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明細書 :有機金属化学気相堆積装置用原料気化器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4595356号 (P4595356)
公開番号 特開2005-256107 (P2005-256107A)
登録日 平成22年10月1日(2010.10.1)
発行日 平成22年12月8日(2010.12.8)
公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明の名称または考案の名称 有機金属化学気相堆積装置用原料気化器
国際特許分類 C23C  16/448       (2006.01)
H01L  21/31        (2006.01)
FI C23C 16/448
H01L 21/31 B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2004-070656 (P2004-070656)
出願日 平成16年3月12日(2004.3.12)
審査請求日 平成19年3月1日(2007.3.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】岡村 総一郎
【氏名】塩嵜 忠
個別代理人の代理人 【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100103115、【弁理士】、【氏名又は名称】北原 康廣
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開平10-298768(JP,A)
特開2003-282556(JP,A)
調査した分野 C23C 16/00-16/56
H01L 21/31
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の工程(i)~(v)を有する有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法:
(i)固体原料から溶剤を用いて液体原料を調製し、
(ii)該液体原料を、該固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィスを具有する気化器内へ、該気化器に接続された配管を通して導入し、
(iii)該気化器内の液体原料に含まれる溶剤を該気化器内から蒸発除去させ、
(iv)該気化器内に残留する該固体原料を加熱昇華させることによって該気化器内に該原料ガスを発生させ、次いで
(v)該原料ガスを該オリフィスを通して有機金属化学気相堆積装置系へ供給する。
【請求項2】
オリフィスの孔径が50~5000μmである請求項記載の方法。
【請求項3】
堆積される薄膜がチタン酸ジルコン酸鉛である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
固体原料を溶剤に溶解させて液体原料を調製する請求項記載の方法。
【請求項5】
溶剤がテトラヒドロフラン、酢酸ブチル、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンおよびテトラエチルヘプタンジオンから成る群から選択される溶剤である請求項記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体充填平衡気化を可能とする有機金属化学気相堆積装置用原料気化器であって、該装置による成膜に際して、原料の連続的な供給と安定な気化を可能とする気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の有機金属化合物を気化器を用いて気化させて得られる原料ガスをキャリアガス用いて反応室内へ搬送して分解させ、該分解物を該反応室内に配置した基板上へ堆積させることによって成膜する方法、即ち、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法は、(i)段差被覆性に優れている、(ii)緻密な膜が得られる、(iii)大面積ウエハへの均質な成膜が可能である、および(iv)プロセスの低温化が可能である、等の利点を有するので、高集積化と量産化に適した成膜方法として当該分野では汎用されている。
【0003】
この有機金属化学気相堆積法における原料気化方式としては、容器内に収容した固体原料を加熱して得られる昇華ガスをキャリアガスを用いて反応室内へ搬送する単純固体昇華法、粉体原料を多孔質セラミックボールに担持させて表面積変化に伴う気化量変化を抑制する担持固体昇華法、加熱した液体原料中へキャリアガスを通して蒸気圧分の原料ガスを搬送する液体バブリング法、および原料を液体状態で気化器内へ供給する液体供給法が知られている。
【0004】
なお、より具体的な単純固体昇華法としては、(i)有機アルカリ土類金属錯体を一旦溶融させた後、該溶融物を原料容器内で冷却固化させ、次いでこれを該錯体の融点以下の温度で気化させるか、または該溶融物を筒状の容器内へ長手軸方向の厚みが略一定になるように鋳込み、次いで該長手方向にキャリアガスを通流させながら該錯体をその融点以下の温度で気化させる方法(特許文献1参照)、および(ii)平均粒子径が0.03~5.0mmのビス(シクロペンタジエニル)ルテニウムをキャリアガスを通流させながら加熱気化させる方法(特許文献2参照)が例示される。
【0005】
しかしながら、単純固体昇華法には、昇華に伴う原料表面積の変化により気化量が安定しないだけでなく、原料の連続的充填ができないために工業化には不向きであるという問題があり、また、担持固体昇華法も、原料の連続的充填が困難なために工業化には不適当である。
【0006】
さらに、バブリング法には、原料全体が長時間にわたって熱に曝されるために劣化するという問題があるだけでなく、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等を原料とする薄膜の成膜においては毒性の高いPb原料(例えば、四エチル鉛、テトラネオペントキシ鉛等)を使用せざるを得ないために工業化は困難であるという問題がある。
【0007】
一方、液体供給法は、原料を液体状態で輸送するために、工業化への応用が期待されているが、この方法には、(i)高温に加熱した気化器内へ原料液体を直接的に噴射するために気化条件によっては原料の分解が生じることがあり、また、原料がミスト状態で搬送されるためにパーティクルが発生する、(ii)原料と共に大量の溶剤ガスも基板上まで搬送されるために膜中へ炭素が不純物として取り込まれるだけでなく、排気系への負担が大きくなってメンテナンス費用が増加する、(iii)溶剤として多用されるテトラヒドロフラン(THF)は侵食性が高いためにバイトン製Oリングに致命的損傷を与え、メンテナンス費用を増加させる、および(iv)一般にキャリアガス流量が大きいために高価な原料の利用効率が低く、製品のコストが増加する、という問題がある。

【特許文献1】特開平11-193462号公報
【特許文献2】特開2003-160865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有機金属化学気相堆積法における液体供給法の上記問題点、特に、固体原料の昇華に伴って該原料の表面積が変化すると共に、該原料の温度が変化するために再現性良く薄膜を形成することができないという問題、固体原料を追加するためには薄膜形成装置を停止させなければならず、該装置の稼動率が低下するという問題、および多元素薄膜を作製する場合には、液体流量の経時的変化によって形成される薄膜の組成が変動するという問題を解消することによって、原料の連続的充填と安定気化を可能にする有機金属化学気相堆積装置用原料気化器を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の観点によれば、「有機金属化学気相堆積装置用原料気化器において、該気化器内に存在する固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィスを具有することを特徴とする該気化器」が提供される。
【0010】
本発明の第二の観点によれば、「有機金属化学気相堆積装置用原料気化器であって、(i)液体原料を充填するための充填口、(ii)該液体原料に含まれる溶剤を除去した後に残留する固体原料の気化に際して、該気化器内の該固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス、および(iii)加熱用ヒーターを具備する該気化器」が提供される。
【0011】
本発明の第三の観点によれば、「有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法において、気化器内に配設されたオリフィスであって、該気化器内に存在する該原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィスを通して該原料ガスが有機金属化学気相堆積装置系へ供給されることを特徴とする該原料ガスの供給方法」が提供される。
【0012】
本発明の第四の観点によれば、「下記の工程(i)~(v)を有する有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法:
(i)固体原料から溶剤を用いて液体原料を調製し、
(ii)該液体原料を、該固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィスを具有する気化器内へ、該気化器に接続された配管を通して導入し、
(iii)該気化器内の液体原料に含まれる溶剤を該気化器内から蒸発除去させ、
(iv)該気化器内に残留する該固体原料を加熱昇華させることによって該気化器内に該原料ガスを発生させ、次いで
(v)該原料ガスを該オリフィスを通して有機金属化学気相堆積装置系へ供給する」が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による気化器を使用する場合には、気化器内の原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるために、該原料の昇華に伴う原料表面積の変化に起因する原料の気化量が安定しないという問題は発生せず、また、固体原料を、溶剤を用いて液体状態に調製した後で配管を通して気化器内へ充填できるので、工業化への応用にとって重要な原料の連続的供給が可能となる。さらに、該気化器を使用する場合には、所定量以上の液体原料が気化器内へ導入されればよく、また、該原料の気化量は気化器内の温度によって適宜調整することができるので、多元素系薄膜を作成する際の組成調整を正確かつ安定におこなうことが可能となり、従来の液体流量制御器を使用する場合の液体流量の経時的変化に起因する組成変動の問題は発生しない。
従って、例えば、従来は原料選択の幅が狭いために毒性の高い四エチル鉛やテトラネオペントキシ鉛等を使用しなければならないために、工業的な規模での有機金属化学気相堆積法による製造が困難であったチタン酸ジルコン酸鉛薄膜も、本発明によれば、該方法によって工業的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、上記の本発明を添付図に基づいて説明する。
図1は、本発明による気化器を装備する有機金属化学気相堆積装置の一態様を示す模式的構成図である。
また、図2は、図1に示す本発明による気化器の操作手順を示す模式的構成図である。
【0015】
本発明の第一の観点によれば、「有機金属化学気相堆積装置用原料気化器9において、該気化器9内に存在する固体原料10の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8を具有することを特徴とする該気化器9」が提供される。
この場合、「気化器9内に存在する固体原料10の蒸気圧が実質上一定に保持される」とは、気化器9の設定温度によって規定される固体原料10の蒸気圧PmmHgと気化器9内で実測される固体原料10の蒸気圧P'mmHgとの差が約0~0.5mmHg、好ましくは約0~0.2mmHg、特に好ましくは約0~0.05mmHgの範囲内に保持されることを意味する。
【0016】
固体原料10の蒸気圧に関する上記の条件が満たされるためには、気化器9に配設されるオリフィス8の孔径を約50~5000μm、好ましくは約100~3000μm、特に好ましくは約500~1500μmに設定する。オリフィス8の孔径が約50μmよりも小さくなると、基板2に堆積される薄膜の成膜速度が実用上不十分となり、また、オリフィス8の孔径が約5000μmよりも大きくなると、気化器9内での固体原料10の蒸気圧が一定に保ち得なくなる。
なお、気化器9の体積、オリフィス8の孔径、成膜速度および固体原料10の蒸気圧等を考慮して、複数個のオリフィスを配設してもよい。
【0017】
上記の本発明による気化器9を使用する場合には、気化器9の内部で気化して発生する原料ガスの量に比較して、該気化器9に配設されたオリフィス8を通して反応室3へ供給される原料ガスの量は殆ど無視できる程度であるために、気化器9の内部は常に平衡状態に保たれ、しかも固体原料10の気化量は該原料の表面積等に左右されることなく該原料の蒸気圧によってほぼ決定されるため、反応室3への原料ガスの供給は長時間にわたって安定しておこなわれる。
【0018】
本発明の第二の観点によれば、「有機金属化学気相堆積装置用原料気化器9であって、(i)液体原料13を充填するための充填口14、(ii)該液体原料13に含まれる溶剤を除去した後に残留する固体原料10の気化に際して、該気化器9内の該固体原料10の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8、および(iii)加熱用ヒーター7を具備する該気化器9」が提供される。
【0019】
気化器9に配設された充填口14には、液体原料源と連絡する配管11が接続され、液体原料13は該充填口14を通して気化器9の内部へ充填される。充填口14の口径は特に限定的ではないが、常用される気化器9(容積:約10~100cc)の場合には、通常は約1~8mm、好ましくは約2~6mm、特に好ましくは約3~4mmである。
所望により、使用する気化器9の容積、充填口14の口径の大きさ、および気化器9の連続的な使用時間等に応じて、複数の充填口を配設してもよい。
【0020】
上記の充填口14を通して気化器9の内部へ導入された液体原料13は、気化器9の底部に配設された加熱用ヒーター7による加熱処理に付され、これによって液体原料13に含まれる溶剤は蒸発除去され、気化器9の底部には固体原料10が残留する。この残留する固体原料10を加熱用ヒーター7を用いて適当な温度に加熱して気化させることによって気化器9の内部に原料ガスを発生させる。
【0021】
気化器9には、このような残留固体原料10の気化に際して、該気化器内の該固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8が配設される。該オリフィス8の形態に関しては、本発明の第一の観点による気化器の場合の上記説明がそのまま適用される。
【0022】
従って、(i)液体原料13を充填するための充填口14、(ii)該液体原料13に含まれる溶剤を除去した後に残留する固体原料10の気化に際して、該気化器9内の該固体原料10の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8、および(iii)加熱用ヒーター7を具備する本発明による有機金属化学気相堆積装置用原料気化器9を使用する場合には、気化器9の内部で気化して発生する原料ガスの量に比較して、該気化器9に配設されたオリフィス8を通して反応室3へ供給される原料ガスの量は殆ど無視できる程度であるために、気化器9の内部は常の平衡状態に保たれ、しかも固体原料10の気化量は該原料の表面積等に左右されることなく該原料の蒸気圧によってほぼ決定されるため、反応室3への原料ガスの供給は長時間にわたって安定しておこなわれる。
【0023】
本発明の第三の観点によれば、「有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法において、気化器9内に配設されたオリフィス8であって、該気化器9内に存在する該原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8を通して該原料ガスが有機金属化学気相堆積装置系へ供給されることを特徴とする該原料ガスの供給方法」が提供される。
【0024】
図1に示す態様の有機金属化学気相堆積装置は、(i)基板2と基板加熱ヒーター1を収容する反応室3、(ii)真空ポンプ5’を含む排気系、(iii)キャリアガスとしてのアルゴンガスの供給源、流量調整器16および予熱器4を含むキャリアガス供給系、並びに(iv)反応ガスとしての酸素ガスの供給源、流量調整器16’および予熱器4’を含む反応ガス供給系から構成される。この場合、基板2に達する前のキャリアガス、反応ガスおよび原料ガスは、反応室3の下部領域に装着された保温ヒーター12によって保温される。
【0025】
保温ヒーター12が装着された反応室3の下部領域には、気化器9が接続され、該下部領域と気化器は、該気化器に配設されたオリフィス8を介して連絡される。該オリフィス8は、該気化器内に存在する固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有する。該オリフィス8の形態に関しては、本発明の第一の観点による気化器の場合の上記説明がそのまま適用される。
【0026】
従って、有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法において、気化器9内に配設されたオリフィス8であって、該気化器9内に存在する該原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8を通して該原料ガスを有機金属化学気相堆積装置系へ供給する本発明方法によれば、気化器9の内部で気化して発生する原料ガスの量に比較して、該気化器9に配設されたオリフィス8を通して反応室3へ供給される原料ガスの量は殆ど無視できる程度であるために、気化器9の内部は常に平衡状態に保たれ、しかも固体原料10の気化量は該原料の表面積等に左右されることなく該原料の蒸気圧によってほぼ決定されるため、反応室3への原料ガスの供給は長時間にわたって安定しておこなわれる。
【0027】
本発明の第四の観点によれば、「下記の工程(i)~(v)を有する有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法:
(i)固体原料から溶剤を用いて液体原料13を調製し、
(ii)該液体原料13を、該固体原料の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8を具有する気化器9内へ、該気化器9に接続された配管11を通して導入し、
(iii)該気化器9内の液体原料13に含まれる溶剤を該気化器9内から蒸発除去させ、
(iv)該気化器9内に残留する該固体原料10を加熱昇華させることによって該気化器内に該原料ガスを発生させ、次いで
(v)該原料ガスを該オリフィス8を通して有機金属化学気相堆積装置系へ供給する」が提供される。
【0028】
液体原料13は、反応室3の内部に設置された基板2に堆積される薄膜の原料となる固体原料10を溶剤中に溶解させるか、分散させるか、懸濁させるか、または乳濁させることによって調製されるが、該液体原料13は溶液であるのが最も好ましい。
液体原料13の濃度は、固体原料10の種類、溶剤の種類、および原料の充填効率等に応じて適宜選定すればよく、特に限定的ではないが、通常は、約0.1~5mol/l、好ましくは約0.2~2mol/l、特に好ましくは約0.5~1mol/lである。
【0029】
固体原料から液体原料13を調製するために使用する溶剤は、固体原料の溶解度および溶剤のコストや毒性等を考慮して適宜選択すればよく、特に限定的ではないが、次の溶剤が例示される:テトラヒドロフラン、酢酸ブチル、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンおよびテトラエチルヘプタンジオン。
所望により、このような溶剤は2種以上適宜併用してもよい。
【0030】
上記のようにして調製された液体原料13は、固体原料10の蒸気圧が実質上一定に保持されるような大きさの孔径を有するオリフィス8を具有する気化器9内へ、該気化器9に接続された配管11を通して導入し、次いで液体原料13に含まれる溶剤を該気化器9内から蒸発除去させる。
【0031】
この場合の操作手順を図2に基づいてさらに説明する。
図2の(A)に示す状態においては、液体原料導入用配管11に連絡するバルブ6を開放すると共に、配管11と真空ポンプ5に連絡するバルブ6’を閉鎖する。
図2の(B)に示す状態においては、系外の液体原料13は、液体流量調整器15、バルブ6および配管11を経由し、気化器9の原料充填口14から気化器内へ充填される。
図2の(C)に示す状態においては、バルブ6の閉鎖とバルブ6’の開放をおこなった後、気化器9の底部に貯留された液体原料13を加熱ヒーター7によって加熱することによって溶剤を蒸発させると共に、真空ポンプ5を駆動させて気化器9の内部を排気する。この排気によって、気化器内の溶剤は液体原料充填口14から配管11とバルブ6’を経由して系外へ除去され、気化器9の底部には固体原料10が残留する。溶剤を除去した後は、バルブ6’を閉鎖する。
【0032】
なお、上記の溶剤除去工程において、反応室(成膜室)3の内部の圧力を気化器9の内部の圧力よりも高く設定することによって、気化器9から反応室3への溶剤ガスの侵入を抑止することができる。
【0033】
本発明の第四の観点による有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法においても、該オリフィス8の形態に関しては、本発明の第一の観点による気化器の場合の上記説明がそのまま適用される。
【0034】
上記のようにして気化器9内の液体原料13から溶剤を除去することによって該気化器9内に残留する固体原料10を加熱昇華させることにより、該気化器内に原料ガスを発生させ、次いで、該原料ガスは該オリフィス8を通して有機金属化学気相堆積装置系へ供給される。
【0035】
有機金属化学気相堆積装置系内においては、例えば、次のようにして成膜条件を設定する。即ち、基板2の温度を基板加熱ヒーター1を用いて所定の温度(例えば、500℃)に設定し、反応室3の内部の圧力を真空ポンプ5’を用いて所定の圧力(例えば、275Pa)に調整し、固体原料10の昇華によって発生する原料ガスのキャリアガスとしてのアルゴンの流量を流量調整器16を用いて所定の流量(例えば、14scc/m)に調整すると共に、反応ガスとしての酸素ガスの流量を流量調整器16’を用いて所定の流量(例えば、100scc/m)に調整し、また、気化器9の内部の温度は加熱用ヒーター7を用いて所定の温度(例えば、150℃、155℃または160℃)に設定する。
このような成膜条件下において、基板2上に所望の薄膜(例えば、TiO薄膜)を形成させることができる。
【0036】
上記の本発明による有機金属化学気相堆積装置用原料ガスの供給方法によれば、気化器9の内部で気化して発生する原料ガスの量に比較して、該気化器9に配設されたオリフィス8を通して反応室3へ供給される原料ガスの量は殆ど無視できる程度であるために、気化器9の内部は常に平衡状態に保たれ、しかも固体原料10の気化量は該原料の表面積等に左右されることなく該原料の蒸気圧によってほぼ決定されるため、反応室3への原料ガスの供給は長時間にわたって安定しておこなわれる。
【0037】
また、この原料ガス供給方法によれば、固体原料は溶剤を用いて液体状態に変換した後で、気化器9を開放することなく、系外からの配管11を通して気化器9内へ連続的または逐次的に導入され、次いで成膜に先だって、該液体原料13中の溶剤のみが蒸発除去させるので、気化器9内においては常に新鮮な固体原料から原料ガスが発生し、該原料ガスはオリフィス8を通して連続的に有機金属化学気相堆積装置系へ供給される。
【実施例1】
【0038】
図1に示す有機金属化学気相堆積装置を使用してTiO薄膜を作製した。
チタンイソプロポキシピバロイルメタン(2.66g)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解させることによって原料溶液を調製した(原料濃度:0.5mol/l)。また、TiO薄膜を堆積させるための基板2としてはシリコンウエハを使用した。
この原料溶液を気化器9内へ配管11を通して導入した。真空ポンプ5を用いて気化器内を排気しながら加熱用ヒーター7を用いて原料溶液を80℃で15分間加熱することによってテトラヒドロフランを気化器内から蒸発除去した。
この場合の操作手順は、図2に基づいて先に説明した手順に準拠しておこなった。
次いで、基板2の温度を基板加熱ヒーター1を用いて500℃に設定し、反応室3の内部の圧力を真空ポンプ5’を用いて275Paに調整し、個体原料10の昇華によって発生する原料ガスのキャリアガスとしてのアルゴンの流量を流量調整器16を用いて14scc/mに調整すると共に、反応ガスとしての酸素ガスの流量を流量調整器16’を用いて100scc/mに調整し、また、気化器9の内部の温度は加熱用ヒーター7を用いて150℃、155℃または160℃に設定した。
【0039】
上記の成膜条件下において、基板上にTiO薄膜を形成させ、該薄膜の膜厚を経時的(20分後、25分後、30分後および35分後)に測定した。この測定結果を図3に示す。
図3から明らかなように、いずれの気化温度においても、二酸化チタン薄膜の膜厚は堆積時間の増加に伴ってほぼ直線的に増加しており、このことは、本発明による気化器を使用する場合には、固体原料の安定した気化と一定の堆積速度が達成されることを示す。また、図3は、気化器9の温度を適宜選定することによって、基板上への原料ガスの堆積速度を制御することができることも示す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
工業的生産においては、生産プロセスの稼動率は製品のコスト等の観点から非常に重要な要件である。本発明による有機金属化学気相堆積装置用原料気化器を使用する場合には、均一薄膜を製造するために重要な原料の安定的気化が保証されるだけでなく、装置の稼動率を高めるために重要な原料の連続的もしくは逐次的供給が可能となる。従って、有機金属化学気相堆積法による薄膜の量産プロセス中へ本発明による気化器を組入れることによって、該量産プロセスの稼動率が大幅に高められ、このことと原料の安定的気化と相俟って、均一な薄膜製品を低コストで提供することが可能となる。
【0041】
本発明による有機金属化学気相堆積装置用原料気化器は、有機金属化学気相堆積法による薄膜の製造に際して、一般的に適用できるものであるが、特に、機能性酸化物薄膜の製造、就中、強誘電体薄膜メモリーFeRAM用のPb(Zr,Ti)O、 SrBiTa、および(Bi,La)Ti12等の成膜に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明による気化器を装備する有機金属化学気相堆積装置の一態様を示す模式的構成図である。
【図2】図2は、図1に示す本発明による気化器の操作手順を示す模式的構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施例で測定された基板上のTiO薄膜の膜厚と原料ガスの堆積時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1 基板加熱ヒーター
2 基板
3 反応室
4 予熱器
4’ 予熱器
5 真空ポンプ
5’ 真空ポンプ
6 バルブ
6’ バルブ
7 加熱用ヒーター
8 オリフィス
9 気化器
10 固体原料
11 液体原料導入用配管
12 保温用ヒーター
13 液体原料
14 液体原料用充填口
15 液体流量調整器
16 流量調整器
16’ 流量調整器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2