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明細書 :リチウムイオン伝導性複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4899043号 (P4899043)
公開番号 特開2007-059092 (P2007-059092A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
発明の名称または考案の名称 リチウムイオン伝導性複合体
国際特許分類 H01B   1/06        (2006.01)
H01M  10/0565      (2010.01)
C08L  71/02        (2006.01)
C08K   5/541       (2006.01)
FI H01B 1/06 A
H01M 10/00 110
C08L 71/02
C08K 5/541
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2005-240113 (P2005-240113)
出願日 平成17年8月22日(2005.8.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)平成17年5月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集54巻1号」に発表、平成17年5月25日 社団法人高分子学会主催の「第54回高分子学会年次大会」において文書をもって発表。 (2)平成17年2月21日 京都工芸繊維大学工芸学部物質工学科発行の「平成16年度卒業研究発表要旨集」に発表、同日 京都工芸繊維大学主催の「京都工芸繊維大学工芸学部物質工学科 平成16年度卒業研究発表会」において文書をもって発表、平成17年4月15日 京都工芸繊維大学工芸学部物質工学科(欠損有り)
審査請求日 平成20年8月19日(2008.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】池田 裕子
【氏名】兎谷 和徳
【氏名】笠原 勇樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100083356、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 康夫
【識別番号】100104592、【弁理士】、【氏名又は名称】森住 憲一
審査官 【審査官】守安 太郎
参考文献・文献 特開平05-036441(JP,A)
特開平06-080884(JP,A)
調査した分野 H01B 1/06
C08K 5/541
C08L 71/02
H01M 10/0565
特許請求の範囲 【請求項1】
主鎖中に酸素含有セグメントを含む高分子、およびリチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物またはリチウムイオン点を有する変性有機ケイ素化合物を含んでなり、70~90℃の温度でアニールされたリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項2】
リチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物またはリチウムイオン点を有する変性有機ケイ素化合物がリチウムスルホニル基を有する有機ケイ素化合物またはリチウムスルホニル基を有する変性有機ケイ素化合物である請求項1に記載のリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項3】
さらに、低分子リチウム塩を含む請求項1または2に記載のリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項4】
前記酸素含有セグメントがポリエーテルセグメントである請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項5】
前記ポリエーテルセグメントを含む高分子がポリ(テトラメチレンオキシド)である請求項4に記載のリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項6】
前記ポリエーテルセグメントを含む高分子がポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンである請求項4に記載のリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項7】
前記ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンが脂肪族系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンである請求項6に記載のリチウムイオン伝導性複合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のリチウムイオン伝導性複合体を固体電解質に用いることを特徴とする固体電解質二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン伝導性を高分子複合体に関する。より詳細には、本発明は、良好なイオン伝導性およびリチウムイオン輸率を示すと共に、良好な機械的性質、成型加工性および電極との接着性を有する、高分子固体電解質として有用なリチウムイオン伝導性複合体に関する。
このようなリチウムイオン伝導性複合体を用いれば、高性能な固体リチウム二次電池を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は電気容量が大きく、電圧の高い電池であり、実用化されているが、リチウム金属の反応性が高く、電解液を用いた場合、安全性に問題を有する。かかる問題を解決するために、電解液の代わりにリチウムイオン伝導性を有する分岐ポリ(エチレンオキシド)を使用した高分子電解質よりリチウムポリマー電池などが作製され、使用されている(例えば非特許文献1参照)。
ポリ(エチレンオキシド)系高分子にリチウム塩を添加した高分子固体電解質が数多く報告されている。しかし、リチウムイオン輸率が小さいなどの問題点がある(例えば非特許文献2参照)。
リチウムイオンの輸率をあげる方法として、無機充てん剤を加える方法が報告されているが、無機充てん剤粒子を高分子との混合性よく複合化して有機/無機コンポジットを作るのは容易ではない(例えば非特許文献3、4参照)。
イオン性液体は、優れた電解質になると期待されているが(例えば非特許文献5参照)、液体のため液漏れの問題がある。
【0003】
また、特許文献1は、リチウムハロボロサイト粒子と酸素含有極性基を有する極性重合体からなる高分子複合化電解質を開示しているが、電解質としての性能がさらに向上した高分子固体電解質が求められている。
【0004】
特許文献2は、ポリ(エチレンオキシド)とLiS-SiS系非晶質を主成分とするリチウムイオン伝導性有機-無機コンポジットを開示しているが、LiS-SiS系非晶質は大気中では不安定であって失活するので、特殊な環境下でしか取り扱うことができず、このコンポジットは工業的な固体二次電池の製造に適しているとは言えない。

【特許文献1】特開2003-272438号公報
【特許文献2】特開2001-316583号公報
【非特許文献1】池田裕子:分岐高分子を用いたリチウムイオン伝導性アモルファスマトリックス,高分子論文集,57,No.12,761-769(2000)
【非特許文献2】A.Nishimoto,K.Agehara,N.Furuya,T.Watanabe,M.Watanabe,Macromolecules,32,1541-1548(1999)
【非特許文献3】F.Croce,L.Peri,B.Scrosati,F.Serraino-Fiory,E.Plichta,M.A.Hendrickson,Electrochimica Acta,46,2457-2461(2001)
【非特許文献4】F.Forsyth,D.R.MacFarlane,A.Best,J.Adebahr,J.Jacobsson,A.J.Hill,Solid State Ionics,147,203-211(2002)
【非特許文献5】H.Every,A.G.Bishop,M.Forsyth,D.R.MacFarlane,Electrochimica Acta,45,1279-1284(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好なリチウムイオン伝導性およびリチウムイオン輸率を示すと共に、機械的性質が良好で、優れた成形加工性と電極との接着性の改善された高分子電解質として有用なリチウムイオン導電性固体複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、主鎖中に酸素含有セグメントを含む高分子、およびリチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物またはリチウムイオン点を有する変性有機ケイ素化合物を含んでなり、70~90℃の温度でアニールされたリチウムイオン伝導性複合体により解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリチウムイオン伝導性複合体は、電池の使用温度で良好な導電率と良好なリチウムイオン輸率とを有すると共に、優れた機械的性質、成型加工性および電極との良好な接着性を有する。
このリチウムイオン導電性固体複合体を固体電池、特にリチウムイオン固体電解質電池の固体電解質として用いることで、発火や液漏れなどの危険性が低減ないし解消された安全性の高い電池を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用する主鎖中に酸素含有セグメントを含む高分子は、主鎖中に酸素含有セグメントを含む限りその種類やトポロジーは限定されないが、ポリエーテル系高分子またはポリエーテルを一成分とする高分子、特に直鎖ポリエーテル系高分子または直鎖エーテル高分子を一成分とする高分子が好ましい。ポリエーテル系高分子の代表的な例は、ポリ(テトラメチレンオキシド)[ポリ(テトラヒドロフラン)またはポリ(オキシテトラメチレン)とも呼ばれる]であり、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、それらのブロック共重合体、ランダム共重合体があり、それらを2種類以上、併用しても良い。中でもポリ(テトラメチレンオキシド)、とりわけポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンが好ましく、脂肪族系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンが特に好ましい。ポリ(テトラメチレンオキシド)や、(脂肪族)ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンは、直鎖型であっても分岐型であってもよい。
【0009】
脂肪族系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンは、例えば、式:
【化1】
JP0004899043B2_000002t.gif
(式中、mおよびnはそれぞれ1以上の数であり、mは好ましくは2~500、より好ましくは5~200の数であり、nは好ましくは2~700、より好ましくは10~300の数である。Xは対アニオンであり、好ましくは、トリフルオロメタンスルホニルアニオン、トリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン、ハロゲンアニオンなどである。)
で示されるアイオネンであり、好ましい脂肪族系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンの一例は、式:
【化2】
JP0004899043B2_000003t.gif
(式中、mおよびnは前記と同意義である。)
で示されるアイオネン(以下、「DPI」と略称する。)である。
【0010】
複素環系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンは、例えば、式:
【化3】
JP0004899043B2_000004t.gif
(式中、mおよびnはそれぞれ1以上の数であり、mは好ましくは2~500、より好ましくは5~200の数であり、nは好ましくは2~700、より好ましくは10~300の数である。Xは対アニオンであり、好ましくはトリフルオロメタンスルホニルアニオン、トリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン、ハロゲンアニオンなどである。)
で示されるアイオネンである。
これら脂肪族系および複素環系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンのほか、芳香族系ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンも好ましい。
【0011】
ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンのオーバーオールの分子量は、通常1000~3000000、好ましくは5000~100000、より好ましくは10000~50000である。
ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンのイオン点間分子量は、好ましくは144~20000、より好ましくは500~10000、より好ましくは2000~6000、とりわけ約3000である。これにより、イオン点間の高分子鎖、例えばポリ(テトラメチレンオキシド)の結晶性を低減させ、さらに、アモルファス化させることができ、イオン基を有する有機ケイ素化合物あるいはその変性有機ケイ素化合物との混合も容易になり、室温での導電率の経時変化の少ない、加工性が良く、力学的性質に優れたリチウムイオン伝導性複合体を得ることができる。
上記ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンの製法は、特許文献1に記載されている。
【0012】
主鎖中に酸素含有セグメントを含む高分子の分子量は、上記ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネンの分子量と同程度であってよい。
【0013】
リチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物あるいはリチウムイオン点を有する変性有機ケイ素化合物は、リチウムイオン基自体またはリチウムイオンを含むセグメント有する珪素原子含有化合物を意味する。例えば、リチウム陽イオンと陰イオンを含むセグメントを含む珪素原子含有化合物が挙げられる。ここで、陰イオンを含むセグメントとは、R1SO3、R1SO2N、R1CO2、R1SO2C、R1SO2YNおよび、R1SO2CN、R1B、R1YB、R1S、R1YSなどの陰イオン基を有するセグメントとリチウムイオンを有する珪素原子含有化合物である。式中、R1は、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基、またはC、H、O、N、S、Fなどの元素を含む有機基であってよい。好ましくは、1~6個炭素原子を有するパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアリール基である。Yは電子吸引性基であり、好ましくは、ニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基またはシアノ基である。リチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物または変性有機ケイ素化合物には、これら2種類以上の同種または異種のセグメントが含まれていてよい。具体的には、リチウムスルホニル(SO3Li)基、リチウムカルボキシル(COOLi)基、リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(NLiSO2CF3)基、リチウムメタンスルホニルイミド(NLiSO2CH3)基、リチウムフェニルスルホニルイミド(NLiSO2C6H5)基、リチウムp-フェニレンスルホニル(C6H4SO3Li)基、リチウムスルホニルp-ベンジル(CH2 C6H4SO3Li)基、リチウムスルホニルp-ベンジルオキシ(OCH2 C6H4 SO3Li)基、リチウムスルホニルp-ベンゾイルオキシ(OCOC6H4SO3Li)基、リチウムスルホニルp-ベンジルオキシカルボニル(COOC6H4 SO3Li)基、リチウムスルホニルフェノキシ(OC6H4SO3Li)基、リチウムボレート(BLi)基、リチウムスルフィド(SLi)基、リチウムピペラジニル(LiNC5H4)基、リチウムスルホニルピペラジニル(C5H4NSO3Li)基などを有する珪素原子含有化合物などがある。有機ケイ素化合物のシラノール基が化学変性を受けている変性有機ケイ素化合物にこれらのイオン点を有する珪素原子含有化合物でも良い。しかし、これらに限定されない。有機ケイ素化合物とリチウムイオン基の間に、アルキル基やオキシアルキル基、液晶性セグメントなどのスペーサーが介在していてもよいし、これらのイオン点は、2個以上の同種または異種のものが存在していてもよい。
【0014】
リチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物の好ましい例は、式:
【化1】
JP0004899043B2_000005t.gif
で示される化合物である(以下、「Si-Li」と略称する。)。
【0015】
本発明で用いる低分子リチウム塩は、従来リチウムイオン二次電池に使用されているリチウム塩のいずれであってよく、リチウム陽イオンと陰イオンとのからなる化合物が挙げられる。陰イオンの例には、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6、PF6、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオン、R1SO3、(R1SO2)(R2SO2)N、(R1SO2)(R2SO2)(R3SO2)C、および(R1SO2)(R2SO2)YCなどである。式中、R1、R2、R3、およびYは電子吸引性基である。好ましくは、R1、R2、およびR3は、各々独立して、1~6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基、またはシアノ基である。R1、R2、およびR3は各々同一であっても、異なっても良い。低分子リチウム塩として前述の種々の陰イオンを有する化合物を2種類以上併用することもできる。中でも、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどが好ましい。
【0016】
本発明のリチウムイオン伝導性複合体における主鎖中に酸素原子含有セグメント、リチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物、および任意成分である低分子リチウム塩の割合は、本発明の目的が達成される限り、特に制限はされない。リチウムイオン点を有する有機ケイ素化合物の量は、主鎖中に酸素原子含有セグメント100重量部に対し、通常10~500重量部、好ましくは10~300重量部、より好ましくは30~200重量部であり、低分子リチウム塩の量は、主鎖中に酸素原子含有セグメント100重量部に対し、通常700重量部以下、好ましくは300重量部以下、より好ましくは100重量部以下、とりわけ80重量部以下である。低分子リチウム塩を用いる場合、その下限量は、好ましくは1重量部である。
【0017】
本発明のリチウムイオン伝導性複合体には、上記各成分に加え、通常の添加剤、例えば、電極製造用の試薬、粉体などの材料の他、安定剤、老化防止剤、結合剤などを配合することができる。
【0018】
本発明のリチウムイオン伝導性複合体は、各成分を単に混合するだけで製造することができる。混合を容易にするために、各成分に対して不活性な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなど)または溶媒混合物を用いてもよい。また、本発明のリチウムイオン伝導性複合体は、必要に応じて架橋してもよく、架橋剤としてはジイソシアネート、過酸化物など、使用する高分子に応じて適当な架橋剤を用いればよい。
【0019】
本発明のリチウムイオン伝導性複合体は、高温、例えば40℃以上の温度、例えば70~90℃の温度でアニールすることにより、導電率を改善することができる場合がある。また、アニールの代わりに、混合を高温で行うことで、同様の効果を得ることもできる。
【実施例】
【0020】
[参考例]
リチウムイオンを有する有機ケイ素化合物(Si-Li)は、以下のようにして製造した。
まず、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製)、NaHSO、NaSO、および水を、75℃の湯浴上で反応させ、放冷後、撹拌しながら、アセトンを滴下してナトリウム塩型の沈殿物を得た。これを、3回再沈精製し、析出した沈殿物を吸引濾過およびデカンテーションにより回収し、50℃にて加熱減圧乾燥し、メノウ鉢にて粉末状に粉砕した。その後、粉末状物質の対カチオン交換反応を、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール中、LiBrにより数回行い、脱水エタノールおよび脱水メタノールを用いて十分に洗浄後、乾燥、粉砕して、Si-Liを得た。使用に際しては、100℃にて、高真空下で加熱乾燥した後、グローブボックスに保存して用いた。
【0021】
[実施例]
試料は、水分濃度が1ppm以下の高純度アルゴンガス下のグローブボックス内で、脂肪族型ポリ(テトラメチレンオキシド)アイオネン(イオン点間分子量3150)(以下、「KA1」と称する)、LiN(SOCF)(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド。以下、「TFSI」と称する)、およびSi-Liを表1に記載の量で、40℃に加熱したルツボ中、スパチュラで混ぜ合わせることにより作製した。
なお、各試料の記号の意味は次のとおりである。例えばSi-Li0.41-TFSI0.20の場合、「Si-Li0.41」は、[Si-Li中のLi]/[KA1中の-O-](モル比)が0.41であることを示し、「TFSI0.20」は、[TFSI中のLi]/[KA1中の-O-](モル比)が0.20であることを示す。
【0022】
【表1】
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【0023】
例として、Si-Li0.41-TFSI0.20の作成工程は、以下のとおりであった。
グローブボックス内でルツボに移したKA1(0.0740g)を40℃に加熱し、そこに秤り取ったSi-Li(0.1110g)およびTFSI(0.0545g)を加えて混ぜ合わせた。
そして、導電率測定用に、試料を内径10mm、厚み0.4mmのスペーサーに詰めてSUS電極で挟んだ構造のセルを作成した。このセルを、40℃で約12時間、25℃で約24時間の熱処理、または80℃で約12時間、25℃で約24時間の熱処理を行った後に、複素インピーダンス法による導電率測定に供した。
【0024】
導電率測定には、Solatron製Impedance Analyzer 1260 と、同社製Electrochemical Interface 1287 を用い、昇温・降温速度20℃/hr、ホールド時間30分にて、25℃から80℃と80から-20℃の昇温・降温過程、周波数領域1MHz~0.1Hz、電圧10~1000mVの交流を用いた。導電率(σ)は、複素インピーダンス法によりバルク抵抗Rbを求め、試料の厚みdおよび試料の面積Aを用いて、下記式により算出した:
【数1】
JP0004899043B2_000007t.gif

【0025】
リチウムカチオン輸率は、試料を内径10mm、外径14mm、厚み0.2~0.5mmのリング状ポリプロピレン製スペーサーに詰め、厚み0.3mmのリチウム箔で挟み、さらにSUS電極で挟んだ構造のセルを作製し、このセルを、導電率測定の熱処理条件に合わせて80℃で約12時間または40℃で12時間、25℃で24時間の熱処理に付した後に、測定した。
リチウムカチオン輸率は、導電率測定と同じ機器を用い、60℃、印加電圧10mVのポテンシオスタット測定と、その前後にインピーダンス測定を行い得られた値を、下記エバンス(Evans)式に代入して求めた:
【数2】
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【0026】
動的粘弾性測定は、株式会社UBM製レオスペクトラーDVE-V4を用い、約19度の温度で、固体剪断モード、周波数分散にて行い、剪断貯蔵弾性率を得た。測定周波数は1~100Hzで、試料サイズは5×4×約1mmであった。
なお、表2の試料名の後の括弧書きした温度は、熱処理における最初の熱処理工程での温度である。
【0027】
【表2】
JP0004899043B2_000009t.gif

【0028】
導電率測定において、80℃~-20℃の降温過程で得た値のアレニウスプロットを図1に示す。
図1から、本発明のリチウムイオン伝導性複合体では、熱処理を80℃に高めると、導電率が顕著に上昇し、KA1-Si-Li0.41-TFSI0.20(80℃)の試料では25℃で6.1×10-5 S/cm、-20℃でも9.8×10-7 S/cmの導電率であった。
【0029】
また、表3に、60℃でのリチウムカチオン輸率測定の結果を示す。
KA1-Si-Li0.41-TFSI0.20(80℃)の60℃でのリチウムカチオン輸率は、KA1-Si-Li0.10 -TFSI0.22とほぼ同じであった。
【0030】
【表3】
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【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例で製造した試料の導電率のアレニウスプロットである。
図面
【図1】
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