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明細書 :有機発光性材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4660767号 (P4660767)
公開番号 特開2007-231090 (P2007-231090A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年3月30日(2011.3.30)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 有機発光性材料
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
C07F   7/10        (2006.01)
C07F   7/12        (2006.01)
FI C09K 11/06 660
H05B 33/14 B
C07F 7/08 W
C07F 7/10 S
C07F 7/12 W
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2006-052614 (P2006-052614)
出願日 平成18年2月28日(2006.2.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 掲載者名:社団法人日本化学会,掲載年月日:平成18年2月20日,掲載アドレス http://www.chemistry.or.jp/nenkai/86haru/prog-86.pdf,講演番号1K3-41に発表
審査請求日 平成20年12月5日(2008.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】山口 茂弘
【氏名】犬飼 裕子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】小久保 敦規
参考文献・文献 特開2005-154410(JP,A)
国際公開第2004/018488(WO,A1)
調査した分野 C09K 11/00-11/89
C07F 7/00-7/30
H05B 33/00-33/28
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ベンゼン又は置換ベンゼンに2つのケイ素置換基がパラ位に導入された、下記式(1)で表される化合物を含有する、有機発光性材料。
【化1】
JP0004660767B2_000012t.gif
(式(1)中、Ar1は、ベンゼン又は置換ベンゼンであり、
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、アリール基、置換アリール基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基及び1価の置換オリゴ複素環基からなる群より選ばれた1種であり、
1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、置換アリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種である。)
【請求項2】
Ar2及びAr3は、フェニル基、置換フェニル基及び硫黄原子又は窒素原子をヘテロ原子とする1価の複素環基からなる群より選ばれた1種である、請求項1に記載の有機発光性材料。
【請求項3】
1~R6は、炭素数1~12のアルキル基又はフェニル基である、請求項1又は2に記載の有機発光性材料。
【請求項4】
固体状態で用いる、請求項1~3のいずれかに記載の有機発光性材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機発光性材料に関し、詳しくはベンゼン又は置換ベンゼンに2つのケイ素置換基がパラ位に導入された化合物を主体とする新規な有機発光性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性材料として有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)や有機レーザ、化学センサなどに利用可能な優れた有機化合物を開発しようとする試みがなされている。このような有機化合物として、基本骨格中にケイ素が導入されたπ共役化合物が種々知られている。例えば、特許文献1には、新規な有機発光性材料として、シロール環を基本骨格に導入した多環縮環型π共役有機材料が山口らにより報告されている。

【特許文献1】特開2005-154410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
π共役化合物を発光性材料として実用化する場合には、その特性として、固体状態で良好な量子収率を持つことが求められることが多い。しかしながら、一般に、π共役化合物を固体状態にすると、励起会合体(エキシマー)を形成することにより長波長シフトした幅広い蛍光スペクトルを与え、その量子収率は溶液状態に比べて著しく低下してしまう。そのため、固体状態で高い量子収率を有する有機発光性材料は極めて限られているのが現状であり、真に優れた特性を有する新規な発光性材料の開発が望まれていた。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、新規な有機発光性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記した課題について検討したところ、エキシマー発光を利用することに着目した。そして、側鎖としてシリル基を導入したケイ素含有化合物において、固体状態において高い量子収率でエキシマー発光することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の有機発光性材料は、ベンゼン又は置換ベンゼンに2つのケイ素置換基がパラ位に導入された、下記式(1)で表される化合物を主体とするものである。
【0007】
【化1】
JP0004660767B2_000002t.gif
(式(1)中、Ar1は、ベンゼン又は置換ベンゼンであり、
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、アリール基、置換アリール基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基及び1価の置換オリゴ複素環基からなる群より選ばれた1種であり、
1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、置換アリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種である。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の有機発光性材料は、ベンゼン又は置換ベンゼンに2つのケイ素置換基がパラ位に導入された、上記式(1)で表される化合物を主体とするものである。この有機発光性材料は、π共役骨格の側鎖として立体的にかさ高いケイ素置換基-SiR123,-SiR456を有するため、π共役骨格が非平面性構造をとると考えられる。また、π共役様式が変化して遷移モーメントや発光波長に摂動が加わると推察される。それらの結果、上記式(1)で表される化合物は良好な量子収率を有し、発光性材料として適している。
【0009】
ここで、ケイ素置換基とは、式(1)中、-SiR123及び-SiR456を表す。また、ここでいう「パラ位」とは、ベンゼン環又は置換ベンゼン環上の2つの置換基の相対位置が1,4位にあることを示す。
【0010】
Ar1としては、ベンゼン又は置換ベンゼンが好ましい。また、Ar2及びAr3としては、アリール基、置換アリール基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基、1価の置換オリゴ複素環基などが挙げられる.特に、π共役系の分子間の距離を巧く制御するという観点から、好ましくはフェニル基、置換フェニル基及び硫黄原子又は窒素原子をヘテロ原子とする1価の複素環基からなる群より選ばれた1種であり、例えば、フェニル基や全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロフェニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基などが挙げられる。このような基を用いることでπ共役系の分子間の距離を適度なものにし、量子収率の向上を図ることができる。また、Ar2及びAr3は、目的とする発光波長に応じて適宜選択するとしてもよい。例えば、Ar2及びAr3をフェニル基やフルオロフェニル基としたときの発光波長は430nm付近であるのに対し、Ar2及びAr3をベンゾチエニル基としたときの発光波長は475nm付近まで長波長シフトする。このように、用いるAr2及びAr3を適宜選択することにより、発光波長のチューニングを行うことができる。
【0011】
1~R6としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、置換アリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基、ハロゲン原子などが挙げられるが、好ましくは炭素数1~12のアルキル基又はアリール基であり、量子収率の観点からより好ましくは炭素数1~12のアルキル基又はフェニル基であり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。これは、その立体障害の影響によりエキシマー発光するのに適当な分子間距離が保たれるためと推察される。
【0012】
本発明の有機発光性材料は、溶液状態で用いても固体状態で用いてもよいが、エキシマー発光を放出する点において固体状態で用いるのが好ましい。エキシマー発光が起きることにより、励起極大波長に比べて発光極大波長を長波長側に大きくシフトさせることができる。具体的には、上記式(1)の有機発光性材料は、励起極大波長が短い(例えば、330~355nm)のに対し発光極大波長は可視領域(例えば、400~480nm)に現れる、という優れた蛍光特性を有する。そのため、有機ELや有機レーザ、化学センサ、蛍光発光材などに有用である。
【0013】
次に、本発明の有機発光性材料に用いる上記式(1)の化合物の合成ルートについて説明する。上記式(1)の化合物は、例えば、2,5-ジブロモ-1,4-ジヨードベンゼンを出発原料として合成することができる。すなわち、まず、2,5-ジブロモ-1,4-ジヨードベンゼンとトリメチルシリル基を有するアセチレン化合物とを公知の方法(J.Organomet.Chem.2002,653,215.)でカップリングさせたのち、有機金属試薬を用いることにより臭素原子を金属に置換したあと、これをR3SiClやR3SiOTf(Rは上述のR1~R3又はR4~R6に対応するもの)などの有機ケイ素試薬で捕捉することによりベンゼン環にケイ素置換基を導入する。このような有機金属試薬としては、例えば、有機リチウム(n-BuLi,sec-BuLi,tert-BuLiなど)やアルキルグリニャール試薬、アルキルマグネシウムアミド、アルキル亜鉛試薬などを用いることができる。続いて、この中間体をK2CO3などの塩基性条件下で脱シリル化することにより、下記式(2)で表される化合物が合成される。この化合物とハロゲン化アリールとをパラジウム触媒、ヨウ化銅及びアミンの存在下でカップリングさせることにより上記式(1)の化合物を合成する、というルートが考えられる。なお、反応溶媒、反応温度、反応時間、使用する基質や試薬のモル濃度などの反応条件は、使用する試薬等に応じて適宜設定すればよい。
【0014】
【化2】
JP0004660767B2_000003t.gif
(式(2)中、Ar4は、ベンゼン又は置換ベンゼンであり、
7~R12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基、1価の複素環基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種である。)
【0015】
上記式(1)及び(2)の化合物において、Ar2及びAr3,R1~R12として列記した物質のうち、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールスルフォニルオキシ基のアリールとしては、例えばフェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基などが挙げられ、オリゴアリール基としては、ビフェニル基、ターフェニル基が挙げられ、1価の複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、キノリル基などが挙げられ、1価のオリゴ複素環基としては、ビチエニル基、ターチエニル基、チエニルチアゾリル基、チエニルピリジル基などが挙げられ、アルキル基やアルキルスルフォニルオキシ基のアルキルとしてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基,n-ヘキシル基,トリフルオロメチル基などが挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられ、アルキルチオ基としてはメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。
【0016】
上記式(1)及び(2)の化合物において、Ar1~Ar4,R1~R12として列記した物質のうち、接頭語に「置換」の付いているものの具体的な置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ヘキシル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの分岐があってもよいアルキル基;シクロペンチル基やシクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロパギル基、フェニルアセチニル基などのアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基やアリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基やフェニルアセチルオキシ基などのアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基などのアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基などのパーフルオロ基およびさらに長鎖のパーフルオロ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基などのアミノ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基などのボリル基;アセチル基やベンゾイル基などのカルボニル基;アセトキシ基やベンゾイルオキシ基などのカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基やフェニルスルフィニル基などのスルフィニル基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;フェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基などのアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基などのヘテロ環基などが挙げられる。そのほかに、ニトロ基、ホルミル基、ニトロソ基、ホルミルオキシ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアノ基などもあげられる。さらに、これらの置換基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
【0017】
本発明の有機発光性材料は、例えば有機EL素子や有機レーザ、化学センサなどの発光性材料として用いることができる。ここでは、一例として、有機EL素子の発光性材料として用いる場合について説明する。有機EL素子は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3つの薄膜を2つの電極で挟んだ構造であり、陽極から注入された正孔が正孔輸送層を介して発光層に入り、陰極から注入された電子が電子輸送層を介して発光層(発光性材料を主体とする層)に入ることにより、正孔と電子とが発光層中で再結合して発光する。有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を公知の蒸着法やスピンコート法で薄膜とすることにより形成する。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、各層を構成すべき材料の種類や分子累積膜の目的とする結晶構造及び会合構造などにより異なるが、例えば、ボート加熱温度50~400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/s、基板温度-50~+300℃、膜厚5~5000nmの範囲で適宜選択してもよい。
【0018】
次に、本発明の有機発光性材料を用いて有機EL素子を作製する方法を説明する。適当な基板上に陽極物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10~200nmの範囲の膜厚になるように蒸着法により形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔輸送材料からなる薄膜を蒸着法により形成させて正孔輸送層とする。続いて、形成した正孔輸送層の上に本発明の有機発光性材料からなる薄膜を蒸着法により形成させて発光層とし、更にその上に電子輸送材料からなる薄膜を蒸着法により形成させて電子輸送層とする。そして、形成した電子輸送層の上に陰極物質からなる薄膜を1μm以下の膜厚になるように蒸着法により形成させて陰極を作製することにより、有機EL素子が得られる。なお、上述した有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極の順に作製してもよい。
【0019】
有機EL素子の陽極は、例えば、仕事関数の大きな電極材料から構成されていてもよく、具体的には、金などの金属、ヨウ化銅などの合金、インジウムチンオキシド、酸化亜鉛などの誘電性透明材料から構成されていてもよい。有機EL素子の陰極は、例えば、仕事関数の小さな電極材料から構成されていてもよく、具体的には、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム合金、アルミニウム/リチウム混合物、マグネシウム/銀混合物、インジウムから構成されていてもよい。有機EL素子の正孔輸送層は、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、TPD、芳香族第3級アミンを主鎖又は側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサンやN,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニルなどのトリアリールアミン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、ポリシランなどであってもよい。有機EL素子の電子輸送層は、例えば、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)やチエニルチアゾールのポリマー、1,3,4-オキサゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール誘導体などであってもよい。
【0020】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0021】
(1)2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンの合成
2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジエチニルベンゼン(下記化3の化合物1,99mg,0.37mmol)、ヨードベンゼン(60μL,0.53mmol)、Pd(PPh34(5.1mg,4.4μmol)、CuI(1.8mg,9.4μmol)を脱水、脱気したトルエン(3.0mL)とi-Pr2NH(1.0mL)とに溶かし、100℃で8時間撹拌した。エーテルで抽出し、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した後、溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(SiO2,ヘキサン/エチルアセテート=20/1,Rf=0.55,富士シリシア製 PSQ 100B)で分離し、さらに中圧液体クロマトグラフィ(SiO2,ヘキサン/エチルアセテート=20/1,ヤマゼン製 ultrapack SI-40B)により,95mg(0.25mmol)の2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼン(下記化3の化合物2)を無色固体として収率69%で得た。なお、微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は209.0-210.5℃であった。化合物2のスペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 GSX-270(270MHz))を用い、13C-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(100MHz)を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。 1H NMR(CDCl3) δ 7.68 (s, 2H), 7.56-7.53 (m, 4H), 7.40-7.36 (m, 6H), 0.44 (s, 18H); 13C NMR (CDCl3) δ 142.7, 137.8, 131.3, 128.5, 128.4, 127.2, 123.4, 93.5, 91.4, -1.1; EI MS m/z 422 (M+), 407 ([M-CH3]+); HRMS (EI): 422.1907 (M+), calcd. for C28H30Si2: 422.1886.単位ppm.
【0022】
【化3】
JP0004660767B2_000004t.gif

【0023】
(2)X線結晶構造解析
このように合成した化合物2についてX線結晶構造解析を行った。その結果を図1に示す。なお、図1のうち(a)は1分子におけるX線結晶構造を示し、(b)は複数分子におけるX線結晶構造を示す。図1(a)に示すように、化合物2のπ共役骨格中のベンゼン環のうちケイ素置換基が導入されたベンゼン環とアセチレン結合を介してこのベンゼン環に結合しているベンゼン環とが二面角31.0°を形成しており、π共役骨格にねじれが生じていることが確認された。これは、3つのメチル基が導入されたシリル置換基により立体障害が生じ、この立体障害により2つのベンゼン環の間にねじれが生じたものと推定される。なお、この化合物2の立体構造は、ケイ素置換基により強固に固定されているといえる。また、図1(b)から分かるように、化合物2のパッキング構造は、分子が直交した配向を取ることが示された。
【0024】
(3)スピンコート膜と結晶との作製
化合物2について固体状態での蛍光量子収率を検討するにあたり、得られた化合物2のスピンコート膜と結晶とを作製した。このうち、スピンコート膜については、化合物2の濃度を約1.0mg/mLとしたCHCl3溶液を調製し、この溶液0.3mLをスピンコータ(ミカサ社製、1H-D7)上に置いた石英プレートの上に滴下し、これを1000rpmで60秒回転させたあとさらに300rpmで20秒回転させることにより作製した。また、結晶は、精製後、再結晶することにより得た。
【0025】
(4)スペクトルの測定
得られたスピンコート膜及び結晶について、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV-3150)を用いて吸収スペクトルを測定するとともに、分光蛍光光度計(浜松ホトニクス社製,C4780)を用いて蛍光スペクトルの測定を行った。表1にその測定結果を示す。表1に示すように、スピンコート膜では329nmに吸収極大を示し、406nmに発光極大を示した。また、結晶ではさらに長波長に発光極大をもち、その値は431nmであった。一方、固体状態におけるケイ素置換基の導入の効果を確認するために、化合物2をTHFに溶かした溶液(2.94×10-5M)を調製し、同様に測定を行ったところ、溶液状態では、350nmに吸収極大を示し、358nmに発光極大を示した。これらの結果から、溶液状態のときにはストークスシフトが8nmと小さいのに対し、固体状態ではスピンコート膜で77nmの大きなストークスシフトが見られた。このことから、固体状態での発光はエキシマー発光によるものであると言える。
【0026】
【表1】
JP0004660767B2_000005t.gif

【0027】
(5)蛍光量子収率の測定
得られたスピンコート膜及び結晶について、量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、C9920-01)を用いて蛍光量子収率(φ)の測定を行った。その結果、スピンコート膜でφ=0.42と比較的高く、結晶ではφ=0.23であった(表1参照)。これらの値は発光性材料として十分な量子収率であり、化合物2は、固体状態のうち特にスピンコート膜において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【実施例2】
【0028】
(3)2,5-ビス(トリヘキシルシリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンの合成
2,5-ビス(トリヘキシルシリル)-1,4-ジエチニルベンゼン(下記化4の化合物4,176mg,0.254mmol)、ヨードベンゼン(60μL,0.53mmol)、Pd(PPh34(5.8mg,5.1μmol)、CuI(1.1mg,5.1μmol)を脱水、脱気したトルエン(1.5mL)とi-Pr2NH(0.5mL)とに溶かし、100℃で17時間撹拌した。エーテルで抽出し、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した後、溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(SiO2,ヘキサン,Rf=0.75,富士シリシア製 PSQ 100B)で分離し、更にGPC(CHCl3)(JAIGEL 1H,2Hカラムを備えたJAILAC-908)で精製を行い、194mg(0.230mmol)の2,5-ビス(トリヘキシルシリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼン(下記化4の化合物5)を黄色固体として収率90%で得た。スペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(400MHz))を用い、13C-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(100MHz))を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。 1H NMR(CDCl3) δ 7.60 (s, 2H), 7.55-7.53 (m, 4H), 7.40-7.35 (m, 6H), 1.31-1.23 (m, 48H), 1.01-0.97 (m, 12H), 0.85-0.82 (m, 18H); 13C NMR (CDCl3) δ 140.6, 139.0, 131.3, 128.4, 128.2, 127.3, 123.6, 92.9, 91.8, 33.4, 31.4, 23.9, 22.6, 14.1, 12.0; EI MS m/z 843 (M+), 758 ([M-C6H13]+), 673 ([M-2C6H13]+).単位ppm.
【0029】
【化4】
JP0004660767B2_000006t.gif

【0030】
(2)スペクトル及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(3)と同様にして化合物5のスピンコート膜を作製し、上述の実施例1の(4)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を測定した。その結果、表1に示すように、スピンコート膜では409nmに発光極大を示した。化合物5においても、上述の実施例1と同様に、固体状態では大きなストークスシフトが見られた。また、上述の実施例1の(5)と同様にして蛍光量子収率の測定を行ったところ、量子収率は、スピンコート膜でφ=0.58であった(表1参照)。この値は発光性材料として十分な量子収率であり、化合物5は、固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【実施例3】
【0031】
(1)2,5-ビス(トリイソプロピルシリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンの合成
2,5-ビス(トリイソプロピルシリル)-1,4-ジエチニルベンゼン(下記化5の化合物6,98mg,0.23mmol)、ヨードベンゼン(52μL,0.47mmol)、Pd(PPh34(2.7mg,2.3μmol)、CuI(1.0mg,5.3μmol)を脱水、脱気したトルエン(3.0mL)とi-Pr2NH(1.0mL)とに溶かし、100℃で12時間撹拌した。濾過により不要物を除去した後、ろ液を減圧下濃縮した。シリカゲルカラム (トルエン)に通した後、トルエンを用いて再結晶を行った。濾過により結晶を得た後、そのろ液をGPC(CHCl3)で精製し、122mg(0.207mmol)の2,5-ビス(トリイソプロピルシリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼン(下記化5の化合物7)を無色固体として収率89%で得た。なお、微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は215.5-223.0℃であった。スペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(400MHz))を用い、13C-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(100MHz))を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。 1H NMR(CDCl3) δ 7.70 (s, 2H), 7.50 (dd 3JHH = 7.6 Hz, 4JHH = 1.7 Hz, 4H), 7.39-7.34 (m, 6H), 1.76 (sept, JHH = 7.6 Hz, 6H), 1.17 (d, JHH = 7.6 Hz, 36H); 13C NMR (CDCl3) δ 140.9, 138.0, 131.1, 128.4, 128.2, 127.9, 123.7, 93.0, 91.7, 19.1, 12.0; EI MS m/z 590 (M+), 547 ([M-C3H7]+), 505 ([M-2C3H7]+); HRMS (EI): 590.3735 (M+), calcd. for C40H54Si2: 590.3764.単位ppm.
【0032】
【化5】
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【0033】
(2)X線結晶構造解析
このように合成した化合物7についてX線結晶構造解析を行った。その結果を図2に示す。なお、図2のうち(a)は1分子におけるX線結晶構造を示し、(b)は複数分子におけるX線結晶構造を示す。図2に示すように、化合物7のπ共役骨格中のベンゼン環のうちケイ素置換基が導入されたベンゼン環とアセチレン結合を介してこのベンゼン環に結合しているベンゼン環とが二面角57.2°を形成しており、π共役骨格にねじれが生じていることが確認された。これは、3つのイソプロピル基が導入されたケイ素置換基により立体障害が生じ、この立体障害により2つのベンゼン環の間にねじれが生じたものと推定される。この化合物7のπ共役骨格のねじれ構造は、ケイ素置換基により強固に固定されてるといえる。また、化合物7のパッキング構造は、図2(b)に示すように、分子が平行に並んだ構造であり、π共役骨格の最近接原子間距離は5.1Åであった。ここで、通常のπ共役分子のπスタッキングの距離が3.4-3.5Å程度であることを考えると、化合物7の構造における分子間相互作用は極めて弱いことが示唆される。
【0034】
(3)スペクトル及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(3)と同様にして化合物7のスピンコート膜と結晶とを作製し、上述の実施例1の(4)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を測定した。また、上述の実施例1の(5)と同様にして蛍光量子収率の測定を行った。その結果、スピンコート膜では325nmに吸収極大を示し、407nmに発光極大を示した。また、発光極大は結晶ではさらに長波長シフトし、447nmであった(表1参照)。このように、固体状態ではスピンコート膜で82nmという大きなストークスシフトが見られたことから、固体状態での発光はエキシマー発光によるものであると言える。また、蛍光量子収率φは、スピンコート膜ではφ=0.52であり、結晶ではφ=0.40であった。これらの値は量子収率として良好な値であり、化合物7は固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【実施例4】
【0035】
(1)2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス(2-ピリジルエチニル)ベンゼンの合成
化合物1(151mg,0.561mmol)、2-ブロモピリジン(115μL,1.21mmol)、Pd(PPh34(6.3mg,5.4μmol)、CuI(2.3mg,12μmol)を脱水、脱気したトルエン(6.0mL)とi-Pr2NH(2.0mL)とに溶かし、80℃で17時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、ショートカラム (SiO2,トルエン,Merck製 Silica gel 60F264)に通し、さらにGPC(CHCl3)(JAIGEL 1H,2Hカラムを備えたJAILAC-908)で分離精製し、161mg(0.379mmol)の2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス(2-ピリジルエチニル)ベンゼン(下記化6の化合物8)を無色固体として収率68%で得た。なお、微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は236.9-238.2℃であった。スペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 GSX-270(270MHz))を用い、13C-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(100MHz))を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。 1H NMR(CDCl3) δ 8.66 (ddd, 3JHH = 4.9 Hz, 4JHH = 2.0 Hz, 5JHH = 1.0 Hz, 2H), 7.80 (s, 2H), 7.70 (ddd, 3JHH = 7.7 Hz, 4JHH = 7.7 Hz, 5JHH = 2.0 Hz, 2H), 7.51 (ddd, 3JHH = 7.7 Hz, 4JHH = 1.0 Hz, 5JHH = 1.0 Hz, 2H), 7.26 (ddd, 3JHH = 7.7 Hz, 4JHH = 4.9 Hz, 5JHH = 1.0 Hz, 2H), 0.45 (s, 18H); 13C NMR (CDCl3) δ 150.3, 143.5, 143.4, 138.4, 136.2, 126.8, 126.8, 122.8, 92.9, 90.9, -1.1; EI MS m/z 424 (M+), 409 ([M-CH3]+); HRMS (EI): 424.1781 (M+), calcd. for C26H28N2Si2: 424.1791.単位ppm.
【0036】
【化6】
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【0037】
(2)スペクトル及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(3)と同様にして化合物8のスピンコート膜を作製し、上述の実施例1の(4)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を測定した。その結果、表1に示すように、スピンコート膜では312nmに吸収極大を示し、374nmに発光極大を示した。化合物8においても、上述の実施例1と同様に、固体状態では大きなストークスシフトが見られた。また、上述の実施例1の(5)と同様にして蛍光量子収率の測定を行った。その結果、量子収率は、スピンコート膜でφ=0.21であった(表1参照)。
【実施例5】
【0038】
(1)2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス(ペンタフルオロフェニルエチニル)ベンゼンの合成
化合物1(138mg,0.511mmol)、ペンタフルオロヨードベンゼン(0.143mL,1.07mmol)、Pd(PPh34(5.9mg,5.1μmol)、CuI(1.8mg,9.5μmol)を脱水、脱気したトルエン(3.0mL)とi-Pr2NH(1.0mL)との混合溶媒に溶かし、100℃で16時間撹拌した。反応混合物を濾過した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラム (トルエン,Merck製 Silica gel 60F264)に通した後、トルエンを用いて再結晶を行った。得られた結晶を濾過により集めた後、そのろ液をGPC(CHCl3)(JAIGEL 1H,2Hカラムを備えたJAILAC-908)で精製し、116mg(0.193mmol)の2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス(ペンタフルオロフェニルエチニル)ベンゼン(下記化7の化合物9)を無色固体として収率38%で得た。なお、微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は212.8-213.8℃であった。スペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(400MHz))を用い、19F-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 JMN-AL400(376MHz)を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。 1H NMR(CDCl3) δ 7.68 (s, 2H), 7.56-7.53 (m, 4H), 7.40-7.36 (m, 6H), 0.44 (s, 18H); 19F NMR (CDCl3) δ -135.2 (dd, 3JFF = 21.4 Hz, 5JFF = 6.1 Hz, 4F), -151.8 (t, 3JFF = 21.3 Hz, 2F), -161.2 (ddd, 3JFF = 21.4 Hz, 3JFF = 21.3 Hz, 5JFF = 6.1 Hz, 4F); EI MS m/z 602 (M+), 587 ([M-CH3]+); HRMS (EI): 602.0955 (M+), calcd. for C28H20F20Si2: 602.0944.単位ppm.
【0039】
【化7】
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【0040】
(2)スペクトル及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(3)と同様にして化合物9の結晶を作製し、上述の実施例1の(4)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を測定した。その結果、表1に示すように、スピンコート膜では352nmに吸収極大を示し、405nmに発光極大を示した。また、結晶ではわずかに長波長に発光極大をもち、その値は409nmであった。化合物9においても、上述の実施例1と同様に、固体状態では大きなストークスシフトが見られた。また、上述の実施例1の(5)と同様にして蛍光量子収率の測定を行った。その結果、量子収率は、スピンコート膜でφ=0.47であり、結晶ではφ=0.56であった(表1参照)。これらの値は発光性材料として十分な量子収率であり、化合物9は、固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【実施例6】
【0041】
(1)2,5-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-1,4-ビス(ペンタフルオロフェニルエチニル)ベンゼンの合成
2,5-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-1,4-ジエチニルベンゼン(下記化8の化合物10,252mg,0.711mmol)、ペンタフルオロヨードベンゼン(0.21mL,1.57mmol)、Pd(PPh34(8.5mg,7.4μmol)、CuI(2.7mg,14μmol)を脱水、脱気したトルエン(6.0mL)とi-Pr2NH(2.0mL)との混合溶媒に溶かし、100℃で60時間撹拌した。不溶物をろ過により除去した後、そのろ液を減圧下濃縮した。得られた混合物をシリカゲルカラム(SiO2,トルエン,Merck製 Silica gel 60F264)に通し、さらにGPC(CHCl3)(JAIGEL 1H,2Hカラムを備えたJAILAC-908)により精製し、94mg(0.137mmol)の2,5-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-1,4-ビス(ペンタフルオロフェニルエチニル)ベンゼン(下記化8の化合物11)を無色固体として収率19%で得た。なお、微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は233.5-234.7℃であった。スペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 GSX-270(270MHz))を用い、13C-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 JMN-AL400(100MHz))を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。1H NMR(CDCl3) δ 7.73 (s, 2H), 0.96 (s, 18H), 0.44 (s, 12H); 13C NMR (CDCl3) δ 142.7, 137.8, 131.3, 128.5, 128.4, 127.2, 123.4, 93.5, 91.4, -1.1; EI MS m/z 686 (M+), 671 ([M-CH3]+), 629 ([M-C4H9]+); HRMS (EI): 686.1887 (M+), calcd. for C34H32F10Si2: 686.1883.単位ppm.
【0042】
【化8】
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【0043】
(2)スペクトル及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(3)と同様にして化合物11の結晶を作製し、上述の実施例1の(4)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を測定した。その結果、表1に示すように、スピンコート膜では361nmに吸収極大を示し、417nmに発光極大を示した。また、結晶ではさらに長波長に発光極大をもち、その値は431nmであった。化合物11においても、上述の実施例1と同様に、固体状態では大きなストークスシフトが見られた。また、上述の実施例1の(5)と同様にして蛍光量子収率の測定を行った。その結果、量子収率は、スピンコート膜でφ=0.39であり、結晶ではφ=0.41であった(表1参照)。これらの値は発光性材料として十分な量子収率であり、化合物11は、固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【実施例7】
【0044】
(1)2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス[(2-ベンゾチエニル)エチニル]ベンゼンの合成
化合物1(202mg,0.747mmol)、2-ヨード-ベンゾ[b]チオフェン(405mg,1.56mmol)、Pd(PPh34(9.5mg,8.2μmol)、CuI(4.1mg,22μmol)を脱水、脱気したトルエン(4.5mL)とi-Pr2NH(1.5mL)とに溶かし、100℃で17時間撹拌した。不溶物をろ過により除去した後、そのろ液を減圧下濃縮した.得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(SiO2,トルエン,Merck製 Silica gel 60F264)により精製し、397mg(0.742mmol)の2,5-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ビス[(2-ベンゾチエニル)エチニル]ベンゼン(下記化9の化合物12)を黄色固体として収率99%で得た。なお、微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は274.0-275.7℃であった。スペクトルデータは次のとおりである。なお、1H-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(400MHz))を用い、13C-NMRは、核磁気共鳴装置(JEOL製 A-400(100MHz))を用いて測定した。マススペクトル(EI)は、高性能二重収束質量分析計(JEOL製 JMS700)を用いて測定した。反応は、すべて乾燥させた容器を用いてアルゴン中にて行った。 1H NMR(CDCl3) δ 7.81-7.77 (m, 4H), 7.71 (s, 2H), 7.52 (d, 3JHH = 0.5 Hz, 2H), 7.41-7.36 (m, 4H), 0.46 (s, 18H); 13C NMR (CDCl3) δ 143.2, 140.4, 139.2, 137.6, 128.4, 126.9, 125.5, 124.8, 123.8, 123.2, 122.0, 96.9, 87.7, -1.1; EI MS m/z 534 (M+), 519 ([M-CH3]+); HRMS (EI): 534.1346 (M+), calcd. for C32H30S2Si2: 534.1327.単位ppm.
【0045】
【化9】
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【0046】
(2)スペクトル及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(3)と同様にして化合物12のスピンコート膜と結晶とを作製し、上述の実施例1の(4)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を測定した。また、上述の実施例1の(5)と同様にして蛍光量子収率の測定を行った。その結果、スピンコート膜で403nmに吸収極大を示し、436nmに発光極大を示した(表1参照)。また,結晶では発光極大はさらに長波長シフトし,477nmであった.このように、固体状態では大きなストークスシフトが見られたことから、固体状態での発光はエキシマー発光によるものであると言える。また、蛍光量子収率φは、スピンコート膜でφ=0.32であり、結晶ではφ=0.51であった。この値は量子収率として良好な値であり、化合物12は固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の有機発光性材料は、その発光特性を利用して、有機ELや有機レーザ、化学センサ、蛍光発光材などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】化合物2のX線結晶解析結果の説明図である。
【図2】化合物7のX線結晶解析結果の説明図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1