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明細書 :ジルコニア粉末、および該ジルコニア粉末を用いて得られるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4774511号 (P4774511)
公開番号 特開2007-001821 (P2007-001821A)
登録日 平成23年7月8日(2011.7.8)
発行日 平成23年9月14日(2011.9.14)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
発明の名称または考案の名称 ジルコニア粉末、および該ジルコニア粉末を用いて得られるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法
国際特許分類 C04B  35/48        (2006.01)
C04B  35/468       (2006.01)
H01B   3/12        (2006.01)
H01L  41/187       (2006.01)
H01L  41/24        (2006.01)
FI C04B 35/48 Z
C04B 35/46 N
H01B 3/12 303
H01L 41/18 101B
H01L 41/22 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2005-184855 (P2005-184855)
出願日 平成17年6月24日(2005.6.24)
審査請求日 平成20年6月19日(2008.6.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】武田 博明
【氏名】塩嵜 忠
個別代理人の代理人 【識別番号】100064746、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 久郎
【識別番号】100085132、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 俊雄
【識別番号】100083703、【弁理士】、【氏名又は名称】仲村 義平
【識別番号】100096781、【弁理士】、【氏名又は名称】堀井 豊
【識別番号】100098316、【弁理士】、【氏名又は名称】野田 久登
【識別番号】100109162、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 將行
審査官 【審査官】藤代 佳
参考文献・文献 特開昭56-169301(JP,A)
特開平10-092604(JP,A)
調査した分野 C04B 35/46-35/49
C04B 35/64
C01G 25/02
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
チタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造における半導体化剤として用いられ、ZrO2を主成分とし、かつZr3Oを1~50mol%の範囲内で含有してなるジルコニア粉末。
【請求項2】
ZrO2を主成分とし、かつZr3Oを1~50mol%の範囲内で含有してなるジルコニア粉末を用いたチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法であって、
Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)を含む母体と、前記ジルコニア粉末とを接触させた状態で、温度を1200~1400℃の範囲内、酸素分圧を0.05~1.0の範囲内、加熱時間を0.5~10時間の範囲内に設定して前記母体の焼成および半導体化を行なう熱処理工程を含む、チタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法。
【請求項3】
前記母体は、前記Ba1-2x(BiM)xTiO3に、Nb、Ta、希土類元素から選択される1種以上が添加されてなる、請求項2に記載のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉛系でかつ良好なPTCR特性を有するチタン酸バリウム系半導体磁器組成物を製造効率良く得ることを可能とするジルコニア粉末、該ジルコニア粉末を用いて得られるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己制御型ヒーター、温度検出器、過電流保護素子等において使用されるPTCR(抵抗の正の温度係数)素子としてはチタン酸バリウム(BaTiO3)を基本組成とするセラミックスが広く採用されている。チタン酸バリウム系のセラミックスはキュリー温度付近でPTCR特性を示す。ヒーター等、PTCR素子を使用する装置の動作温度が130℃を超えるような場合には、キュリー温度が高く、所望される動作温度における良好なPTCR特性が得られる点で、チタン酸バリウムとチタン酸鉛(PbTiO3)との固溶体が好ましく使用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、Bi4Ti312で表される組成において、Tiの一部がNbで置換されている半導体化ビスマス層状構造酸化物が提案されている。特許文献2には、(Ba1-xPbx)TiO3(0≦x<1)を母体とし、半導体化剤および酸化ホウ素を添加したチタン酸バリウム鉛系半導体磁器組成物が提案されている。特許文献3には、(Ba1-xPbx)TiO3(0≦x<1)を母体とし、半導体化剤、酸化ゲルマニウムを添加し、さらにPbOを母体に対して過剰に添加したチタン酸バリウム鉛系半導体磁器組成物が提案されている。特許文献4には、絶縁体材料に、溶融によって体積減少する金属および/または合金の少なくとも一種を分散した複合材料が提案されている。特許文献5には、(Ba1-xPbx)TiO3(0≦x<1)を母体とし、半導体化剤、酸化ホウ素を添加し、さらにPbOを母体に対して過剰に添加したチタン酸バリウム鉛系半導体磁器組成物が提案されている。特許文献6には、Cを主成分とする非晶質体に、溶融によって体積減少する平均粒径0.5~500μmの金属および/または合金の少なくとも一種を10~90重量%分散した複合材料が提案されている。特許文献7には、高分子化合物に、溶融によって体積減少する平均粒子径0.5~500μmの金属および/または合金の少なくとも一種を10~90重量%分散した複合材料が提案されている。特許文献8には、(Ba1-xPbx)TiO3(0≦x<1)を母体とし、半導体化剤、および軟化点が950℃以下のガラス物質を添加するチタン酸バリウム鉛系半導体磁器組成物が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1~8に提案される材料はいずれも鉛系を想定したものであり、環境への負荷が大きいという問題がある。
【0005】
一方、非鉛系のPTCR素子を得るための方法としては、特許文献9に、チタン酸バリウムのバリウムの一部をビスマス-ナトリウムで置換したBa1-2x(BiNa)xTiO3(0<x≦0.15)に、ニオブ、タンタルまたは希土類金属のいずれか一種以上を加えて窒素中で焼結した後、酸化性雰囲気下で熱処理したチタン酸バリウム系半導体磁器の製造方法が提案されている。この方法によれば、鉛を用いることなく比較的高いキュリー温度を得ることが可能であるが、焼成時に2回の熱処理工程が必要であることから、製造効率の点では改善の余地がある。
【0006】
特許文献10には、Na0.5-xBi2.5+x/3Ta29(但し、-0.05≦x≦0.15)で表される圧電材料が提案されているが、高温の動作温度におけるPTCR特性をさらに向上させることが望まれている。

【特許文献1】特開平6-163204号公報
【特許文献2】特開平11-12030号公報
【特許文献3】特開平11-12031号公報
【特許文献4】特開平11-111507号公報
【特許文献5】特開平11-12033号公報
【特許文献6】特開2000-40601号公報
【特許文献7】特開2000-63687号公報
【特許文献8】特開2001-328862号公報
【特許文献9】特開昭56-169301号公報
【特許文献10】特開2003-277148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の課題を解決し、非鉛系でかつ比較的高温のキュリー温度における良好なPTCR特性を有するチタン酸バリウム系磁器組成物の製造に用いられるジルコニア粉末、該ジルコニア粉末を用いて得られるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造における半導体化剤として用いられ、ZrO2を主成分とし、かつZr3Oを1~50mol%の範囲内で含有してなるジルコニア粉末に関する。
【0009】
本発明はまた、ZrO2を主成分とし、かつZr3Oを1~50mol%の範囲内で含有してなるジルコニア粉末を用いたチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法であって、Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)を含む母体と、該ジルコニア粉末とを接触させた状態で、温度を1200~1400℃の範囲内、酸素分圧を0.05~1.0の範囲内、加熱時間を0.5~10時間の範囲内に設定して該母体の焼成および半導体化を行なう熱処理工程を含むチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法に関する。
【0010】
本発明においては、該母体として、該Ba1-2x(BiM)xTiO3に、さらにNb、Ta、希土類元素から選択される1種以上が添加されてなるものも好ましく使用される。
【0011】
本発明は、上記の方法により得られるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物に関する。
本発明に係るチタン酸バリウム系半導体磁器組成物においては、キュリー温度が130~280℃の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るチタン酸バリウム系半導体磁器組成物においては、以下の(I)式、
α=2.303log{(R+50)/R}×100/50 (I)
(式中、Rは、キュリー温度における電気抵抗率である)
で表される電気抵抗率の急峻度αが5以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定のジルコニア粉末を用いることにより、非鉛系でかつ比較的高温のキュリー温度における良好なPTCR特性を有するチタン酸バリウム系磁器組成物を製造効率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るジルコニア粉末は、ZrO2を主成分とするものであってチタン酸バリウム系半導体磁器組成物を製造する際に半導体化剤として用いられ、Zr3Oを半導体化剤全体の1~50mol%の範囲内で含有する。ここで、半導体化剤とは、チタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造において、Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)を含む母体を半導体化させるものである。
【0015】
本発明において製造されるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物はPTCR素子用の誘電材料として好適に用いられるものであり、温度を上昇させたときに特定の温度領域にて急峻な電気抵抗率の上昇を示し、良好なPTCR特性を有する。
【0016】
本発明に係るチタン酸バリウム系半導体磁器組成物は、Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)で表される構造を含むチタン酸バリウム系母体において、化学量論比から酸素(O)を不足状態とし、および/または、Tiの一部の価数を4+から3+に変化させ、半導体化させることにより得られる。本発明の製造方法において使用される母体を単に焼成するのみでは、明確なキュリー温度を示し、良好なPTCR特性を有する磁器組成物を得ることは困難であるが、Zr3Oを含有するジルコニア粉末を用いて母体の半導体化を行なうことにより、キュリー温度近傍で良好なPTCR特性を有する磁器組成物を得ることが可能となる。
【0017】
従来、本発明の製造方法において使用される母体は、窒素雰囲気下、次いで大気中の2段階の焼結を行なわなければ、良好なPTCR特性を有する磁器組成物を得ることはできなかった。また、本発明の製造方法において使用される母体を大気中で焼成するのみでは良好なPTCR特性を示す磁器組成物を得ることはできない。しかし本発明に係るZr3Oを含有するジルコニア粉末を用いて母体を大気中で焼成することにより、キュリー温度近傍で良好なPTCR特性を有する磁器組成物を得ることが可能となる。
【0018】
本発明においては、ジルコニア粉末中のZr3Oが熱処理工程において酸化される際、チタン酸バリウム系母体に対して還元剤として作用する。ジルコニア粉末中のZr3Oの含有量は1~50mol%の範囲内とされる。該含有量が1mol%未満である場合、チタン酸バリウム系母体の半導体化を所望の程度進行させることが困難であり、50mol%より大きい場合、ジルコニア粉末の保存中の酸化が顕著であること等により反応条件を一定に保つことが難しくなり、安定した半導体化を行なうことが困難である。Zr3Oの含有量は、さらに1~30mol%の範囲内とされることが好ましい。なおジルコニア粉末中のZr3Oの含有量は、たとえばX線回折等により分析評価することができる。
【0019】
本発明におけるジルコニア粉末の粒径は、たとえば200メッシュ程度かそれより粒径の小さいものが好ましく用いられる。粒径が200メッシュ程度かそれより小さい場合、ジルコニア粉末と母体とを均一に接触させることが容易である点で好ましい。
【0020】
本発明はまた、上記のジルコニア粉末を用いたチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法に関する。本発明の製造方法により製造されるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物は、Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)を含む母体が酸素の引抜きにより半導体化されることにより得られる。Ba1-2x(BiM)xTiO3におけるxは0でも良く、また、バリウムの一部をBiM(すなわち、ビスマス-ナトリウム、ビスマス-カリウム、ビスマス-ナトリウムカリウムのいずれか)で置換したものも使用できる。一方、上記xは0.35未満とされることが好ましい。xが0.35未満である場合、Ba1-2x(BiM)xTiO3はチタン酸バリウムと同様に正方晶ペロブスカイト構造を有し、たとえば130~280℃の範囲内の比較的高温のキュリー温度を持ち、該キュリー温度付近において良好なPTCR特性を示すため好ましい。中でもxが0≦x≦0.3の範囲内、さらに0.025≦x≦0.2の範囲内に設定される場合特に好ましい。
【0021】
本発明において使用される母体の調製方法は特に限定されず、たとえば下記のような方法が採用され得る。すなわち、出発物質としての炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、シュウ酸バリウム、酸化ビスマス、酸化チタンを配合し、半導体化元素としての酸化ニオブ、酸化タンタル、希土類酸化物等を添加して、ボールミル等を用いてエタノール、アセトン、水等の溶媒中で混合し、脱水、乾燥を行なった後、たとえば空気中や窒素中で、800~1000℃程度にて仮焼し、粉末混合物を得る。得られた粉末混合物にバインダーとしてたとえばポリビニルアルコール等を添加し、200メッシュ程度の大きさに粉砕、造粒する。さらに、この造粒物を、プレス器を用いて29~190MPa程度の圧力で一軸加圧成形して、本発明に用いられる母体を得ることができる。
【0022】
本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物は、たとえば上記のような方法で得られた、Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)を含む母体と、Zr3Oを1~50mol%の範囲内で含有するジルコニア粉末とを接触させた状態で、該母体および該ジルコニア粉末に対し、温度を1200~1400℃の範囲内、酸素分圧を0.05~1.0の範囲内、加熱時間を0.5~10時間の範囲内に設定して熱処理を行ない、該母体の焼成および半導体化を行なう熱処理工程を含む方法により製造される。
【0023】
Zr3Oを含有する本発明のジルコニア粉末を母体と接触させた状態で熱処理を行なうと、該Zr3Oが有する還元作用により、母体のBa1-2x(BiM)xTiO3中の酸素の一部が引抜かれるか、Tiの一部がその価数4+から3+に変化する。これによりBa1-2x(BiM)xTiO3を含む母体は半導体化され、本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物が得られる。すなわち、本発明においては、1回の熱処理工程において母体の焼成および半導体化を行なうことができるため、還元雰囲気下での熱処理工程を別途設ける必要がなく、工程数を減らして効率良くチタン酸バリウム系半導体磁器組成物を製造することが可能である。
【0024】
本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の製造方法において、該母体には、Ba1-2x(BiM)xTiO3(但し、0≦x<0.35、MはKおよび/またはNaである)に、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、希土類元素から選択される1種以上が添加されていても良い。この場合ニオブ、タンタル、希土類元素が半導体化元素として寄与し、本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物に対してより良好なPTCR特性が付与されるという利点を有する。
【0025】
上記のような製造方法により得られる本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物のキュリー温度は、130~280℃の範囲内とされることができる。キュリー温度が上記の温度範囲内である場合、たとえば、自己制御型ヒーター、温度検出器、過電流保護素子等におけるPTCR素子として使用される際に目的とする動作温度を容易に得ることができる。
【0026】
また、本発明に係るチタン酸バリウム系半導体磁器組成物の電気抵抗率ρは、たとえば25℃におけるρ25℃が10Ωcm~105Ωcmの範囲内とされることができる。電気抵抗率ρ25℃がこの範囲内である場合PTCR素子として良好に動作させることができる。また、電気抵抗率ρが最も大きくなる温度における電気抵抗率ρmaxと25℃における電気抵抗率ρ25℃との比ρmax/ρ25℃が102以上とされることが好ましい。比ρmax/ρ25℃が102以上である場合には良好なPTCR特性を有する。
【0027】
本発明に係るチタン酸バリウム系半導体磁器組成物においては、下記(I)式、
α=2.303log{(R+50)/R}×100/50 (I)
(式中、Rは、キュリー温度における電気抵抗率である)
で表される電気抵抗率の急峻度αが5以上、特に8以上であることが好ましい。急峻度αが5以上、特に8以上である場合PTCR特性が良好であるという利点を有する。
【0028】
本発明において得られるチタン酸バリウム系半導体磁器組成物は、たとえば自己制御型ヒーター、温度検出器、過電流保護素子等におけるPTCR素子として好適に用いることができる。
【0029】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
<チタン酸バリウム系半導体磁器組成物の調製>
出発物質としてBaCO3(レアメタリック社製「炭酸バリウム」(純度99.99%))、TiO2(高純度化学研究所(株)製「酸化チタン」(純度99.99%))、Bi23(レアメタリック社製「酸化ビスマス」(純度99.9%))、Na2CO3(高純度化学研究所(株)製「炭酸ナトリウム」(純度99.99%))、La23(レアメタリック社製「酸化ランタン」(純度99.99%))を用い、ボールミルを用いて、アセトン中で湿式混合し、脱水、乾燥した。なおこれらの出発物質の配合比は、BaCO3:TiO2:Bi23:Na2CO3:La23=16.96:7.55:0.53:0.12:0.07とした。得られた粉末混合物を、大気雰囲気下、1000℃で120分間焼成し、組成式((Na0.5Bi0.50.05Ba0.950.95La0.05TiO3で表されるチタン酸バリウム系材料を含む母体を得た。
【0031】
実施例および比較例においては、ジルコニア粉末として表1に示すジルコニア粉末を用いた。アルミナ鞘、白金箔を順に重ね、該白金箔の上にジルコニア粉末を長さ100mm×幅100mm×厚み2mmとなるように配置したものを各ジルコニア粉末について作製した。各ジルコニア粉末の上に直径13mm×厚み1mmの母体を載せ、ジルコニア粉末と母体とを接触させた。これらの試料を、接触状態のまま、温度1340℃、酸素分圧0.2、加熱時間2時間でそれぞれ熱処理し、母体の焼成および半導体化を行なって(熱処理工程)、実施例および比較例のチタン酸バリウム系半導体磁器組成物からなる焼結体を得た。
【0032】
【表1】
JP0004774511B2_000002t.gif

【0033】
注1:ジルコニア粉末1は、本発明に係るジルコニウム粉末である。
注2:ジルコニア粉末2は、高純度化学研究所(株)製のZrO2粉末、商品名「酸化ジルコニウム」である。
注3:ジルコニア粉末3は、日本ガイシ(株)製のZrO2粉末、商品名「酸化ジルコニウム」である。
【0034】
<ジルコニア粉末のX線回折測定>
熱処理工程前のジルコニア粉末1~3につきX線回折測定を行ない、ジルコニア粉末中のZr3O含有量を算出した。また、熱処理工程前にZr3Oのピークが見られたジルコニア粉末1については、熱処理工程後についてもX線回折測定を行なった。図1は、熱処理工程前のジルコニア粉末1~3についてのX線回折プロファイルを示す図であり、図2は、熱処理工程前後のジルコニア粉末1についてのX線回折プロファイルを示す図である。測定には、X線回折装置(リガク社製「RINT-2200VL」)を用い、Zr3Oの(116)面(2θ=36.2°付近)に由来するピーク面積とZrO2の(-111)面(2θ=28.2°付近)に由来するピーク面積とからZr3Oの含有量を算出した。結果を表1に示す。
【0035】
<半導体化の評価>
得られたチタン酸バリウム系半導体磁器組成物からなる焼結体につき、半導体化の程度を、25℃における電気抵抗率により評価した。結果を表1に示す。
【0036】
<キュリー温度の評価>
ヒューレットパッカード社製のインピーダンスアナライザ「HP4194A」を用い、誘電率の温度特性を評価し、実施例および比較例の焼結体のキュリー温度Tcを決定した。結果を表1に示す。
【0037】
<焼結体の色調>
実施例および比較例において得られた焼結体の色調を目視により評価した。結果を表1に示す。
【0038】
<電気抵抗率>
得られたチタン酸バリウム系半導体磁器組成物からなる焼結体の両面に、Ag-Znペーストを塗布、乾燥させ、500℃で2時間焼き付けることにより、Ag-Zn電極を形成した。得られた電極を用い、二端子法にて電気抵抗率を測定し、温度と該電気抵抗率との関係を評価した。図3は、実施例および比較例における温度と電気抵抗率との関係を示す図である。
【0039】
表1に、25℃における電気抵抗率ρ25℃、電気抵抗率が最大となる温度における電気抵抗率ρmaxとρ25℃との比ρmax/ρ25℃、下記の(I)式、
α=2.303log{(R+50)/R}×100/50 (I)
(式中、Rは、キュリー温度における電気抵抗率である)
で表される電気抵抗率の急峻度α、をそれぞれ示す。
【0040】
表1、図1および図2に示すように、熱処理工程前のジルコニア粉末1においてはZr3Oのピークが認められたのに対し、熱処理工程後のジルコニア粉末1においてはZr3Oのピークは消失していた。これは、熱処理工程において下記の式、
Zr3O+5/2O2→3ZrO2
で示される反応によりZr3Oが酸化し、ZrO2となったためと考えられる。これによりジルコニア粉末と接触した母体が還元作用を受けるものと考えられる。
【0041】
表1の結果より、Zr3Oの含有率が2mol%であるジルコニア粉末1を用いた実施例1においては、Zr3Oの含有率がそれぞれ0.01mol%未満であるジルコニア粉末2およびジルコニア粉末3を用いた比較例1および比較例2と比べて、焼結体の色調の変化が明らかである。すなわち、実施例1においては、ジルコニア粉末と接触した状態で熱処理されたことにより、母体に対して還元作用が働き、酸素の一部が引抜かれたことが分かる。また、表1および図3に示すように、実施例1においては、25℃における電気抵抗率ρ25℃が2.4×102Ωcmと低い一方、150℃近辺から電気抵抗率の急峻な上昇が見られ、良好なPTCR特性を有しているのに対して、比較例1および比較例2においては、ρ25℃が5.6×1011Ωcmおよび4.7×1011Ωcmとそれぞれ高く、温度の上昇とともに電気抵抗率が低下しており、PTCR特性は認められなかった。これらの結果から、実施例1においては、ジルコニア粉末中のZr3Oの還元作用により母体からの酸素の引抜きが生じ、該母体の半導体化が進行したことにより、良好なPTCR特性を有するチタン酸バリウム系半導体磁器組成物が得られたものと考えられる。
【0042】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、非鉛系でかつ比較的高温のキュリー温度における良好なPTCR特性を有するチタン酸バリウム系半導体磁器組成物を製造効率良く得ることができ、該チタン酸バリウム系半導体磁器組成物は、動作温度が比較的高温であるPTCR素子に対して好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】熱処理工程前のジルコニア粉末1~3についてのX線回折プロファイルを示す図である。
【図2】熱処理工程前後のジルコニア粉末1についてのX線回折プロファイルを示す図である。
【図3】実施例および比較例における温度と電気抵抗率との関係を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2