TOP > 国内特許検索 > 植物において外来遺伝子を安定に発現させる導入方法 > 明細書

明細書 :植物において外来遺伝子を安定に発現させる導入方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3777416号 (P3777416)
公開番号 特開2000-228925 (P2000-228925A)
登録日 平成18年3月10日(2006.3.10)
発行日 平成18年5月24日(2006.5.24)
公開日 平成12年8月22日(2000.8.22)
発明の名称または考案の名称 植物において外来遺伝子を安定に発現させる導入方法
国際特許分類 A01H   5/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01H 5/00 A
C12N 5/00 C
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願平11-253174 (P1999-253174)
出願日 平成11年9月7日(1999.9.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 1998年11月25日、第21回日本分子生物学会年会において、文書をもって発表
優先権出願番号 1998349625
優先日 平成10年12月9日(1998.12.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2002-005674(P2002-005674/J1)
審査請求日 平成11年9月7日(1999.9.7)
審判請求日 平成14年4月4日(2002.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】新名 惇彦
【氏名】吉田 和哉
【氏名】加藤 晃
【氏名】赤坂 甲治
【氏名】久住 高章
【氏名】田中 良和
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100124280、【弁理士】、【氏名又は名称】大山 健次郎
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
参考文献・文献 国際公開第98/5757号パンフレット
赤坂甲治,隣接する遺伝子の干渉を遮断するインスレーター,細胞工学(1997)Vol.16,No.10,p.1476-1484
調査した分野 A01H5/00
C12N15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
タバコ細胞において外来遺伝子を安定に発現させるために、ウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを該外来遺伝子の5’上流側及び3’下流側の両側に連結したベクター又はウニアリルスルファターゼ由来のインスレーターを該外来遺伝子の5’上流側のみに連結したベクターを作製し、該ベクターを用いて該インスレーターおよび該外来遺伝子を該タバコ細胞内に導入する工程を含む、遺伝子導入方法。
【請求項2】
請求項1記載の導入方法により、外来遺伝子を安定に発現させた、形質転換タバコ細胞。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は植物細胞において、外来遺伝子を安定に発現させる導入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物に種々の性質を付与する目的で、外来の遺伝子を導入した形質転換植物が作製されているが、その場合に個体間による導入遺伝子発現のばらつきが大きいことが問題となる。このばらつきは、導入された染色体上の位置によると考えられている。外来遺伝子が活性化クロマチン領域に挿入された場合には高い発現が得られ、反対に不活性化クロマチン領域に挿入された場合には十分な発現が得られないとされ(Galli,1:166-172,Current opinion in plant technology (1998) 1:166-172, Matzke et al.,Current opinion in plant technology (1998) 1:142-148 )、このような現象はポジション効果と呼ばれている。このようなポジション効果のために植物に導入したトランスジーンは、しばしば全く発現しないか、発現しても弱いか、あるいは発現しても植物の成長や外環境により発現しなくなることがある。この現象は遺伝子組み換え植物の商業化に際し障害となっており、導入遺伝子の発現を安定化する手法の確立が必要とされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、多様な遺伝子を導入した形質転換体の解析から、例外的に染色体上の導入位置に依存せずに発現する現象が見出され、その後の解析から、そのような現象は3つのケースに大別されている。すなわち、インスレーター、LCR(locus control region)およびMAR(matrix attachment region)の関与が示唆され、これら三者は作用機構は異なるが染色体上の境界として機能し、周辺のクロマチンの影響を遮断すると考えられている。
【0004】
インスレーターはエンハンサーとプロモーターの間に位置すると、エンハンサー効果を遮断する活性を持つ。高等真核植物では、エンハンサーやサイレンサーが、特定の一つのプロモーターだけではなく、複数のプロモーターの転写活性にも影響を与える場合があるため、染色体上では、複数のエレメントがランダムに影響を与える可能性がある。これは遺伝子発現に多様性を持たせる反面、無秩序ではない厳密な秩序ある制御のためには、エンハンサーやサイレンサーの影響を限定する機構が必要と想像される。現在では、インスレーターがこれらの影響力を限定していると考えられている。
【0005】
一方、LCRはDNA分解酵素I(DNaseI)に高感受性の領域であり、活性化クロマチンを形成することにより、プロモーターと種々の転写因子の接近を物理的に容易にしていると考えられる。
MARは、アデニン、チミン(AT)リッチな配列、トポイソメラーゼIIの認識配列を含むなどの特徴を持ち、インビトロで核膜結合活性を有する。染色体上では、10~100kbに一つは存在しているとされ、これらの領域を介して染色体は核膜と結合して高次構造を形成している。MARは、染色体を限られたスペースである核内にコンパクトに収めるために必須の存在であるが、近年の研究により遺伝子発現制御にも関与している事実が蓄積している。例えば、マウスのカッパー軽鎖免疫グロブリンのMARの解析では、発生過程における発現にMARが必要なこと、MARの欠失により高度なメチル化による遺伝子発現の不活性化が生じることなどが明らかとなった。また、MAR間に形成されるクロマチンループ内には、一つの遺伝子または複数の転写ユニットが含まれる。ループ内にクラスターを形成しているベータグロビン遺伝子の解析では、各遺伝子が相互に影響を与えることが適切な制御および機能に必要であった。これらの事実から、MAR間の一つのクロマチンループが独立したユニットを形成し、ユニット単位での遺伝子発現制御がなされているという説が提唱されている。
【0006】
先に述べたように、実用的な形質転換体を得るために、動物、植物を問わず、導入遺伝子の安定発現が望まれている。これまでに述べたように安定発現を考える場合、導入位置の周辺の影響、すなわちポジション効果を回避することが必須である。このため、レポーター遺伝子の前後にLCR、MARやインスレーターを付加し、ポジション効果を回避できるか検討されてきた。動物細胞においては、LCRおよびインスレーターは予想された機能を果たし、形質転換体間の発現のばらつきを減少させた(赤坂、細胞工学(1997) 16: 1476-1484、Yasue ら、JP6550/97 )。MARについては、動物細胞および植物細胞における異なるMAR、プロモーターおよびレポーター遺伝子による解析は統一性が見られず、結果として安定発現が得られない場合が多い。原因として多くのMARが発現を上昇させること、また複数コピー導入時にはポジション効果以外の特異的なDNAのメチル化などによる発現の不活性化が生じることなどが挙げられる。このため、全てのMARが染色体上の境界としての機能を有していない可能性が示唆され(Galli,1:166-172,Current opinion in plant technology (1998) 1:166-172, Matzke et al.,Current opinion in plant technology (1998) 1: 142-148) 、手法として一般化されるには至っていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは染色体上でエンハンサー機能を遮断するインスレーターに着目した。これまでインスレーターが植物でのトランスジーンの発現にどのような効果を与えるかを調べた例はなく、インスレーターの植物での有用性に関しては不明であった。本発明では、植物におけるトランスジーンのポジション効果を減少させるために、インスレーターの利用を行った。その結果、タバコ培養細胞において導入遺伝子の発現量が増大することなく安定化することを明らかとした。本発明により、ポジション効果に関わらず、植物においてトランスジーンを安定的に発現させる方法が開発された。
【0008】
これまでにショウジョウバエを始めとして多様な生物からインスレーターが同定されており、その例として、ショウジョウバエ由来のgypsyインスレーター、hsp70scs-scs’インスレーターおよびFab-7インスレーター、ニワトリ由来のベータグロビンインスレーター、およびヒト由来のapoBインスレーターなどがある。関与しているタンパク質も同定され始め、特にgypsyインスレーター、hsp70scs-scs’インスレーターについて解析が進んでいる(赤坂、細胞工学(1997) 16: 1476-1484)。
【0009】
【実施例】
(インスレーターを含むバイナリーベクターの作製)
インスレーターとしては、ウニアリルスルファターゼ(Ars)遺伝子の上流配列-2686から-2109を用いた。この配列は、赤坂ら、Dev.Growth&Differ.(1994)36:633-636に記載されている。モデルプロモーターとしては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターのコアプロモーター(90bp)を用いた。汎用されているCaMV35SコアプロモーターGUS融合遺伝子をBY2細胞の染色体上に導入すると、高頻度で遺伝子発現の不活性化が生じる。この現象には、染色体上に導入されるイベントで生じるポジション効果に加えて、mRNAの蓄積量には細胞内いき値が存在しており、いき値を超えるmRNAが特異的に分解するという機構が関与している可能性がいわれている。インスレーターは、染色体上の境界として機能することによりポジション効果を緩和する。しかし、mRNA蓄積量のいき値に由来するサイレンシングを緩和することはできないと思われる。このため本研究では、細胞内いき値を下回る活性発現と思われるCaMV35Sプロモーターを利用した。
【0010】
植物細胞へ導入する遺伝子DNAは、すべてバイナリーベクターpBI101に連結した。バイナリーベクター上に2個存在するボーダー配列にはさまれた領域のDNA(T-DNA)領域には、形質転換細胞を選抜するためのカナマイシン耐性遺伝子が予め組み込まれている。作製したバイナリープラスミドを以下に列挙し、各プラスミドのT-DNA領域を図1に示した。
(A)minip35S-GUS:(CaMV)35Sコアプロモーターの下流にGUS遺伝子を連結
(B)INS(+)-minip35S-GUS:mini35S-GUSの5’上流にウニアリルスルファターゼ(Ars)遺伝子のインスレーター配列(-2686から-2109)を順方向に連結
(C)INS(-)-minip35S-GUS:mini35S-GUSの5’上流に同インスレーター配列を逆方向に連結
(D)INS-minip35S-GUS-INS:mini35S-GUSの5’上流と3’下流に同インスレーター配列を順方向に連結(2つのインスレーターでGUS遺伝子を挟む)
(E)minip35S-GUS-INS:mini35S-GUSの3’下流に同インスレーター配列を順方向に連結
(F)500-minip35S-GUS:mini35S-GUSの5’上流にラムダファージゲノムDNAの500bpHindIIIDNA断片を連結(ネガティブコントロールとして使用)
【0011】
(タバコ培養細胞への導入)
各バイナリープラスミド(上記A-F)を、アグロバクテリウム感染法により、タバコ培養細胞(BY2)の染色体上に、Gynheung et al.,Plant.Physiol.(1985) 79:568-570)に記載されている方法により導入した。目的遺伝子が導入されたと考えられる形質転換候補細胞は、カナマイシン耐性の表現型によって選抜した。
0日目に継代培養7日目のBY2を取り改変LS培地に継代し、2日目にLB培地に目的の遺伝子を保持するアグロバクテリウムを植菌し、28℃で2日間暗黒で震盪培養した。4日目にBY2とアグロバクテリウムをシャーレに取って軽く揺すって混ぜ、パラフィルムを巻いて25℃で2日間、暗黒で共存培養した。6日目に共存培養液を回収し、700rpmで3分間遠心してアグロバクテリウムを含んだ上清を除いた。遠心を3~5回繰り返して、改変LS培地によりBY2を洗浄した。洗浄後、改変LS培地で適当に希釈し、改変LS培地に揺らして撒いた。パラフィルムを巻いて、25℃・暗黒で培養した。2~3週間後(実験開始から約1カ月目)、カルス化した細胞を新しい改変LSプレートに移し、25℃・暗黒で3~4週間培養しながら形質転換体を選抜した。その3~4週間後(実験開始から約2カ月目)、半円球に増殖した細胞を、カナマイシンとカルベニシリンを含む改変LS培地に移し、26℃・暗黒で震盪培養した。さらに2~3週間後(実験開始から約2カ月半目)、BY-2を取って、カナマイシンとカルベニシリンを含む改変LS培地に継代した。
【0012】
(ベータグルクロニダーゼ活性測定)
各遺伝子について独立した形質転換体を50クローンずつ取得し、ベータグルクロニダーゼ活性(GUS活性)の測定を行った
1mlの培養細胞を取り、4℃・1000rpmで3分間遠心し、上清を廃棄した。GUS可溶化バッファー(50mM NaH2 PO4 /Na2 HPO4pH7.0、10mM EDTA、0.1% トライトンX-100、0.1%サルコシル、10mM 2-メルカプトエタノール)を500μl加えて、氷中でホモゲナイズした。4℃・15000rpmで5分間遠心し、上清(粗酵素液)を採取して、100μlの粗酵素液に対して1mM 4-メチルウンベリフェリル-ベータ-D-グルクロニド(4MUG)を加えて、37℃で30分間反応させる。3mlの停止溶液(0.2M Na2 CO3 )を加えて反応を止めて、分光蛍光光度計で蛍光を測定した。
GUS活性の測定を行った際の発色パターンを図2から図7に、また、GUS活性の結果を定量化してまとめたものを表1に示す。表1においてGUS活性の強弱を、+++:強い、++:中程度、+:弱い、-:検出限界以下、で示す。表中の数値は、それぞれのGUS活性を示す形質転換個体数を示す。
【0013】
【表1】
JP0003777416B2_000002t.gif【0014】
(Arsトランスレーターによる、導入遺伝子発現の安定化)
minip35S-GUS(図1A)導入細胞では、GUS生成が検出できないか極めて低い個体(表1における+または-)が、42%存在した(図2)。これに対し、INS(+)-minip35S-GUS(図1B)導入細胞では50クローン全てが青色に染色された(表1の+++と++,図3)。INS-minip35S-GUS-INS(図1D)においても、ほぼ全てのクローンについて青色染色が見られたが(図4)、GUS生成の低いクローンが1個存在した。これに対して、minip35S-GUS-INS(図1E)導入細胞では、対照と比べて発現のばらつきに差が認められなかった(図5)。ネガティブコントロールとして用いた500-minip35S-GUS(図1F)導入細胞では、minip35S-GUS(図1A)導入細胞以上にGUS生成のばらつきが見られた(図6)。以上のことから、ウニインスレーターをトランスジーンの5’上流または5’上流と3’下流の二カ所に連結することによって、植物細胞の染色体に組み込まれたトランスジーンの発現を安定化できることが判った。これは、インスレーターによって染色体上の遺伝子発現に対するポジション効果が抑圧されたと考えられる。
【0015】
インスレーターは、方向性のあるエンハンサー遮断効果を示す。BY2細胞においても、インスレーターの方向が発現に影響を与えるかどうかを調べるために、INS(-)-minip35S-GUS(図1C)をBY2細胞に導入した。その結果、INS(+)-minip35S-GUS(図1B)導入細胞のGUS活性値とINS(-)-minip35S-GUS(図1C)導入細胞のGUS活性値との分布(各10個体)には差が認められなかった(図7)。したがって、インシュレーター配列は、挿入方向とは関係なく安定発現に寄与することが明らかとなった。また、minip35S-GUS(図1A)導入細胞におけるGUS活性の最高値は、INS(+)-minip35S-GUS(図1B)導入細胞およびINS(-)-minip35S-GUS(図1C)導入細胞のいずれのGUS活性をも上回っていた(図7)。これは、Arsインスレーターがエンハンサーとして下流遺伝子発現の増強に機能していないことを示している。
【0016】
(導入遺伝子のコピー数)
MARを用いた成功例のうち、導入されたコピー数が減少することにより安定発現が得られたとされる例がある。また、コピー数に依存した発現を示したという報告もある。このため、INS(+)-minip35S-GUS(図1B)を導入した11クローンについてGUS遺伝子をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、コピー数は1~5見られ、インスレーターの付加によるコピー数の減少は見られなかった(図8)。また、1コピーあたりのGUS活性も一定ではなく、コピー数に依存した発現を示していない。さらにバンドパターンから、インスレーターの付加によってT-DNAが染色体の特定(同じ)領域に導入された形跡は認められなかった。
【0017】
植物に対する遺伝子導入技術は、実際には植物体を宿主に用いて行われるため、タバコ培養細胞のみならず、植物体にインスレーターを導入する事を試みた。ここで、導入する植物として、ゴマノハグサ科に属する植物であるトレニア(torenia fournieri)を用いた。トレニアに導入するために、CaMV35SプロモーターにGUS遺伝子を連結した遺伝子(CaMV35S-GUS遺伝子)に、ウニアリルスルファターゼ(Ars)遺伝子由来のインスレーターを連結したバイナリープラスミドを構築した。構築した各プラスミドの構造を、図9に示した。
(A)対照として用いたCaMV35S-GUS:構築A
(B)CaMV35S-GUSの5’上流にインスレーターを連結した融合遺伝子:構築B
(C)CaMV35S-GUSの5’上流と3’下流にインスレーターを連結した融合遺伝子:構築C
【0018】
(トレニア植物体への導入)
これら3種のバイナリープラスドをアグロバクテリウム法によりトレニアに導入した。葉片テストによってカナマイシン抵抗性を示した形質転換個体について、4MUGを基質に用いてGUS活性の測定を行った。構築Aを導入した植物体9個体、構築Bを導入した植物体11個体、構築Cを導入した植物体12個体を用いて、GUS活性の平均値及びバラツキを検討した。なお、GUS活性の測定は、25℃、16時間日長条件下で1-2カ月毎に植替えながら育成したトレニア植物体の葉を用い、形質転換個体が再分化してから約1カ月後と約6カ月後の2回測定した。
【0019】
(形質転換トレニア植物体のGUS活性)
その結果、1回目、2回目の測定共に、個体間でのGUS活性値にバラツキが見られたが、インスレーターを有する融合遺伝子を導入した形質転換体の方が、対照遺伝子導入個体に比べて活性レベルが上昇する傾向が認められた。平均値でみると、再分化1カ月後の1回目の測定結果は以下の通りであった。
構築A:57(nmoles 4MU/mg protein/30min)
構築B:141(nmoles 4MU/mg protein/30min)
構築C:182(nmoles 4MU/mg protein/30min)
また、再分化6カ月後の2回目の測定結果は以下の通りであった。
構築A:90(nmoles 4MU/mg protein/30min)
構築B:193(nmoles 4MU/mg protein/30min)
構築C:282(nmoles 4MU/mg protein/30min)
【0020】
更に、2回目の測定のGUS活性分布を図10に示した。個体毎のGUS活性値の分布を検討したところ、対照実験である構築Aでは50~100(nmoles 4MU/mg protein/30min)、5’上流にインスレーターが結合した構築Bでは100~200(nmoles 4MU/mg protein/30min)、5’上流及び3’下流にインスレーターが結合した構築Cでは200~500(nmoles 4MU/mg protein/30min)の範囲のGUS活性を示す個体が最も多かった。図10より、インスレーターが連結している融合遺伝子においてはGUS活性値の高い個体の割合が大きい事が認められた。よって、ウニ由来のインスレーターが遺伝子発現を安定化していることが、形質転換トレニア植物体においても示された。
【0021】
【発明の効果】
インスレーターは植物細胞内で機能して導入遺伝子の発現を安定化し、本発明によりトランスジーンを植物体の中で安定に発現させることができる。
【0022】
【配列表】
JP0003777416B2_000003t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】 タバコ培養細胞に導入したバイナリープラスミドのT-DNAの構造を、模式的に示した図である。
【図2】 minip35S-GUSを導入したBY2細胞(各50個体)のGUS活性染色である。
【図3】 INS(+)-minip35S-GUSを導入したBY2細胞(各50個体)のGUS活性染色である。
【図4】 INS-minip35S-GUS-INSを導入したBY2細胞(各50個体)のGUS活性染色である。
【図5】 minip35S-GUS-INSを導入したBY2細胞(各50個体)のGUS活性染色である。
【図6】 500-minip35S-GUSを導入したBY2細胞(各50個体)のGUS活性染色である。
【図7】 構築した各遺伝子DNAを導入したBY2細胞のGUS活性の測定値である。
【図8】 INS(+)-minip35S-GUS遺伝子を導入したBY2細胞の、GUS遺伝子のDNA断片をプローブとして用いた、サザンハイブリダイゼーションの結果である。
【図9】 トレニアに導入したバイナリープラスミドのT-DNAの構造を、模式的に示した図である。
【図10】 形質転換トレニアにおけるGUS活性の分布を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9