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明細書 :ゼオライト材料およびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4691660号 (P4691660)
公開番号 特開2007-196103 (P2007-196103A)
登録日 平成23年3月4日(2011.3.4)
発行日 平成23年6月1日(2011.6.1)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
発明の名称または考案の名称 ゼオライト材料およびその利用
国際特許分類 B01J  31/18        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
B01D  53/86        (2006.01)
FI B01J 31/18 M
B01J 35/02 ZABJ
B01J 37/00 A
B01D 53/36 J
請求項の数または発明の数 13
全頁数 20
出願番号 特願2006-015839 (P2006-015839)
出願日 平成18年1月25日(2006.1.25)
審査請求日 平成20年12月26日(2008.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】増田 秀樹
【氏名】大畑 奈弓
個別代理人の代理人 【識別番号】100117606、【弁理士】、【氏名又は名称】安部 誠
【識別番号】100115510、【弁理士】、【氏名又は名称】手島 勝
【識別番号】100136423、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 道子
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特許第3358736(JP,B2)
特開2003-210994(JP,A)
特開平09-234374(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
B01D 53/86、53/94
C01B 33/20-39/54
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ゼオライトと、
該ゼオライトのユニットセルに内包されている酸素活性化金属錯体と、
該ゼオライトに保持されている光還元性金属錯体と、
を含む、ゼオライト材料。
【請求項2】
前記光還元性金属錯体は前記ゼオライトのユニットセルに内包されている、請求項1に記載のゼオライト材料。
【請求項3】
前記光還元性金属錯体はルテニウム錯体である、請求項1または2に記載のゼオライト材料。
【請求項4】
前記光還元性金属錯体は、ビピリジン骨格を有する少なくとも一つの化合物を配位子とするビピリジン金属錯体である、請求項1から3のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項5】
前記酸素活性化金属錯体は:
金属フタロシアニン錯体;
ビス(サリチリデン)-オルト-フェニレンジアミナト金属錯体;および、
環状テトラピロール化合物を配位子とする金属錯体;
からなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1から4のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項6】
前記酸素活性化金属錯体を構成する配位子が一または二以上のフッ素置換基を有する、請求項1から5のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項7】
前記酸素活性化金属錯体を構成する中心金属は、コバルト、鉄、マンガン、ルテニウム、チタン、バナジウム、ニッケル、銅およびセリウムからなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1から6のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項8】
前記酸素活性化金属錯体1モルに対して前記光還元性金属錯体を0.1~10モルの割合で含む、請求項1から7のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項9】
前記ゼオライトはX型ゼオライトまたはY型ゼオライトである、請求項1から8のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項10】
前記ユニットセルの入口部よりもサイズの大きな前記酸素活性化金属錯体が該ユニットセルに内包されている、請求項1から9のいずれかに記載のゼオライト材料。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のゼオライト材料を有効成分として備えるガス浄化材。
【請求項12】
ゼオライトと、該ゼオライトのユニットセルに内包されている酸素活性化金属錯体と、該ゼオライトに保持されている光還元性金属錯体と、を含むゼオライト材料を製造する方法であって:
ゼオライトを用意すること;
該ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させること、ここで該錯体はシップ-イン-ボトル(ship-in-bottle)法により前記ユニットセル内で合成される;および、
前記ゼオライトに光還元性金属錯体を保持させること;
を包含する、ゼオライト材料製造方法。
【請求項13】
前記ゼオライトに光還元性金属錯体を保持させることは、該ゼオライトのユニットセル内で該光還元性金属錯体をシップ-イン-ボトル(ship-in-bottle)法により合成することによって該錯体を該ユニットセルに内包させることを含む、請求項12に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体が内包された構成のゼオライト材料に関する。また、かかる構成を有するゼオライト材料の製造方法に関する。また本発明は、該ゼオライト材料を有効成分として備えるガス浄化材に関する。
【背景技術】
【0002】
人間が不快と感じる物質あるいは環境上好ましからざる物質を含むガスを処理し、かかる物質を分解するかまたはより環境負荷の少ない物質に変換するガス浄化技術が求められている。例えば特許文献1には、二酸化チタンを含む塗膜を基体表面に形成し、その二酸化チタンの光触媒作用により悪臭ガスや有害ガスを除去する有害ガス除去剤が記載されている。また、特許文献2には、金属フタロシアニン誘導体等の金属錯体をゼオライト等の担体に保持させてなり、該金属錯体によって悪臭成分を分解ないし吸着することにより消臭する消臭体が記載されている。担体に担持された金属フタロシアニン錯体をガス分解に利用する技術に関する他の従来技術文献として特許文献3および4が挙げられる。
【0003】

【特許文献1】特開平11-169727号公報
【特許文献2】特開平5-277167号公報
【特許文献3】特開2002-321912号公報
【特許文献4】特開2003-202145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~4に記載された技術では、いずれもガス分解に寄与する成分(ガス分解触媒)を担体の表面上に、例えばディッピング等の方法によって保持させている。換言すれば、ガス分解触媒を担体に担持した構成の消臭体等において、該ガス分解触媒はその消臭体等の外部に露出している。かかる態様の消臭体等では、前記ガス分解触媒の機能により該触媒を担体に担持するためのバインダが劣化して該触媒が担体から脱落しやすくなる等、耐久性が不足しがちである。また、このように担体の表面にガス分解触媒を担持した態様の消臭体等を例えば有機質の繊維に付着させた消臭繊維では、消臭体表面に露出したガス分解触媒が繊維と直接接触するため、前記ガス分解触媒がその機能を発揮することに関連して繊維がダメージを受ける虞がある。
【0005】
そこで本発明は、人間が不快と感じる物質あるいは環境上好ましからざる物質(以下、「除去対象物質」ということもある。)を含むガスを効率よく浄化し得る材料であって、より使い勝手のよい材料を提供することを一つの目的とする。本発明の他の一つの目的は、このような材料の製造方法を提供することである。本発明のさらに他の一つの目的は、かかる材料を用いたガス浄化材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される一つのゼオライト材料は、ゼオライトと、該ゼオライトのユニットセルに内包されている酸素活性化金属錯体と、前記ゼオライトに保持されている光還元性金属錯体とを含む。
かかる構成のゼオライト材料によると、前記酸素活性化金属錯体の酸素活性化機能を利用して、人間が不快と感じる物質あるいは環境上好ましからざる物質(除去対象物質)を分解するかまたはより環境負荷の少ない物質に変換する(以下、これらを合わせて「分解」ということもある。)ことができる。該ゼオライト材料は、前記酸素活性化金属錯体がゼオライトのユニットセルに内包されていることにより、周辺物質にダメージを与え難く、使い勝手が良い。また、前記光還元性金属錯体は、光エネルギーの供給を受けて自らは酸化される一方、電子(e-)を放出することができる。酸素活性化金属錯体に加えてこのような光還元性金属錯体を有するゼオライト材料によると、除去対象物質をより効率よく分解することができる。
【0007】
かかるゼオライト材料の一つの好ましい態様では、前記光還元性金属錯体が前記ゼオライトのユニットセルに内包されている。このように光還元性金属錯体がユニットセルに内包された構成のゼオライト材料によると、該ゼオライト材料が周辺材料にダメージを与える事象を、より高いレベルで防止することができる。
【0008】
前記光還元性金属錯体としては、光エネルギーの供給を受けて電子(e-)を放出する光触媒として機能し得る種々の錯体を特に限定なく使用することができる。例えば、かかる機能を有する各種のルテニウム錯体(中心金属としてルテニウムを有する金属錯体)を好ましく採用することができる。また、例えば、ビピリジン骨格を有する少なくとも一つの化合物を配位子(ビピリジン型配位子)とする金属錯体(ビピリジン金属錯体)を、前記光還元性金属錯体として好ましく採用することができる。
【0009】
一方、前記酸素活性化金属錯体としては、酸素からスーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル等の活性種を生じさせる酸素活性化触媒として機能し得る種々の錯体を特に限定なく使用することができる。例えば、金属フタロシアニン錯体、ビス(サリチリデン)-オルト-フェニレンジアミナト金属錯体、および、環状テトラピロール化合物を配位子とする金属錯体、からなる群から選択される一種または二種以上を好ましく採用することができる。好ましい一つの態様では、該酸素活性化金属錯体を構成する配位子が一または二以上のフッ素置換基(置換基としてのフッ素原子)を有する。かかる置換基を有する酸素活性化金属錯体がユニットセルに内包されたゼオライト材料によると、より良好なガス浄化性能が実現され得る。例えば、一または二以上の水素原子がフッ素原子で置換された構造のフタロシアニン配位子を有する金属錯体が好ましい。また、例えば、中心金属がコバルト、鉄、マンガン、ルテニウム、チタン、バナジウム、ニッケル、銅またはセリウムである一種または二種以上の金属錯体を、前記酸素活性化金属錯体として好ましく採用することができる。
【0010】
好ましい一つの態様では、該ゼオライト材料が、前記酸素活性化金属錯体1モルに対して前記光還元性金属錯体を凡そ0.1~10モルの割合で含む。かかる割合で前記酸素活性化金属錯体および前記光還元性金属錯体を含有するゼオライト材料によると、除去対象物質をより効率よく分解することができる。
【0011】
前記ゼオライトとしては、例えば、X型ゼオライトまたはY型ゼオライトを好ましく採用することができる。これらのゼオライトは、そのユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させるのに適した骨格構造を有する。
【0012】
ここに開示されるゼオライト材料の好ましい一つの態様では、前記ユニットセルの入口部よりもサイズ(分子サイズ)の大きな前記酸素活性化金属錯体が該ユニットセルに内包されている。このようなゼオライト材料は、前記酸素活性化金属錯体がユニットセルに安定して保持されている(閉じ込められている)ことから使い勝手がよい。例えば、該ゼオライト材料に施され得る種々の処理および/または該ゼオライト材料の種々の使用状況において、良好な耐久性を示すものであり得る。また、該ゼオライト材料が周辺材料にダメージを与える事象を、より高いレベルで防止することができる。
【0013】
また、ここに開示される一つのガス浄化材は、上述したいずれかのゼオライト材料を有効成分として備える。かかる構成のガス浄化材によると、前記ゼオライト材料により発揮される除去対象物質の分解機能を利用して、該除去対象物質を含むガスをより効率よく浄化することができる。
【0014】
また、ここに開示される一つのゼオライト材料製造方法は、ゼオライトを用意することと、該ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させることと、前記ゼオライトに光還元性金属錯体を保持させることとを含む。ここで、前記ユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させることは、該錯体をシップ-イン-ボトル(ship-in-bottle)法によって前記ユニットセル内で合成することを包含する。
かかる方法によると、ユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させる手法としてship-in-bottle法を用いることにより、該ユニットセルに該錯体を適切に内包させることができる。ここに開示されるゼオライト材料製造方法は、上述したいずれかのゼオライト材料を製造する方法として好適に採用され得る。また、ship-in-bottle法によると、ユニットセルの入口部よりも分子サイズの大きな酸素活性化金属錯体であっても、そのユニットセル内(すなわち、ゼオライトの細孔内)に効率よく配置することが可能である。したがって、前記ゼオライト材料製造方法の特に好ましい適用対象として、前記ユニットセルの入口部よりもサイズの大きな前記酸素活性化金属錯体が該ユニットセルに内包された構成を有するゼオライト材料の製造が例示される。
【0015】
前記製造方法の好ましい一つの態様では、前記ゼオライトに光還元性金属錯体を保持させることが、該ゼオライトのユニットセル内で該光還元性金属錯体をシップ-イン-ボトル(ship-in-bottle)法により合成することによって該錯体を該ユニットセルに内包させることを含む。かかる方法によると、前記ユニットセルに光還元性金属錯体が内包された構成のゼオライト材料を好適に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
ここに開示されるゼオライト材料は、ゼオライトと、該ゼオライトのユニットセルに内包されている酸素活性化金属錯体と、該ゼオライトに保持されている光還元性金属錯体とを含む。かかるゼオライト材料を構成するゼオライトは、従来より知られている多孔質結晶性アルミノケイ酸塩に限定されず、同様の結晶構造(骨格構造)を有する多孔質結晶性メタロケイ酸塩、リン酸塩系多孔質結晶等の無機材料であり得る。これら多孔質結晶性アルミノケイ酸塩と類似結晶構造(以下、「ゼオライト型の結晶構造」ということもある。)を有する無機材料については、2000年7月発行の書籍「ゼオライトの科学と工学」(小野嘉夫、八嶋建明著、講談社刊)に詳細な説明がされている。ここでいう「ゼオライト」の概念には、これらゼオライト型の結晶構造を有する種々の無機材料が包含され得る。前記ゼオライトとしては、このようなゼオライト型無機材料から選択される一種または二種以上を適宜選択して使用することができる。また、該ゼオライトの「ユニットセル」とは、該ゼオライトの結晶構造(骨格構造)における構造単位をいう。この「ユニットセル」は、また、該ゼオライトにおいて一つの細孔を構成する単位ともなっている。
【0018】
前記ゼオライトの具体的な構造としては、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、グメリナイト、β型ゼオライト、モルデナイト、オフレタイト、EMT、SAPO-37、ベリロリン酸塩X等のように細孔の入口部が12個の原子により形成されている大細孔のもの;クローバライト等のように細孔の入口部が14個以上の原子により形成されている超大細孔のもの;フェリエライト、ヒューランダイト、ウェイネベアイト等のように細孔の入口部が10個の原子により形成されている中細孔のもの;アナルシム、チャバサイト、エリオナイト、A型ゼオライト等のように細孔の入口部が8個以下の原子により形成されている小細孔のもの;等を例示することができる。これらのうち好ましいゼオライトとして、例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、EMT、SAPO-37およびベリロリン酸塩Xが挙げられる。これらのゼオライトは、細孔の内部のサイズが概ね直径1.3nmであり、該細孔の入口部のサイズが概ね直径0.7nmであって、一つのユニットセルに一分子の酸素活性化金属錯体が内包された構成のゼオライト材料を構築するのに適している。特に、ゼオライトのユニットセル内(細孔内)の除去対象物質を分解しやすい位置に酸素活性化金属錯体が内包されたゼオライト材料を容易に合成できるという観点から、X型ゼオライトおよび/またはY型ゼオライトの使用が特に好ましい。
【0019】
ここに開示されるゼオライト材料を構成する「酸素活性化金属錯体」は、酸素(典型的には酸素分子(O2))からスーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル等の活性種を生じさせる酸素活性化触媒として機能し得る種々の金属錯体であり得る。スーパーオキシドラジカル(O2-)は、例えば、酸素分子の一電子還元により生じ得る。このスーパーオキシドラジカルから、例えば過酸化水素(H22)を経てヒドロキシラジカル(・OH)が生じ得る。このような酸素由来活性種が除去対象物質に作用してこれを分解する(より環境負荷の少ない物質に変換する場合を含む。)ことにより、該除去対象物質を含むガスが浄化され得る。上記酸素活性化金属錯体は、上記のような酸素由来活性種の有する高い酸化力を利用して除去対象物質を酸化分解する酸化触媒として把握され得る。ここに開示されるゼオライト材料は、このような酸素活性化金属錯体の一種または二種以上がゼオライトのユニットセルに内包されたものであり得る。
【0020】
前記ゼオライト材料の構成要素となり得る酸素活性化金属錯体としては、金属フタロシアニン錯体;ビス(サリチリデン)-オルト-フェニレンジアミナト金属錯体(以下、「金属サロフェン錯体」ということもある。)、ビス(サリチリデン)エチレンジアミナト金属錯体、ビス(サリチリデン)プロピレンジアミナト金属錯体、ビス(サリチリデン)シクロヘキサンジアミナト金属錯体、ビス(1-メチル-3-オキソブチリデン)エチレンジアミナト金属錯体;環状テトラピロール化合物(例えば、ポルフィリン、ポルフィセン)を配位子とする金属錯体;環状ポリアミン、環状ポリフォスフィン、環状ポリチオエーテル、環状ポリエーテルおよびそれらの化合物に含まれるヘテロ原子の一または二以上を窒素(N)、イオウ(S)、リン(P)または酸素(O)原子で置き換えた構造の環状化合物を配位子とする錯体;窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)または酸素(O)原子を起点とする二脚型構造の三座配位子(例えば、ジエチレントリアミン)あるいは三脚型構造の四座配位子(例えば、トリスピリジルメチルアミン、ニトリロトリ酢酸、トリエタノールアミン)を有する金属錯体;等を例示することができる。さらに、ヒスチジン、ロイシン等のアミノ酸、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、1-メチル-1,3-ブタンジオン等の化合物を配位子とする金属錯体を例示することができる。これらのうち、酸素を活性化する能力や化合物自体の化学的安定性の観点から、金属フタロシアニン錯体、金属サロフェン錯体および環状テトラピロール化合物を配位子とする金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく採用することができる。金属フタロシアニン錯体および/または金属サロフェン錯体が特に好ましい。
なお、ここでいう「金属フタロシアニン錯体」は、該錯体を構成する配位子が置換基を有しないものに加えて、該配位子が置換基を有するものをも包含する概念であり、このことは他の金属錯体についても同様である。
【0021】
ここに開示されるゼオライト材料においてゼオライトのユニットセルに内包される酸素活性化金属錯体は、例えば、下記一般式(1)により表される金属フタロシアニン錯体であり得る。
【0022】
【化1】
JP0004691660B2_000002t.gif

【0023】
ここで、上記式(1)中のR1,R2,R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子(H)、ハロゲン原子、置換基を有するまたは有しないアルキル基(例えば、水素原子の全部がフッ素原子で置き換えられた構造のアルキル基、すなわちパーフルオロアルキル基)、ニトロ基、第1級、第2級または第3級のアミノ基、カルボキシル基、カルボキシルアミド基、ニトリル基、水酸基、アルコキシル基、フェノキシル基、スルホン酸基およびスルホンアミド基からなる群から選択されるいずれかであり得る。上記アルキル基としては、炭素原子数が1~3程度のもの(典型的にはメチル基)が好ましい。上記ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)が例示される。これらのうちフッ素または塩素が特に好ましい。
上記式(1)に含まれる四つのR1は互いに同一であってもよく異なってもよい。R2,R3およびR4についても同様である。通常は、四つのR1、四つのR2、四つのR3、四つのR4がそれぞれ互いに同一である構造の金属フタロシアニン錯体が好ましい。また、R1とR4とが同一であり、かつR2とR3とが同一である構造の金属フタロシアニン錯体を好ましく採用することができる。上記式(1)中のR1~R4の全てが同一である構造の金属フタロシアニン錯体であってもよい。かかる構造の金属フタロシアニン錯体は、高い対称性を有することから安定性のよいものであり得る。また、目的とする錯体を効率よく(例えば、精度よく)合成するのに適している。
【0024】
ここに開示されるゼオライト材料を構成する金属フタロシアニン錯体の一好適例として、上記式(1)中のR1~R4の全てが水素原子(H)である金属フタロシアニン錯体(すなわち、無置換の金属フタロシアニン錯体)が挙げられる。このような金属フタロシアニン錯体は、例えば、比較的安価な原料を用いたship-in-bottle法により、ユニットセル内で容易に合成することができる。したがって、該金属フタロシアニン錯体がゼオライトのユニットセルに内包された構成のゼオライト材料を容易に製造することができる。
【0025】
ここに開示されるゼオライト材料を構成する金属フタロシアニン錯体の他の好適例として、上記式(1)中のR1~R4の全てがハロゲン原子である金属フタロシアニン錯体が挙げられる。かかる金属フタロシアニン錯体は、フタロシアニン骨格を構成するベンゼン環の水素原子がより電気陰性度の大きなハロゲン原子に置き換えられているため、除去対象物質の分解に寄与する活性種をより効率よく生成するものであり得る。したがって、このようなハロゲン置換金属フタロシアニン錯体をゼオライトのユニットセルに内包するゼオライト材料によると、より高いガス浄化性能が発揮され得る。なかでも、電気陰性度の値が特に大きく、かつ無置換の金属フタロシアニン錯体と同程度の分子サイズを有することから、R1~R4の全てがフッ素原子(F)である金属フタロシアニン錯体(金属パーフルオロフタロシアニン錯体)が特に好ましい。
【0026】
また、ここに開示されるゼオライト材料においてゼオライトのユニットセルに内包される酸素活性化金属錯体は、例えば、下記一般式(2)により表される金属サロフェン(salophen)錯体であり得る。
【0027】
【化2】
JP0004691660B2_000003t.gif

【0028】
ここで、上記式(2)中のR5,R6,R7およびR8、ならびにR10,R11,R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子(H)、ハロゲン原子、置換基を有するまたは有しないアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)、ニトロ基、第1級、第2級または第3級のアミノ基、カルボキシル基、カルボキシルアミド基、ニトリル基、水酸基、アルコキシル基、フェノキシル基、スルホン酸基およびスルホンアミド基からなる群から選択されるいずれかであり得る。また、上記式(2)中のR9は、水素原子(H)、ハロゲン原子、置換基を有するまたは有しないアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)、ベンジル基およびその誘導体(例えば、置換基を有するベンジル基)、および、フェニル基またはその誘導体(例えば、置換基を有するベンジル基)、からなる群から選択されるいずれかであり得る。上記アルキル基としては、炭素原子数が1~3程度のもの(典型的にはメチル基)が好ましい。上記ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)が例示される。通常は、これらのうちフッ素または塩素であることが好ましい。
上記式(2)に含まれる二つのR5は互いに同一であってもよく異なってもよい。R6,R7およびR8についても同様である。通常は、二つのR5、二つのR6、二つのR7、二つのR8がそれぞれ互いに同一である金属サロフェン錯体が好ましい。このような金属サロフェン錯体は、目的とする錯体を効率よく(例えば、精度よく)合成するのに適している。
【0029】
ここに開示されるゼオライト材料を構成する金属サロフェン錯体の一好適例として、上記式(2)中のR5~R13の全てが水素原子(H)である金属サロフェン錯体(すなわち、無置換の金属サロフェン錯体)が挙げられる。このような金属サロフェン錯体は、例えば、比較的安価な原料を用いたship-in-bottle法により、ユニットセル内で容易に合成することができる。したがって、該金属サロフェン錯体がゼオライトのユニットセルに内包された構成のゼオライト材料を容易に製造することができる。
【0030】
ここに開示されるゼオライト材料を構成する金属サロフェン錯体の他の好適例として、上記式(2)中のR5~R8のうち少なくとも一つがハロゲン原子である金属サロフェン錯体(ハロゲン化サロフェン錯体)が挙げられる。例えば、上記式(2)中のR6がいずれもフッ素原子である金属サロフェン錯体(フッ化サロフェン錯体)、該R6がいずれも塩素原子である金属サロフェン錯体(塩化サロフェン錯体)等を好ましく採用することができる。かかる構造の金属サロフェン錯体におけるR9~R13は、例えば、いずれも水素原子であり得る。
【0031】
酸素活性化金属錯体を構成する中心金属(上記式(1)または(2)で表される酸素活性化金属錯体では該式中のM)は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)およびセリウム(Ce)から選択される一種または二種以上(典型的には一種)であり得る。これらのうち、錯体合成の容易性(特に、ship-in-bottle法による合成に適していること)、ガス浄化性能等の観点から好ましい中心金属として、コバルト、鉄、マンガン、銅、ニッケル、チタンおよびルテニウムが挙げられる。特に限定するものではないが、酸素活性化金属錯体を100質量%として、該錯体の質量に占めるその中心金属の質量割合は例えば0.01~10.0質量%(より好ましくは0.2~2.0質量%)であり得る。一分子の酸素活性化金属錯体に含まれる中心金属の数は特に限定されない。すなわち、該酸素活性化金属錯体は、単核錯体、複核(二核)錯体および多核錯体のいずれであってもよい。例えば、単核の酸素活性化金属錯体がゼオライトのユニットセルに内包された構成のゼオライト材料が好ましい。
【0032】
ここに開示されるゼオライト材料は、前記酸素活性化金属錯体がゼオライトのユニットセルに内包されている。該酸素活性化金属錯体のサイズは、上記ユニットセルの有する細孔の内部のサイズと比較して概ね同程度またはそれよりも小さいことが好ましい。このようなサイズの関係を満たすゼオライトと酸素活性化金属錯体との組み合わせは、該錯体をユニットセルに効率よく内包させるのに適している。上記細孔内部のサイズと概ね同程度のサイズの酸素活性化金属錯体がユニットセルに内包された構成のゼオライト材料が特に好ましい。
また、ユニットセルの有する細孔の入口部のサイズに対して、該入口部のサイズよりも大きなサイズの酸素活性化金属錯体が内包されていることが好ましい。すなわち、該酸素活性化金属錯体が、前記入口部を実質的に通過できない(該入口部を経由してユニットセルの細孔に出入りすることができない)サイズであることが好ましい。このようなサイズの関係を満たすゼオライトと酸素活性化金属錯体との組み合わせは、該錯体がユニットセルの内部(細孔内)に保持された状態を安定して維持するのに適している。例えば、該ゼオライト材料に施され得る種々の処理および/または該ゼオライト材料の種々の使用状況において、ユニットセルに内包された酸素活性化金属錯体が該ユニットセルの細孔から抜け出す(ユニットセルから失われる)事象が起こり難い。したがって、かかるゼオライト材料は良好な耐久性を示すものであり得る。また、該ゼオライト材料が周辺材料にダメージを与える事象を、より高いレベルで防止することができる。
【0033】
ここに開示されるゼオライト材料において前記酸素活性化金属錯体は、主として、一つのユニットセルに一分子の酸素活性化金属錯体が内包された(すなわち、該錯体が一分子毎に異なるユニットセルに内包された)態様で存在していることが好ましい。酸素活性化金属錯体として金属フタロシアニン錯体や金属サロフェン錯体等のように通常の状態(例えば、ゼオライトの外表面に付着した状態)では複数の錯体分子がスタック(積層)した状態となりやすい金属錯体を採用する場合には、かかる態様のゼオライト材料が特に好ましい。複数の錯体分子が一分子毎に異なるユニットセルに内包されている(これにより錯体分子のスタックが阻止されている)状態では、それら複数の錯体分子がスタックした状態にある場合に比べて、個々の錯体分子の酸素活性化機能をより効率よく発揮させることができる。換言すれば、該酸素活性化金属錯体の利用効率を高めることができる。かかる構成のゼオライト材料は、より高いガス浄化性能を示すものであり得る。
【0034】
このように一つのユニットセルに一分子の酸素活性化金属錯体が内包された構成のゼオライト材料を構成するのに適したゼオライトと、該ゼオライトのユニットセルの形状(細孔の入口部および/または内部のサイズ)に応じたサイズの酸素活性化金属錯体とを組み合わせた構成のゼオライト材料が好ましい。例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、EMT、SAPO-37およびベリロリン酸塩Xからなる群から選択されるゼオライトと、上記一般式(1)または(2)においてベンゼン環に結合している基(上記式(1)ではR1~R4、上記式(2)ではR5~R8およびR10~R13)がそれぞれ水素原子(H)、フッ素原子(F)または塩素原子(Cl)から選択されるいずれかである金属錯体との組み合わせが好ましい。より具体的には、上記ゼオライトと、上記一般式(1)におけるR1~R4がそれぞれHおよびFから選択されるいずれかである金属フタロシアニン錯体(例えば、R1~R4の全てがHである金属フタロシアニン錯体、R1~R4の全てがFである金属フタロシアニン錯体)との組み合わせを好ましく採用することができる。また、上記ゼオライトと、上記一般式(2)におけるR5~R8がそれぞれH,FおよびClから選択されるいずれかであってR10~R13がいずれもHである金属サロフェン錯体との組み合わせを好ましく採用することができる。このような組み合わせは、一つの錯体分子の大きさがゼオライトのユニットセルの内部の大きさと概ね同程度であることから、一つのユニットセルに一分子の酸素活性化金属錯体が内包された構成のゼオライト材料を構成するのに適している。
【0035】
ゼオライトのユニットセル内に酸素活性化金属錯体を内包させる方法としては、ゼオライトと酸素活性化金属錯体形成用原料(該錯体を構成する配位子の前駆体等)とを含む混合物を封管中で加熱する方法、該混合物を加熱還流する方法等を適宜採用することができる。上記混合物としては、目的とする(すなわち、ユニットセルに内包させようとする)酸素活性化金属錯体の中心金属たる金属元素が担持されているゼオライトと、その金属元素に配位して上記酸素活性化金属錯体を構築し得る配位子前駆体とを含む混合物を好ましく使用することができる。かかる配位子前駆体としては、ユニットセルの入口部よりもサイズの小さな化合物を好ましく使用することができる。上記ユニットセルへの酸素活性化金属錯体の内包は、このような配位子前駆体がユニットセル内において金属元素に配位することによって該ユニットセル内で酸素活性化金属錯体が合成(構築)されるように行われることが好ましい。ユニットセルの入口部のサイズよりも分子サイズの大きな酸素活性化金属錯体を該ユニットセルに内包させる場合には、二分子以上の配位子前駆体(一種類の化合物であってもよく、二種以上の化合物であってもよい。)から一分子の錯体が合成されるように、該錯体およびそれに対応する配位子前駆体(好ましくは、さらに該錯体の中心金属たる金属元素)を選定することが好ましい。このようにユニットセル内で酸素活性化金属錯体を合成する手法(特に、該ユニットセルの入口部よりもサイズの大きな錯体を合成する手法)は、いわゆるship-in-bottle法として把握され得る。かかる合成法によると、ユニットセルの入口部よりも大きな酸素活性化金属錯体であっても、該錯体を該ユニットセルに効率よく内包させることができる。なお、かかる合成法は、ユニットセルの入口部よりも小さなサイズの酸素活性化金属錯体の合成にも好ましく適用され得る。
【0036】
上記一般式(1)中のR1~R4の全てが水素原子である(すなわち、無置換の)金属フタロシアニン錯体を酸素活性化金属触媒として使用する場合を例として、該金属フタロシアニン錯体をゼオライトのユニットセル内に内包させる好ましい方法について説明する。
目的とする酸素活性化金属触媒の中心金属となり得る金属元素(例えばコバルト)が適当量担持されたゼオライトを用意する。この金属担持ゼオライトを1,2-ジシアノベンゼン(フタロニトリル)と混合する。該混合物を、例えば封管中で、例えば200~300℃で3~24時間(典型的には4~12時間)加熱することにより、ユニットセル内に金属フタロシアニン錯体を生成させる(合成する)ことができる。このようにして、ユニットセルに金属フタロシアニン錯体が内包されたゼオライトを得ることができる。ここで、ユニットセルに内包させる金属フタロシアニン錯体の量は、例えば、ゼオライトに担持させておく金属元素(酸素活性化金属触媒の中心金属を構成する金属元素)の量を調節することによって制御することができる。上記金属担持ゼオライトと1,2-ジシアノベンゼンとの混合比は、該ゼオライトに担持されている金属(例えばコバルト)のイオン換算で、該金属イオンに対して4当量以上の1,2-ジシアノベンゼンを含む比率とすることが適当である。
【0037】
上記加熱処理の後、得られた錯体内包ゼオライトを適当な有機溶媒で洗浄することが好ましい。このことによって、未反応の1,2-ジシアノベンゼン(配位子前駆体)や、錯体生成反応の副生成物、ゼオライト骨格の外部に形成された(すなわち、ユニットセルに内包されていない)金属フタロシアニン錯体等を除去することができる。洗浄に使用する有機溶媒としては、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等の炭素原子数1~4程度のアルコール)、低級ケトン(例えば、アセトン、エチルメチルケトン等の炭素原子数3~5程度のケトン)、ピリジン等を好ましく選択することができる。洗浄温度および洗浄時間は特に限定されず、所望の洗浄効果が達成されるように適宜設定することができる。例えば、各溶媒の沸点近辺の温度で洗浄することによって良好な洗浄効率が実現され得る。ここに開示されるゼオライト材料は、除去対象物質を含む被処理ガスの浄化に用いられて、ゼオライト自体の有する吸着効果を利用して該除去対象物質を被処理ガスから除去(吸着)する機能を有するものであり得る。ゼオライト材料の製造過程において上述のような洗浄操作を施すことは、かかる吸着効果をよりよく発揮し得るゼオライト材料を製造するという観点からも好ましい。
【0038】
なお、上記一般式(1)中のR1~R4のうち少なくとも一つが水素原子以外の基である(すなわち、置換基を有する)金属フタロシアニン錯体をゼオライトのユニットセルに内包させる方法としては、例えば、対応する置換基を有する置換ジシアノベンゼンを使用して、上記と同様の操作を行う方法を例示することができる。
また、金属フタロシアニン錯体以外の酸素活性化金属錯体についても、上記方法に準じた操作方法を適用することにより、該錯体をゼオライトのユニットセルに内包させることができる。例えば、無置換の金属サロフェン錯体をユニットセルに内包させる場合には、配位子前駆体としてサリチルアルデヒドおよびフェニレンジアミンを使用し、中心金属に対応する金属元素を担持したゼオライトと上記配位子前駆体とを含む混合物を封管中で加熱または加熱還流するとよい。これらの配位子前駆体は、フェニレンジアミン1モルに対してサリチルアルデヒドを概ね2モル(例えば、1.5~2.5モル)の割合で使用することが好ましい。また、置換基を有する金属サロフェン錯体をユニットセルに内包させる場合には、対応する置換基を有するサリチルアルデヒドおよび/またはフェニレンジアミンを使用すればよい。
【0039】
ここに開示されるゼオライト材料を構成する「光還元性金属錯体」としては、光エネルギーの照射により(例えば、赤外線、可視光線または紫外線を受容することにより)自らは酸化される一方、電子(e-)を放出する光還元性金属触媒として機能し得る種々の金属錯体が採用され得る。該錯体から放出された電子は、前記酸素活性化金属錯体による酸素の活性化(活性種の生成)に寄与し得る。そのため、酸素活性化金属錯体に加えてこのような光還元性金属錯体を有するゼオライト材料によると、より効率よく酸素を活性化することができ、このことによって除去対象物質をより効率よく分解(より環境負荷の少ない物質に変換する場合を含む。)することができる。また、かかる光還元性金属錯体から供給(放出)される電子が除去対象物質に直接作用して該物質の分解に寄与することもあり得る。したがって、酸素活性化金属錯体と光還元性金属錯体とを有するゼオライト材料によるとより優れたガス浄化性能が実現され得る。
【0040】
上記光還元性金属錯体としては、例えば、ビピリジン骨格を有する少なくとも一つの化合物(ビピリジン化合物)を配位子とするビピリジン金属錯体(典型的には金属トリスビピリジン錯体)を例示することができる。上記ビピリジン化合物は、そのビピリジン骨格(ピリジン環)が置換基を有する化合物であってもよく、置換基を有しない化合物(例えば、2,2’-ビピリジン)であってもよい。ここでいう「ビピリジン化合物」は、これら置換基を有するビピリジン化合物(ビピリジン誘導体)および置換基を有しないビピリジン化合物を包含する概念である。光還元性金属錯体の他の例として、2,2’-ビピラジン骨格を有する少なくとも一つの化合物(ビピリジン化合物の場合と同様に、置換基を有するまたは有しないビピラジン化合物であり得る。例えば、2,2’-ビピラジンであり得る。)を配位子とするビピラジン金属錯体、フェナントロリン骨格を有する少なくとも一つの化合物(同様に、置換基を有するまたは有しないフェナントロリン化合物であり得る。)等を例示することができる。
ここに開示されるゼオライト材料は、上記酸素活性化金属錯体の一種または二種以上をゼオライトのユニットセルに内包することに加えて、このような光還元性金属錯体の一種または二種以上がゼオライトに保持されたものであり得る。かかる構成のゼオライト材料は、該材料に光エネルギーが供給されない状況または光エネルギーの供給が少ない状況においても、上記酸素活性化金属錯体の機能によって良好なガス浄化性能を発揮するものであり得る。また、該ゼオライト材料に光エネルギーが供給される状況では、光還元性金属錯体および酸素活性化金属錯体の双方の機能を効果的に利用して、さらに高いガス浄化性能を発揮するものであり得る。
【0041】
ここに開示されるゼオライト材料においてゼオライトに保持される(典型的には、該ゼオライトのユニットセルに内包される)光還元性金属錯体は、例えば、下記一般式(3)により表されるトリスビピリジン錯体であり得る。なお、下記式(3)では、第一のビピリジン配位子についてのみ各ピリジン環を構成する炭素原子に結合する全ての基(R21,R22,R23,R24)を表示し、第二および第三のビピリジン配位子では該基の一部または全部の表示を省略しているが、これらのビピリジン配位子を構成する各ピリジン環も第一のビピリジン配位子の各ピリジン環と同じ位置にそれぞれR21,R22,R23,R24を有する。
【0042】
【化3】
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【0043】
ここで、上記式(3)中のR21,R22,R23およびR24は、それぞれ独立に、ハロゲン原子および置換基を有するまたは有しないアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)からなる群から選択されるいずれかであり得る。上記アルキル基としては、炭素原子数が1~3程度のもの(典型的にはメチル基)が好ましい。上記ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)が例示される。通常は、これらのうちフッ素または塩素が好ましい。
上記式(3)に含まれる三つのビピリジン配位子は、互いに同一であってもよく異なってもよい。また、各ビピリジン配位子に含まれる二つのR21は互いに同一であってもよく異なってもよい。R22,R23およびR24についても同様である。例えば、上記式(3)に含まれる六つのR21、六つのR22、六つのR23、六つのR24がそれぞれ互いに同一である構造の金属トリスビピリジン錯体を好ましく採用し得る。
【0044】
光還元性金属錯体を構成する中心金属(上記式(3)で表される光還元性金属錯体では該式中のM)は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、クロム(Cr)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ネオジム(Nd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびレニウム(Re)から選択される一種または二種以上(典型的には一種)であり得る。これらのうち特に好ましい中心金属としてルテニウムが例示される。例えば、ビピリジン骨格を有する少なくとも一つの化合物を配位子とするルテニウム錯体(トリスビピリジンルテニウム錯体等)が好ましい。
【0045】
このような光還元性金属錯体は、ゼオライト材料を構成するゼオライトのユニットセルに内包された態様、ゼオライト骨格の外部(例えば、該ゼオライトの外表面上)に付着した態様等のうち一種または二種以上の態様で該ゼオライト材料に保持され得る。例えば、該光還元性金属錯体が主としてゼオライトのユニットセルに内包された態様で保持されているゼオライト材料が好ましい。その光還元性金属錯体のサイズは、上記ユニットセルの有する細孔の内部のサイズと比較して、概ね同程度またはそれよりも小さいサイズであることが好ましい。このようなサイズの関係を満たすゼオライトと光還元性金属錯体との組み合わせは、該錯体をユニットセルに効率よく内包させるのに適している。上記細孔内部のサイズと概ね同程度のサイズの光還元性金属錯体がユニットセルに内包された構成のゼオライト材料が特に好ましい。
また、ユニットセルの有する細孔の入口部のサイズに対して、該入口部のサイズよりも大きなサイズの光還元性金属錯体が該ユニットセルに内包されていることが好ましい。すなわち、該光還元性金属錯体が、前記入口部を実質的に通過できない(該入口部を経由してユニットセルの細孔に出入りすることができない)サイズであることが好ましい。このようなサイズの関係を満たすゼオライトと光還元性金属錯体との組み合わせは、該錯体がユニットセルの内部(細孔内)に保持された状態を安定して維持するのに適している。例えば、該ゼオライト材料に施され得る種々の処理および/または該ゼオライト材料の種々の使用状況において、ユニットセルに内包された光還元性金属錯体が該ユニットセルの細孔から抜け出す(ユニットセルから失われる)事象が起こり難い。したがって、かかるゼオライト材料は、より耐久性に優れたものであり得る。
【0046】
ここに開示されるゼオライト材料において前記光還元性金属錯体は、主として、一つのユニットセルに一分子の光還元性金属錯体が内包された態様で存在していることが好ましい。かかる態様によると、個々の錯体分子の機能(光エネルギーの供給を受けて電子を放出する機能)をより効率よく発揮させることができる。かかる構成のゼオライト材料は、より高いガス浄化性能を示すものであり得る。
このように一つのユニットセルに一分子の光還元性金属錯体が内包された構成のゼオライト材料を構成するのに適したゼオライトと、該ゼオライトのユニットセルの形状(細孔の入口部および/または内部のサイズ)に応じたサイズの光還元性金属錯体とを組み合わせた構成のゼオライト材料が好ましい。例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、EMT、SAPO-37およびベリロリン酸塩Xからなる群から選択されるゼオライトと、上記一般式(3)においてピリジン環に結合している基(R21~R24)がそれぞれHおよびFから選択されるいずれかである(例えば、該式中に含まれる全てのR21~R24がHである、すなわち無置換の)金属トリスビピリジン錯体との組み合わせが好ましい。
【0047】
ゼオライトのユニットセルに光還元性金属錯体を内包させる方法としては、該ユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させることに関して上記で例示した方法と同様の方法を好ましく採用することができる。例えば、目的とする光還元性金属錯体の中心金属たる金属元素が担持されているゼオライトと、その金属元素に配位して上記光還元性金属錯体酸素活性化金属錯体を構築し得る配位子前駆体とを含む混合物を加熱することにより、ユニットセルに光還元性金属錯体が内包されたゼオライトを得ることができる。上記混合物の加熱条件は特に限定されないが、例えば、加熱温度としては100~200℃程度、加熱時間としては3~24時間程度の条件を採用することができる。その後、得られた錯体内包ゼオライトを適当な有機溶媒で洗浄することが好ましい。
【0048】
このような光還元性金属錯体の合成に使用する配位子前駆体としては、ユニットセルの入口部よりもサイズの小さな化合物を好ましく使用することができる。上記ユニットセルへの光還元性金属錯体の内包は、このような配位子前駆体がユニットセル内において金属元素に配位することによって該ユニットセル内で光還元性金属錯体が合成(構築)されるように行われることが好ましい。ユニットセルの入口部のサイズよりも分子サイズの大きな錯体を該ユニットセルに内包させる場合には、二分子以上の配位子前駆体(一種類の化合物であってもよく、二種以上の化合物であってもよい。)から一分子の錯体が合成されるように、該錯体およびそれに対応する金属元素ならびに配位子前駆体を選択することが好ましい。このようにユニットセル内で光還元性金属錯体を合成する手法(特に、該ユニットセルの入口部よりもサイズの大きな錯体を合成する手法)は、いわゆるship-in-bottle法として把握され得る。かかる合成法によると、ユニットセルの入口部よりも大きなサイズの光還元性金属錯体であっても、該錯体を該ユニットセルに効率よく内包させることができる。なお、かかる合成法は、ユニットセルの入口部よりも小さなサイズの光還元性金属錯体の合成にも好ましく適用され得る。
【0049】
ゼオライトに光還元性金属錯体を保持(典型的には、該ゼオライトのユニットセルに内包)させるタイミングは特に限定されない。例えば、該ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させる前であってもよく後であってもよい。ユニットセルの有する細孔の入口部のサイズよりも大きなサイズの酸素活性化金属錯体が該ユニットセルに内包された態様のゼオライト材料は、ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包させた後に光還元性金属錯体を保持させることを含む製造方法を採用する場合にも、その光還元性金属錯体を保持させる際に(例えば、上述のようなship-in-bottle法を適用して光還元性金属錯体を内包させる際に)、予め内包されている酸素活性化金属錯体がユニットセルから失われ難いので好ましい。また、酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体がいずれもユニットセルに内包された態様のゼオライト材料であって、これら錯体のいずれもがユニットセルの有する細孔の入口部のサイズよりも大きなサイズの錯体である場合には、酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体のいずれの錯体を先に内包させてもよい。いずれの場合にも、先に内包させた一方の錯体が、その後に他方の錯体を内包させる際にユニットセルから失われることが効果的に防止され得る。したがって、ゼオライト材料を製造する方法において選択の幅(例えば、各錯体をユニットセルに内包させる順序の選択幅)をより広げ得るので好ましい。
【0050】
ここに開示されるゼオライト材料の好ましい一態様では、該材料を構成するゼオライトと酸素活性化金属錯体との質量比が、ゼオライト100質量部に対して酸素活性化金属錯体が例えば凡そ0.1~20質量部の比率であり得る。該ゼオライト材料を構成するゼオライトと光還元性金属錯体との質量比は、例えば、ゼオライト100質量部に対して光還元性金属錯体が凡そ0.1~20質量部の比率であり得る。
ここに開示されるゼオライト材料の他の好ましい一態様では、該材料の有するユニットセルの個数のうち凡そ1/30~1/2(より好ましくは、凡そ1/20~1/4)個の割合で、該ユニットセルに酸素活性化金属錯体が内包されている。また、該材料の有するユニットセルの個数のうち凡そ1/30~1/2(より好ましくは、凡そ1/20~1/4)個の割合で、該ユニットセルに光還元性金属錯体が内包されているゼオライト材料が好ましい。
該ゼオライト材料に含まれる酸素活性化金属錯体と光還元性金属錯体とのモル比は、例えば、酸素活性化金属錯体1モルに対する光還元性金属錯体の含有量が凡そ0.1~10モル(より好ましくは凡そ0.2~3モル、さらに好ましくは凡そ0.5~1.5モル)となる比率であり得る。
このような割合でゼオライト、酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体を含有するゼオライト材料によると、より高いガス浄化性能が実現され得る。
【0051】
ここに開示されるゼオライト材料に所定の金属錯体(典型的には、酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体)が含まれることは、例えば元素分析法等により確認することができる。また、該ゼオライト材料における金属錯体の存在状態は、ガス吸着法によって確認することができる。ゼオライトのユニットセルの大きさは、0.3~1.8nm程度であり、このサイズは、空気中に含まれる酸素分子の大きさ(約0.3nm)や窒素分子の大きさ(約0.4nm)と同程度である。したがって、ユニットセル内に酸素活性化金属錯体も光還元性金属錯体も内含しないゼオライトに所定の条件下で酸素分子または窒素分子(以下、「測定ガス分子」ともいう。)を吸着させると、ゼオライトの外表面のみならず、該ゼオライトのユニットセル内(細孔内)にも測定ガス分子が吸着される。その測定ガス分子の吸着量から、ゼオライトの比表面積(すなわち単位質量当たりの表面積(単位m3/g))を算出することができる。ここで算出される表面積は、ゼオライトの外表面の面積のみならず、該ゼオライトのユニットセルの表面(細孔表面)の面積をも包含する表面積である。一方、酸素活性化金属錯体を内包するゼオライト材料または酸素活性化金属錯体と光還元性金属錯体とを内包するゼオライト材料では、ユニットセルの細孔に金属錯体が収容されているため、測定ガス分子が該細孔に入ることができない。その結果、ユニットセルに金属錯体が内包されたゼオライト材料では該錯体を内包しないゼオライトに比べて測定ガス分子の吸着量が少なくなる。かかる吸着量の現象に対応して、該吸着量から算出される見かけの表面積も減少する。このような被測定ガス分子の吸着量および/または該吸着量から算出される表面積の値の差異によって、ゼオライトのユニットセル内に金属錯体が内包されていることを確認することができる。
【0052】
なお、ここに開示される技術には、ゼオライトを用意することと、該ゼオライトのユニットセルの形状に適合した酸素活性化金属錯体を選定することと、その選定した酸素活性化金属錯体をship-in-bottle法によってゼオライトのユニットセル内に合成することと、を包含するゼオライト材料の製造方法が含まれる。かかる製造方法は、他の側面として、該ゼオライト材料の設計方法としても把握され得る。ここで、「ユニットセルの形状に適合した酸素活性化金属錯体」としては、例えば、該ユニットセルの細孔内部のサイズと概ね同程度のサイズの酸素活性化金属錯体(より好ましくは、細孔内部のサイズと概ね同程度であってかつ該ユニットセルの細孔入口部よりも大きなサイズの酸素活性化金属錯体)を好ましく選定することができる。
上記製造方法または設計方法は、さらに、該ゼオライトのユニットセルの形状に適合した光還元性金属錯体を選定することと、その選定した光還元性金属錯体をship-in-bottle法によってゼオライトのユニットセル内に合成することとを含み得る。「ユニットセルの形状に適合した光還元性金属錯体」としては、例えば、該ユニットセルの細孔内部のサイズと概ね同程度のサイズの光還元性金属錯体(より好ましくは、細孔内部のサイズと概ね同程度であってかつ該ユニットセルの細孔入口部よりも大きなサイズの光還元性金属錯体)を好ましく選定することができる。
【0053】
ここに開示されるゼオライト材料は、被処理ガスに含まれる除去対象物質を除去(典型的には分解)するガス浄化材の有効成分として有用である。該ガス浄化材を利用して除去される上記除去対象物質は、揮発性有機化合物(VOC)や、硫化水素、トリメチルアミン、酢酸、ホルムアルデヒド、ノネナール、イソ吉草酸、インドール、メルカプタン類、チオエーテル等のような悪臭物質または環境上好ましからざる(例えば有害性のある)物質から選択される一種または二種以上であり得る。上記VOCとしては、シックハウス症候群、シックスクール症候群などの影響を及ぼす可能性が高いとされている化合物、例えばホルムアルデヒド、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレンモノマー、パラジクロロベンゼン等が例示される。ここに開示されるガス浄化材によると、このような除去対象物質を効率よく除去(分解)することができる。かかるガス浄化材の好ましい一つの態様では、該除去対象物質を持続的に(より好ましくは常温で)分解することができる。
【0054】
上記ガス浄化材は、例えば、上述したいずれかのゼオライト材料が適当な基材に保持された構成を有するものであり得る。該基材を構成する材料は、有機材料(天然繊維、合成繊維、樹脂成形体、樹脂フィルム等)であってもよく、無機材料(金属、金属酸化物等)であってもよい。上記ゼオライト材料は、それ自体単独で、ここに開示されるガス浄化材となり得る。また、ここに開示される一つのガス浄化材は、例えば粉末状等の形状に製造された上記ゼオライト材料を、必要に応じて使用される適当なバインダ(結着材)とともに所定の形状に成形してなるガス浄化材であり得る。例えば、該ゼオライト材料が:壁材、床材、天井材等の建材;椅子、机、ベッド、タンス等の家具;自動車や電車などの車両内装材;等に練り込まれた形態のガス浄化材であり得る。また、かかる粉末状ゼオライト材料が適当なビヒクルに分散された混合物(塗料)を調製し、該混合物を建材等の基材に付与(例えば塗布)してなるガス浄化材であってもよい。ここに開示されるゼオライト材料は、このような各種形態のガス浄化材またはその構成材料として利用され得る。
【0055】
ここに開示されるゼオライト材料は、上述のようなガス浄化材として利用され得る他、例えば酸化触媒として有用なものであり得る。具体的には、例えば、アミン類を酸化してN-オキサイド(洗浄剤の構成成分として有用である。)を安価に大量に合成する触媒等として、該ゼオライト材料を利用することができる。本発明のゼオライト材料を酸化触媒に用いる触媒反応は、従来公知の各種方法を適用して実施することができる。
【0056】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0057】
<実施例1>
以下のようにして、ゼオライトのユニットセルにサロフェンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体とが内包されたゼオライト材料を製造した。
【0058】
すなわち、粉末状のX型ゼオライトを用意し、該ゼオライトに含まれる陽イオン(ここではナトリウムイオン)をルテニウムイオンとイオン交換した。これにより、適量のルテニウムが担持されたゼオライト(ルテニウム担持ゼオライト)を得た。このルテニウム担持ゼオライトにおけるルテニウムの担持量は、該ルテニウム担持ゼオライトの質量の例えば0.5~5質量%程度とすることが適当である。本実施例では、ルテニウムの担持量を1質量%とした。
上記ルテニウム担持ゼオライトを、ルテニウムイオン換算で3当量以上(例えば3~15当量)の2,2’-ビピリジンまたはその誘導体(本実施例では、3.5当量の2,2’-ビピリジンを使用した。)と混合して封管し、100~200℃の温度で3~24時間(ここでは、190℃で24時間)加熱した。得られた固体に含まれる未反応の配位子等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をエタノールで洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液に懸濁して50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)ルテニウムイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。このようにして、ユニットセル(ゼオライトスーパーケージ内)にトリスビピリジンルテニウム錯体が内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルa」ということもある。)を得た。
【0059】
上記で得られたトリスビピリジンルテニウム錯体内包ゼオライトに含まれる陽イオン(主としてナトリウムイオン)をコバルトイオンとイオン交換した。これにより、ユニットセルにトリスビピリジンルテニウム錯体を内包し、かつ適量のコバルトが担持されたゼオライト(コバルト担持ゼオライト)を得た。このコバルト担持ゼオライトにおけるコバルトの担持量は、該コバルト担持ゼオライトの質量の例えば0.5~5質量%程度とすることが適当である。本実施例では、コバルトの担持量を1質量%とした。
上記コバルト担持ゼオライトを、コバルトイオン換算で3当量以上(例えば3~15当量)のサリチルアルデヒドまたはその誘導体(本実施例では、3.2当量の5-クロロ-2-ヒドロキシベンズアルデヒドを使用した。)を適量のエタノールに溶解させた溶液に混合した。この懸濁液を還流しながら、コバルトイオン換算で1.5当量以上(例えば1.5~10当量)のフェニレンジアミンまたはその誘導体(本実施例では、1.6当量のフェニレンジアミンを使用した。)をエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下し、滴下完了後さらに3時間以上(ここでは3時間)還流した。その後、得られた固体に含まれる未反応の配位子等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をアセトンまたはt-ブタノール(ここではt-ブタノールを使用した。)で洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液に懸濁して50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)コバルトイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。
【0060】
このようにして、ユニットセルにサロフェンコバルト錯体(上記一般式(2)におけるMがコバルト(Co)であり、R5およびR7~R13がいずれも水素原子(H)であり、R6が塩素原子(Cl)である金属錯体)とトリスビピリジンルテニウム錯体(上記一般式(3)におけるMがルテニウム(Ru)であり、R21~R24がいずれも水素原子(H)である金属錯体)とが内包されたゼオライト材料(以下、このゼオライト材料を「サンプルA」ということもある。)を得た。
【0061】
上記で得られたゼオライト材料(サンプルA)につき反射スペクトルを測定したところ、トリスビピリジンルテニウム錯体(式[Ru(bpy3)]により表され得る。ここで「bpy」はビピリジン配位子を表す。)およびサロフェンコバルト錯体(式[Co(saloph)]により表され得る。ここで「saloph」はサロフェン配位子を表す。)のそれぞれに特徴的な吸収帯を示し、これらの錯体がゼオライトのユニットセルに内包されていることが示唆された。
また、上記ゼオライト材料について蛍光X線スペクトルを測定したところ、ルテニウムの含有量は0.8質量%であり、コバルトの含有量は0.6質量%であった。この測定結果から、該ゼオライト材料におけるトリスビピリジンルテニウム錯体とサロフェンコバルト錯体との存在比率は、[Ru(bpy3)]:[Co(saloph)]=1:1.3であった。
【0062】
<実施例2>
以下のようにして、ゼオライトのユニットセルにフタロシアニンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体とが内包されたゼオライト材料を製造した。
【0063】
すなわち、実施例1で用いたものと同じ粉末状X型ゼオライトを用意し、該ゼオライトに含まれる陽イオンをコバルトイオンとイオン交換した。これにより、適量のコバルトが担持されたゼオライト(コバルト担持ゼオライト)を得た。このコバルト担持ゼオライトにおけるコバルトの担持量は、該コバルト担持ゼオライトの質量の例えば0.5~5質量%程度とすることができる。本実施例では、コバルトの担持量を1質量%とした。
上記コバルト担持ゼオライトを、コバルトイオン換算で4当量以上(例えば4~20当量)のフタロニトリルまたはその誘導体(本実施例では、8当量のフタロニトリルを使用した。)と混合して封管し、200~300℃の温度で3~24時間(ここでは、220℃で5時間)加熱した。得られた固体に含まれる未反応の配位子やゼオライト粒の外部に生成したフタロシアニン等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をアセトン、メタノール、ピリジン等の溶媒により洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液中に懸濁させて50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)コバルトイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。このようにして、ユニットセル(ゼオライトスーパーケージ内)にフタロシアニンコバルト錯体が内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルb」ということもある。)を得た。
【0064】
上記で得られたフタロシアニンコバルト錯体内包ゼオライトに含まれる陽イオン(主としてナトリウムイオン)をルテニウムイオンとイオン交換した。これにより、ユニットセルにフタロシアニンコバルト錯体を内包し、かつ適量のルテニウムが担持されたゼオライト(ルテニウム担持ゼオライト)を得た。このルテニウム担持ゼオライトにおけるルテニウムの担持量は、該ルテニウム担持ゼオライトの質量の例えば0.5~5質量%程度とすることが適当である。本実施例では、ルテニウムの担持量を1質量%とした。
上記ルテニウム担持ゼオライトを、ルテニウムイオン換算で3当量以上(例えば3~15当量)の2,2’-ビピリジンまたはその誘導体(本実施例では、3.5当量の2,2’-ビピリジンを使用した。)と混合して封管し、100~200℃の温度で3~24時間(ここでは、190℃で24時間)加熱した。得られた固体に含まれる未反応の配位子等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をエタノールで洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液に懸濁して50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)ルテニウムイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。
【0065】
このようにして、ユニットセルにフタロシアニンコバルト錯体(上記一般式(1)におけるR1~R4がいずれも水素原子(H)である金属錯体)とトリスビピリジンルテニウム錯体(上記一般式(3)におけるMがルテニウム(Ru)であり、R21~R24がいずれも水素原子(H)である金属錯体)とが内包されたゼオライト材料(以下、このゼオライト材料を「サンプルB」ということもある。)を得た。
【0066】
<実施例3>
実施例2におけるフタロシアニンコバルト錯体の合成において、フタロニトリルに代えて同量(コバルトイオン換算で8当量)のパーフルオロフタロニトリルを使用し、その他の点については実施例2と同様にして、ユニットセルにパーフルオロフタロシアニンコバルト錯体(上記一般式(1)におけるR1~R4がいずれもフッ素原子(F)である金属錯体)が内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルc」ということもある。)を得た。さらに、実施例2と同様にして、ユニットセルに上記パーフルオロフタロシアニンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体(上記一般式(3)におけるMがルテニウム(Ru)であり、R21~R24がいずれも水素原子(H)である金属錯体)とが内包されたゼオライト材料(以下、このゼオライト材料を「サンプルC」ということもある。)を得た。
【0067】
<実施例4>
実施例1~3により得られたゼオライト材料(サンプルA,B,C)、該ゼオライト材料の製造過程で得られた錯体内包ゼオライトであって酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体のいずれか一方のみを有するゼオライト(サンプルa,b,c)、および、実施例1~3において出発原料として使用したX型ゼオライト粉末(すなわち、金属錯体を含まないゼオライト。以下、これを「サンプルX」という。)につき、以下のようにしてガス浄化試験を行った。
【0068】
すなわち、同質量の各サンプルをそれぞれ同形のガラス瓶に入れ、インドールおよびノネナールを混入した空気(被処理ガス)を各ガラス瓶に導入して該瓶を密閉した。そのガラス瓶を、外光の入る室内(ただし直射日光は当たらない。)に1時間放置した。その後、各瓶の蓋を開けてその臭いを嗅ぎ、サンプルXを入れたガラス瓶の臭気を基準として、他のサンプルを入れたガラス瓶の臭気の相対的な強さを官能評価した。その結果、ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体を内包するサンプルA,BまたはCを入れたガラス瓶については、いずれも優れた臭気低減効果が認められた。また、ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包するが光還元性金属錯体を有しないサンプルbおよびcについても高い臭気低減効果が認められたが、サンプルA,B,Cに比べるとその効果は少なかった。一方、ゼオライトのユニットセルに光還元性金属錯体を内包するが酸素活性化金属錯体を有しないサンプルaについては、サンプルXとの比較において、本官能試験によっては臭気低減効果が認められなかった。