合成、合成されたポリフィリンテトラアルデヒドを用いたイミンポリマーによるカーボンナノチューブの修飾、及び得られたカーボンナノチューブ複合体の特性の測定を実験により行った、本発明の具体的実施例について説明する。
【0037】
1.ポリフィリンテトラアルデヒドの合成例
下記スキーム1、スキーム2、スキーム3に従って、ポリフィリンテトラアルデヒドを合成した。
【化11】
JP0003823157B2_000009t.gif

【0038】
【化12】
JP0003823157B2_000010t.gif

【0039】
【化13】
JP0003823157B2_000011t.gif

【0040】
(1)5-ヒドロキシイソフタル酸ジエチルエステル(化合物1)の合成
300mlのナス型フラスコに、10.5g(57.5mmol)の5-ヒドロキシイソフタル酸、200mlのエタノール、3.3mlの硫酸を収容し、100℃で39時間加熱攪拌し、反応させた。反応後、溶媒であるエタノールを留去し、析出した固体を桐山ロート上で蒸留水により洗浄した。洗浄した析出固体を60℃で滅圧乾燥し、白色固体を得た(収量:12.5g、収率:93%)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる5-ヒドロキシイソフタル酸ジエチルエステル(化合物1)であることが同定された。
【化14】
JP0003823157B2_000012t.gif

【0041】
TLC Rf=0.5 (ヘキサン/AcOH = 2/1, UV 254 nm 検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
8.26 (1H, s, フェニル H) →2
7.75 (2H, s, フェニル H) →1
4.41 (4H, q, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
1.41 (6H, t, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
融点:98~100℃
(2)3,5-ジエトキシカルボニル-1-トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン(化合物2)の合成
200mlの3つ口フラスコに、84g(35.4mmol)のジエステル(化合物1)を収容し、窒素置換した後、60mlのCHCL(アルミナにとおして安定剤を抜いたもの)、18.7ml(142mmol)の2,4,6-トリメチルピリジンを加え、0℃にして攪拌した。次いで、10g(35.4mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物を滴下し、0℃で2時間攪拌した後、ゆっくりと温度を上げ、室温にて20時間攪拌した。
【0042】
次に、CHCLを留去し、50mlの蒸留水を加え、ヘキサン/エーテル(=2/1)溶液で抽出した後、有機層をCuSOl水溶液で洗浄することにより、2,4,6-トリメチルピリジンを除去した。
【0043】
その後、有機相層を蒸留水で洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/エーテル=9/1→ヘキサン/エーテル=6/1)を用い、TLCにて、RF=0.7(展開溶媒:ヘキサン/AcOH=2/1)の成分を分取した。そして、溶媒を留去することで針状結晶を得た(収量:8.3g、収率:64%)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる3,5-ジエトキシカルボニル-1-トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン(化合物2)であることが同定された。
【化15】
JP0003823157B2_000013t.gif

【0044】
TLC Rf=0.7 (ヘキサン/AcOH=2/1,UV254nm検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
8.70 (1H, s, フェニル H) →2
8.10 (2H, s, フェニル H) →1
4.45 (4H, q, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
1.43 (6H, t, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
融点:42~43℃
(3)メチル3-(3,5-ジエトキシカルボニルフェニル)-2-プロペノエート(化合物3)の合成
100mlの3つ口フラスコに、84mg(0.38mmol)の酢酸パラジウム及び160mg(0.39mmol)のビス-(ジフェニルホスフィノ)-プロパンを収容し、窒素置換した後、15mlのDMFを加え、室温にて攪拌した。更に、15mlのDMFに溶解した、8.3g(23mmol)の化合物2、3.0ml(34mmol)のアクリル酸メチル、及び9.4ml(68mmol)のトリエチルアミンを加え、100℃で23時間加熱し、攪拌した。
【0045】
反応後、セライトろ過によりPd触媒を取り除き、ろ液に蒸留水を加え、析出した固体を桐山ロート上で蒸留水及びメタノールで洗浄した。これを真空乾燥することにより、淡黄色の固体を得た(収量:5.0g、収率:72%)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされるメチル3-(3,5-ジエトキシカルボニルフェニル)-2-プロペノエート(化合物3)であることが同定された。
【化16】
JP0003823157B2_000014t.gif

【0046】
TLC Rf=0.6 (ヘキサン/AcOH=2/1,UV254nm検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
8.67 (1H, t, J=1.6 Hz, フェニル H) →2
8.36 (2H, d, J=1.6 Hz, フェニル H) →1
7.75 (2H, d, J=16 Hz, メチルエステル βH)
6.59 (2H, d, J=16 Hz, メチルエステル αH)
4.43 (4H, d, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
3.83 (3H, s, -COOCH3)
1.43 (6H, t, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
融点:107~111℃
(4)メチル3-(3,5-ジエトキシカルボニルフェニル)プロペノエート(化合物4)の合成
200mlのナス型フラスコに、5.0g(16mmol)の化合物3、及び80mlのTHFを収容し、更に150gのパラジウム/炭素(10%)を加えた。反応器内を充分窒素置換した後、1atm下で水素置換し、室温にて18時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液から溶媒を留去することで、黄色の固体を得た(収量:5.0g、収率:quant.)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされるメチル3-(3,5-ジエトキシカルボニルフェニル)プロペノエート(化合物4)であることが同定された。
【化17】
JP0003823157B2_000015t.gif

【0047】
TLC Rf=0.6 (ヘキサン/AcOH = 2/1, UV 254 nm 検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
8.53 (1H, t, J=1.6 Hz, フェニル H) →2
8.07 (2H, d, J=1.6 Hz, フェニル H) →1
4.40 (4H, q, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
3.68 (3H, s, -COOCH3)
3.06 (2H, t, J=7.8 Hz, メチルエステル αH)
2.69 (2H, t, J=7.8 Hz, メチルエステル βH)
1.42 (6H, t, J=7.0 Hz, -OCH2CH3)
融点:49~53℃
(5)3-(3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン-1-オール(化合物5)の合成
500mlの三つ口フラスコに、1.14g(24mmol)のLiAlH、50mlのTHFを収容し、窒素雰囲気下、60℃にて加熱攪拌した。これに、2.5g(8.1mmol)の化合物4を25mlのTHFに溶解したものを2時間かけて滴下し、70℃にて3時間攪拌した。次いで、1.2mlの蒸留水を加え、10分間攪拌し、また1.2mlの12N NaOHを加えて10分間攪拌し、更に3.6mlの蒸留水を加えた後、バス温を60℃にして3時間攪拌した。
【0048】
加熱を終了した後、MgSOを加えて乾燥させ、反応液をセライトろ過し、溶媒を留去することで、粘度の高い5.16gの黄色液体を得た。
【0049】
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる3-(3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン-1-オール(化合物5)であることが同定された。
【化18】
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【0050】
TLC Rf=0.6 (Hexane/AcOH = 2/1, UV 254 nm 検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3/MeOH=1/1) δ (ppm)
7.16 (1H, s, フェニル H) →2
7.11 (2H, s, フェニル H) →1
4.67 (3H, s, -OH)
4.61 (4H, s, フェニルCH2OH)
3.58 (2H, t, J=6.5 Hz, フェニルCH2CH2CH2OH)
2.70 (2H, t, J=8.1 Hz, フェニルCH2CH2CH2OH)
1.86 (2H, m, フェニルCH2CH2CH2OH)
(6)3-(3,5-ジホルミルフェニル)プロパン-1-オール(化合物6)の合成
200mlのナス型フラスコに、3.2gの化合物5、15gの活性二酸化マンガン(メルク社製)、50mlのTHFを収容し、超音波を1.5分かけた後、室温にて24時間攪拌した。セライトろ過により不溶の固体を取り除き、ろ液を蒸発させた。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/AcOEt=1/1→AcOEtのみ)を用い、TLCにおいてRf=0.5(展開溶媒:CHCl3/MeOH = 9/1)の成分を分取し、ここから溶媒を留去することで、粘度の高い淡黄色液体1.53gを得た。
【0051】
この時、カラムでRf=0.35(展開溶媒:CHCl3/MeOH = 9/1)のモノアルデヒド体0.9gが回収された。これを再度20mlのTHF中活性二酸化マンガン5gと10時間反応させ、同様にセライトろ過、カラム精製を行うことで、粘度の高い淡黄色液体0.62gを得た(収量:2.15g、収率:69%:2steps)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる3-(3,5-ジホルミルフェニル)プロパン-1-オール(化合物6)であることが同定された。
【化19】
JP0003823157B2_000017t.gif

【0052】
TLC Rf=0.5 (CHCl/MeOH = 9/1, UV 254 nm 検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
10.10 (2H, s, アルデヒド H)
8.21 (1H, t, J=1.6 Hz, フェニル H) →2
8.00 (2H, d, J=1.6 Hz, フェニル H) →1
3.70 (2H, t, J=5.7 Hz, フェニルCH2CH2CH2OH)
2.90 (2H, t, J=8.1 Hz, フェニルCH2CH2CH2OH)
1.96 (2H, m, フェニルCH2CH2CH2OH)
(7)3-{3,5-ジ(1,3-ジオキサ-2-2シクロペンチル)}プロパン-1-オール(化合物7)の合成
100mlのナス型フラスコに、2.15g(11.2mmol)の化合物6、4ml(71.7mmol)のエチレングリコール、50mlのベンゼン、スパチュラ2杯分のp-トルエンスルホン酸一水和物を収容し、ディーンスターク管を用いて、100℃にて4.5時間加熱攪拌した。
【0053】
反応液を飽和重曹水で洗浄し、エーテルで抽出した後、有機層を一緒にして、蒸留水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた有機層から溶媒を留去し、粘度の高い淡黄色液体を得た(収量:2.6g、収率:83%)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる3-{3,5-ジ(1,3-ジオキサ-2-2シクロペンチル)}プロパン-1-オール(化合物7)であることが同定された。
【化20】
JP0003823157B2_000018t.gif

【0054】
TLC Rf=0.5 (CHCl/MeOH = 9/1, UV 254 nm 検出)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
7.43 (1H, s, フェニル H) →2
7.33 (2H, s, フェニル H) →1
5.80 (2H, s, アセタール H)
4.07 (8H, m, エチレン H)
3.66 (2H, t, J=5.7 Hz, フェニルCH2CH2CH2OH)
2.74 (2H, t, J=7.6 Hz, フェニルCH2CH2CH2OH)
1.91 (2H, m, フェニルCH2CH2CH2OH)
(8)3-{3,5-ジ(1,3-ジオキサ-2-2シクロペンチル)}プロパナール(化合物8)の合成
20mlのナスフラスコに、50mg(0.178mmol)の化合物7、77mg(0.356mmol)のピリジニウムクロロクロメート、29mg(0.356mmol)の酢酸ナトリウム、2mlのCHCL(アルミナカラム2cmに通し、安定剤を除いたもの)、4オングストロームのモレキュラーシーブを収容し、室温にて30分間攪拌した。反応液にエーテルを加え、ショートカラム(充填剤:Florisil+Silicagel、溶離液:エーテル)に通した後、溶媒を留去し、無色透明の液体を得た(収量:27mg、収率:55%)。
【0055】
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる3-{3,5-ジ(1,3-ジオキサ-2-2シクロペンチル)}プロパナール(化合物8)であることが同定された。
【化21】
JP0003823157B2_000019t.gif

【0056】
TLC Rf=0.65 (AcOEt, I2発色)
H NMR (270 MHz, CDCl3) δ (ppm)
9.82 (1H, s, アルデヒド H)
7.45 (1H, s, フェニル H) →2
7.32 (2H, s, フェニル H) →1
5.80 (2H, s, アセタール H)
4.05 (8H, m, エチレン H)
2.99 (2H, t, J=7.6 Hz, フェニルCH2CH2CHO)
2.80 (2H, t, J=7.6 Hz, フェニルCH2CH2CHO)
(9)5,15-ビス(メトキシカルボニルエチル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ジオキサ-2シクロペンチル)フェニル}エチルポルフィリン(化合物10)の合成
100mlのナス型フラスコに、32mlのCHCl、86mg(309μmol)の化合物8、9.72g(309μmol)のメソ-(メトキシカルボニルエチル)ジピロメテン(化合物9)、310mgの4オングストロームのモレキュラーシーブを収容し、Nによるバブリングを10分間行い、これに12μl(155μmol,0.5当量)のTFAを加えた。
【0057】
24時間攪拌した後、140mg(618mmol、2当量)の2、3-ジクロロ-5,6-ジシクロ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)を加え、1時間攪拌した。更に、50μlのトリエチルアミンを加えた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl→CHCl/アセトン=10/1)にてタール成分を除去し、再びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/アセトン=30/1→CHCl/アセトン=10/1)を用いて、Rf=0.5(展開溶媒:CHCl/アセトン=10/1,UV long)の成分を分取した。溶媒を留去した後、エーテル中で超音波照射し、固体をメンブランフィルター(ミリポア, Durapore:細孔径 0.1μm))にてろ取し、乾燥させた後、紫色固体を得た(収量:84mg、収率: 2.8%)
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる5,15-ビス(メトキシカルボニルエチル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ジオキサ-2シクロペンチル)フェニル}エチルポルフィリン(化合物10)であることが同定された。
【化22】
JP0003823157B2_000020t.gif

【0058】
TLC Rf=0.5 (CHCl3/アセトン=10/1, UV 365 nm 検出)
H NMR (600 MHz, CDCl3) δ (ppm)
9.50 (8H, d, J=4.2 Hz, ピロール βH)
7.67 (4H, s, フェニル H) →4
7.57 (2H, s, フェニル H) →3
5.88 (4H, s, アセタール H)
5.33 (4H, t, J=8.4 Hz, エステル βH 又は エチレン αH) →※
5.23 (4H, t, J=8.4 Hz, エステル βH又は エチレン αH) →※
4.04 (16H, m, エチレン H)
3.85 (4H, t, J=8.4 Hz, エチレン βH) →2
3.80 (6H, s, COOMe)
3.53 (4H, t, J=8.4 Hz, エステル αH)→1
2.71 (2H, s, インナー H)
MALDI TOF-Mass (Dithranol)
ターゲット:m/z = 979 [M]+, Cal. (C56H58N4O12) = 979
フラグメント:m/z = 935 [M‐OCH2CH2]+, m/z = 891 [M‐OCH2CH2×2]+
(10)5,15-ビス(カルボキシエチル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ジオキサ-2シクロペンチル)フェニル}エチルポルフィリン(化合物11)の合成
20mlのナスフラスコに、4mlの8N-NaOH/MeOH/THF=2/4/7(容積比)溶液、及び4.8mg(4.9μmol)の化合物10を収容し、窒素雰囲気下、室温にて45分攪拌した。これに酢酸を加えてpH6にし、蒸留水5mlを加え、CHCl/MeOH=2/1により抽出した。
【0059】
溶媒をエバポレーターで留去した後、蒸留水を加え、超音波照射した。固体をメンブランフィルター(ミリポア, ジュラポア:細孔径0.1μm)上で蒸留水を用いて洗浄したのち、CHCl/MeOH/AcOH=3ml/1ml/5滴の混合溶液に溶解し、溶媒を留去した。
【0060】
次いで、残留した固体にCHClを加え、超音波を照射して、可溶性の物質をメンブランフィルター(ミリポア, ジュラポア:細孔径0.1μm)を用いて分離した。最後に残留した固体をCHCl/MeOH/AcOH=3ml/1ml/5滴の混合溶液に溶解し、溶媒を留去することで、紫色固体を得た(収量:4.1mg、収率:88%)。
【0061】
TLC Rf=0.4 (CHCl3/アセトン=1/1, UV 365 nm 検出)
MALDI TOF-Mass (Dithranol)
ターゲット:m/z = 952 [M++1], Cal. (C56H58N4O12) = 951
フラグメント:m/z = 908 [M‐44]+、 m/z = 715, [M‐237]+
(11)5,15-ビス(カルボキシエチル)-10,20-ビス{2-(3,5-ジホルミルフェニル)エチル}ポルフィリン(化合物12)の合成
20mlのナスフラスコに、4.1mg(4.3μmol)の化合物11、3mlのTHF,15mlの3N-HClを収容し、窒素雰囲気下、室温にて30分間攪拌した。氷浴中で、反応液に3N-NaOH水溶液を加えて中和した後、更に酢酸を加え、pH6にした。
【0062】
目的のポルフィリンは、DMFに可溶であるが、水には難溶であり、弱酸性条件下ではクロロホルムに可溶であるという性質を利用して、以下のように精製を行なった。即ち、pH6に調整した反応液に、5mlのCHCl及び5mlの蒸留水を加え、よく混合し、水層をピペットアウトした。目的物のポルフィリンを含むクロロホルム層を濃縮した後、蒸留水を加え、超音波照射することにより更に洗浄を行なった。固体をメンブランフィルター(ミリポア, フルオロポア:細孔径1μm)上にあけ、蒸留水で洗浄した後、フィルター上の固体をDMFに溶解した。この溶液にエーテルを加えて目的ポルフィリンを再沈殿させ、メンブランフィルター(ミリポア, フルオロポア:細孔径1μm)上にあけ、エーテルで洗浄した。同様に、DMF/エーテル系から再沈殿を更に2回繰り返し、紫色固体を得た(収量:3.0mg、収率:90%)。
【0063】
得られた生成物は、TLC及びNMRにより、下記式により表わされる5,15-ビス(カルボキシエチル)-10,20-ビス{2-(3,5-ジホルミルフェニル)エチル}ポルフィリン(化合物12)であることが同定された。
【化23】
JP0003823157B2_000021t.gif

【0064】
TLC Rf=0.35 (CHCl3/アアセトン=10/1 5 ml+AcOH 1 滴, UVライト365 nm)
H NMR (600 MHz, CDCl3) δ (ppm)
10.18 (4H, s, CHO)
9.88 (4H, d, J=3.8 Hz, ピロール βH)
9.76 (4H, d, J=3.8 Hz, ピロール βH)
8.49 (2H, s, フェニル H) →2
8.40 (4H, s, フェニル H) →1
5.67 (4H, t, J=8.0 Hz, カルボン酸 βH)
5.43 (4H, t, J=8.4 Hz, ethylene βH)
4.02 (4H, t, J=8.0 Hz, カルボン酸 αH)
3.88 (4H, t, J=8.4 Hz, エチレン αH)
-2.12 (2H, s, inner H)
MALDI TOF-Mass (Dithranol)
ターゲット:m/z = 775 [M+], Cal. (C56H58N4O12) = 775
UV-Vis スペクトル(溶媒:ピリジン)
λmax/nm (吸光度):421 (0.5992), 521 (0.0291), 555 (0.0168), 601 (0.0089), 659 (0.0102)
モル吸光係数:1.4×105 mol-1cm-1 (421 nm)
蛍光スペクトル (溶媒:ピリジン, λEX:421 nm, Abs = 0.0849)
λEM/nm (蛍光強度):661 (210.3), 733 (69.84)
(12)メソ-メトキシエトキシエトキシエトキシプロピルジピロメタン(化合物13)の合成
100mlのナス型フラスコに、0.9g(3.84mmol)の4-(メトキシエトキシエトキシエトキシ)ブタナール及び10.5ml(153mmol)のピロールを収容し、窒素ガスを2分間吹き込んだ。そこに29ml(0.384mmol)のトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間半攪拌した。
【0065】
反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで抽出した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン50%-80)で目的化合物を単離した(収量:0.79g、収率:59%)。
【0066】
得られた生成物は、NMRにより、メソ-メトキシエトキシエトキシエトキシプロピルジピロメタン(化合物13)であることが同定された。
【0067】
1H NMR (270 MHz, CDCl3) d 8.35 (br, 2H, NH), 6.64-6.61 (m, 2H, ピロール 5), 6.13-6.08 (m, 2H, ピロール 4), 6.02-5.97 (m, 2H, ピロール 3), 4.11 (t, J = 8.1 Hz, 1H, CH), 3.68-3.44 (m, 14H, CH2O), 3.32 (s, 3H, MeO), 2.12-2.01 (m, 2H, CH2), 1.65-1.55 (m, 2H, CH2).
(13)5,15-ビス(メトキシエトキシエトキシエトキシプロピル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ジオキサ-2シクロペンチル)フェニル}エチル]ポルフィリン(化合物14)の合成
50mlの枝付フラスコに、100mgのモレキュラーシーブ4A(MS4A)、50mg(0.18mmol)の化合物8、及び63mg(0.18mmol)の化合物13を収容し、18mlのCHClに溶解した。これに6.9μl(0.09mmol)のトリフルオロ酢酸を加え、窒素雰囲気下、室温で2時間攪拌した。
【0068】
2時間後、82mg(0.36mmol)のDDQを加え、さらに2時間攪拌した。反応液にトリエチルアミン0.2mlを加え、10分攪拌した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2-プロパノール/酢酸エチル0%-30%)で目的化合物を得た(収量:10mg,収率:9%)。
【0069】
得られた生成物は、NMRにより、5,15-ビス(メトキシエトキシエトキシエトキシプロピル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ジオキサ-2シクロペンチル)フェニル}エチル]ポルフィリン(化合物14)であることが同定された。
【0070】
1H NMR (600 MHz, CDCl3) d 9.57 (d, J = 4.4 Hz, 4H, b ピロール), 9.51 (d, J = 4.4 Hz, 4H, b ピロール), 7.64 (s, 4H, Ar), 7.57 (s, 2H, Ar), 5.91 (s, 4H, O-CH-O), 5.30-5.24 (m, 4H), 5.12-5.06 (m, 4H), 4.14-3.33 (m, 54H), 2.82-2.78 (m, 4H), -2.65 (s, 2H, NH)
(14)5,15-ビス(メトキシエトキシエトキシエトキシプロピル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ホルミル)フェニル}エチル]ポルフィリン(化合物15)の合成
20mlのナスフラスコ中に、10mgの化合物14を収容し、4mlのTHFに溶解した。これに2mlの3N-HClを加え、室温で24時間攪拌した。重曹水を加えて弱アルカリ性にした後、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
【0071】
溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2-プロパノール/酢酸エチル5%-10%)で目的化合物を得た(収量:2.8%)。
【0072】
得られた生成物は、NMRにより、5,15-ビス(メトキシエトキシエトキシエトキシプロピル)-10,20[3-{3,5-ビス(1,3-ホルミル)フェニル}エチル]ポルフィリン(化合物15)であることが同定された。
【0073】
1H NMR (600 MHz, CDCl3) d 9.96 (s, 4H, CHO), 9.57 (d, J=4.4 Hz, b ピロール), 9.41 (d, J=4.4 Hz, b ピロール), 8.26 (s, 2H, Ar). 8.06 (s, 2H, Ar), 5.30 (t, 4H, J=8.0 Hz, CH2), 5.08 (t, 4H, J=8.0 Hz, CH2), 3.95 (t, 4H, J=8.0 Hz, CH2), 3.88-3.82 (m, 8H), 3.78-3.71 (m, 12H), 3.69-3.67 (m, 4H), 3.56-3.52 (m, 4H), 3.33 (s, 6H, MeO), 2.82-2.76 (m, 4H), -3.3 (s).
2.イミンポリマーによるカーボンナノチューブの修飾
(1)イミンポリマーによりカーボンナノチューブを修飾する手順に使用される各溶液を以下のように調製した。
【0074】
(a)カーボンナノチューブ分散液(NT溶液)の調製
単層カーボンナノチューブ(SWNT)(ライス大学より入手:Trinton X)を、文献(Chen, J.; Rao, A. M.; Lyuksyutov, S.; Itkis, M. E.; Hamon, M. A.; Hu, H.; Cohn, R. W.; Eklund, P. C.; Colbert, D. T.; Smalley, R. E.; Haddon, R. C.; J. Phys. Chem. B. 2001, 105, 2525-2528.)に記載の方法に従って前処理した。
【0075】
即ち、カーボンナノチューブの懸濁液10mlを5Mの硝酸10mlに加え、110℃で1時間加熱した。室温に冷却した後、ポリカーボネート製メンブレンフィルター(孔径1.2μm)上に反応混合物をあけ、水でよく洗浄した後、真空乾燥した。得られた黒色固体にオクタデシルアミン3gを加え、メノウ乳鉢で均一にすり潰した。混合物を不活性ガス雰囲気下、130℃にて5日間加熱した。反応後、熱エタノールを加えて過剰のオクタデシルアミンを溶解し、不溶のカーボンナノチューブをポリカーボネート製メンブレンフィルター(孔径1.2μm)にて濾取した。この操作を5回以上繰り返し、過剰のアクタデシルアミンを除いた後、真空乾燥することにより、30mgのカーボンナノチューブ/アクタデシルアミン塩を得た。
【0076】
このように前処理したSWNTの3.4mgを、6mlのo-CClに分散させた。以下これをNT溶液と呼ぶ。
【0077】
(b)ポルフィリン溶液の調製
化合物12(ポルフィリンテトラアルデヒド)をピリジンに溶解し、1.3mmol溶液を調製した。以下、これを化合物12溶液と呼ぶ。また、化合物15(ポルフィリンテトラアルデヒド)をクロロホルムに溶解し、1.3mmol溶液を調製した。以下、これを化合物15溶液と呼ぶ。
【0078】
(c)ピレン溶液の調製
1-アミノピレン、1,6-ジアミノピレン、及び1,8-ジアミノピレンを文献(Y. Hashimoto, K. Shudo, Chem. Pharm. Bull. 1984, 32, 1992-1994.)に記載された方法に従って合成した。
【0079】
1-アミノピレンをエタノールに溶解し、2.6mmol溶液を調製した。以下これを1-Py溶液と呼ぶ。また、1,6-ジアミノピレンをエタノールに溶解し、2.6mmol溶液を調製した。以下これを(1,6-Py)溶液と呼ぶ。同様に、1,8-ジアミノピレンをエタノールに溶解し、2.6mmol溶液を調製した。以下これを(1,8-Py)溶液と呼ぶ。
【0080】
(2)カーボンナノチューブの修飾
20mlのナシ型フラスコに、0.2mlのNT溶液、0.25ml(1.3mmol,1当量)の化合物12溶液、及び3mlのエタノールを収容し、超音波を2分間かけた。これに0.25ml(2.6mmol,2当量)の(1,6-Py)溶液及び1mlのエタノールを加え、超音波を30秒間かけた後、N雰囲気下、75℃で3.8時間加熱攪拌した。
【0081】
その結果、化合物12(ポルフィリンテトラアルデヒド)と1,6-ジアミノピレンとの反応によりイミンポリマーが形成されるとともに、SWNTとのπ-π相互作用に基づく非共有結合的修飾が行われ、カーボンナノチューブ複合体が得られた。
【0082】
SWNTと相互作用しなかった過剰の化合物12及び1,6-ジアミノピレンを除去するために、反応液に5mlのエタノールを加え、メンブランフィルター(ミリポア, ジュラポア:細孔径0.1μm)上で、それぞれ15mlのクロロホルム、メタノール、及びエタノールで洗浄した。
【0083】
フィルター上に残留するカーボンナノチューブ複合体は、洗浄後すぐに10mlのクロロホルムに加え、超音波を5秒間かけ、フィルターから剥離した。フィルターを除去して、ピリジンをパスツールピペットで3滴加え、複合体サンプルとした。なお、ピリジンは、クロロホルムからの酸の発生を防ぐために加えた。
【0084】
また、他の1-アミノピレン、1,8-ジアミノピレン、化合物15を用いて、同様の操作により複合体サンプルを得た。作成したサンプルの一覧を下記表に示す。
【表1】
JP0003823157B2_000022t.gif

【0085】
3.カーボンナノチューブ複合体の特性の測定
(1)紫外・可視・近赤外吸収スペクトル
作成した複合体サンプルをクロロホルムで4倍に希釈し、吸収スペクトルの測定を行った。その結果を図2及び図3に示す。図2において、実線はサンプルNo.1、破線はサンプルNo.2の紫外・可視吸収スペクトルを示し、図3は、サンプルNo.1の紫外・可視・近赤外吸収スペクトルをそれぞれ示す。
【0086】
図2及び図3に示すように、ポルフィリンとカーボンナノチューブに特有のスペクトルが観測された。410nm付近に見られるポルフィリンのスペクトルはブロード化しているが、カーボンナノチューブに特徴的な1500nm付近の半導体性バンドに変化はなかったことから、カーボンナノチューブの壁には破壊が生じていないことがわかる。
【0087】
また、同一の手順で作成したサンプルについても、同様のスペクトルが得られたことから、ポルフィリンとカーボンナノチューブの比がほぼ等しい複合体が、再現性よく安定的に得られることがわかる。
【0088】
なお、サンプル3及び4についても同様に吸収スペクトルの測定を行った結果、サンプル1及び2と同様の結果が得られた。
【0089】
(2)分散性
サンプル1をクロロホルムで4倍に希釈した分散液を10分間静置したが、沈殿は全く求められなかった。これにより、サンプル1におけるカーボンナノチューブ複合体の溶媒への分散性は、非常に優れていることがわかる。
【0090】
次に、同様にサンプル1をクロロホルムで4倍に希釈した分散液の2μlを、シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜上に2回滴下し、乾燥した。その結果、カーボンナノチューブ同士はそれほど凝集せず、薄膜を形成することが出来た。得られた薄膜をAFMにより観察した。図4にその写真図を示す。図4に示すように、サンプル1に係るカーボンナノチューブ複合体は、基板表面にほぼ均一に分散されていることがわかる。
【0091】
また、同様のサンプル1に係る分散液の2μlを、傾斜したシリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜上に滴下して流下させ、乾燥し、AFMにより観察した。図5にその写真図を示す。図5に示すように、カーボンナノチューブ複合体は、分散液の流下方向に沿って配向している。このことからも、カーボンナノチューブ複合体の分散性が良好であることがわかる。
【0092】
(3)光電流測定
1000nmの間隔の2端子電極間のギャップにサンプル4(溶液15/1,6-Py)を滴下して乾燥し、ギャップ間をカーボンナノチューブ複合体薄膜により架橋した。複合体薄膜に波長532nm(54mW/cm)のレーザー光を照射して、電極間に流れる光電流を測定した。即ち、電極間に7Vの電圧を印加しつつ、複合体薄膜に光照射/非照射を繰り返して、電極間に流れる電流を測定したところ、図6に示す結果を得た。図6のグラフから明らかなように、光照射のON/OFFに対応して電流値の増減が観測され、本実施例により得たカーボンナノチューブ複合体は、優れた光応答性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係るカーボンナノチューブ複合体は、微細であり、溶媒への溶解性に優れているとともに、優れた電子特性及び光学特性を有するため、様々な光・電子デバイスに適用するすることが出来る。例えば、カーボンナノチューブ複合体を1本ずつ制御することで、ナノメートルサイズの光・電子デバイス、ナノ電極として利用すること、薄膜として利用することにより光応答性導電フィルムとして利用することが考えられるなど、その応用範囲は非常に広い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一形態に係るカーボンナノチューブ複合体の一例の化学構造を示す図。
【図2】本発明の一実施例に係るカーボンナノチューブ複合体分散液サンプルの紫外・可視吸収スペクトルを示す特性図。
【図3】本発明の一実施例に係るカーボンナノチューブ複合体分散液サンプルの紫外・可視・近赤外吸収スペクトルを示す特性図。
【図4】本発明の一実施例に係るカーボンナノチューブ複合体分散液サンプルを用いて水平な基板上の薄膜のAFM写真図。
【図5】本発明の一実施例に係るカーボンナノチューブ複合体分散液サンプルを用いて基板を傾斜させて得た薄膜のAFM写真図。
【図6】本発明の一実施例に係るカーボンナノチューブ複合体分散液サンプルを用いて得た薄膜の光電流の測定結果を示す特性図。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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